(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】光触媒コーティング剤及びスプレー製品
(51)【国際特許分類】
B01J 35/39 20240101AFI20240417BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20240417BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240417BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240417BHJP
B01J 29/076 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B01J35/39
C09D1/00
C09D7/61
C09D5/02
B01J29/076 M
(21)【出願番号】P 2020035903
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-165208(JP,A)
【文献】特開2014-193855(JP,A)
【文献】特開2010-149005(JP,A)
【文献】特開2011-057933(JP,A)
【文献】特開2009-263820(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
C09D 1/00-201/10
A01N 59/00-59/26
A61L 9/00-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む分散媒と、前記分散媒中に分散した光触媒微粒子と、銀イオンと、前記銀イオンが担持された無機多孔質材料とを含む光触媒コーティング剤であって、
前記光触媒コーティング剤中の前記銀イオンの濃度が0.6ppm以上であ
り、
前記光触媒微粒子は、酸化タングステンを主成分として含むことを特徴とする光触媒コーティング剤。
【請求項2】
亜鉛イオンをさらに含む請求項1に記載の光触媒コーティング剤。
【請求項3】
レーザー回折・散乱法により測定される前記光触媒コーティング剤中の前記光触媒微粒子の体積平均粒子径D50は、500nm以下である請求項1又は2に記載の光触媒コーティング剤。
【請求項4】
前記無機多孔質材料に担持された前記銀イオンの一部が、前記無機多孔質材料から前記分散媒に溶出している請求項1~
3のいずれか1つに記載の光触媒コーティング剤。
【請求項5】
前記無機多孔質材料はゼオライトである請求項1~
4のいずれか1つに記載の光触媒コーティング剤。
【請求項6】
分散剤をさらに含む請求項1~
5のいずれか1つに記載の光触媒コーティング剤。
【請求項7】
水を含む分散媒と、前記分散媒中に分散した光触媒微粒子と、銀イオンと、前記銀イオンが担持された無機多孔質材料と、亜鉛イオンとを含む光触媒コーティング剤であって、
前記光触媒コーティング剤中の前記銀イオンの濃度が0.6ppm以上であることを特徴とする光触媒コーティング剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の光触媒コーティング剤と、前記光触媒コーティング剤を噴霧するように設けられた噴霧器とを備えるスプレー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コーティング剤及びスプレー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使用される光触媒コーティング剤は、製造工程や使用時等で空気中の菌やカビが混入し、増殖する懸念がある。長期保管における液中のカビ発生や腐敗を防ぐために、防腐剤を添加することが一般的である。防腐効果を持つ材料としてエタノールを添加した光触媒コーティング剤が商品化されている。
しかし、エタノールに反応してアレルギーや肌荒れを起こす人がいるため、エタノールフリー、あるいは低エタノール濃度の製品を求める消費者ニーズがある。
一方、抗菌性金属粒子を担持している光触媒粒子を含む光触媒塗装体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エタノールフリー、あるいは低エタノール濃度の製品では、エタノールによる防腐効果が十分に発揮されないため、光触媒コーティング剤にメチルパラベン、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤を加える必要がある。しかしながら、これらの防腐剤の多くは、添加することで光触媒の効果を阻害する(噴霧された光触媒コーティング剤は乾燥し、光触媒の微粒子が効果を発揮し始めるが、その際に光触媒近傍に存在する防腐剤をまず分解するため、大気中の有害ガスを分解する効果が薄れると考えられる)。また、明所において長期にわたる保管において防腐効果を維持することが出来ない(液中で光触媒が防腐剤を分解すると考えられる)。
抗菌性金属微粒子を含む塗料でも、微粒子から溶媒への金属イオンの溶出量が少ないため、十分な防腐効果を示さない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、菌やカビ等を増殖させることなく長期に渡って保存することができる光触媒コーティング剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水を含む分散媒と、前記分散媒中に分散した光触媒微粒子と、銀イオンとを含む光触媒コーティング剤であって、前記光触媒コーティング剤中の前記銀イオンの濃度が0.6ppm以上であることを特徴とする光触媒コーティング剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光触媒コーティング剤中の銀イオンの濃度が0.6ppm以上であるであるため、銀イオンを防腐剤として機能させることができ、菌やカビ等を増殖させることなく長期に渡って光触媒コーティング剤を保存することができる。
また、銀イオンは光触媒微粒子の光触媒活性を阻害しないため、光触媒コーティング剤を用いて形成した光触媒層が初期から光触媒の消臭効果などを発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態のスプレー製品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光触媒コーティング剤は、水を含む分散媒と、分散媒中に分散した光触媒微粒子と、銀イオンとを含む。前記光触媒コーティング剤中の銀イオンの濃度は0.6ppm以上である。
【0009】
本発明の光触媒コーティング剤は亜鉛イオンをさらに含むことが好ましい。このことにより、銀イオン及び亜鉛イオンを防腐剤として機能させることができ、菌やカビ等を増殖させることなく長期に渡って光触媒コーティング剤を保存することができる。
レーザー回折・散乱法により測定される光触媒コーティング剤中の光触媒微粒子の体積平均粒子径D50は、500nm以下であることが好ましい。このことにより、光触媒コーティング剤中での光触媒微粒子の分散性を長期間維持することが可能になる。
【0010】
本発明の光触媒コーティング剤に含まれる光触媒微粒子は、酸化タングステンを主成分として含むことが好ましい。この光触媒コーティング剤を用いて酸化タングステンを含む光触媒層を形成することができ、この光触媒層が可視光を受光することにより光触媒層が消臭効果などを発揮することが可能になる。
本発明の光触媒コーティング剤は無機多孔質材料をさらに含むことが好ましい。また、光触媒コーティング剤に含まれる銀イオンは、無機多孔質材料に担持されているか又は無機多孔質材料から分散媒に溶出していることが好ましい。このことにより、銀イオンを防腐剤として機能させることができ、菌やカビ等を増殖させることなく長期に渡って光触媒コーティング剤を保存することができる。
【0011】
本発明の光触媒コーティング剤は分散剤をさらに含むことが好ましい。このことにより、光触媒コーティング剤中の光触媒微粒子の分散性を向上させることができる。
本発明は、本発明の光触媒コーティング剤と、光触媒コーティング剤を噴霧するように設けられた噴霧器とを備えるスプレー製品も提供する。
【0012】
以下、複数の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0013】
第1実施形態
本実施形態の光触媒コーティング剤は、水を含む分散媒と、前記分散媒中に分散した光触媒微粒子と、銀イオンとを含む。前記光触媒コーティング剤中の前記銀イオンの濃度は0.6ppm以上である。
【0014】
光触媒コーティング剤(光触媒塗布液)は、水を含む分散媒中に光触媒微粒子が分散した懸濁液であり、基材の表面に光触媒層を形成するためのコーティング剤である。光触媒コーティング剤は、保存容器に入っていてもよく、貯蔵容器に入っていてもよく、スプレーボトルに入っていてもよく、スプレー製品に入っていてもよい。
【0015】
基材表面に光触媒コーティング剤を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、ローラ塗り、ロールコーティング等である。
基材の表面に光触媒コーティング剤を塗布し、塗布膜を形成すると、塗布膜に含まれる分散媒が蒸発し、基材の表面に光触媒層が形成される。
光触媒コーティング剤は、エタノールフリーの懸濁水溶液であってもよく、3%以下のエタノールを含んでもよい。
光触媒コーティング剤に含まれる分散媒は、水を主成分とする。分散媒は99%以上の水を含んでもよい。また、分散媒は3%以下のエタノールを含む水―エタノール混合液であってもよい。
【0016】
また、光触媒コーティング剤は、分散剤を含んでもよい。分散剤は例えば界面活性剤である。このことにより、光触媒コーティング剤中において光触媒微粒子を長期間安定的に分散させることができる。光触媒コーティング剤に含まれる分散剤は、例えば、非イオン(ノニオン)系の界面活性剤、カチオン性界面活性剤(高分子アミン化合物)などであり、好ましくはカチオン性界面活性剤である。
また、光触媒コーティング剤は、バインダーを含んでもよい。バインダーは例えばシランカップリング剤である。
【0017】
光触媒コーティング剤に含まれる光触媒微粒子は、例えば、可視光応答型の光触媒の微粒子であり、具体的には酸化タングステン微粒子である。酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)である。WO3は酸素欠損を有してもよく、WO3に含まれるWの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。光触媒微粒子の平均一次粒径は、例えば、5nm以上200nm以下である。
【0018】
光触媒微粒子はその表面に助触媒を有してもよい。助触媒は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムのような白金族金属、金、銀、銅又は亜鉛などであり、好ましくは白金である。助触媒は、金属微粒子として光触媒微粒子の表面に付着していてもよく、酸化物又は水酸化物として光触媒微粒子の表面に付着していてもよい。
【0019】
レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により測定される光触媒コーティング剤中の光触媒微粒子の体積平均粒子径D50(光触媒微粒子が分散媒に分散した状態での平均粒径)は、500nm以下であってもよい。このことにより、光触媒コーティング剤中での光触媒微粒子の分散性を長期間維持することが可能になる。
このレーザー回折・散乱法では、光触媒コーティング剤中に分散している光触媒微粒子の二次粒径(又は一次粒径)の粒径分布及び平均粒子径D50などを測定することができる。また、前記体積平均粒子径D50は、5nm以上500nm以下であってもよく、5nm以上250nm以下であってもよい。
【0020】
光触媒コーティング剤は銀イオンを含み、光触媒コーティング剤中の銀イオンの濃度が0.6ppm(ppmw)以上である。光触媒コーティング剤中の銀イオンの濃度は、好ましくは、0.6ppm以上10ppm以下である。銀イオンは抗菌作用があるため、光触媒コーティング剤を長期保存した場合でも、光触媒コーティング剤に菌やカビ等が増殖することを抑制することができる。従って、銀イオンを防腐剤として機能させることができる。また、銀イオンは、光触媒微粒子の光触媒活性を阻害しないため、光触媒コーティング剤を用いて形成した光触媒層が初期から光触媒の消臭効果などを発揮することができる。銀イオンは、金属銀や酸化銀としてではなく、銀イオンとして光触媒コーティング剤に含まれる。
例えば、硝酸銀などの銀化合物が、光触媒コーティング剤に溶解していてもよい。また、光触媒コーティング剤は、銀イオンが担持された無機多孔質材料を含んでもよい。
【0021】
光触媒コーティング剤は、銀イオンと亜鉛イオンの両方を含んでもよい。この場合、光触媒コーティング剤中の銀イオンの濃度は例えば、0.6ppm以上10ppm以下であり光触媒コーティング剤中の亜鉛イオン濃度は、例えば3ppm以上50ppm以下であり、好ましくは3ppm以上10ppm以下である。例えば、硝酸銀などの銀化合物と塩化亜鉛などの亜鉛化合物の両方が光触媒コーティング剤に溶解していてもよい。また、光触媒コーティング剤は、銀イオンと亜鉛イオンの両方が担持された無機多孔質材料を含んでもよい。また、光触媒コーティング剤は、銀イオンが担持された無機多孔質材料と、亜鉛イオンが担持された無機多孔質材料との両方を含んでもよい。
【0022】
これらの無機多孔質材料は、例えば、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、多孔質金属などである。また、無機多孔質材料は、粒子状であり、粒径は特に限定されないが、好ましくは、無機多孔質材料の平均粒径(D50)を0.5μm以上30μm以下とすることができる。光触媒コーティング剤中の無機多孔質材料の濃度は、例えば、0.001wt%以上0.025wt%以下とすることが好ましい。
より具体的には、無機多孔質材料は、銀イオンが担持されたゼオライト、銀イオンと亜鉛イオンの両方が担持されたゼオライト、亜鉛イオンが担持されたゼオライトなどである。光触媒コーティング剤がこのような無機多孔質材料を含むと、無機多孔質材料から銀イオン又は亜鉛イオンが分散媒中に溶出する。また、銀原子は、無機多孔質材料中においてイオン状態(1価の陽イオン)で存在する。亜鉛原子は、無機多孔質材料中においてイオン状態(2価の陽イオン)で存在する。光触媒コーティング剤中の銀イオン又は亜鉛イオンはICP発光分析、傾向X線分析などで分析、検出することができる。
光触媒コーティング剤中の亜鉛イオンの濃度は、特に限定されないが、好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下である。
【0023】
光触媒コーティング剤は、例えば、次のように製造することができる。
まず、分散媒である水に光触媒微粒子を加え分散させる(必要であれば、分散剤も分散媒である水に加える)。光触媒微粒子を水に分散させる方法としては、一般的には湿式の分散機を用いて実施することができる。分散機としては、例えば、超音波分散機、コロイドミル及びビーズミルなどが挙げられる。
【0024】
次に、光触媒微粒子を分散させた懸濁液に防腐剤として機能する銀イオン(又は銀イオンと亜鉛イオン)を加える。具体的には、例えば、銀イオンが担持された無機多孔質材料、銀イオンと亜鉛イオンが担持された無機多孔質材料又は銀化合物を懸濁液に加える。混合には、一般的な液体混合機を用いることができる。撹拌羽根等が付属している混合機であれば、光触媒コーティング剤の組成をより均一にすることができる。
【0025】
第2実施形態
第2実施形態は、スプレー製品に関する。
図1は本実施形態のスプレー製品の概略断面図である。
スプレー製品20は、第1実施形態の光触媒コーティング剤2と光触媒コーティング剤2を噴霧するように設けられた噴霧器3とを備える。
噴霧器3は、トリガー11を引いてプランジャー10でチャンバー8内の光触媒コーティング剤2に圧力を加えて噴霧ノズル9から光触媒コーティング剤2を噴霧するトリガー式スプレー構造を有することができる。
【0026】
光触媒コーティング剤の調製実験
実施例1~7及び比較例1~6の光触媒コーティング剤を調製した。
【0027】
[実施例1]
体積平均粒径D50=200nmの光触媒微粒子を21wt%の割合で分散させたスラリー2.3gと、水97.6gと、ゼオライト微粒子に銀イオンを1.5wt%担持させた複合剤4mg(銀イオン0.06mg)を混合し、光触媒コーティング剤100mlを調製した。光触媒微粒子には、Pt担持WO3粉末を用いた。
【0028】
[実施例2]
光触媒微粒子の体積平均粒径D50を450nmとし、銀イオン0.06mg及び亜鉛イオン0.3mgを添加した(複合剤には、ゼオライト微粒子に銀イオンと亜鉛イオンとを担持したものを用いた)こと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。複合剤の添加量は、イオン添加量に合わせて調整した。他の実施例や比較例でも同様である。
[実施例3]
銀イオン添加量を0.25mgとしたこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
【0029】
[実施例4]
銀イオン添加量を0.21mg、亜鉛イオンを0.48mgとしたこと(複合剤には、ゼオライト微粒子に銀イオンと亜鉛イオンとを担持したものを用いた)以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[実施例5]
光触媒微粒子の体積平均粒径D50をD50=600nmとしたこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
【0030】
[実施例6]
光触媒コーティング剤に分散剤であるアミート320(花王株式会社製)を0.2g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[実施例7]
光触媒コーティング剤に分散剤であるエスリームAD-3172M(日油株式会社製)を0.2g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
表1に実施例1~7の光触媒コーティング剤に含まれる成分などをまとめて示す。
【0031】
【0032】
[比較例1]
銀イオン添加量を0.03mgとしたこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[比較例2]
銀イオン添加量を0.03mgとし、亜鉛イオンを0.15mgとしたこと以外は実施例1又は実施例2と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[比較例3]
銀イオンの代わりに防腐剤としてメチルパラベンを0.02g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
【0033】
[比較例4]
銀イオンの代わりに防腐剤としてメチルパラベンを0.05g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[比較例5]
銀イオンの代わりに防腐剤として安息香酸ナトリウムを0.02g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
[比較例6]
銀イオンの代わりに防腐剤として安息香酸ナトリウムを0.05g添加したこと以外は実施例1と同様に光触媒コーティング剤を調製した。
表2に比較例1~6の光触媒コーティング剤に含まれる成分などをまとめて示す。
【0034】
【0035】
調製した光触媒コーティング剤の評価
[分散性の評価]
光触媒コーティング剤を調製後、十分撹拌し、静置した。光触媒微粒子が1日で凝集沈殿した光触媒コーティング剤の評価を「×」とし、光触媒微粒子が3日で凝集沈殿した光触媒コーティング剤の評価を「△」とし、光触媒微粒子が1週間で凝集沈殿した光触媒コーティング剤の評価を「○」とし、光触媒微粒子が1ヶ月以上凝集沈殿しない光触媒コーティング剤の評価を「◎」とした。凝集沈殿は、透明容器底に堆積物があるかを目視で判断した。
このような分散性の評価を実施例1~7、比較例1~6の光触媒コーティング剤のそれぞれについて行った。
【0036】
[初期光触媒性能の評価]
セルロース生地(125mm×125mm)に光触媒コーティング剤2gをスポイドを使用してまんべんなく滴下した。上記セルロース生地を40℃の送風乾燥機で乾燥させ、青色LEDの光を4500luxで乾燥させたセルロース生地に48時間プレ照射することにより試験用サンプルを作成した。次に1Lのガスバック内に上記試験用サンプルを入れ、このガスバック中に100ppmのアセトアルデヒドガスを注入した。上記ガスバッグ中の試験用サンプルに青色LEDの光を4500luxで5時間照射した後、ガスバッグ内のアセトアルデヒドガス濃度を検知管にて測定した。
【0037】
(ガス残存率)=(5時間後のガス濃度)/(初期ガス濃度100ppm)より、ガスの残存率を計算し各光触媒コーティング剤の初期光触媒性能を評価した。
ガス残存率が5%未満であった光触媒コーティング剤の評価を「◎」とし、ガス残存率が5%以上20%未満であった光触媒コーティング剤の評価を「○」とし、ガス残存率が20%以上50%未満であった光触媒コーティング剤の評価を「△」とし、ガス残存率が50%以上であった光触媒コーティング剤の評価を「×」とした。
このような初期光触媒性能の評価を実施例1~7、比較例1~6の光触媒コーティング剤のそれぞれについて行った。
【0038】
[長期防腐効果の評価]
まず、菌液を調製した。菌液の作成手順として、まず寒天培地を屋外に3日程度放置した。その後、培地ごと7日間25℃湿度70%の環境で保存し菌を培養した。培養した寒天培地を寒天培地ごと1Lの純水に投入し、水中の寒天培地を薬さじで砕くように十分撹拌した。その後、砕かれた寒天培地を含む水を目開き20μmのメッシュで濾過し、得られたろ液を菌液とした。
【0039】
次に、スクリュー管瓶に光触媒コーティング剤9.8mlと菌液0.2mlを入れ混合した後、混合液を25℃湿度70%の環境で7日間放置した。
寒天培地の4箇所に放置した混合液を20μLずつ滴下し、寒天培地を25℃湿度70%の環境で3日間培養した。
培養後の寒天培地上にコロニーの発生が認められなかった光触媒コーティング剤の評価を「◎」とし、混合液を滴下した4箇所の内1~2ヶ所にコロニーの発生が認められた光触媒コーティング剤の評価を「○」とし、混合液を滴下した4箇所の内3ヶ所以上にコロニーの発生が認められた光触媒コーティング剤の評価を「×」とした。
このような長期防腐効果の評価を実施例1~7、比較例1~6の光触媒コーティング剤のそれぞれについて行った。
表3、4に評価結果をまとめて示す。
【0040】
【0041】
【0042】
実施例1~7の光触媒コーティング剤の評価は、分散性、初期光触媒性能、長期防腐効果のいずれでも優れていた。
比較例1~3、比較例5の光触媒コーティング剤の評価は、長期防腐効果で悪い結果となった。比較例1、2の光触媒コーティング剤では、銀イオンの含有量が少ないため、悪い結果となったと考えられる。比較例3、5の光触媒コーティング剤では、メチルパラベン又は安息香酸ナトリウムの含有量が少ないため、悪い結果となったと考えられる。
比較例4、6の光触媒コーティング剤の評価は、初期光触媒性能で悪い結果となった。これらの光触媒コーティング剤では、メチルパラベン又は安息香酸ナトリウムが光触媒活性を阻害している可能性がある。
【符号の説明】
【0043】
2:光触媒コーティング剤 3:噴霧器 4:ボトル 5:チューブ 6:逆止弁 7:バネ 8:チャンバー 9:噴霧ノズル 10:プランジャー 11:トリガー 20:スプレー製品