(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】自動車両に搭載された脱塩水を製造するための吸着冷凍システム、自動車両、および自動車両に搭載された脱塩水を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240417BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B01D53/04
F25B17/08 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020043660
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102019000003829
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520088694
【氏名又は名称】マレッリ・ユーロプ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARELLI EUROPE S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ・ブルニョーニ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・デ・チェーザレ
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-260285(JP,A)
【文献】特開昭64-058966(JP,A)
【文献】特開2009-109185(JP,A)
【文献】特開平04-292752(JP,A)
【文献】特開2001-213149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B1/00-30/06
B01D53/02-53/12
B01J20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着冷凍システム(4)であって、
-気体または水蒸気の流れを凝縮するのに適した凝縮器(8)と、
-気体または水蒸気の流れを生成するのに適した蒸発器(12)と、
-それぞれ吸着剤材料を含む第1および第2の吸着剤床(16、20)と、を備え、
-各吸着剤床(16、20)は、少なくとも1つの制御弁(32)を備えたパイプ(28)によって前記凝縮器(8)および/または前記蒸発器(12)に選択的に接続可能であり、
-各吸着剤床(16、20)は、供給弁(44)によって、加熱源(36)の供給回路および冷却源(40)の供給回路に選択的かつ交互に接続可能であり、
-前記凝縮器(8)は
、スロットル弁(56)を備えた
枝管(52)によって前記蒸発器(12)に直接かつ選択的に接続可能であり、
-前記
吸着冷凍システム(4)は、
空気入口枝管(64)に沿って配置された入口弁(60)を備え、前記入口弁(60)は、前記吸着冷凍システム(4)の外側の環境の空気と前記吸着剤床(16、20)との間を選択的に流体接続することを可能にし、これによって、前記吸着剤床(16、20)
で生じる吸着現象を通じて外気から水を捕捉し、吸着現象によって水を生成する、自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着冷凍システム(4)。
【請求項2】
前記
吸着冷凍システム(4)は、前記凝縮器(8)の下流に配置され、
前記凝縮器(8)で凝縮された
凝縮水を前記凝縮器(8)から
流出できるようにする
ブリード弁(72)を備える、請求項1に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項3】
前記
ブリード弁(72)は、前記
枝管(52)に沿って配置され、前記凝縮器(8)から前記蒸発器(12)に向かう凝
縮水の
流出を可能にす
る、請求項2に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着冷凍システム(4)。
【請求項4】
前記
ブリード弁(72)は三方弁であり、前記
枝管(52)に沿った液体の直接通過および前記
吸着冷凍システム
(4)外
への液体の
流出を選択的に可能にする、請求項3に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項5】
前記
ブリード弁(72)は、水収集タンク(76)に接続されている、請求項2、3または4に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項6】
前記制御弁(32)の少なくとも1つは、前記吸着剤床(16、20)からの気体または水蒸気の流れによって生成される圧力および/または減圧によって自動的に駆動される一方向弁である、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項7】
前記制御弁(32)の少なくとも1つは、作動手段によって選択的に作動されて、相対的な水蒸気または気体流の通過/抑制を確実にする弁である、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項8】
前記入口弁(60)は、前記蒸発器(12)から前記吸着剤床(16、20)に向かう気体または水蒸気の通過および前記吸着剤床(16、20)に向かう外気の通過を選択的に可能にす
る三方弁である、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項9】
前記空気入口
枝管(64)は、フィルタ(68)を備えている、請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項10】
前記吸着剤床(16、20)の前記吸着剤材料は、シリカゲルおよび/またはゼオライトを含む、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項11】
前記
吸着冷凍システム
(4)は、制御ユニット(80)を備え、
前記蒸発器(12)は、凝縮器としても機能し得る凝縮/蒸発装置であり、
前記制御ユニット(80)は、
以下の条件
-車両に搭乗している乗客による冷却要求の有無、
-外気温度および/または湿度、
に基づいて、前記蒸発器(12)で空気を凝縮する
か、および/または
、前記吸着剤床(16,20)で外気の
湿気を吸着する
かによって、脱塩水
を製造
するようにプログラムされている
、請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項12】
前記制御ユニット(80)は、乗客が客室の冷却を
要求する場合に、前記蒸発器(12)での凝
縮による水の生成を
、外気の湿気の吸着による水の生成よりも優先するように、
前記吸着冷凍システム
(4)を動作
させるようにプログラムされている、請求項11に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項13】
前記制御ユニット(80)は、客室の冷却の要求がない場合に、液体水の生成方法
として、前記蒸発器(12)での凝縮による水の生成および外気の湿気の吸着による水の生成のうち、より大きな水量が得られる方法を選択
するようにプログラムされている、請求項11ないし12のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項14】
前記制御ユニット(80)は、
外部温度が閾値を上回っているか下回っているかに応じて、それぞれ、前記蒸発器(12)で空気を凝縮することによって、および/または
、外気の
湿気を吸着することによって、脱塩水
を製
造するようにプログラムされている、請求項11ないし13のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項15】
前記
閾値は7℃~17℃の間である、請求項14に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項16】
前記制御ユニット(80)は、外部温度が
前記閾値より低い場合、2つの吸着剤床(16、20)が吸着と脱着
とを交互に
行うようにプログラムされて
おり、1つの吸着剤床(16、20)の固体マトリックス
を、飽和するまで吸着さ
せず、他の吸着剤床(16、20)が完全に脱着するのに必要な時間
だけ吸着させる、請求項14ないし15のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項17】
前記制御ユニット(80)は、外部温度が前記閾値より高い場合、および/または
、乗客が客室内の冷却を
要求する場合
、前記蒸発器(12)で凝
縮により水を生成することによって
前記吸着冷凍システム(4)が「閉回路」で動作するよう
にプログラムされている、請求項14ないし16のうちいずれか1項に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)。
【請求項18】
請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の脱塩水の製造のための吸着
冷凍システム(4)を備える
自動車両。
【請求項19】
自動車両に搭載された脱塩水を製造する方法であって、
請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の吸着
冷凍システム(4
)または請求項18に記載の自動車両を提供するステップと、
脱塩水を製造するステップと、を含み、
前記蒸発器(12)は、凝縮器としても機能し得る凝縮/蒸発装置であり、
脱塩水を製造するステップは、以下の条件
-車両に乗っている乗客による冷却要求の有無、
-外気温度および/または湿度、
に基づいて、
前記蒸発器(12)で空気を凝縮する
か、および/または
、前記吸着剤床(16,20)で外気の
湿気を吸着する
かによって、脱塩水
を製
造する
、方法。
【請求項20】
乗客が客室の冷却を
要求する場合、前記蒸発器(12)での凝縮
による水の生成を
、外気の湿気の吸着による水の生成よりも優先するように、
前記吸着冷凍システム
(4)を動作させることが
できるようになっている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
客室の冷却の要求がない場合、液体水の製造方法
として、
前記蒸発器(12)での凝縮による水の生成および外気の湿気の吸着による水の生成のうち、より大きな水量が得られる方法を選択する、請求項19ないし20のうちいずれか1項に記載の
方法。
【請求項22】
脱塩水の製造は、
外部温度が閾値を上回っているか下回っているかに応じて、それぞれ、前記蒸発器(12)で空気を凝縮することによって、および/または
、外気の
湿気を吸着することによって
行われる、請求項19ないし21のうちいずれか1項に記載の
方法。
【請求項23】
前記
閾値は7℃~17℃の間である、請求項22に記載の
方法。
【請求項24】
外部温度が
前記閾値よりも低い場合、
2つの吸着剤床(16、20)が吸着と脱着とを交互に行い、1つの吸着剤床(16、20)の固体マトリックス
を、飽和するまで吸着さ
せず、他の吸着剤床(20、16)が完全に脱着するのに必要な時間
だけ吸着させる、請求項22ないし23のうちいずれか1項に記載の
方法。
【請求項25】
外部温度が前記閾値より高い場合、および/または
、乗客が客室の冷却を
要求する場合、前記
吸着冷凍システム
(4)は、前記蒸発器(12)で凝縮
によって水を生成することにより「閉回路」で動作する、請求項22ないし24のうちいずれか1項に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両に搭載された脱塩水を製造するための吸着冷凍システム、前記システムを備える自動車両、およびその自動車両に搭載された脱塩水を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の内燃機関における性能を高め、燃料消費および排出を低減するように適合された水噴射システムの導入により、所与の頻度で脱塩水のタンクを満たす必要が生じてきた。
【0003】
水噴射技術は、内燃機関を備えた全ての用途にとって興味深いものとなり得る。通常、オットーサイクルエンジンでは、水は、直接または間接的に(吸気管を介して)燃焼室に噴射され、ノック傾向を緩和し、排気ガスの温度を抑制する。ディーゼルサイクルエンジンでは、水は、同じ方法で燃焼室に注入できるが、この場合、窒素酸化物の形成を減らすことを目的としている。さらに、この特定のタイプのエンジンでは、可変濃度のSCRシステムの存在下で、脱塩水を排気ガス処理システムに注入する必要がある場合がある。
【0004】
したがって、これらの用途は、全て、車両に搭載された所定量の脱塩水を必要とし、通常は、燃料タンクと同様に毎回補充する必要がある特殊なタンクに収容されている。
【0005】
しかしながら、脱塩水を供給する必要性は、ユーザが燃料に加えて脱塩水を充填する仕事を引き受けることを望まないことが多いので、今日までこの技術を魅力のないものにしている。
【0006】
明らかに、車両に搭載された脱塩水生成システムの利用可能性は、エンドユーザによる充填を減らすか、またはせいぜいなくすことを可能にし、したがって、水注入技術をより魅力的にするであろう。
【0007】
もちろん、このようなシステムまたはプラントは、エネルギ消費に大きな影響を与えず、車両の全体的なコストに大きな負担をかけないように、エネルギ効率が良くなければならない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、前述の技術的効果を達成するために、自動車両に搭載された脱塩水の生成のためのシステムおよびその自動車両に搭載された脱塩水の生成方法を利用可能にする必要性が当技術分野で感じられている。
【0009】
このような必要性は、請求項1に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造システム、および請求項19に記載の自動車両に搭載された脱塩水の製造方法によって満たされる。
【0010】
本発明の他の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明からより理解しやすくなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】一定圧力での空気と水の混合物の冷却後の凝縮による水の生成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る吸着冷却システムの概略図である。
【
図4】空気温度の関数としての異なる吸着剤材料の吸着能力の図である。
【
図5】いくつかの吸着剤材料の吸着速度を時間の関数として示し、したがって、吸着された水の量を時間の関数として示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明される実施形態に共通の要素または部品は、同じ参照番号を使用して示される。
【0014】
前述の図を参照すると、参照番号4は、自動車両全体に搭載された吸着冷凍システムを示している。
【0015】
車両という用語は、広い意味で理解されるべきであることに留意する価値がある。言い換えると、本発明は、あらゆるタイプの車両に容易に適用される。
【0016】
システム4は、ガスまたは水蒸気の流れを凝縮するように適合された凝縮器8と、ガスまたは水蒸気流を生成するように適合された蒸発器12と、それぞれが吸着剤材料を含む第1の吸着剤床16および第2の吸着剤床20を備える。
【0017】
凝縮器8、蒸発器12、および吸着剤床16、20のタイプおよび寸法は、本発明の目的を制限することなく、変えることができる。吸着剤床は、好ましくは、吸着剤材料としてシリカゲルおよび/またはゼオライトを含む。
【0018】
各吸着剤床16、20は、少なくとも1つの制御弁32が設けられたパイプまたは導管28によって、凝縮器8および/または蒸発器12に選択的に接続可能である。制御弁32は、アクティブおよびパッシブの両方の様々なタイプであり得る。
【0019】
特に、可能な実施形態によれば、前記制御弁32は、前記制御弁32が挿入されているパイプ28内の吸着剤床からのガスまたは水蒸気の流れによって生成される圧力および/または減圧によって自動的に作動する一方向弁である。このタイプのパッシブ弁には、特定のドライブおよび/またはアクチュエータを必要とせずに自動調整できるという利点がある。
【0020】
更なる可能な実施形態によれば、前記制御弁32は、作動手段(図示せず)によって選択的に操作されて、それぞれのパイプ内の水蒸気またはガスのそれぞれの流れの通過/抑制を確実にする弁である。したがって、この実施形態は、特定のシステム動作要求の場合に、常に弁の正しい動作を保証し、場合によっては、弁を強制する可能性を有するように、アクティブタイプの弁の使用を提供する。
【0021】
上述の制御弁32のタイプは、相互に代替的または除外的ではないことは注目に値する。言い換えれば、同じタイプの制御弁32を同じシステム4内で混合して使用することが可能である。
【0022】
制御弁の特定の動作は、以下でより詳細に説明される。
【0023】
本発明によれば、各吸着剤床16、20は、それぞれの供給弁44によって、加熱源36の供給回路および冷却源40の供給回路に選択的かつ交互に接続可能である。加熱源および冷却源は、典型的には、システム4が設置されている車両のエンジンからの流体、すなわち水または冷却剤である。ガス状の加熱または冷却流体、例えば、加熱用のエンジン排気ガスと冷却用の外気を使用することも可能である。加熱源36および冷却源40の供給回路は、通常、そのような加熱または冷却流体が液体または気体状態で流れるパイプ48を備える。
【0024】
凝縮器8は、それぞれのスロットル弁56が設けられた直接分岐52によって、蒸発器12に直接かつ選択的に接続可能である。前記スロットル弁56の目的は、前記蒸発器12内でのその後の完全な蒸発を促進するために、凝縮器8から来て蒸発器12に向けられる流体の圧力を積層し、それにより低減することである。
【0025】
有利には、前記システム4は、前記吸着剤床16、20によって実行される吸着現象によって外気から水を捕捉し、吸着現象によって水を生成するように、システム4の外部の環境の空気と前記吸着剤床16、20との間に流体接続を選択的に行うように適合された、空気入口分岐64に沿って配置された入口弁60を備える。
【0026】
一実施形態によれば、前記入口弁60は、蒸発器12から吸着剤床16、20に向かうガスまたは水蒸気の通過および吸着剤床16、20に向かう外気の通過を選択的に可能にすることができる三方弁である。
【0027】
好ましくは、前記空気入口分岐64は、フィルタ68を備える。
【0028】
一実施形態によれば、前記システム4は、凝縮水が前記凝縮器8から抽気されることを可能にするように、凝縮器8の下流に配置された抽気弁72を備える。
【0029】
例えば、前記抽気弁72は、前記直接分岐52に沿って配置され、凝縮器8から蒸発器12に来る凝縮水の抽気を可能にするように適合される。
【0030】
例えば、前記抽気弁72は、三方弁であり、直接分岐52に沿った液体の直接通過およびシステム4外の液体の排出を選択的に可能にする。
【0031】
一実施形態によれば、抽気弁72は、水収集タンク76に接続される。
【0032】
次に、本発明による、車両に搭載された脱塩水を生成するための吸着システムの動作について説明する。
【0033】
第一に、見られるように、本発明は、吸着サイクルに基づく空冷システムからなり、適切に修正される。
【0034】
「高」外気温の存在下で、圧縮サイクルに基づく通常のシステムのように機械的または電力をとるのではなく、冷気が生成されて客室を空調し、凝縮された脱塩水が外部湿度から生成され、エンジンの廃熱を利用する。外気温が高いということは、通常7℃~17℃の範囲、通常は、15℃を超える温度を意味することに留意されたい。
【0035】
外気温が低い場合、すなわち、車両のユーザが冷たい空気を必要としない場合、および空気中の水分量が制限されているために外気に含まれる湿度(絶対湿度)を凝縮することができない場合、蒸発器の動作温度を所定の値(通常は、5~7℃)未満に下げることは不可能である。「オープンサイクル」吸着システムは、吸着床16、20による吸着プロセスを通じて空気に含まれる水を捕捉するために使用される。
【0036】
運転プロセスは、通常の冷凍運転と実質的に同じままである。特に、
【0037】
2つの床のうちの1つ、例えば、第1の吸着床16は冷却され、その後、空気からの水の吸着が活性化され、圧力低下を引き起こし、それにより、制御弁32が凝縮器8に向かって閉じ、制御弁32が入口弁60に向かって開く。正しく操作された場合、外気が空気入口分岐64を通して導入されることを可能にする。
【0038】
第1の吸着床16は、飽和に達するまで外気から水を吸着し続ける。
【0039】
したがって、第1の吸着床16は加熱され、それにより、水の脱着を活性化し、その結果、制御弁32の閉鎖につながる圧力上昇が生じる。これは、入口弁60および空気入口分岐64を介してそれを外部環境に接続し、凝縮器8に供給する制御弁32の開口部に接続する。
【0040】
次に、第1の吸着剤床16を加熱することによって生成された蒸気は凝縮され、抽気弁72の開口部を通して水収集タンク76に送られる。
【0041】
基本的なメカニズムは不連続であるが、2つの吸着剤床16、20を使用することにより、水流生成の所与の連続性を保証することが可能であることに留意することができる。
【0042】
より具体的には、2つの吸着剤床のうちの1つ、例えば、第2の吸着床16は、80℃を超える熱源で加熱される。自動車両への適用の場合、そのような熱源は容易に入手可能であり、例えば、エンジン冷却水および/または排気ガスから回収される熱である。このようにして、熱、したがって、熱エネルギは、他の方法では浪費されるが、回収され、システムが全体的に熱効率を改善し、それが搭載されている車両のエンジンを改善することに留意されたい。
【0043】
加熱中、以前に吸着床によって吸着された水は、水蒸気の形で放出され、その圧力は、蒸発器12に接続された制御弁32を閉じ、凝縮器8に接続された制御弁32を開くことによって増加する。次に、高圧蒸気流によって供給される。蒸気の冷却は、凝縮器8で起こり、冷却供給回路40は、低温(好ましくは、50℃未満)であり、外気または低温の冷却液からなり、蒸気の凝縮を引き起こす。
【0044】
次に、凝縮水は、圧力を低下させるスロットル弁56を通って蒸発器12に到達する。蒸発器12では、スロットル弁56が液体水の圧力を所定の値よりも低くすると、液体水は、その潜在的な気化熱に等しい量の熱を外部環境から除去することによって蒸気状態になる。
【0045】
一方、第1の吸着剤床16は、水の吸着、したがって、圧力の低下を活性化するために、低温(好ましくは、50℃未満)で前記冷却供給回路40によって冷却される。これにより、制御弁32が凝縮器8に向かって閉じ、蒸発器12に接続されている制御弁が開く。
【0046】
このようにして、蒸発器12で生成された蒸気は、第1の吸着剤床16に吸着される。第1の吸着剤床16が完全に脱着され、したがって、吸着剤床20が水で飽和すると、供給弁44によって、2つの吸着剤床16、20の動作が逆転され、したがって、以前に冷却されたものを加熱し、逆もまた同様に、以前に加熱されたものを冷却する。このようにして、実質的に連続した冷凍能力を保証することが可能である。
【0047】
吸着床16、20の機能は、加熱から冷却へ、吸着から脱着へと連続的に交換されることは注目に値する。したがって、説明および図に示されている第1の吸着床と第2の吸着床との間の区別は、単なる例示であり、限定的な意味で考慮されるべきではない
【0048】
システム弁および吸着剤床の動作を説明した後、システム自体の制御/動作ロジックを説明することは有用である。特に、そのような動作ロジックは、以下に説明される全ての制御を実行するようにプログラムされた少なくとも1つの処理制御ユニット80によって実施される。
【0049】
内燃機関の性能に対する実質的にゼロの影響と、エンジン自体の潜在的な高負荷動作をサポートするための水の一貫した利用可能性を保証する必要性を考えると、水貯蔵タンク76が満杯でない場合、水生成システムを常にアクティブに保つことは便利である。
【0050】
別のものではなく1つの生成メカニズムの選択、すなわち、蒸発器での冷凍サイクルによる凝縮による生成および吸着/脱着による生成は、主に2つの要因によって決定される。
【0051】
-車両に乗っている乗客による冷却要求の可能性、
【0052】
-外気温。
【0053】
実際、乗客が客室の冷却を必要とする場合、水の生成に関する効率に関係なく、冷凍機の動作が強制され、その後、蒸発器12での凝縮によって水が生成される。
【0054】
逆に、乗客が客室の冷却を必要としない場合、液体水生成の2つのモードのうちの1つ、すなわち、より高い流量を保証するモードが選択される。
【0055】
両方のモードについて、水の生成効率は、主に環境条件(特に、圧力、温度および相対湿度)および機械のタイプ(吸着材料のタイプ、吸着床の加熱および冷却流体の温度等)に依存する。
【0056】
気圧センサ、温度センサおよび湿度センサは、実際には全ての車両にすでに存在するため、周囲条件を決定するために追加のセンサは必要とされない。さらに、温度および湿度センサは、通常、自動空調システムが装備されている車両の客室内にも取り付けられているため、再循環された空気中の水分量も考慮できる。これらのセンサにより、システムの制御を最適化し、障害や故障を診断できる。
【0057】
特に、外気温に応じて、ある動作モードから別の動作モードに切り替えることが可能である。これが所定の閾値(通常は、7~17℃、例えば、15℃)を超える場合、システムは、冷凍機として動作し、凝縮水は蒸発器12の近くに集められる。必要に応じて、客室内の空気を暖めた後、乗員の快適性を確保する。これは、一方で、固体マトリックスの吸着能力が温度の上昇とともに減少するためである(
図4を参照)。他方で、空気と蒸発器12の表面との間のより高い温度勾配は、水を空気から凝縮させるより高い能力をもたらす。生成される水の流量は、外部の再循環された空気混合物の圧力、温度、および相対湿度に依存する。
【0058】
一方、外気温がそのような閾値または閾値範囲よりも低い場合、システムは、入口弁60を開き、制御弁32および供給弁44を調整することによって「開回路」で動作するようにされる。
【0059】
この場合も、2つの吸着剤床16、20は、吸着および脱着において交互に機能する。生成水の流量を最大化するために、吸着床16、20の固体マトリックスは、飽和するまで吸着されず、他の床20、16が完全に脱着するのに必要な時間のみが吸着される。これは、トラップされた水が増えると吸着率が低下するためである(
図5を参照)。
【0060】
温度が上記の閾値を超えるとき、または乗客が客室の冷却を必要とするとき、システムは、入口弁60を閉じ、抽気弁72を閉じ、制御弁32および供給弁44を動かすことにより、「閉回路」動作に戻る。
【0061】
冷凍機としてのシステムの動作を保証するために、所与の量の水が回路内に存在することが不可欠である。このような量を制御するために、入口弁60および抽気弁72を別々に操作して、入口弁を開いたままにし、出口弁を閉じたままにすることによって、水の量を補充するか、または入口弁を閉じたままにし、出口弁を開いたままにすることによって、水の量を減らし、オペレータの流体の量を減らすことが可能である。これらの要求は、性能の低下が検出された場合に、冷凍機の制御システムによって要求される場合がある。
【0062】
作業中にオペレータを必要とせずに、動作中にオペレータ流体の量を制御する可能性は、冷凍機としての単純な動作に関しても、本発明によってもたらされるさらなる利点である。
【0063】
上記の説明から理解できるように、本発明は、従来技術で提示された欠点を克服することを可能にする。
【0064】
特に、本発明は、高い屋外温度および低い屋外温度の両方で、完全に自律的な方法で車両に搭載された脱塩水の生成を可能にする。
【0065】
このような水は、エンジンのタイプに応じて、汚染物質の排出および/または動作温度を低減するために、内燃機関の燃焼室への噴射に使用することができる。
【0066】
本発明は、吸着空調システムと比較して特別な構成要素の追加を必要としないので、既知の吸着システムと比較して大幅なコストの増加を意味しない。
【0067】
有利なことに、本発明に係るシステムは、圧縮機を使用せずに、したがって、内燃機関から直接機械的エネルギを取ることなく、客室の空調と脱塩水の生成を有利に実施することができる。特に、脱塩水の生成は、他の方法では失われる燃焼機関の熱出力を使用して行われる。このようにして、燃焼機関からの熱エネルギ損失が制限されるか、または少なくとも部分的に回復され、燃焼機関の全体的な効率が向上する。
【0068】
さらに、見られるように、吸着冷凍機は、低温環境から熱を取り除き、それを、従来の圧縮システムにおけるような機械的仕事の代わりに熱を消費するより高温の温度に移すことを可能にする。
【0069】
この技術は、吸収技術と同様に、機械的動力を生成することができる車(すなわち、車両牽引エンジン)の廃熱から、加熱または冷凍動力が生成される三世代システムを作成することを可能にする。これらのシステムは、通常は、発電に機械的動力が使用され、部屋の空調に暖房/冷房熱が使用される定置型用途と、機械的動力が通常直接または直列ハイブリッド車両の場合は間接的に牽引に使用され、熱動力が客室の空調に使用される自動車用途の両方に効果的である。
【0070】
吸収システムと比較して、吸着システムは、よりコンパクトである、循環ポンプを必要としない(それぞれのエネルギ消費を伴う)、危険な水/臭化リチウムを含有する必要がない、または水/アンモニア液体溶液、とりわけ、車両のシャーシに取り付けられた部品が受ける可能性のある強い振動を受けないという利点を有することは注目に値する。
【0071】
吸着は、特定の固体の表面上の気体または液体の分子の蓄積からなり、化学的物理的相互作用(ワンデルワールス結合または分子間化学結合)を確立する。
【0072】
このような吸着システムは、非常に信頼性が高く、管理および維持が容易である。
【0073】
このように生成された脱塩水は、燃焼室への注入以外の用途にも使用することができる。例えば、エンジン自体の冷却システム、フロントガラスのタンクおよび/またはヘッドライトウォッシャなどを補充するために使用できる。
【0074】
当業者は、上記の吸着システムにいくつかの変更および変形を行うことができ、付随する特定のニーズを満たすために、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に全て入る。