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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20240417BHJP
【FI】
G03B9/36 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020047515
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148899
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151587(JP,A)
【文献】特開2000-002907(JP,A)
【文献】特開2018-155929(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168834(WO,A1)
【文献】特開平11-202381(JP,A)
【文献】特開2018-205393(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244838(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根駆動装置であって、
開口が形成された地板と、
前記開口を開閉するように移動可能な少なくとも1枚の羽根と、
前記少なくとも1枚の羽根に連結された少なくとも1つのアームと、
前記少なくとも1つのアームに取り付けられる第1のスリーブであって、第1の軸を回転可能に支持する第1のスリーブと、
当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能な第1のシリコン系液体粘着剤と
を備え、
前記第1のシリコン系液体粘着剤は、前記第1のシリコン系液体粘着剤と前記第1の軸の外周面又は前記第1のスリーブの内周面との間及び、前記第1のスリーブの前記内周面と前記第1の軸の前記外周面との間に空間ができるように、前記第1のスリーブの前記内周面又は前記第1の軸の前記外周面に形成された少なくとも1つの第1の凹部の内部に充填される、羽根駆動装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の凹部は、前記第1の軸が延びる方向に沿って配置される複数の第1の凹部を含む、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1のシリコン系液体粘着剤は、フッ素を含有する、請求項1又は2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアームに取り付けられる第2のスリーブであって、第2の軸を回転可能に支持する第2のスリーブと、
当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能な第2のシリコン系液体粘着剤と
をさらに備え、
前記第2のシリコン系液体粘着剤は、前記第2のシリコン系液体粘着剤と前記第2の軸の外周面又は前記第2のスリーブの内周面との間及び、前記第2のスリーブの前記内周面と前記第2の軸の前記外周面との間に空間ができるように、前記第2のスリーブの前記内周面又は前記第2の軸の前記外周面に形成された少なくとも1つの第2の凹部の内部に充填される、請求項1から3のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の凹部は、前記第2の軸が延びる方向に沿って配置される複数の第2の凹部を含む、請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記第2のシリコン系液体粘着剤は、フッ素を含有する、請求項4又は5に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
羽根駆動装置であって、
開口が形成された地板と、
前記開口を開閉するように移動可能な少なくとも1枚の羽根と、
前記少なくとも1枚の羽根に連結された少なくとも1つのアームと、
前記少なくとも1つのアームに取り付けられる第1のスリーブであって、第1の軸を回転可能に支持する第1のスリーブと
を備え、
前記第1のスリーブの少なくとも一部は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能なプラスチックマグネット材料から形成される、
羽根駆動装置。
【請求項8】
前記第1のスリーブは、
前記第1の軸を回転可能に支持する金属製の第1の軸受部と、
前記第1の軸受部の半径方向外側に形成され、前記プラスチックマグネット材料から形成される第1のスリーブカラーと
を含む、
請求項7に記載の羽根駆動装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアームに取り付けられる第2のスリーブであって、第2の軸を回転可能に支持する第2のスリーブをさらに備え、
前記第2のスリーブの少なくとも一部は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能なプラスチックマグネット材料から形成される、
請求項7又は8に記載の羽根駆動装置。
【請求項10】
前記第2のスリーブは、
前記第2の軸を回転可能に支持する金属製の第2の軸受部と、
前記第2の軸受部の半径方向外側に形成され、前記プラスチックマグネット材料からなる第2のスリーブカラーと
を含む、
請求項9に記載の羽根駆動装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアームに連結されるアーム駆動軸を有し、駆動軸を中心として前記アーム駆動軸を回転移動させることができる駆動レバーをさらに備え、
前記第1の軸は、前記駆動レバーの前記アーム駆動軸である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項12】
駆動軸を中心として回転可能な駆動レバーと、
前記駆動軸と同軸に前記地板に形成されたアーム支軸と
をさらに備え、
前記第1の軸は、前記アーム支軸である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置の前記地板の前記開口を透過した光が結像する面に配置された撮像素子と
を備えた、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置に係り、特にデジタルカメラなどのシャッタ羽根を駆動するための羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどにおいては、シャッタ羽根を高速で移動させることによって露光開口を開閉し、撮像素子に対する露光を行っている。このようなシャッタ羽根を駆動する羽根駆動装置では、シャッタ羽根に取り付けられたアームや羽根と地板との摩擦などにより装置内に摩耗粉が発生することがある。また、装置内の他の部品からも粉塵が発生することがある。このような摩耗粉や粉塵がカメラの撮像素子に付着すると、撮像素子によって取得できる画像の品質が低下するため、発生した摩耗粉や粉塵が撮像素子に付着することを抑制するための様々な機構が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、デジタルカメラの撮像素子の画素数の増加に伴って、上記のような摩耗粉や粉塵が画像の品質に与える影響も大きくなってきている。また、シャッタスピードが速くなればなるほど、部材間の摩耗の程度も大きくなるため、より摩耗粉が生じやすくなってきている。このため、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が拡散することを効果的に抑制できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-66584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が拡散することを効果的に抑制できる羽根駆動装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が拡散することを効果的に抑制できる羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、上記開口を開閉するように移動可能な少なくとも1枚の羽根と、上記少なくとも1枚の羽根に連結された少なくとも1つのアームと、上記少なくとも1つのアームに取り付けられる第1のスリーブとを備える。上記第1のスリーブは、第1の軸を回転可能に支持する。上記羽根駆動装置は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能な第1のシリコン系液体粘着剤を備える。前記第1のシリコン系液体粘着剤は、上記第1のシリコン系液体粘着剤と上記第1の軸の外周面又は上記第1のスリーブの内周面との間及び、上記第1のスリーブの上記内周面と上記第1の軸の上記外周面との間に空間ができるように、前記第1のスリーブの上記内周面又は前記第1の軸の上記外周面に形成された少なくとも1つの第1の凹部の内部に充填される。上記第1のシリコン系液体粘着剤はフッ素を含有していてもよい。
【0007】
このような構成によれば、アームや羽根と地板との摩擦などによって生じる摩耗粉や他の部材から生じる粉塵が粘性の高い第1のシリコン系液体粘着剤に吸着及び捕捉されるため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散が抑制される。
【0008】
第1の軸の製作を容易にするために、上記少なくとも1つの第1の凹部は単一の凹部であってもよいが、第1の軸が細い場合などには、第1の軸の強度の低下を抑制するために、上記第1の軸が延びる方向に沿って複数の第1の凹部を配置してもよい。
【0009】
上記羽根駆動装置は、上記少なくとも1つのアームに取り付けられる第2のスリーブを備えていてもよい。上記第2のスリーブは、第2の軸を回転可能に支持する。上記羽根駆動装置は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能な第2のシリコン系液体粘着剤を備えていてもよい。前記第2のシリコン系液体粘着剤は、上記第2のシリコン系液体粘着剤と上記第2の軸の外周面又は上記第2のスリーブの内周面との間及び、上記第2のスリーブの上記内周面と上記第2の軸の上記外周面との間に空間ができるように、上記第2のスリーブの上記内周面又は上記第2の軸の上記外周面に形成された少なくとも1つの第2の凹部の内部に充填されてもよい。上記第2のシリコン系液体粘着剤はフッ素を含有していてもよい。この場合には、装置内で生じる摩耗粉や粉塵が粘性の高い第2のシリコン系液体粘着剤にも吸着及び捕捉されるため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散がより効果的に抑制される。
【0010】
第2の軸の製作を容易にするために、上記少なくとも1つの第2の凹部は単一の凹部であってもよいが、第2の軸が細い場合などには、第2の軸の強度の低下を抑制するために、上記第2の軸が延びる方向に沿って複数の第2の凹部を配置してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が拡散することを効果的に抑制できる羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、開口が形成された地板と、上記開口を開閉するように移動可能な少なくとも1枚の羽根と、上記少なくとも1枚の羽根に連結された少なくとも1つのアームと、上記少なくとも1つのアームに取り付けられる第1のスリーブとを備える。上記第1のスリーブは、第1の軸を回転可能に支持する。上記第1のスリーブの少なくとも一部は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能なプラスチックマグネット材料から形成される。
【0012】
このような構成によれば、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が金属を含む場合に、これらの摩耗粉や粉塵が磁力により第1のスリーブ中のプラスチックマグネット材料から形成される部分に吸着及び捕捉される。このため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散が抑制される。
【0013】
上記第1のスリーブは、上記第1の軸を回転可能に支持する金属製の第1の軸受部と、上記第1の軸受部の半径方向外側に形成され、上記プラスチックマグネット材料から形成される第1のスリーブカラーとを含んでいてもよい。
【0014】
上記羽根駆動装置は、上記少なくとも1つのアームに取り付けられる第2のスリーブを備えていてもよい。上記第2のスリーブは、第2の軸を回転可能に支持する。上記第2のスリーブの少なくとも一部は、当該羽根駆動装置内の摩耗粉及び粉塵を吸着可能なプラスチックマグネット材料から形成されていてもよい。この場合には、装置内で生じた金属を含む摩耗粉や粉塵が磁力により第2のスリーブ中のプラスチックマグネット材料から形成される部分に吸着及び捕捉される。このため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散が抑制される。
【0015】
上記第2のスリーブは、上記第2の軸を回転可能に支持する金属製の第2の軸受部と、上記第2の軸受部の半径方向外側に形成され、上記プラスチックマグネット材料からなる第2のスリーブカラーとを含んでいてもよい。
【0016】
上記羽根駆動装置は、上記少なくとも1つのアームに連結されるアーム駆動軸を有し、駆動軸を中心として上記アーム駆動軸を回転移動させることができる駆動レバーをさらに備えていてもよい。この場合において、上記第1の軸は、上記駆動レバーの上記アーム駆動軸であってもよい。
【0017】
上記羽根駆動装置は、駆動軸を中心として回転可能な駆動レバーと、上記駆動軸と同軸に上記地板に形成されたアーム支軸とをさらに備えていてもよい。この場合において、上記第1の軸は、上記アーム支軸であってもよい。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、簡易かつコンパクトな構成により羽根の動作速度を微調整することができる撮像装置が提供される。この撮像装置は、上述した羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板の上記開口を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える。このような構成によれば、上述のようにアームや羽根と地板との摩擦などによって生じる摩耗粉や他の部材から生じる粉塵が羽根駆動装置内で拡散することが抑制されるため、これらの摩耗粉や粉塵がカメラ内の撮像素子に付着することが抑制される。したがって、撮像装置により撮影される画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、装置内で生じた摩耗粉や粉塵が拡散することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す羽根駆動装置の一部の構成要素を示す分解斜視図である。
図3図3は、図1に示す羽根駆動装置の一部の構成要素を示す分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す羽根駆動装置における先羽根駆動レバー、先羽根ラチェット部材、後羽根駆動レバー、後羽根ラチェット部材、及びカム部材の露光動作の完了時における位置関係を示す模式図である。
図5図5は、図1に示す羽根駆動装置における先羽根駆動レバーのアーム駆動軸と先羽根アームとの連結部分を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図5に示す構成の一変形例を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図5に示す構成の他の変形例を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図7に示す構成をアーム支軸と先羽根アームとの連結部分に適用した例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る羽根駆動装置の実施形態について図1から図8を参照して詳細に説明する。図1から図8において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図8においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1を示す斜視図、図2及び図3は、羽根駆動装置1の一部の構成要素を示す分解斜視図である。本実施形態における羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に組み込まれるフォーカルプレーンシャッタであるものとして説明するが、これは例示に過ぎず、本発明に係る羽根駆動装置はこのようなシャッタの用途に限られるものではない。図1から図3は、カメラによる露光動作が完了したときの状態を示している。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+Z方向を「前」又は「前方」といい、-Z方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0023】
図1から図3に示すように、本実施形態における羽根駆動装置1は、矩形状の開口(露光開口)Sが形成された地板10と、地板10の開口Sと略同一の形状の開口Uが形成されたカバー板20と、地板10とカバー板20との間に形成される空間に収容される8枚の羽根21~28とを含んでいる。この羽根駆動装置1は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子(図示せず)を備えた撮像装置に組み込まれるものである。被写体からの光は、地板10の開口S及びカバー板20の開口Uを通過して、羽根駆動装置1の後方に配置された撮像素子に入射するようになっている。
【0024】
羽根21~28のそれぞれは、全体としてX方向に延びる薄板状の部材であり、本実施形態では8枚の羽根21~28が順番に重ねられている。本実施形態においては、8枚の羽根21~28のうち、羽根21~24がフォーカルプレーンシャッタの先幕を構成する先羽根であり、羽根25~28が後幕を構成する後羽根となっている。羽根駆動装置1は、先羽根21~24に連結される先羽根アーム31,32と、後羽根25~28に連結される後羽根アーム33,34とを含んでいる。
【0025】
図2に示すように、先羽根21は連結部101,102においてそれぞれ先羽根アーム31,32と連結され、先羽根22は連結部103,104においてそれぞれ先羽根アーム31,32と連結され、先羽根23は連結部105,106においてそれぞれ先羽根アーム31,32と連結され、先羽根24は連結部107,108においてそれぞれ先羽根アーム31,32と連結されている。このように、それぞれの先羽根21~24と先羽根アーム31,32とによってリンク機構が構成されている。なお、地板10とカバー板20との間には図示しない中間板が配置されており、先羽根21~24は、この中間板と地板10との間に形成される空間内に収容される。
【0026】
また、図2に示すように、後羽根25は連結部111,112においてそれぞれ後羽根アーム33,34と連結され、後羽根26は連結部113,114においてそれぞれ後羽根アーム33,34と連結され、後羽根27は連結部115,116においてそれぞれ後羽根アーム33,34と連結され、後羽根28は連結部117,118においてそれぞれ後羽根アーム33,34と連結されている。このように、それぞれの後羽根25~28と後羽根アーム33,34とによってリンク機構が構成されている。なお、後羽根25~28は、中間板とカバー板20との間に形成される空間内に収容される。
【0027】
図2に示すように、地板10の-Z方向側には、-Z方向に延びるアーム支軸41~44が形成されている。また、地板10には、アーム支軸41を中心とする円弧に沿った円弧孔14と、アーム支軸42を中心とする円弧に沿った円弧孔15とが形成されている。この円弧孔14の+Y方向側の端部には衝撃吸収用のダンパ17が設けられており、円弧孔15の+Y方向側の端部には衝撃吸収用のダンパ18が設けられている。
【0028】
先羽根アーム31の端部近傍には、地板10のアーム支軸41が挿通される軸孔312が設けられており、この軸孔312には円環状のスリーブ91(第1のスリーブ又は第2のスリーブ)が装着されている。このスリーブ91の半径方向内側にはアーム支軸41が挿通され、スリーブ91がアーム支軸41を回転可能に支持するようになっている。これにより、先羽根アーム31が地板10のアーム支軸41を中心として回転できるようになっている。また、先羽根アーム31の軸孔312から少し離れた位置にはレバー連結孔314が形成されている。また、先羽根アーム32の端部近傍には、地板10のアーム支軸43が挿通される軸孔322が形成されており、この先羽根アーム32の軸孔322にアーム支軸43が挿通されることで、先羽根アーム32が地板10のアーム支軸43を中心として回転できるようになっている。
【0029】
先羽根21~24は、-Z方向に順番に重なった状態で先羽根アーム31,32に連結されている。したがって、先羽根アーム31がアーム支軸41を中心として回転し、先羽根アーム32がアーム支軸43を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、先羽根21~24が互いに重なる領域を変化させつつ、主としてY方向に移動するようになっている。
【0030】
また、後羽根アーム33の端部近傍には、地板10のアーム支軸44が挿通される軸孔332が形成されている。この後羽根アーム33の軸孔332にアーム支軸44が挿通されることで、後羽根アーム33が地板10のアーム支軸44を中心として回転できるようになっている。また、後羽根アーム34の端部近傍には、地板10のアーム支軸42が挿通される軸孔342が設けられており、この軸孔342には円環状のスリーブ92(第1のスリーブ又は第2のスリーブ)が装着されている。このスリーブ92の半径方向内側にはアーム支軸42が挿通され、スリーブ92がアーム支軸42を回転可能に支持するようになっている。これにより、後羽根アーム34が地板10のアーム支軸42を中心として回転できるようになっている。また、後羽根アーム34の軸孔342から少し離れた位置にはレバー連結孔344が形成されている。
【0031】
後羽根25~28は、-Z方向に順番に重なった状態で後羽根アーム33,34に連結されている。したがって、後羽根アーム33がアーム支軸44を中心として回転し、後羽根アーム34がアーム支軸42を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、後羽根25~28が互いに重なる領域を変化させつつ、主としてY方向に移動するようになっている。
【0032】
図3に示すように、地板10の+Z方向側には、+Z方向に延びる先羽根駆動軸11、後羽根駆動軸12、及びカム軸13が形成されている。先羽根駆動軸11は上述したアーム支軸41と同軸上に位置しており、本実施形態では、先羽根駆動軸11とアーム支軸41とは金属製のロッドによって一体的に形成されている。また、後羽根駆動軸12は上述したアーム支軸42と同軸上に位置しており、本実施形態では、後羽根駆動軸12とアーム支軸42とは金属製のロッドによって一体的に形成されている。
【0033】
図1及び図3に示すように、羽根駆動装置1の地板10の+Z方向側には支持板80が取り付けられている。この支持板80は、地板10の表面10Aと略平行に延びる板部88を有しており、この板部88には、先羽根駆動軸11、後羽根駆動軸12、及びカム軸13に対応して軸孔81,82,83が形成されている。地板10から延びる先羽根駆動軸11、後羽根駆動軸12、及びカム軸13は、支持板80の軸孔81,82,83に保持される。
【0034】
支持板80の板部88と地板10の表面10Aとの間の空間には、地板10の先羽根駆動軸11に取り付けられる先羽根駆動レバー51と、先羽根駆動レバー51に装着される先羽根駆動バネ52と、先羽根駆動レバー51に装着される先羽根ラチェット部材53と、地板10の後羽根駆動軸12に取り付けられる後羽根駆動レバー61と、後羽根駆動レバー61に装着される後羽根駆動バネ62と、後羽根駆動レバー61に装着される後羽根ラチェット部材63と、地板10のカム軸13に取り付けられるカム部材71と、カム部材71に装着されるカムバネ72とが収容されている。
【0035】
図3に示すように、支持板80は、先羽根駆動レバー51を所定位置に保持する先羽根電磁マグネットを保持する保持片86と、後羽根駆動レバー61を所定位置に保持する後羽根電磁マグネットを保持する保持片87とを有している。図2及び図3においては、理解を容易にするために、先羽根電磁マグネット及び後羽根電磁マグネットの図示を省略している。
【0036】
図4は、上述した先羽根駆動レバー51、先羽根ラチェット部材53、後羽根駆動レバー61、後羽根ラチェット部材63、及びカム部材71の露光動作の完了時における位置関係を示す模式図である。図4においても先羽根電磁マグネット及び後羽根電磁マグネットの図示は省略しているが、先羽根電磁マグネットの鉄心5A及び後羽根電磁マグネットの鉄心5Bをそれぞれ点線で示している。
【0037】
図3に示すように、先羽根駆動レバー51は、地板10から延びる先羽根駆動軸11が挿通される軸部511と、軸部511から半径方向外側に延びる腕部512と、腕部512の半径方向外側の端部から-Z方向に延び、上述した先羽根アーム31に連結される先羽根アーム駆動軸513とを有している。先羽根駆動レバー51の軸部511に地板10の先羽根駆動軸11が挿通されることで、先羽根駆動レバー51が先羽根駆動軸11を中心として回転できるようになっている。
【0038】
先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513は、地板10の円弧孔14を通って地板10の-Z方向に突出するように配置される。したがって、先羽根駆動レバー51が先羽根駆動軸11を中心として回転すると、先羽根アーム駆動軸513が円弧孔14内を移動するようになっている。
【0039】
図3に示すように、地板10の円弧孔14を通って地板10の-Z方向側に突出する先羽根アーム駆動軸513の先端には円環状のスリーブ93(第2のスリーブ又は第1のスリーブ)が取り付けられており、このスリーブ93は、先羽根アーム31のレバー連結孔314(図2)に隙間なく嵌合している。スリーブ93は、先羽根アーム駆動軸513の先端を回転可能に支持している。上述したように、地板10のアーム支軸41は先羽根駆動軸11と同軸上に位置しているため、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513が先羽根駆動軸11を中心として回転すると、先羽根アーム31はアーム支軸41を中心として回転する。これにより、上述したリンク機構を介して、先羽根アーム32がアーム支軸43を中心として回転し、先羽根21~24が互いに重なる領域を変化させつつ主としてY方向に移動する。
【0040】
本実施形態においては、先羽根駆動バネ52はねじりコイルバネで構成されており、先羽根駆動バネ52のコイル部521は、先羽根駆動レバー51の軸部511の周囲に配置される。先羽根駆動バネ52の一端部522は、先羽根駆動レバー51のバネ係合部514(図3参照)に係合しており、他端部523は、後述するように先羽根ラチェット部材53に係合している。
【0041】
また、先羽根駆動レバー51は、金属片515と、この金属片515を収容する凹部が形成された収容部516とを有している。金属片515は、図示しないバネにより付勢された状態で収容部516内に収容されており、先羽根電磁マグネットの磁力により鉄心5A(図4)に吸着されるようになっている。
【0042】
先羽根ラチェット部材53の中心には、地板10の先羽根駆動軸11が挿通される軸孔531が形成されており、先羽根ラチェット部材53は地板10の先羽根駆動軸11に回転可能に取り付けられている。図3に示すように、先羽根ラチェット部材53は、外周部に形成された2段のラチェット歯532A,532Bを有している。ラチェット歯532Aは先羽根ラチェット部材53の回転軸を中心として等角度間隔Q(等ピッチ)で並んでおり、ラチェット歯532Bは先羽根ラチェット部材53の回転軸を中心としてラチェット歯532Aと同一の角度間隔Qで並んでいる。これらのラチェット歯532Aとラチェット歯532Bとは周方向に半ピッチ(Q/2)ずれるように配置されている。これらのラチェット歯532A,532Bの歯面は方向性を持つように傾斜している。
【0043】
図3に示すように、先羽根ラチェット部材53に対応して、支持板80には弾性変形可能な爪部84が形成されている。この爪部84は、先羽根ラチェット部材53のラチェット歯532A,532Bに係合するようになっている。このような構成により、図4における反時計回りの回転に対しては、爪部84がラチェット歯532A,532Bの表面を摺動して先羽根ラチェット部材53が回転するが、時計回りの回転に対しては、爪部84がラチェット歯532A,532Bに引っ掛かって先羽根ラチェット部材53が回転しないようになっている。
【0044】
ここで、先羽根ラチェット部材53の-Z方向側には凹部(図示せず)が形成されており、この凹部には先羽根駆動バネ52の+Z方向側の部分が収容されるようになっている。そして、先羽根ラチェット部材53には、この凹部に連通する切欠きが形成されており、この切欠きに先羽根駆動バネ52の端部523が係合している。
【0045】
先羽根駆動バネ52は、先羽根ラチェット部材53の切欠きと先羽根駆動レバー51のバネ係合部514との間で、図4において先羽根駆動軸11を中心として先羽根駆動レバー51を反時計回りに付勢するようにねじられた状態で配置されている。先羽根ラチェット部材53を反時計回りに回転させると、先羽根駆動バネ52のねじり角度がより大きくなるため、先羽根駆動バネ52の付勢力が増加する。本実施形態における先羽根ラチェット部材53は、ラチェット歯532A,532Bが半ピッチ(Q/2)ずれた状態で構成されているため、先羽根ラチェット部材53を半ピッチに相当する回転角度ずつ回転させることが可能である。したがって、半ピッチに相当する回転角度ずつ先羽根駆動バネ52のねじり角度を調整することが可能となり、先羽根駆動バネ52の付勢力を段階的に調整することができる。
【0046】
図3に示すように、後羽根駆動レバー61は、地板10の後羽根駆動軸12が挿通される軸部611と、軸部611から半径方向外側に延びる腕部612と、腕部612の半径方向外側の端部から-Z方向に延び、上述した後羽根アーム34に連結される後羽根アーム駆動軸613とを有している。後羽根駆動レバー61の軸部611に地板10の後羽根駆動軸12が挿通されることで、後羽根駆動レバー61が地板10の後羽根駆動軸12を中心として回転できるようになっている。
【0047】
後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613は、地板10の円弧孔15を通って地板10の-Z方向に突出するように配置される。したがって、後羽根駆動レバー61が後羽根駆動軸12を中心として回転すると、後羽根アーム駆動軸613が円弧孔15内を移動するようになっている。
【0048】
図3に示すように、地板10の円弧孔15を通って地板10の-Z方向側に突出する後羽根アーム駆動軸613の先端には円環状のスリーブ94(第2のスリーブ又は第1のスリーブ)が取り付けられており、このスリーブ94は、後羽根アーム34のレバー連結孔344(図2)に隙間なく嵌合している。スリーブ94は、後羽根アーム駆動軸613の先端を回転可能に支持している。上述したように、地板10のアーム支軸42は後羽根駆動軸12と同軸上に位置しているため、後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613が後羽根駆動軸12を中心として回転すると、後羽根アーム34はアーム支軸42を中心として回転する。これにより、上述したリンク機構を介して、後羽根アーム34がアーム支軸42を中心として回転し、後羽根25~28が互いに重なる領域を変化させつつ主としてY方向に移動する。
【0049】
本実施形態においては、後羽根駆動バネ62はねじりコイルバネで構成されており、後羽根駆動バネ62のコイル部621は、後羽根駆動レバー61の軸部611の周囲に配置される。後羽根駆動バネ62の一端部622は、後羽根駆動レバー61のバネ係合部614(図4)に係合しており、他端部623は、後述するように後羽根ラチェット部材63に係合している。
【0050】
また、後羽根駆動レバー61は、金属片615と、この金属片615を収容する凹部が形成された収容部616とを有している。金属片615は、図示しないバネにより付勢された状態で収容部616内に収容されており、後羽根電磁マグネットの磁力により鉄心5B(図4)に吸着されるようになっている。
【0051】
後羽根ラチェット部材63の中心には、地板10の後羽根駆動軸12が挿通される軸孔631が形成されており、後羽根ラチェット部材63は地板10の後羽根駆動軸12に回転可能に取り付けられている。図3に示すように、後羽根ラチェット部材63は、外周部に形成された2段のラチェット歯632A,632Bを有している。ラチェット歯632Aは後羽根ラチェット部材63の回転軸を中心として等角度間隔P(等ピッチ)で並んでおり、ラチェット歯632Bは後羽根ラチェット部材63の回転軸を中心としてラチェット歯632Aと同一の角度間隔Pで並んでいる。これらのラチェット歯632Aとラチェット歯632Bとは周方向に半ピッチ(P/2)ずれるように配置されている。これらのラチェット歯632A,632Bの歯面は方向性を持つように傾斜している。なお、後羽根ラチェット部材63のラチェット歯632A,632BのピッチPは、上述した先羽根ラチェット部材53のラチェット歯532A,532BのピッチQと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
図3に示すように、後羽根ラチェット部材63に対応して、支持板80には弾性変形可能な爪部85が形成されている。この爪部85は、後羽根ラチェット部材63のラチェット歯632A,632Bに係合するようになっている。このような構成により、図4における反時計回りの回転に対しては、爪部85がラチェット歯632A,632Bの表面を摺動して後羽根ラチェット部材63が回転するが、時計回りの回転に対しては、爪部85がラチェット歯632A,632Bに引っ掛かって後羽根ラチェット部材63が回転しないようになっている。
【0053】
ここで、後羽根ラチェット部材63の-Z方向側には凹部(図示せず)が形成されており、この凹部には後羽根駆動バネ62の+Z方向側の部分が収容されるようになっている。そして、後羽根ラチェット部材63には、この凹部に連通する切欠き634(図3)が形成されており、この切欠き634に後羽根駆動バネ62の端部623が係合している。
【0054】
後羽根駆動バネ62は、後羽根ラチェット部材63の切欠き634と後羽根駆動レバー61のバネ係合部614との間で、図4において後羽根駆動軸12を中心として後羽根駆動レバー61を反時計回りに付勢するようにねじられた状態で配置される。後羽根ラチェット部材63を反時計回りに回転させると、後羽根駆動バネ62のねじり角度がより大きくなるため、後羽根駆動バネ62の付勢力が増加する。本実施形態における後羽根ラチェット部材63は、ラチェット歯632A,632Bが半ピッチ(P/2)ずれた状態で構成されているため、後羽根ラチェット部材63を半ピッチに相当する回転角度ずつ回転させることが可能である。したがって、半ピッチに相当する回転角度ずつ後羽根駆動バネ62のねじり角度を調整することが可能となり、後羽根駆動バネ62の付勢力を段階的に調整することができる。
【0055】
図3に戻って、カム部材71は、地板10のカム軸13が挿通される軸部711と、軸部711から半径方向外側に延びる操作部712と、操作部712とは異なる方向で軸部711から半径方向外側に延びる先羽根カム片713と、操作部712及び先羽根カム片713とは異なる方向で軸部711から半径方向外側に延びる後羽根カム片714と、カムバネ72の端部722が係合するバネ係合部715とを有している。このカム部材71の軸部711に地板10のカム軸13が挿通されることで、カム部材71が地板10のカム軸13を中心として回転できるようになっている。
【0056】
本実施形態においては、カムバネ72はねじりコイルバネで構成されており、カムバネ72のコイル部721は、カム部材71の軸部711の周囲に配置される。カムバネ72の一方の端部722はカム部材71のバネ係合部715に係合しており、他方の端部723は支持板80に形成されたバネ係合部89(図1及び図4参照)に係合している。このカムバネ72は、図4においてカム軸13を中心としてカム部材71を時計回りに付勢するようにねじられた状態で配置されている。
【0057】
カム部材71の操作部712は、カメラ本体側に設けられた駆動部材(図示せず)によって押されるように構成されている。カム部材71の操作部712に駆動部材から力が作用していないときには、図4に示すように、カム部材71がカムバネ72の付勢力によって地板10に形成されたストッパ10Bに当接した状態となり、カム部材71の時計回りの回転が規制される。
【0058】
図5は、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513と先羽根アーム31との連結部分を模式的に示す断面図である。図5に示すように、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513は、地板10の円弧孔14を通って-Z方向に延びているが、先羽根アーム駆動軸513の先端の外周面には、周方向に沿って延びる凹部513AがZ方向に沿って複数個形成されている。そして、これらの凹部513Aの内部にはシリコン系液体粘着剤95が充填されている。このようなシリコン系液体粘着剤95としては、例えば株式会社ハーベス製のダストトラップ(商標)のようなフッ素を含むシリコン系液体粘着剤を用いることができる。
【0059】
このような構成により、先羽根アーム31や先羽根21~24と地板10との摩擦などによって生じる摩耗粉や他の部材から生じる粉塵が粘性の高いシリコン系液体粘着剤95に吸着及び捕捉されるため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散が抑制される。したがって、摩耗粉や粉塵がカメラ内の撮像素子に付着することが抑制され、画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。
【0060】
図5に示す例では、先羽根アーム駆動軸513の外周面に凹部513Aを形成しているが、先羽根アーム駆動軸513の外周面には凹部を形成せずに、スリーブ93の内周面に凹部513Aを形成し、これらの凹部513Aの内部にシリコン系液体粘着剤95を充填することとしてもよい。
【0061】
また、図5に示す例では、先羽根アーム駆動軸513の先端の外周面に複数の凹部513Aを形成しているが、先羽根アーム駆動軸513の製作を容易にするためには、図6に示すように、先羽根アーム駆動軸513の先端の外周面に単一の凹部513Bを形成し、この凹部513Bの内部にシリコン系液体粘着剤95を充填してもよい。ただし、先羽根アーム駆動軸513が細い場合には、図6に示す構成では、先羽根アーム駆動軸513の凹部513Bが形成されている箇所の強度が低くなる場合があるが、図5に示すように、軸方向に沿って複数の凹部513Aを配置すれば、先羽根アーム駆動軸513の強度の低下を抑制することができる。また、上記と同様に、先羽根アーム駆動軸513の外周面には凹部を形成せずに、スリーブ93の内周面に単一の凹部513Bを形成し、この凹部513Bの内部にシリコン系液体粘着剤95を充填してもよい。
【0062】
また、装置内で生じる摩耗粉や粉塵が金属を含む場合には、図5に示す構成に代えて、図7に示すような構成を採用することができる。図7に示す例では、先羽根アーム駆動軸513の先端には凹部が形成されていないが、先羽根アーム駆動軸513を回転可能に支持するスリーブ93が、金属製の軸受部93Aと、軸受部93Aの半径方向外側に形成されるスリーブカラー93Bとを含んでいる。先羽根アーム駆動軸513は、スリーブ93の軸受部93Aの半径方向内側に回転可能に支持される。スリーブカラー93Bはプラスチックマグネット材料から形成されている。このような軸受部93Aとスリーブカラー93Bとを含むスリーブ93は例えば二体成形法により作製することができる。
【0063】
このような構成によれば、金属を含む摩耗粉や粉塵がプラスチックマグネット材料から形成されるスリーブカラー93Bに磁力により吸着及び捕捉されるため、これらの摩耗粉や粉塵の装置内での拡散が抑制される。したがって、摩耗粉や粉塵がカメラ内の撮像素子に付着することが抑制され、画像の品質が低下してしまうことを防止することができる。なお、スリーブ93は、図7に示すように金属製の軸受部93Aとプラスチックマグネット材料から形成されるスリーブカラー93Bとを含む構成に限られるものではなく、スリーブ93の少なくとも一部がプラスチックマグネット材料から形成されていればよい。
【0064】
図5から図7に示す構成は、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513と先羽根アーム31との連結部分だけではなく、他の連結部分にも適用することが可能である。例えば、図5又は図6に示す構成をアーム支軸41と先羽根アーム31との連結部分に適用する場合には、アーム支軸41の先端の外周面又はスリーブ91の内周面に1以上の凹部を形成し、この凹部にシリコン系液体粘着剤を充填する。また、図5又は図6に示す構成を後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613と後羽根アーム34との連結部分に適用する場合には、後羽根アーム駆動軸613の外周面又はスリーブ94の内周面に1以上の凹部を形成し、この凹部にシリコン系液体粘着剤を充填する。さらに、図5又は図6に示す構成をアーム支軸42と後羽根アーム34との連結部分に適用する場合には、アーム支軸42の外周面又はスリーブ92の内周面に1以上の凹部を形成し、この凹部にシリコン系液体粘着剤を充填する。
【0065】
また、図7に示す構成をアーム支軸41と先羽根アーム31との連結部分に適用する場合には、スリーブ91の少なくとも一部をプラスチックマグネット材料から形成する。図7に示す構成を後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613と後羽根アーム34との連結部分に適用する場合には、スリーブ94の少なくとも一部をプラスチックマグネット材料から形成する。図7に示す構成をアーム支軸42と後羽根アーム34との連結部分に適用する場合には、スリーブ92の少なくとも一部をプラスチックマグネット材料から形成する。また、図5から図7に示すような構成をアーム支軸43と先羽根アーム32との連結部分やアーム支軸44と後羽根アーム33との連結部分に適用してもよい。
【0066】
露光動作が完了した状態からセット動作を開始する際には、カメラ本体側に設けられた駆動部材を駆動して、カム部材71の操作部712をカムバネ72の付勢力に抗して図4において反時計回りに回転させる。カム部材71が反時計回りに回転すると、カム部材71の先羽根カム片713が先羽根駆動レバー51に接触して、カム部材71の回転とともに、先羽根駆動レバー51が先羽根駆動バネ52の付勢力に抗して時計回りに回転する。上述したように、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513は、スリーブ93によって先羽根アーム31に回転可能に連結されているため、先羽根駆動レバー51の時計回りの回転に伴い、先羽根アーム31はアーム支軸41を中心として回転する。これにより、上述したリンク機構を介して、先羽根アーム32もアーム支軸43を中心として回転し、先羽根21~24が互いに重なる領域を変化させつつ主として-Y方向に移動して地板10の開口S内に進入する。
【0067】
さらにカム部材71が反時計回りに回転すると、カム部材71の後羽根カム片714が後羽根駆動レバー61に接触して、カム部材71の回転とともに、後羽根駆動レバー61が時計回りに回転する。上述したように、後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613は、スリーブ94によって後羽根アーム34に回転可能に連結されているため、後羽根駆動レバー61の時計回りの回転に伴い、後羽根アーム34はアーム支軸42を中心として回転する。これにより、上述したリンク機構を介して、後羽根アーム33もアーム支軸44を中心として回転し、後羽根25~28が互いに重なる領域を変化させつつ主として-Y方向に移動して地板10の開口Sの外側に退避する。
【0068】
このようにカム部材71が反時計回りに回転することによりセット動作が完了する。このとき、先羽根21~24は-Y方向に移動して地板10の開口Sを覆っており、後羽根25~28は-Y方向に移動して地板10の開口Sの外側に位置している。このとき、先羽根駆動レバー51の金属片515は先羽根電磁マグネットの鉄心5Aに当接し、後羽根駆動レバー61の金属片615は後羽根電磁マグネットの鉄心5Bに当接するようになっている。先羽根駆動レバー51の金属片515は、バネを介して収容部516に保持されているため、先羽根電磁マグネットの鉄心5Aに適切に当接するように収容部516内で移動できるようになっている。同様に、後羽根駆動レバー61の金属片615は、バネを介して収容部616に保持されているため、後羽根電磁マグネットの鉄心5Bに適切に当接するように収容部616内で移動できるようになっている。
【0069】
この状態でカメラのレリーズボタンが押されると、先羽根電磁マグネットのコイル及び後羽根電磁マグネットのコイルに電流が供給される。これにより、先羽根駆動レバー51の金属片515が磁力により先羽根電磁マグネットの鉄心5Aに吸着され、先羽根駆動レバー51がこのチャージ位置に保持される。同様に、後羽根駆動レバー61の金属片615が磁力により後羽根電磁マグネットの鉄心5Bに吸着され、後羽根駆動レバー61がこのチャージ位置に保持される。また、レリーズボタンの押下により、カム部材71を回転させていた駆動部材が元の位置に戻る。これにより、カム部材71は、カムバネ72の付勢力によって地板10のストッパ10Bに当接するまで時計回りに回転する。このとき、先羽根駆動レバー51及び後羽根駆動レバー61は、電磁マグネットによりそれぞれチャージ位置に保持されたままである。
【0070】
露光動作を開始する際は、先羽根電磁マグネットのコイルへの電流の供給を止めることにより、先羽根電磁マグネットによる先羽根駆動レバー51の電磁吸着が解除され、先羽根駆動レバー51が先羽根駆動バネ52の付勢力によりチャージ位置から反時計回りに回転する。これに伴い、先羽根駆動レバー51の先羽根アーム駆動軸513に連結された先羽根アーム31と上述したリンク機構を介して、先羽根21~24が互いに重なる領域を変化させつつ主として+Y方向に移動する。
【0071】
露光動作開始から所望の露光時間経過後、後羽根電磁マグネットのコイルへの電流の供給を止めることにより、後羽根電磁マグネットによる後羽根駆動レバー61の電磁吸着が解除され、後羽根駆動レバー61が後羽根駆動バネ62の付勢力によりチャージ位置から反時計回りに回転する。これに伴い、後羽根駆動レバー61の後羽根アーム駆動軸613に連結された後羽根アーム34と上述したリンク機構を介して、後羽根25~28が互いに重なる領域を変化させつつ主として+Z方向に移動する。
【0072】
このような露光動作によって、先羽根21と後羽根28との間に形成される露光用の間隙が地板10の開口Sの下方から上方に向かって移動し、撮像素子に対する露光が行われる。先羽根駆動レバー51及び後羽根駆動レバー61の回転が終了することで露光動作が完了し、図4に示す状態となる。
【0073】
上述の実施形態では、先羽根ラチェット部材53は2段のラチェット歯532A,532Bを含んでおり、後羽根ラチェット部材63は2段のラチェット歯632A,632Bを含んでいるが、先羽根ラチェット部材53及び後羽根ラチェット部材63に形成されるラチェット歯は1段であってもよく、あるいは3段以上であってもよい。
【0074】

上述した実施形態においては、フォーカルプレーンシャッタの先幕として4枚の先羽根21~24を用い、後幕として4枚の後羽根25~28を用いた例を説明したが、先幕を構成する先羽根及び後幕を構成する後羽根の枚数はそれぞれ1枚以上であれば何枚であってもよい。
【0075】
なお、本明細書において使用した位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0076】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 羽根駆動装置
10 地板
11 先羽根駆動軸
12 後羽根駆動軸
13 カム軸
14,15 円弧孔
20 カバー板
21~24 先羽根
25~28 後羽根
31,32 先羽根アーム
33,34 後羽根アーム
41~44 アーム支軸
51 先羽根駆動レバー
52 先羽根駆動バネ
53 先羽根ラチェット部材
61 後羽根駆動レバー
62 後羽根駆動バネ
63 後羽根ラチェット部材
71 カム部材
72 カムバネ
80 支持板
91~94 スリーブ
91A,93A 軸受部
91B,93B スリーブカラー
95 シリコン系液体粘着剤
312,322,332,342 軸孔
314,344 レバー連結孔
511,611 軸部
512,612 腕部
513 先羽根アーム駆動軸
513A,513B 凹部
613 後羽根アーム駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8