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  • 特許-車内画像取得装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】車内画像取得装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/915 20060101AFI20240417BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20240417BHJP
【FI】
H04N5/915
H04N23/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051207
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021150903
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清野 譲
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205078(JP,A)
【文献】特開2013-025523(JP,A)
【文献】特開2008-131572(JP,A)
【文献】特開2002-300531(JP,A)
【文献】特開2003-348569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/76 - 5/956
H04N 23/40 - 23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の光学像が結像する受光面を有する撮像素子と、
前記撮像素子から出力される画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理部から出力された画像データを記憶媒体に記録する画像データ記録部とを備え、
前記画像処理部は、
入力された画像データの記録モードを設定する記録モード設定部と、
入力された画像データに基づいて、前記記録モードの設定に係る条件を判別する判別部を備え、
前記判別部は、入力された画像データから車内の混雑状況を判別し、
前記判別部が、混雑していないと判別した場合には、前記記録モード設定部は、前記記録モードをフレームレートの低い節約モードに設定することを特徴とする車内画像取得装置。
【請求項2】
前記判別部は、車内が混雑していると判別した場合に、
入力された画像データに基づいて、時間毎の人の動きがあるか否かを判別し、
前記判別部が、人の動きがあると判別した場合に、前記記録モード設定部は、記録モードを通常のフレームレートに設定することを特徴とする請求項1記載の車内画像取得装置。
【請求項3】
前記判別部が、人の動きが無いと判別した場合には、前記記録モード設定部は、前記節約モードに設定することを特徴とする請求項2記載の車内画像取得装置。
【請求項4】
前記判別部は、車内が混雑していないと判別した場合に、
入力された画像データに基づいて、時間毎の人の動きがあるか否かを判別し、
前記判別部が、人の動きがあると判別した場合に、前記記録モード設定部は、記録モードを通常のフレームレートよりは低いフレームレートであり、前記節約モードよりは高いフレームレートに設定することを特徴とする請求項1記載の車内画像取得装置。
【請求項5】
前記画像処理部には、外部からの運行情報が入力され、
前記判別部は、遅延情報の有無を判別し、
遅延情報がある場合には、事故情報の有無を判別し、
前記判別部が事故情報有りと判別した場合には、前記記録モード設定部は、前記節約モードに設定することを特徴とする請求項1記載の車内画像取得装置。
【請求項6】
前記画像処理部には、車両の車速状況が入力され、
前記判別部が事故情報無しと判別した場合で、車速状況が異常なとき、
前記記録モード設定部は、記録モードを通常のフレームレートに設定することを特徴とする請求項5記載の車内画像取得装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載された車内画像取得装置を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯カメラシステムとしての車内画像取得装置が知られている。この従来装置は、レンズユニットとメインユニットとを備え、レンズユニットは、レンズと、撮像素子とを備え、メインユニットは、記録部と処理部とを備え、メインユニットは、撮影方向が車両の車内側へ向けて配置され、処理部は、レンズユニットで撮影された画像を記録部に記録し、記録部は、メインユニットと着脱自在な記憶媒体が用いられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3214832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置は、車両運行時に撮影した画像を、SDメモリカードなどの記憶媒体に記録し、夜間などの非運行時に記録媒体を装置から取り外して、記録された画像の分析などを行うことがなされている。この際、画像取得の目的が防犯対策やセキュリティ対策である場合には、より高精細な画像を取得することが求められる。
【0005】
しかしながら、高精細な画像を取得する場合には、必然的に単位時間当たりに記録する画像のデータ量が大きくなる。これに対して、装置に着脱自在な記憶媒体のデータ記憶容量には限りがあるので、高精細な画像を取得しようとすると、記憶媒体の交換回数が多くなってしまう問題が生じる。都市部の鉄道車両の場合などでは、1つの車両の一日の運行時間は長くなるので、夜間などの非運行時に記録媒体の交換を行おうとすると、高精細な画像を取得する際に、記憶媒体のデータ記憶容量が足らなくなってしまう問題が生じる。
【0006】
これに対して、取得する画像のフレームレートを下げれば、単位時間当たりに記録する画像のデータ量は少なくなるが、低いフレームレートでは、車両内で何らかのアクシデントが生じている場合に、その詳細画像を取得することができなくなり、車内画像取得装置の本来の目的を達成できなくなる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、防犯対策やセキュリティ対策の目的を達成しながら、記憶媒体のデータ記憶容量が足りなくなる問題を解消すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
車内の光学像が結像する受光面を有する撮像素子と、前記撮像素子から出力される画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理部から出力された画像データを記憶媒体に記録する画像データ記録部とを備え、前記画像処理部は、入力された画像データの記録モードを設定する記録モード設定部と、入力された画像データに基づいて、前記記録モードの設定に係る条件を判別する判別部を備え、前記判別部は、入力された画像データから車内の混雑状況を判別し、前記判別部が、混雑していないと判別した場合には、前記記録モード設定部は、前記記録モードをフレームレートの低い節約モードに設定することを特徴とする車内画像取得装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車内画像取得装置の説明図。
図2図1に示した車内画像取得装置の動作フロー説明図。
図3】本発明の他の実施形態に係る車内画像取得装置の説明図。
図4図3に示した車内画像取得装置の動作フロー(メインフロー)説明図。
図5図3に示した車内画像取得装置の動作フロー(サブフロー)説明図。
図6】車内画像取得装置を備えた車両(鉄道車両)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1に示すように、車内画像取得装置1は、レンズユニット2、撮像素子3、画像処理部4、画像データ記録部5を備えている。レンズユニット2は、車内の光学像を撮像素子3の受光面に結像する。撮像素子3は、受光した光学像から画像データを出力する。画像処理部4は、撮像素子3が出力される画像データを画像処理する。画像データ記録部5は、画像処理部4から出力された画像データを記憶媒体5Aに記録する。ROM6は、画像処理部4の初期設定データが保存されており、動作開始時に、ROM6から初期設定データが画像処理部4に書き込まれる。
【0012】
車内画像取得装置1の画像処理部4は、記録モード設定部4Aと判別部4Bを備える。記録モード設定部4Aは、画像処理部4に入力された画像データの記録モードを設定する。ここでの記録モードとは、画像データを高精細な画像で記録する通常モードと、フレームレートを段階的に低くして、記録する画像データのデータ量を小さくする節約モードとがある。
【0013】
判別部4Bは、画像処理部4に入力された画像データに基づいて、記録モードの設定に係る条件を判別する。ここで判別される条件は、高精細な画像の記録が必要か否かを判断するための条件であり、高精細な画像を記録する必要性が高い条件では、通常モードでの記録がなされ、高精細な画像を記録する必要性が低い条件では、その必要性の低さ度合いに応じて、段階的に節約モードでの記録がなされる。
【0014】
図2によって、図1に示した車内画像取得装置1の動作例を説明する。動作開始で、電源投入がなされると(ステップS1)、画像処理部4にはROM6からの初期設定データが書き込まれ、初期設定がなされる(ステップS2)。初期設後には、基本的には、撮像素子3から高精細画像の画像データが画像処理部4に入力される(ステップS3)。
【0015】
画像処理部4に画像データが入力されると、先ず、判別部4Bが判別処理を行うが、その一例として、ここでは、人数検知(ステップS4)による混雑状況の判別(ステップS5)を行う例を示している。人数検知(ステップS4)では、入力された画像データを処理して人の頭の数をカウントし、1つの車内画像取得装置1の画角内に存在する人の数を検知する。そして、混雑状況の判別(ステップS5)では、検出された人の数が設定数以上か否かの判断を行い、設定数以上である場合には、混雑している(ステップS5:YES)と判別し、設定数未満である場合には、混雑していない(ステップS5:NO)と判別する。
【0016】
なお、前述の説明では、人数検知(ステップS4)の処理を、入力された画像データから人の頭数をカウントする例を示したが、これに換えて、入力された画像データで床面積を画像認識し、床面積の大きさによって、混雑状況の判別(ステップS5)を行うようにすることもできる。
【0017】
そして、判別部4Bが、混雑していない(ステップS5:NO)と判別した場合には、記録モード設定部4Aは、高精細な画像を記録する必要性があまり高くないと判断して、記録モードを「節約モード(弱)」に設定する。ここでの「節約モード(弱)」は、段階的にフレームレートを低くする上で中程度の低さにするものである。「節約モード(弱)」においては、例えば、通常モードで30fps(frames per second)のフレームレートをその半分程度の15fpsに低下させる。
【0018】
判別部4Bが、混雑している(ステップS5:YES)と判別した場合には、図示の例では、判別部4Bは、更に入力された画像データから人の動き検知(ステップS6)を行い、動きが有るか否かの判別を行う(ステップS7)。人の動き検知(ステップS6)は、時系列の画像データの差分をとって、その差分の大きさによって人の動きを検知する。車内画像の場合には、画像の変化は人の動きによるものと認識することができる。
【0019】
そして、判別部4Bが、人の動きが無い(ステップS7:NO)と判別した場合には、記録モード設定部4Aは、高精細な画像を記録する必要性が低いと判断して、記録モードを「節約モード(強)」に設定する。「節約モード(強)」は、フレームレートを最も低く設定するものであり、例えば、通常モードで30fpsのフレームレートを5fps程度に低下させる。更に、「節約モード(強)」では、フレームレートの低下に加えて、ビットレート(単位時間あたりに転送または処理されるビット数)を低下させる処理を行うようにしてもよい。
【0020】
判別部4Bが、人の動きが有る(ステップS7:YES)と判別した場合には、記録モード設定部4Aは、高精細な画像を記録する必要があると判断して、記録モードを「通常モード」に設定する。
【0021】
このような画像処理部4における判別処理は、例えば、痴漢現場を捕らえる画像取得に有効である。車内が混雑していない場合には、痴漢の発生率は低いと考えられるので、記録モードを「節約モード(弱)」にして、ある程度精細な画像が長時間記録できるようにする。そして、車内が混雑している場合で、人の動きが有る場合には、痴漢発生率が高いと考えられるので、記録モードを「通常モード」にして、高精細な画像が記録できるようにする。また、車内が混雑していて人の動きが無い場合には、画像からでは痴漢の判別は難しいと判断できるので、記録モードを「節約モード(強)」にする。
【0022】
図3は、本発明の他の実施形態に係る車内画像取得装置1の例を示している。この例では、前述した例に加えて、運行情報と位置情報が外部から画像処理部4に入力されている。これによると、画像処理部4は、運行情報と位置情報のデータに基づく判別処理がなされる。
【0023】
図4及び図5は、その動作例を示している。この例と図2に示した例との違いは、ステップS10の追加であり、それ以外のステップは、図2に示した例と同様である。
【0024】
図5は、ステップ10のサブフローを示している。ステップ10のサブフローに入ると、画像処理部4には、運行状況のデータの入力(ステップS11)と位置情報のデータの入力(ステップS12)がある。判別部4Bは、これらのデータに基づいて、例えば、遅延の有無(ステップS13)、事故情報の有無(ステップS14)、車速異常の有無(ステップS15)の判別を行う。
【0025】
そして、判別部4Bが、遅延無し(ステップS13:無し)と判別した場合には、そのまま図2に示したステップS3以降の処理が行われる。判別部4Bが、遅延有り(ステップS13:有り)と判別した場合には、次に、事故情報の有無(ステップS14)が判別され、事故情報が有る(ステップS14:有り)場合には、記録モード設定部4Aは、記録モードを前述した「節約モード(強)」に設定する。この際には、事故情報が無し(ステップS14:無し)にならない限り、「節約モード(強)」が継続される。
【0026】
判別部4Bが、事故情報無し(ステップS13:無し)と判別した場合には、車速異常の有無(ステップS15)の判別がなされ、車速異常が有る(ステップS15:有り)場合には、記録モード設定部4Aは、記録モードを「通常モード」に設定する。この際には、車速異常が無し(ステップS15:無し)にならない限り、「通常モード」が継続される。車速異常が無しになると、図2に示したステップS3以降の処理が行われる。
【0027】
このようなサブフローを追加することで、運行状況等に応じた記録画像データの節約が可能になる。特に、事故情報が有る場合には、車両が停車している可能性が高いので、記録する画像データのデータ量を低く抑えることができる。また、遅延発生後に車速異常が有る場合には、大きな事故発生のリスクが高いと言えるので車内の状況を詳細に把握するために高精細な画像の記録を行っている。
【0028】
図6は、車内画像取得装置1を備えた車両(例えば、鉄道車両)10の例を示している。図示の例では、車内の照明器具11と一体又はそれに近接して車内画像取得装置1を設定している。車内画像取得装置1の視野は、天井から床面に向いており、90°以上の画角になっている。なお、 車両には、バスなどの他の公共交通機関で利用される車両などが含まれる。
【0029】
以上説明した車内画像取得装置1によると、高精細な画像記録が必要な場合には、「通常モード」での画像記録がなされるので、防犯対策やセキュリティ対策の目的を達成することができ、また、高精細な画像記録が必要ないと判別されるときには、「節約モード」での画像記録になるので、記憶媒体5Aのデータ記憶容量が足りなくなる不具合を解消することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:車内画像取得装置,2:レンズユニット,3:撮像素子,4:画像処理部,
5:画像データ記録部,5A:記憶媒体,6:ROM,
10:車両,11:照明器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6