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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】印刷用紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B32B5/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020057384
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154615
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 暢洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀幸
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-166753(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087979(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/208692(WO,A1)
【文献】特開2005-125708(JP,A)
【文献】特開2016-196159(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109012218(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層及び表面層を有する印刷用紙であって、
前記中間層が前記基材層と隣接して前記基材層上に配置され、前記表面層が前記中間層と隣接して前記中間層上に配置され、
前記基材層、前記中間層及び前記表面層が、フィラーを含有し、少なくとも一方向に延伸された、空孔を有する熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記表面層の空孔平均径が、0.2~5μmであり、前記表面層中の前記フィラーの含有量が、40~60質量%であり、
前記表面層及び前記中間層の空孔率が、10~50%であり
前記中間層の空孔平均径が、5~70μmであり、前記表面層より大きく、前記中間層中の前記フィラーの含有量が、15~63質量%であり、
前記基材層の空孔平均径が、70~200μmであり、前記中間層より大きく、前記基材層中の前記フィラーの含有量が、10~60質量%であり、前記基材層の空孔率が、20~60%である、 印刷用紙。
【請求項2】
前記中間層が、2種以上の熱可塑性樹脂を含有し、
前記2種以上の熱可塑性樹脂のうち、前記中間層中の含有量が最大の熱可塑性樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂の前記中間層中の含有量が、3~15質量%である
請求項に記載の印刷用紙。
【請求項3】
前記表面層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.1~0.9μmであり、
前記中間層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.5~10μmであり、
前記基材層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.5~10μmである
請求項1又は2に記載の印刷用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙への印刷には、水性インク、油性インク、紫外線硬化型インク等の各種インクが使用されている。インクは、溶媒成分が用紙に浸透するか、用紙の表面で硬化することによって、用紙に定着する。印刷用紙としては、従来のパルプ紙だけでなく、樹脂フィルムを用いた合成紙が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-131870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成紙に油性インクにて両面印刷を行って得られた印刷物を積み重ねて保管すると、グロスゴーストと呼ばれる現象が発生することがある。グロスゴーストが発生すると、印刷された画像の一部の発色性が低下し、印刷物の品質が低下する。
【0005】
本発明は、グロスゴーストが少ない印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、多層構造を有する印刷用紙において各層の空孔平均径が特定の範囲内にあれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
(1)基材層、中間層及び表面層を有する印刷用紙であって、
前記中間層が前記基材層と隣接して前記基材層上に配置され、前記表面層が前記中間層と隣接して前記中間層上に配置され、
前記基材層、前記中間層及び前記表面層が、空孔を有する熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記表面層の空孔平均径が、0.2~5μmであり、
前記中間層の空孔平均径が、5~70μmであり、前記表面層より大きく、
前記基材層の空孔平均径が、70~200μmであり、前記中間層より大きい
印刷用紙。
【0008】
(2)前記中間層が、最大粒子径が5μm以上のフィラーを含有する
前記(1)に記載の印刷用紙。
【0009】
(3)前記中間層が、2種以上の熱可塑性樹脂を含有し、
前記2種以上の熱可塑性樹脂のうち、前記中間層中の含有量が最大の熱可塑性樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂の前記中間層中の含有量が、3~15質量%である
前記(1)又は(2)に記載の印刷用紙。
【0010】
(4)前記表面層及び前記中間層の空孔率が、10~50質量%であり、
前記基材層の空孔率が、20~60質量%である
前記(1)~(3)のいずれかに記載の印刷用紙。
【0011】
(5)前記基材層、前記表面層又は前記中間層が、フィラーを含有し、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムである
前記(1)~(4)のいずれかに記載の印刷用紙。
【0012】
(6)前記表面層中の前記フィラーの含有量が、40~60質量%であり、
前記中間層中の前記フィラーの含有量が、15~63質量%であり、
前記基材層中の前記フィラーの含有量が、10~60質量%である
前記(5)に記載の印刷用紙。
【0013】
(7)前記表面層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.1~0.9μmであり、
前記中間層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.5~10μmであり、
前記基材層中の前記フィラーの平均粒子径が、0.5~10μmである
前記(5)又は(6)に記載の印刷用紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グロスゴーストが少ない印刷用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】スタックされた印刷用紙を示す側面図である。
図2】グロスゴーストが発生した印刷用紙を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態の印刷用紙の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の印刷用紙について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一例(代表例)であり、これに限定されない。
【0017】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
(印刷用紙)
本発明の印刷用紙は、基材層、中間層及び表面層の積層体である。中間層は基材層に隣接して基材層上に配置され、表面層は中間層に隣接して中間層上に配置される。基材層、中間層及び表面層はいずれも多孔質フィルムであり、各層の空孔平均径は表面層から基材層に向かうほど大きくなる。本発明において、表面層の空孔平均径は0.2~5μmであり、中間層の空孔平均径は5~70μmであり、基材層の空孔平均径は70~200μmである。中間層の空孔平均径は表面層より大きく、基材層の空孔平均径は中間層より大きい。
【0019】
このように隣接する3層の空孔平均径の範囲が表面側から内部に向かって徐々に大きくなる印刷用紙は、油性インクによる両面印刷後にスタックされた場合でもグロスゴーストが発生しにくい。グロスゴーストは、印刷された画像の一部の発色性が低下する現象をいう。グロスゴーストの発生を抑制するメカニズムは明らかになっていないが、本発明者らは次のように考えている。
【0020】
グロスゴーストについて本発明者らが検討したところ、両面印刷後にスタックされた印刷物のうち、後刷りの印刷層に生じることが多いと判明した。これは乾燥時の溶媒に起因すると推測される。図1に示すように、両面印刷された印刷物10a及び10bがスタックされた際、先刷りの印刷物10aの印刷層51はまだ十分に乾燥していない。後刷りの印刷物10bの印刷層52は、先刷りの印刷層51に比べてさらに乾燥が遅れている。
【0021】
スタック中にも印刷層51及び52の乾燥が進み、印刷層51及び52中の溶媒成分が揮発し続ける。先刷りの印刷層51が後刷りの印刷層52よりも面積が小さく、スタックされた印刷物10a及び10b間に空間があると、この空間に溶媒が滞留する。図2に示すように、滞留した溶媒が、後刷りの印刷層51において先刷りの印刷層51と重ならない部分521に浸透してその発色性が低下すると考えられる。発色性の低下により、後刷りの印刷層52のうち、先刷りの印刷層51と重ならない部分521と重なる部分522とで発色性に差が生じる。
【0022】
これに対し、本発明の印刷用紙によれば、印刷層が積層される表面層の空孔平均径が小さく、毛細管現象が発現しやすいため、印刷層中の溶媒を素早く印刷用紙内部に浸透させることができる。一方で印刷層中の顔料等の色材は浸透しがたいため、少ないインク量で展色濃度を発現し得る。空孔平均径は、中間層、基材層の順に大きくなるため、表面層及び中間層を介して浸透した溶媒を印刷用紙内部の基材層に多く保持することができる。
【0023】
このように、本発明の印刷用紙は、表面層側は溶媒浸透作用が大きく、基材層側は溶媒保持作用が大きくなるように、3層によって各作用が段階的に調整されている。本発明の印刷用紙によれば、印刷層中の溶媒を迅速に内部に浸透させて保持して、印刷層から揮発し、スタックされた印刷物間に滞留する溶媒を減らすことができるため、グロスゴーストを大きく減らすことができる。
【0024】
なお、本発明の印刷用紙は、中間層及び表面層を基材層の一方の面上に有してもよいし、両方の面上にそれぞれ有してもよい。また、本発明の印刷用紙は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層を有してもよい。例えば、本発明の印刷用紙は表面層上に帯電防止層を有することができる。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態としての印刷用紙の構成を示す断面図である。
図3に示す印刷用紙10の例では、基材層1の両面上にそれぞれ中間層2,2及び表面層3,3がこの順に設けられる。表面層3,3上にはそれぞれ帯電防止層4,4が設けられる。帯電防止層4上には、印刷によって印刷層5が形成され得る。なお、基材層の一方の面上の各層2~4と他方の面上の各層2~4とは、組成、厚さ等が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
以下、本発明の印刷用紙を構成する各層について説明する。
<表面層>
表面層は、空孔を有する熱可塑性樹脂フィルムである。表面層は、インク中の溶媒を素早く吸収して内部の中間層に輸送し、グロスゴーストを減らすとともに印刷用紙にインクの乾燥性を付与することができる。
空孔の形成性の観点から、表面層は熱可塑性樹脂及びフィラーを含有することが好ましい。
【0027】
<<熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。層強度の向上の観点から、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であることがより好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂は、疎水性又は非極性樹脂を含むことが好ましい。これにより、表面層中の空孔が連通している場合の溶媒の吸収量を向上させることができる。本明細書において、疎水性又は非極性樹脂は例えば10以下の溶解パラメータ(SP値)を有する樹脂をいう。当該SP値は9.5以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましく、8.0以下であることがさらに好ましい。また上記SP値は、6.5以上であることができ、7.0以上であってもよい。SP値は、Smallにより提唱された方法で計算される値である。
【0029】
疎水性又は非極性の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂等が挙げられる。疎水性又は非極性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全質量を基準として、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。疎水性又は非極性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全質量を基準として、99質量%以下であってよく、98質量%以下であってよく、97質量%以下であってよい。熱可塑性樹脂のすべてが疎水性又は非極性樹脂から構成されていても差し支えない。
【0030】
熱可塑性樹脂は、フィラーの脱落防止等の観点から、さらに酸変性樹脂を含んでいてもよい。酸変性樹脂としては例えばマレイン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。酸変性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。酸変性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全質量を基準として、0.1質量%以上であってよく、0.5質量%以上であってよく、1質量%以上であってよい。
【0031】
<<フィラー>>
フィラーとしては、例えば無機フィラー及び有機フィラーが挙げられ、いずれかを単独で又は両者を組み合わせて使用することができる。フィラーを含む熱可塑性樹脂フィルムを延伸した場合、フィラーを核とした微細な空孔を多数形成することが容易となる。
【0032】
無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、及び二酸化珪素等が挙げられる。
有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィンの単独重合体、及び環状オレフィンとエチレンとの共重合体等が挙げられる。
【0033】
無機フィラー又は有機フィラーは、粒子径の比較的小さいフィラーを樹脂中に分散させる観点及び溶媒に対する濡れ性を改善して溶媒の中間層への輸送性と乾燥性を向上する観点から、炭素数12~20の脂肪酸等により表面処理又は被覆されていてもよい。
【0034】
上記無機フィラー又は有機フィラーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、粒度分布の調整のしやすさの観点から、無機フィラーが好ましい。無機フィラーのなかでも、空孔の形成性、コスト等の観点から、重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムであることが好ましく、耐候性の観点から、二酸化チタンであることが好ましい。
【0035】
フィラーの平均粒子径は、メディアン径(D50)で、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.15μm以上であり、さらに好ましくは0.2μm以上である。同含有量は、好ましくは0.9μm以下であり、より好ましくは0.6μm以下であり、さらに好ましくは0.45μm以下である。平均粒子径が上記範囲内であれば、特定範囲の空孔平均径に調整しやすくなるとともに、空孔率を調整することもできる。
【0036】
フィラーの平均粒子径(D50)及び後述の最大粒子径(D100)は、レーザー回折式粒度分布測定器により測定することができる。また、フィラーの平均粒子径は、溶融混練と分散により熱可塑性樹脂中に分散したときの平均分散粒子径として、求めることもできる。具体的には、フィルムの切断面を電子顕微鏡で観察し、フィラーの粒子の少なくとも10個の最大径を測定し、その平均値を平均分散粒子径とする。
【0037】
表面層中のフィラーの含有量は、空孔形成性の観点から、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。表面層の強度を適度に維持する観点から、同含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは58質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以下である。含有量が上記範囲内であれば、特定範囲の空孔平均径に調整しやすくなるともに、空孔率を調整することもできる。
【0038】
空孔形成性の観点から、表面層は、フィラーを含有し、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
【0039】
<中間層>
中間層は、空孔を有する熱可塑性樹脂フィルムであり、その空孔平均径は表面層より大きく、基材層より小さい。このような中間層は、毛細管現象が発現しやすく、表面層から輸送された溶媒を基材層へと輸送しやすい。また、ある程度の溶媒を保持できるため、基材層が保持しきれない溶媒を中間層内に保持することができる。また、中間層が空孔を有すると、印刷層表面には中間層の空孔に応じたうねりが生じる。中間層が有する適度な空孔平均径は印刷層表面に溶媒排出に有効な表面粗さを形成することができる。
空孔の形成性の観点から、中間層は、熱可塑性樹脂及びフィラーを含有することが好ましい。
【0040】
中間層における熱可塑性樹脂としては、表面層における熱可塑性樹脂と同様のものが使用可能である。上述した熱可塑性樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
2種以上を併用する場合、空孔平均径の過剰な拡大を抑制する観点から、2種以上のうち中間層中の含有量が最大の第1熱可塑性樹脂に、当該第1熱可塑性樹脂よりも低融点を有する第2熱可塑性樹脂が併用されることが好ましい。第1熱可塑性樹脂よりも溶融しやすい第2熱可塑性樹脂が、延伸温度における第1熱可塑性樹脂間の空孔の形成を抑えて、空孔平均径を適性範囲に調整しやすくなるとともに、空孔率を調整することもできる。中間層中の第2熱可塑性樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂全質量を基準として、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であれば、中間層の空孔サイズを調整しやすい。
【0041】
中間層におけるフィラーも、表面層におけるフィラーと同様のものが使用可能である。上述した無機フィラー及び有機フィラーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
中間層中のフィラーの平均粒子径は、メディアン径(D50)で、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上である。同含有量は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。平均粒子径が上記範囲内であれば、特定範囲の空孔平均径に調整しやすくなるとともに、空孔率を調整することもできる。
【0043】
中間層は、最大粒子径(D100)が5μm以上のフィラーを含有することが好ましい。中間層中の5μm以上の粗大なフィラーによって、表面層の表面の凹凸が形成されやすい。凹凸はスタックされた印刷用紙間に流路を形成し、この流路を介して印刷層から揮発する溶媒の排出を促進できるため、グロスゴーストの発生を減らしやすい。
【0044】
中間層中のフィラーの含有量は、空孔の形成性の観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。多層質層の強度を適度に維持する観点から、同含有量は、好ましくは63質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。含有量が上記範囲内であれば、特定範囲の空孔平均径に調整しやすくなるとともに、空孔率を調整することもできる。
【0045】
空孔形成性の観点から、中間層は、フィラーを含有し、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることがより好ましい。
【0046】
<基材層>
基材層は、空孔を有する熱可塑性樹脂フィルムであり、印刷用紙の支持体として機能し、印刷用紙に強度、コシ等を付与することができる。空孔により印刷用紙の白色度又は不透明度を向上させることもできる。また、基材層の空孔平均径は中間層よりも大きく、基材層は中間層を介して表面層から輸送された溶媒を多く保持することができる。
基材層は、空孔の形成性の観点から、熱可塑性樹脂及びフィラーを含有することが好ましい。
【0047】
基材層の熱可塑性樹脂としては、表面層と同様の熱可塑性樹脂を使用できる。上述した熱可塑性樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。印刷用紙に強度等を付与する観点から、基材層の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂であることがより好ましい。
【0048】
基材層のフィラーについても、表面層と同様のフィラーを使用できる。上述した無機フィラーと有機フィラーの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
基材層中のフィラーの平均粒子径は、空孔の形成性の観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上である。また、延伸により内部に空孔を発生させて不透明性又は印刷性を向上させる場合に、延伸時のシート切れや基材層の強度低下等を抑える観点から、フィラーの平均粒子径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下である。平均粒子径が上記範囲内であれば、特定の空孔平均径に調整しやすくなるとともに、空孔率を調整することもできる。
【0050】
基材層中のフィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。一方、基材層中のフィラーの含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以下である。含有量が上記範囲内であれば、特定範囲の空孔平均径に調整しやすくなるともに、空孔率を調整することもできる。
【0051】
空孔形成性の観点から、基材層は、フィラーを含有し、少なくとも一方向に延伸されていることが好ましい。フィルム強度向上の観点からは、基材層は、二方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。基材層が縦方向(MD)に延伸された延伸フィルムである場合、より大きい空孔平均径を有することができ、より大きい空孔率を有することができる傾向がある。
【0052】
<<他の添加剤>>
表面層、中間層及び基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、及び滑剤等の添加剤を含有することができる。熱安定剤を使用する場合、各層は、通常0.001~1質量%の熱安定剤を含有する。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、及びアミン系等の安定剤等が挙げられる。光安定剤を使用する場合、各層は、通常0.001~1質量%の光安定剤を含有する。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、及びベンゾフェノン系の光安定剤等が挙げられる。分散剤又は滑剤は、例えば無機フィラーを分散させる目的で使用することができる。分散剤又は滑剤の使用量は、通常0.01~4質量%の範囲内である。分散剤又は滑剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸又はステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0053】
<帯電防止層>
帯電防止層は、静電気による印刷用紙への異物の付着、及びブロッキングによる搬送性の低下等を抑制することができる。帯電防止層は、例えば帯電防止剤を含有する塗工液を表面層上に塗工することによって形成できる。帯電防止層は、空孔を有する表面層の表面を覆う薄い塗膜であり、表面層の空孔を塞ぐことはない。
【0054】
<<帯電防止剤>>
帯電防止剤としては特に限定されず、ポリマー型及び金属酸化物型帯電防止剤等の公知の帯電防止剤を使用できる。ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型、アニオン型、両性型、及びノニオン型等が知られており、いずれも使用可能である。カチオン型としては、例えばアンモニウム塩構造又はホスホニウム塩構造を有する化合物等が挙げられる。アニオン型としては、例えばスルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、及び(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有する化合物等が挙げられる。両性型としては、例えば前述のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有する化合物、具体的にはベタイン型が挙げられる。ノニオン型としては、例えばアルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等が挙げられる。金属酸化物型帯電防止剤としては、金属酸化物を有する微粒子、例えばコロイダルシリカの表面に金属酸化物層を有するコロイダルシリカゾルが挙げられる。その他、ホウ素を分子構造中に有するポリマー型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
なかでも、帯電防止性能が良好であることから、カチオン型のポリマー型帯電防止剤が好ましく、窒素含有ポリマー型帯電防止剤、例えば第3級窒素又は第4級窒素(アンモニウム塩構造)含有アクリル系ポリマーがより好ましい。
帯電防止剤としては市販品も使用することができる。第3級又は第4級窒素含有アクリル系ポリマーの市販品としては、例えば水溶性で塗工液を調製しやすいサフトマー ST-1000、サフトマー ST-1100、サフトマー ST-1300、及びサフトマー ST-3200(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0056】
<<アンカー剤>>
帯電防止層は、より安定したインクとの密着性を得る観点から、アンカー剤を含有してもよい。アンカー剤としては特に限定されず、公知のアンカー剤を適宜用いることができる。使用できるアンカー剤としては、例えばポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらの混合物等が挙げられる。ポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物としては、例えばポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、アルキラル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、脂肪族環状炭化水素変性体、これらの水酸化物、及びこれらの複合体等が挙げられる。これらのうち1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
帯電防止剤及びアンカー剤を併用する場合、これらの含有量比は要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。個々の成分の性能を十分に発揮させる観点から、アンカー剤の含有量は、固形分比率で、帯電防止剤100質量部に対して0~200質量部、より好ましくは0~150質量部、さらに好ましくは0~100質量部であり、特に好ましくは0~50質量部である。
【0058】
(印刷用紙の製造方法)
本発明の印刷用紙の製造方法は特に限定されないが、例えば基材層、中間層及び表面層の各層をフィルム成形して積層することにより製造できる。各層を単独でフィルム形成した後、積層してもよいし、各層のフィルム成形と積層を並行して行ってもよい。
【0059】
フィルム成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルム成形してもよい。各層の材料は、各層が上述の組成を有するように選択され、配合される。
【0060】
各層の積層方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドフィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイスを用いる共押出方式、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0061】
印刷用紙が延伸された複数の層を含む場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層に積層した後再び延伸してもよい。
【0062】
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0063】
延伸時の延伸温度は、各層の組成、例えば熱可塑性樹脂の融点等を考慮して設定することができる。例えば、延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂の融点±40℃とすることができる。なかでも、延伸温度は、熱可塑性樹脂の融点以下であることが好ましく、融点よりも2~20℃低い温度の範囲内であることがより好ましい。使用する熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0064】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上であり、上限が通常は12倍以下、好ましくは10倍以下である。一方、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは10倍以上であり、上限が通常は60倍以下、好ましくは50倍以下である。
【0065】
また、ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、下限が通常は1.2倍以上、好ましくは2倍以上であり、上限が通常は10倍以下、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常は1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常は20倍以下、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、熱可塑性樹脂フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0066】
熱可塑性樹脂フィルムの延伸倍率が高い場合、高い空孔平均径及び空孔率が得られやすい傾向がある。したがって、空孔平均径を中間層及び表面層よりも大きくする観点からは、基材層の延伸倍率(二軸延伸の場合は面積延伸倍率)は、表面層及び中間層の延伸倍率と同等以上であることが好ましい。
【0067】
<表面処理>
帯電防止層との密着性を向上させる観点から、表面層は、表面処理が施されていることが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、及びオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0068】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である。また、放電量は、好ましくは12,000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上であり、また、放電量は、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0069】
帯電防止層は、帯電防止剤、アンカー剤、及び溶剤等を混合して、上述した帯電防止層形成用の塗工液を調製し、塗工装置を使用して表面層上に塗工液を塗工することで、形成することができる。
【0070】
帯電防止層の形成に用いる塗工液は、帯電防止剤等の各種成分を溶媒に溶解又は分散させることで得ることができる。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、又はキシレン等が一般的である。塗工時の取扱性等の観点から、塗工液は水溶液であることが好ましい。塗工液の固形分濃度は0.1~20質量%程度が好ましく、より好ましくは0.3~15質量%であり、さらに好ましくは0.5~10質量%である。
【0071】
塗工装置としては、公知の各種塗布装置を用いることができ、特に限定されない。例えばダイコーター、バーコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、又はサイズプレスコーター等の塗工装置を使用することができる。
【0072】
(印刷用紙の特性)
<空孔平均径>
表面層の空孔平均径は、0.2μm以上であり、0.3μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましい。同空孔平均径は、5μm以下であり、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。空孔平均径が上記下限値以上であれば、インク中の十分な量の溶媒の中間層及び基材層への輸送路としての空孔の機能が得られやすくなる。このため、乾燥性が得られやすくなるとともに、印刷物を積み重ねた際に、印刷物表面に滞留する溶媒を低減でき、グロスゴーストを低減しやすくなる。また、上記上限値以下であれば、インクの溶媒成分について毛細管現象がより発現しやすい。乾燥性及びグロスゴースト低減効果が得られやすくなるとともに、インク中の色材が表面に留まりやすくなるため、展色濃度の発現性が高まりやすくなる。
【0073】
中間層の空孔平均径は、5μm以上であり、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。同空孔平均径は、70μm以下であり、65μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。空孔平均径が上記下限値以上であれば、中間層による溶媒の保持量が増えやすくなるとともに、溶媒の基材層への輸送路としての空孔の機能が得られやすくなる。このため、乾燥性が得られやすくなるとともに、印刷物を積み重ねた際に、印刷物表面に滞留する溶媒を低減でき、グロスゴーストを低減しやすくなる。また、上記上限値以下であれば、毛細管現象を発現しやすく、基材層への溶媒の輸送性が高まりやすい。さらに、空孔が上記上限値以下であり、且つ、上記下限値以上であることにより、印刷用紙表面のうねりが幅広くなり過ぎず、狭すぎないものとなり、溶媒排出に有効な表面粗さの形成に寄与しやすくなる。
【0074】
基材層中の空孔平均径は、70μm以上であり、75μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましい。同空孔平均径は、200μm以下であり、190μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましい。空孔平均径が上記下限値以上であれば、溶媒の表面層及び中間層を介して輸送された溶媒を印刷用紙内部の基材層において多く保持しやすい。そのため、多量のインクによる印刷がなされた場合にも、溶媒が基材層に保持しきれず溢れることになりにくく、印刷用紙表面での溶媒の滞留及びグロスゴーストの発生を抑制することができる。また、上記上限値以下であればシートの破断を抑制しやすい。
【0075】
表面層、中間層及び基材層がそれぞれ上記範囲内の空孔平均径を有し、表面層から順に大きくなる空孔を有することにより、毛細管現象による溶媒の乾燥性と吸収容量の両方を得ながら、且つ、外部にも溶媒排出可能な表面粗さを有することができ、グロスゴーストの抑制に有効である。
上記各層の空孔平均径は、印刷用紙の断面の一定領域内に存在する空孔を電子顕微鏡で観察したときの、各空孔のフィルムの流れ方向(MD)における径の平均値である。
各層の空孔平均径は、フィラーの平均粒子径、含有量、及び樹脂種と延伸条件との関係等によって調整できる。
【0076】
<空孔率>
表面層中の空孔率は、連通孔を増やす観点から、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。表面強度を高めてピッキング等の印刷不良を減らす観点からは、同空孔率は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
中間層の空孔率は、連通孔を増やす観点から、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。空孔平均径が大きくしすぎない観点からは、同空孔率は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
基材層の空孔率は、溶媒保持性を高める観点から、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。シート破断の抑制の観点からは、同空孔率は、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0079】
上記空孔率は、電子顕微鏡で観察した印刷用紙の断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求められる。
各層の空孔率は、フィラーの平均粒子径、含有量、及び樹脂種と延伸条件との関係等によって調整できる。
【0080】
<厚さ>
印刷用紙の厚さ(全厚)は、用途又は要求性能に応じて適宜設定すればよい。印刷用紙の全厚とは、印刷用紙を構成する各層の厚さの総和を意味する。印刷用紙の全厚は、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、好ましくは550μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。全厚が上記範囲の印刷用紙であれば、オフセット印刷する場合に不具合が生じ難く、印刷用紙としての利用価値が高くなる傾向にある。
【0081】
印刷用紙を構成する各層の厚さは、全厚が上記範囲内となるように設計される。
また、基材層の両面に中間層、表面層及び帯電防止層が設けられる場合は、両面に設けられる各層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0082】
表面層の厚さは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。表面層の厚さが上記範囲にあることにより、中間層及び基材層への溶媒の輸送が容易となりやすくなるとともに、乾燥性が得られやすくなる。また、中間層中のフィラー及び適度な大きさの空孔によって表面に凹凸が生じやすい。凹凸によりスタックされた印刷用紙間に溶媒の流路が形成されるため、溶媒を外部へ排出してグロスゴーストを抑制しやすい。
【0083】
中間層の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、好ましくは120μm以下、より好ましくは85μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。中間層の厚さが上記範囲にあることにより、基材層への溶媒の輸送が容易となりやすくなるとともに、表面層に適度な凹凸を形成しやすい。
【0084】
基材層の厚さは、全厚が上記範囲となるように調整すればよい。具体的には、基材層の厚さは、好ましくは9μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは350μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。基材層の厚さが上記範囲にあることにより、コストを抑えつつ、インク中の溶媒の吸収容量を大きくすることができる。
【0085】
帯電防止層の厚さは、帯電防止層形成用の塗工液の塗工量により制御できる。生産コスト若しくはベタつきの抑制、又は経時でのインクの密着性の安定効果等の観点から、塗工量は、固形分換算で0.01g/m以上が好ましく、0.02g/m以上がより好ましく、3g/m以下が好ましく、1g/m以下がより好ましく、0.5g/m以下がさらに好ましい。
【0086】
<表面固有抵抗>
印刷用紙の表面固有抵抗は、14(logΩ)以下であることが好ましい。表面固有抵抗が上記範囲内にあることにより、平判印刷での搬送性を向上させるとともに、折り及び製本等の後加工において静電気によるトラブルを減らすことができる。
【0087】
(印刷用紙の用途)
本発明の印刷用紙によれば、印刷により高光沢で対候性に優れた印刷物を得ることができる。そのため、例えばポスター、パンフレット、カタログ、看板又はメニュー等の商業印刷物、本、地図、ブックカバー又はしおり等の出版物、及び包装紙等として有用である。これらの用途の中でも、本発明の印刷用紙は、その基本性能の高さから、例えば選挙用ポスター又は看板用ポスター等のように、日光や雨水の影響を受ける屋外使用、ポスター等のようにサウナ、大衆浴場、又は浴室等の水に晒される環境下での使用、飲食店等のメニュー等の水に接触する可能性のある環境下での使用等の用途において有用である。
【0088】
(印刷物)
本発明の印刷用紙は、例えばオフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、及びスクリーン印刷等の印刷方式にとらわれず、種々の印刷方式に対応することができるが、特にオフセット印刷に適している。また、本発明の印刷用紙には、オフセット印刷用インク、凸版印刷用インク、フレキソ印刷用インク、及びスクリーン印刷用インク等、種々の油性インクを用いることができるが、特にオフセット印刷用インクを用いることが好ましい。なお、インクの粘度は、インクの種類及び印刷方式等により様々であり、特に限定されない。
【0089】
合成紙への適用が難しかったが、パルプ紙には従来から汎用されている、比較的多くの溶剤を含む油性インクに対しても、本発明の印刷用紙は、グロスゴーストの発生を抑制した優れたインク乾燥性を有する。そのため、パルプ紙に代えて本発明の印刷用紙を使用した場合でも、インクを入れ替える必要がない。また、蒸発乾燥型成分、浸透乾燥型成分等が少ない合成紙用のインク、紫外線硬化型インク等に対しても、本発明の印刷用紙はグロスゴーストの発生を抑制した優れたインク乾燥性を有する。すなわち、本発明の印刷用紙は、上述の各種印刷方式のインクのうちどのインクにも対応することができ、インクの汎用性が高い。したがって、本発明によれば、上述の印刷用紙と、上記印刷用紙上に設けられた印刷層と、を備える印刷物が提供される。印刷層は上述した油性インク等のインクを用いて印刷することにより形成することができる。
【実施例
【0090】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
った。
【0091】
表1は、実施例及び比較例に使用される材料の一覧を示す。
【表1】
【0092】
(実施例1)
(I)ポリプロピレン樹脂(MA)(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製、融点(DSC法):162℃)85質量%、重質炭酸カルシウム粒子(C5)(商品名:カルテックス5、丸尾カルシウム社製、平均粒子径D50:1.0μm、最大粒子径D100:4.0μm)15質量%を混合し、270℃に設定した押出機で溶融混練して樹脂組成物(C)を調製した。これをシート状に押し出して冷却ロールにより冷却し、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って、縦延伸樹脂フィルムを得た。
【0093】
(II)ポリプロピレン樹脂(MA)55質量%、重質炭酸カルシウム粒子(C5)45質量%を混合し、270℃に設定した押出機で溶融混練して樹脂組成物(B)を調製した。
【0094】
(III)一方、ポリプロピレン樹脂(MA3)47質量%、脂肪酸により表面処理された軽質炭酸カルシウム粒子(YM23)(商品名:YM23、丸尾カルシウム社製、平均粒子径D50:0.23μm)53質量%を高速ミキサーで混合した。その後、シリンダー温度を210℃に設定した二軸混練押出機を用いて、ベント孔で脱気しながら回転数600rpmで溶融混練し、樹脂組成物(A)を調製した。
【0095】
(IV)調製した各樹脂組成物(A)及び(B)を1台の多層ダイに供給してダイ内部で積層した。この積層体をダイからシート状に共押出しし、上記(I)の工程で得られた縦延伸樹脂フィルムの一方の面上に、樹脂組成物(A)の層が外側となるように積層し、3層構造の積層シートを得た。
【0096】
(V)上記(IV)とは別の押出機2台を用いて、上記(IV)と同様の手順で樹脂組成物(B)及び樹脂組成物(A)をそれぞれ溶融混練した後、上記(IV)とは別の多層ダイに供給してダイ内部で積層した。この積層体をダイからシート状に共押出しし、上記(IV)の工程で得られた3層構造の積層シートの縦延伸樹脂フィルム側(樹脂組成物(C)の層側)の面上に、樹脂組成物(A)の層が外側となるように積層した。これにより、樹脂組成物(A)/樹脂組成物(B)/樹脂組成物(C)/樹脂組成物(B)/樹脂組成物(A)の順に積層された5層構造の積層シートを得た。
【0097】
(VI)得られた5層構造の積層シートを60℃にまで冷却した後、再び150℃にまで再加熱して、テンターを用いてシート幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃にまで冷却した後、耳部をスリットして、5層構造の熱可塑性樹脂フィルム(各層の延伸軸数:一軸延伸/一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)、各層の延伸倍率:9倍/9倍/40.5倍/9倍/9倍、全厚:136μm、各層((A)/(B)/(C)/(B)/(A))の厚さ:7μm/20μm/82μm/20μm/7μm)を得た。なお、樹脂組成物(A)の層が表面層、樹脂組成物(B)の層が中間層、樹脂組成物(C)の層が基材層である。
【0098】
(VII)高周波電源(機器名:AGF-B10、春日電気社製)、長さ0.8mのアルミニウム製電極、及びトリーターロールとしてシリコーン被膜ロールを用い、電極とロールとのギャップを5mmとして、上記(VI)で得られた熱可塑性樹脂フィルムをライン処理速度25m/分で通過させながら、印加エネルギー密度1800J/m(30W・分/m)の条件で、同フィルムの両表面にコロナ放電処理を行った。
【0099】
(VIII)帯電防止剤(商品名:サフトマーST-3200(以下、STという)、三菱ケミカル社製、第4級アンモニウム塩)の固形分量が1.0質量%となるように純水を加えて薄め、塗工液を得た。コロナ放電処理後の熱可塑性樹脂フィルムの両表面に、乾燥後の塗膜の固形分が片面当たり0.02g/mとなるように、調製した塗工液をロールコーターを用いて塗布した。塗膜を乾燥固化させて、実施例1の印刷用紙を得た。
【0100】
(実施例2及び比較例1)
実施例1において、樹脂組成物(A)にさらにポリプロピレン樹脂(FW)(商品名:ノバテックPP FW4B、日本ポリプロ社製、融点(DSC法):132℃)を加え、各ポリプロピレン樹脂(MA)及び(FW)の含有量を表2及び表3に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2及び比較例1の印刷用紙を得た。
【0101】
(実施例3及び比較例2)
実施例1において、樹脂組成物(A)の脂肪酸により表面処理された軽質炭酸カルシウム粒子(YM23)の代わりに、脂肪酸により表面処理された軽質炭酸カルシウム粒子(YM50)(商品名:YM50、丸尾カルシウム社製、平均粒子径D50:0.5μm)を使用し、軽質炭酸カルシウム粒子(YM50)を含む樹脂組成物(A)の組成を表2及び表3に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例3及び比較例2の印刷用紙を得た。
【0102】
(実施例4)
実施例1において、樹脂組成物(B)にさらにポリプロピレン樹脂(FW)を加え、各ポリプロピレン樹脂(MA)及び(FW)の含有量を表2に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例4の印刷用紙を得た。
【0103】
(実施例5及び比較例3)
実施例1において、樹脂組成物(B)の組成を表2及び表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例5及び比較例3の印刷用紙を得た。
【0104】
(実施例6)
実施例1において、樹脂組成物(C)の組成を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例6の印刷用紙を得た。
【0105】
(実施例7)
実施例1において、樹脂組成物(B)の重質炭酸カルシウム粒子(C5)の代わりに、重質炭酸カルシウム粒子(C7)(商品名:カルテックス7、丸尾カルシウム社製、平均粒子径D50:1.0μm、最大粒子径D100:6.0μm)を使用し、樹脂組成物(B)の組成を表2に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例7の印刷用紙を得た。
【0106】
(実施例8及び比較例4)
実施例1において、樹脂組成物(B)の重質炭酸カルシウム粒子(C5)の代わりに、重質炭酸カルシウム粒子(1800)(商品名:ソフトン、備北粉化工業社製、平均粒子径D50:2.0μm、平均粒子径D100:11.0μm)を使用し、樹脂組成物(B)の組成を表2及び表3に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして実施例8及び比較例4の印刷用紙を得た。
【0107】
(実施例9)
実施例8において、樹脂組成物(B)にさらにポリプロピレン樹脂(FW)を加え、樹脂組成物(B)の組成を表2に示すように調整した以外は、実施例8と同様にして実施例9の印刷用紙を得た。
【0108】
(比較例5及び6)
実施例1において、基材層(C)の縦延伸倍率を変更して面積延伸倍率を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして各比較例5及び6の印刷用紙を得た。
【0109】
(比較例7)
比較例2において、樹脂組成物(A)及び(C)のフィラーとしてそれぞれ重質炭酸カルシウム粒子(C5)及び軽質炭酸カルシウム粒子(YM23)を用い、樹脂組成物(A)及び(C)の組成を表3に示すように変更したこと、及び、基材層(C)の縦延伸倍率を変更して面積延伸倍率を表3に示すように調整した以外は、比較例2と同様にして比較例7の印刷用紙を得た。
【0110】
各実施例及び比較例の印刷用紙の物性を次のようにして測定した。
<空孔率>
各層の空孔率(%)は、電子顕微鏡で観察した印刷用紙の断面の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めた。具体的には、測定対象の印刷用紙の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象の印刷用紙の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において印刷用紙の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。得られた画像データの画像処理を画像解析装置にて行い、各層間の境界を判別して各層の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めた。任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率(%)とした。
【0111】
<空孔平均径>
空孔平均径は、上記空孔率の測定において得られた画像データから、任意の10箇所以上で観察されたフィルムの流れ方向(MD)における空孔の径を測定した。各測定値を平均して空孔平均径とした。
【0112】
(評価)
各実施例及び比較例の印刷用紙の印刷適性及び成形性を次のようにして評価した。
【0113】
<油性オフセット印刷>
印刷用紙の両面に油性オフセット印刷を施して、得られた印刷物から印刷適性を評価した。
油性オフセット印刷には、菊四截寸延び4色オフセット印刷機(機器名:Ryobi524GX、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製)、及び油性オフセットインキ(商品名:Fusion-G MK墨、藍、紅、透明黄、DIC社製)を用いた。この油性オフセットインキは、パルプ紙用のインキとして市販されている。また、印刷に、PS版(商品名:XP-F、富士フィルム社製)、ブランケット(商品名:D-3000、T&K TOKA社製)、及びパウダー(商品名:ニッカリコ AS-100S、ニッカ社製)を用いた。
【0114】
まずインキ濃度の調整を行った後、印刷用紙の一方の面に200枚以上連続して印刷を施した(先刷り)。得られた印刷物は重ねてスタックしたまま、印刷物上に他の物を乗せない状態で24時間静置し、保管した。インキ濃度の調整時、湿し水の供給量を印刷紙面に地汚れが発生しない極限まで少なくするよう調整し、次いで各色インキ量を印刷絵柄の単色印刷部のインキ濃度が下記範囲内となるように調整した。
墨:1.75±0.1
藍:1.45±0.1
紅:1.35±1.0
黄:1.00±0.5
【0115】
保管後の印刷物を、印刷物の刷り順が先刷りと同じになるようにセットし、印刷物のもう一方の面に200枚以上連続して印刷を施した(後刷り)。印刷前の湿し水の調整、インキ量の調整、保管の手順は、先刷りの場合と同様に行った。
【0116】
上記印刷時、印刷室内の温度を20~25℃に、相対湿度を40~60%に調整した。先刷りには文字、図形、写真画像及び空白部を含む絵柄を用い、後刷りには墨、藍、紅及び黄の各単色のベタ画像及び平網画像を含む絵柄を用いた。印刷する色順を墨、藍、紅、黄の順とし、印刷速度を8000枚/1時間とした。
【0117】
<印刷適性:グロスゴースト>
上記のとおり両面印刷された印刷物の後刷り面における単色墨ベタ画像部分を、後刷りの1日後(24時間後)に観察した。単色ベタ画像部分において、先刷り面の印刷層と接触する部分と接触しない部分との外観上の色(明度)の違いについて、目視確認できる度合いを以下の基準で評価した。
◎:色の違いが確認できない(実用レベル)
○:色の違いが一部確認できるが、あまり目立たない(実用レベル)
△:一部確認でき、やや目立つ(実用レベル)
×:明瞭に確認でき、目立つ(実用不可レベル)
【0118】
<印刷適性:インク乾燥性>
先刷りのみの印刷物の保管中、1時間ごとにスタックされた印刷物から1枚抜き出し、ベタ印刷部を指押しし、指先にインクが付かなくなる時間(セット乾燥に要した時間)に基づき、インク乾燥性を下記基準で評価した。
◎:6時間以内にセット乾燥した(実用レベル)
〇:12時間以内にセット乾燥した(実用レベル)
△:24時間以内にセット乾燥した(実用レベル)
×:24時間以内にセット乾燥しなかった(実用不可レベル)
【0119】
<成形性:シート破断性>
印刷用紙の成形中のシートの破断頻度により、シート破断性を次のようにして評価した。
〇:1日連続生産してもシート破断しない(実用レベル)
△:1日連続生産したときのシート破断頻度が1回又は2回(実用レベル)
×:1日連続生産したときのシート破断頻度が3回以上(実用不可レベル)
【0120】
表2及び表3は、評価結果を示す。
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
実施例1~9によれば、いずれもグロスゴーストが少なく、優れたインク乾燥性が得られている。シートの破断がなく、連続生産が可能である。
一方、比較例1~5は各層の空孔平均径が特定範囲になく、グロスゴーストが発生している。基材層の空孔平均径が大きい比較例6は、グロスゴーストは発生していないが、シートの破断が発生し、連続生産が難しい。また、基材層、中間層、表面層の順に空孔平均径が大きい比較例7は、グロスゴーストが発生している。
【符号の説明】
【0123】
10・・・印刷用紙、1・・・基材層、2・・・中間層、3・・・表面層、4・・・帯電防止層、5・・・印刷層

図1
図2
図3