(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ショベル及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240417BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20240417BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/20 N
E02F3/43 A
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2020068678
(22)【出願日】2020-04-06
(62)【分割の表示】P 2018220396の分割
【原出願日】2015-06-17
【審査請求日】2020-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】呉 春男
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】土屋 真理子
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-36373(JP,A)
【文献】特開2012-172428(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0004132(KR,A)
【文献】特開2014-55407(JP,A)
【文献】特開2001-159156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0162004(US,A1)
【文献】特開2011-220356(JP,A)
【文献】特開2007-218405(JP,A)
【文献】特開平3-255204(JP,A)
【文献】特開2005-76448(JP,A)
【文献】特開2001-251358(JP,A)
【文献】実開昭61-26756(JP,U)
【文献】島野 佑基、外2名、「技術論文 PC210LCi-10/PC200i-10の開発 マシンコントロール油圧ショベル」、コマツテクニカルレポートVol.60 No.167 2015年3月27日発行
【文献】スマートシティ ドローンで測る建設現場、コマツのスマートコンストラクションが順調に実績拡大、(1/2ページ)、https://built.itmedia.co.JP/bt/articles/1505/22/news045.html
【文献】スマートシティ ドローンで測る建設現場、コマツのスマートコンストラクションが順調に実績拡大、(2/2ページ)、https://built.itmedia.co.JP/bt/articles/1505/22/news045_2.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F9/20,9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、
複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御対象と、
制御装置と、を備えるショベルであって、
前記制御装置は、前回の掘削動作に対応する空間に対し、今回の掘削動作の開始前に撮像装置が出力した情報に基づいてショベルの周囲の地面の形状に関する情報を取得し、前記今回の掘削動作の際に、前記取得したショベルの周囲の地面の形状に関する情報に基づいて前記制御対象に対する制御指令を出力して前記制御対象を制御するように構成され、
前記制御装置は、
前記前回の掘削動作及び前記今回の掘削動作が、ショベルが同じ位置にあるときに行われる場合であって、
前記前回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さが、前記今回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さとは異なる場合であって、且つ、
前記今回の掘削動作が、前記下部走行体が静止した状態での掘削操作に応じて動く前記複数の油圧アクチュエータによって実現され、バケットの爪先を地面に接触させる方向へのアームの閉じ動作を含む場合に、
前記バケットの爪先と地面とが接触する際に、前記制御対象を制御するように構成されている、
ショベル。
【請求項2】
前記制御対象は、コントロールバルブであり、
前記複数の油圧アクチュエータには、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、及び旋回用油圧モータが含まれる、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、前記制御対象を自動的に制御する請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の油圧アクチュエータのうち第1の油圧アクチュエータの動作中に、前記第1の油圧アクチュエータの動作に応じた所定の動作パターンにより第2の油圧アクチュエータを制御する請求項1乃至3のいずれかに記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、切り換え可能な複数の制御モードを有する請求項1乃至4のいずれかに記載のショベル。
【請求項6】
前記制御装置は、所定の動作パターンで前記制御対象を制御する請求項1乃至5のいずれかに記載のショベル。
【請求項7】
下部走行体と、前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御対象と、を備えるショベルの制御方法であって、
前回の掘削動作に対応する空間に対し、今回の掘削動作の開始前に撮像装置が検出した情報に基づいてショベルの周囲の地面の形状に関する情報を取得する取得ステップと、
前記今回の掘削動作の際に、前記取得したショベルの周囲の地面の形状に関する情報に基づいて前記制御対象に対する制御指令を出力して前記制御対象を制御する制御ステップと、
を有し、
前記制御ステップにおいて、
前記前回の掘削動作及び前記今回の掘削動作が、ショベルが同じ位置にあるときに行われる場合であって、
前記前回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さが、前記今回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さとは異なる場合であって、且つ、
前記今回の掘削動作が、前記下部走行体が静止した状態での掘削操作に応じて動く前記複数の油圧アクチュエータによって実現され、バケットの爪先を地面に接触させる方向へのアームの閉じ動作を含む場合に、
前記バケットの爪先と地面とが接触する際に、前記制御対象を制御する、
ショベルの制御方法。
【請求項8】
前記制御対象は、コントロールバルブであり、
前記複数の油圧アクチュエータには、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、及び旋回用油圧モータが含まれる、
請求項7に記載のショベルの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アタッチメントを備えたショベル及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アームを閉じる際にアームシリンダのロッド側油室から流出する作動油の流量を増減させる可変絞りを有するショベルが知られている(特許文献1参照。)。このショベルは、可変絞りを制御するためにアームシリンダのボトム側油室の圧力を監視する。ボトム側油室の圧力が所定値未満であれば、バケットが地面に接触しておらず掘削アタッチメントが空中で動作していると判断でき、アームが自重で落下しないように可変絞りを流れる作動油の流量を低減すべきと判断できるためである。また、ボトム側油室の圧力が所定値以上であれば、バケットが地面に接触していると判断でき、可変絞りのところで無駄な圧力損失が生じないように可変絞りを流れる作動油の流量を増大すべきと判断できるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のショベルは、掘削対象の地面の現在の形状を認識していない。
【0005】
上述に鑑み、作業対象の地面の現在の形状を認識できるショベルを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に搭載される上部旋回体と、複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御対象と、制御装置と、を備えるショベルであって、前記制御装置は、前回の掘削動作に対応する空間に対し、今回の掘削動作の開始前に撮像装置が出力した情報に基づいてショベルの周囲の地面の形状に関する情報を取得し、前記今回の掘削動作の際に、前記取得したショベルの周囲の地面の形状に関する情報に基づいて前記制御対象に対する制御指令を出力して前記制御対象を制御するように構成され、前記制御装置は、前記前回の掘削動作及び前記今回の掘削動作が、ショベルが同じ位置にあるときに行われる場合であって、前記前回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さが、前記今回の掘削動作の際にバケットの爪先が地面に接触するときの爪先の高さとは異なる場合であって、且つ、前記今回の掘削動作が、前記下部走行体が静止した状態での掘削操作に応じて動く前記複数の油圧アクチュエータによって実現され、バケットの爪先を地面に接触させる方向へのアームの閉じ動作を含む場合に、前記バケットの爪先と地面とが接触する際に、前記制御対象を制御するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、作業対象の地面の現在の形状を認識できるショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係るショベルの側面図である。
【
図2】
図1のショベルに搭載される姿勢検出装置を構成する各種センサの出力内容の一例を示すショベルの側面図である。
【
図3】
図1のショベルに搭載される駆動系の構成例を示す図である。
【
図4】コントローラの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図5】地面形状情報取得部が取得する掘削対象地面の現在の形状に関する情報の概念図である。
【
図6A】再生油路及び再生解除弁の構成例を示す図である。
【
図6B】アーム閉じ操作時に再生解除弁の開口面積を最小としたときの作動油の流れを示す図である。
【
図6C】アーム閉じ操作時に再生解除弁の開口面積を最大としたときの作動油の流れを示す図である。
【
図7】開口面積調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】コントローラが再生解除弁の開口面積を調整する際の各種パラメータの時間的推移を示す図である。
【
図9】掘削対象地面の深さと基準面との関係を示す図である。
【
図10】バケット角度と掘削反力と掘削対象地面の深さとの関係を示す図である。
【
図11】姿勢自動調整処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1を参照し、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。なお、
図1は、本発明の実施例に係るショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられる。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成する。なお、アタッチメントは、床堀アタッチメント、均しアタッチメント、浚渫アタッチメント等の他のアタッチメントであってもよい。また、ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3にはキャビン10が設けられ、エンジン11等の動力源が搭載される。また、上部旋回体3には通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、及び撮像装置M4が取り付けられる。
【0010】
通信装置M1は、ショベルと外部との間の通信を制御する装置である。本実施例では、通信装置M1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)測量システムとショベルとの間の無線通信を制御する。具体的には、通信装置M1は、例えば1日1回の頻度で、ショベルの作業を開始する際に作業現場の地形情報を取得する。GNSS測量システムは、例えばネットワーク型RTK-GNSS測位方式を採用する。
【0011】
測位装置M2は、ショベルの位置及び向きを測定する装置である。本実施例では、測位装置M2は、電子コンパスを組み込んだGNSS受信機であり、ショベルの存在位置の緯度、経度、高度を測定し、且つ、ショベルの向きを測定する。ショベルの向きは、例えば、上部旋回体3の向き及びアタッチメントの向きに対応し、下部走行体1の向きとは無関係である。なお、下部走行体1は、操作装置26(
図3参照。)の1つである走行レバーの傾倒方向に応じて前進或いは後進する。そして、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用、不可視)が配置される側(
図1では右側)が下部走行体1の後方に相当する。
【0012】
姿勢検出装置M3は、アタッチメントの姿勢を検出する装置である。本実施例では、姿勢検出装置M3は、掘削アタッチメントの姿勢を検出する装置である。
【0013】
撮像装置M4はショベルの周辺の画像を取得する装置である。本実施例では、撮像装置M4は、ショベルの上部旋回体3に取り付けられるカメラであり、撮像した画像に基づいてショベルの周囲の地面までの距離を認識して作業現場の地形情報を取得する。なお、撮像装置M4はステレオカメラ、距離画像カメラ、3次元レーザスキャナ等であってもよい。
【0014】
図2は、
図1のショベルに搭載される姿勢検出装置M3を構成する各種センサの出力内容の一例を示すショベルの側面図である。具体的には、姿勢検出装置M3は、ブーム角度センサM3a、アーム角度センサM3b、バケット角度センサM3c、及び車体傾斜センサM3dを含む。
【0015】
ブーム角度センサM3aは、ブーム角度θ1を取得するセンサであり、例えば、ブームフートピンの回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサ、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。ブーム角度θ1は、XZ平面において、ブームフートピン位置P1とアーム連結ピン位置P2とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0016】
アーム角度センサM3bは、アーム角度θ2を取得するセンサであり、例えば、アーム連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサ、アーム5の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。アーム角度θ2は、XZ平面において、アーム連結ピン位置P2とバケット連結ピン位置P3とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0017】
バケット角度センサM3cは、バケット角度θ3を取得するセンサであり、例えば、バケット連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサ、バケット6の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。バケット角度θ3は、XZ平面において、バケット連結ピン位置P3とバケット爪先位置P4とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0018】
車体傾斜センサM3dは、ショベルのY軸回りの傾斜角θ4、及び、ショベルのX軸回りの傾斜角θ5(図示せず。)を取得するセンサであり、例えば2軸傾斜(加速度)センサ等を含む。なお、
図2のXY平面は水平面である。
【0019】
図3は、
図1のショベルに搭載される駆動系の構成例を示す図であり、機械的動力伝達ライン、高圧油圧ライン、パイロットライン、電気制御ライン、及び電力ラインをそれぞれ二重線、実線、破線、点線、及び一点鎖線で示す。
【0020】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、発電機12、メインポンプ14L、14R、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作内容検出装置29、コントローラ30、バッテリ70、電装品72、給電装置74、及び表示装置76を含む。
【0021】
エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、発電機12、メインポンプ14L、14R及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に接続される。
【0022】
発電機12は、エンジン11の駆動力を利用して回転することで発電する装置であり、コントローラ30、バッテリ70、電装品72、給電装置74、表示装置76等に電気エネルギを供給する。
【0023】
メインポンプ14L、14Rは、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための装置であり、例えば斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0024】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26等の各種油圧制御機器に作動油を供給するための装置であり、例えば固定容量型油圧ポンプである。
【0025】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧系を制御する油圧制御装置である。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れを制御する流量制御弁171~176を含む。そして、コントロールバルブ17は、流量制御弁171~176を通じ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数のものに対しメインポンプ14L、14Rが吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0026】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットライン25を通じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。なお、パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0027】
操作内容検出装置29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する装置である。本実施例では、操作内容検出装置29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、操作装置26の操作内容は、ポテンショメータ等、圧力センサ以外の他のセンサの出力を用いて導き出されてもよい。
【0028】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置であり、例えば、CPU、RAM、不揮発性メモリ等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、各種機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0029】
バッテリ70は電気エネルギを蓄える装置であり、例えば、発電機12で発電した電力で充電される。また、バッテリ70の電気エネルギは、コントローラ30、電装品72、給電装置74、表示装置76等に供給される。
【0030】
電装品72は、ショベルに搭載される電気負荷であり、例えば、音声出力装置、照明装置等を含む。
【0031】
給電装置74は、外部電気機器に電気エネルギを供給するための装置であり、例えば、外部電気機器の差込プラグを受け入れるプラグ受けを含む。外部電気機器は空撮用マルチコプタ(ドローン)を含む。例えば、操作者は、空撮用マルチコプタのバッテリから延びる電源ケーブルの差込プラグを給電装置74のプラグ受けに差し込むことで空撮用マルチコプタのバッテリを充電できる。
【0032】
表示装置76は、各種情報を表示する装置であり、例えば、キャビン10内に設置される車載ディスプレイである。本実施例では、表示装置76は撮像装置M4に接続され、撮像装置M4が取得したショベル周辺の画像を表示できる。
【0033】
エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rは、センターバイパス管路40L、40Rのそれぞれを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0034】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁171、173、及び175を通る高圧油圧ラインである。また、センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された流量制御弁172、174、及び176を通る高圧油圧ラインである。
【0035】
流量制御弁171、172、173は、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、旋回用油圧モータ2Aに流出入する作動油の流量及び流れ方向を制御するスプール弁である。
【0036】
また、流量制御弁174、175、176は、バケットシリンダ9、アームシリンダ8、ブームシリンダ7に流出入する作動油の流量及び流れ方向を制御するスプール弁である。なお、本実施例では、流量制御弁175の内部に再生油路175a(
図6A参照。)が形成される。また、流量制御弁175と作動油タンクとの間には再生解除弁50が取り付けられる。
【0037】
次に、
図4を参照してコントローラ30の機能について説明する。なお、
図4は、コントローラ30の構成例を示す機能ブロック図である。本実施例では、コントローラ30は、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、撮像装置M4の出力を受けて各種演算を実行し、その演算結果に応じた制御指令を制御対象(例えば、エンジン11、メインポンプ14L、14R、コントロールバルブ17、再生解除弁50等である。)に対して出力する。
【0038】
具体的には、コントローラ30は、主に、地形データベース更新部31、位置座標更新部32、地面形状情報取得部33、及び掘削制御部34を含む。
【0039】
地形データベース更新部31は、作業現場の地形情報を参照可能に体系的に記憶する地形データベースを更新する機能要素である。本実施例では、地形データベース更新部31は、例えばショベルの起動時に通信装置M1を通じて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新する。地形データベースは不揮発性メモリ等に記憶される。また、作業現場の地形情報は、例えば世界測位系に基づく3次元地形モデルで記述される。
【0040】
また、地形データベース更新部31は撮像装置M4の出力を利用して地形データベースを更新してもよい。この場合、撮像装置M4はショベルから独立していてもよい。また、コントローラ30は通信装置M1を介して撮像装置M4が出力する地形情報を取得してもよい。具体的には、撮像装置M4は、空撮用マルチコプタ、作業現場に設置された鉄塔等に取り付けられ、作業現場を上から見た画像に基づいて作業現場の地形情報を取得してもよい。また、撮像装置M4は、空撮用マルチコプタに取り付けられた場合、1時間に1回程度の頻度で或いはリアルタイムで、作業現場を上から見た画像を撮像して作業現場の地形情報を取得してもよい。
【0041】
また、地形データベース更新部31は、例えば、1日1回の頻度で通信装置M1を通じて作業現場の地形情報を取得し、且つ、1時間に1回の頻度で或いはリアルタイムで撮像装置M4を通じて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新してもよい。
【0042】
また、地形データベース更新部31は、通信装置M1を通じて取得した地形情報と撮像装置M4を通じて取得した地形情報とを併用する場合、通信装置M1を通じて取得した地形情報を補正するために、撮像装置M4を通じて取得した地形情報を用いてもよい。この場合、地形データベース更新部31は、通信装置M1が地形情報を取得する周期(間隔)よりも長い周期(間隔)で地形情報を補正してもよい。
【0043】
位置座標更新部32は、ショベルの現在位置を表す座標及び向きを更新する機能要素である。本実施例では、位置座標更新部32は、測位装置M2の出力に基づいて世界測位系におけるショベルの位置座標及び向きを取得し、不揮発性メモリ等に記憶されるショベルの現在位置を表す座標及び向きに関するデータを更新する。
【0044】
また、位置座標更新部32は、地形データベース更新部31の場合と同様、撮像装置M4の出力を利用してショベルの現在位置を表す座標及び向きを更新してもよい。この場合、位置座標更新部32は、測位装置M2の出力と撮像装置M4の出力を併用してショベルの現在位置を表す座標及び向きに関するデータをリアルタイムで更新してもよい。また、位置座標更新部32は、撮像装置M4の出力のみに基づいてショベルの現在位置を表す座標及び向きに関するデータをリアルタイムで更新してもよい。
【0045】
地面形状情報取得部33は、作業対象の地面の現在の形状に関する情報を取得する機能要素である。本実施例では、地面形状情報取得部33は、地形データベース更新部31が更新した地形情報と、位置座標更新部32が更新したショベルの現在位置を表す座標及び向きと、姿勢検出装置M3が検出した掘削アタッチメントの姿勢の過去の推移とに基づいて掘削対象地面の現在の形状に関する情報を取得する。
【0046】
図5は、地面形状情報取得部33が取得する掘削対象地面の現在の形状に関する情報の概念図である。なお、
図5の破線で示す複数のバケット形状は、前回の掘削動作の際のバケット6の軌跡を表す。バケット6の軌跡は、姿勢検出装置M3が過去に検出した掘削アタッチメントの姿勢の推移から導き出される。また、
図5の太実線は、地面形状情報取得部33が把握している掘削対象地面の現在の断面形状を表し、太点線は、地面形状情報取得部33が把握している前回の掘削動作が行われる前の掘削対象地面の断面形状を表す。すなわち、地面形状情報取得部33は、前回の掘削動作が行われる前の掘削対象地面の形状から、前回の掘削動作の際にバケット6が通過した空間に対応する部分を取り除くことで掘削対象地面の現在の形状を導き出す。また、
図5の一点鎖線で示すZ軸方向に伸びる各ブロックは3次元地形モデルの各要素を表す。各要素は例えばXY平面に平行な単位面積の上面と-Z方向に無限大の長さを有するモデルで表現される。なお、3次元地形モデルは3次元メッシュモデルで表現されてもよい。
【0047】
掘削制御部34は、掘削アタッチメントを制御する機能要素である。本実施例では、掘削制御部34は、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報に基づいて掘削アタッチメントを制御する。
【0048】
具体的には、掘削制御部34は、姿勢検出装置M3が検出する掘削アタッチメントの現在の姿勢と、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報(前回の掘削動作の際の姿勢情報より算出される情報)とに基づいて掘削状態を判断する。例えば、掘削制御部34は、バケット6の爪先が掘削対象地面に接触しているかを判定する。そして、バケット6の爪先が掘削対象地面に接触していると判定した場合、制御モードを「地表面モード」から「地中モード」へ切り替える。特に、掘削アタッチメント(バケット6の爪先)が地表面よりも上に存在する場合にアーム5を閉じるときにはアームシリンダ8のロッド側油室をボトム側油室よりも高圧にして自重落下させることが望ましい。また、地面接触後の掘削作業では、掘削のためにアームシリンダ8のボトム側油室をロッド側油室よりも高圧にする必要がある。このため、掘削制御部34は、スムーズに掘削を開始すべく、バケット6が掘削対象地面に接触しているかを正確に判定した上でメインポンプ14L、14Rが吐出する高圧の作動油をアームシリンダ8のボトム側油室へ供給する。そして、制御対象が例えば再生解除弁50の場合には、掘削制御部34は、バケット6の爪先が掘削対象地面に接触する際に、再生解除弁50に対して制御指令を出力してその開口面積を増大させる。なお、「接触する際」は「接触する直前」を含み、掘削制御部34は、好ましくは、バケット6の爪先が掘削対象地面に接触する直前に再生解除弁50に対して制御指令を出力してその開口面積を増大させる。さらに、予め入力された土砂密度情報に基づいて掘削アタッチメントを制御してもよい。例えば、土砂密度が大きいほど開口面積が大きくなるようにしてもよい。
【0049】
また、掘削制御部34はエンジン11、メインポンプ14L、14R等を制御対象としてもよい。この場合、バケット6が掘削対象地面に接触していると判定したときに制御モードを「地表面モード」から「地中モード」へと切り替える。そして、エンジン11の回転数指令を上昇させ、或いは、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を変更する等して掘削アタッチメントの出力馬力を増大させる。その結果、「地中モード」で作業する際に掘削アタッチメントの駆動力を増大させることができる。また、「地表面モード」の際にはその出力馬力を低減させて燃費を向上させることができる。
【0050】
掘削制御部34は、上述の各制御対象の制御を単独で実行してもよく、組み合わせて実行してもよい。また、この制御は掘削対象地面の現在の形状が目標形状になるまで実行されてもよい。例えば、掘削対象地面の深さが予め設定された目標面の深さに到達するまで実行されてもよい。なお、掘削対象地面の深さが目標面の深さに到達すると、それより深い掘削は制限されてもよい。
【0051】
図6A~
図6Cは、再生油路175a及び再生解除弁50の構成例を示す図である。具体的には、
図6Aは、
図3に示すコントロールバルブ17における流量制御弁175及び再生解除弁50を含む部分の拡大図である。また、
図6Bはアーム閉じ操作時に再生解除弁50の開口面積を最小としたときの作動油の流れを示し、
図6Cはアーム閉じ操作時に再生解除弁50の開口面積を最大としたときの作動油の流れを示す。
【0052】
再生油路175aは、アーム閉じ操作時に収縮側油室であるアームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油を伸張側油室であるボトム側油室に流入(再生)させる油路である。また、再生油路175aは、ボトム側油室からロッド側油室への作動油の流れを防止する逆止弁を含む。なお、再生油路175aは、流量制御弁175の外部に形成されてもよい。
【0053】
再生解除弁50は、アームシリンダ8のロッド側油室から流出して作動油タンクに流れる作動油の流量を調整する弁である。本実施例では、再生解除弁50は、コントローラ30からの制御指令に応じて動作する電磁弁であり、流量制御弁175と作動油タンクとの間の油路50aの流路面積を増減させて油路50a及び再生油路175aのそれぞれを流れる作動油の流量を調整する。
【0054】
具体的には、再生解除弁50は、
図6Bに示すように、コントローラ30からの制御指令に応じてその開口面積を低減させて油路50aを流れる作動油の流量を低減させ且つ再生油路175aを流れる作動油の流量を増大させる。この構成により、再生解除弁50は、掘削アタッチメントを空中で動作させる場合にアーム5がその自重によって落下するのを防止できる。
【0055】
また、再生解除弁50は、
図6Cに示すように、コントローラ30からの制御指令に応じてその開口面積を増大させて油路50aを流れる作動油の流量を増大させ且つ再生油路175aを流れる作動油の流量を低減或いは消失させる。この構成により、再生解除弁50は、掘削中であるにもかかわらず、すなわち掘削アタッチメントが地面に接触しているにもかかわらず、油路50aで無駄な圧力損失を発生させて掘削力を低減させてしまうのを防止できる。
【0056】
なお、再生解除弁50は、アームシリンダ8のロッド側油室と流量制御弁175との間に設置されてもよい。
【0057】
次に、
図7を参照し、コントローラ30が再生解除弁50の開口面積を調整する処理(以下、「開口面積調整処理」とする。)について説明する。なお、
図7は、開口面積調整処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、ショベル稼働中、所定の制御周期で繰り返しこの開口面積調整処理を実行する。
【0058】
最初に、コントローラ30は、アーム閉じ操作が行われたかを判定する(ステップS1)。本実施例では、コントローラ30は、操作内容検出装置29の出力に基づいてアーム操作レバーが閉じ方向に操作されたかを判定する。
【0059】
アーム閉じ操作が行われていないと判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ30は今回の開口面積調整処理を終了させる。
【0060】
アーム閉じ操作が行われたと判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30は、掘削アタッチメントと地面が接触しているかを判定する(ステップS2)。本実施例では、コントローラ30は、姿勢検出装置M3の出力から導き出されるバケット6の爪先の現在位置と、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報とに基づいてバケット6の爪先が地面に接触しているか否かを判定する。
【0061】
そして、掘削アタッチメントと地面が接触していると判定した場合(ステップS2のYES)、コントローラ30は、必要に応じて再生解除弁50の開口面積を増大させる(ステップS3)。本実施例では、コントローラ30は、バケット6の爪先が地面に接触していると判定した場合、再生解除弁50の開口面積が所定値未満であれば、その開口面積を所定値まで増大させる。
【0062】
一方、掘削アタッチメントと地面が接触していないと判定した場合(ステップS2のNO)、コントローラ30は、必要に応じて再生解除弁50の開口面積を低減させる(ステップS4)。本実施例では、コントローラ30は、バケット6の爪先が地面に接触していないと判定した場合、再生解除弁50の開口面積が所定値より大きければ、再生解除弁50の開口面積を所定値まで低減させる。
【0063】
次に、
図8を参照し、コントローラ30が再生解除弁50の開口面積を調整する際の各種パラメータの時間的推移について説明する。なお、
図8(A)はアームシリンダ8のロッド側油室の圧力の時間的推移を表す。また、
図8(B)は地面接触フラグの時間的推移を表し、
図8(C)は再生解除弁50の開口面積の時間的推移を表す。なお、
図8(A)~
図8(C)のそれぞれの時間軸(横軸)は共通である。また、地面接触フラグは、コントローラ30による掘削アタッチメントと地面との接触の有無の判定結果を表す。具体的には、地面接触フラグの値「OFF」は、コントローラ30により「接触無し」と判定されている状態を表し、地面接触フラグの値「ON」は、コントローラ30により「接触あり」と判定されている状態を表す。また、
図8の実線で示す推移は、実際の接触と「接触あり」の判定が同時に行われた場合の推移を表す。一方で、
図8の破線で示す推移は、「接触あり」の判定が実際の接触よりも前に行われた場合の推移を表し、
図8の一点鎖線で示す推移は、「接触あり」の判定が実際の接触よりも後に行われた場合の推移を表す。
【0064】
具体的には、「接触あり」の判定が実際の接触よりも前に行われた場合、地面接触フラグは、
図8(B)の破線で示すように、時刻t1において値「OFF」から値「ON」に切り替えられる。なお、本実施例では実際の接触は時刻t2において発生する。そして、地面接触フラグを値「ON」に切り替えると、コントローラ30は、再生解除弁50の開口面積を増大させる。そのため、再生解除弁50の開口面積は、
図8(C)の破線で示すように、時刻t1において値Anから値Aw(>An)に調整される。なお、値Anはアーム5を空中で動作させる際に最適な値として予め設定される開口面積であり、値Awは掘削中にアーム5を動作させる際に最適な値として予め設定される開口面積である。その結果、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力は、
図8(A)の破線で示すように、時刻t1において減少し始め、実際の接触が起こるまで減少し続ける。アーム5が自重で落下するためである。そして、時刻t2において実際の接触が起こった後に(時刻t2と時刻t3の間で)増加に転じ、その後は作業反力としての掘削反力に応じた値まで増大する。
【0065】
このように、コントローラ30は、「接触あり」の判定を実際の接触よりも前に行うと、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力を一時的に急減させてしまうため、キャビテーションを発生させるおそれがある。
【0066】
一方で、「接触あり」の判定が実際の接触よりも後に行われた場合、実際の接触が起こる時刻t2では再生解除弁50の開口面積は小さいままであるため、ロッド側油室の圧力は上昇してしまう。そして、地面接触フラグは、
図8(B)の一点鎖線で示すように、時刻t3において値「OFF」から値「ON」に切り替えられる。そのため、再生解除弁50の開口面積は、
図8(C)の一点鎖線で示すように、時刻t3において値Anから値Awに調整される。その結果、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力は、
図8(A)の一点鎖線で示すように、実際の接触が起こる時刻t2で増加し始め、時刻t3において再生解除弁50の開口面積が値Awに増大されるまで増加し続ける。掘削反力と再生解除弁50での圧力損失とによる影響を受けるためである。そして、時刻t3において再生解除弁50の開口面積が値Awに増大されると減少に転じ、その後は掘削反力に応じた値まで減少する。
【0067】
このように、コントローラ30は、「接触あり」の判定を実際の接触よりも後に行うと、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力を一時的に増加させてしまうため、掘削アタッチメントの動きを不安定にし、且つ、作業効率を低下させてしまう。
【0068】
そこで、コントローラ30は、姿勢検出装置M3が検出する掘削アタッチメントの現在の姿勢と、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報とに基づいて掘削アタッチメントが掘削対象地面に接触しているかを判定する。「接触あり」の判定を実際の接触と同時に行うためである。
【0069】
「接触あり」の判定が実際の接触と同時に行われた場合、地面接触フラグは、
図8(B)の実線で示すように、時刻t2において値「OFF」から値「ON」に切り替えられる。そのため、再生解除弁50の開口面積は、
図8(C)の実線で示すように、時刻t2において値Anから値Awに調整される。その結果、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力は、
図8(A)の実線で示すように、実際の接触が起こる時刻t2で減少し始め、その後は掘削反力に応じた値まで減少する。実際の接触が起こる前に一時的に急減することはなく、実際の接触が起こった後で再生解除弁50での圧力損失による影響を受けて増加することもない。
【0070】
以上の構成により、コントローラ30は、姿勢検出装置M3が検出したアタッチメントの姿勢の推移に基づいて作業対象の地面の現在の形状に関する情報を取得する。そして、取得した作業対象の地面の現在の形状に関する情報に基づいてアタッチメントを制御する。本実施例では、コントローラ30は、掘削アタッチメントの現在の姿勢と掘削対象地面の現在の形状とに基づいて再生解除弁50の開口面積を調整する。具体的には、バケット6の爪先の現在位置と掘削対象地面の現在の形状とに基づいて再生解除弁50の開口面積を調整する。そのため、バケット6の爪先が掘削対象地面に接触すると同時に、アームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに流出する作動油の再生解除弁50での圧力損失を低減或いは消失させることができる。その結果、コントローラ30は、アームシリンダ圧の変化等に基づいてバケット6の爪先と掘削対象地面との接触の有無を判定する場合に比べ、より正確に接触の有無を判定でき、誤判定を抑制できる。また、接触の有無の誤判定を抑制することで操作性及び作業効率を向上できる。具体的には、バケット6の爪先が地面に接触するのと同時に、アーム5の自重落下の防止のために再生解除弁50のところで発生させていた圧力損失を低減或いは消失させることができ、圧力損失分だけ掘削に要する力が増大してしまうのを防止できる。また、地面との接触の前にアーム5が自重落下してしまうのを防止でき、キャビテーションの発生を防止できる。
【0071】
なお、コントローラ30は、アームシリンダ8に関する再生解除弁50の開口面積を調整するのと同様に、ブームシリンダ7に関する再生解除弁(図示せず。)の開口面積を調整してもよく、バケットシリンダ9に関する再生解除弁(図示せず。)の開口面積を調整してもよい。
【0072】
次に、
図9~
図11を参照し、コントローラ30の掘削制御部34による掘削アタッチメント制御の別の例について説明する。なお、
図9は、掘削対象地面の深さと基準面との関係を示す図である。基準面は、掘削対象地面の深さを定める基準となる平面である。本実施例では、基準面はショベルの中心点Rが位置する水平面であり、中心点Rはショベルの旋回軸と下部走行体1の接地面との交点である。
【0073】
具体的には、
図9の一点鎖線で示す掘削アタッチメントは、一点鎖線で示す基準面と同じ深さの掘削対象地面を掘削する際の掘削アタッチメントの姿勢を表す。この場合、掘削対象地面の深さDは基準面の深さD0(=0)と同じである。なお、掘削対象地面の深さDは、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報(前回の掘削動作の際の姿勢情報から算出される情報)に基づいて導き出される。また、掘削対象地面の深さDは、姿勢検出装置M3が検出した掘削アタッチメントの現在の姿勢に基づいて導き出されてもよい。
【0074】
また、
図9の破線で示す掘削アタッチメントは、破線で示す掘削対象地面を掘削する際の掘削アタッチメントの姿勢を表す。この場合、掘削対象地面の深さDは深さD1(>D0)で表される。
【0075】
また、
図9の実線で示す掘削アタッチメントは、実線で示す掘削対象地面を掘削する際の掘削アタッチメントの姿勢を表す。この場合、掘削対象地面の深さDは深さD2(>D1)で表される。
【0076】
なお、掘削対象地面は基準面よりも高い位置にあってもよい。この場合、掘削対象地面の深さDは負の値で表されてもよい。
【0077】
図10は、バケット角度θ3と掘削反力Fと掘削対象地面の深さDとの関係を示す図である。具体的には、
図10(A)は、バケット6をバケット角度30°からバケット角度180°まで閉じる際のバケット6の姿勢の推移を示す。なお、
図10(A)の破線で示すバケット6はバケット角度30°のときの姿勢を表し、
図10(A)の実線で示すバケット6はバケット角度180°のときの姿勢を表す。
【0078】
図10(B)は、掘削対象地面の深さDと所定のバケット閉じ操作が行われる場合の掘削反力Fの推移又はピーク値との対応関係を予め記憶する対応テーブルの内容の一例を示す。具体的には、
図10(B)は、バケット角度30°からバケット角度180°までバケット6を閉じる際のバケット角度θ3に対する掘削反力Fの推移を示す。なお、対応テーブルは、実測データの分析に基づいて生成されるデータテーブルであり、例えば不揮発性メモリに予め登録されている。
【0079】
また、
図10(C)はバケット角度θ3の時間的推移を示し、
図10(D)は
図10(B)の対応テーブルを用いて算出される掘削反力Fの時間的推移を示す。なお、
図10(C)及び
図10(D)のそれぞれの時間軸(横軸)は共通である。
【0080】
また、
図10(B)及び
図10(D)の一点鎖線で示す推移は、掘削対象地面の深さDが深さD0のときの推移を表す。また、破線で示す推移は、掘削対象地面の深さDが深さD1のときの推移を表し、実線で示す推移は、掘削対象地面の深さDが深さD2のときの推移を表す。
【0081】
図10(A)及び
図10(C)に示すようなバケット角度30°から180°までのバケット閉じ操作が行われた場合、掘削反力Fは、
図10(B)に示すように、バケット角度θ3がある角度(例えば100°)に至るまで増大した後で減少に転じ、バケット角度θ3が180°に達したときにゼロに至る。この傾向は、掘削対象地面の深さDにかかわらず同じである。但し、掘削反力Fのピーク値は、掘削対象地面の深さDの変化に応じて変化する。
図10(B)及び
図10(D)は、掘削対象地面の深さDが深くなるほど掘削反力Fのピーク値が大きくなる傾向を一例として示す。
【0082】
そこで、コントローラ30の掘削制御部34は、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報に基づいて掘削対象地面の現在の深さDを導き出す。そして、掘削制御部34は、掘削対象地面の現在の深さDに応じて、所定のバケット閉じ操作が行われる場合の掘削反力Fのピーク値を推定する。その後、掘削制御部34は、推定した掘削反力Fのピーク値が所定値を上回るかを判定する。そして、上回ると判定した場合には、掘削アタッチメントの動きを制御してそのピーク値が所定値を超えないようにする。掘削反力Fが大きくなり過ぎて掘削アタッチメントの動きが不安定になるのを防止するためである。例えば、掘削制御部34は、操作者によるブーム上げ操作の有無にかかわらず、バケット閉じ動作中にブーム4を自動的に上昇させることで掘削反力Fのピーク値が所定値を超えないようにする。例えば、掘削制御部34は、操作者が気付かない程度の上昇率(単位時間当たりのブーム4の回動角度)でブーム4を自動的に上昇させる。そのため、掘削制御部34は、ブーム4が自動的に上昇したことを操作者に気付かせずに掘削アタッチメントの動きを滑らかにすることができ、操作感を向上させることができる。なお、この場合の掘削制御部34の制御対象は、再生解除弁50ではなく流量制御弁176である。例えば、掘削制御部34は、流量制御弁176のパイロット圧を増減させる電磁弁(図示せず。)に対して制御指令を出力して流量制御弁176を自動的に移動させる。また、この制御は掘削対象地面の現在の形状が目標形状になるまで実行されてもよい。例えば、掘削対象地面の深さが予め設定された目標面の深さに到達するまで実行されてもよい。なお、掘削対象地面の深さが目標面の深さに到達すると、それより深い掘削は制限されてもよい。
【0083】
図11は、掘削反力Fのピーク値が所定値を超えないようにコントローラ30が掘削アタッチメントの姿勢を自動的に調整する処理(以下、「姿勢自動調整処理」とする。)の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、ショベル稼働中、所定の制御周期で繰り返しこの姿勢自動調整処理を実行する。
【0084】
最初に、コントローラ30は、掘削操作が行われたかを判定する(ステップS11)。本実施例では、コントローラ30は、操作内容検出装置29の出力に基づいてブーム操作、アーム操作、及びバケット操作の少なくとも1つが行われたかを判定する。
【0085】
そして、掘削操作が行われたと判定した場合(ステップS11のYES)、コントローラ30は、掘削アタッチメントと地面が接触しているかを判定する(ステップS12)。本実施例では、コントローラ30は、姿勢検出装置M3の出力から導き出されるバケット6の爪先の現在位置と、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報とに基づいてバケット6の爪先が地面に接触しているか否かを判定する。
【0086】
そして、掘削アタッチメントと地面が接触していると判定した場合(ステップS12のYES)、コントローラ30は、掘削反力Fのピーク値を推定する(ステップS13)。本実施例では、コントローラ30は、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報に基づいて掘削対象地面の現在の深さDを導き出す。そして、コントローラ30は、掘削対象地面の現在の深さDに応じて所定のバケット閉じ操作が行われる場合の掘削反力Fのピーク値を推定する。具体的には、コントローラ30は、
図10(B)に示すような対応テーブルを参照して掘削対象地面の現在の深さDに対応する掘削反力Fのピーク値を導き出す。また、コントローラ30は、掘削対象地面の現在の深さDに基づいて所定のバケット閉じ操作が行われる場合の掘削反力Fのピーク値をリアルタイムで算出してもよい。また、コントローラ30は、そのピーク値を算出する際に土砂密度等を考慮してもよい。土砂密度は、車載入力装置(図示せず。)を通じて操作者が入力する値であってもよく、シリンダ圧センサ等の各種センサの出力に基づいて自動的に算出される値であってもよい。
【0087】
その後、コントローラ30は、推定した掘削反力Fのピーク値が所定値Fthを上回るかを判定する(ステップS14)。
【0088】
そして、ピーク値が所定値Fthを上回ると判定した場合(ステップS14のYES)、コントローラ30は、バケット閉じ動作中に掘削アタッチメントの姿勢を自動的に調整する(ステップS15)。本実施例では、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作の有無にかかわらず、バケット閉じ動作中にブーム4を自動的に上昇させる。具体的には、バケット角度θ3の変化に応じた所定の動作パターンでブーム4を自動的に上昇させる。
【0089】
なお、コントローラ30は、掘削操作が行われていないと判定した場合(ステップS11のNO)、掘削アタッチメントと地面が接触していないと判定した場合(ステップS12のNO)、或いは、ピーク値が所定値Fth以下であると判定した場合には(ステップS14のNO)、掘削アタッチメントの姿勢を自動的に調整することなく、今回の姿勢自動調整処理を終了する。
【0090】
以上の構成により、コントローラ30は、姿勢検出装置M3が検出したアタッチメントの姿勢の推移に基づいて作業対象の地面の現在の形状に関する情報を取得する。そして、取得した作業対象の地面の現在の形状に関する情報に基づいてアタッチメントを制御する。本実施例では、コントローラ30は、バケット閉じ動作中に掘削反力Fのピーク値が所定値Fthを超えないようにすることができる。そのため、掘削反力Fが過度に増大して掘削アタッチメントの動きが不安定になるのを防止し、ショベルの操作性及び作業効率を向上させることができる。また、コントローラ30は、低めに設定された所定値Fthを用いることで、床堀作業、均し作業等の掘削作業以外の作業でも同様の効果を実現できる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
例えば、上述の実施例では、コントローラ30は、姿勢検出装置M3が検出する掘削アタッチメントの現在の姿勢と、地面形状情報取得部33が取得した掘削対象地面の現在の形状に関する情報とに基づいて掘削アタッチメントが掘削対象地面に接触しているかを判定する。そして、接触していると判定した場合に、再生解除弁50に対して制御指令を出力してその開口面積を増大させる。或いは、接触していると判定した場合に、所定のバケット閉じ動作が行われるときの掘削反力Fのピーク値を推定し、その推定したピーク値が所定値Fthを上回るときに、ブーム4を自動的に上昇させて実際のピーク値が所定値Fth以下となるようにする。しかしながら、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。例えば、コントローラ30は、接触していると判定した場合に、アタッチメントの駆動力(例えば掘削アタッチメントによる掘削力)を増大させてもよい。具体的には、コントローラ30は、エンジン11の回転数を増大させたり、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させたりしてもよい。なお、この場合の掘削制御部34の制御対象は、再生解除弁50ではなく、エンジン11又はメインポンプ14L、14Rのレギュレータである。
【0093】
また、コントローラ30は、ショベルのリモート運転又は自動掘削運転(無人運転)の場合であっても、掘削反力Fのピーク値が所定値Fthを上回ると判断したときにブーム4を自動的に上昇させてもよい。掘削反力Fを小さくして円滑な掘削作業を継続させるためである。
【0094】
また、本願は、2014年6月20日に出願した日本国特許出願2014-127672号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0095】
1・・・下部走行体 1A・・・走行用油圧モータ(左用) 1B・・・走行用油圧モータ(右用) 2・・・旋回機構 2A・・・旋回用油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 12・・・発電機 14L、14R・・・メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブ 25・・・パイロットライン 26・・・操作装置 29・・・操作内容検出装置 30・・・コントローラ 31・・・地形データベース更新部 32・・・位置座標更新部 33・・・地面形状情報取得部 34・・・掘削制御部 40L、40R・・・センターバイパス管路 50・・・再生解除弁 50a・・・油路 70・・・バッテリ 72・・・電装品 74・・・給電装置 76・・・表示装置 171~176・・・流量制御弁 175a・・・再生油路 M1・・・通信装置 M2・・・測位装置 M3・・・姿勢検出装置 M3a・・・ブーム角度センサ M3b・・・アーム角度センサ M3c・・・バケット角度センサ M3d・・・車体傾斜センサ M4・・・撮像装置