(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
A43B 5/04 20060101AFI20240417BHJP
A43C 11/16 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
A43B5/04 K
A43C11/16
(21)【出願番号】P 2020093323
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】青木 寿明
(72)【発明者】
【氏名】大内 薫
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04414761(US,A)
【文献】実開昭49-136419(JP,U)
【文献】特開2019-000213(JP,A)
【文献】特開2014-217531(JP,A)
【文献】特開平10-179210(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105615(WO,A1)
【文献】特開平10-42903(JP,A)
【文献】特開昭64-56006(JP,A)
【文献】仏国特許発明第1538148(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/04
A43C 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足に装着される靴であって、
靴底と、
前記靴底に取り付けられるアッパーと、
前記アッパーに固定される近位端と、前記近位端に対して前記靴の幅方向の反対側に位置する遠位端とを含み、前記靴の幅方向に延びるストラップと、
を備え、
前記アッパーおよび前記ストラップの一方は、少なくとも1つの第1の係合部を含み、
前記アッパーおよび前記ストラップの他方は、前記遠位端が前記アッパーに対して保持される際に、前記少なくとも1つの第1の係合部と係合し、前記靴の長手方向と交差する方向に延びる少なくとも1つの第2の係合部を含み、
前記少なくとも1つの第1の係合部は、少なくとも1つの第1の凸部を含み、
前記少なくとも1つの第2の係合部は、前記靴の長手方向に並ぶ複数の第2の凸部を含み、
前記遠位端が前記アッパーに対して保持される際に、前記少なくとも1つの第1の凸部は、隣り合う前記
複数の第2の凸部の間に係合され、
前記少なくとも1つの第1の凸部および隣り合う前記複数の第2の凸部の一方は、前記靴の長手方向と交差する方向において、前記少なくとも1つの第1の凸部および隣り合う前記複数の第2の凸部の他方をガイド可能である、靴。
【請求項2】
足に装着される靴であって、
靴底と、
前記靴底に取り付けられるアッパーと、
前記アッパーに固定される近位端と、前記近位端に対して前記靴の幅方向の反対側に位置する遠位端とを含み、前記靴の幅方向に延びるストラップと、
を備え、
前記アッパーおよび前記ストラップの一方は、少なくとも1つの第1の係合部を含み、
前記アッパーおよび前記ストラップの他方は、前記遠位端が前記アッパーに対して保持される際に、前記少なくとも1つの第1の係合部と係合し、前記靴の長手方向と交差する方向に延びる少なくとも1つの第2の係合部を含み、
前記少なくとも1つの第1の係合部は、少なくとも1つの第1の凸部を含み、
前記少なくとも1つの第2の係合部は、少なくとも1つの溝部を含み、
前記遠位端が前記アッパーに対して保持される際に、前記少なくとも1つの第1の凸部は、前記少なくとも1つの溝部に係合され、
前記少なくとも1つの第1の凸部および前記少なくとも1つの溝部の一方は、前記靴の長手方向と交差する方向において、前記少なくとも1つの第1の凸部および前記少なくとも1つの溝部の他方をガイド可能である、靴。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の係合部は、前記遠位端が前記アッパーに対して保持される際に、前記靴の長手方向と交差する方向に延びる、請求項1
又は2に記載の靴。
【請求項4】
前記ストラップに張力を付与する締め付け構造をさらに備える、請求項1から
3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の係合部は、前記アッパーに設けられ、
前記締め付け構造は、前記少なくとも1つの第2の係合部に沿った前記張力を前記ストラップに付与する請求項
4に記載の靴。
【請求項6】
前記締め付け構造は、
前記アッパーおよび前記ストラップのいずれか一方に取り付けられる紐部材と、
前記アッパーおよび前記ストラップのいずれか他方に取り付けられ、前記紐部材を巻き取る巻取部材と、
を含む、
請求項
4または
5に記載の靴。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の係合部および前記少なくとも1つの第2の係合部の一方は、網目織材料でできている、請求項1から
6のいずれか1項に記載の靴。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の係合部および前記少なくとも1つの第2の係合部の前記一方は、前記ストラップに設けられる請求項
7に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足に装着される靴に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、足を靴内に固定するストラップを備えた靴が開示されている。ストラップは、靴の幅方向に延びており、幅方向における一端がアッパーに固定され、幅方向における他端(自由端)が面ファスナーによってアッパーに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の靴では、ストラップの自由端がアッパーに対して保持される際に、ストラップの位置がアッパーに対して靴の長手方向にずれるおそれがある。ストラップの位置がアッパーに対して靴の長手方向にずれた場合は、足を靴内に固定するために必要な締め付け力が得られないことがある。また、足を靴内に固定するために靴の適切な位置を締め付けられないことがある。
【0005】
本発明の目的は、ストラップの自由端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれが生じにくい靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る靴は、足に装着される靴であって、靴底と、靴底に取り付けられるアッパーと、靴の幅方向に延びるストラップと、を備える。ストラップは、アッパーに固定される近位端と、近位端に対して靴の幅方向の反対側に位置する遠位端とを有する。アッパーおよびストラップの一方は、少なくとも1つの第1の係合部を有する。アッパーおよびストラップの他方は、遠位端がアッパーに対して保持される際に、少なくとも1つの第1の係合部と係合し、靴の長手方向と交差する方向に延びる少なくとも1つの第2の係合部を備える。
【0007】
第1の態様に係る靴では、ストラップの遠位端がアッパーに対して保持される際に、少なくとも1つの第2の係合部が少なくとも1つの第1の係合部に係合する。これにより、ストラップの遠位端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれが生じにくい。ここで、遠位端はストラップの自由端である。
【0008】
第2の態様に係る靴は、第1の態様に従う靴において、少なくとも1つの第1の係合部は、少なくとも1つの第1の凸部を含む。少なくとも1つの第2の係合部は、靴の長手方向に並ぶ複数の第2の凸部を含む。遠位端がアッパーに対して保持される際に、少なくとも1つの第1の凸部は、隣り合う第2の凸部の間に係合される。第2の態様に係る靴では、遠位端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれを簡単な構成で抑制することができる。また、少なくとも1つの第1の係合部と少なくとも1つの第2の係合部とが係合するときに、隣り合う第2の凸部によって少なくとも1つの第1の係合部をガイドすることが可能になる。
【0009】
第3の態様に係る靴は、第1の態様に従う靴において、少なくとも1つの第1の係合部は、少なくとも1つの第1の凸部を含む。少なくとも1つの第2の係合部は、少なくとも1つの溝部を含む。遠位端がアッパーに対して保持される際に、少なくとも1つの第1の凸部は、少なくとも1つの溝部に係合される。第3の態様に係る靴では、遠位端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれを簡単な構成で抑制することができる。また、少なくとも1つの第1の係合部と少なくとも1つの第2の係合部とが係合するときに、少なくとも1つの第1の凸部を少なくとも1つの溝部によってガイドすることが可能になる。
【0010】
第4の態様に係る靴は、第1から第3の態様のいずれか1つに従う靴において、少なくとも1つの第1の係合部は、遠位端がアッパーに対して保持される際に、靴の長手方向と交差する方向に延びる。第4の態様に係る靴では、ストラップの遠位端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれがさらに生じにくくなる。また、ストラップが締め付け方向にガイドされやすくなる。
【0011】
第5の態様に係る靴は、第1から第4の態様のいずれか1つに従う靴において、ストラップに張力を付与する締め付け構造をさらに備える。第5の態様に係る靴では、締め付け構造によって容易にストラップに張力を付与することができる。また、第1の係合部および第2の係合部と共に締め付け構造を用いることで、ストラップを締め付けたときに、アッパーに対するストラップの位置ずれをさらに低減できる。
【0012】
第6の態様に係る靴は、第5の態様に従う靴において、少なくとも1つの第2の係合部は、アッパーに設けられる。締め付け構造は、少なくとも1つの第2の係合部に沿った張力をストラップに付与する。第6の態様に係る靴では、締め付け構造によってストラップを締め付けるときにおいて、アッパーに対するストラップの位置ずれが生じにくくなる。
【0013】
第7の態様に係る靴は、第5または第6の態様に従う靴において、締め付け構造は、紐部材および巻取部材を有する。紐部材は、アッパーおよびストラップのいずれか一方に取り付けられる。巻取部材は、アッパーおよびストラップのいずれか他方に取り付けられ、紐部材を巻き取る。第7の態様に係る靴では、ストラップの締め付けおよびストラップの締め付け力の調整が容易になる。
【0014】
第8の態様に係る靴は、第1から第7の態様のいずれか1つに従う靴において、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方は、網目織材料でできている。第8の態様に係る靴では、この場合は、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方の形成が容易になる。また、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方に通気性を持たせることができる。また、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方を軽量化することができる。
【0015】
第9の態様に係る靴は、第8の態様に従う靴において、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方は、ストラップに設けられる。第9の態様に係る靴では、少なくとも1つの第1の係合部および少なくとも1つの第2の係合部の一方をストラップに直接形成する場合に比べて、ストラップの素材の柔らかさを維持し易い。また、ストラップに通気性を持たせ易い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストラップの自由端がアッパーに対して保持される際に、アッパーに対するストラップの位置ずれが生じにくい靴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】アッパーとストラップとの係合を解除した状態を示す斜視図。
【
図3】アッパーとストラップとの係合を説明するための模式図。
【
図4】アッパーとストラップとの係合を説明するための模式図。
【
図6】他の実施形態に係るアッパーとストラップとの係合を説明するための模式図。
【
図7】他の実施形態に係る
図4のV-V線断面図に相当する図。
【
図9】他の実施形態に係るアッパーとストラップとの係合を解除した状態を示す斜視図。
【
図10】他の実施形態に係るアッパーとストラップとの係合を解除した状態を示す斜視図。
【
図11】他の実施形態に係るアッパーとストラップとの係合を解除した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る靴10の斜視図である。靴10は、
図1に示すように、足Fに装着される。本発明に係る靴10は、スポーツに用いられる靴、スニーカー、或いはストラップを有するスリッパなどの履物にも適用され得る。なお、本明細書では、左足に装着される靴について説明し、右足に装着される靴の説明は省略する。
【0019】
靴10は、靴底12と、アッパー14と、ストラップ16と、を備える。靴10は、好ましくは、締め付け構造18を備える。
【0020】
靴底12は、足裏を支持する。靴底12は、アウトソール12aを含む。また、靴底12は、図示しないインソールを含む。インソールは、靴底12に対してアウトソール12aの反対側に設けられている。アウトソール12aは、靴10の外側に面している。アウトソール12aは、例えば、地面と接する。インソールは、靴10の内側に面している。インソールは足裏と接する。
【0021】
アッパー14は、足Fの甲を覆う。アッパー14は、靴底12に取り付けられる。
アッパー14は、靴底12のインソール側に取り付けられる。アッパー14は、靴10の左側に位置する左アッパー部14aと、靴10の右側に位置する右アッパー部14bとを含む。なお、ここでの左右は、靴10を後方(踵側)からつま先に向かって見たときの左右を意味する。そして、アッパー14側が上側で、靴底12側が下側である。また、アッパー14は、靴10の前側に位置する前アッパー部14cと、靴10の後側に位置する後アッパー部14dとを含む。靴10の前側は、つま先側である。靴10の後側は、踵側である。前アッパー部14cは、例えば、足のつま先の部分と甲の部分とを覆っている。後アッパー部14dは、例えば、足の踵の部分を覆っている。前アッパー部14cおよび後アッパー部14dは、左アッパー部14aと右アッパー部14bとを接続する。アッパー14は、開口14eをさらに含む。開口14eは、靴10を履く時に、足Fが挿入される部分である。開口14eは、例えば、履き口である。
【0022】
開口14eは、後アッパー部14d側に設けられる。開口14eは、上方に向かって開口されている。開口14eは、例えば、左アッパー部14a、右アッパー部14b、前アッパー部14cおよび後アッパー部14dで囲まれている。開口14eは、アッパー部14a,14b,14c,14dに対して靴底12の反対側に設けられている。例えば、後アッパー部14dを含まない靴10では、開口14eは、左アッパー部14a、右アッパー部14b、前アッパー部14cおよび靴底12で囲まれている。この靴10は、例えば、サンダルである。また、例えば、足首まで覆う靴10の場合には、左アッパー部14a、右アッパー部14b、前アッパー部14cおよび後アッパー部14dは、足首まで延びている。足首の上側の部分まで覆う靴10の場合には、左アッパー部14a、右アッパー部14b、前アッパー部14cおよび後アッパー部14dは、足首の上側の部分まで延びている。この靴10は、例えば、ブーツである。なお、ストラップは、足首から上を覆う部分にも設けられる。そして、後述する本実施形態の係合部20,30は、足首から上を覆う部分にも設けられる。
【0023】
図2は、アッパー14とストラップ16との係合を解除した状態を示す斜視図である。
図3および
図4は、アッパー14とストラップ16との係合を説明するための模式図である。
図5は、
図4のV-V線断面図である。
【0024】
ストラップ16は、靴10の幅方向に延びている。ストラップ16は、近位端16aと、遠位端16bとを含む。近位端16aは、アッパー14に固定される。本実施形態では、近位端16aは、右アッパー部14bに固定される。遠位端16bは、近位端16aに対して靴10の幅方向の反対側に位置する。遠位端16bは、ストラップ16の自由端である。遠位端16bは、アッパー14に対して保持され得る。本実施形態では、遠位端16bは、左アッパー部14aに対して保持され得る。本実施形態では、後述するように、アッパー14自体に第2の係合部30が形成されている。しかし、第2の係合部30は、別部品としてアッパー14に取り付けられることができる。
【0025】
アッパー14およびストラップ16の一方は、少なくとも1つの第1の係合部20を含む。アッパー14およびストラップ16の他方は、少なくとも1つの第2の係合部30を含む。少なくとも1つの第2の係合部30は、遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、少なくとも1つの第1の係合部20と係合する。少なくとも1つの第2の係合部30は、靴10の長手方向Xと交差する方向に延びている。靴10の長手方向Xは、靴10のつま先から踵までの全長を示す方向である。本実施形態では、ストラップ16は、少なくとも1つの第1の係合部20を含み、アッパー14は、少なくとも1つの第2の係合部30を含む。
【0026】
少なくとも1つの第1の係合部20および少なくとも1つの第2の係合部30の一方は、好ましくは網目織材料でできている。そして、この少なくとも1つの第1の係合部20および少なくとも1つの第2の係合部30の一方は、ストラップ16に設けられる。網目織は、ネットのように織り合わされた糸やワイヤーから作られた素材またはこの素材の一部である。ネットは、規則的な間隔で相互に織り合わされた糸またはワイヤーでできている。本実施形態では、少なくとも1つの第1の係合部20が網目織材料でできている。なお、少なくとも1つの第1の係合部20は、ストラップ16に一体的に形成されていてもよい。
【0027】
少なくとも1つの第1の係合部20は、少なくとも1つの第1の凸部20aを含む。本実施形態では、少なくとも1つの第1の凸部20aは、ストラップ16の遠位端16bの裏面16c側に配置される。裏面16cは、遠位端16bがアッパー14に保持される際に、アッパー14と対向する。また、本実施形態では、少なくとも1つの第1の凸部20aは、網目織部材32によって形成されている。少なくとも1つの第1の凸部20aは、アッパー14とストラップ16とが係合した状態において、ストラップ16からアッパー14に向かう方向に突出する。アッパー14とストラップ16とが係合した状態とは、少なくとも1つの第1の凸部20aと少なくとも1つの第2の係合部30とが係合している状態である。つまり、アッパー14とストラップ16とが係合した状態とは、遠位端16bがアッパー14に保持される状態である。少なくとも1つの第1の凸部20aは、遠位端16bがアッパー14に保持される際に、靴10の長手方向Xと交差する方向に延びている。なお、少なくとも1つの第1の凸部20aは、遠位端16bがアッパー14に保持される際に、必ずしも靴10の長手方向Xと交差する方向に延びていなくてもよい。なお、本実施形態では、少なくとも1つの第1の凸部20aは、遠位端16bがアッパー14に保持される際に、後述する複数の第2の凸部30aに沿って延び、靴10の長手方向Xに並ぶ複数の第1の凸部20aを含む。
【0028】
少なくとも1つの第2の係合部30は、靴10の長手方向Xに並ぶ複数の第2の凸部30aを含む。複数の第2の凸部30aは、例えば、左アッパー部14aの表面または右アッパー部14bの表面に形成されている。本実施形態では、複数の第2の凸部30aは、左アッパー部14aの表面に形成されている。例えば、複数の第2の凸部30aは、少なくともアッパー14の表面を変形させて形成されている。複数の第2の凸部30aは、例えば、高周波プレスによって形成されている。複数の第2の凸部30aは、アッパー14とストラップ16とが係合した状態において、アッパー14からストラップ16に向かう方向に突出する。複数の第2の凸部30aは、靴10の長手方向Xと交差する方向に延びている。複数の第2の凸部30aは、概ね靴10の幅方向に円弧状に延びている。なお、複数の第2の凸部30aは、直線状に延びていてもよい。
【0029】
図5に示すように、少なくとも1つの第1の凸部20aは、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、隣り合う第2の凸部30aの間に係合される。
図5において、表面14fは左アッパー部14aの表面である。第2の凸部30aは、表面14fに対して突出している。なお、
図2から
図4では、少なくとも1つの第1の係合部20が複数の第1の凸部20aを含む構成を図示している。しかし、複数の第1の凸部20aの一部のみに符号20aを付して、他の第1の凸部20aの符号を省略している。同様に、
図2から
図4では、複数の第2の凸部30aの一部のみに符号30aを付して、他の第2の凸部30aの符号を省略している。また、
図2から
図5では、複数の第1の凸部20aと複数の第2の凸部30aが図示されている。しかし、第1の凸部20aと第2の凸部30aの係合は、1つの第1の凸部20aと2つの第2の凸部30aで実現される。この場合には、2つの第2の凸部30aの間に第1の凸部20aが係合する凹部が形成される。同様に、第1の凸部20aと第2の凸部30aの係合は、2つの第1の凸部20aと1つの第2の凸部30aで実現される。この場合には、2つの第1の凸部20aの間に第2の凸部30aが係合する凹部が形成される。
【0030】
締め付け構造18は、ストラップ16に張力を付与する。締め付け構造18は、少なくとも1つの第2の係合部30に沿った張力をストラップ16に付与する。ここで、少なくとも1つの第2の係合部30は、アッパー14に設けられる。締め付け構造18は、周知の構造であり、紐部材18aと、紐部材18aを巻き取る巻取部材18bと、を含む。紐部材18aは、アッパー14およびストラップ16のいずれか一方に取り付けられる。巻取部材18bは、アッパー14およびストラップ16のいずれか他方に取り付けられる。本実施形態では、紐部材18aは、アッパー14に取り付けられ、巻取部材18bは、ストラップ16に取り付けられている。
【0031】
紐部材18aは、本実施形態では、左アッパー部14aにおいて、複数の第2の凸部30aよりも靴底12に近い位置に取り付けられている。左アッパー部14aには、紐部材18aを引っ掛けるための引っ掛け部40が設けられている。
【0032】
一例として、巻取部材18bは、図示しない巻き取り部、ワンウェイクラッチおよび解除機構を含む。ワンウェイクラッチは、巻き取り部の巻き取り解除方向の回転を禁止する。解除機構は、ワンウェイクラッチの作動を解除する。巻取部材18bは、紐部材18aの両端が取り付けられる。巻取部材18bが回転操作されると、紐部材18aが巻き取られる。これにより、ストラップ16に作用する張力が調整される。なお、本実施形態では、締め付け構造18よりも前側の位置には、締め付け構造42が設けられている。締め付け構造42は、左アッパー部14aと右アッパー部14bとを互いに近づく方向に締め付けるために用いられる。締め付け構造42は、締め付け構造18と同様の構造である。なお、締め付け構造42は、省略されてもよい。
【0033】
上記構成の靴10では、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、少なくとも1つの第2の係合部30が少なくとも1つの第1の係合部20に係合する。これにより、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、アッパー14に対するストラップ16の位置ずれが生じにくい。
【0034】
また、締め付け構造18は、少なくとも1つの第2の係合部30に沿った張力をストラップ16に付与する。これにより、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、アッパー14に対するストラップ16の位置ずれがさらに生じにくい。
【0035】
また、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、少なくとも1つの第1の凸部20aは、隣り合う第2の凸部30aの間に係合される。締め付け構造18によってストラップ16に作用する張力が調整されるときに、少なくとも1つの第1の凸部20aは、隣り合う第2の凸部30aによって複数の第2の凸部30aが延びる方向にガイドされる。これにより、締め付け構造18によってストラップ16に作用する張力を調整するとき、アッパー14に対するストラップ16の位置ずれが生じにくい。
【0036】
本実施形態では、第1の凸部20aおよび第2の凸部30aは、連続して延びている。しかし、少なくとも第1の凸部20aおよび第2の凸部30aの一方は、連続して延びている必要はない。例えば、円形の突起が並んで形成されてもよい。連続して延びる凸部は、間隔をおいて配置される凸部にガイドされる。または、間隔をおいて配置される凸部は、連続して延びる凸部にガイドされる。
【0037】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態および変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0038】
前記実施形態では、ストラップ16は、少なくとも1つの第1の係合部20を含み、アッパー14は、少なくとも1つの第2の係合部30を含んでいた。しかしながら、
図6に示すように、少なくとも1つの第1の係合部20および少なくとも1つの第2の係合部30は、互いの配置を逆転させてもよい。すなわち、ストラップ16は、少なくとも1つの第2の係合部30を含み、アッパー14は、少なくとも1つの第1の係合部20を含んでもよい。
【0039】
前記実施形態では、少なくとも1つの第2の係合部30は、靴10の長手方向Xに並ぶ複数の第2の凸部30aを含んでいた。しかしながら、
図7に示すように、少なくとも1つの第2の係合部30は、少なくとも1つの溝部130aを含んでもよい。
図7において、表面14fは左アッパー部14aの表面である。溝部130aは、表面14fに対して凹んでいる。この場合、ストラップ16の遠位端16bがアッパー14に対して保持される際に、少なくとも1つの第1の凸部20aは、少なくとも1つの溝部130aに係合される。また、少なくとも1つの第1の凸部20aは、連続して延びている必要はない。例えば、円形の突起が並んで形成されてもよい。間隔をおいて配置される第1の凸部20aは、連続して延びる溝部130aにガイドされる。
【0040】
前記実施形態では、締め付け構造18の紐部材18aは、アッパー14に取り付けられ、巻取部材18bは、ストラップ16に取り付けられていた。しかしながら、
図8に示すように、紐部材18aは、ストラップ16に取り付けられ、巻取部材18bは、アッパー14に取り付けられていてもよい。
【0041】
前記実施形態では、締め付け構造18は、紐部材18aと巻取部材18bとを含んでいた。しかしながら、締め付け構造18は、
図9に示すように、アッパー14およびストラップ16にそれぞれ設けられた面ファスナー180aで構成されていてもよい。面ファスナー180aは、面形状をしており、着脱が可能である。面ファスナー180aは、例えば、布に特殊な加工がされている。面ファスナー180aは、ファスナーを再び脱着可能な状態で結合したい場合に用いられる。一般的な面ファスナーは、フック状に起毛された側とループ状に起毛された側とを有する。これらの両方を押し付けると、フック状に起毛とループ状に起毛とが貼り付くようになっている。
【0042】
前記実施形態では、締め付け構造18は巻取部材18bを備えていたが、締め付け構造18は巻取部材18bを省略できる。例えば、
図10に示すように、ストラップ16の遠位端16bに設けられた少なくとも1つの穴46に紐部材18aを通す。そして、アッパー14側の引っ掛け部40に紐部材18aを引っ掛けた状態で紐部材18aの両端を結ぶ。これによって、紐部材18aを締めることができる。また、引っ掛け部40は省略できる。その場合、例えば、
図11に示すように、アッパー14に紐部材18aを通す少なくとも1つの穴48を設けることができる。ストラップ16の遠位端16bに設けられた少なくとも1つの穴46とアッパー14に設けられた少なくとも1つの穴48とに紐部材18aを通す。そして、紐部材18aの両端を結ぶことで紐部材18aを締めることができる。なお、この実施形態では、アッパー14側で紐部材18aを結んでいる。しかし、ストラップ16側で紐部材18aを結ぶことができる。
【0043】
靴10は、自転車用の靴であってもよい。この場合、例えば、図12に示すように、靴10は、図示しないクリートが取り付けられる取付部50をさらに備えていてもよい。クリートは自転車用の靴の靴底に取り付けられる板状の部材である。クリートをペダルに係合させることで、自転車用の靴と自転車のペダルとが係合する。
【符号の説明】
【0044】
10 靴
12 靴底
14 アッパー
16 ストラップ
16a 近位端
16b 遠位端
18 締め付け構造
18a 紐部材
18b 巻取部材
20 第1の係合部
20a 第1の凸部
30 第2の係合部
30a 第2の凸部
130a 溝部
F 足