IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

特許7474116光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具
<>
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図1A
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図1B
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図2
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図3
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図4
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図5A
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図5B
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図5C
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図6
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図7
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図8
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図9
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図10A
  • 特許-光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具 図10B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240417BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20240417BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20240417BHJP
   F21S 41/265 20180101ALI20240417BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20240417BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240417BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20240417BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240417BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20240417BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20240417BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20240417BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20240417BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240417BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240417BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240417BHJP
【FI】
G02B3/00 A
F21S41/143
F21S41/16
F21S41/265
F21S41/663
F21V5/00 320
F21V5/04 350
F21V5/04 650
F21W102:155
F21W102:20
F21W102:30
F21W103:00
F21W103:10
F21W103:20
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020094481
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021189306
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリチバ ニキタ
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/074523(WO,A1)
【文献】特表2016-534503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00 - 41/698
F21V 5/00 - 5/10
F21W 102/00 -103/60
F21Y 115/00 -115/30
G02B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配光パターンを形成可能な光学ユニットであって、
光源と、
出射面が自由曲面で形成された複数のレンズ要素を含むレンズアレイと、
前記光源からの光を前記出射面へ向かう平行光にする光学手段と、を備え、
前記複数のレンズ要素は、前記自由曲面の形状がそれぞれ異なる2種以上のレンズ要素を含み、
第1自由曲面を有する複数の第1レンズ要素からなる第1レンズ要素群は、前記第1自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第1配光部へ向けて光を出射し、
第2自由曲面を有する複数の第2レンズ要素からなる第2レンズ要素群は、前記第2自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第2配光部へ向けて光を出射し、
前記複数のレンズ要素の少なくとも一部は、前記レンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、所定の方向の長さが0.25mm以上であり、
前記レンズアレイは、前記光学手段からの平行光が入射する入射面が平面である
光学ユニット。
【請求項2】
前記第1レンズ要素の大きさは、前記第2レンズ要素の大きさとは異なる、
請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記レンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、
前記複数のレンズ要素は、四角形状であり、
各レンズ要素が隙間なく並べられている、
請求項1又は請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記配光パターンを形成するための遮光体を備えない、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記第1配光部は、カットラインを含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記光学手段は、コリメータレンズであり、
前記第1レンズ要素群は、前記コリメータレンズの端部からの平行光が入射する位置にある、
請求項に記載の光学ユニット。
【請求項7】
所定の配光パターンを形成可能な光学ユニットであって、
第1光学ユニットと、第2光学ユニットと、を備え、
前記第1光学ユニットは、
第1光源と、
出射面が第1自由曲面で形成された複数の第1レンズ要素を含む第1レンズアレイと、
前記第1光源からの光を前記第1自由曲面へ向かう平行光にする第1光学手段と、を有し、
前記第2光学ユニットは、
第2光源と、
出射面が前記第1自由曲面とは異なる形状の第2自由曲面で形成された複数の第2レンズ要素を含む第2レンズアレイと、
前記第2光源からの光を前記第2自由曲面へ向かう平行光にする第2光学手段と、を有し、
前記第1光学ユニットは、前記第1自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第1配光部へ向けて光を出射し、
前記第2光学ユニットは、前記第2自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第2配光部へ向けて光を出射し、
前記第1レンズ要素および前記第2レンズ要素は、それぞれのレンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、所定の方向の長さが0.25mm以上であり、
前記第1レンズアレイは、前記第1光学手段からの平行光が入射する入射面が平面であり
前記第2レンズアレイは、前記第2光学手段からの平行光が入射する入射面が平面である
光学ユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学ユニットを備えた、
車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、 光学ユニット、及びそれを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配光パターンを有する車両用灯具が記載されている。特許文献1の車両用灯具は、マイクロレンズアレイ(以下、「MLA」とも称する)の入射面と出射面の間に遮光体を設け、当該遮光体によって入射面から入射してきた光の一部を遮ることによって、配光パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-534503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用灯具では、MLAの入射面から入射した光の一部が遮光体に吸収されるため、光の利用効率の点などで改善の余地があった。
【0005】
本開示は、所定の配光パターンを形成可能であって、光源からの光の利用効率の高い光学ユニット及びそれを備えた車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光学ユニットは、
所定の配光パターンを形成可能な光学ユニットであって、
光源と、
出射面が自由曲面で形成された複数のレンズ要素を含むレンズアレイと、
前記光源からの光を前記出射面へ向かう平行光にする光学手段と、を備え、
前記複数のレンズ要素は、前記自由曲面の形状がそれぞれ異なる2種以上のレンズ要素を含み、
第1自由曲面を有する複数の第1レンズ要素からなる第1レンズ要素群は、前記第1自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第1配光部へ向けて光を出射し、
第2自由曲面を有する複数の第2レンズ要素からなる第2レンズ要素群は、前記第2自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第2配光部へ向けて光を出射し、
前記複数のレンズ要素の少なくとも一部は、前記レンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、所定の方向の長さが0.25mm以上である。
【0007】
この構成によれば、所定の配光パターンを形成可能にしつつ、光源からの光の利用効率を高めることができる。
【0008】
また、上記光学ユニットにおいて、
前記第1レンズ要素の大きさは、前記第2レンズ要素の大きさとは異なるように構成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、例えば、各レンズ要素が受け持つ各配光部内の光量を調節することが容易になる。結果として、所望の配光パターンを形成することが更に容易になる。
【0010】
また、上記光学ユニットは、
前記レンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、
前記複数のレンズ要素が、四角形状であり、
各レンズ要素が隙間なく並べられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば、各レンズ要素間において、配光パターンの形成に関与しない出射面が形成されることを抑制できる。結果として、グレア等の迷光を低減できる。また、レンズアレイの製造がし易くなる。
【0012】
また、上記光学ユニットは、
前記配光パターンを形成するための遮光体を備えていなくてもよい。
【0013】
この構成によれば、例えば、光源からの光の利用効率を更に高めることができる。
【0014】
また、上記光学ユニットにおいて、
前記レンズアレイは、入射面が平面であってもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば、入射面を球面等にする場合と比べて、光学的な設計が容易になり、レンズアレイの製造も容易になる。また、例えば、コリメートレンズ等の光学手段と接合して一体的なものとすることもでき、その場合、省スペース性に寄与する。
【0016】
また、上記光学ユニットにおいて、
前記第1配光部は、カットラインを含んでいてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば、自動車のフォグランプやロービーム用前照灯などの用途に有用な光学ユニットを提供することができる。
【0018】
また、上記光学ユニットにおいて、
前記光学手段は、コリメータレンズであり、
前記第1レンズ要素群は、前記コリメータレンズの端部からの平行光が入射する位置にあってもよい。
【0019】
コリメータレンズから見た光源の視角サイズは、コリメータレンズの中央部よりも端部の方が小さい。つまり、コリメータレンズの端部では光源サイズが点光源に近付くので、コリメータレンズの端を通る光線ほど、平行光に近くなる。したがって、上記の構成によれば、コリメータレンズからの光のなかでも、より平行光に近い光によって、カットラインを形成することになるので、カットラインのボケを減少させ、鮮明なカットラインを形成することが可能になる。
【0020】
本開示の一態様に係る光学ユニットは、
所定の配光パターンを形成可能な光学ユニットであって、
第1光学ユニットと、第2光学ユニットと、を備え、
前記第1光学ユニットは、
第1光源と、
出射面が第1自由曲面で形成された複数の第1レンズ要素を含む第1レンズアレイと、
前記第1光源からの光を前記第1自由曲面へ向かう平行光にする第1光学手段と、を有し、
前記第2光学ユニットは、
第2光源と、
出射面が前記第1自由曲面とは異なる形状の第2自由曲面で形成された複数の第2レンズ要素を含む第2レンズアレイと、
前記第2光源からの光を前記第2自由曲面へ向かう平行光にする第2光学手段と、を有し、
前記第1光学ユニットは、前記第1自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第1配光部へ向けて光を出射し、
前記第2光学ユニットは、前記第2自由曲面の形状に基づいて、前記配光パターンのうちの第2配光部へ向けて光を出射し、
前記第1レンズ要素および前記第2レンズ要素は、それぞれのレンズ要素を前記平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合に、所定の方向の長さが0.25mm以上である。
【0021】
この構成によれば、所定の配光パターンを形成可能にしつつ、光源からの光の利用効率を高めることができる。
【0022】
また、本開示の一態様に係る車両用灯具は、
上記のいずれかに記載の光学ユニットを備える。
【0023】
この構成によれば、所定の配光パターンを形成可能であって、光源からの光の利用効率が高い車両用灯具を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、所定の配光パターンを形成可能であって、光源からの光の利用効率の高い光学ユニット及びそれを備えた車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】第一実施形態に係る光学ユニットの一例を示す模式図である。
図1B図1Aに示す光学ユニットの変形例を示す模式図である。
図2】第一実施形態に係る光学ユニットにおけるレンズアレイの一例を示す平面図である。
図3図1Aに示す光学ユニットによって形成される配光パターンの一例を示す模式図である。
図4】本開示に係る光学ユニットにおける平行光の一例を示す模式図である。
図5A】本開示に係るレンズアレイの別例を示す模式図である。
図5B】本開示に係るレンズアレイの別例を示す模式図である。
図5C】本開示に係るレンズアレイの別例を示す模式図である。
図6】本開示に係るレンズアレイによる配光形成方法の一例を説明する模式図である。
図7】本開示に係るレンズアレイの自由曲面の設計方法の一例を説明する模式図である。
図8】第二実施形態に係る光学ユニットの一例を示す模式図である。
図9図8に示す光学ユニットの斜視図である。
図10A図8に示す光学ユニットによって形成される配光パターンの一例を示す模式図である。
図10B図8に示す光学ユニットによって形成される配光パターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示に係る実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号又は名称を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0027】
[第一の実施形態]
図1Aは、本開示の第一の実施形態に係る光学ユニット1の模式図である。図2は、光学ユニット1におけるレンズアレイ30の平面図(レンズアレイ30をその出射面側から視た図)である。図3は、光学ユニット1によって形成される配光パターンP1の模式図である。光学ユニット1は、光源10と、光学手段20と、レンズアレイ30と、を備えている。
【0028】
光源10は、特に制限はされないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)や半導体レーザである。光源10は、例えば、白色またはその他の色の光を発する。光源10は、例えば、矩形状(例えば、正方形や長方形)の発光面を有している。光源10から出射される光は、光学手段20によってレンズアレイ30へ向かう平行光になる。光源10は、例えば、光学手段20の光源側の焦点に配置される。
【0029】
光学手段20は、光源10から出射された光をレンズアレイ30へ向かう平行光にする機能を有する。光学手段20の出射面の形状は、特に制限はされないが、例えば、平面状であることが好ましい。光学手段20の出射面の形状を平面状とし、かつ、レンズアレイ30の入射面の形状を平面状とすることで、両者を貼り合わせて一体的な構造とすることができる。このような一体的な構造を採用することで、省スペース性に寄与することができる。ただし、光学ユニット1は、光学手段20とレンズアレイ30とを張り合わせずに、別体として構成してもよい。
【0030】
光学手段20としては、上記機能を有するものであれば特に制限はされないが、例えば、コリメータレンズやパラボラ反射鏡を用いることができる。図1Aに示す例では、光学手段20はコリメータレンズであり、具体的には、内面での全反射を利用したTIR(Total Internal Reflection)反射鏡である。
【0031】
ここで、図1Bは、光学ユニット1の変形例である光学ユニット101を示す模式図である。光学ユニット101における光学手段120は、コリメータレンズであって、具体的には、フレネルレンズと全反射プリズムを一体化したものである。光学ユニット1と光学ユニット101とは、光学手段として用いたコリメータレンズの種類を除いて、同様の構成である。以下において言及される光学手段20は、光学手段120であってもよい。
【0032】
レンズアレイ30は、入射面30aと、複数の第1レンズ要素31からなる第1出射面32と、複数の第2レンズ要素33からなる第2出射面34と、を有する。入射面30aは、上述の理由により、平面状であることが好ましい。レンズアレイ30は、光学手段20と貼り合わせて一体的な構造を採用することが好ましい。光学手段20からの平行光は、入射面30aに入射し、第1出射面32または第2出射面34から出射される。
【0033】
第1レンズ要素31の出射面は、第1自由曲面31aによって形成されている。第1レンズ要素31は、入射面30aから入射する平行光を第1自由曲面31aから出射する。第1自由曲面31aから出射される光は、第1自由曲面31aの形状に基づいて屈折し、例えば、図3に示す配光パターンP1のうちの第1配光部Z1へ向かって照射される。
【0034】
第2レンズ要素33の出射面は、第1自由曲面31aとは形状が異なる第2自由曲面33aによって形成されている。第2レンズ要素33は、入射面30aから入射する平行光を第2自由曲面33aから出射する。第2自由曲面33aから出射される光は、第2自由曲面33aの形状に基づいて屈折し、例えば、図3に示す配光パターンP1のうちの第2配光部Z2へ向かって照射される。
【0035】
ここで、配光パターンP1は、例えば、自動車用の前照灯のロービーム用の配光パターンである。配光パターンP1は、複数の第1自由曲面31a(第1出射面32)から出射される光によって形成される第1配光部Z1と、複数の第2自由曲面33a(第2出射面34)から出射される光によって形成される第2配光部Z2と、の組み合わせによって構成されている。
【0036】
第1配光部Z1は、従来のロービームのカットラインに相当する部分を含む。具体的には、第1配光部Z1の上端が、カットラインを形成している。このカットラインは、第1自由曲面31aの形状に基づく配光制御によって形成される。これにより、遮光体で一部の光を遮ってカットラインを形成する場合よりも、光の利用効率を向上させることができる。なお、光学ユニット1は、遮光体を含んでいないことが好ましいが、一部のレンズ要素は遮光体を有していてもよい。一部のレンズ要素が遮光体を有していたとしても、全てのレンズ要素が遮光体を有している場合よりは、光の利用効率が高くなる。
【0037】
レンズアレイ30の説明に戻る。第1レンズ要素31および第2レンズ要素33は、図2に示すように各レンズ要素をレンズアレイ30の出射面側から視た場合(各レンズ要素を出射面に向かう平行光の進行方向とは反対側の方向から視た場合)において、所定の方向の長さが0.25mm以上であり、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。
【0038】
ここで、所定の方向の長さとは、例えば、レンズ要素が矩形状である場合、縦方向および/または横方向の長さである。また、所定の方向の長さは、例えば、レンズ要素が円形状である場合は直径方向の長さであり、レンズ要素が楕円形状である場合は長軸方向および/または短軸方向の長さである。なお、レンズ要素の形状は四角形状(例えば、矩形状)であることが好ましく、各レンズ要素が隙間なく並べられていることが好ましい。なお、以下の説明において、各レンズ要素の大きさや長さや形状とは、各レンズ要素をレンズアレイの出射面側から視た場合のものを指す。
【0039】
所定の方向の長さを0.25mm以上とすることにより、各レンズ要素の自由曲面の設計および製造がし易くなる。また、一つ一つのレンズ要素を大きくすれば、レンズアレイ30の単位面積あたりのレンズ要素の数が少なくなる。そのため、加工上の精度によって各レンズ要素の縁部分に生じうる、配光パターンの形成に関与しない無効部の総面積を少なくすることができる。結果として、グレア等の迷光を低減できる。一方で、上記所定方向の長さの規定を満たす範囲において、一つ一つのレンズ要素を小さくすれば、各レンズ要素の自由曲面を制御して配光パターンを細かく調整することが可能になる。各レンズ要素のサイズは、無効部の総面積と配光パターンの調整という2つの観点に基づいて決定されることが好ましい。
【0040】
一例として、第1レンズ要素31は、縦方向の長さa1が0.7mm、横方向の長さb1が0.3mmの長方形状である。また、一例として、第2レンズ要素33は、縦方向の長さa2が1.5mm、横方向の長さb1が1.0mmの長方形状である。
【0041】
第1レンズ要素31および第2レンズ要素33の大きさは、所望の配光パターンに応じて適宜決定すればよい。レンズ要素の大きさを変更することで、配光パターン内において当該レンズ要素が受け持つ部位の光量を調整することができる。
【0042】
各レンズ要素の配置は、特に制限はされないが、カットラインの形成に関与する第1レンズ要素31は、光学手段20の端部からの平行光が入射する位置にあることが好ましい。すなわち、図2に示すように、レンズアレイ30の中央部に第2レンズ要素33が配置され、当該中央部の周囲に第1レンズ要素31が配置されることが好ましい。
【0043】
図4は、上記の配置が好ましいことを説明するための図である。図4は、具体的には、光学ユニットにおける平行光の一例を示す模式図である。図4に示す光学ユニット201は、光源10と、光学手段(コリメータレンズ)220と、レンズアレイ30と、を備えている。
【0044】
光源10から出射された光は、光学手段220によって光軸Axに平行な平行光とされる。しかし、光学手段220から出射される光は、その全てが光軸Axに完全に平行となるわけではなく、その一部は光軸Axに平行な方向から僅かにズレた方向へと進む。ここで、光学手段220から見た光源10の視角サイズは、光学手段220の中央部220bよりも端部220aの方が小さく、端部220aの方が光源10の視覚サイズが点光源に近付く。そのため、端部220aを通る光線は、中央部220bを通る光線よりも平行光に近くなる。すなわち、端部220aを通過して光軸Axに平行となった光L1の周囲の光のズレS1は、中央部220bを通過して光軸Axに平行となった光L2の周囲の光のズレS2よりも小さくなる。よって、端部220aからの平行光が入射する位置に第1レンズ要素31を配置することで、光軸Axに平行な度合いの高い光を第1レンズ要素31に入射させることができ、鮮明なカットラインを形成可能になる。
【0045】
図5A図5Cは、レンズアレイ30の別例を示す模式図である。図5Aに示すレンズアレイ230は、複数のレンズ要素231と、複数のレンズ要素233と、を備えている。レンズ要素231およびレンズ要素233は、自由曲面の形状が凹型である。レンズアレイ230において、レンズ要素231が配置される区画は、レンズ要素233が配置される区画と隣接している。
【0046】
図5Bに示すレンズアレイ330は、複数のレンズ要素331と、複数のレンズ要素333と、を備えている。レンズ要素331およびレンズ要素333は、自由曲面の形状が凸型である。レンズアレイ330では、その中央部にレンズ要素331が配置される区画があり、当該中央部の周囲にレンズ要素333が配置される区画がある。
【0047】
図5Cに示すレンズアレイ430は、複数のレンズ要素431と、複数のレンズ要素433と、複数のレンズ要素435と、を備えている。レンズ要素431、レンズ要素433、及びレンズ要素435は、自由曲面の形状が凹型である。レンズアレイ430において、レンズ要素431、レンズ要素433、及びレンズ要素435のそれぞれが配置される区画は、他のレンズ要素が配置される区画と隣接している。
【0048】
図5A~5Cに示したように、レンズ要素の種類、数、大きさ、配置、及び自由曲面の構造は、所望する配光パターンに応じて、適宜決定すればよい。本開示に係るレンズアレイは、3種以上のレンズ要素を含むものであってもよい。レンズ要素の種類が増えれば、例えば、配光パターン内において複雑な光度分布を形成することも容易になる。
【0049】
本開示に係るレンズアレイは、自由曲面が凹型のレンズ要素と、自由曲面が凸型のレンズ要素とを含むものであってもよい。また、本開示に係るレンズアレイを構成する各レンズ要素は、上述した所定の方向の長さの規定を満たすレンズ要素のみで構成されることが好ましいが、一部のレンズ要素は当該規定を満たしていなくてもよい。
【0050】
次に、図6を用いて、本開示に係るレンズアレイによる配光形成の方法を更に詳細に説明する。図6には、レンズアレイ530と、レンズアレイ530から出射される光によって形成される配光パターンP1’が示されている。配光パターンP1’は、第1配光部Z1’と、第2配光部Z2’と、によって構成されている。
【0051】
レンズアレイ530は、レンズ要素531a、531e、533a、及び533b等のレンズ要素を含んでいる。レンズ要素531aとレンズ要素531eとは、サイズは同じだが、自由曲面の形状が異なる。レンズ要素531aの自由曲面の形状は、第1配光部Z1’のうちの領域Z1’aへ向けて光を出射するよう設計されている。レンズ要素531eの自由曲面の形状は、第1配光部Z1’のうちの領域Z1’eへ向けて光を出射するよう設計されている。同様に、レンズ要素531aとレンズ要素531eの間に配置されている各レンズ要素の自由曲面の形状も、それぞれに対応する領域Z1’b~dへ向けて光を出射するよう設計されている。すなわち、レンズ要素531a及びレンズ要素531e等のそれぞれは、第1配光部Z1’のうちの異なる領域へ向けて光を出射し、全体として第1配光部Z1’の形成に関与する。
【0052】
レンズ要素533aとレンズ要素533bとは、サイズは同じだが、自由曲面の形状が異なる。レンズ要素533aの自由曲面の形状は、第2配光部Z2’のうちの領域Z2’aへ向けて光を出射するよう設計されている。レンズ要素533bの自由曲面の形状は、第2配光部Z2’のうちの領域Z2’bへ向けて光を出射するよう設計されている。レンズ要素533aと同じサイズの他の各レンズ要素についても、自由曲面の形状は、それぞれに対応する領域へ向けて光を出射するよう設計されている。すなわち、レンズ要素533a及びレンズ要素533b等のそれぞれは、第2配光部Z2’のうちの異なる領域へ向けて光を出射し、全体として第2配光部Z2’の形成に関与する。
【0053】
このように、各レンズ要素の自由曲面の形状を変更して、各レンズ要素から出射される光が向かう位置を調整することで、所望の配光パターンを形成することが可能になる。
【0054】
レンズアレイ530は、以下のような変更を加えてもよい。例えば、レンズ要素531a及びレンズ要素531aと同サイズの他の4つのレンズ要素の自由曲面の形状を同一にして、第1配光部Z1’のうちの全領域に向けて光を出射するように設計してもよい(レンズアレイ30は、このように設計されている)。
【0055】
また、配光パターンP1’内において、いずれかのレンズ要素が担当する領域の一部が、他のレンズ要素が担当する領域の少なくとも一部と重複するようにしてもよい。例えば、レンズ要素533aの自由曲面の形状を、第2配光部Z2’のうちの全領域へ向けて光を出射するよう設計し、レンズ要素533bの自由曲面の形状を、第2配光部のうちの領域Z2’bへ向けて光を出射するよう設計してもよい。この場合、領域Z2’aと領域Z2’bとの間に光度分布が形成される。なお、光度分布は、各レンズ要素の大きさを変更することによっても調整できる。
【0056】
図7は、本開示に係るレンズアレイの自由曲面の設計方法の一例を説明する模式図である。図7には、レンズアレイを構成する一つのレンズ要素631と、配光パターンが形成される仮想的なスクリーンの一部であるメッシュm’1と、が示されている。
【0057】
まず、レンズ要素631の自由曲面631aを、複数のメッシュmによって区画する。複数のメッシュmは、面積が異なるものを含んでいてもよい。また、グレア等の迷光を発生しうる無効部を少なくするという観点から、メッシュmは、矩形状であることが好ましい。
【0058】
次に、自由曲面631aに施された区画と対応するように、自由曲面631aが担当する仮想スクリーン上の領域も複数のメッシュによって区画する。次に、各メッシュmを通過する光線について光線追跡をし、その結果に基づいてメッシュmにおける微小面の形状を計算する。例えば、メッシュm1の4隅を通過する光L11~L14について光線追跡をし、これらの光がメッシュm1に対応するメッシュm’1(仮想スクリーン上の一領域)の4隅へ向かう方向へと屈折するように、メッシュm1の微小面の形状を計算する。他のメッシュmについても同様の作業をすることで、自由曲面631aの形状を設計することができる。なお、光線追跡や微小面の形状の計算には、コンピュータ装置を用いることが好ましい。また、上記のような光線追跡と形状計算によって、光度分布を調整することもできる。
【0059】
[第二の実施形態]
本開示の第二の実施形態に係る光学ユニットは、複数の光学ユニットから構成される。図8は、本開示の第二の実施形態に係る光学ユニット301の模式図である。図9は、光学ユニット301の斜視図である。図10Aは、光学ユニット301によって形成される配光パターンP11を示す。図10Bは、光学ユニット301によって形成される配光パターンP12を示す。
【0060】
図8に示すように、光学ユニット301は、第1光学ユニット832と、第2光学ユニット732と、第3光学ユニット932と、を備えている。また、第1光学ユニット832は、光源10と、光学手段20と、レンズアレイ830と、を備えている。第2光学ユニット732は、光源10と、光学手段20と、レンズアレイ730と、を備えている。第3光学ユニット932は、光源10と、光学手段20と、レンズアレイ930と、を備えている。
【0061】
レンズアレイ830は、複数のレンズ要素831によって構成されている。レンズ要素831の自由曲面の形状は、例えば、図10Aに示す配光パターンP11のうちの第1配光部Z11へ向けて光を出射するよう設計されている。
【0062】
レンズアレイ730は、複数のレンズ要素731によって構成されている。レンズ要素731の自由曲面の形状は、例えば、図10Aに示す配光パターンP11のうちの第2配光部Z12へ向けて光を出射するよう設計されている。
【0063】
配光パターンP11は、例えば、自動車用の前照灯のロービーム用の配光パターンである。配光パターンP11は、レンズアレイ830から出射される光によって形成され、カットラインを含む第1配光部Z11と、レンズアレイ730から出射される光によって形成される第2配光部Z12と、によって構成されている。第1配光部Z11と第2配光部Z12の重複箇所である重複部Z13は、例えば、配光パターンP11における他の箇所よりも光度が高くなっている。配光パターンP11は、さらに、レンズ要素731やレンズ要素831の自由曲面の形状等に基づいた光度分布であって、ロービームに適した光度分布を有していてもよい。
【0064】
レンズアレイ930は、複数のレンズ要素931によって構成されている。レンズ要素931の自由曲面の形状は、例えば、図10Bに示す配光パターンP12のうちの第3配光部Z14へ向けて光を出射するよう設計されている。
【0065】
配光パターンP12は、例えば、自動車用の前照灯のハイビーム用の配光パターンである。配光パターンP12は、レンズアレイ930から出射される光によって形成される第3配光部Z14と同一である。配光パターンP12は、レンズ要素931の自由曲面の形状等に基づいた光度分布であって、ハイビームに適した光度分布を有していてもよい。
【0066】
このように、光学ユニット301は、各光源10のオンオフを切り替えることで、ロービーム及びハイビームの両方の配光パターンを実現することができる。
【0067】
以上、本開示に係る光学ユニットについて複数の実施形態を例に挙げて説明した。本開示に係る光学ユニットは、例えば、車両用灯具として好適に用いることができる。本開示に係る光学ユニットは、具体的には、車両の前照灯、フォグランプ、ポジションランプ、リヤコンビネーションランプ、ターンシグナルランプ、又は、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプ等に好適に用いることができる。
【0068】
なお、本開示の光学ユニットおよび車両用灯具において、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。また、本開示に係る実施形態および変形例が含む要素は、矛盾の生じない範囲で互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1,101,201,301:光学ユニット
10:光源
20,120,220:光学手段(コリメータレンズ)
30,230,330,430,530,730,830,930:レンズアレイ
30a:入射面
31:第1レンズ要素
31a:第1自由曲面
32:第1出射面
33:第2レンズ要素
33a:第2自由曲面
34:第2出射面
231,233,331,333,431,433,435,531a,531b,533a,533e,631,731,831,931:レンズ要素
730a,830a,930a:入射面
732:第2光学ユニット
832:第1光学ユニット
932:第3光学ユニット
Ax:光軸
m,m1,m’1:メッシュ
L,L1,L2,L11~L14:光
P1,P1’,P11,P12:配光パターン
Z1,Z1’,Z11:第1配光部
Z2,Z2’,Z12:第2配光部
Z13:重複部
Z14:第3配光部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B