(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ポンプケース
(51)【国際特許分類】
F02M 37/04 20060101AFI20240417BHJP
F02M 37/08 20060101ALI20240417BHJP
F02M 59/44 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F02M37/04 Z
F02M37/08 E
F02M59/44 U
(21)【出願番号】P 2020095588
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105246(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143072(WO,A1)
【文献】特開2019-015271(JP,A)
【文献】米国特許第05456235(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/04
F02M 37/08 ~ 37/10
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を吸入して吐出するポンプ本体を内部に収容する筒状の周壁を有するケース本体と、
前記ケース本体から前記ケース本体の軸方向と交差する方向に延出され、前記燃料が流通される配管と、を備え、
前記ケース本体は、
前記ケース本体の軸方向一端側の内部に形成され、前記ポンプ本体を収容する第1収容室と、
前記ケース本体の軸方向他端側の内部に形成された第2収容室と、
前記第1収容室と前記第2収容室とを隔成する隔壁と、を有し、
前記配管と前記第1収容室とは、前記燃料が通過される連通口を介して通じており、 前記連通口の内周面の位置と前記隔壁の前記第1収容室側の第1面との間の距離は、1mm以内であり、
前記隔壁は、前記第1面の前記連通口が形成されている側の外周部に形成された凹部を有し、
前記凹部は、前記第1収容室から前記第2収容室に向かって突出する底部を有
し、
前記凹部は、前記ケース本体の径方向外側に向かうに従って深く形成されていることを特徴とするポンプケース。
【請求項2】
前記底部の前記第2収容室側に向かう突出高さは、前記ケース本体の径方向外側に向かうに従って高くなっていることを特徴とする請求項
1に記載のポンプケース。
【請求項3】
前記底部の前記第2収容室側の面は、湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項
2に記載のポンプケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の内燃機関を搭載する車両において、燃料タンクの外側に配置され燃料タンク内の燃料を内燃機関に供給する燃料ポンプモジュールを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の燃料ポンプモジュールは、燃料を加圧して吐出するポンプ本体(燃料ポンプ)と、ポンプ本体を収容するポンプケース(ポンプボデー)と、を備えている。ポンプケースは、周壁の内部にポンプ本体が収容される第1収容室(ポンプ収容室)を有する。ポンプケースの第1収容室を形成する周壁の外周面には、ポンプケースの軸方向と交差する方向に延出する配管が設けられている。配管には、燃料流路内の燃圧を一定に保つためにプレッシャレギュレータから排出された燃料が流通する。配管と第1収容室とは、燃料が通過するように連通口を介して通じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプケースの周壁の内部には、第1収容室の他に燃料を濾過するフィルタ等が配置される第2収容室が設けられることがある。この場合、周壁の内部を第1収容室と第2収容室とに隔成する隔壁が設けられる。
ところで、燃料ポンプモジュールに用いられるポンプケースは、樹脂成形によって形成される。樹脂成形用の金型は、第1収容室および第2収容室を形成するためのコアやキャビティを有している。これらコアとキャビティとの間に溶融樹脂が流れ込むことにより、第1収容室、第2収容室および隔壁が成形される。第1収容室から延出される配管は、金型の離型方向と交差する方向にスライド移動するスライドコアピンによって形成される。
【0006】
上述のようなポンプケースにおいて、例えば配管と第1収容室との連通口が、隔壁の近傍に設けられている場合、スライドコアピンの位置決めを精度よく行うために、第1収容室の連通口に対応する位置に、スライドコアピンの先端部が嵌め込まれる凹部を形成することが望ましい。
しかしながら、第1収容室を形成するコアの隔壁側の端部と凹部との位置が近すぎてコアの隔壁側の端部と凹部との間の肉厚が他の部分と比べて薄くなってしまう。
スライドコアピンに樹脂の射出圧力が加えられると、コアの凹部が破損して、コア(金型)の破片が飛び散ってしまう可能性があった。
また、コアが破損すると、このコアに支持されていたスライドコアピンが樹脂の射出圧力によってずれてしまう可能性があった。スライドコアピンがずれると、このスライドコアピンが隔壁となる位置に入り込んでしまう。このままの状態で射出成形されると、隔壁の肉厚が一部薄肉になってしまい、ポンプケースを精度よく製造できない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、射出成形時に用いられる金型が破損して、金型の破片が飛び散ることを防止でき、かつ精度よく成形できるポンプケースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るポンプケースは、燃料を吸入して吐出するポンプ本体を内部に収容する筒状の周壁を有するケース本体と、前記ケース本体から前記ケース本体の軸方向と交差する方向に延出され、前記燃料が流通される配管と、を備え、前記ケース本体は、前記ケース本体の軸方向一端側の内部に形成され、前記ポンプ本体を収容する第1収容室と、前記ケース本体の軸方向他端側の内部に形成された第2収容室と、前記第1収容室と前記第2収容室とを隔成する隔壁と、を有し、前記配管と前記第1収容室とは、前記燃料が通過される連通口を介して通じており、前記連通口の内周面の位置と前記隔壁の前記第1収容室側の第1面との間の距離は、1mm以内であり、前記隔壁は、前記第1面の前記連通口が形成されている側の外周部に形成された凹部を有し、前記凹部は、前記第1収容室から前記第2収容室に向かって突出する底部を有し、前記凹部は、前記ケース本体の径方向外側に向かうに従って深く形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成において、前記底部の前記第2収容室側に向かう突出高さは、前記ケース本体の径方向外側に向かうに従って高くなっていてもよい。
【0011】
上記構成において、前記底部の前記第2収容室側の面は、湾曲状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出成形時に用いられる金型が破損して、金型の破片が飛び散ることを防止でき、かつ精度よく成形できるポンプケースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の燃料ポンプモジュールの外観斜視図である。
【
図2】実施形態の燃料ポンプモジュールの分解斜視図である。
【
図4】金型を型締めした状態を示す断面模式図である。
【
図5】
図4に示す状態から、キャビティ内に射出した溶融樹脂を冷却固化してポンプケースを形成した状態を示す断面模式図である。
【
図6】
図5に示す状態から、金型を離型してポンプケースを取り出している状態を示す断面模式図である。
【
図7】
図4に示す状態から、キャビティ内に溶融樹脂を射出してスライドコアピンがずれた状態でポンプケースを形成した状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、
図1から
図7に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、燃料ポンプモジュール1の外観斜視図である。
図1に示す本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、例えば、自動二輪車等の鞍乗型車両の燃料タンク(不図示)の外部に配置されて、燃料タンク内のガソリン等の液体燃料(以下、「燃料」と呼ぶ。)を内燃機関(不図示)に向けて圧送する用途に適用される。燃料ポンプモジュール1は、それ以外の自動四輪車両等の車両に搭載することも可能である。
【0015】
図2は、燃料ポンプモジュール1の分解斜視図である。
図1から
図2に示すように、燃料ポンプモジュール1は、軸方向D1に長い円筒状のケース本体11を有するポンプケース10と、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側の開口を閉塞する第1モジュールカバー30と、ケース本体11の軸方向D1の他端11b側の開口を閉塞する第2モジュールカバー40と、を備えている。
ポンプケース10と第1、第2モジュールカバー30,40とは、いずれも樹脂材料によって形成されている。本実施形態の燃料ポンプモジュール1は、例えば、ポンプケース10の中心軸線を水平方向に向けた姿勢で、燃料タンク(不図示)の下方に搭載される。ケース本体11の外周面には、燃料タンクから燃料を吸入する吸入配管12と、吸入した燃料を内燃機関に送出する送出配管13と、余剰燃料を流通させ燃料タンクに戻すリターン配管14(請求項の配管に相当)と、が設けられている。
【0016】
吸入配管12と送出配管13とリターン配管14とは、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側から所定距離離間した位置に突設されている。これらの配管12,13,14(吸入配管12、送出配管13、リターン配管14)は、ケース本体11の外周面から軸方向D1と交差する方向に延出している。吸入配管12は、ホース(不図示)等を介して燃料タンクに接続される。送出配管13は、ホース(不図示)等を介して内燃機関に接続される。リターン配管14は、ホース(不図示)等を介して燃料タンクに接続される。燃料ポンプモジュール1は、吸入配管12とリターン配管14とのホース接続端を鉛直方向上方へ向けた姿勢で燃料タンクの下方に搭載される。
【0017】
図3は、
図1のI-I線に沿う断面図である。
図3に示すように、ケース本体11の内部のうちの、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側から所定距離離間した位置には、隔壁17が形成されている(
図2参照)。ケース本体11には、隔壁17を挟んで軸方向D1両側にポンプ収容室15(請求項の第1収容室に相当)とフィルタ収容室16(請求項の第2収容室に相当)とが形成される。換言すると、隔壁17は、ケース本体11の内部にポンプ収容室15とフィルタ収容室16とを隔成している。具体的には、ケース本体11における一端11a側の内部に、ポンプ収容室15が形成されている。ケース本体11における他端11b側の内部に、フィルタ収容室16が形成されている。
【0018】
吸入配管12は、フィルタ収容室16側に通じている。送出配管13は、ポンプ収容室15に通じている。リターン配管14とポンプ収容室15とは、燃料が通過される連通口18を介して通じている。連通口18の内周面18aの位置と隔壁17のポンプ収容室15側の第1面17aとの間の軸方向D1における距離は、1mm以内であり、連通口18の内周面18aは、隔壁17のポンプ収容室15側の第1面17aよりも軸方向D1においてポンプ収容室15側に位置している。
【0019】
隔壁17の第1面17aにおける外周部17bは、ケース本体11の内周面に連続している。外周部17bのうち連通口18の近傍には、凹部19が形成されている。凹部19は、ポンプ収容室15からフィルタ収容室16に向かって突出する底部19aを有している。
【0020】
凹部19は、ケース本体11の径方向D2外側に向かうに従って深く形成されている。凹部19のフィルタ収容室16側に向かう突出高さは、径方向D2外側に向かうに従って高くなっている。凹部19のフィルタ収容室16側の面は、湾曲状に形成されている。
【0021】
一方、
図2に示すように、ケース本体11の他端11b側の外周面には、複数のロック凸部11dが突設されている。ロック凸部11dは、第2モジュールカバー40と係合する。
【0022】
また、ケース本体11のポンプ収容室15の外側を取り囲む周壁11cには、三相の電源ケーブルを接続するためのコネクタ21が一体に設けられている。コネクタ21の三相の端子は、ポンプ収容室15の内部において、中継ケーブルユニット5を介してポンプ本体3の電力供給部に接続されている。
【0023】
ポンプ収容室15には、吸入配管12を通して内部に導入された燃料を吸入して吐出するポンプ本体3が収容されている。ポンプ本体3は、電動モータ(不図示)を内蔵し、電動モータの動力によって駆動される。ポンプ本体3は、吸入した燃料を軸方向D1の一端側のポンプ吸入口3aから吸入し、軸方向D1の他端側のポンプ吐出口3bから吐出する。
【0024】
フィルタ収容室16には、吸入配管12を通して内部に導入された燃料をポンプ本体3に導入する前に濾過するフィルタカートリッジ2が収容されている。フィルタカートリッジ2は、蛇腹状に折り畳まれたフィルタ(フィルタエレメント)2aを環状に配置されてなる。フィルタ2aは、樹脂製のケース部2bに取り付けられている。フィルタ2aは、外周側が燃料の導入側(濾過前側)であり、内周側が燃料の導出側(濾過後側)である。
【0025】
フィルタカートリッジ2のケース部2bには、内筒2cが設けられている。内筒2cは、隔壁17に設けられた貫通孔(不図示)を通してポンプ本体3のポンプ吸入口3aと接続している。なお、内筒2cと隔壁17の貫通孔との間には、密閉用のシール部材20が設けられている。シール部材20は、軸方向D1から見て環状に形成されている。
【0026】
ケース本体11の軸方向D1の他端11b側に設けられた第2モジュールカバー40は、ケース本体11の他端11bの開口を覆うカバー底壁41と、カバー底壁41の外周縁部から軸方向D1に屈曲してポンプケース10側に向かって延びる複数のロック舌片42と、を有している。複数のロック舌片42は、カバー底壁41の外周縁部に等間隔に離間して延設されている。ロック舌片42は、ケース本体11のロック凸部11dと一対一で対応するように設けられている。また、ロック舌片42には、前記ロック舌片42の厚み方向(ケース本体11の径方向D2)に貫通する係合孔43が形成されている。
【0027】
第2モジュールカバー40は、カバー底壁41でケース本体11の他端11b側の開口を覆った状態において、各ロック舌片42を弾性変形させつつ、各ロック舌片42の係合孔43が、対応するロック凸部11dに嵌合される。これにより、第2モジュールカバー40は、ケース本体11の軸方向の端部にスナップフィット式に固定される。第2モジュールカバー40は、ケース本体11のフィルタ収容室16にフィルタカートリッジ2を収容した後に、ケース本体11の軸方向D1の他端11bに固定される。なお、第2モジュールカバー40とケース本体11との間には、密閉用のシール部材44が設けられている。シール部材44は、軸方向D1から見て環状に形成されている。
【0028】
ケース本体11の軸方向D1の一端11a側に設けられた第1モジュールカバー30は、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側の開口を覆う円板状のベース壁31と、ベース壁31の外周縁部から径方向D2外側に延びる円環状の溶着壁32と、ベース壁31と溶着壁32の境界部から(溶着壁32の径方向D2内側位置から)ポンプケース10側に向かって円筒状に突出する内側周壁(不図示)と、溶着壁32の外周縁部から内側周壁と同側に突出する円筒状の外側周壁33と、を備えている。内側周壁と外側周壁33とは、円板状のベース壁31に対して同軸に形成されている。内側周壁は、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側の開口内に挿入される。外側周壁33は、ケース本体11の軸方向D1の一端11a側の周壁11cの外周側を覆う。溶着壁32には、ケース本体11の周壁11cの軸方向D1の一端11a側の端面が突き当てられ、その状態で一端11a側の端面が溶着によって固定されている。
【0029】
第1モジュールカバー30の内周壁の外周面と、ケース本体11の一端11a側の開口の内周面との間には、シール部材34が設けられている。シール部材34は、軸方向D1から見て環状に形成されている。
【0030】
ポンプケース10内の第1モジュールカバー30の裏面に対向する位置には、通路ブロック50が組付けられている。以下では、説明の便宜上、通路ブロック50については、第1モジュールカバー30の裏面に対向する側を正面と呼び、正面と逆側を背面と呼ぶ。
【0031】
通路ブロック50は、樹脂材料によって全体が短軸円柱状に形成されている。通路ブロック50の軸方向は、ケース本体11の軸方向D1に沿っている。通路ブロック50の背面側の端面(軸方向のポンプケース10内に臨む側の端面)には、3つの凹部が設けられている。通路ブロック50に設けられた3つの凹部のうち、一の凹部には、ポンプ本体3のポンプ吐出口3bが接続され、一の凹部には、送出配管13のポンプケース10内の端部が接続され、一の凹部には、プレッシャレギュレータ4が圧入によって組付けられている。
【0032】
通路ブロック50の一の凹部とポンプ吐出口3bとの間および通路ブロック50の一の凹部と送出配管13の端部との間には、燃料の漏洩を防止するためのシール部材52が設けられている。シール部材52は、軸方向D1から見て環状に形成されている。
通路ブロック50の凹部とプレッシャレギュレータ4との間には、燃料の漏出を防止するためのシール部材51が設けられている。シール部材51は、軸方向D1から見て環状に形成されている。
【0033】
(ポンプケースの製造方法)
次に、
図4から
図7に基づいて、ポンプケース10の製造方法について説明する。
図4は、金型60を型締めした状態を示す断面模式図である。
図5は、
図4に示す状態から、キャビティ61内に射出した溶融樹脂6を冷却固化してポンプケース10を形成した状態を示す断面模式図である。
図6は、
図5に示す状態から、金型60を離型してポンプケース10を取り出している状態を示す断面模式図である。なお、
図6では、説明を分かりやすくする為に金型60のうちコア62およびスライドコアピン63のみを移動させた状態を示している。
図7は、
図4に示す状態から、キャビティ61内に溶融樹脂6を射出してスライドコアピン63がずれた状態でポンプケース10を形成した状態を示す断面模式図である。
本実施形態の製造方法は、大きく分けて型締め工程(
図4参照)と、型締め工程後の成形工程(
図5参照)と、成形工程後の取り出し工程(
図6、
図7参照)とがある。
【0034】
まず、金型60の構成について説明する。
図4に示すように、金型60は、ポンプ収容室15(
図5参照)およびフィルタ収容室16(
図5参照)を形成するためのキャビティ61やコア62、円柱形状に形成されたスライドコアピン63と、を有している。
【0035】
キャビティ61は、金型60の外殻を構成する部材である。キャビティ61の内部は、コア62を配置する為に空洞となっている。キャビティ61には、スライドコアピン63を内部の空洞に向けて挿入するための挿入孔61aが形成されている。
【0036】
コア62は、キャビティ61の内部に配置される部材である。コア62は、ポンプ収容室15の内周面を形成する第1コア64と、フィルタ収容室16の内周面を形成する第2コア65と、を有している。
【0037】
第1コア64は、円柱状に形成されている。第1コア64の外周面64cには、スライドコアピン63の先端部63aが嵌め込まれる凹部64aが形成されている。凹部64aの側面における第2コア65側の軸方向一端面64a1と第1コア64の軸方向一端面64bとの軸方向における距離は、1mm以内である。凹部64aは、第1コア64の径方向から見て円形状に形成されている。第1コア64の端面64bには、第1コア64の軸方向に突出するコア凸部64dが設けられている。コア凸部64dは、端面64bの外周縁部のうち凹部64aの近傍に1個設けられている。コア凸部64dは、第1コア64の軸方向から見て凹部64aと同じ位置に設けられている。コア凸部64dは、外周面64cから第1コア64の径方向内側に向かうに従って先細りに形成されている。コア凸部64dの径方向内側端部は、凹部64aよりも径方向内側に位置している。
【0038】
第2コア65は、円柱形状に形成されている。第2コア65の軸方向一端面65aの外周縁部のうち一箇所にコア凹部65bが設けられている。コア凹部65bの内周面は、第2コア65の外周面65cから第2コア65の径方向内側に向かうに従って、端面65aに接近している。コア凹部65bの内周面は、湾曲状に形成されている。
【0039】
スライドコアピン63の外径は、キャビティ61の挿入孔61aの内径よりも小さい。スライドコアピン63のうち凹部64aに嵌め込まれる先端部63aの外径は、第1コア64の凹部64aの内径とほぼ同径かわずかに大きく形成されている。
続いて、ポンプケース10の製造方法の各工程について、以下に詳細に説明する。
【0040】
(型締め工程)
図4に示すように、金型60を型締めすると、キャビティ61の内部にコア62が配置され、キャビティ61とコア62との間に第1空間S1が形成される。より具体的には、金型60を型締めすると、第1コア64の端面64bと第2コア65の端面65aとが対向するように第1コア64と第2コア65とが配置される。この時、第1コア64の軸方向は、第2コア65の軸方向に沿っている。第1コア64の端面64bと第2コア65の端面65aとは、軸方向に離間している。そして、第1コア64の端面64bと第2コア65の端面65aとの間に、第2空間S2が形成される。端面64bに設けられているコア凸部64dは、軸方向から見て端面65aに設けられているコア凹部65bと同じ位置に配置される。コア凹部65bの径方向内側端は、第1コア64の凹部64aよりも径方向内側に位置する。これにより、第1コア64の端面64bと第2コア65の端面65aとの間に凹空間S2aが形成される。凹空間S2aは、第2空間S2の一部を構成している。
【0041】
また、金型60を型締めすると、キャビティ61の挿入孔61aにスライドコアピン63が挿入され、第1コア64の凹部64aにスライドコアピン63の先端部63aが嵌め込まれる。このとき、スライドコアピン63の外周面と挿入孔61aの内周面とは離間している。そして、スライドコアピン63の外周面と挿入孔61aの内周面との間に、第3空間S3が形成される。
第1空間S1、第2空間S2および第3空間S3によって空間Sが構成される。
【0042】
(成形工程)
上述の型締め工程によって空間Sを形成した後、
図5に示すように、ランナー(不図示)及びゲート(不図示)を通じて所定温度に加熱された溶融樹脂6を、例えば所定の射出速度及び射出圧力で第1空間内に射出する。すると、空間S(
図4参照)内に溶融樹脂6が十分に行き渡る。
この時、スライドコアピン63は凹部64aに嵌め込まれ、コア凸部64dによって凹部64aの肉厚が確保されている。これにより、スライドコアピン63が溶融樹脂6の射出圧力によってずれることが抑制される。
【0043】
溶融樹脂6の射出後、溶融樹脂6を冷却固化させることによりポンプケース10が形成される。より具体的には、第1空間S1内に充填された溶融樹脂6は、ケース本体11の周壁11cを成形する。第2空間S2内に充填された溶融樹脂6は、ケース本体11の隔壁17を形成する。凹空間S2a内に充填された溶融樹脂6は、隔壁17の凹部19を形成する。第3空間S3内に充填された溶融樹脂6は、リターン配管14を形成する。
【0044】
ここで、上述の成形工程では、溶融樹脂6の射出圧力によって、スライドコアピン63が傾いてしまう可能性がある。連通口18の内周面18aと隔壁17との間は軸方向D1に1mm以内なので、スライドコアピン63が傾くと、隔壁17にスライドコアピン63の先端部63aが第2空間S2内に入り込み(隔壁17の一部にめり込み)、成形後の隔壁17の一部が薄肉になってしまう可能性がある。しかしながら、第1コア64の端面64bにはコア凸部64dが形成されているので、隔壁17にスライドコアピン63がめり込むことがなく、隔壁17の肉厚が確保される。
【0045】
(取り出し工程)
図6に示すように、ポンプケース10を形成した後、キャビティ61とコア62とを離型させる。この時、第1コア64と第2コア65とは離型する。スライドコアピン63は、第1コア64と第2コア65との離型にあわせて、第1コア64からこの第1コア64の離型方向と直交する方向(スライド方向)に沿ってスライド移動し離型される。この後、金型60の内部からポンプケース10を取り出す。
以上のようにしてポンプケース10が製造される。
【0046】
また、
図7に示すように、成形工程時に、スライドコアピン63が凹部64aに嵌め込まれた状態でずれてしまうことも想定できる。
図7に示すような場合でも、コア凸部64dによって凹部64aの肉厚が確保されているため、溶融樹脂6の射出圧力によって第1コア64の凹部64aが破損して、金型60の破片が飛び散ることを防止できる。
なお、上述の製造方法では、ポンプケース10のうちケース本体11およびリターン配管14以外の部位の製造過程については、記載を省略している。例えば、吸入配管12および送出配管13等は、リターン配管14と同様の手法で成形される。
【0047】
(作用効果)
上述した実施形態によれば、隔壁17は、第1面17aの連通口18が形成されている側の外周部17bに形成された凹部19を有している。
これにより、隔壁17に凹部19を形成するために、第1コア64にコア凸部64dを設けることができる。コア凸部64dによって、スライドコアピン63が嵌め込まれる凹部64aの肉厚が確保されるので、凹部64aの剛性を確保できる。このため、スライドコアピン63に溶融樹脂6の射出圧力が加えられることにより、金型60の一部である第1コア64の凹部64aが破損して、金型60の破片が飛び散ることを防止できる。
また、第1コア64が破損してしまうことを防止できるので、スライドコアピン63が溶融樹脂6の射出圧力によってずれることを抑制できる。これにより、スライドコアピン63が隔壁17となる第2空間S2に入り込んでしまうことを抑制できる。したがって、隔壁17の厚みが一部薄肉になってしまうことを抑制できるので、ポンプケース10を精度良く形成できる。
凹部19は、ポンプ収容室15からフィルタ収容室16に向かって突出する底部19aを有している。
これにより、隔壁17の厚みが凹部19で一部薄肉になるのを抑制できるので、隔壁17の剛性を確保できる。
【0048】
また、凹部19は、ケース本体11の径方向D2外側に向かうに従って深く形成されている。
これにより、凹部19を形成するためのコア凸部64dの径方向内側に抜き勾配が形成される。したがって、ポンプケース10の形成後、第1コア64を離型し易くできる。
【0049】
凹部19のフィルタ収容室16側に向かう突出高さは、径方向D2外側に向かうに従って高くなっている。
これにより、凹部19のフィルタ収容室16側の面が側面視L字状に形成されている場合と比較して、フィルタ収容室16の空間を拡大できる。したがって、フィルタ収容室16内のレイアウト性を向上できる。
加えて、凹部19がケース本体11の径方向D2外側に向かうに従って深く形成されている場合には、隔壁17の厚みが凹部19で一部薄肉になるのをより確実に抑制できるので、隔壁17の剛性をより一層確保できる。
【0050】
また、凹部19のフィルタ収容室16側の面は、湾曲状に形成されている。
これにより、凹部19のフィルタ収容室16側の面が側面視L字状に形成されている場合と比較して、フィルタ収容室16内のレイアウト性をより一層向上できる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が自在である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜自在であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0053】
3…ポンプ本体、10…ポンプケース、11…ケース本体、11a…一端、11b…他端、11c…周壁、14…リターン配管(配管)、15…ポンプ収容室(第1収容室)、16…フィルタ収容室(第2収容室)、17…隔壁、17a…第1面、17b…外周部、18…連通口、18a…内周面、19…凹部、19a…底部、D1…軸方向、D2…径方向