(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ガス拡散層、膜電極接合体、燃料電池、及びガス拡散層の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20240417BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240417BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240417BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/86 H
H01M4/88 Z
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020101737
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】川島 勉
(72)【発明者】
【氏名】山本 曜子
(72)【発明者】
【氏名】吉本 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝二
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/075357(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146984(WO,A1)
【文献】特開2001-084831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子とフッ素樹脂とを含み、
前記フッ素樹脂は、第1平均繊維径を有する第1繊維及び前記第1平均繊維径とは異なる第2平均繊維径を有する第2繊維を含有
し、
前記第1平均繊維径は、10nm以上100nm以下であり、
前記第2平均繊維径は、0.5μm以上50μm以下であって、
前記フッ素樹脂全体に対する前記第2繊維の割合は、10質量%以上90質量%以下である、
ガス拡散層。
【請求項2】
導電性繊維をさらに含む、
請求項
1に記載のガス拡散層。
【請求項3】
前記フッ素樹脂は、粒子状のフッ素樹脂を含有する、
請求項1
又は2に記載のガス拡散層。
【請求項4】
前記粒子状のフッ素樹脂の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下である、
請求項
3に記載のガス拡散層。
【請求項5】
前記フッ素樹脂全体に対する前記粒子状のフッ素樹脂の割合は、1質量%以上50質量%以下である、
請求項
3又は
4に記載のガス拡散層。
【請求項6】
前記ガス拡散層は、前記導電性粒子と前記フッ素樹脂とによって構成された多孔質構造を有する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項7】
前記ガス拡散層の引張破断強度は、0.20N/mm
2以上である、
請求項1から
6のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項8】
前記ガス拡散層は、前記導電性粒子及び前記フッ素樹脂によって支持される自立膜である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項9】
前記フッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含む、
請求項1から
8のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載のガス拡散層と、
一対の電極と、
電解質膜と、を備える、
膜電極接合体。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか1項に記載のガス拡散層と、
集電板と、を備える、
燃料電池。
【請求項12】
導電性粒子、第1平均粒径を有する第1フッ素樹脂、及び第1平均粒径とは異なる第2平均粒径を有する第2フッ素樹脂を混錬することと、
前記混錬して得た混錬物を圧延し、前記第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂を繊維化することと、
を含む、
ガス拡散層の製造方法
であって、
圧延前の前記第1フッ素樹脂の前記第1平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であり、
圧延前の前記第2フッ素樹脂の前記第2平均粒径は、1μm以上1000μm以下であり、
圧延後であって繊維化された前記第1フッ素樹脂の平均繊維径は、10nm以上100nm以下であり、
圧延後であって繊維化された前記第2フッ素樹脂の平均繊維径は、0.5μm以上50μm以下であって、
前記第1フッ素樹脂と前記第2フッ素樹脂との全体に対する繊維化された前記第2フッ素樹脂の割合は、10質量%以上90質量%以下である、
ガス拡散層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス拡散層、膜電極接合体、燃料電池、及びガス拡散層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス拡散層は、ガス透過性及びガス拡散性を有しており、例えば燃料電池に用いられる。燃料電池の一例である高分子電解質型燃料電池では、水素イオン伝導性高分子電解質膜の一方の面を水素等の燃料ガスに、他方の面を酸素にそれぞれ暴露し、電解質膜を介した化学反応によって水を合成することで、その際に生じる反応エネルギーを電気的に取り出す。
【0003】
高分子電解質型燃料電池の単電池は、膜電極接合体(以下、「MEA」と記載する)と、MEAの両面に配置された一対の導電性のセパレータを有している。MEAは、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、この電解質膜を挟む一対の電極層とを備えている。一対の電極層は、高分子電解質膜の両面に形成され、白金族触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層と、当該触媒層上に形成され、集電作用とガス透過性と撥水性とを併せ持つガス拡散層とを有している。
【0004】
MEA中のガス拡散層は、セパレータから供給されるガスを触媒層に均一に供給する。また、ガス拡散層は、触媒層とセパレータ間の電子の導電経路としても機能する。このため、MEAに用いられるガス拡散層には導電性多孔質部材が使用される場合がある。
【0005】
また、MEA中のガス拡散層には、触媒層で電池反応により生成された余剰な水分を速やかに除去し、MEA系外に排出させるとともに、ガス拡散層の細孔が生成水で閉塞されないように、高い撥水性が求められている。そのため、導電性多孔質部材をフッ素樹脂などで撥水処理し、更に導電性基材の触媒層と接する側に、カーボン粉末とフッ素樹脂などの撥水性樹脂を主成分とする撥水層を設けたガス拡散層が一般的に用いられる。
【0006】
特許文献1には、導電性粒子と高分子樹脂とを主成分とした多孔質部材で構成されたガス拡散層が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のガス拡散層は、機械的強度が弱く、ガスや水の圧力でガス拡散層が破れるおそれがある。そのため、ガス拡散層の機械的強度を上げることが求められている。
【0009】
本開示は、優れた機械的強度を有するガス拡散層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るガス拡散層は、導電性粒子とフッ素樹脂とを含み、前記フッ素樹脂は、第1平均繊維径を有する第1繊維及び前記第1平均繊維径とは異なる第2平均繊維径を有する第2繊維を含有する。
【0011】
本開示に係る膜電極接合体は、前記ガス拡散層と、一対の電極と、電解質膜と、を備える。
【0012】
本開示に係る燃料電池は、前記ガス拡散層と、集電板と、を備える。
【0013】
本開示に係るガス拡散層の製造方法は、導電性粒子、第1平均粒径を有する第1フッ素樹脂、及び第1平均粒径とは異なる第2平均粒径を有する第2フッ素樹脂を混錬することと、
前記混錬して得た混錬物を圧延し、前記第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂を繊維化することと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、優れた機械的強度を有するガス拡散層、並びにこれを用いた膜電極接合体及び燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る高分子電解質型燃料電池スタックの構成を示す概略図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る高分子電解質型燃料電池セルの構成を示す概略断面図である。
【
図3A】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の概略模式図である。
【
図3B】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の断面の一部拡大模式図である。
【
図4A】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の概略模式図である。
【
図4B】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の断面の一部拡大模式図である。
【
図5A】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の概略模式図である。
【
図5B】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の断面の一部拡大模式図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係るガス拡散層の製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施例1~8及び比較例1~4における原料の条件及び評価結果を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の態様に係るガス拡散層は、導電性粒子とフッ素樹脂とを含み、
前記フッ素樹脂は、第1平均繊維径を有する第1繊維及び前記第1平均繊維径とは異なる第2平均繊維径を有する第2繊維を含有する。
【0017】
第2の態様に係るガス拡散層は、上記第1の態様において、前記第1平均繊維径は、10nm以上100nm以下であり、
前記第2平均繊維径は、0.5μm以上50μm以下であってもよい。
【0018】
第3の態様に係るガス拡散層は、上記第1又は第2の態様において、前記フッ素樹脂全体に対する前記第2繊維の割合は、10質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0019】
第4の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第3のいずれかの態様において、導電性繊維をさらに含んでもよい。
【0020】
第5の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記フッ素樹脂は、粒子状のフッ素樹脂を含有してもよい。
【0021】
第6の態様に係るガス拡散層は、上記第5の態様において、前記粒子状のフッ素樹脂の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。
【0022】
第7の態様に係るガス拡散層は、上記第5又は第6の態様において、前記フッ素樹脂全体に対する前記粒子状のフッ素樹脂の割合は、1質量%以上50質量%以下であってもよい。
【0023】
第8の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第7のいずれかの態様において、前記ガス拡散層は、前記導電性粒子と前記フッ素樹脂とによって構成された多孔質部材を有してもよい。
【0024】
第9の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第8のいずれかの態様において、前記ガス拡散層の引張破断強度は、0.20N/mm2以上であってもよい。
【0025】
第10の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第9のいずれかの態様において、前記ガス拡散層は、前記導電性粒子及び前記フッ素樹脂によって支持される自立膜であってもよい。
【0026】
第11の態様に係るガス拡散層は、上記第1から第10のいずれかの態様において、前記フッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含んでもよい。
【0027】
第12の態様に係る膜電極接合体は、上記第1から第11のいずれかの態様に係るガス拡散層と、
一対の電極と、
電解質膜と、を備える。
【0028】
第13の態様に係る燃料電池は、上記第1から第11のいずれかの態様に係るガス拡散層と、
集電板と、を備える。
【0029】
第14の態様に係るガス拡散層の製造方法は、導電性粒子、第1平均粒径を有する第1フッ素樹脂、及び第1平均粒径とは異なる第2平均粒径を有する第2フッ素樹脂を混錬することと、
前記混錬して得た混錬物を圧延し、前記第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂を繊維化することと、
を含む。
【0030】
第15の態様に係るガス拡散層の製造方法は、上記代14の態様において、前記第1平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であり、
前記第2平均粒径は、1μm以上1000μm以下であってもよい。
【0031】
以下、本開示の実施の形態に係るガス拡散層、膜電極接合体、燃料電池、及び、ガス拡散層の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0032】
(実施の形態1)
図1を用いて、本開示の実施の形態1に係る燃料電池100の基本構成について説明する。
図1は、本実施の形態1に係る燃料電池(以下、「高分子電解質型燃料電池スタック」とも称する。)100の構成を示す概略図である。なお、本実施の形態1は、高分子電解質型燃料電池に限定されるものではなく、種々の燃料電池に適用可能である。
【0033】
<燃料電池>
図1に示すように、燃料電池100は、基本単位である電池セル10を1枚以上積層し、積層した電池セル10の両側に配置した集電板11、絶縁板12、及び端板13を用いて所定の荷重で圧縮し、締結したものである。
集電板11は、ガス不透過性の導電性材料から形成される。集電板11には、例えば、銅、真鍮などが使用される。集電板11には電流取り出し端子部(図示せず)が設けられており、発電時には電流取り出し端子部から電流が取り出される。
絶縁板12は、樹脂等の絶縁性材料から形成される。絶縁板12には、例えばフッ素系樹脂、PPS樹脂などが使用される。
端板13は、1枚以上積層された電池セル10と、集電板11と、絶縁板12とを、図示しない加圧手段によって所定の荷重で締結し、保持している。端板13には、例えば鋼等の剛性の高い金属材料が使用される。
【0034】
<電池セル>
図2は、電池セル10の構成を示す概略断面図である。電池セル10では、膜電極接合体(以下、MEAとも称する)20を、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bで挟んでいる。以下では、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4bを合わせて、セパレータ4と記載する。他の構成要素についても、複数の構成要素を合わせて説明する場合には、同様の記載を行う。
【0035】
セパレータ4には、流体流路5が形成されている。アノード側セパレータ4aには、燃料ガス用の流体流路5が形成されている。カソード側セパレータ4bには、酸化剤ガス用の流体流路5が形成されている。セパレータ4には、カーボン系及び金属系の材料を用いることができる。
流体流路5は、セパレータ4に形成された溝部である。流体流路5の周囲には、リブ部6が設けられている。
【0036】
<膜電極接合体:MEA>
膜電極接合体(MEA)20は、高分子電解質膜1と、触媒層2と、ガス拡散層3と、を有する。水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜1の両面にアノード触媒層2a及びカソード触媒層2b(合わせて触媒層2)が形成されており、その外側にアノード側ガス拡散層3a及びカソード用ガス拡散層3b(合わせてガス拡散層3)がそれぞれ配置されている。
高分子電解質膜1には、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸重合体が用いられるが、プロトン導電性を有すれば特に限定されない。
触媒層2は、白金等の触媒粒子を担持した炭素材料と高分子電解質とを含む層を用いることができる。
【0037】
<ガス拡散層>
次に、
図3A及び
図3Bを用いて、本開示の実施の形態1に係るガス拡散層3の構成について詳細に説明する。
【0038】
図3Aは、ガス拡散層3を構成する多孔質構造30の概略模式図である。
図3Bは、ガス拡散層3を構成する多孔質構造30の一部を拡大した拡大模式図である。多孔質構造30は、導電性粒子31とフッ素樹脂32とを含む。すなわち、ガス拡散層3は、導電性粒子31とフッ素樹脂32とを含む。本実施の形態1では、
図3Aに示すように、ガス拡散層3は、多孔質構造30で構成される。なお、ガス拡散層3は、導電性粒子31及びフッ素樹脂32によって支持される自立膜であることが好ましい。
【0039】
<導電性粒子>
導電性粒子31の例は、カーボンブラック、グラファイト、及び活性炭などのカーボン材料を含む。導電性粒子31は、高い導電性と1次粒子径の細かいカーボンブラックを含むことが好ましい。導電性粒子31に用いられるカーボンブラックの例は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、及びバルカンを含む。導電性粒子31は、不純物量が少ないアセチレンブラック、又は比表面積が大きく導電性の高いケッチェンブラックのいずれかを含むことが特に好ましい。
【0040】
<フッ素樹脂>
図3Bに示すように、フッ素樹脂32は、繊維径の細いフッ素樹脂繊維(以下、「第1繊維」とも称する。)32-f1と繊維径の太いフッ素樹脂繊維(以下、「第2繊維」とも称する。)32-f2という平均繊維径の異なるフッ素樹脂繊維を含有する。フッ素樹脂32が、繊維径の細い第1繊維32-f1と、繊維径の太い第2繊維32-f2という異なる平均繊維径を有するフッ素樹脂繊維を含有することで、ガス拡散層3は優れた機械的強度を有する。これは、繊維径の細い第1繊維32-f1が、導電性粒子31を結着し、導電性粒子31が多孔質構造30から脱落させないよう機能するとともに、繊維径の太い第2繊維32-f2が、多孔質構造30そのものの強度の向上に寄与するためであると考えられる。
【0041】
フッ素樹脂32の材料の例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が挙げられる。PTFEは、せん断力が加わると繊維状となる性質を有する。ガス拡散層3の製造時の混合・分散工程やシート化の工程において、材料となるPTFEにせん断力が加わることで、PTFEは繊維状となる。その際、PTFEの原料形態として、粒子径の小さいPTFEディスパージョンは、繊維径の細い第1繊維32-f1となり、粒子径の大きいPTFE粉末は、繊維径の太い第2繊維32―f2となる。このように、PTFEを用いることで、ガス拡散層3(多孔質構造30)の内部に、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2を容易に形成することができる。ただし、フッ素樹脂32の材料はPTFEに限られず、第1繊維及び第2繊維を形成可能なフッ素樹脂を用いればよい。なお、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2として、同じ種類のフッ素樹脂を用いてもよく、異なる種類のフッ素樹脂を用いてもよい。ガス拡散層3の製造が容易になる観点から、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2は、同じ種類のフッ素樹脂であることが好ましい。また、第1繊維32-f1として、一種のフッ素樹脂のみを用いてもよく、二種以上の異なるフッ素樹脂を組み合わせて用いてもよい。同様に、第2繊維32-f2として、一種のフッ素樹脂のみを用いてもよく、二種以上の異なるフッ素樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
第1繊維32-f2の平均繊維径(第1平均繊維径)は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。第1平均繊維径が10nm以上であることで、導電性粒子31同士の結着力がより強くなり、導電性粒子31の脱落がより生じにくくなる。また、第1平均繊維径が100nm以下であることで、導電性粒子31を第1繊維がより良好に結着できるため、結着されている導電性粒子の脱落がより生じにくくなる。
【0043】
第2繊維の平均繊維径(第2平均繊維径)は、0.5μm以上50μm以下であることが好ましい。第2平均繊維径が0.5μm以上であることで、ガス拡散層3の強度をより十分に向上させることができる。また、第2平均繊維径が50μm以下であることで、ガス拡散層3中に含まれる繊維の本数を確保しやすくなり、ガス拡散層の強度をより効率よく向上させることができる。
【0044】
<ガス拡散層中の導電性粒子、フッ素樹脂の含有量>
ガス拡散層3全体に対する導電性粒子31の割合は、60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。導電性粒子31の割合が60質量%以上であることで、ガス拡散層3中に十分に導電性粒子31を存在させることができ、ガス拡散層3の導電性をより高めることができる。また、導電性粒子31の割合が95質量%以下であることで、フッ素樹脂32によって導電性粒子31を十分に結着できるとともに、フッ素樹脂32によってガス拡散層3の強度がより向上する。
【0045】
ガス拡散層3全体に対するフッ素樹脂32の割合は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。フッ素樹脂32の割合が5質量%以上であることで、導電性粒子31同士を結着させる機能がより向上し、ガス拡散層3の強度がさらに高まる。また、フッ素樹脂32の割合が40質量%以下であることで、ガス拡散層3中に導電性粒子31が十分に存在するため、ガス拡散層3の導電性がより低下しにくい。
【0046】
フッ素樹脂32全体に対する第2繊維32-f2の割合は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。フッ素樹脂32に含まれる平均繊維径が大きいフッ素樹脂繊維32-f2の割合が10質量%以上であることで、ガス拡散層3の強度をより高めることができる。また、平均繊維径が大きいフッ素樹脂32-f1の割合が90質量%以下であることで、導電性粒子31同士を十分に結着させることができるため、導電性粒子31が脱落しにくくなり、ガス拡散層3の耐久性がより向上する。
【0047】
<導電性繊維>
ガス拡散層3は、導電性繊維33をさらに含むことが好ましい。すなわち、ガス拡散層3を構成する多孔質構造30は導電性繊維33をさらに含むことが好ましい。
図4Aは、導電性繊維33を含む多孔質構造30の概略模式図を示し、
図4Bは、
図4Aの多孔質構造30の一部を拡大した拡大模式図を示す。ガス拡散層3が導電性繊維33を含むことで、ガス拡散層3の導電性が向上するとともに、ガス拡散性を向上することができ、更にガス拡散層3の機械的強度を高めることができる。
【0048】
多孔質構造30が導電性繊維33を含む場合、
図4Bに示すように、第1繊維32-f1と第2繊維32-f2とは、導電性粒子31同士を結着するだけではなく、導電性繊維33同士を結着するバインダーとしても機能する。そのため、ガス拡散層3が導電性繊維33を含む場合であっても、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2によってガス拡散層3の強度が高められる。加えて、導電性繊維33もまた繊維状であることから、ガス拡散層3の機械的強度の向上に寄与する。
【0049】
導電性繊維33の材料は特に限定されないが、例えば、カーボンナノチューブ等の繊維が使用できる。
導電性繊維33の平均繊維径は50nm以上300nm以下であることが好ましい。導電性繊維33の平均繊維径が50nm以上であることで、ガス拡散層3の導電性の向上により効果的に寄与するとともに、ガス拡散層3の機械的強度をより高めることができる。また、導電性繊維33の平均繊維径が300nm以下であることで、径が大きくなりすぎないため、多孔質構造30中の細孔容積を十分に確保しやすくなり、ガス拡散層3のガス拡散性をより高めることができる。
導電性繊維33の平均繊維長は1μm以上50μm以下であることが好ましい。導電性繊維33の平均繊維長が1μm以上であることで、ガス拡散層3の導電性の向上により効果的に寄与するとともに、ガス拡散層3の機械的強度をより高めることができる。また、導電性繊維33の平均繊維長が50μm以下であることで、繊維が長くなりすぎないため、多孔質構造30中の細孔容積を十分に確保しやすくなり、ガス拡散層3のガスの拡散性をより高めることができる。
【0050】
<導電性繊維を含む場合:ガス拡散層中の導電性粒子、導電性繊維、フッ素樹脂の含有量>
ガス拡散層3が導電性繊維33を含む場合、ガス拡散層3全体に対する導電性粒子31の割合は5質量%以上であることが好ましい。導電性粒子31の割合が5質量%以上であることで、ガス拡散層3中に十分な導電性粒子31が存在することになり、ガス拡散層3の導電性をより向上させることができる。
ガス拡散層3が導電性繊維33を含む場合、ガス拡散層3全体に対する導電性繊維33の割合は、90質量%以下であることが好ましい。導電性繊維33の割合が90質量%以下であることで、導電性繊維33をフッ素樹脂32によってより良好に結着することができるため、ガス拡散層3の機械的強度をより高めることができる。
ガス拡散層3が導電性繊維33を含む場合、ガス拡散層3全体に対するフッ素樹脂32の割合は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。フッ素樹脂32の割合が5質量%以上であることで、導電性粒子31同士及び導電性繊維33同士をより良好に結着させることができ、ガス拡散層3の強度をより向上させることができる。また、フッ素樹脂32の割合が40質量%以下であることで、ガス拡散層3中の導電性粒子31及び導電性繊維33の割合を十分に確保できるため、ガス拡散層3はより優れた導電性を有することができる。なお、フッ素樹脂32全体に対する第2繊維32-f2の割合は、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0051】
<フッ素樹脂粒子>
ガス拡散層3は粒子状のフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂粒子」とも称する)32-pをさらに含むことが好ましい。すなわち、ガス拡散層3を構成する多孔質構造30は粒子状のフッ素樹脂32-pをさらに含むことが好ましい。言い換えれば、フッ素樹脂32は、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2に加えて、粒子状のフッ素樹脂32-pを含有することが好ましい。
図5Aは、フッ素樹脂粒子32-pを含む多孔質構造30の概略模式図を示し、
図5Bは、
図5Aの多孔質構造30の一部を拡大した拡大模式図を示す。なお、
図5A及び
図5Bでは、多孔質構造30が、導電性粒子31、第1繊維32-f1、第2繊維32-f2、導電性繊維33、及びフッ素樹脂粒子32-pを含む態様を示しているが、これに限られない。例えば、多孔質構造30が、導電性粒子31、第1繊維32-f1、第2繊維32-f2、及びフッ素樹脂粒子32-pを含み、導電性繊維33を含まない態様であってもよい。
【0052】
ガス拡散層3がフッ素樹脂粒子32-pを含む場合、ガス拡散層3は、導電性粒子31同士及び導電性繊維33同士を結着し脱落を防止する第1繊維32-fは、及び強度を向上させる第2繊維32-f2に加えて、粒子として残存する粒子状のフッ素樹脂32-pを有する。フッ素樹脂粒子32-pは、繊維状のフッ素樹脂32-f1及び32-f2よりも粒子近傍で高い撥水性を有するため、ガス拡散層3の内部に存在する細孔に水が滞留してガスの透過を阻害することを防止することができる。
【0053】
フッ素樹脂粒子32-pの材料は特に限定されず、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2のいずれか又は両方と同じ種類のフッ素樹脂を用いてもよく、異なる種類のフッ素樹脂を用いてもよい。ガス拡散層3の製造が容易になる観点から、第1繊維32-f1、第2繊維32-f2、及びフッ素樹脂粒子32-pは同じ種類のフッ素樹脂であることが好ましい。なお、フッ素樹脂粒子32-pとして、一種のフッ素樹脂のみを用いてもよく、二種以上の異なるフッ素樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
フッ素樹脂粒子32-pの平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。また、フッ素樹脂粒子32-pの短径及び長径の両方が0.1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。フッ素樹脂粒子32-pの平均粒径が0.1μm以上であることで、製造が容易になる。また、フッ素樹脂粒子32-pの平均粒径が10μm以下であることで、導電性が低下しにくくなるため、ガス拡散層3の導電性をより良好にすることができる。
【0055】
フッ素樹脂32全体に対する粒子状のフッ素樹脂32-pの割合は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。フッ素樹脂粒子32-pの割合が1質量%以上であることで、ガス拡散層3中の撥水性を良好に高めることができるため、水の滞留によってガス透過性が低下することを防ぐことができる。また、フッ素樹脂粒子32-pの割合が50質量%以下であることで、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2がガス拡散層3中に十分に存在することになり、導電性粒子31同士や導電性繊維33同士をより良好に結着させることができるとともに、ガス拡散層3の機械的強度を高めることができる。
【0056】
ガス拡散層3の引張破断強度は、0.20N/mm2以上であることが好ましい。ガス拡散層3の引張破断強度が0.20N/mm2以上であることで、高分子電解質膜1の膨潤収縮やガスの圧力、生成水の排水時にガス拡散層3が破断しにくくなり、MEA20の耐久性をより向上することができる。このような引張破断強度は、ガス拡散層3が第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2を含むことで実現可能である。
【0057】
<ガス拡散層の製造方法>
次に、本開示の実施の形態1に係るガス拡散層3の製造方法について説明する。本開示の実施の形態1に係るガス拡散層3の製造方法では、導電性粒子31と、第1平均粒径を有する第1フッ素樹脂と、第1平均粒径とは異なる第2平均粒径を有する第2フッ素樹脂と、を混錬することと、混錬して得た混錬物を圧延し、第1フッ素樹脂及び前記第2フッ素樹脂を繊維化することと、を含む。第1フッ素樹脂は繊維化されて第1繊維32-f1を形成する。第2フッ素樹脂は繊維化されて第2繊維32-f2を形成する。これにより、平均繊維径の異なる第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2を含むガス拡散層3を得ることができる。
【0058】
本実施の形態1に係るガス拡散層3の製造方法を、
図6を参照して詳細に説明する。
図6は、ガス拡散層3の製造方法のフローチャートである。なお、本開示のガス拡散層3の製造方法は、
図6のフローチャート及び後述の製造方法に限られず、本開示の主旨を逸脱しない範囲において変更してもよい。
【0059】
(1)ステップS1では、導電性粒子31と第1フッ素樹脂と第2フッ素樹脂と界面活性剤と分散溶媒とを混練する。まず、カーボン材料等の導電性粒子31と、必要に応じてカーボンナノチューブ等の導電性繊維32と、界面活性剤と、分散溶媒とを投入し、攪拌、混練する。その後、第1フッ素樹脂と第2フッ素樹脂と投入し、再度、攪拌、混練して、混練物を得る。
【0060】
第1フッ素樹脂としては、任意の材料を用いればよい。例えば、フッ素樹脂のディスパージョンを用いることができる。本実施形態では、PTFEディスパージョンを用いる。
第1フッ素樹脂の平均粒径(以下、第1平均粒径とも称する)は、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。この場合、第1フッ素樹脂は、後述する圧延工程において繊維径の細い第1繊維32-f1へと繊維化される。
第2フッ素樹脂としては、任意の材料を用いればよい。例えば、フッ素樹脂粉末を用いることができる。本実施形態では、PTFEファインパウダーを用いる。
第2フッ素樹脂の平均粒径(以下、第2平均粒径とも称する)は、1μ以上1000μmn以下であることが好ましい。この場合、第2フッ素樹脂は、後述する圧延工程にいて、繊維径の太い第2繊維32-f2へと繊維化される。
【0061】
ステップS1の材料の混練には、例えばプラネタリーミキサー、自公転ミキサー、ニーダー、ロールミルなどを使用することができる。混練工程であるステップS1では、導電性粒子31と導電性繊維33と界面活性剤と分散溶媒とを、先に混練、分散した後、第1フッ素樹脂と第2フッ素樹脂とを投入して撹拌することで、フッ素樹脂32が混練物中に均一に分散された状態とすることができる。
【0062】
(2)ステップS2では、混練物を圧延しながら、シート状に伸ばしていく。ステップS2の圧延には、例えば圧延ロール機を使用することができる。例えば0.001ton/cm以上から4ton/cm以下の圧力を圧延の条件として、1回または複数回の圧延を行うことにより、第1フッ素樹脂と第2フッ素樹脂とにせん断力をかけて繊維化させる。その際、前述したとおり、平均粒径の小さいフッ素樹脂ディスパージョンは、繊維径の細い第1繊維32-f1となり、平均粒径の大きいフッ素樹脂粉末、繊維径の太い第2繊維32―f2となる。このようにして、ガス拡散層3(多孔質構造30)の内部に、繊維径の細いフッ素樹脂繊維32-f1と繊維径の太いフッ素樹脂繊維32-f2とが形成される。また、混錬物を圧延するときの圧力や回数を調整することで、フッ素樹脂ディスパージョン中の第1フッ素樹脂の一部が繊維化されずにフッ素樹脂粒子32-pとして残存する。
【0063】
(3)ステップS3では、シート状に伸ばした混練物を焼成して、混練物中から、界面活性剤及び分散溶媒を除去する。
ステップS3の焼成では、例えばIR炉、熱風乾燥炉等を使用することができる。焼成温度は、界面活性剤が分解する温度より高く、フッ素樹脂32が融解する温度よりも低い温度に設定される。その理由は以下の通りである。焼成温度が界面活性剤の分解する温度より低い場合、ガス拡散層3内部に界面活性剤が残留し、ガス拡散層3の内部が親水化することで水が滞留しやすくなるため、ガス拡散層3のガス透過性が低下するおそれがある。一方、焼成温度がフッ素樹脂32の融点よりも高い場合、フッ素樹脂32が融解するため、ガス拡散層3の強度が低下してしまうおそれがある。具体的には、例えば、フッ素樹脂32としてPTFEを用いる場合、焼成温度は、280℃以上340℃以下が好ましい。
【0064】
(4)ステップS4では、界面活性剤と分散溶媒を除去したシート状の混練物をロールプレス機で再圧延し、厚みを調整する。これにより、本開示の実施形態にかかるガス拡散層3を製造することができる。
ステップS4の再圧延には、例えばロールプレス機を使用することができる。例えば0.01ton/cm以上から4ton/cm以下の圧力をロールプレスの条件として、1回または複数回の再圧延を行うことで、ガス拡散層3の厚み、多孔度を調整することができる。
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本開示の実施例について説明する。各材料は以下のものを使用し、各評価は以下の方法で実施した。
[導電性粒子31]アセチレンブラック(以下AB)(電気化学工業製、デンカブラック粉状品)、ケッチェンブラック(以下KB)(ライオン製 ECP300)
[導電性繊維33]VGCF(昭和電工製、VGCF-H)
[フッ素樹脂ディスパージョン]PTFEディスパージョン(ダイキン製)、平均粒径0.25μm
[フッ素樹脂粉末]PTFEファインパウダー(ダイキン製)、平均粒径550μm
【0066】
(実施例及び比較例のガス拡散層の製造)
実施例1~8及び比較例1~4のガス拡散層は、次の通りに製造した。まず、表1の原料欄に示す割合で導電性粒子、導電性繊維、界面活性剤、及び分散溶媒を配合し、プラネタリーミキサーを用いて混錬した。次に、混錬した混合物に、表1の原料欄に示す割合でフッ素樹脂ディスパーション(第1フッ素樹脂)及びフッ素樹脂粉末(第2フッ素樹脂)を加え、プラネタリーミキサーを用いてさらに混錬した。次いで、圧延ロール機を用いて、0.1ton/cmの圧延条件で混錬物を5回圧延した。その後、IR炉内に圧延したシートを配置し、300℃で0.5時間焼成を行った。焼成したシートを、ロールプレス機を用いて1ton/cmの圧延条件で3回再圧延し、厚み100μmのガス拡散層を得た。
【0067】
(評価試験)
実施例1~8及び比較例1~4において、ガス拡散層の断面における繊維径の細いPTFE繊維(第1繊維)32-f1の平均繊維径、ガス拡散層の断面における繊維径の太いPTFE繊維(第2繊維)32-f2の平均繊維径、ガス拡散層の断面におけるPTFE粒子(フッ素樹脂粒子)32-pの平均粒径、ガス拡散層の引張破断強度、及びガス拡散層の接触角を測定した。実施例1~8及び比較例1~4における原料の条件及び評価結果を
図7の表1に示す。
【0068】
第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2の平均繊維径は、以下の方法によって測定した。まず、ガス拡散層を切断し、イオンミリングで断面を研磨した後、SEM又は光学顕微鏡で断面写真を撮影した。次いで、断面写真において、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2の繊維径を採寸して、数平均による平均値を算出した。
【0069】
フッ素樹脂粒子32-pの平均粒径は、上述の方法で撮影した断面写真において、フッ素樹脂粒子の粒径を採寸して、数平均による平均値を算出した。
引張破断強度は、ガス拡散層をJIS K6251規定のダンベル試験片(ダンベル状4号)にトムソン型で打ち抜いて、引張圧縮試験機(今田製作所製SVZ-200NB型)で引張破断強度を測定した。
接触角は、携帯式接触角計(マツボー製PG-X)で純水に対する静的接触角を測定した。
【0070】
図7の表1に示すとおり、第1繊維32-f1及び第2繊維32-f2の両方を含む実施例1~8のガス拡散層は、第2繊維を含まない比較例1~4のガス拡散層よりも高い引張破断強度を有することが確認できる。
【0071】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本開示に係るガス拡散層は、燃料電池に使用される部材として特に有用であり、家庭用コージェネレーションシステム、自動車用燃料電池、モバイル用燃料電池、及びバックアップ用燃料電池などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
100 燃料電池
1 高分子電解質膜
2 触媒層
2a アノード触媒層
2b カソード触媒層
3 ガス拡散層
3a アノード側ガス拡散層
3b カソード用ガス拡散層
4 セパレータ
4a アノード側セパレータ
4b カソード側セパレータ
5 流体流路
6 リブ部
10 電池セル
11 集電板
12 絶縁板
13 端板
20 膜電極接合体
30 多孔質構造
31 導電性粒子
32 フッ素樹脂
32-f1 第1繊維
32-f2 第2繊維
32-p フッ素樹脂粒子
33 導電性繊維