(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】撮像素子、撮像装置、及び焦点検出方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/704 20230101AFI20240417BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240417BHJP
H04N 25/17 20230101ALI20240417BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240417BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20240417BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240417BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240417BHJP
【FI】
H04N25/704
H04N25/70
H04N25/17
H01L27/146 A
G02B7/34
G03B13/36
G03B11/00
(21)【出願番号】P 2020107231
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 槙子
(72)【発明者】
【氏名】竹田 伸弘
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075393(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147837(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/147198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H01L 27/146
G02B 7/34
G03B 13/36
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズそれぞれに対して、
光の入射面から第1の深さに構成された複数の第1の感度領域と、
前記第1の深さよりも深い第2の深さに構成された複数の第2の感度領域と、
前記複数の第1の感度領域と、前記複数の第2の感度領域とを、互いに異なる組み合わせで電気的に接続する複数の接続部と、
を有する画素部を備えたことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記画素部は、前記複数の接続部により接続される、前記複数の第1の感度領域と前記複数の第2の感度領域との組み合わせにより分割される瞳領域の分割方向が互いに直交する第1の構成と第2の構成とを含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記画素部は、前記複数の接続部により接続される、前記複数の第1の感度領域と前記複数の第2の感度領域との組み合わせにより分割される瞳領域の分割方向が、前記第1および第2の構成と異なると共に、互いに直交する、第3の構成と第4の構成とを更に含むとを特徴とする請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第1および第2の構成は、第1の色のカラーフィルタによりに覆われ、前記第3および第4の構成は、前記第1の色と異なる色のカラーフィルタにより覆われていることを特徴とする請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記第3および第4の構成は、第2の色または第3の色のいずれかの色のカラーフィルタにより覆われていることを特徴とする請求項4に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記第1から第4の構成を、カラーフィルタがベイヤー配列となるように配置したことを特徴とする請求項5に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記画素部は、前記複数の接続部により接続される、前記複数の第1の感度領域と前記複数の第2の感度領域との組み合わせが前記第1の構成と同じであって、カラーフィルタに覆われていない第5の構成と、前記複数の接続部により接続される、前記複数の第1の感度領域と前記複数の第2の感度領域との組み合わせが前記第2の構成と同じであって
、カラーフィルタに覆われていない第6の構成と、を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記画素部から出力された信号から、瞳領域が分割された瞳分割信号を取得し、該瞳分割信号に基づいて、前記画素部に含まれる各構成ごとに、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項6に記載の撮像素子と、
前記画素部から出力された信号から、瞳領域が分割された瞳分割信号を取得し、該瞳分割信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出手段と、を有し、
前記焦点検出手段は、前記第1から第4の構成から得られた前記瞳分割信号に基づいて、瞳分割された輝度信号を生成し、該輝度信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記焦点検出手段は、
前記第1の構成または前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号に第1の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第2の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第2の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第3の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第3の係数をかけて、積算することで、前記輝度信号を生成し、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第1の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第2の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第3の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第4の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1から第4の方向は互いに異なることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
請求項7に記載の撮像素子と、
前記画素部から出力された信号から、瞳領域が分割された瞳分割信号を取得し、該瞳分割信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出手段と、を有し、
前記焦点検出手段は、前記第1から第6の構成から得られた前記瞳分割信号に基づいて、瞳分割された輝度信号を生成し、該輝度信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
前記焦点検出手段は、
前記第1の構成または前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号に第1の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第2の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第2の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第3の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第3の係数をかけ、前記第5および第6の構成から得られた前記瞳分割信号に第4の係数をかけて、積算することで、前記輝度信号を生成し、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも小さくし、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第1の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも小さくし、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第2の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも大きくすると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第3の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも大きくすると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第4の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1から第4の方向は互いに異なることを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
請求項6に記載の撮像素子から出力された信号から、瞳領域が分割された瞳分割信号を取得し、該瞳分割信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出方法であって、
前記第1の構成または前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号に第1の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第2の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第2の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第3の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第3の係数をかけて、積算することで、輝度信号を生成する生成工程と
前記輝度信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出工程と、を有し、
前記生成工程では、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第1の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第2の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第3の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第4の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記焦点検出工程では、前記第1から第4の方向それぞれについて、焦点検出を行い、
前記第1から第4の方向は互いに異なることを特徴とする焦点検出方法。
【請求項14】
請求項7に記載の撮像素子から出力された信号から、瞳領域が分割された瞳分割信号を取得し、該瞳分割信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出方法であって、
前記第1の構成または前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号に第1の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第2の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第2の係数をかけ、前記第3および第4の構成から得られた前記瞳分割信号のうち、前記第3の色のカラーフィルタに対応する前記瞳分割信号に第3の係数をかけ、前記第5および第6の構成から得られた前記瞳分割信号に第4の係数をかけて、積算することで、輝度信号を生成する生成工程と、
前記輝度信号に基づいて、位相差方式の焦点検出を行う焦点検出工程と、を有し、
前記生成工程では、
前記第1の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも小さくし、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第1の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から得られた前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも小さくし、前記第2および第3の係数よりも大きくして、第2の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第1の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも大きくすると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第3の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記第2の構成から出力された前記瞳分割信号を用いると共に、前記第4の係数を、前記第1の係数よりも大きくすると共に、前記第1の係数を、前記第2および第3の係数よりも小さくして、第4の方向に瞳領域が分割された輝度信号を生成し、
前記焦点検出工程では、前記第1から第
4の方向それぞれについて、焦点検出を行い、
前記第1から第4の方向は互いに異なることを特徴とする焦点検出方法。
【請求項15】
コンピュータに、請求項13または14に記載の焦点検出方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、撮像装置、及び焦点検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置の焦点検出方法の1つとして、撮像素子に形成された焦点検出用画素を用いて瞳分割信号を取得し、位相差方式の焦点検出を行う、いわゆる撮像面位相差方式が知られている。焦点検出用画素としては、各画素に、1つのマイクロレンズと、複数の感度領域とを形成した構成が知られており、複数の感度領域それぞれが、撮影光学系の異なる瞳領域を通過した光を受光することで、瞳分割信号を取得することができる。
【0003】
特許文献1には、複数の光電変換領域を2方向に並べることで、2方向に瞳分割された瞳分割信号を取得する撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、位相差方式の焦点検出において、被写体の明暗パターン、すなわち、輝度が変化する方向が瞳分割信号の分割方向に近い場合に、焦点検出の精度が低下するという課題がある。
【0006】
瞳分割信号の分割方向を増やすために、特許文献1に記載の画素を組み合わせて縦横斜め合計4方向に分割する撮像素子を構成したとしても、分割方向の異なる画素間で特性が揃わず、瞳分割信号を画素ごとに加算して得られる画像信号にばらつきが生じてしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、画像信号の感度のばらつきを抑えつつ、瞳領域の分割方向を増やすことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像素子は、複数のマイクロレンズと、前記複数のマイクロレンズそれぞれに対して、光の入射面から第1の深さに構成された複数の第1の感度領域と、前記第1の深さよりも深い第2の深さに構成された複数の第2の感度領域と、前記複数の第1の感度領域と、前記複数の第2の感度領域とを、互いに異なる組み合わせで電気的に接続する複数の接続部と、を有する画素部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像信号の感度のばらつきを抑えつつ、瞳領域の分割方向を増やすことを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態における第1
画素及び第
2画素の構成を示す平面図及び断面図。
【
図4】実施形態における第3
画素及び第
4画素の構成を示す平面図及び断面図。
【
図5】第1の実施形態における、画素領域のカラーフィルタ配列と瞳分割信号の分割方向を示す模式図。
【
図6】第2の実施形態における、画素領域のカラーフィルタ配列と瞳分割信号の分割方向を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる撮像装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、撮像素子1と、全体制御・演算部2と、指示部3と、タイミング発生部4と、撮影レンズユニット5と、レンズ駆動部6と、信号処理部7と、表示部8と、記録部9と、を備えている。
【0013】
撮影レンズユニット5は、被写体の光学像を撮像素子1に結像させる。図では1枚のレンズで表されているが、撮影レンズユニット5は、フォーカスレンズ、ズームレンズ等を含む複数のレンズと、絞りを含み、撮像装置の本体から着脱可能であってもよいし、本体に一体的に構成されていてもよい。
【0014】
撮像素子1は、各画素が複数の光電変換領域を有する複数の画素が2次元配置された画素部を備え、撮影レンズユニット5を介して入射する光を電気信号に変換して出力する。なお、撮像素子1の詳細構成については後述するが、各画素からは、位相差方式の焦点検出に用いることのできる瞳分割された瞳分割信号と、画素ごとの信号である画像信号とを取得可能に信号が読み出される。
【0015】
信号処理部7は、撮像素子1から出力される信号に対して、補正処理等の所定の信号処理を行い、焦点検出に用いる瞳分割信号及び記録に用いる画像信号を出力する。
【0016】
全体制御・演算部2は、撮像装置全体の統括的な駆動及び制御を行う。また、信号処理部7により処理された瞳分割信号を用いて焦点検出のための演算を行ったり、画像信号に対して、露出制御のための演算処理や、記録・再生用画像を生成するための現像、圧縮等の所定の信号処理を行う。
【0017】
レンズ駆動部6は、撮影レンズユニット5を駆動するものであり、全体制御・演算部2からの制御信号に従って、撮像レンズユニット5に対してフォーカス制御や、ズーム制御、絞り制御等を行う。
【0018】
指示部3は、ユーザー等の操作により外部から入力される、撮影の実行指示、撮像装置の駆動モード設定、その他各種設定や選択等の入力を受け付け、全体制御・演算部2へ送信する。
【0019】
タイミング発生部4は、全体制御・演算部2からの制御信号に従って、撮像素子1及び信号処理部7を駆動するためのタイミング信号を生成する。
表示部8は、プレビュー画像や再生画像、撮像装置の駆動モード設定等の情報を表示する。
【0020】
記録部9には不図示の記録媒体が備えられ、記録用画像信号が記録される。記録媒体としては、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。記録媒体は記録部9から着脱可能であってもよいし、内蔵されたものであってもよい。
【0021】
次に、本実施形態における画素の構成について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、本実施形態の撮像素子1における画素の等価回路図である。なお、本実施形態における各画素は、
図3及び
図4を参照して後述するように、第1~第4画素P1~P4のいずれかの構成を有するが、
図2に示す回路構成は、第1~第4画素P1~P4に共通する。
【0022】
各画素は、入射した光を光電変換するフォトダイオードPD1,PD2、転送トランジスタM1A,M1B、リセットトランジスタM2、電荷保持部としてのフローティングディフュージョン部FD、増幅トランジスタM3、選択トランジスタM4を有する。各々のトランジスタとしては、NチャネルMOSトランジスタを用いることができる。以下、NチャネルMOSトランジスタを用いたものとして説明する。
【0023】
転送トランジスタM1Aのゲートには、タイミング発生部4からのタイミング信号に応じて、不図示の制御回路から制御信号PTX1が入力される。転送トランジスタM1Aは、制御信号PTX1がHigh(以下「H」と記す。)の間ONとなり、フォトダイオードPD1に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部FDへ転送する。また、転送トランジスタM1Bのゲートには、不図示の制御回路から制御信号PTX2が入力され、制御信号PTX2がHの間ONとなって、フォトダイオードPD2に蓄積された電荷をフローティングディフュージョン部FDへ転送する。
【0024】
リセットトランジスタM2のゲートには、不図示の制御回路から制御信号PRESが入力され、制御信号PRESがHの間ONとなることで、フローティングディフュージョン部FDの電荷が電源電圧VDDにリセットされる。なお、制御信号PRESと、制御信号PTX1,PTX2を同時にHとすることで、フォトダイオードPD1,PD2を電源電圧VDDにリセットすることができる。
【0025】
選択トランジスタM4のゲートには、不図示の制御回路から制御信号PSELが入力される。選択トランジスタM4は、制御信号PSELがHの間ONとなることで、フローティングディフュージョン部FDの電荷量に応じて増幅トランジスタM3により変換された信号電圧が、信号線VLへ出力される。
【0026】
上記回路構成を有する本実施形態における画素では、転送トランジスタM1Aを単独でONとすることにより、フォトダイオードPD1の電荷をフローティングディフュージョン部FDに転送して読み出すことができる。以下、フォトダイオードPD1から読み出した信号をA信号と呼ぶ。また、転送トランジスタM1Bを単独でONとすることにより、フォトダイオードPD2の電荷をフローティングディフュージョン部FDに転送して読み出すことができる。以下、フォトダイオードPD2から読み出した信号をB信号と呼ぶ。このA信号とB信号は瞳分割信号であり、信号処理部7においてA信号とB信号を画素ごとに加算することで画像信号(A+B信号)を得ることができる。
【0027】
または、A信号を読み出した後に、転送トランジスタM1AとM1Bとを同時にONとして、フォトダイオードPD1とPD2の電荷をフローティングディフュージョン部FDに転送して読み出すことで、A+B信号を得ることができる。このA+B信号は画像信号であり、信号処理部7においてA+B信号からA信号を差し引いて、B信号を得ることで、焦点検出に用いることのできる瞳分割信号を得ることができる。
【0028】
図3及び
図4は、本実施形態における
図2の回路構成を有する画素の概略構成を示す平面図及び断面図である。本実施形態では、4種類の異なる構成を有する画素を用いるものとし、4種類の画素の内、
図3(a)~(c)は第1画素P1、
図3(d)~(f)は第2画素P2、
図4(a)~(c)は第3画素P3、
図4(d)~(f)は第4画素P4の構成を示す。
【0029】
図3(a)は、第1画素P1の平面模式図である。
図3(a)において、マイクロレンズMLは、フォトダイオードP
D1,P
D2に対して入射光を導く。感度領域101,102,103,104は、フォトダイオードP
D1,P
D2の感度領域である。
【0030】
マイクロレンズMLによって、撮影レンズユニット5の瞳と各感度領域101,102,103,104が共役の関係となり、各感度領域101,102,103,104がそれぞれ撮影レンズユニット5の瞳の異なる領域を通過した光を受光する。また、感度領域101と102、103と104は、それぞれマイクロレンズMLに対し光学的に共役関係となるよう配置される。また、感度領域101と102は、撮影レンズユニット5の瞳を図面縦方向に分割するように配置され、感度領域103と104は、撮影レンズユニット5の瞳を感度領域101と102とは90°異なる図面横方向に分割するように配置される。
【0031】
接続部105は、感度領域101と103とを電気的に接続し、接続部106は、感度領域102と104とを電気的に接続する。第1画素P1では、感度領域101,103と接続部105によりフォトダイオードPD1の感度領域が構成され、感度領域102,104と接続部106によりフォトダイオードPD2の感度領域が構成される。
【0032】
107は、転送トランジスタM1Aのゲート電極、108は、転送トランジスタM1Bのゲート電極である。109は、フローティングディフュージョン部FDを構成する半導体領域である。
【0033】
図3(a)に示した第1画素P1のX1-X2断面の模式図を
図3(b)に、X3-X4断面の模式図を
図3(c)に、それぞれ示す。なお、
図3(b)及び(c)においては、図面下側(マイクロレンズML側)から光が入射するものとし、以下の説明における深さは、入射面から図面上方向への深さを表す。半導体基板110中、第1の深さに、感度領域101と102が設けられる。また、第1の深さより深い、半導体基板110中の第2の深さに、感度領域103と104が設けられる。接続部105は感度領域101と103との間に設けられ、感度領域101と103を電気的に接続する。また、接続部106は感度領域102と104との間に設けられ、感度領域102と104を電気的に接続する。
【0034】
マイクロレンズMLと半導体基板110との間にはカラーフィルタ111が構成される。本実施形態では、第1画素P1には、カラーフィルタ111として、赤色光を透過するRフィルタを設ける。
【0035】
図3(d)は、第2画素P2の平面模式図である。また、
図3(d)に示す第2画素P2のX1-X2断面の模式図を
図3(e)に、X3-X4断面の模式図を
図3(f)に、それぞれ示す。なお、
図3(b)、(c)と同様に、
図3(e)、(f)においても、図面下側(マイクロレンズML側)から光が入射するものとし、以下の説明における深さは、入射面から図面上方向への深さを表す。
【0036】
第2画素P2は、接続部205、206が第1画素P1と異なるが、それ以外の構成及び配置は、第1画素P1と同様である。
【0037】
第2画素P2では、接続部205が感度領域102と103とを電気的に接続し、接続部206が感度領域101と104とを電気的に接続する。このため、第2画素P2では、感度領域102,103と接続部205によりフォトダイオードPD1の感度領域が構成され、感度領域101,104と接続部206によりフォトダイオードPD2の感度領域が構成される。
【0038】
また、本実施形態では、第2画素P2には、カラーフィルタ111として、第1画素P1と同様に赤色光を透過するRフィルタが設けられる。
【0039】
ここで、第1画素P1及び第2画素P2において、感度領域101,102,103,104が構成される深さと、各感度領域で光電変換される光の波長との関係について説明する。
【0040】
可視光用の撮像素子に広く用いられるシリコンにおいて、入射光は、波長が短い程シリコンの表面近くで吸収され、波長が長い程深くまで侵入する。例えば、入射した光の半分が吸収される深さは、赤色光に含まれる波長700nmでは約3.2μm、緑色光に含まれる波長530nmでは約0.8μm、青色光に含まれる波長450nmでは約0.3μmである。
【0041】
Rフィルタ111を透過した赤色光がシリコン基板に入射すると、赤色光の一部が第1の深さの感度領域101、102で吸収され、光電変換される。また、別の一部が、感度領域101と102とは分割方向が90°異なる、第2の深さの感度領域103、104で吸収され、光電変換される。
【0042】
第1画素P1においては、感度領域101と103で生じた電荷が混合され、感度領域102と104で生じた電荷が混合される。従って、第1画素P1から得られる瞳分割信号の分割方向は、感度領域101と102、103と104の双方の分割方向から傾いた、第1の方向D1となる。このように、第1画素P1では、感度領域101,102,103,104の分割方向とは異なる方向に瞳分割された瞳分割信号が取得される。
【0043】
また、第2画素P2においては、感度領域102と103で生じた電荷が混合され、感度領域101と104で生じた電荷が混合される。従って、第2画素P2から得られる瞳分割信号の分割方向は、第1の方向D1に対して直交する第2の方向D2となる。このように第2画素P2においても、第1画素P1と同様に、感度領域101,102,103,104の分割方向とは異なる方向に瞳分割された瞳分割信号が取得される。
【0044】
次に、第3画素P3及び第4画素P4の構成について説明する。
図4(a)は、第3画素P3の平面模式図である。また、
図4(a)に示す第3画素P3のX1-X2断面の模式図を
図4(b)に、X3-X4断面の模式図を
図4(c)に、それぞれ示す。なお、
図3(b)、(c)と同様に、
図4(b)、(c)においても、図面下側(マイクロレンズML側)から光が入射するものとし、以下の説明における深さは、入射面から図面上方向への深さを表す。
【0045】
図4(a)~(c)に示す第3画素P3は、第1画素P1と比較して、カラーフィルタ311が異なるが、それ以外の構成及び配置は第1
画素P1と同様であるため、説明を省略する。第3画素P3のカラーフィルタ311としては、緑色光を透過するGフィルタ、または、青色光を透過するBフィルタが設けられる。
【0046】
図4(d)は、第4画素P4の平面模式図である。また、
図4(d)に示す第4画素P4のX1-X2断面の模式図を
図4(e)に、X3-X4断面の模式図を
図4(f)に、それぞれ示す。なお、
図3(b)、(c)と同様に、
図4(e)、(f)においても、図面下側(マイクロレンズML側)から光が入射するものとし、以下の説明における深さは、入射面から図面上方向への深さを表す。
【0047】
第4画素P4においては、感度領域401,402は、半導体基板110の第1の深さに設けられ、感度領域401と402は、第3画素P3の感度領域101と102とは90°異なる図面横方向に撮影レンズユニット5の瞳を分割するように配置される。なお、マイクロレンズML、感度領域103,104、及び、転送トランジスタのゲート電極107,108、フローティングディフュージョン部109の配置は、第3画素P3と同様である。
【0048】
第4画素P4では、接続部105は感度領域401と103とを電気的に接続し、接続部106は感度領域402と104とを電気的に接続する。このため、第4画素P4では、感度領域401,103と接続部105によりフォトダイオードPD1の感度領域が構成され、感度領域402,104と接続部106によりフォトダイオードPD2の感度領域が構成される。
【0049】
この接続構成により、第3画素P3と第4画素P4とで第1の深さにおける感度領域の配置を異ならせても、第2の深さでは感度領域を共通の配置とすることができるため、第3画素P3と第4画素P4の電荷転送特性を揃えることができる。
【0050】
また、第4画素P4には、カラーフィルタ311として、第3画素P3と同様に、緑色光を透過するGフィルタ、または、青色光を透過するBフィルタが設けられる。
【0051】
次に、第3画素P3及び第4画素P4において、感度領域101,102,103,104,401,402が構成される深さと、各感度領域で光電変換される光の波長との関係について説明する。
【0052】
GフィルタまたはBフィルタを透過した緑色光、青色光は、赤色光と異なり、そのほとんどが第1の深さの感度領域で吸収され光電変換されるため、第1の深さの感度領域の分割方向と略等しい方向に瞳分割された瞳分割信号が取得される。従って、第3画素P3から得られる瞳分割信号の分割方向は、第1の方向D1及び第2の方向D2と異なる第3の方向D3となる。また、第4画素P4から得られる瞳分割信号の分割方向は、第3の方向D3に対して直交する第4の方向D4となる。
【0053】
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。
図5は、第1の実施形態における撮像素子1の上面模式図であり、上記構成を有する複数の第1~第4画素P1~P4を行列状に配置した例を示している。
【0054】
図5において、各矢印は、
図3及び
図4に示す第1~第4画素P1~P4から出力される瞳分割信号の分割方向を示している。即ち、左上がりの矢印が第1の方向D1、右上がりの矢印が第2の方向D2、垂直方向の矢印が第3の方向D3、水平方向の矢印が第4の方向D4を表している。また、Rフィルタを有する第1画素P1及び第2画素P2と、GフィルタまたはBフィルタを有する第3画素P3及び第4画素P4を、カラーフィルタの配列がベイヤー配列となるように並べている。
【0055】
画素領域10に第1~第4画素P1~P4を備えるようにしたことで、第1から第4の方向D1~D4に瞳分割された瞳分割信号を取得することができる。
【0056】
全体制御・演算部2は、撮像素子1より得られた瞳分割信号に対し、焦点検出のための演算処理を行い、デフォーカス量を求める。なお、瞳分割信号からデフォーカス量を求める方法としては公知の方法を用いることができるため、以下、簡単に説明する。
【0057】
画素領域10に配された各第1画素P1の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第1の方向D1に瞳分割された瞳分割信号R1A,R1Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号R1Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号R1Bを集めて構成したB画像とを相対的にシフトしながら、相関演算を行うことで、第1の方向D1のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0058】
また、画素領域10に配された各第2画素P2の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第2の方向D2に瞳分割された瞳分割信号R2A,R2Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号R2Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号R2Bを集めて構成したB画像とから、同様の相関演算により、第2の方向D2のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0059】
更に、画素領域10に配された第3画素P3のうち、Gフィルタに覆われた各第3画素P3の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第3の方向D3に瞳分割された一対の瞳分割信号G3A,G3Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号G3Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号G3Bを集めて構成したB画像とから、同様の相関演算により、第3の方向D3のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0060】
更に、画素領域10に配された第3画素P3のうち、Bフィルタに覆われた各第3画素P3の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第3の方向D3に瞳分割された一対の瞳分割信号B3A,B3Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号B3Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号B3Bを集めて構成したB画像とから、同様の相関演算により、第3の方向D3のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0061】
更に、画素領域10に配された第4画素P4のうち、Gフィルタに覆われた各第4画素P4の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第4の方向D4に瞳分割された一対の瞳分割信号G4A,G4Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号G4Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号G4Bを集めて構成したB画像とから、同様の相関演算により、第4の方向D4のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0062】
更に、画素領域10に配された第4画素P4のうち、Bフィルタに覆われた各第4画素P4の第1のフォトダイオードPD1及び第2のフォトダイオードPD2からは、第4の方向D4に瞳分割された一対の瞳分割信号B4A,B4Bがそれぞれ出力される。この瞳分割信号B4Aを集めて構成したA画像と、瞳分割信号B4Bを集めて構成したB画像とから、同様の相関演算により、第4の方向D4のデフォーカス量を求めることができる。この時、求めたデフォーカス量の信頼度に関する情報を合わせて取得しておく。
【0063】
そして、全体制御・演算部2は、求めた6つのデフォーカス量と信頼性に関する情報に基づいてフォーカスレンズの駆動量を求める。そして求めた駆動量に基づいて、レンズ駆動部6を制御し、レンズ駆動部6が撮影レンズユニット5を駆動することにより、フォーカス制御を行う。
【0064】
なお、第3の方向D3と第4の方向D4のデフォーカス量については、GフィルタまたはBフィルタのいずれか一方について求めるようにしてもよい。
【0065】
上記の通り第1の実施形態によれば、より多くの被写体の輝度が変化する方向について、焦点検出の精度を向上することができる。
【0066】
<変形例>
デフォーカス量を求める際、第1~第4画素P1~P4から得られた瞳分割信号から輝度信号を生成し、生成した輝度信号を用いて第1~第4の方向D1~D4に相関演算を行ってもよい。このようにすることにより、上述したようにR、G、Bの各信号に対してそれぞれ2方向の相関演算を行うのに比べて、相関演算の回数を削減することができる。
【0067】
以下、第1~第4画素P1~P4の瞳分割信号から、輝度信号を生成する変換方法について説明する。輝度信号の生成には、以下の式(1)~(4)を用い、各変換には、第1~第4画素P1~P4それぞれの第1のフォトダイオードPD1から得られた信号同士、または第2のフォトダイオードPD2から得られた信号同士を用いる。即ち、式(1)~(4)において、R1は瞳分割信号R1AまたはR1B、R2は瞳分割信号R2AまたはR2Bに対応する。また、G3は瞳分割信号G3AまたはG3B、G4は瞳分割信号G4AまたはG4B、B3は瞳分割信号B3AまたはB3B、B4は瞳分割信号B4AまたはB4Bに対応する。また、(x,y)は求める輝度信号の座標を示す。
【0068】
Y1(x,y)=α1×R1(x,y)+β1×G3(x,y)+γ1×B3(x,y) …(1)
Y2(x,y)=α1×R2(x,y)+β1×G4(x,y)+γ1×B4(x,y) …(2)
Y3(x,y)=α2×R1(x,y)+β2×G3(x,y)+γ2×B3(x,y) …(3)
Y4(x,y)=α2×R2(x,y)+β2×G4(x,y)+γ2×B4(x,y) …(4)
【0069】
式(1)は、座標(x,y)における、第1の方向D1に分割された瞳分割信号として用いる輝度信号Y1(x,y)を求める式である。R1(x,y)に係数α1、G3(x,y)に係数β1、B3(x,y)に係数γ1をそれぞれ乗じて積算し、座標(x,y)における輝度信号Y1(x,y)とする。上述したように、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y1(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第1の方向D1の相関演算に用いる。この時、係数の大小関係をα1>β1,γ1とすることで、瞳分割信号の分割方向が相関演算の方向に近い瞳分割信号R1に対して、輝度信号へ変換する際の重み付けを重くする。
【0070】
なお、カラーフィルタがベイヤー配列された撮像素子においては、座標(x,y)にはR、G、Bいずれかの信号のみ存在する。そのため、他の色については、座標(x,y)に近接する当該色の画素信号を用いた公知の補間演算により、座標(x,y)の仮想の信号を生成して用いればよい。
【0071】
式(2)は、座標(x,y)における、第1の方向D1と直交する第2の方向D2に分割された瞳分割信号としての輝度信号Y2(x,y)を求める式である。式(2)においては、式(1)と共通の係数α1,β1,γ1を用い、R2(x,y)に係数α1、G4(x,y)に係数β1、B4(x,y)に係数γ1をそれぞれ乗じて積算し、座標(x,y)における輝度信号Y2(x,y)とする。そして、上述したように、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y2(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第2の方向D2の相関演算に用いる。
【0072】
式(3)は、座標(x,y)における、第1の方向D1及び第2の方向D2と異なる第3の方向D3に分割された瞳分割信号としての輝度信号Y3(x,y)を求める式である。式(3)においては、R1(x,y)に係数α2、G3(x,y)に係数β2、B3(x,y)に係数γ2をそれぞれ乗じて積算し、座標(x,y)における輝度信号Y3(x,y)とする。この時、係数同士の大小関係をβ2,γ2>α2とすることで、瞳分割信号の分割方向が相関演算の方向に近いG画素とB画素の信号に対して、輝度信号へ変換する際の重み付けを重くする。そして、上述したように、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y3(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第3の方向D3の相関演算に用いる。なお、式(1)及び式(3)の係数同士の大小関係は、α1>α2、β1<β2、γ1<γ2となる。
【0073】
式(4)は、座標(x,y)における、第3の方向D3と直交する第4の方向D4に分割された瞳分割信号としての輝度信号Y4(x,y)を求める式である。式(4)においては、式(3)と共通の係数α2,β2,γ2を用い、R2(x,y)に係数α2、G4(x,y)に係数β2、B4(x,y)に係数γ2をそれぞれ乗じて積算し、座標(x,y)における輝度信号Y4(x,y)とする。そして、上述したように、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y4(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第4の方向D4の相関演算に用いる。
【0074】
このように、各座標における瞳分割された輝度信号を求めてから相関演算を行うことで、相関演算の回数を削減することができる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、
図2乃至
図4を参照して説明した複数の第1~第4画素P1~P4に加え、第1画素P1及び第2画素P2の構成のうち、カラーフィルタ111の代わりに白色光を透過するWフィルタが配された、またはフィルタが配されていない構成を有する第5画素P5及び第6画素P6を用いて、撮像素子1を構成する。即ち、第5画素P5から出力される瞳分割信号の分割方向は、第1画素P1から出力される瞳分割信号の分割方向と等しく、第6画素P6から出力される瞳分割信号の分割方向は、第2画素P2から出力される瞳分割信号の分割方向と等しい。
【0076】
従って、第5画素P5からは、感度領域の分割方向とは異なる第1の方向D1に分割された瞳分割信号W1A及びW1Bを取得することができる。また、第6画素P6からは、第1の方向D1に対して直交する、第2の方向D2に分割された瞳分割信号W2A及びW2Bを取得できる。
【0077】
このように、第2の実施形態においては、各色成分の瞳分割信号を用いて得られたデフォーカス量に加えて、白色光に基づく瞳分割信号を用いて、デフォーカス量を取得することができる。このように白色光に基づく瞳分割信号を用いることで、被写体の輝度が低い場合に、より精度の高い焦点検出を行うことが可能になる。
【0078】
<変形例>
次に、
図6に示す構成においても、デフォーカス量を求める際、第1~第6画素P1~P6から得られた瞳分割信号から輝度信号を生成し、生成した輝度信号を用いて第1~第4の方向D1~D4に相関演算を行ってもよい。このようにすることにより、上述したようにR、G、B、Wの各信号に対してそれぞれ2方向の相関演算を行うのに比べて、相関演算の回数を削減することができる。
【0079】
以下、第1~第6画素P1~P6の瞳分割信号から、輝度信号を生成する変換方法について説明する。以下の式(5)~(8)は、輝度信号を生成する変換方法を示す式である。式(5)~(8)は、式(1)~(4)と比較して、第5画素P5及び第6画素P6からの瞳分割信号を更に用いる点が異なる。なお、式(5)~(8)において、W1は瞳分割信号W1AまたはW1B、W2は瞳分割信号W2AまたはW2Bを表している。
【0080】
Y1(x,y)=α1×R1(x,y)+β1×G3(x,y)+γ1×B3(x,y)+δ1×W1(x,y) …(5)
Y2(x,y)=α1×R2(x,y)+β1×G4(x,y)+γ1×B4(x,y)+δ1×W2(x,y) …(6)
Y3(x,y)=α2×R1(x,y)+β2×G3(x,y)+γ2×B3(x,y)+δ2×W1(x,y) …(7)
Y4(x,y)=α2×R2(x,y)+β2×G4(x,y)+γ2×B4(x,y)+δ2×W2(x,y) …(8)
【0081】
式(5)は、座標(x,y)における、第1の方向D1に分割された瞳分割信号として用いる輝度信号Y1(x,y)を求める式である。上述した式(1)に、更にW1に係数δ1を乗じて積算した値を、座標(x,y)における輝度信号Y1(x,y)とする。そして、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y1(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第1の方向D1の相関演算に用いる。
【0082】
式(6)は、座標(x,y)における、第2の方向D2に分割された瞳分割信号として用いる輝度信号Y2(x,y)を求める式である。上述した式(2)に、更にW2に係数δ1を乗じて積算した値を、座標(x,y)における輝度信号Y2(x,y)とする。そして、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y2(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第2の方向D2の相関演算に用いる。
【0083】
式(7)は、座標(x,y)における、第3の方向D3に分割された瞳分割信号として用いる輝度信号Y3(x,y)を求める式である。上述した式(3)に、更にW1に係数δ2を乗じて積算した値を、座標(x,y)における輝度信号Y3(x,y)とする。そして、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y3(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第3の方向D3の相関演算に用いる。
【0084】
式(8)は、座標(x,y)における、第4の方向D4に分割された瞳分割信号として用いる輝度信号Y4(x,y)を求める式である。上述した式(4)に、更にW2に係数δ2を乗じて積算した値を、座標(x,y)における輝度信号Y4(x,y)とする。そして、フォトダイオードP1及びP2それぞれから出力された瞳分割信号について、それぞれ輝度信号Y4(x,y)を算出し、それぞれ集めてA画像及びB画像を生成し、第4の方向D4の相関演算に用いる。
【0085】
このとき、第1の実施形態と同様に、瞳分割信号の分割方向が、相関演算の方向に近い信号程、輝度信号へ変換する際の重み付けを重くする。Wフィルタは、R,G,Bフィルタすべての透過波長帯の光を透過するため、本変形例においては、重み付けの係数の大小関係を、α1>δ1>β1,γ1、α2<δ2<β2,γ2、δ1>δ2となるように決定する。
【0086】
その他の色の瞳分割信号に乗じる重み付け係数の大小関係は、第1の実施形態の変形例と同様である。
【0087】
このように、各座標における瞳分割された輝度信号を求めてから相関演算を行うことで、相関演算の回数を削減することができる。
【0088】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、
図3及び
図4に示すように、各感度領域が矩形である場合について説明したが、本発明はこれに限られるものでは無い。各感度領域の形状が同じであれば、例えば、三角形としてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0089】
<他の実施形態>
なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0090】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0091】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0092】
1:撮像素子、2:全体制御・演算部、3:指示部、4:タイミング発生部、5:撮影レンズユニット、6:レンズ駆動部、7:信号処理部、8:表示部、9:記録部、P1:第1画素、P2:第2画素、P3:第3画素、P4:第4画素、D1:第1の方向、D2:第2の方向、D3:第3の方向、D4:第4の方向