(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H03G 7/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H03G7/00 007
(21)【出願番号】P 2020107798
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2019176925
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595000427
【氏名又は名称】株式会社コーエーテクモゲームス
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 雅人
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-055428(JP,A)
【文献】米国特許第09559650(US,B1)
【文献】特開2014-110567(JP,A)
【文献】特開昭56-084013(JP,A)
【文献】特開平04-150106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
出力される音データのうち、第1時点から第2時点までのデータを取得する第1取得処理と、
前記音データによる前記第2時点での音量が所定の閾値を超える場合、前記第1時点から前記第2時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する第1決定処理と、
前記音データの前記第1時点からの各時点の音を、前記第1決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第1出力処理と、
前記音データのうち、前記第1時点から前記第2時点までの間の第3時点から、第4時点までのデータを取得する第2取得処理と、
前記第1決定処理で決定した減衰度による前記第4時点での音量が前記所定の閾値を超える場合、前記第3時点から前記第4時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する第2決定処理と、
前記音データの前記第1時点から前記第3時点までの各時点の音を、前記第1決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、
前記音データの前記第3時点から前記第4時点までの各時点の音を、前記第2決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第2出力処理と、
前記音データのうち、前記第4時点より後の第5時点から、第6時点までのデータを取得する第3取得処理と、
前記第2決定処理で決定した前記第4時点での減衰度による前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量が、それぞれ前記所定の閾値以下である場合、前記音データによる前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量である所定音量の減衰度を、前記第5時点から所定時間の間、時間の経過に従って減少する値にそれぞれ決定する第3決定処理と、
前記音データの前記第5時点から前記第6時点までの各時点の音を、前記第3決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第3出力処理と、
を実行させ、
前記第3決定処理では、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも小さい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも短く決定し、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも長く決定する、
プログラム。
【請求項2】
前記第1決定処理では、
前記第1時点から前記第2時点までの各時点における音量の減衰度を、前記第2時点で出力される音量が前記所定の閾値以下となるように、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する、
請求項
1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第2決定処理では、
前記第3時点から前記第4時点までの各時点における音量の減衰度を、前記第4時点で出力される音量が前記所定の閾値以下となるように、前記第2決定処理で決定した前記第3時点での減衰度から、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する、
請求項
1又は
2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第3決定処理では、
前記第5時点から前記第6時点以前までの各時点における音量の減衰度を、前記第2決定処理で決定した前記第4時点での減衰度から、時間の経過に従って減少する値にそれぞれ決定し、
前記第3出力処理では、
前記音データの前記第4時点から前記第5時点までの各時点の音を、前記第2決定処理で決定した前記第5時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、前記音データの前記第5時点から前記第6時点までの各時点の音を、前記第3決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる、
を実行させる請求項
1から
3のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第3決定処理では、
前記音データによる、前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量に基づいて、前記第5時点から前記第6時点以前までの各時点における音量の減衰度を決定する、
請求項
1から
4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記音データのうち、前記第5時点から前記第6時点までの間の第7時点から、第8時点までのデータを取得する第4取得処理と、
前記第3決定処理で決定した減衰度による前記第8時点での音量が前記所定の閾値を超える場合、前記第7時点から前記第8時点までの各時点における音量の減衰度を、前記第3決定処理で決定した前記第7時点での音量の減衰度と、前記音データによる前記第8時点での音量が前記所定の閾値を超える量とに基づいて、時間の経過に従って変化する値にそれぞれ決定する第4決定処理と、
を実行させる請求項
1から
5のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記第1取得処理により取得される第1時点から第2時点までの時間長のユーザによる指定を受け付ける処理を実行させる、
請求項
1から
6のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項8】
情報処理装置が、
出力される音データのうち、第1時点から第2時点までのデータを取得する第1取得処理と、
前記音データによる前記第2時点での音量が所定の閾値を超える場合、前記第1時点から前記第2時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する第1決定処理と、
前記音データの前記第1時点からの各時点の音を、前記第1決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第1出力処理と、
前記音データのうち、前記第1時点から前記第2時点までの間の第3時点から、第4時点までのデータを取得する第2取得処理と、
前記第1決定処理で決定した減衰度による前記第4時点での音量が前記所定の閾値を超える場合、前記第3時点から前記第4時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する第2決定処理と、
前記音データの前記第1時点から前記第3時点までの各時点の音を、前記第1決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、
前記音データの前記第3時点から前記第4時点までの各時点の音を、前記第2決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第2出力処理と、
前記音データのうち、前記第
4時点より後の第5時点から、第6時点までのデータを取得する第3取得処理と、
前記第
2決定処理で決定した前記第
4時点での減衰度による前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量が、それぞれ前記所定の閾値以下である場合、前記音データによる前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量である所定音量の減衰度を、前記第5時点から所定時間の間、時間の経過に従って減少する値にそれぞれ決定する第3決定処理と、
前記音データの前記第5時点から前記第6時点までの各時点の音を、前記第3決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第3出力処理と、
を実行し、
前記第3決定処理では、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも小さい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも短く決定し、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも長く決定する、
情報処理方法。
【請求項9】
出力される音データのうち、第1時点から第2時点までのデータを取得する取得部と、
前記音データによる前記第2時点での音量が所定の閾値を超える場合、前記第1時点から前記第2時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する決定部と、
前記音データの前記第1時点からの各時点の音を、前記決定部により決定された各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる出力部と、
を有し、
前記取得部は、
前記音データのうち、前記第1時点から前記第2時点までの間の第3時点から、第4時点までのデータを取得し、
前記決定部は、
前記決定部で決定した減衰度による前記第4時点での音量が前記所定の閾値を超える場合、前記第3時点から前記第4時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定し、
前記出力部は、
前記音データの前記第1時点から前記第3時点までの各時点の音を、前記決定部により決定された各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、
前記音データの前記第3時点から前記第4時点までの各時点の音を、前記決定部により決定された各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、
前記取得部は、
前記音データのうち、前記第
4時点より後の第5時点から、第6時点までのデータを取得し、
前記決定部は、
前記決定部で決定した前記第
4時点での減衰度による前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量が、それぞれ前記所定の閾値以下である場合、前記音データによる前記第5時点から前記第6時点までの各時点での音量である所定音量の減衰度を、前記第5時点から所定時間の間、時間の経過に従って減少する値にそれぞれ決定し、
前記出力部は、
前記音データの前記第5時点から前記第6時点までの各時点の音を、前記決定部により決定された各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させ、
前記決定部は、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも小さい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも短く決定し、
前記所定音量の最大値が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記所定時間の時間長を、前記所定音量の最大値が前記所定の閾値と同じ場合のときよりも長く決定する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音データの音量を調整する、リミッタやコンプレッサが知られている(例えば、特許文献1を参照)。コンプレッサでは、例えば、入力された音データのある時点での音量が所定の閾値(Threshold)を超えた場合、超過した音量を所定の比率(Ratio)で圧縮することにより、音データの最大値を減少させる。これにより、最大音量と最小音量の差であるダイナミックレンジを圧縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、例えば、入力された音データのある時点での音量が所定の閾値を超えてからコンプレッサによる圧縮処理が開始されるまでの間であるアタックタイムにおいて、ノイズが発生する場合がある等の問題がある。
【0005】
そこで、一側面では、より適切に音量を調整することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの案では、プログラムが、コンピュータに、出力される音データのうち、第1時点から第2時点までのデータを取得する第1取得処理と、前記音データによる前記第2時点での音量が所定の閾値を超える場合、前記第1時点から前記第2時点までの各時点における音量の減衰度を、時間の経過に従って増加する値にそれぞれ決定する第1決定処理と、前記音データの前記第1時点からの各時点の音を、前記第1決定処理で決定した各時点の減衰度の音量でそれぞれ出力させる第1出力処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
一側面によれば、より適切に音量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】各種のパラメータの設定画面の一例について説明する図である。
【
図5A】実施形態に係る音データの振幅の波形の例について説明する図である。
【
図5B】実施形態に係る減衰度の推移の例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0010】
実施形態に係る情報処理装置10は、例えば、家庭用ゲーム機、携帯用ゲーム機、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、及び音量調整装置等である。情報処理装置10は、例えば、音量を一定のレベル以下に抑えるリミッタ(Limiter)、及び音の強弱の差を縮小するコンプレッサ(Compressor)としての機能を有する。
【0011】
<ハードウェア構成>
図1は、実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図1に示す情報処理装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、インタフェース装置105、表示装置106、及び入力装置107等を有する。
【0012】
情報処理装置10での処理を実現するゲームプログラムは、記録媒体101によって提供される。ゲームプログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、ゲームプログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、ゲームプログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたゲームプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0013】
メモリ装置103は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、またはSRAM(Static Random Access Memory)等のメモリであり、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って情報処理装置10に係る機能を実現する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置106はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置107は、コントローラ等、キーボード及びマウス等、またはタッチパネル及びボタン等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。
【0014】
なお、記録媒体101の一例としては、CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク、又はUSBメモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置102の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等が挙げられる。記録媒体101及び補助記憶装置102のいずれについても、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に相当する。
【0015】
<機能構成>
次に、
図2を参照し、情報処理装置10の機能構成について説明する。
図2は、実施形態に係る情報処理装置10の機能ブロック図である。
【0016】
情報処理装置10は、記憶部11を有する。記憶部11は、例えば、補助記憶装置102等を用いて実現される。記憶部11は、音データ等を記憶する。
【0017】
また、情報処理装置10は、受付部12、取得部13、決定部14、調整部15、制御部16、及び出力部17を有する。これら各部は、情報処理装置10にインストールされた1以上のプログラムが、情報処理装置10のCPU104に実行させる処理により実現される。
【0018】
受付部12は、ユーザ等からの各種の入力を受け付ける。取得部13は、記憶部11に記憶されている音データを取得する。
【0019】
決定部14は、音データの各時点における音量の減衰度を決定する。なお、音量の減衰度は、例えば、音量を減衰させる割合等を示す値でもよい。
【0020】
調整部15は、例えば、決定部14により決定された減衰度、及びユーザにより指定された音量レベル等に基づいて、音データの各時点における音量を調整する。
【0021】
制御部16は、例えば、ゲーム等の状況に応じて、各部の制御を行う。
【0022】
出力部17は、音データの音を、調整部15により調整された音量でスピーカ等の音出力装置に出力する。
【0023】
<処理>
次に、
図3及び
図4を参照して、情報処理装置10の処理について説明する。
図3は、実施形態に係る情報処理装置10の処理の一例を示すフローチャートである。
図4は、各種のパラメータの設定画面の一例について説明する図である。
【0024】
ステップS1において、受付部12は、各種のパラメータの設定を受け付ける。ここで、受付部12は、例えば、ユーザに指定された、先読み区間の時間長、音量上限値(Threshold、「所定の閾値」の一例。)、音量レベル、及び音データの種別等の設定を受け付けてもよい。なお、先読み区間については後述する。音量上限値は、情報処理装置10から出力され、スピーカ等の音出力装置に入力される音の音量の最大値である。
【0025】
図4の例では、受付部12は、設定画面401において、音量レベルを指定するためのスライダ411、音量上限値を指定するためのスライダ421、及び先読み区間の時間長を指定するためのスライダ431を表示させている。また、受付部12は、音データの種別を指定するためのチェックボックス441も表示させている。
図4の例では、スライダ421で指定された値が大きいほど、音量上限値が大きく設定される。また、スライダ431で指定された値が大きいほど、先読み区間の時間長が長く設定される。
【0026】
音量レベルは、情報処理装置10から出力され、スピーカ等の音出力装置に入力される音の音量のレベルである。音量レベルは、例えば、1から5の段階で指定されてもよい。この場合、調整部15は、音量レベル「3」が指定された場合は、音データにより規定された音量から変更せず、音量レベル「4」が指定された場合は、音データにより規定された音量を予め所定値(例えば、10%)だけ増加されるようにしてもよい。
【0027】
また、調整部15は、音量レベルの値が大きいほど、情報処理装置10から出力される音の平均音量が大きくなるようにされてもよい。以下では、指定された音量レベルに応じて、音データで規定された音量が増減された後の音量のことを、単に、音データの音量と称する。音データの音量は、例えば、指定された音量レベルに応じた係数と、音データで規定された音量とを乗算することにより決定されてもよい。
【0028】
音データの種別は、以下の処理の対象とされる音データの種別である。音データの種別には、例えば、「セリフ」、「BGM」、及び「効果音」等の種別が含まれてもよい。この場合、ユーザにより音データの種別として「セリフ」のみが指定された場合、例えば、ゲームの状況等に応じて出力される各音データのうち、セリフの音データのみが以下の処理の対象とされてもよい。これにより、例えば、ユーザは、セリフの音のみを聞き取り易くすることができる。なお、音データの種別毎に、読み区間の時間長、音量上限値、及び音量レベルを指定できるようにしてもよい。
【0029】
なお、音出力装置は、情報処理装置10に内蔵されてもよいし、別体とされてもよい。別体の場合、情報処理装置10は例えば、ゲーム機等であり、音出力装置は、例えば、ゲーム機からの映像を表示し、音声を出力するテレビ装置等でもよい。
【0030】
続いて、受付部12は、音データを再生する要求を受け付ける(ステップS2)。ここで、例えば、制御部16により、ゲームの状況等に応じて、所定の音データの再生が指示されてもよい。または、例えば、ユーザの操作等に応答して、所定の音データの再生が指示されてもよい。以降の処理は、音データを再生中に、リアルタイムで実行されてもよい。
【0031】
続いて、決定部14は、各種のパラメータを初期化する(ステップS3)。ここで、決定部14は、音の各種処理を行うための各種のパラメータの値を初期化する。決定部14は、例えば、ステップS1の処理でユーザに指定されたパラメータについては、ユーザに指定された値を設定する。また、決定部14は、その他のパラメータについては、予め設定されている初期値を設定する。
【0032】
また、決定部14は、再生を指示された音データの先頭の時点を、処理対象の先読み区間の開始時点として設定する。また、決定部14は、処理対象とする先読み区間内の各時点における減衰係数の値を初期値である「1」に設定する。
【0033】
続いて、取得部13は、再生を指示された音データのうち、処理対象とする先読み区間内のデータを取得する(ステップS4)。ここで、取得部13は、再生を指示された音データのうち、処理対象の先読み区間の開始時点から、ユーザに設定された先読み区間の時間長分のデータを読み出す。
【0034】
続いて、決定部14は、処理対象の先読み区間内に、音データの音量を低下(圧縮)させるべき時点(以下で、「超過時点」とも称する。)が存在するか否かを判定する(ステップS5)。ここで、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間内の各時点のうち、各時点の減衰係数を音データの各時点の音量に乗算した値が音量上限値(Threshold)を超える時点が存在するか否かを判定してもよい。この場合、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間内の各時点について、処理対象の先読み区間内の各時点における減衰係数と、処理対象の先読み区間内の各時点における音データの音量とを乗算した値が、音量上限値を超えるか否かを判定してもよい。そして、決定部14は、音量上限値を超える時点が有る場合、当該時点を超過時点としてもよい。
【0035】
(圧縮処理(減衰処理))
超過時点が存在する場合(ステップS5でYES)、決定部14は、超過時点の音データの音量、及び音量上限値等に応じた目標減衰係数を算出する(ステップS6)。ここで、決定部14は、例えば、超過時点の音量を、音量上限値以下に減衰させる減衰係数を目標減衰係数として算出してもよい。この場合、決定部14は、例えば、超過時点の音量が、音量上限値の1.5倍である場合、目標減衰係数は0.66(=1/1.5)(目標減衰度は33%)と算出してもよい。または、決定部14は、超過時点の音量が音量上限値を所定程度以上超えないようにする減衰係数を目標減衰係数として算出してもよい。
【0036】
続いて、決定部14は、超過時点、及び算出した目標減衰係数に基づいて、処理対象の先読み区間内の各時点での減衰係数を決定する(ステップS7)。ここで、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間の開始時点から超過時点までの時間の経過に従って、当該開始時点に対して設定されている減衰係数の値から、目標減衰係数の値まで、線形的または非線形的で単調(例えば、単調減少)に値が変化するように、各時点での減衰係数を決定してもよい。
【0037】
また、決定部14は、処理対象の先読み区間内の各時点における減衰係数の値を、決定した各減衰係数の値に更新して記憶しておく。
【0038】
続いて、調整部15は、処理対象の先読み区間の開始時点に対して決定された減衰係数と、先読み区間の開始時点における音データの音量とを乗算した音量に調整し、出力部17により、処理対象の先読み区間の開始時点の音を音出力装置に出力させる(ステップS8)。これにより、スピーカ等の音出力装置から、処理対象の先読み区間の開始時点の音が出力される。
【0039】
続いて、制御部16は、再生を指示された音データの再生を終了するか否かを判定する(ステップS9)。ここで、制御部16は、例えば、先読み区間の開始時点が、再生を指示された音データの終了時点である場合、音データの再生を終了すると判定してもよい。
【0040】
また、制御部16は、例えば、ゲームの状況等に応じて、音データの再生の終了が指示された場合や、ユーザの操作等に応答して、音データの再生の終了が指示された場合等も、音データの再生を終了すると判定してもよい。
【0041】
再生を終了しないと判定した場合(ステップS9でNO)、取得部13は、処理対象の先読み区間の開始時点の次の時点を、処理対象の先読み区間の開始時点とし、再生を指示された音データのうち、先読み区間内のデータを処理対象とし(ステップS10)、ステップS4の処理に進む。
【0042】
一方、再生を終了すると判定した場合(ステップS9でYES)、制御部16は、音データの再生処理を終了させる。
【0043】
一方、ステップS5の判定で、超過時点が存在しない場合(ステップS5でNO)、決定部14は、リリース処理を行うか否かを判定する(ステップS11)。ここで、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間内において、減衰係数を乗算しない音量の値が音量上限値(Threshold)を超える時点(以下で、「非減衰超過時点」とも称する。)が存在するか否かを判定してもよい。この場合、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間内の各時点について、処理対象の先読み区間内の各時点における音データの音量が、音量上限値を超えるか否かを判定し、ある時点での値が音量上限値を超える場合、非減衰超過時点が存在すると判定してもよい。
【0044】
そして、決定部14は、非減衰超過時点が存在する場合、リリース処理を行わないと判定してもよい。また、決定部14は、非減衰超過時点が存在しない場合、リリース処理を行うと判定してもよい。
【0045】
リリース処理を行わないと判定した場合(ステップS11でNO)、決定部14は、現在の目標減衰係数の値を、以降で処理対象とする先読み区間内の各時点における減衰係数の初期値として設定し(ステップS12)、ステップS8の処理に進む。
【0046】
(リリース処理)
一方、リリース処理を行うと判定した場合(ステップS11でYES)、決定部14は、所定時点における目標減衰係数を「1」(目標減衰度を0%)と決定する(ステップS13)。ここで、決定部14は、例えば、当該所定時点を、処理対象の先読み区間の開始時点から所定時間(例えば、1ms。以下で、適宜、「リリース時間」とも称する。)後の時点としてもよい。
【0047】
続いて、決定部14は、当該所定時点、及び目標減衰係数に基づいて、処理対象の先読み区間内の各時点での減衰係数を決定し(ステップS14)、ステップS8の処理に進む。ここで、決定部14は、例えば、処理対象の先読み区間の開始時点から当該所定時点までの時間の経過に従って、当該開始時点に対して設定されている減衰係数の値から、目標減衰係数の値まで、線形的または非線形的な単調増加で値が変化するように、各時点での減衰係数を決定してもよい。そして、決定部14は、目標減衰係数の値である「1」を、当該所定時点以降の各時点における減衰係数の初期値として設定してもよい。
【0048】
≪処理の具体例≫
次に、
図5A、及び
図5Bを参照し、
図3の処理の具体例について説明する。
図5Aは、実施形態に係る音データの振幅の波形の例について説明する図である。
図5Bは、実施形態に係る減衰度の推移の例について説明する図である。
【0049】
(先読み区間の減衰係数が1の場合に音量上限値を超える場合の圧縮処理)
図5Aの例において、音データのうち、第1時点501より前までの音を再生し、第1時点501から第2時点502までが今回の処理対象の先読み区間503であるとし、今回の処理対象の先読み区間503内の各時点における減衰係数の値は「1」(減衰度は0%)に設定されているものとする。
【0050】
なお、例えば、
図3のステップS3の処理で、処理対象の先読み区間の減衰係数の値が初期化された場合、及び
図3のステップS13の処理が行われた後、所定時間内に超過時点が出現しなかった場合に、今回の処理対象の先読み区間503内の各時点における減衰係数の値は「1」に設定されている。
【0051】
図5Aの例では、今回の処理対象の先読み区間503内の各時点の音データの音量に、各時点における減衰係数である「1」を乗算した値は、第2時点502で、音量上限値に対応する振幅である上限値500を超過している。そのため、第2時点502が超過時点とされる。
【0052】
この場合、
図3のステップS6の処理で、決定部14は、音量上限値を、第2時点502での音データの音量で除算した値を、超過時点である第2時点502での目標減衰係数の値551として算出してもよい。これにより、第2時点502での音データの音量を、音量上限値以下の音量に減衰させることができる。
【0053】
そして、
図3のステップS7の処理で、決定部14は、
図5Bに示すように、今回の処理対象の先読み区間503の開始時点である第1時点501から超過時点である第2時点502までの各時点の減衰係数の値を、「1」から値551まで、時間の経過に従って直線的に減少(減衰度は増加)させてもよい。これにより、今回の処理対象の先読み区間503内の各時点における音データの音量は、音量上限値を超えない値に減衰されて出力される。そのため、ユーザへの違和感を軽減しながら、最大音量と最小音量の差であるダイナミックレンジを圧縮させることができる。
【0054】
(先読み区間の減衰係数が1未満の場合に音量上限値を超える場合の圧縮処理)
図5Aの例において、音データのうち、第3時点511より前までの音を再生し、第3時点511から第4時点512までが今回の処理対象の先読み区間513であるとする。なお、第3時点511は、第1時点501から第2時点502までの間の時点である。上述した区間503に対する処理により、今回の処理対象の先読み区間513内の各時点における減衰係数の値は1未満(減衰度は0%より大きい)に設定されているものとする。
【0055】
図5Aの例では、今回の処理対象の先読み区間513内の各時点の音データの音量に、各時点における減衰係数を乗算した値は、第4時点512で、上限値500を超過する。そのため、第4時点512も超過時点とされる。
【0056】
この場合、
図3のステップS6の処理で、決定部14は、音量上限値を、第4時点512での音データの音量で除算した値を、超過時点である第4時点512での目標減衰係数の値552として算出してもよい。これにより、第4時点512での音データの音量を、音量上限値以下の音量に減衰させることができる。
【0057】
そして、
図3のステップS7の処理で、決定部14は、
図5Bに示すように、今回の処理対象の先読み区間513の開始時点である第3時点511から超過時点である第4時点512までの各時点の減衰係数を、第3時点511での値553から値552まで、時間の経過に従って直線的に減少(減衰度は増加)させる。これにより、例えば、再生する音データにおいて、音データの音量が徐々に大きくなるように記録されている場合に、音データの音量が所定の音量上限値を超えないようにしながら、ダイナミックレンジの圧縮率を高い状態に維持することができる。
【0058】
(リリース処理)
図5Aの例において、音データのうち、第5時点521より前までの音を再生し、第5時点521から第6時点522までが今回の処理対象の先読み区間523であるとする。なお、第5時点521は、第4時点512より後の時点である。上述した区間513に対する処理を行った以降の
図3のステップS12の処理により、今回の処理対象の先読み区間523内の各時点における減衰係数の値は、第4時点512における減衰係数の値552に設定されている。
【0059】
図5Aの例では、今回の処理対象の先読み区間523内の各時点の音データの音量に、各時点における減衰係数を乗算した値は、いずれの時点においても、音量上限値を超過しない。また、今回の処理対象の先読み区間523内の各時点の音データの音量は、いずれの時点においても、音量上限値を超過しない。
【0060】
この場合、
図3のステップS13、及びステップS14の処理で、決定部14は、第5時点521から第6時点522以前の時点524までの各時点における音量の減衰度を、第4時点512での減衰係数の値552から「1」まで、時間の経過に従って増加(減衰度は減少)する値にそれぞれ決定する。なお、減衰係数を1に戻すまでの時間長である第5時点521から時点524までの時間長は、予め設定されていてもよい。これにより、先読み区間において音量上限値を超えなくなった場合は、比較的急速に、元の音量まで戻すことができる。
【0061】
((先読み区間における音量に基づいてリリース時間等を決定する例))
図3のステップS13、及びステップS14の処理で、決定部14は、各時点の先読み区間における音量に基づいて、リリース時間等を決定してもよい。これにより、例えば、情報処理装置10がリミッタとして用いられる場合に、音質をより適切に保ちながら、音量を調整することができる。
【0062】
この場合、決定部14は、例えば、後に続く音の音量が大きいほどリリース時間長を長く決定してもよい。また、決定部14は、例えば、後に続く音の音量が小さいほどリリース時間長を短く決定してもよい。
【0063】
この場合、決定部14は、例えば、今回の処理対象の先読み区間の開始時点における音量の減衰係数の値vol_ratioを、以下の式(1)により決定してもよい。
【0064】
vol_ratio = (Threshold / peak_max - vol_ratio_previous)/(ReleaseTime *sample_rate) + vol_ratio_previous・・・(1)
ここで、Thresholdは上述した音量上限値、peak_maxは今回の処理対象の先読み区間の各時点における音量の最大値、vol_ratio_previousは前回の処理対象の先読み区間の開始時点における音量の減衰係数の値、ReleaseTimeはリリース時間の基準値(例えば、1ms)、sample_rateは単位時間(例えば、1s)当たりの標本化数(サンプリング周波数、サンプリングレート、サンプルレート)である。
【0065】
なお、決定部14は、vol_ratioの値が1以上となった場合は、vol_ratioの値を1として、リリース処理を終了してもよい。これにより、vol_ratioの値は0から1の範囲となる。また、決定部14は、例えば、今回の処理対象の先読み区間のpeak_maxの値が、前回の処理対象の先読み区間のpeak_maxの値と異なる場合、式(1)に基づいて以降の各時点における音量の減衰係数の値vol_ratioの値を再度決定してもよい。
【0066】
式(1)によれば、peak_maxがThresholdと同じ値である場合は、リリース時間は基準値となり、リリース時間の間において直線的に音量の減衰係数の値vol_ratioが増加(減衰度は減少)される。また、peak_maxがThresholdよりも小さい場合、リリース時間は基準値よりも短くなり、リリース時間の間において非線形的な単調増加で音量の減衰係数の値が増加される。また、peak_maxがThresholdよりも大きい場合、リリース時間は基準値よりも長くなり、リリース時間の間において非線形的な単調増加で音量の減衰係数の値が増加される。
【0067】
(リリース処理期間中の圧縮処理)
図5Aの例において、音データのうち、第7時点531より前までの音を再生し、第7時点531から第8時点532までが今回の処理対象の先読み区間533であるとする。なお、第7時点531は、第5時点521から第6時点522までの間の時点である。
【0068】
上述した区間523に対する処理を行った以降の
図3のステップS13、及びステップS14の処理により、今回の処理対象の先読み区間533内の各時点における減衰係数の値は、時点524以前の各時点では、第4時点512での減衰係数の値552から「1」まで時間の経過に従って増加する値に設定されている。また、時点524より後の各時点では、「1」に設定されている。
【0069】
図5Aの例では、今回の処理対象の先読み区間533内の各時点の音データの音量に、各時点における減衰係数の値を乗算した値は、第8時点532で、音量上限値に対応する振幅である上限値500を超過する。そのため、第8時点532も超過時点とされる。
【0070】
この場合、
図3のステップS6、及びステップS7の処理で、決定部14は、
図5Bに示すように、今回の処理対象の先読み区間533の開始時点である第7時点531から超過時点である第8時点532までの各時点の減衰係数の値を、時間の経過に従って直線的に減少(減衰度は増加)させる。これにより、リリース処理期間中においても、ユーザへの違和感を軽減しながら、最大音量と最小音量の差であるダイナミックレンジを圧縮させることができる。
【0071】
<変形例>
情報処理装置10の各機能部は、例えば1以上のコンピュータにより構成されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 情報処理装置
11 記憶部
12 受付部
13 取得部
14 決定部
15 調整部
16 制御部
17 出力部