(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】舗装構造
(51)【国際特許分類】
E01C 7/18 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E01C7/18
(21)【出願番号】P 2020112200
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003498
【氏名又は名称】弁理士法人アイピールーム
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一郎
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03480360(EP,A1)
【文献】特開平11-247117(JP,A)
【文献】特開2012-207433(JP,A)
【文献】特開2001-020211(JP,A)
【文献】特開2016-148140(JP,A)
【文献】実開昭56-064409(JP,U)
【文献】特開平11-247115(JP,A)
【文献】特開2010-236195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両一台分の駐車スペースの舗装構造であって、
密粒度アスファルト部と、透水性アスファルト部とを含むアスファルト部を備え、
前記密粒度アスファルト部は、前記駐車スペースに駐車時の車両の駆動輪
の真下に位置し、
前記透水性アスファルト部は、前記車両の乗降口に
沿って位置している
舗装構造。
【請求項2】
前記車両は、前輪駆動の普通自動車であり、
前記密粒度アスファルト部は、前記駆動輪を含む前記車両の前方側に位置し、
前記透水性アスファルト部は、前記乗降口を含む前記車両の後方側に位置している
請求項1に記載の舗装構造。
【請求項3】
前記密粒度アスファルト部と前記透水性アスファルト部とは、隣接しており、
少なくとも前記密粒度アスファルト部の表面部分と前記透水性アスファルト部の表面部分とは、異なる色を有する
請求項1又は2に記載の舗装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装された駐車スペースの舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の駐車場の舗装構造は、表面に密粒度アスファルトを舗装して車輪の摩耗による劣化を防ぐと共に、排水溝に向けて表面に勾配を付けて雨水等による水たまりの発生を防いでいた。例えば、一般的な住宅における普通自動車一台の駐車スペースは、幅2.5m~3m程度、奥行5m~6m程度であり、道路側(手前側)の排水溝に向けて奥側から1.5%~2%程度の勾配を設けて雨水を排水溝に流していた。
【0003】
また、特許文献1には、地下駐車場等の舗装構造として、地盤に対して上から順に、密粒アスファルト層と、透水アスファルト層とを積層し、地盤から浸透する地下水を透水アスファルト層を介して湧水槽に排水する技術が開示されている。この構成によれば、単に密粒アスファルト層及び透水アスファルト層からなる二重構造とするだけで、地下に設けていた排水溝が不要となり、設計及び施工における作業量やコストの低減化を期待できるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような透水性アスファルトは、密粒度アスファルトより空隙が多い分、水を浸透させやすい反面、摩耗しやすいため、密粒度アスファルトより耐久性が低い。したがって、特許文献1や透水性アスファルトに関する公知技術に基づき、駐車場の表面の舗装に密粒度アスファルトと透水性アスファルトとを併用することは、当業者にとって容易ではない。
【0006】
また、駐車場のように車両のハンドル操作が多めの場所では、車輪の旋回により表面が削れてしまうため、透水性アスファルトは不向きである。しかしながら、透水性アスファルトを採用すれば、表面に勾配を付けなくてもよいため、排水溝の場所に依存しない分、駐車場の舗装負担が軽減する効果を期待できる。すなわち、駐車スペースの表面の舗装に密粒度アスファルトと透水性アスファルトとを併用する価値がある。
【0007】
そして、発明者は、密粒度アスファルトと透水性アスファルトとを併用して双方の利点を活かすために、駐車スペースと駐車する車両との関係に着目した。すなわち、車両一台分に相当する駐車スペースのうち、車両の仕様に鑑みて、耐久性を優先すべき部分と透水性を優先すべき部分とを分け、それぞれの部分を密粒度アスファルトと透水性アスファルトとで舗装すれば、双方の利点を活かし、欠点を最小限に抑えられる点に辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、アスファルトの特性及び駐車スペースと車両との相関を活かし、使用上好ましい耐久性及び透水性を備え、従来と比べて施工の負荷を軽減できる舗装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明における舗装構造は、車両一台分の駐車スペースの舗装構造であって、密粒度アスファルト部と、透水性アスファルト部とを含むアスファルト部を備え、上記密粒度アスファルト部は、上記駐車スペースに駐車時の車両の駆動輪の真下に位置し、上記透水性アスファルト部は、上記車両の乗降口に沿って位置している。
【0010】
上記車両は、前輪駆動の普通自動車であり、上記密粒度アスファルト部は、上記駆動輪を含む上記車両の前方側に位置し、上記透水性アスファルト部は、上記乗降口を含む上記車両の後方側に位置している。
【0011】
上記密粒度アスファルト部と上記透水性アスファルト部とは、隣接しており、少なくとも上記密粒度アスファルト部の表面部分と上記透水性アスファルト部の表面部分とは、異なる色を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による舗装構造によれば、アスファルトの特性及び駐車スペースと車両との相関を活かし、使用上好ましい耐久性及び透水性を備え、従来と比べて施工の負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における舗装構造の(a)平面図、(b)側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における別の舗装構造の(a)平面図、(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1を参照しつつ、本発明の一実施形態における舗装構造(以下、「本舗装構造」ともいう。)について説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)で示した部分もある。説明において、上方、下方、側方、垂直方向、水平方向等の向きを示す用語は、基本的に舗装構造の表面を基準とする。
【0015】
<本舗装構造の前提>
本舗装構造は、駐車場に駐車する車両一台分の駐車スペース用であるが、二台分以上の駐車スペース用としてもよい。駐車場の場所は、例えば、集合住宅・戸建住宅・商業施設であり、駐車を要する施設であればいずれも含み、上記駐車スペースに屋根を有していてもいなくてもよい。駐車場及び駐車スペースの面積は、少なくとも上記車両のサイズに適していればよく、限定しない。
【0016】
「車両」とは、出願時における道路運送車両法で定められている普通自動車・小型自動車・軽自動車であるが、駐車場の目的や用途に応じて、同法の大型特殊自動車・小型特殊自動車や、道路交通法で定められている大型自動車・中型自動車・準中型自動車・自動二輪車・原動機付自転車でもよい。「普通自動車」等は、上記道路運送車両法施行規則別表第一で定められているものであり、「普通自動車」は、いわゆるセダン・ワゴン・ハッチバック・クーペ・ワンボックス・ミニバン・SUVのいずれでもよく、前輪駆動・後輪駆動・四輪駆動のいずれも含む。
【0017】
<本舗装構造の概要>
図1に示すように、本舗装構造は、アスファルト舗装されたものであり、少なくとも密粒度アスファルト部1と、透水性アスファルト部2とを含むアスファルト部Raを備え、密粒度アスファルト部1は、駐車スペースPに駐車時の車両Cの駆動輪として、例えば、前輪Tf周辺に位置しているが、後輪Tr周辺又は双方周辺に位置していてもよく、透水性アスファルト部2は、車両Cの乗降口D周辺に位置している。
【0018】
この構成によれば、車両Cのハンドル操作に連動して駆動輪が相対的に旋回する範囲に密粒度アスファルト部1を舗装するため摩耗による劣化を予防し、相対的に車両Cに乗ったり車両Cから降りたりする範囲に透水性アスファルト2を舗装するため水たまりの発生を予防でき、換言すれば、駐車スペースと車両との相関に応じてアスファルト舗装するため所望の耐久性及び透水性を実現できる上に、排水用の勾配を設けなければその分の施工負荷を軽減でき、さらに補修作業の頻度や程度を抑える効果を期待できる。
【0019】
具体的に、車両Cは、前輪駆動の普通自動車であり、密粒度アスファルト部1は、駆動輪である前輪Tfを含む車両Cの前方側に位置し、透水性アスファルト部2は、乗降口Dを含む車両Cの後方側に位置している。車両Cの前方側及び後方側とは、駐車スペースPの手前(車道)側又は奥(車庫)側であるが、どちらとも車道側でもよい。密粒度アスファルト部1は、乗車口Dのうち運転席及び助手席より車両Cの前方側の全部又は一部でもよく、透水性アスファルト部2は、乗降口Dのうち後部座又は後輪Trより車両Cの後方の全部又は一部でもよい。
【0020】
この構成によれば、一般的に普及率の高い前輪駆動の普通自動車に適した駐車スペースの舗装構造を提供できる。すなわち、密粒度アスファルト部1は、意図的に前輪Tfを旋回させても摩耗しにくく、透水性アスファルト部2は、運転席・助手席・後部座席の乗降口周辺に水たまりを発生しにくくできるため、舗装構造の劣化のみならず、雨天時の乗り降りの負担を軽減する効果を期待できる。
【0021】
また、密粒度アスファルト部1と透水性アスファルト部2とは、隣接しており、少なくとも密粒度アスファルト部1の表面部分と透水性アスファルト部2の表面部分とは、異なる色を有する。換言すれば、密粒度アスファルト部1と透水性アスファルト部2との境界は面一であり、表面部分の色は同じか似ていてもよい。
【0022】
この構成によれば、密粒度アスファルト部1と透水性アスファルト部2とを略同時期に舗装しやすいため施工の負荷を軽減できるのみならず、運転手は駐車スペースに対して車両Cを位置決めしやすくなるためスムーズに駐車でき、アスファルト部Raの劣化も低減できる効果を期待できる。
【0023】
<本舗装構造の詳細>
図1に示すように、本舗装構造は、駐車スペースの表面に該当するアスファルト部Raと、アスファルト部Raの下位にある路盤Rbとを、舗装を支持する地盤に相当する路床Rcに積層したものである。アスファルト部Raは、アスファルト混合物で形成され、最上位にある図示しない表層と、表層の下位及び路盤Rbの上位にある図示しない基層とを積層したものでもよく、厚さは30mm~50mm程度でもよく、排水用の勾配を有していてもいなくてもよい。
【0024】
一般的に、「表層」は、磨耗しにくく、平坦で滑りにくく、かつ車両を走行しやすくするものであり、「基層」は、路盤Rbの不陸を整正すると共に、表層に加わる荷重を路盤Rbに均一に伝達するものであり、「路盤」は、荷重を路床Rcの支持力の許容範囲内に抑えて伝えるものであり、「表層」や「基層」を形成するアスファルト混合物は、結合材としてのアスファルトと、砕石や砂利といった骨材、石粉や消石灰といったフィラーと、を所定の割合で配合したものであり、所定の骨材粒度に調整して加熱した後、ミキサー等でアスファルトと混合して生成される。
【0025】
密粒度アスファルト部1及び透水性アスファルト部2は、上記アスファルト混合物と略同等であるが、透水性アスファルト部2は、密粒度アスファルト部1と比べて、骨材のうち細骨材が少なく、粗骨材が多く、結合材であるアスファルトの使用量も少なく、舗装の空隙率が多いものであり、具体的には、水、アスファルト、細骨材、粗骨材、化学混和剤、及び硬化調整剤を所定の割合で配合したものである。
【0026】
<別の舗装構造>
次に、
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態における別の舗装構造について、上述した
図1に示す舗装構造と相違する部分を説明し、同等の部分の説明を省略する。
図2で示した部品又は部位と同等なものは、参照を容易にするため、
図2では
図1において一律100を加えた番号にしている。
【0027】
図2に示すように、密粒度アスファルト部100は、車両の駆動輪である前輪及び後輪周辺に位置し、具体的には、車両の横幅と略同等かつ縦幅と同等又はこれ以上の範囲に渡っている。透水性アスファルト部200は、車両の左右の乗降口周辺に位置し、具体的には、車両Cの駆動輪より外側かつ密粒度アスファルト部100の縦幅と同等の範囲に渡っている。換言すれば、密粒度アスファルト部100は、車両の下側かつ車両の投影面積と略同等の範囲に渡って位置し、透水性アスファルト部200は、車両の外側かつ縦幅と略同等の範囲に渡って位置している。
【0028】
この構成によれば、車両が密粒度アスファルト部100内を走行したり旋回したりするため、車両の駆動輪が前輪駆動でも後輪駆動でも、車両の縦幅が長めでも短めでも、密粒度アスファルト部100を摩耗しにくく、また、車両の左右の乗降口が透水性アスファルト部200に沿っているため、雨天時でも車両に乗ったり車両から降りたりしやすい効果を期待できる。
【0029】
なお、本実施形態に示した舗装構造は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部位の位置・形状・寸法や、部位同士の関係を含む。
【符号の説明】
【0030】
1,100・・・密粒度アスファルト部、2,200・・・透水性アスファルト部、C・・・車両、P・・・駐車スペース、Tf・・・前輪、Tr・・・後輪、D・・・乗車口、Ra・・・アスファルト部、Rb・・・路盤、Rc・・・路床