(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 71/00 20060101AFI20240417BHJP
B62H 5/16 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
E05B71/00 G
B62H5/16
(21)【出願番号】P 2020137551
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 顕人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄介
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 純一
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159992(JP,A)
【文献】実開昭61-83761(JP,U)
【文献】特開2009-197466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B62H 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部と、
前記プラグ又はハウジングに支持される第1の部分と、前記第1の部分から前記付勢力受け部の側へ延びる第2の部分とを備える板状のプロテクタと
を備え、
前記第2の部分は、前記ロック部材に接近する方向に変位可能である錠装置。
【請求項2】
前記付勢力受け部は、通常時に位置する第1の位置と、前記ロック部材に対して接近する第2の位置との間で移動可能である請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記付勢力受け部は、前記第2の部分と一体で形成されている請求項1に記載の錠装置。
【請求項4】
前記プロテクタは、前記第1の部分と前記第2の部分との境界に形成され、前記第1の部分と前記第2の部分とに比して曲げ又はせん断に対する強度が低い低強度部を備える請求項1~3の何れか1項に記載の錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
南京錠として、防盗性能を向上させることを目的として、南京錠本体を保護カバーで覆ったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の南京錠では、2部品の保護カバーを相互に重ね合わせることにより、保護カバーの強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の南京錠では、マイナスドライバ等を用いた打撃力により保護カバーと南京錠本体とに穴が空けられないように、保護カバーと南京錠本体とを高強度にする必要があり、保護カバーと南京錠本体との部品コストが上昇する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、部品コストの上昇を抑えつつ防盗性能を向上できる錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る錠装置は、被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部と、前記プラグ又はハウジングに支持される第1の部分と、前記第1の部分から前記付勢力受け部の側へ延びる第2の部分とを備える板状のプロテクタとを備え、前記第2の部分は、前記ロック部材に接近する方向に変位可能である。
【0007】
前記錠装置において、前記付勢力受け部は、通常時に位置する第1の位置と、前記ロック部材に対して接近する第2の位置との間で移動可能であってもよい。
【0008】
前記錠装置において、前記付勢力受け部は、前記第2の部分と一体で形成されていてもよい。
【0009】
前記錠装置において、前記プロテクタは、前記第1の部分と前記第2の部分との境界に形成され、前記第1の部分と前記第2の部分とに比して曲げ又はせん断に対する強度が低い低強度部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイナスドライバ等がハウジングに空けた穴を通してプロテクタの第2の部分を打撃した場合、プロテクタの第1の部分は、プラグ又はハウジングにより支持されるのに対して、プロテクタの第2の部分は、ハウジングの板部から離間する側へ変位する。これにより、プロテクタの第2の部分が、ハウジングに空けられた穴からハウジングの内方に離間した位置において付勢部材や付勢力受け部を遮蔽する。従って、付勢部材や付勢力受け部が、ハウジングに空けられた穴を通して扱われることが阻止される。以上により、マイナスドライバ等を用いた打撃力によりハウジングに穴が空けられた場合でも、被ロック部材とロック部材との係合状態が解除されて施錠状態が解除されることを阻止できるので、部品コストの上昇を抑えつつ防盗性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバーロック装置を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す錠装置本体を示す平面部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す錠装置本体を示す正面部分断面図である。
【
図5】
図5は、解錠状態の錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図6】
図6は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の比較例に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図7】
図7は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の一実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体を示す平面部分断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す錠装置本体を示す正面部分断面図である。
【
図10】
図10は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の
図8及び
図9に示す錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体を示す平面部分断面図である。
【
図13】
図13は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の
図12に示す錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
【
図15】
図15は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の
図14に示す錠装置本体を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るバーロック装置1を示す正面図である。この図に示すように、本実施形態に係るバーロック装置1は、チェーン状拘束体2と、錠装置本体10とを備えている。チェーン状拘束体2の一端部は、錠装置本体10に固定されている。チェーン状拘束体2の他端部は、錠装置本体10に着脱される。チェーン状拘束体2の他端部が錠装置本体10に装着された状態で、チェーン状拘束体2が閉ループを構成し、自動二輪車や自転車等の拘束対象Aを拘束する。
【0014】
チェーン状拘束体2は、複数のロッド21と、複数のヒンジ22と、固定部材23と、被ロック部材24と、ヒンジ25,26とを備える。複数のロッド21は、複数のヒンジ22を介して連結されている。各ロッド21は、金属製の棒材が樹脂製の被覆材により被覆された構成である。ヒンジ22は、一対のロッド21の端部同士を相対的に回動可能に連結する。複数のヒンジ22は、平行に配されている。
【0015】
固定部材23は、チェーン状拘束体2の一端のロッド21Aの先端側にヒンジ25を介して連結されている。ヒンジ25は、ロッド21Aの先端側と固定部材23の基端側とを相対的に回動可能に連結する。他方で、被ロック部材24は、チェーン状拘束体2の他端のロッド21Bの先端側にヒンジ26を介して連結されている。ヒンジ26は、ロッド21Bの先端側と被ロック部材24の基端側とを相対的に回動可能に連結する。ヒンジ25,26と複数のヒンジ22とは、平行に配されている。
【0016】
固定部材23の先端側は、錠装置本体10の図中左側の側面の開口から錠装置本体10の内部に挿入されて錠装置本体10に対して固定されている。これにより、錠装置本体10とロッド21Aとは、ヒンジ25及び固定部材23を介して相対的に回動可能に連結されている。
【0017】
被ロック部材24の先端側は、錠装置本体10の図中右側の側面の開口から錠装置本体10の内部に挿入されて錠装置本体10に対して着脱可能に装着される。被ロック部材24が錠装置本体10に装着されることにより、錠装置本体10とロッド21Bとが、ヒンジ26及び被ロック部材24を介して相対的に回動可能に連結される。
【0018】
図2は、
図1に示す錠装置本体10を示す正面断面図である。この図に示すように、錠装置本体10は、ハウジング11と、プラグ12と、ロック部材13と、バネ14と、キャップ15と、カム16と、プロテクタ17と、ケース18とを備える。ケース18は、ハウジング11を覆う直方体形状の樹脂製の箱体である。ケース18の図中上側の面には鍵をプラグ12に挿入するための開口18Aが形成され、ケース18の図中右側の面には被ロック部材24をハウジング11内に挿入するための開口18Bが形成され、ケース18の図中左側の面には固定部材23をハウジング11内に挿入するための開口18Cが形成されている。
【0019】
ハウジング11は、アウターハウジング111と、アッパーハウジング112と、ロワーハウジング113とを備える。アウターハウジング111は、図中上側が開口した直方体形状の金属製の箱体である。このアウターハウジング111は、アッパーハウジング112とロワーハウジング113とを収容している。アッパーハウジング112とロワーハウジング113とは図中上下に組み合わされている。アッパーハウジング112により、アウターハウジング111の図中上側の開口が閉塞されている。
【0020】
アウターハウジング111の図中右側の側面には矩形状の第1の挿入孔111Aが形成され、アウターハウジング111の図中左側の側面には矩形状の第2の挿入孔111Bが形成されている。第1の挿入孔111Aは、アウターハウジング111の図中右側の側面の底側に配されており、この第1の挿入孔111Aを通して、被ロック部材24がハウジング11の内部に挿入される。他方で、第2の挿入孔111Bは、アウターハウジング111の図中左側の側面の底側に配されており、この第2の挿入孔111Bを通して、固定部材23がハウジング11の内部に挿入されている。
【0021】
アッパーハウジング112は、図中下側が開口した直方体形状の箱体である。このアッパーハウジング112の図中上側の板部(以下、上板という)112Bには、鍵をプラグ12に挿入するための開口112Aが形成されている。アッパーハウジング112とロワーハウジング113とは、インナーハウジングを構成しており、プラグ12、ロック部材13、バネ14、キャップ15、カム16、及びプロテクタ17を収容している。
【0022】
ロワーハウジング113は、第1の挿入部113Aと、第2の挿入部113Bと、プラグ支持部113Cと、ガイド部113Dとを備える。第1の挿入部113Aと第2の挿入部113Bとは、ロワーハウジング113の図中下側に形成され、プラグ支持部113Cとガイド部113Dとは、ロワーハウジング113の図中上側に形成されている。ロワーハウジング113の図中上側は開口している。
【0023】
第1の挿入部113Aは、アウターハウジング111の第1の挿入孔111Aに面して形成された直方体形状の凹部である。この第1の挿入部113Aには、被ロック部材24が挿入される。他方で、第2の挿入部113Bは、アウターハウジング111の第2の挿入孔111Bに面して形成された直方体形状の凹部である。この第2の挿入部113Bには、固定部材23が挿入されている。ここで、ピン19が、ロワーハウジング113と固定部材23とを貫通しロワーハウジング113に固定されていることにより、固定部材23がロワーハウジング113に固定されている。
【0024】
プラグ支持部113Cは、ロワーハウジング113の図中左側寄りに設けられ、ガイド部113Dは、ロワーハウジング113の図中右側寄りに設けられている。プラグ支持部113Cは、第2の挿入部113Bの図中上側に設けられている。ガイド部113Dは、第1の挿入部113Aの図中上側に設けられている。
【0025】
プラグ支持部113Cは、円筒状に形成されており、円柱状のプラグ12を回転可能に支持している。プラグ12の回転軸は、図中上下方向に対して平行である。プラグ12を回転操作するための鍵は、プラグ12の回転軸に沿ってプラグ12に抜き挿しされる。
【0026】
プラグ支持部113Cの底部には、カム16が設けられている。このカム16は、プラグ12の下端と係合しており、プラグ12と一体で回転する。
【0027】
ガイド部113Dは、角筒形状に形成されており、角柱形状のロック部材13を図中上下方向に移動可能に収容している。ここで、ガイド部113Dの底部には、開口113Eが形成されており、ロック部材13の下部は、開口113Eを通して、第1の挿入部113A内に突出している。また、角柱形状のキャップ15が、ロック部材13の図中上側に設けられており、このキャップ15の下部が、ガイド部113Dに図中上下方向に移動可能に嵌め込まれている。
【0028】
図3は、
図1に示す錠装置本体10を示す平面部分断面図である。この図では、ケース18、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の平面断面を示し、アッパーハウジング112の内側の平面を示している。この図に示すように、プラグ支持部113Cの内部空間とガイド部113Dの内部空間との間には、スリット113Fが形成されており、プラグ支持部113Cの内部空間とガイド部113Dの内部空間とは、スリット113Fにより連通されている。
【0029】
図4は、
図1に示す錠装置本体10を示す正面部分断面図である。この図では、ケース18、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の正面断面を示し、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の内側の正面を示している。これらの図に示すように、プラグ12の上部とキャップ15の上部とは、ロワーハウジング113の上端から上板112B側に突出し、アッパーハウジング112に収容されている。
【0030】
図3及び
図4に示すように、プロテクタ17は、矩形状の金属製の板材であり、アッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12の上面との間及び上板112Bとキャップ15の上面との間に跨るように設けられている。
図3に示すように、プロテクタ17には、アッパーハウジング112の開口112A(
図4参照)と形状及び寸法が同一の開口17Aが形成されている。この開口17Aと開口112Aとは同心上に配されている。
【0031】
ここで、プロテクタ17は、アッパーハウジング112に対して固定されていない。プロテクタ17の開口17Aの周縁部(以下、支持部という)17Bは、アッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12の図中上側の面(以下、上面という)とに挟まれている。プラグ12は、図中上下方向に変位不能にプラグ支持部113Cに支持されている。即ち、プロテクタ17の支持部17Bは、相互に相対変位不能であるアッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12とに挟持された状態である。
【0032】
それに対して、プロテクタ17の図中右側の部分(以下、非支持部という)17Cは、アッパーハウジング112の上板112Bとキャップ15の上面とに挟まれている。キャップ15は、バネ14の付勢力により図中上下方向に変位可能に支持されている。即ち、プロテクタ17の非支持部17Cは、相互に相対変位可能であるアッパーハウジング112の上板112Bとキャップ15とに挟持された状態である。従って、プロテクタ17は、図中上側からの打撃力に対して、支持部17Bが固定支持状態、非支持部17Cが自由な状態の片持ち状態となる。
【0033】
図2に示すように、プラグ12は、プラグ支持部113Cに回転可能に支持された円筒体である。アッパーハウジング112の開口112Aは、プラグ12の上面に対向するように形成されており、プラグ12の上面には、鍵挿込口12Aが形成されている。プラグ12の図中下側の面には、凸部12Bが形成されている。それに対して、円環状のカム16には、凸部12Bと嵌合する凹部16Aが形成されている。真正の鍵が開口112Aを通して鍵挿込口12Aに挿入されることで、プラグ12とカム16とが、一体で施錠位置と解錠位置との間で回転操作可能になる。
【0034】
ロック部材13は、本体部13Aと、ロック部13Bと、カム部13Cとを備える。本体部13Aは、角柱体であり、ガイド部113Dに図中上下方向に移動可能に収容されている。本体部13Aの図中上側の面には、バネ14の下端が嵌め込まれる円形状の凹部13Dが形成されている。
【0035】
ロック部13Bは、本体部13Aの図中下側に形成された正面視で台形状の部位であり、開口113Eから第1の挿入部113Aに突出している。このロック部13Bは、ロック部13Bの先端から図中右上に傾斜した傾斜面13Eを備える。それに対して、被ロック部材24には、嵌合凹部24Aが形成されている。この嵌合凹部24Aは、底部から図中右上に傾斜した傾斜面24Bを備える。この傾斜面24Bとロック部13Bの傾斜面13Eとが相互に当接した状態で、ロック部13Bと嵌合凹部24Aとが相互に嵌合する。また、被ロック部材24が第1の挿入部113Aに挿入された際、被ロック部材24の先端(図中左側端部)とロック部13Bの傾斜面13Eとが相互に当接した状態で、ロック部材13が上昇する。
【0036】
カム部13Cは、本体部13Bの図中左側の側面からスリット113F内に突出している。それに対して、円環状のカム16の外周面には、カム部16Bが形成されており、カム部13Cとカム部16Bとが相互に当接する。プラグ12とカム16とが施錠位置に回転操作されると、カム部13Cとカム部16Bとの当接点の高さが最下位となり、ロック部材13のロック部13Bと被ロック部材24の嵌合凹部24Aとが嵌合する。それに対して、プラグ12とカム16とが解錠位置に回転操作されると、カム部13Cとカム部16Bとの当接点の高さが最上位となり、ロック部材13のロック部13Bと被ロック部材24の嵌合凹部24Aとの嵌合が解除される。
【0037】
バネ14は、圧縮コイルバネである。バネ14の下端は、ロック部材13の凹部13Dに嵌め込まれている。バネ14は、図中上下方向に弾性的に伸縮可能である。
【0038】
キャップ15は、角筒体である。キャップ15の図中下側部分(以下、下部という)が、ガイド部113Dに図中上下方向に摺動可能に収容されている。キャップ15の下部の下面には、バネ14の上端が嵌め込まれる円形状の凹部15Aが形成されている。
【0039】
バネ14は、ロック部材13とキャップ15とに挟み込まれ、弾性的に収縮している。ロック部材13は、バネ14により図中下側へ付勢され、キャップ15は、バネ14により図中上側へ付勢されている。ここで、プラグ12が施錠位置に位置する状態では、キャップ15は、プロテクタ17の非支持部17Cに圧接され、他方で、ロック部材13のカム部13Cは、カム16のカム部16Bに圧接され、ロック部材13のロック部13Bは、被ロック部材24の嵌合凹部24Aに圧接される。この状態では、被ロック部材24を第1の挿入部113Aから引き抜くことができない。
【0040】
図5は、解錠状態の錠装置本体10を示す正面断面図である。この図に示すように、プラグ12が解錠位置に位置する状態では、キャップ15は、プロテクタ17の非支持部17Cに圧接され、他方で、ロック部材13のカム部13Cは、カム16のカム部16Bに圧接され、ロック部材13のロック部13Bは、被ロック部材24の嵌合凹部24Aに嵌合しない。この状態では、被ロック部材24を第1の挿入部113Aから引き抜くことができる。
【0041】
図6は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の比較例に係る錠装置本体10Cを示す正面断面図である。この図に示すように、比較例に係る錠装置本体10Cでは、プロテクタ17の全体がアッパーハウジング112の上板112Bに固定されている。このため、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、この上板112Bに固定されたプロテクタ17は、打撃力を受けてハウジング11の内側に押し込まれるように変位することができない。そのため、プロテクタ17の強度によっては、プロテクタ17がマイナスドライバMDにより貫通される可能性が生じる。マイナスドライバMDの打撃力によりプロテクタ17に穴が空けられた場合には、マイナスドライバMDによるキャップ15の打撃が容易になる。マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴が空けられた場合には、バネ14を扱うことが可能になり、バネ14を排除することでロック部材13と被ロック部材24との嵌合が解除される可能性が生じる。従って、アッパーハウジング112やプロテクタ17の強度を、マイナスドライバMD等による打撃力に耐え得るだけの高強度にする必要があり、部品コストが上昇する。
【0042】
図7は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の一実施形態に係る錠装置本体10を示す正面断面図である。
図2及び
図7に示すように、本実施形態に係る錠装置本体10では、キャップ15が、ロワーハウジング113に図中上下方向に移動可能に支持されている。このキャップ15は、通常時、プロテクタ17の非支持部17Cに当接した第1の位置に位置する。
【0043】
図7に示すように、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、マイナスドライバMDによる打撃力がプロテクタ17の非支持部17Cに対して作用する。プロテクタ17は片持ち状態である。そのプロテクタ17の支持部17Bは、マイナスドライバMDによる打撃力に対して固定支持状態となり、非支持部17Cは、マイナスドライバMDによる打撃力に対して自由な状態になる。このため、プロテクタ17は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けて屈曲する。支持部17Bの状態は不変であるのに対して、非支持部17Cは、支持部17Bとの境界から図中右下に傾斜した状態になる。この際、キャップ15は、上記の第1の位置から図中下側へ押し下げられる。このため、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、プロテクタ17の非支持部17Cが、上板112Bに空けられた穴から離間したキャップ15を遮蔽する。従って、マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴を空けたり、バネ14を扱ったりすることが難しくなり、バネ14の付勢力によるロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することが難しくなる。また、プロテクタ17の強度にかかわらず、マイナスドライバMDの打撃力によりプロテクタ17に穴が空けられることを防止できる。以上により、部品コストの上昇を抑えつつ防盗性能を向上できる。
【0044】
図8は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体100を示す平面部分断面図である。この図では、ケース18、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の平面断面を示し、アッパーハウジング112の内側の平面を示している。
図9は、
図8に示す錠装置本体100を示す正面部分断面図である。この図では、ケース18、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の正面断面を示し、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の内側の正面を示している。なお、上述の実施形態に係る錠装置本体10と同様の構成については同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。
【0045】
図8及び
図9に示すように、キャップ15の上部15Cには一対の干渉部15Dが形成されている。一方の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの図中手前側の面(以下、前面という)に形成され、他方の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの図中奥側の面(以下、後面という)に形成されている。一対の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの前面又は後面から突出するリブであり、キャップ15の上部15Cの前面又は後面の下端から上端まで鉛直に延びている。一対の干渉部は、キャップ15の軸心に対して対称に配されている。これらの一対の干渉部15Dとガイド部113Dの上端とが相互に当接することにより、キャップ15の上部15Cがガイド部113Dの内部に入り込まない。
【0046】
図10は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の錠装置本体100を示す正面断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体100では、キャップ15が、アッパーハウジング112に図中上下方向に移動可能に支持されている。このキャップ15は、プロテクタ17の非支持部17Cに当接した第1の位置に位置する。
【0047】
マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通しプロテクタ17を変形させた場合、キャップ15は、上記の第1の位置から図中下側へ押し下げられる。ここで、通常時には、一対の干渉部15D(
図8及び
図9参照)の下端とロワーハウジング113の上端とが当接しているが、一対の干渉部15D及びキャップ15の上部15Cは、マイナスドライバMDによる打撃力によりガイド部113Dの内部に圧入される。これにより、キャップ15は、ロック部材13に接近した第2の位置においてロワーハウジング113のガイド部113Dに固定される。このため、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、プロテクタ17の非支持部17CがマイナスドライバMD等によるキャップ15へのアクセスを阻止するのに加えて、上板112Bに空けられた穴からキャップ15までの距離が遠くなることにより、マイナスドライバMDによるキャップ15の打撃が難しくなる。従って、マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴を空けることが難しくなり、マイナスドライバMD等によりバネ14を扱うことが難しくなり、バネ14の付勢力によるロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することが難しくなる。以上により、防盗性能を向上できる。
【0048】
ここで、キャップ15が上記の第2の位置においてロワーハウジング113のガイド部113Dに固定された状態では、ロック部材13の上端とキャップ15の下端とが当接するか、又は僅かな隙間を介して対向する。この状態では、ロック部材13の上昇がキャップ15により制限されることにより、ロック部材13と被ロック部材24との嵌合状態が維持される。従って、マイナスドライバMDによりキャップ15に穴が空けられてバネ14が扱われたとしても、ロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することができない。
【0049】
図11は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体200を示す正面断面図である。なお、上述の実施形態に係る錠装置本体10,100と同様の構成については同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体200は、上述の実施形態のプロテクタ17に代えて、プロテクタ217を備える。
【0050】
プロテクタ217は、上述の実施形態のプロテクタ17に低強度部217Dが形成された構成である。この低強度部217Dは、プロテクタ217の支持部17Bと非支持部17Cとの境界線上に形成された薄肉部である。この低強度部217Dは、当該境界線上に切削加工や曲げ加工や絞り加工等により溝が形成されることにより、支持部17Bと非支持部17Cとに比して、薄肉化され、曲げやせん断に対する強度が低くなっている。この低強度部217Dは、プラグ12と図中上下方向に重ならないように配されている。なお、低強度部217Dは、図示するようにプロテクタ217の上面側から凹むように形成されてもよく、プロテクタ217の下面側から凹むように形成されてもよく、さらには、プロテクタ217の両面側から凹むように形成されてもよい。
【0051】
本実施形態に係る錠装置本体200では、マイナスドライバ等がアッパーハウジング112の上板112Bを貫通してプロテクタ217を打撃した場合、非支持部17Cは、低強度部217Dを起点として図中斜め下方へ折れ曲がるように変位する。この際、低強度部217Dにより、非支持部217Cの変位が促進される。なお、本実施形態に係る錠装置本体200において、プロテクタ217は、マイナスドライバ等により打撃力を受けた場合に低強度部217Dを境に破断してもよい。
【0052】
図12は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体300を示す平面部分断面図である。なお、上述の実施形態に係る錠装置本体10,100,200と同様の構成については同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体300は、上述の実施形態のプロテクタ17,217に代えて、プロテクタ317を備える。
【0053】
プロテクタ317は、上述の実施形態のプロテクタ17に低強度部317Dが形成された構成である。この低強度部317Dは、プロテクタ317の支持部17Bと非支持部17Cとの境界線上に形成されている。この低強度部317Dは、複数の長孔が所定間隔で形成されることにより、支持部17Bと非支持部17Cとに比して、せん断や曲げに対する強度が低くなっている。この低強度部317Dは、プラグ12と図中上下方向に重ならないように配されている。
【0054】
図13は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の錠装置本体300を示す正面断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体300では、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通してプロテクタ317を打撃した場合、支持部17Bと非支持部17Cとは、低強度部317Dを境に破断する。支持部17Bから破断した非支持部17Cは、キャップ15の上面を遮蔽し、マイナスドライバMD等によるキャップ15へのアクセスを阻止する。なお、支持部17Bと非支持部17Cとが低強度部317Dを境に破断することは必須ではなく、非支持部17Cは、低強度部317Dを起点として図中斜め下方へ折れ曲がるように変位してもよい。この場合、低強度部317Dにより、非支持部17Cの変位が促進される。
【0055】
図14は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体400を示す平面部分断面図である。なお、上述の実施形態に係る錠装置本体10,100,200,300と同様の構成については同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体400は、上述の実施形態のキャップ15に代えて、付勢力受け部415を備え、プロテクタ17に代えて、プロテクタ417を備える。
【0056】
付勢力受け部415は、プロテクタ417の非支持部417Cと一体で形成された突起部(ボス)である。突起部としての付勢力受け部415は、バネ14の上端に嵌め込まれている。付勢力受け部415は、深絞り成形により非支持部417Cと一体化してもよく、別部材を非支持部417Cに接合することにより非支持部417Cと一体化してもよい。
【0057】
図15は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の錠装置本体400を示す正面断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体400では、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通してプロテクタ417を打撃した場合、非支持部417Cは、支持部417Bとの境界を起点として図中斜め下方へ折れ曲がるように変位する。この際、付勢力受け部415が、非支持部417Cと一体でロック部材13側に変位する。なお、本実施形態に係る錠装置本体400において、プロテクタ417は、マイナスドライバMDにより打撃力を受けた場合に支持部417Bと非支持部417Cとの境界で破断してもよい。
【0058】
以上、本発明に係る錠装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、他の技術を組み合わせてもよい。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、プロテクタ17,217,317の支持部17Bを上板112Bに固定することなく上板112Bとプラグ12とにより挟んで支持したが、支持部17Bを上板112Bに対して接着等により固定してもよい。また、プロテクタ17,217,317の非支持部17Cは、上板112B側からの打撃力により上板112Bから離れるように変位できればよく、上板112B側からの打撃力により上板112Bから剥離する程度の接着強度で上板112Bに接着されていてもよい。
【0060】
また、キャップ15を備える上述の実施形態では、キャップ15が、プロテクタ17に当接した第1の位置からロック部材13に接近する第2の位置に変位可能であることにより、プロテクタ17の非支持部17Cが、上板112B側から打撃力を受けて上板112から離間する側へ変位できた。しかしながら、キャップ15を変位不能とすると共にプロテクタ17の非支持部17Cとキャップ15との間隔を空けることにより、プロテクタ17の非支持部17Cが、上板112B側から打撃力を受けて上板112から離間する側へ変位できるようにしてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、錠装置本体10,100,200,300,400に対して固定部材23を固定し、被ロック部材24を着脱可能としたが、錠装置本体10,100,200,300,400に対して一対の被ロック部材24を着脱可能としてもよい。この場合、ロック部材13、バネ14、キャップ15、カム16のカム部16B、及びプロテクタ17の非支持部17Cを左右対称に設ければよい。プロテクタ17は、支持部17Bの左右両側に非支持部17Cを設ければよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、プロテクタ17がプラグ12により支持されるように構成したが、プロテクタ17は、ハウジング11にスポット溶接等により固定されることで、ハウジング11に支持されてもよい。
【0063】
さらに、上述の実施形態では、鍵挿通孔である開口112Aが設けられたハウジング11の上板112Bに穴が空けられた場合を例に挙げて説明したが、これは必須ではない。例えば、鍵挿通孔が形成されていないハウジングの側面等に対してキャップ15がバネ14により付勢されている場合には、当該側面に穴が空けられた場合に、上述の防盗性能が発揮される。
【符号の説明】
【0064】
10 :錠装置本体(錠装置)
11 :ハウジング
112A:開口(鍵挿通孔)
113A:第1の挿入部(挿入部)
12 :プラグ
13 :ロック部材
14 :バネ(付勢部材)
15 :キャップ(付勢力受け部)
17 :プロテクタ
17B :支持部(第1の部分)
17C :非支持部(第2の部分)
24 :被ロック部材
100 :錠装置本体(錠装置)
200 :錠装置本体(錠装置)
217 :プロテクタ
217D:低強度部
300 :錠装置本体(錠装置)
317 :プロテクタ
317D:低強度部
400 :錠装置本体(錠装置)
415 :付勢力受け部
417 :プロテクタ
417B:支持部(第1の部分)
417C:非支持部(第2の部分)