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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240417BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B65D65/02 E
C08J5/18 CEV
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020151589
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021046254
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019164807
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】広崎 真司
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172312(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093448(WO,A1)
【文献】特開2019-043679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニリデン系樹脂を含有するラップフィルムであって、
TD方向の引裂強度が10.0~50.0cNであり
温度変調型示差走査熱量計にて測定される低温結晶化開始温度が40~60℃であり、
前記塩化ビニリデン系樹脂が塩化ビニリデン繰り返し単位を72~93mol%含有し、
前記塩化ビニリデン系樹脂に対して、エポキシ化植物油を0.5~3重量%、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を3~8重量%含有し、
厚みが6~18μmである、
塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム。
【請求項2】
MD方向の引張弾性率が400~550MPaである、請求項1に記載の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデン系樹脂は、透明性、耐水性及びガスバリア性等の特性に優れているため、ラップフィルム等として用いられている。近年、臭気の強い食品や廃棄物等、ガスバリア性や保香性が求められる用途にはラップフィルムが多く使用されており、上記対象物をラップフィルムで包装することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、縦裂けトラブルが抑制され、かつ、密着性及び透明性に優れるポリ塩化ビニリデン樹脂ラップフィルムに関する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、臭気を克服しつつ、押出成形時の熱分解を抑制し、かつ、フィルムの過剰密着現象や引出性の低下等、物性の経時変化も少ない塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-168750号公報
【文献】特開2008-74955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の家庭用ラップフィルムは、消費者が使用することを想定して、原反の状態から、ロールカッターなどのスリッターカッターを用いて、シートの長手方向に沿った縦方向にカットし、所望の幅にスリットして製品化される。このとき、家庭用ラップフィルムの長手方向と垂直な方向(すなわちTD方向)の引裂強度が低いと、スリッターカッターでカットする際に、フィルムがスリッターカッターの進行方向以外へも裂けてしまい、生産性が悪化するという問題がある。
また、家庭用ラップフィルムは、フィルムをロール状として、容器に入れられて使用されるが、自己密着性を有するため、ロール状に巻かれたフィルムを一旦容器内に巻き戻ると、ロール本体に密着したカット端面を剥離させて、収納容器から引き出し、使用するのに少なからぬ煩雑性が生ずる。特に、家庭用ラップフィルムのTD方向の引裂強度が低いと、この煩雑性が悪化する。
さらに、家庭用ラップフィルムは、切断用刃を備えた箱に収納され、使用される長さに、この刃で切断されて使用される。家庭用ラップフィルムのTD方向の引裂強度が低いと鋸刃に沿って切断されず、フィルムが鋸刃に沿ってまっすぐに切断できない傾向がある。このため、鋸刃に沿った直進カット性が悪化する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、生産性に優れ、フィルムをカットした際の鋸刃に沿った直進カット性が十分な塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特定の塩化ビニリデン系樹脂を含有するラップフィルムであって、TD方向の引裂強度が6.0cNを超え、温度変調型示差走査熱量計にて測定される低温結晶化開始温度が40~60℃であり、塩化ビニリデン系樹脂に対して、エポキシ化植物油と、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを特定量で含有し、厚みを6~18μmとすることで、生産性に優れ、フィルムをカットした際の鋸刃に沿った直進カット性が十分な塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
塩化ビニリデン系樹脂を含有するラップフィルムであって、
TD方向の引裂強度が6.0cNを超え、
温度変調型示差走査熱量計にて測定される低温結晶化開始温度が40~60℃であり、
前記塩化ビニリデン系樹脂が塩化ビニリデン繰り返し単位を72~93mol%含有し、
前記塩化ビニリデン系樹脂に対して、エポキシ化植物油を0.5~3重量%、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を3~8重量%含有し、
厚みが6~18μmである、
塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム。
[2]
MD方向の引張弾性率が400~550MPaである、上記[1]に記載の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性に優れ、フィルムをカットした際の鋸刃に沿った直進カット性が十分な、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の製膜プロセスで使用された装置の概略図である。
図2】本発明のフィルムの利用形態例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
〔塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム〕
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム(以下、単に「ラップフィルム」という場合がある。)は、塩化ビニリデン系樹脂を含有するラップフィルムであって、TD方向の引裂強度が6.0cNを超え、温度変調型示差走査熱量計にて測定される低温結晶化開始温度が40~60℃であり、前記塩化ビニリデン系樹脂が塩化ビニリデン繰り返し単位を72~93mol%含有し、前記塩化ビニリデン系樹脂に対して、エポキシ化植物油を0.5~3重量%、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を3~8重量%含有し、厚みが6~18μmである。
【0014】
<低温結晶化開始温度>
低温結晶化開始温度は、ラップフィルム製造後の熱安定性を示す指標であり、分子鎖の再配列の程度、すなわち、フィルムの物理的劣化による裂けやすさを評価することができる。
本実施形態のラップフィルムは、温度変調型示差走査熱量計(温度変調型DSC)にて測定される低温結晶化開始温度が40~60℃であり、好ましくは40~54℃であり、さらに好ましくは40~46℃であり、さらにより好ましくは40~43℃である。低温結晶化開始温度が上記範囲であることにより、フィルム中の物理的劣化が進行しない程度に結晶化が進行することで、フィルムの裂けの伝播を抑制するとともに、フィルムと鋸刃が接触した際に鋸刃に沿ってフィルムが破断する。このため、鋸刃に沿ってフィルムを切断した際に、鋸刃に沿った方向以外の、意図しない方向へフィルムが裂けることを防ぐことができ、直進カット性が向上する。
低温結晶化開始温度が40℃未満である場合、フィルムの結晶化進行が十分ではなく、フィルム強度が過剰となり、スリッターカッターでのカット性が低下し、生産性悪化の原因となる。一方、低温結晶化開始温度が60℃を超える場合、既に分子鎖の再配列が進行し、フィルム中の物理劣化が起きるため、スリッターカッターでフィルムをスリットした際に、意図しない方向への裂けが発生しやすくなる。
【0015】
ここで、「低温結晶化開始温度」とは、温度変調型DSCによる昇温測定で得られる非可逆成分の温度-熱流曲線において、低温結晶化に起因する発熱ピークの補外開始温度(昇温測定において低温側のベースラインを高温側に延長した線と、結晶化ピークの低温側の曲線にこう配が最大になる点で引いた接線の交点の温度)をいい、以下の方法により測定される。
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC)(入力補償型ダブルファーネス DSC 8500)を使用し、ステップスキャン測定モードにより、非可逆成分の温度-熱流曲線を得る。この際のステップスキャン測定の条件は、測定温度を0~180℃、昇温速度を10℃/minとし、昇温ステップ幅を4℃とし、等温時間を1minとする。得られた温度-熱流曲線において、低温結晶化に起因する発熱ピークの補外開始温度を低温結晶化開始温度とする。
【0016】
DSC昇温測定中に結晶化と結晶融解は競争して起こるため、従来のDSC測定方法では微結晶の形成・成長と融解に由来する熱流が相殺されてしまい、微結晶の熱挙動を検討することは難しく、従来のラップフィルムと本実施形態を区別することが困難であった。一方、温度変調型DSCを利用した場合、結晶化等の非可逆成分と結晶融解やガラス転移等の可逆成分の熱流に分離することができ、微結晶の熱挙動を評価することが可能となる。
【0017】
ラップフィルムの低温結晶化開始温度を40~60℃とするためには、例えば、MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率の積(MD延伸倍率×TD延伸倍率)や、延伸時の温度を調整することにより、延伸過程で掛かる応力を調整し、配向結晶化の程度を適宜設定すること等が挙げられる。
【0018】
MD延伸倍率×TD延伸倍率の好ましい範囲としては、11~21倍であり、好ましくは、11~18倍であり、さらに好ましくは11~14倍であり、特に好ましくは11~13倍である。
【0019】
本実施形態のラップフィルムの厚みは、6~18μmであり、9~12μmが好ましい。ラップフィルムの厚みが6μm以上である場合、フィルムの引張強度が高く、使用時のフィルム切れを抑制できる。また、引裂強度の著しい低下がなく、巻回体からフィルムを引き出す際、及び化粧箱の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際、化粧箱付帯の切断刃でカットした端部からフィルムが裂けるトラブルを低減できる。一方、ラップフィルムの厚みが18μm以下である場合、フィルム切断刃でフィルムをカットするのに必要な力を低減でき、カット性が良好であり、また、フィルムが容器形状にフィットしやすく、容器への密着性が向上する。すなわち、フィルム切れのトラブル抑制、カット性、及び密着性のバランスの観点から、ラップフィルムの厚みが特定範囲に調整される。特に、厚みが6~18μmのラップフィルムは、引裂強度の著しい低下はないものの、決して十分ではなく、フィルムの裂けトラブルが起こりやすい傾向にあるため、本発明の効果が顕著となる。ラップフィルムの厚みは、公知の方法により調整することができ、例えば、押出速度を3kg/hr~200kg/hrの範囲内で適宜選択することにより調整することができる。
【0020】
ラップフィルムの厚みは、後述する実施例に記載された方法に従って測定することができる。
【0021】
<引裂強度>
本実施形態のラップフィルムは、TD方向の引裂強度が6.0cN超である。ここで、TD方向とは、巻回体からラップフィルムを引き出す方向に垂直な方向をいう。引裂強度は、後述の実施例に記載された方法によって測定される。
【0022】
TD方向の引裂強度が6.0cNを超える場合には、フィルムのTD方向への裂けの伝播が止まる傾向にある。また、スリッターカッターの進行方向へフィルムが裂けるので、生産性が向上する。フィルムの鋸刃に沿ったカットは、フィルムの裂けの伝播により生じるのではなく、主に、鋸刃とフィルムが接触して、破断することに起因する。したがって、本実施形態のラップフィルムは、フィルム一枚での測定時のTD方向の引裂強度が6.0cN超であることにより、鋸刃に沿ってフィルムを切断した際に、鋸刃に沿った方向以外の意図しない方向へフィルムが裂けることを防ぐことができ、鋸刃に沿った直進カット性が向上する。このため、特に巻回体からラップフィルムを引き出す際の裂けを低減でき、また、ラップフィルム使用時の意図しない裂けトラブルを抑制できる傾向にある。さらに、フィルム強度が向上するため、ラップフィルムを輸送する際に、フィルムの端面に傷が付きにくくなる傾向にあり、消費者がラップフィルムを使用する際に、フィルムが裂けにくく、使い勝手が向上する。
【0023】
フィルム一枚で測定した時のTD方向の引裂強度は6.0cN超~50.0cNであり、好ましくは10.0~50.0cNであり、さらに好ましくは20.0~50.0cNであり、さらにより好ましくは30.0~50.0cNである。フィルム一枚で測定した時のTD方向の引裂強度が6.0cN以下である場合、フィルム強度が十分ではなく、ラップフィルムを輸送する際に、フィルムの端面に傷が付きやすい傾向があり、消費者がラップフィルムを使用する際に、フィルムが裂けてしまい、使用するのに少なからぬ煩雑性が生じる。TD方向の引裂強度が50.0cN以下である場合には、鋸刃に沿った直進カット性が高くなる傾向にある。
【0024】
本実施形態のラップフィルムのTD方向の引裂強度は、塩化ビニリデン系樹脂の組成、添加剤組成、フィルムの延伸倍率、延伸速度、及びフィルムの厚み、ダイスリットの内径等によって調整できる。例えば、TD方向の引裂強度は、TD方向の延伸倍率を低くしたり、ラップフィルムを厚くすることによって向上する傾向にあり、TD方向の延伸倍率を高くしたり、ラップフィルムを薄くすることによって低下する傾向にある。また、ダイスリットの内径を大きくすると、TD方向へ延伸する際に、同一倍率へ延伸する場合であっても延伸速度が低下するため、TD方向の引裂強度が向上する傾向にある。これは、TD方向への延伸速度が低下することにより、TD方向への分子鎖配向度が低下することが原因であると推定される。
【0025】
<引張弾性率>
本実施形態のラップフィルムは、MD方向の引張弾性率が400~550MPaである。ここで、MD方向とは、巻回体からラップフィルムを引き出す方向をいう。引張弾性率は、後述の実施例に記載された方法によって測定される。
【0026】
本実施形態のラップフィルムは、MD方向の引張弾性率が400MPa以上であることにより、鋸刃でフィルムをカットした後、フィルムのカット端面を摘まむ際に、カット端面が剛性を保ち、摘まみやすさが向上する傾向にある。一方、MD方向の引張弾性率が550MPa以下であることにより、フィルムが適度な柔軟性を保つことができ、カット端面の強度が向上して、カット端面を摘まんだ際に裂けが発生しにくくなる傾向にある。MD方向の引張弾性率は、400~520MPaが好ましく、400~480MPaがより好ましく、400~460MPaがさらにより好ましい。この時、TD方向の引裂強度が6.0cNを超えていると、フィルムをカットした際の小さな千切れが発生しにくい傾向にある。このため、カット端面を摘まむ際にフィルムの裂けを抑止でき、カット端面を摘まみやすくなる傾向にある。
【0027】
本実施形態のラップフィルムのMD方向の引張弾性率は、塩化ビニリデン系樹脂の組成、添加剤組成、フィルムの延伸倍率、及び延伸速度等によって調整できる。例えば、MD方向の引張弾性率は、延伸倍率を高くしたり、添加剤量を低減することによって向上する傾向にあり、延伸倍率を低くしたり、添加剤量を増加することによって低下する傾向にある。
【0028】
<塩化ビニリデン系樹脂>
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、塩化ビニリデン系樹脂を含有する。
本実施形態に用いる塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン繰り返し単位を含むものであれば特に限定されず、塩化ビニリデン繰り返し単位以外に、例えば塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート等のメタアクリル酸エステル;アクリロニトリル;酢酸ビニル等、塩化ビニリデンと共重合可能な単量体が一種又は二種以上共重合されていてもよい。
【0029】
塩化ビニリデン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは80.000~200,000であり、より好ましくは90,000~180,000であり、さらに好ましくは100,000~170,000である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることにより、ラップフィルムの機械強度がより向上する傾向にある。重量平均分子量が上記範囲内である塩化ビニリデン系樹脂は、例えば、塩化ビニリデンモノマーと塩化ビニルモノマーの仕込み比率や、重合開始剤の量、又は重合温度を制御することにより得ることができる。なお、本実施形態において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー法(GPC法)により、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0030】
塩化ビニリデン系樹脂が共重合樹脂である場合、塩化ビニリデン繰り返し単位の比率は、特に限定されないが、塩化ビニリデン繰り返し単位を72~93mol%含むものが好ましく、81~90mol%含むものがより好ましい。塩化ビニリデン繰り返し単位が72mol%以上である場合、塩化ビニリデン系樹脂のガラス転移温度が低くフィルムが軟らかくなるため、冬場等の低温環境下での使用時にもフィルムの裂けを低減できる傾向にある。一方、塩化ビニリデン繰り返し単位が93mol%以下である場合、結晶性の大幅な上昇を抑制し、フィルム延伸時の成形加工性の悪化を抑制できる傾向にある。
特に、塩化ビニリデン繰り返し単位を72mol%以上含む塩化ビニリデン系樹脂からなるラップフィルムは、夏場等の高温下で保管・流通する際、熱を受けて微結晶が形成・成長し、物理的な劣化が起こりやすく、結果としてフィルム使用時の裂けトラブルが発生しやすい傾向にあるため、本発明の効果がより顕著となる。
【0031】
塩化ビニリデン繰り返し単位の含有量は、例えば、高分解のプロトン核磁気共鳴測定装置(400MHz以上)を用いて測定することができる。より具体的には、ラップフィルムの再沈濾過物を、下記の手順に従って得る。
試料 0.5gをTHF(テトラヒドロフラン)10mlに溶解し、メタノール約30mlを加えて樹脂分を析出した後、遠心分離にて析出物を分離、乾燥する。
こうして得た再沈濾過物を、真空乾燥し、5重量%を重水素化テトラヒドロフランに溶解させた溶液を、測定雰囲気温度約27℃にてH-NMR測定する。得られたスペクトル中のテトラメチルシランを基準とした特有の化学シフトを用いて塩化ビニリデン繰り返し単位を計算する。例えば、塩化ビニリデンと塩化ビニルの共重合体では、3.50~4.20ppm、2.80~3.50ppm、2.00~2.80ppmのピークを利用して計算する。
【0032】
塩化ビニリデン系樹脂の含有量は、ラップフィルムの総量に対して、好ましくは77~94重量%であり、より好ましくは85~94重量%である。塩化ビニリデン系樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、添加剤等による可塑化効果によってフィルムが伸びやすくなるのを抑制でき、フィルムのカット性が一層高くなる傾向にある。
【0033】
ラップフィルム中の各成分の含有量を測定する方法は分析対象物によって異なる。例えば、塩化ビニリデン系樹脂の含有量は、ラップフィルムの再沈濾過物を真空乾燥し、重量測定して得ることができる。一方、エポキシ化植物油の含有量は、例えば、NMRを使用する方法を用いることができる。また、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルの含有量は、アセトン等の有機溶媒を用いてラップフィルムから添加剤を抽出し、ガスクロマトグラフィー分析して得ることができる。
【0034】
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、前記塩化ビニリデン系樹脂に加えて、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、特に制限されず、例えば、エポキシ化植物油等の公知の安定剤、及びクエン酸エステルや二塩基酸エステル等の公知の可塑剤等が挙げられる。
【0035】
<エポキシ化植物油>
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、ラップフィルムの色調変化の抑制の観点から、エポキシ化植物油を含有することが好ましい。エポキシ化植物油は、塩化ビニリデン系樹脂押出加工用安定剤としても作用する。
【0036】
エポキシ化植物油としては、特に限定されないが、一般的に、食用油脂をエポキシ化して製造されるものが挙げられる。具体的には、例えば、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化アマニ油が挙げられるが、これらの中でも、高温下にラップフィルムを保管した際、化粧箱からのフィルムの引出性悪化を抑制できる傾向にあるため、ESOが好ましい。
【0037】
本実施形態のラップフィルムがエポキシ化植物油を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、ラップフィルムの色調変化の抑制、ブリードによるべたつき防止等の観点から、塩化ビニリデン系樹脂に対し、0.5~3重量%が好ましく、1~2重量%がより好ましい。
【0038】
エポキシ化植物油含有量のNMRを使用した測定方法は下記の手順に従う。
サンプルを50mg秤量し、重溶媒(溶媒:重水素化THF、内部標準:テレフタル酸ジメチル、容量:0.7ml)に溶かし、400MHzプロトンNMR(積算回数:512回)測定する。8.05~8.11ppmの積分値に対する2.23~2.33ppmの積分値の比を積分比とし、絶対検量線法で定量値を計算する。
積分比=積分値(2.23~2.33ppm)/積分値(8.05~8.11ppm)
【0039】
本実施形態のラップフィルムは、成形加工性等の観点から、クエン酸エステル及び二塩基酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0040】
<クエン酸エステル>
本実施形態のラップフィルムに用いられるクエン酸エステルは、特に限定されないが、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ATBC、アセチルクエン酸トリ-n-(2-エチルヘキシル)などが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニリデン系樹脂に対する可塑化効果が高く、少量でも十分に樹脂を可塑化し、成形加工性を向上させる傾向にあるため、ATBCが好ましい。
【0041】
<二塩基酸エステル>
本実施形態のラップフィルムに含まれる二塩基酸エステルとしては、特に限定されないが、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジn-ヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル系;アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸オクチル等のアゼライン酸エステル系;セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等のセバシン酸エステル系などが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニリデン系樹脂に対する可塑化効果が高く、少量でも十分に樹脂を可塑化し、成形加工性を向上させる傾向にあるため、DBSが好ましい。
【0042】
前記クエン酸エステルや二塩基酸エステルの合計含有量は、特に限定されないが、より優れた成形加工性の付与、及び添加剤高含有時のラップフィルムの過剰な密着性防止等の観点から、塩化ビニリデン系樹脂に対し、3~8重量%が好ましく、3~7重量%がより好ましく、3~5重量%がさらに好ましく、3.5~5重量%が特に好ましい。
【0043】
特に、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムが、クエン酸エステルや二塩基酸エステルを3重量%以上含有する場合、塩化ビニリデン系樹脂の分子鎖の運動性が高くなるため、微結晶の形成や成長等の再配列が発生しやすく、高温下に晒されると物理的に劣化しやすくなり、また、フィルムが伸びやすくなるため切断刃がフィルムに食い込みにくくなり、カット性が低下する傾向にあるため、本発明の効果がより顕著となる。
【0044】
<その他の配合物>
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、前記エポキシ化植物油、クエン酸エステル、及び二塩基酸エステル以外の配合物(以下、「その他の配合物」という。)、例えば可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、染料又は顔料等の着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤、核剤、ポリエステル等のオリゴマー、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体)等のポリマー等を含有してもよい。
【0045】
前記可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、及びリン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
前記安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2,5-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4'-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)ブロピオネート、及び4,4'-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)等の酸化防止剤;ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、2-エチル-ヘキシル酸塩、イソデカン酸塩、ネオデカン酸塩、及び安息香酸カルシウム等の熱安定剤が挙げられる。
【0047】
前記耐候性向上剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾリトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、及び2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0048】
前記染料又は顔料等の着色剤としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、及びベンガラ等が挙げられる。
【0049】
前記防曇剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0050】
前記抗菌剤としては、特に限定されないが、具体的には、銀系無機抗菌剤等が挙げられる。
【0051】
前記滑剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレンビスステロアミド、ブチルステアレート、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸炭化水素系滑剤、高級脂肪酸滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、及び脂肪酸エステル滑剤等が挙げられる。
【0052】
前記核剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0053】
前記その他の配合物の含有量は、ラップフィルムに対して5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
【0054】
〔塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムの製造方法〕
本実施形態の塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムの製造方法は、特に制限されないが、例えば、塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押し出しした後、MD方向及びTD方向に延伸する塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムの製造方法であって、ダイスリットの内径を40mm~800mmとし、MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率との積の値(MD延伸倍率×TD延伸倍率)を11~21倍とし、MD方向の延伸倍率を3.5~7.5倍とし、TD方向の延伸倍率を1.5~6.0倍とし、延伸温度を25~40℃とする方法を用いることができる。ここで、延伸温度とは、フィルムを延伸する際の、フィルム付近の雰囲気温度である。ダイスリットの内径の好ましい範囲は100mm~800mmであり、より好ましくは160mm~800mmであり、さらにより好ましくは310mm~800mmであり、特に好ましくは470mm~800mmである。なお、ダイスリットの内径を40~100mmと小さくする場合には、TD方向の延伸倍率等を適宜調整する。TD方向の延伸倍率の好ましい範囲は1.8~2.5倍である。
【0055】
以下、本実施形態のラップフィルムの好ましい製造方法について説明する。
まず、塩化ビニリデン系樹脂と、必要に応じて、エポキシ化植物油、クエン酸エステル又は二塩基酸エステルから選ばれる少なくとも一種の化合物と、必要に応じて種々の添加剤とを、リボンブレンダー又はヘンシェルミキサー等で均一に混合させ、24時間熟成させて塩化ビニリデン系樹脂組成物を製造する。その後、図1にラップフィルムの製造工程の一例の概略図を示すように、該樹脂組成物を押出機(1)により溶融させ、ダイ(2)から管状に押出され、ソック(4)が形成される。ソック(4)の外側を冷水槽(6)にて冷水に接触させ、ソック(4)の内部にはソック液(5)を注入することにより、内外から冷却して固化させる。固化されたソック(4)は、第1ピンチロール(7)にて折り畳まれ、パリソン(8)が成形される。
【0056】
続いて、パリソン(8)の内側にエアを注入することにより、再度パリソン(8)は開口されて管状となる。このとき、ソック(4)内面に表面塗布したソック液(5)はパリソン(8)の開口剤としての効果を発現する。パリソン(8)は、温水により延伸に適した温度まで再加熱される。パリソン(8)の外側に付着した温水は、第2ピンチロール(9)にて搾り取られる。適温まで加熱された管状のパリソン(8)にエアを注入してバブル(10)を成形し、延伸フィルムが得られる。その後延伸フィルムは、第3ピンチロール(11)で折り畳まれ、ダブルプライフィルム(12)となる。ダブルプライフィルム(12)は、巻き取りロール(13)にて巻き取られる。さらに、このフィルムはスリットされて、1枚のフィルムになるように剥がしながら巻き取られ、一時的に1~3日間原反の状態で保管される。最終的には原反から紙管に巻き返され、化粧箱に詰められることで、化粧箱に収納された塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルム巻回体が得られる。
【0057】
上記記載の第1ピンチロール(7)から第3ピンチロール(11)までの工程が延伸工程であり、第1ピンチロール(7)と第3ピンチロール(11)の回転速度比でMD方向の延伸倍率が決まり、パリソン(8)の延伸温度やバブル(10)の大きさでTD方向の延伸倍率を調整できる。また、MD方向の延伸倍率は、パリソン(8)をMD方向に伸ばした延伸比をいい、例えば、図1においては、第1ピンチロール(7)の回転速度に対する第3ピンチロール(11)の回転速度の比によってMD方向の延伸倍率を算出できる。また、パリソン(8)の幅の長さに対するダブルプライフィルム(12)の幅の長さの比によってTD方向の延伸倍率を算出できる。
【0058】
また、第1ピンチロール(7)や第3ピンチロール(11)の回転速度を変更すること、又は、第1ピンチロール(7)と第3ピンチロール(11)の間の距離を変更することにより、パリソン(8)の延伸速度、特にMD方向の延伸速度を変更することができる。
【0059】
MD方向の平均延伸速度は、パリソンが第1ピンチロール(7)と第3ピンチロール(11)の間を通過する時間に対するMD方向への延伸倍率をいい、例えば、図1においては、第1ピンチロール(7)の回転速度、第3ピンチロール(11)の回転速度、及びパリソン(8)が第1ピンチロール(7)と第3ピンチロール(11)間を通過するのに要する時間によって算出できる。TD方向の平均延伸速度は、パリソン(8)がバブル(10)まで膨らむのに要する時間に対するTD方向への延伸倍率をいい、例えば、図1においては、パリソン(8)及びバブル(10)の静止画像を利用して測定した延伸長と第3ピンチロール(11)の回転速度から算出したTD方向の延伸に要する時間と、TD方向の延伸倍率から算出できる。
【0060】
一方、第3ピンチロール(11)より巻き取りロール(13)の回転速度を遅くすることで、延伸フィルムを緩和させることができる。一般的に、延伸後に赤外ヒーター等の熱を利用してフィルムを緩和させる場合があるが、本実施形態のラップフィルムを製造する場合、熱によりフィルムの裂けの原因である微結晶の形成・成長が起こり、結晶化開始温度は60℃を超えてしまう。そのため、緩和時の雰囲気温度を25~32℃に設定することが好ましい。
【0061】
フィルムをスリットした後、原反の状態で保管する条件は、特に制限されないが、延伸後24時間以上5~19℃で保管することが好ましい。特に、保管の際の雰囲気温度は、フィルム裂けトラブル増加を誘発する微結晶の形成・成長を抑制する点で重要となる。原反の保管場所は、フィルムの製造工程に隣接していたり、温調管理されていない等のため、比較的高温下であることが多い。スリット原反保管時の雰囲気温度が19℃以下である
ことは、分子鎖の再配列によるフィルムの物理劣化を抑制でき、巻回体からフィルムを引き出す際、及び化粧箱の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際、化粧箱付帯の切断刃でカットした端部からフィルムが裂けやすくなるのを抑制できるので、好ましい。
【0062】
一方、スリット原反保管時の雰囲気温度が5℃以上であることは、フィルムを十分に緩和し、その後の流通・保管時に20℃以上に晒された場合、分子鎖の再配列が起こりにくくする観点から好ましい。
そのため、スリット原反を24時間以上、5~19℃で保管することが好ましく、これにより、微結晶の形成・成長を抑制しつつ、非晶部の分子鎖を配向緩和させたフィルムが得られる。原反保管時に分子鎖の配向を緩和させることにより、フィルムの流通及び保管時に高温下に晒されても微結晶が形成・成長しにくくなり、裂けトラブルを抑制することができる。
【0063】
スリット原反は、保管後、特に制限されないが、例えば紙管等に巻き返され、巻回体(16)として、図2に示すようなフィルム切断刃(15)を備える化粧箱(14)に収納される。図2に例示するように、ラップフィルム(17)は、使用時に引き出されて使用される。
【実施例
【0064】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。実施例及び比較例で用いた評価方法は、以下の通りである。
【0065】
(測定方法)
<塩化ビニリデン繰り返し単位の含有量>
ラップフィルムの塩化ビニリデン繰り返し単位の比率は、高分解のプロトン核磁気共鳴測定装置を用いて測定した。ラップフィルムの再沈濾過物を真空乾燥し、5重量%を重水素化テトラヒドロフランに溶解させた溶液を、測定雰囲気温度約27℃にてH-NMR測定した。例えば、塩化ビニリデンと塩化ビニルの共重合体に関しては、テトラメチルシランを基準とした共重合体の3.50~4.20ppm、2.80~3.50ppm、2.00~2.80ppmのピークを利用して塩化ビニリデン繰り返し単位の含有量を計算した。
【0066】
<フィルムの厚み>
ラップフィルムの厚み測定にはダイアルゲージ(テクロック社製)を利用し、23℃、50%RHの雰囲気中で行った。
【0067】
<引裂強度>
ラップフィルムの引裂強度測定は軽荷重引裂試験機 D型(東洋精機製)を使用し、23℃、50%RHの雰囲気中にて評価した。ラップフィルムの引裂強度測定はラップフィルムを10枚重ねた状態と、ラップフィルム1枚のみでの測定の両方について行った。この時、フルスケールの20~80%になるように測定レンジを適宜選択した。フルスケールの20%未満となる場合には、最も小さい測定レンジを選択した。また、フィルムを重ねる際には、フィルムにシワが入らない様に、タルクをまぶしてから、フィルム10枚を重ねた。引裂方向のサンプル長さは63.5mmとし、サンプル幅は50.0mmとした。測定の際には、振り子を持ち上げてから止めた後、試験片、又は、積層した試験片を注意深くつまみ具に取り付け、スリットを入れる位置がフィルム幅の中央となるように、クランプをしっかりと締め付けた。その後、装置に取り付けられたナイフでフィルムにスリットを入れた後、振り子を注意深く解放し、試験片を引き裂くのに要した力の値を読み取った。引裂線がスリットの延長線より10mm以上それた試験は除外し、代わりに追加の試験片の試験を行った。ただし、この場合、引裂きがエンボス加工された模様の線に沿っている場合はこの限りではない。測定結果は小数点第二位の値を四捨五入した。
【0068】
<引張弾性率>
ラップフィルムの引張弾性率測定はオートグラフAG-IS(島津製作所製)を使用し、23℃、50%RHの雰囲気中にて評価した。5mm/minの引張速度、チャック間距離100mm、フィルム幅10mmの条件で2%伸長時の荷重を測定し、測定サンプルの断面積で割り返してから、50倍にして引張弾性率を測定した。測定の際には、試験機の軸に試験片のMD方向が一致するように、つかみ具に取り付けた。試験片は、滑りを防ぐために、かつ、試験中につかみ部分がずれないように、つかみ具で均等にしっかりと締めた(つかみ具間の圧力によって、試験片の割れ、及び、圧延が起きてはならない)。また、測定結果は有効数字を2桁として、端数を四捨五入して、整数で示した。
【0069】
<低温結晶化開始温度>
ラップフィルムの低温結晶化開始温度測定には、パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC)(入力補償型ダブルファーネス DSC 8500)を使用し、ステップスキャン測定モード(サンプル重量:6mg、サンプルパン材質:アルミ製、測定温度:0~180℃、昇温速度:10℃/min、昇温ステップ幅:4℃、等温時間:1min)を利用した。空のアルミ製サンプルパンについても条件にて測定し、これをブランクとした。温度-熱流曲線の非可逆成分において、低温結晶化に起因する発熱が開始する温度を低温結晶化開始温度とした。
【0070】
(評価方法)
<カット端面の摘まみやすさ>
ラップフィルムを鋸刃でカットした後に、カット端面を摘まんで、ラップフィルムを引出す動作を想定し、ラップフィルムを鋸刃でカットした際に生じるカット端面の摘まみやすさを官能評価した。ラップフィルムのカット端面の摘まみやすさに関する官能評価は、以下の方法によって実施して評価する。すなわち、熟練した評価者10名(男女含む)が、市販のラップフィルムの化粧箱(旭化成ホームプロダクツ社製、商品名サランラップ(登録商標)の化粧箱、22cm×50m)に収納したラップフィルムを手で引き出して鋸刃で切断した後、カット端面の摘まみやすさについて1点~10点の1点刻み(10点が最も優れた摘まみやすさであり、1点が最も摘まみにくいとした。)で、各々評価した。評価者10名の平均点に基づき、以下の評価基準により、ラップフィルムのカット端面の摘まみやすさを評価した。摘まみやすさの評価が「A」であれば、ラップフィルムは非常に快い摘まみやすさであり、摘まみやすさが非常に優れるといえる。評価が「B」であれば、ラップフィルムは快い摘まみやすさである。評価が「C」であれば、ラップフィルムは摘まみやすさが良好であるといえる。評価が「D」であれば、ラップフィルムの摘まみやすさには特に問題はない。評価が「×」であれば、ラップフィルムは摘まみやすさが劣っている。
[評価基準]
A:8.0点以上
B:6.0点超過8.0点未満
C:4.0点超過6.0点未満
D:2.0点超過4.0点未満
×:2.0点以下
【0071】
<鋸刃に沿った直進カット性>
ラップフィルムの鋸刃に沿った直進カット性に関する官能評価は、以下の方法によって実施して評価した。すなわち、熟練した評価者10名(男女含む)が、市販のラップフィルムの化粧箱(旭化成ホームプロダクツ社製、商品名サランラップ(登録商標)の化粧箱、22cm×50m)に収納したラップフィルムを手で引き出して鋸刃で切断する際の鋸刃に沿った直進カット性(フィルムが鋸刃に沿ってまっすぐに切断できるか否か)について1点~10点の1点刻み(10点が最も優れた鋸刃に沿った直進カット性であり、1点が鋸刃に沿った直進カットしにくいとした。)で、各々評価した。評価者10名の平均点に基づき、以下の評価基準により、ラップフィルムの鋸刃に沿った直進カット性を評価した。摘まみやすさの評価が「A」であれば、ラップフィルムは非常に快い鋸刃に沿った直進カット性であり、鋸刃に沿った直進カット性が非常に優れるといえる。評価が「B」であれば、ラップフィルムは快い鋸刃に沿った直進カット性である。評価が「C」であれば、ラップフィルムは鋸刃に沿った直進カット性が良好であるといえる。評価が「D」であれば、ラップフィルムの鋸刃に沿った直進カット性には特に問題はない。評価が「×」であれば、ラップフィルムは鋸刃に沿った直進カット性が劣っている。
[評価基準]
A:8.0点以上
B:6.0点超過8.0点未満
C:4.0点超過6.0点未満
D:2.0点超過4.0点未満
×:2.0点以下
【0072】
<スリット時の裂け発生率>
ダブルプライフィルムを市販の紙管(株式会社昭和丸筒製、商品名Gコア、内径:77mm、厚み:10mm、長さ:400mm)を使用し、フィルムを紙管に巻き取った。巻き取った原反の両端をカッター刃でカットしてスリットを行った。スリットは、フィルムダブルプライフィルムの幅が80mmとなるように、スリット幅を適宜調整して行った。スリットの際のフィルム搬送速度は50m/分で行い、巻長は300mで行った。スリット作業中に、フィルムが裂けてフィルムが搬送できなくなる確率(%)を算出した。N数は3000回で行った(単位:%)。評価は下記に従って行った。
[評価基準]
A:スリット時の裂け発生率0.03%以下(裂け発生本数1本以下/3000本)。
B:スリット時の裂け発生率0.03%より高く0.07%以下(裂け発生本数1本より多く2本以下/3000本)。
C:スリット時の裂け発生率0.07%より高く0.10%以下(裂け発生本数2本より多く3本以下/3000本)。
D:スリット時の裂け発生率0.10%より高く0.20%以下(裂け発生本数3本より多く6本以下/3000本)。
×:スリット時の裂け発生率0.20%より高い(裂け発生本数6本より多い/3000本)。
【0073】
<振動試験での傷発生率>
ラップフィルムの出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製造直後のラップフィルム巻回体を28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した。その後、流通時の振動を再現するために、振動試験機(アイデックス株式会社製、品番「BF-50UC」)を用いて、容器(化粧箱)内に収容されたラップフィルム巻回体を振動させた。振動試験は下記のとおりに行った。
まず、1つの直方体状の容器(化粧箱内寸;42mm×42mm×約233mm)内に巻回体を1本収容した巻回体収容体60個を、隙間ができないように段ボール箱(内寸28cm×46cm×24cm)に収容し、巻回体の長手方向が振動台に対し垂直になるように、振動台にベルトで固定した。このとき、幅80mmのラップフィルムを、ラップ端面と紙管端面との間の距離が2mmとなるように巻き直した。さらに、ラップ端面と紙管端面の距離が2mmとなる側が振動台に対して近くなるように固定した。23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で、振動試験機を運転して振動試験を行った。振動試験はオートモードを使用し、30秒の間に5Hz、30Hz、5Hzの順に周波数を変化させたサイクルにて、20分間行った。
その後、23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で裂けトラブル評価を行った。評価者として、日常、食品包装用ラップフィルムを使用する100人を選出した。評価者は、収容体に収容された幅約8cmの巻回体からフィルムを50cm引き出した後、化粧箱に付帯するブリキ製のフィルム切断刃で切断する一連の作業を10回ずつ実施した。すなわち、100人が10回ずつで計1000回のうち、巻回体からフィルムを引き出す際に、裂けが発生し、円滑にフィルムが引き出せなかった回数から、フィルムの裂けトラブル発生率を導出した。
フィルムの裂けトラブル発生率は、以下の5段階で評価した。すなわち、裂けトラブル発生率が5%未満の場合は、裂けトラブルがほとんどなく、使い勝手に非常に優れるものとして「A」と評価した。また、裂けトラブル発生率が5%以上10%未満の場合は、裂けトラブルが少なく、使い勝手に優れるものとして「B」と評価した。さらに、裂けトラブル発生率が10%以上15%未満の場合は、裂けトラブルがあまりなく、使い勝手が良いものとして「C」と評価した。また、裂けトラブル発生率が15%以上20%未満の場合は、裂けトラブルがやや多く、使い勝手が悪いものとして「D」と評価した。そして、裂けトラブル発生率が20%以上の場合は、裂けトラブルが非常に多く、使い勝手が非常に悪いものとして「×」と評価した。
【0074】
[実施例1]
重量平均分子量120,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン繰り返し単位が85mol%、塩化ビニル繰り返し単位が15mol%)、ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、田岡化学工業(株))、ESO(ニューサイザー510R、日本油脂(株))をそれぞれ93.4重量%、5.5重量%、1.1重量%の割合で混ぜたもの合計10kgをヘンシェルミキサーにて5分間混合させ、24時間以上熟成して塩化ビニリデン系樹脂組成物を得た。
上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出機に供給して溶融し、押出機の先端に取り付けられた環状ダイでのスリット出口での溶融樹脂温度が170℃になるように押出機の加熱条件を調節しながら、環状に7kg/hrの押出速度で押出した。ダイスリットの内径は49mmとした。
これを過冷却した後、インフレーション延伸によって、延伸温度は25℃で、MD方向は7.4倍に延伸し、TD方向は1.9倍に延伸して筒状フィルムとし、ダブルプライフィルムの幅93mmの2枚重ねのフィルムを巻取速度18m/minにて巻き取った。このフィルムを、80mmの幅にスリットし、1枚のフィルムに剥がしながら外径97mmの紙管に巻き直した。その後、30時間の間15℃で保管し、外径36mm、長さ23cmの紙管に50m巻き取ることで、ラップフィルムの巻回体を得た。このとき、ラップフィルムの端面と紙管端面との間の距離は2mmとなるように巻き直した。
評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2]
9kg/hrの押出速度とし、TD方向の延伸倍率を2.0倍にし、ダブルプライフィルムの幅を98mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例3]
10kg/hrの押出速度とし、TD方向の延伸倍率を2.1倍にし、ダブルプライフィルムの幅を103mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例4]
11kg/hrの押出速度とし、TD方向の延伸倍率を2.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を108mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例5]
13kg/hrの押出速度とし、TD方向の延伸倍率を2.3倍にし、ダブルプライフィルムの幅を113mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例6]
15kg/hrの押出速度とし、TD方向の延伸倍率を2.5倍にし、ダブルプライフィルムの幅を123mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例7]
162kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を788mmにし、ダブルプライフィルムの幅を4413mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0081】
[実施例8]
160kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を631mmにし、ダブルプライフィルムの幅を3534mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0082】
[実施例9]
142kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を475mmにし、ダブルプライフィルムの幅を2660mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0083】
[実施例10]
110kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を318mmにし、ダブルプライフィルムの幅を1781mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例11]
64kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を161mmにし、ダブルプライフィルムの幅を902mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0085】
[実施例12]
44kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を107mmにし、ダブルプライフィルムの幅を599mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0086】
[実施例13]
重量平均分子量120,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン繰り返し単位が85mol%、塩化ビニル繰り返し単位が15mol%)、ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、田岡化学工業(株))、ESO(ニューサイザー510R、日本油脂(株))をそれぞれ91.4重量%、7.5重量%、1.1重量%の割合で混ぜたもの合計10kgをヘンシェルミキサーにて5分間混合させ、24時間以上熟成して塩化ビニリデン系樹脂組成物を得た。
上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出機に供給して溶融し、44kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を107mmにし、ダブルプライフィルムの幅を599mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0087】
[実施例14]
重量平均分子量120,000の塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン繰り返し単位が85mol%、塩化ビニル繰り返し単位が15mol%)、ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、田岡化学工業(株))、ESO(ニューサイザー510R、日本油脂(株))をそれぞれ95.9重量%、3.0重量%、1.1重量%の割合で混ぜたもの合計10kgをヘンシェルミキサーにて5分間混合させ、24時間以上熟成して塩化ビニリデン系樹脂組成物を得た。
上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出機に供給して溶融し、44kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を107mmにし、ダブルプライフィルムの幅を599mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表1に示す。
【0088】
[実施例15]
6kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を7.4倍、TD方向の延伸倍率を1.8倍にし、ダブルプライフィルムの幅を88mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0089】
[比較例1]
10kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.3倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍にし、ダブルプライフィルムの幅を274mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0090】
[比較例2]
11kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を50mmにし、ダブルプライフィルムの幅を280mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0091】
[比較例3]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を105,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を84mol%、塩化ビニル繰り返し単位が16mol%とし、ATBCの添加量を2.3重量%とし、ESOの添加量を2.2重量%とし、DALGの添加量を2.8重量%として、8kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.8倍、TD方向の延伸倍率を4.1倍にし、ダブルプライフィルムの幅を201mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0092】
[比較例4]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を105,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を84mol%、塩化ビニル繰り返し単位が16mol%とし、ATBCの添加量を2.3重量%とし、ESOの添加量を2.2重量%とし、DALGの添加量を2.8重量%として、11kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を58mmにし、ダブルプライフィルムの幅を325mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0093】
[比較例5]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、9kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を4.5倍、TD方向の延伸倍率を3.6倍にし、ダブルプライフィルムの幅を176mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0094】
[比較例6]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、11kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を61mmにし、ダブルプライフィルムの幅を342mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
[比較例7]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、8kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を4.9倍、TD方向の延伸倍率を3.1倍にし、ダブルプライフィルムの幅を152mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0096】
[比較例8]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、11kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.7倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍、ダイスリットの内径を89mmにし、ダブルプライフィルムの幅を498mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0097】
[比較例9]
10kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を6.8倍、TD方向の延伸倍率を3.4倍、ダイスリットの内径を50mmにし、ダブルプライフィルムの幅を167mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0098】
[比較例10]
5kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を2.7倍、TD方向の延伸倍率を3.4倍、ダイスリットの内径を107mmにし、ダブルプライフィルムの幅を364mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0099】
[比較例11]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を105,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を84mol%、塩化ビニル繰り返し単位が16mol%とし、ATBCの添加量を2.3重量%とし、ESOの添加量を2.2重量%とし、DALGの添加量を2.8重量%として、12kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を7.2倍、TD方向の延伸倍率を3.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を157mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0100】
[比較例12]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を105,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を84mol%、塩化ビニル繰り返し単位が16mol%とし、ATBCの添加量を2.3重量%とし、ESOの添加量を2.2重量%とし、DALGの添加量を2.8重量%として、5kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.1倍、TD方向の延伸倍率を3.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を157mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0101】
[比較例13]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、12kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を7.0倍、TD方向の延伸倍率を3.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を157mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0102】
[比較例14]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、5kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.0倍、TD方向の延伸倍率を3.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を157mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0103】
[比較例15]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、12kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を3.0倍、TD方向の延伸倍率を3.2倍にし、ダブルプライフィルムの幅を93mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0104】
[比較例16]
塩化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量を130,000とし、塩化ビニリデン繰り返し単位を80mol%、塩化ビニル繰り返し単位が20mol%とし、ATBCの添加量を5.2重量%とし、ESOの添加量を1.8重量%として、5kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を5.0倍、TD方向の延伸倍率を1.9倍にし、ダブルプライフィルムの幅を93mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0105】
[比較例17]
16kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を5.5倍、TD方向の延伸倍率を5.3倍にし、ダブルプライフィルムの幅を260mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。その後、特開2000-335628号公報に記載の方法で凸エンボスをフィルム表面に形成した。評価結果を表2に示す。
【0106】
[比較例18]
16kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を5.5倍、TD方向の延伸倍率を5.3倍にし、ダブルプライフィルムの幅を260mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0107】
[比較例19]
7kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を1.9倍、TD方向の延伸倍率を7.4倍にし、ダブルプライフィルムの幅を363mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0108】
[比較例20]
11kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を2.2倍、TD方向の延伸倍率を7.4倍にし、ダブルプライフィルムの幅を363mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0109】
[比較例21]
15kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を2.5倍、TD方向の延伸倍率を7.4倍にし、ダブルプライフィルムの幅を363mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0110】
[比較例22]
4kg/hrの押出速度とし、MD方向の延伸倍率を4.1倍、TD方向の延伸倍率を5.6倍にし、ダブルプライフィルムの幅を274mmにし、延伸温度を35℃にし、ダブルプライフィルムの幅を273mmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0111】
[比較例23]
4kg/hrの押出速度にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0112】
[比較例24]
14kg/hrの押出速度にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で作製することで、ラップフィルムの巻回体を得た。評価結果を表2に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1に示すとおり、実施例1~15で得られたラップフィルムは、スリッターカッターでカットする際のフィルムの裂けがないため生産性に優れ、フィルムをカットした際の鋸刃に沿った直進カット性にも優れていた。
図1
図2