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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 31/00 20060101AFI20240417BHJP
   H02P 25/08 20160101ALI20240417BHJP
   H02P 29/68 20160101ALI20240417BHJP
【FI】
H02P31/00
H02P25/08
H02P29/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020163135
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055615
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏昭
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-337072(JP,A)
【文献】特開2002-272176(JP,A)
【文献】特開2018-207684(JP,A)
【文献】特開2001-292592(JP,A)
【文献】特開2007-244070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P4/00
21/00-25/03
25/04
25/08-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータに接続されるブリッジ回路にゲート信号を印加するゲート駆動出力部と、
前記ブリッジ回路に供給される電源を平滑化するコンデンサと、
を有するモータ制御装置であって、
前記ブラシレスモータに備えられたコイルのインダクタンスの変化が基準値以内であるロータの回転角度を相毎に記憶する記憶部と、
前記ロータの回転角度を検出する回転角検出部と、
前記記憶部を参照し、前記検出された回転角度に基づいて前記インダクタンスの変化が基準値以内である相に対し前記コンデンサから放電する指令を、前記ゲート駆動出力部に出力する指令出力部と、
を有し、
前記コンデンサから放電をする抵抗と、
前記抵抗の温度を検出する温度センサと、
前記検出された温度が基準値以上である場合には、前記指令出力部によって前記指令を出力すると判定し、前記検出された温度が基準値未満である場合に、前記抵抗に対して前記コンデンサの放電を行うよう判定する放電判定部と、
を有するモータ制御装置。
【請求項2】
前記指令出力部は、
前記ロータの回転に応じて前記検出される回転角度が更新されると、当該更新された後の回転角度に基づいて該当する相を特定し、特定された相に対し前記コンデンサから放電する指令を、前記ゲート駆動出力部に出力する
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
ブラシレスモータに接続されるブリッジ回路にゲート信号を印加するゲート駆動出力部と、
前記ブリッジ回路に供給される電源を平滑化するコンデンサと、
を有するモータ制御装置におけるモータ制御方法であって、
回転角検出部が、前記ブラシレスモータのロータの回転角度を検出し、
指令出力部が、前記ブラシレスモータに備えられたコイルのインダクタンスの変化が基準値以内であるロータの回転角度を相毎に記憶する記憶部を参照し、前記検出された回転角度に基づいて前記インダクタンスの変化が基準値以内である相に対し前記コンデンサから放電する指令を、前記ゲート駆動出力部に出力するものであり、
温度センサが、前記コンデンサから放電をする抵抗の温度を検出し、
放電判定部が、前記検出された温度が基準値以上である場合には、前記指令出力部によって前記指令を出力すると判定し、前記検出された温度が基準値未満である場合に、前記抵抗に対して前記コンデンサの放電を行うよう判定する、
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、モータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(電気自動車)駆動用等の比較的大電力を扱うモータのコントローラ(制御回路)においては、インバータの入力部に大容量のコンデンサが用いられることがある。このようなコントローラの起動時には、コンデンサへの突入電流を防止するためにコンタクタをON(閉)する前に、プリチャージが行われている。また、コントローラ停止時においても、安全性の観点から、コンデンサの電荷を放出するためにディスチャージが行われている。
プリチャージやディスチャージを行うためには、セメント抵抗等の高電力対応の抵抗が使用されることが多いが、コントローラの小型化のためにチップ抵抗器が使用される場合もある。また、コスト低減のためプリチャージとディスチャージを同一の抵抗で実施する場合もある。
そのため、チップ抵抗器を使用する場合は、抵抗温度が上昇しやすいため、抵抗近傍の温度をモニタし、その温度上昇が許容範囲内であることを監視しながら使用する必要がある。
また、モータの回転とは逆方向に回転する通電をすることで、コンデンサの残留電圧を速やかに放電する通電制御装置もある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3801731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抵抗近傍の雰囲気温が高い状態において、コントローラの起動、停止が連続的に繰り返され、抵抗温度が高くなった場合は、抵抗の破損防止のため抵抗への通電が規制されてしまいプリチャージ、ディスチャージができなくなる恐れがある。特に異常発生時にシステムの動作を停止させる必要がある場面では、ディスチャージができないとシステムの安全確保の面で課題となる。
一方、モータの回転方向とは逆方向に回転する通電をすることでコンデンサの残留電圧を放電する場合には、モータの回転方向とは逆方向に回転させるような指令が行われるため、ブレーキを発生させる状態となってしまう。そのためモータの挙動に影響が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、モータに与える挙動を低減させつつ、コンデンサの電荷を放電することができるモータ制御装置、モータ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、ブラシレスモータに接続されるブリッジ回路にゲート信号を印加するゲート駆動出力部と、前記ブリッジ回路に供給される電源を平滑化するコンデンサと、を有するモータ制御装置であって、前記ブラシレスモータに備えられたコイルのインダクタンスの変化が基準値以内であるロータの回転角度を相毎に記憶する記憶部と、前記ロータの回転角度を検出する回転角検出部と、前記記憶部を参照し、前記検出された回転角度に基づいて前記インダクタンスの変化が基準値以内である相に対し前記コンデンサから放電する指令を、前記ゲート駆動出力部に出力する指令出力部と、を有し、前記コンデンサから放電をする抵抗と、前記抵抗の温度を検出する温度センサと、前記検出された温度が基準値以上である場合には、前記指令出力部によって前記指令を出力すると判定し、前記検出された温度が基準値未満である場合に、前記抵抗に対して前記コンデンサの放電を行うよう判定する放電判定部と、を有する。
【0007】
また、本発明の一態様は、ブラシレスモータに接続されるブリッジ回路にゲート信号を印加するゲート駆動出力部と、前記ブリッジ回路に供給される電源を平滑化するコンデンサと、を有するモータ制御装置におけるモータ制御方法であって、回転角検出部が、前記ブラシレスモータのロータの回転角度を検出し、指令出力部が、前記ブラシレスモータに備えられたコイルのインダクタンスの変化が基準値以内であるロータの回転角度を相毎に記憶する記憶部を参照し、前記検出された回転角度に基づいて前記インダクタンスの変化が基準値以内である相に対し前記コンデンサから放電する指令を、前記ゲート駆動出力部に出力するものであり、温度センサが、前記コンデンサから放電をする抵抗の温度を検出し、放電判定部が、前記検出された温度が基準値以上である場合には、前記指令出力部によって前記指令を出力すると判定し、前記検出された温度が基準値未満である場合に、前記抵抗に対して前記コンデンサの放電を行うよう判定するモータ制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、モータに与える挙動を低減させつつ、コンデンサの電荷を放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態によるモータ制御装置10を含むモータ装置1の構成を示す概略構成図である。
図2】ディスチャージタイミング記憶部158に記憶されるモータ特性データの一例を示す図である。
図3】モータ制御装置10の動作を説明するフローチャートである。
図4】放電経路の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるモータ制御装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態によるモータ制御装置10を含むモータ装置1の構成を示す概略構成図である。
【0011】
《モータ装置1》
モータ装置1は、モータ制御装置10と、バッテリ20と、コンタクタ(継電器)30と、SR(Switched reluctance)モータ40と、回転センサ50と、電流センサ60を含む。
モータ制御装置10は、モータ装置1の各部を制御する。このモータ制御装置10は、SRモータ40の動作を制御するコントローラとして機能する。
バッテリ20は、モータ装置1の各部に電源を供給する。バッテリ20の第1端子(例えばプラス端子)は、コンタクタ30に接続され、バッテリ20の第2端子(例えばマイナス端子)は、モータ制御装置10に接続される。
コンタクタ30は、SRモータ40を駆動するインバータ140とバッテリ20との間に接続され、バッテリ20からインバータ140への電力供給をオンとオフのいずれかに切り換える。
【0012】
SRモータ40は、モータ制御装置10のインバータ140に接続される。SRモータ40は、U相のコイル40U、V相のコイル40V、W相のコイル40Wを有する。SRモータ40はブラシレスモータの一例である。
回転センサ50は、SRモータ40に設けられたロータの回転に応じた信号を検出する。具体的に、回転センサ50は、ロータの回転角度を検出し、回転角度を表す検出信号をモータ制御装置10に出力する。回転センサ50は、例えばレゾルバを用いることができる。
電流センサ60は、インバータ140からSRモータ40に供給される電流を検出し、検出結果をモータ制御装置10の制御回路150に出力する。電流センサ60は、SRモータ40のU相、V相、W相のそれぞれについて個別に電流を検出することができる。
【0013】
《モータ制御装置10》
モータ制御装置10は、プリチャージ・ディスチャージ回路110と、コンデンサ120と、電圧センサ130と、インバータ140と、制御回路150とを含む。
このモータ制御装置10は、コンデンサ120を放電(ディスチャージ)する場合、SRモータ40を用いた放電と、プリチャージ・ディスチャージ回路110を用いた放電とのうちいずれかにて放電する機能を有する。
【0014】
《プリチャージ・ディスチャージ回路110》
プリチャージ・ディスチャージ回路110は、スイッチ111と、スイッチ112と、抵抗113と、温度センサ114を含む。
プリチャージ・ディスチャージ回路110は、制御回路150のスイッチ制御部155から出力される駆動信号に従って、スイッチ111とスイッチ112のオンオフを切り替えることで、抵抗113を介してコンデンサ120の充電をする。また、プリチャージ・ディスチャージ回路110は、制御回路150のスイッチ制御部155から出力される駆動信号に従って、スイッチ111とスイッチ112のオンオフを切り替えることで、コンデンサ120に蓄積された電荷を抵抗113によって放電することもできる。
スイッチ111は、スイッチング素子が用いられる。スイッチ111のドレインがバッテリ20の第1端子に接続され、ソースがスイッチ112のドレインに接続される。
スイッチ112は、スイッチング素子が用いられる。スイッチ112のドレインがスイッチ111のソースに接続され、ソースがバッテリ20の第2端子に接続される。
【0015】
抵抗113は、第1端子がスイッチ111のソースとスイッチ112のドレインとの接続点に接続され、第2端子がコンタクタ30の第2端子とコンデンサ120の第1端子との接続点に接続される。抵抗113は、スイッチ111とスイッチ112とのオンオフの組み合わせに応じて、抵抗113を介してコンデンサ120の充電または放電をする。すなわち、抵抗113は、プリチャージ用の抵抗として用いることができ、また、ディスチャージ用の抵抗としても用いることもできる。なお、抵抗113を、プリチャージ用の抵抗として用い、ディスチャージ用として用いなくてもよい。
温度センサ114は、抵抗113の近傍に設けられ、抵抗113の温度を検出し、検出結果を制御回路150に出力する。温度センサ114が、抵抗113の温度を検出することで、コンデンサ120を充電または放電をすることに起因して抵抗113に発生する熱を検出することができる。
【0016】
《コンデンサ120》
コンデンサ120は、第1端子がコンタクタ30とインバータ140との間に接続され、第2端子がバッテリ20の第2端子とインバータ140との間に接続される。コンデンサ120は、コンタクタ30を介して供給されるバッテリ20からの電源を平滑化する。例えば、コンデンサ120は、バッテリ20からインバータ140に流れる電流や電圧を平滑化することで電源を安定化させる。
【0017】
《電圧センサ130》
電圧センサ130は、コンデンサ120に対して並列に接続される。電圧センサ130は、コンデンサ120の電圧を測定し、測定結果を制御回路150に出力する。
【0018】
《インバータ140》
インバータ140は、U相のコイル40U、V相のコイル40V、及びW相のコイル40Wのそれぞれに接続されおり、制御回路150から供給される駆動信号に応じてスイッチをオンオフすることで、この駆動信号に応じた電圧をSRモータ40に出力する。
【0019】
インバータ140は、複数のスイッチング素子SW及び複数のダイオードDを備える。
本実施形態では、スイッチング素子SWがn型チャネルのFET(Field Effective Transistor)である場合について説明するが、これに限定されず、例えば、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)、及びBJT(bipolar junction transistor)であってもよい。
【0020】
複数のスイッチング素子SWは、U相、V相、及びW相の3相ブリッジ接続された6つのスイッチング素子SWUH,SWUL,SWVH,SWVL,SWWH,SWWLを備えている。
複数のダイオードDは、6つのダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLを備えている。
【0021】
スイッチング素子SWUHは、ドレインがコンタクタ30の第2端子に接続され、ソースがダイオードDULのカソードに接続される。ダイオードDULのアノードは、バッテリ20の第2端子に接続される。
ダイオードDUHは、カソードがコンタクタ30の第2端子に接続され、アノードがスイッチング素子SWULのドレインに接続される。スイッチング素子SWULのソースは、バッテリ20の第2端子に接続される。
【0022】
スイッチング素子SWVHは、ドレインがコンタクタ30の第2端子に接続され、ソースがダイオードDVLのカソードに接続される。ダイオードDVLのアノードは、バッテリ20の第2端子に接続される。
ダイオードDVHは、カソードがコンタクタ30の第2端子に接続され、アノードがスイッチング素子SWVLのドレインに接続される。スイッチング素子SWVLのソースは、バッテリ20の第2端子に接続される。
【0023】
スイッチング素子SWWHは、ドレインがコンタクタ30の第2端子に接続され、ソースがダイオードDWLのカソードに接続される。ダイオードDWLのアノードは、バッテリ20の第2端子に接続される。
ダイオードDWHは、カソードがコンタクタ30の第2端子に接続され、アノードがスイッチング素子SWWLのドレインに接続される。スイッチング素子SWWLのソースは、バッテリ20の第2端子に接続される。
【0024】
スイッチング素子SWUHとダイオードDULとの接続点には、SRモータ40のU相のコイル40Uの一端が接続され、スイッチング素子SWULとダイオードDUHとの接続点には、U相のコイル40Uの他端が接続される。
スイッチング素子SWVHとダイオードDVLとの接続点には、SRモータ40のV相のコイル40Vの一端が接続され、スイッチング素子SWVLとダイオードDVHとの接続点には、V相のコイル40Vの他端が接続される。
スイッチング素子SWWHとダイオードDWLとの接続点には、SRモータ40のW相のコイル40Wの一端が接続され、スイッチング素子SWWLとダイオードDWHとの接続点には、W相のコイル40Wの他端が接続される。
【0025】
《制御回路150》
制御回路150は、起動・停止認識処理部151と、温度検出部152と、電圧検出部153と、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154と、スイッチ制御部155と、ロータ位置検出部156と、モータ駆動制御部157と、ディスチャージタイミング記憶部158と、ディスチャージ指令出力部159と、ゲート駆動出力部160とを含む。この制御回路150は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてもよい。
【0026】
起動・停止認識処理部151は、モータ装置1の外部に設けられる上位装置(例えばECU(Electronic Control Unit))から入力される、モータ制御装置10を起動するか停止するかを表す起動SW信号を入力し、起動SW信号に基づいて、モータ制御装置10を起動するか停止するかを識別する。また起動・停止認識処理部151は、フェイルセーフ信号が入力された場合には、モータ制御装置10を停止すると認識する。起動・停止認識処理部151は、起動SW信号が起動を表す場合には、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に起動を指示する指令を出力し、起動SW信号が停止を表す場合には、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に停止を指示する指令を出力する。
【0027】
温度検出部152は、温度センサ114によって検出された結果(例えばアナログ値)を入力し、温度センサ114から得られた結果に基づいて温度データ(例えばデジタル値)を生成し、温度データをプリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に出力する。
電圧検出部153は、電圧センサ130によって検出された結果(例えばアナログ値)を入力し、電圧センサ130から得られた結果に基づいて電圧データ(例えばデジタル値)を生成し、電圧データをプリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に出力する。
【0028】
プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、起動・停止認識処理部151からの入力に基づいて、コンデンサ120にプリチャージ(充電)を行うか、コンデンサ120のディスチャージ(放電)を行うかを判定する。
例えば、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、起動・停止認識処理部151からモータ制御装置10を起動することを示す信号が入力されると、コンデンサ120に充電を行うと判定し、スイッチ制御部155に対してプリチャージ処理をするよう指示を出力する。
また、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、起動・停止認識処理部151からモータ制御装置10を停止することを示す信号が入力されると、コンデンサ120の放電を行うと判定する。ここで、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、コンデンサ120を放電するにあたり、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、SRモータ40を用いて放電をする第1放電モードと、抵抗113を用いて放電する第2放電モードとのいずれの放電モードによって放電するかを判定する。
プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、温度センサ114によって抵抗113の温度を検出した検出結果を、温度検出部152から取得し、この取得した検出結果に基づく温度が基準温度以上である場合には、ゲート駆動出力部160によって放電指令を出力すると判定し(第1放電モード)、検出された温度が基準温度未満である場合に、抵抗113に対してコンデンサ120の放電を行うよう判定(第2放電モード)する。
基準温度は、任意に決められていてもよいが、例えば、抵抗113の温度の許容範囲の上限値に応じて決めるようにしてもよい。
プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、第1放電モードにて放電すると判定した場合には、ディスチャージ指令出力部159に放電を行うよう指令を出力し、第2放電モードにて放電すると判定した場合には、スイッチ制御部155に放電を行うよう指令を出力する。
【0029】
また、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、放電を行うと判定した場合、電圧検出部153から得られる電圧の検出結果を参照し、放電終了電圧まで低下したか否かに基づいて、コンデンサ120の放電が終了したか否かを判定する。放電終了電圧は、例えば、0V程度のいずれかの電圧を予め記憶しておくようにしてもよい。
【0030】
また、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、コンデンサ120を放電する場合において、プリチャージ・ディスチャージ回路110に故障または不具合がある場合には、第2放電モードを用いず、第1放電モードにて放電すると判定することもできる。この場合、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、プリチャージ・ディスチャージ回路110に故障あるいは不具合があると検出された場合に、抵抗113の温度に関わらず、第1放電モードで放電すると判定する。プリチャージ・ディスチャージ回路110に故障あるいは不具合があるか否かの検出は、例えば、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154が、第2放電モードで放電すると判定した場合であって、電圧検出部153によって検出された電圧が、第2放電モードで放電すると判定されてからの経過時間が基準時間を経過しても、基準電圧まで低下しなかった場合である。基準時間や基準電圧は、予め決められていてもよい。また、プリチャージ・ディスチャージ回路110に故障あるいは不具合があるか否かの検出は、例えば、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154が、プリチャージ・ディスチャージ回路110に断線があると判定された場合であってもよい。この断線の有無の判定は、モータ制御装置10内に断線検知用の回路を設け、この回路からの検出結果を参照するようにしてもよい。
これにより、抵抗113の温度が基準値よりも高い場合、または、プリチャージ・ディスチャージ回路110に故障等が発生した場合に、SRモータ40のコイルを利用してコンデンサ120を放電することができる。なお、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、コンデンサ120の放電を行う場合に、第1放電モードと第2放電モードのいずれかを選択することができるが、この選択を行わずに、常に第1放電モードのみで放電するようにしてもよい。すなわち、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、第2放電モードを備えず、コンデンサ120からの放電を行う場合にSRモータ40を用いればよい。
【0031】
また、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、第1放電モードで放電すると判定した場合には、ディスチャージ指令出力部159に対してディスチャージ処理をするよう指示(制御信号)を出力し、第2放電モードで放電すると判定した場合には、スイッチ制御部155に対してディスチャージ処理をするよう指示(制御信号)を出力する。
【0032】
スイッチ制御部155は、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154から出力される制御信号に基づいて、スイッチ111とスイッチ112のいずれかに駆動信号を出力する。
例えば、スイッチ制御部155は、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154からプリチャージ処理をするよう指示を受けた場合には、スイッチ111のゲートにオン信号を出力し、スイッチ112のゲートにオフ信号を出力する。これにより、バッテリ20から供給される電源が抵抗113を介してコンデンサ120に供給されることで、コンデンサ120に対する充電が行われる。
また、スイッチ制御部155は、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154からディスチャージ処理をするよう指示を受けた場合には、スイッチ111のゲートにオフ信号を出力し、スイッチ112のゲートにオン信号を出力する。これにより、コンデンサ120に蓄積された電荷が抵抗113に供給されることで、コンデンサ120の放電が行われる。
【0033】
ロータ位置検出部156は、回転センサ50が出力する信号に基づいて、SRモータ40のロータの回転角(ロータの回転位置)を検出して、その検出結果をモータ駆動制御部157、ディスチャージ指令出力部159に出力する。ロータ位置検出部156は、回転センサ50から順次回転角を検出し、都度、ディスチャージ指令出力部159に回転角の検出結果を出力する。
【0034】
モータ駆動制御部157は、電流センサ60の検出結果と、ロータ位置検出部156の検出結果と、外部装置(例えばECU等)から得られる駆動指令を入力し、これらに基づいてSRモータ40の駆動を制御する制御信号をゲート駆動出力部160に出力する。
【0035】
ディスチャージタイミング記憶部158は、ブラシレスモータに備えられたコイルのインダクタンスの変化が基準値以内であるロータの回転角度を相毎に記憶する。ここで基準値は、予め定めておくことができる。また、インダクタンスの変化は、インダクタンスの傾きであってもよい。
ここで、図2は、ディスチャージタイミング記憶部158に記憶されるモータ特性データの一例を示す図である。この図において、縦軸はSRモータ40に備えられた各コイル(コイル40U、コイル40V、コイル40W)の回転角度(電気角)毎のインダクタンスを示すグラフである。ディスチャージタイミング記憶部158には、このようなグラフ、または、このグラフに基づくデータであって電気角とインダクタンスとを対応付けたテーブルを記憶する。
このモータ特性データは、電気角の一定範囲において、インダクタンスの変化が基準値以内となるロータの回転角度が特定できればよい。例えば、電気角が0°から約45°においては、W相について、インダクタンスの値が概ね一定であるため、インダクタンスの変化が基準値以内に該当する。
同様に、電気角が約45°から約70°においてはU相、電気角が約70°から約165°においてはV相、電気角が約165°から約195°においてはW相、電気角が約195°から約285°においてはU相、のように、あるロータの回転角度の範囲において、いずれかの相のインダクタンスの値が概ね一定となっている。このように、モータ特性データは、インダクタンスの値が概ね一定となる電気角の範囲が特定できるようになっている。以下、インダクタンスの値が概ね一定となる電気角の範囲を放電目標区間ともいう。
このようなモータ特性データは、モータ制御装置10に接続されるモータによって異なる。そのため、SRモータ40の各コイルのインダクタンスについて実験を行うことで求めておき、この実験結果に基づいてモータ特性データを得るようにしてもよい。
【0036】
また、この例では、ある電気角の範囲において、インダクタンスの変化が概ね一定になる相は1つの相だけであるが、モータの構成(ロータ突極幅、ステータ突極幅)等によっては、2つの相となる場合もあり、また、インダクタンスの変化が概ね一定となる電気角の区間が短くなったり、あるいは広くなる場合もある。このような場合であっても、モータ特性データとして用いることができる。
【0037】
ここで、ある相においてインダクタンスが概ね変化しない電気角の範囲を特定しておくことで、その相に通電をしても、モータの出力トルクが一定以下(例えば、出力トルクがほぼ0)とすることができる。式(1)は、モータのトルクTを求める式を表す。
【数1】
この式(1)から、SRモータ40のトルクTは、インダクタンスの変化に依存し、インダクタンスの変化が小さいほど、トルクTが小さくなることを示す。そのため、コンデンサ120から放電する場合、インダクタンスの変化が最小の相に対して通電することで、出力トルクを最小(ほぼゼロ)とすることができるため、コンデンサから放電したとしても、SRモータ40の挙動に与える影響を抑制しつつ、コンデンサの電荷を放電することが可能となる。
【0038】
ディスチャージタイミング記憶部158は、記憶媒体、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。このディスチャージタイミング記憶部158は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0039】
ディスチャージ指令出力部159は、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154からディスチャージ処理をする指示が入力されると、ディスチャージタイミング記憶部158を参照することで、ロータ位置検出部156によって検出された回転角度に基づいてインダクタンスの変化が基準値以内である相に対しコンデンサから放電する指令を、ゲート駆動出力部160に出力する。
例えば、ディスチャージ指令出力部159は、ロータ位置検出部156から得られる回転角度(電気角)100°である場合には、ディスチャージタイミング記憶部158に記憶されたモータ特性データを参照することで、インダクタンスの変化が基準値以内である相がV相であると特定する。そして、ディスチャージ指令出力部159は、V相に対してコンデンサから放電する指令をゲート駆動出力部160に出力する。また、ディスチャージ指令出力部159は、ロータ位置検出部156から得られる回転角度(電気角)180°である場合には、ディスチャージタイミング記憶部158に記憶されたモータ特性データを参照することで、インダクタンスの変化が基準値以内である相がW相であると特定する。そして、ディスチャージ指令出力部159は、W相に対してコンデンサから放電する指令をゲート駆動出力部160に出力する。ディスチャージ指令出力部159は、ロータの回転に応じて検出される回転角度が更新されると、当該更新された後の回転角度に基づいて該当する相を特定し、特定された相に対しコンデンサ120から放電する指令を、ゲート駆動出力部160に出力する。
ディスチャージ指令出力部159は、モータ制御装置10の電源をオフにする等によって停止する場合において、SRモータ40のロータが惰性で回転しており、ロータの回転角度が変わったとしても、その時点の回転角度を検出し、その時の角度においてインダクタンスが平坦な相を特定し、その相を指定しつつ放電する指令を、ゲート駆動出力部160に出力することができる。
【0040】
また、ディスチャージ指令出力部159は、コンデンサ120を放電する場合に、電流センサ60から電流の検出結果を取得し、コンデンサ120の放電によってSRモータ40に流れる電流値を監視する。ディスチャージ指令出力部159は、この電流値が基準電流値以内になるように通電するようゲート駆動出力部160に指令を出力する。基準電流値は、インバータ140に設けられた各スイッチング素子の許容電流を超えないように考慮して予め決められた値であってもよい。このように、コンデンサ120を放電する場合にSRモータ40に流れる電流値を監視することにより、コンデンサ120を放電する場合であっても、インバータ140の各スイッチング素子の許容電流を超えないようにして放電することができる。
【0041】
ゲート駆動出力部160は、ディスチャージ指令出力部159から、放電対象の相が指定されるとともに、コンデンサから放電する指令が入力されると、指定された相に通電するように、インバータ140の各スイッチング素子の駆動信号を決定し、インバータ140に出力する。例えば、ゲート駆動出力部160は、インバータ140における各スイッチング素子のそれぞれをオン状態又はオフ状態にする通電パターンを決定しインバータ140に出力する。この通電パターンは、例えば、スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御するためのスイッチングパターンである。これにより、インバータ140の各スイッチング素子のオンオフタイミングが決定され、この駆動信号に応じてスイッチング素子が駆動される。
【0042】
次に、上述したモータ制御装置10の動作について説明する。
図3は、モータ制御装置10の動作を説明するフローチャートであり、図4は、放電経路の一例を説明する図である。このフローチャートでは、モータ制御装置10の停止処理を行う場合の動作を説明する。
ここでは、起動・停止認識処理部151は、外部から入力される起動SW信号が停止を表している場合に、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に停止を指示する指令を出力する。この指令が入力されることで、モータ制御装置10のシステム停止処理が開始される。
【0043】
プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、停止を指示する指令が入力されると、温度検出部152から温度データを取得する。ここでは、温度センサ114は抵抗113の温度を測定する。温度検出部152は、所定の時間毎に、温度センサ114によって検出された検出結果を取り込み、温度データをプリチャージ・ディスチャージ判断処理部154に出力する。プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、停止を指示する指令が入力されたときの温度データを温度検出部152から取り込み、抵抗113の温度が基準値以上であるか否かを判定することで、抵抗113が過熱状態であるか否かを判定する(ステップS101)。
プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、温度データが基準値以上である場合、抵抗が過熱状態であると判定し(ステップS101-YES)、温度データが基準値未満である場合、抵抗が過熱状態ではないと判定する(ステップS101-NO)。
【0044】
抵抗が過熱状態であると判定された場合、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、第1放電モードで放電すると判定し、ディスチャージ指令出力部159に、放電を行うよう指令を出力する。この指令が入力されると、ディスチャージ指令出力部159は、ロータ位置検出部156が検出した回転角の検出結果を取得し、ロータの位置を検出する(ステップS102)。そしてディスチャージ指令出力部159は、検出されたロータの位置に基づいてインダクタンスの変化が基準値以内である相を、ディスチャージタイミング記憶部158を参照して特定することで、SRモータ40のトルクが最小となる相がいずれであるかを判断する(ステップS103)。
例えば、現在のロータの位置に基づいて、トルクが最小となる相がU相であると特定された場合、ディスチャージ指令出力部159は、U相にコンデンサ120から放電することを示す指令をゲート駆動出力部160に出力する(ステップS104)。
ゲート駆動出力部160は、この指令を入力すると、指令によって示された相(例えばU相)に通電されるようにインバータ140の各スイッチング素子に駆動信号を印加する。これにより、コンデンサ120に蓄積された電荷がSRモータ40のコイル(例えばコイル40U)に対して放電される(図4符号R1)。ここでは、SRモータ40に電流が印加されるが、印加される相は、現在の回転位置においてはトルクがほぼ発生しないため、コンデンサ120から放電される電力によってSRモータ40の回転への影響が生じにくく、SRモータ40の挙動には影響が生じない。このようにして、SRモータ40を用いたとしても、ロータを回転させないように電荷を放電することができる。
【0045】
また、ディスチャージ指令出力部159は、電流センサ60からの電流の検出結果を参照し、コンデンサ120によって放電されたことによってSRモータ40のコイルに流れる電流の値を監視し、基準電流値以内になるように通電するようゲート駆動出力部160に指令を出力する。ゲート駆動出力部160は、この指令に基づいて、インバータ140の各スイッチング素子をPWM制御によって、デューティを変える等の制御する(ステップS105)。これにより、コンデンサ120の放電によってSRモータ40に流れる電流が過大にならないように制御する。
【0046】
一方、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達しているか否かを判定する(ステップS106)。プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達している場合には(ステップS106-YES)、ディスチャージ処理を終了するようディスチャージ指令出力部159に出力する。ディスチャージ指令出力部159は、ディスチャージ処理を終了する指令が入力されると、ディスチャージ指令出力部159は、ゲート駆動出力部160に対する放電の指示に出力を停止する(ステップS107)。これにより、ディスチャージ処理が停止する。
【0047】
一方、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達していない場合には(ステップS106-NO)、ディスチャージ指令出力部159に対する、放電を行う指令の出力を維持し、処理をステップS102に移行する。これにより、ディスチャージ指令出力部159は、ロータ位置検出部156が検出した回転角の検出結果を再度取得する。これにより、ロータの回転によってロータの位置が変わったとしても、そのときの現在位置に応じた、インダクタンスの変化が基準値以内である相を特定し、移行の処理を行うことができる。
【0048】
一方、ステップS101において、抵抗が過熱状態ではないと判定された場合(ステップS101-NO)、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、第2放電モードで放電すると判定し、スイッチ制御部155に対してディスチャージ処理をするよう指示を出力する。スイッチ制御部155は、ディスチャージ処理をする指令が入力されると、スイッチ111のゲートにオフ信号を出力し、スイッチ112のゲートにオン信号を出力する(ステップS108)。これにより、コンデンサ120に蓄積された電荷が抵抗113に供給されることで、コンデンサ120の放電が行われる(図4符号R2)。
【0049】
一方、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達しているか否かを判定する(ステップS109)。プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達している場合には(ステップS109-YES)、ステップS107に処理を移行し、ディスチャージ処理を終了するようディスチャージ指令出力部159に出力する。これにより、ディスチャージ処理が停止する。
一方、プリチャージ・ディスチャージ判断処理部154は、電圧検出部153によって検出された電圧が、放電終了電圧以下に到達していない場合には(ステップS109-NO)、スイッチ制御部155に対する、放電を行う指令の出力を維持し、処理をステップS108に移行する。
【0050】
また、上述した実施形態によれば、インダクタンスが平坦な特性(インダクタンスの変化が一定範囲内)となる相の回転角度の区間(放電目標区間)を予め記憶しておき、ロータの回転位置に応じて、インダクタンスが平坦である相に対して通電するようにした。これにより、モータのコイルに通電しても、トルクの発生がほぼないため、モータの正転方向及び逆回転方向のいずれの方向においても、モータの回転に影響が生じにくい。したがって、モータにブレーキが発生するようなことも無い。そのため、コンデンサ120からSRモータ40に対して放電したとしても、モータの挙動に影響が生じにくい。また、ロータが回転中であっても、惰性回転の状態で安全にコンデンサの電圧を下げることができる。
【0051】
なお、インダクタンスの変化が所定値以内となる区間(放電目標区間)については、モータの特性によって様々である。例えば、放電目標区間が広い(回転角度の範囲が広い)特性のモータや、放電目標区間が狭い特性のモータもあるが、このような場合は、放電目標区間が連続するように通電する相を切り替えるようにすればよい。また、放電目標区間が連続しない場合すなわち断続的に到来する場合には、放電目標区間が到来する毎にコンデンサ120から放電するようにしてもよい。
また、ある回転角度の範囲において2つの相についてインダクタンスの変化が一定値以内となる場合には、その2つの相に対して通電するようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態によれば、コンデンサ120を放電する場合に、抵抗が基準温度以上となっている場合や、破損等の不具合等が発生した場合であっても、SRモータ40を用いることで、コンデンサ120の電荷を放電することが可能となる。また、SRモータ40を用いて放電したとしても、SRモータ40の挙動には影響を生じにくくすることができる。また、抵抗が過熱状態であったり不具合があったとしても放電することができるため、システム(モータ制御装置10)停止時における安全性を向上させることができる。
【0053】
なお上述した実施形態において、抵抗の過熱が生じていたか否かを判定するようにしたが、この判定ステップは実行せずに、ディスチャージ処理をするようにしてもよい。この場合、コンデンサ120から放電する場合には、抵抗の温度によらずにSRモータ40のコイルに通電することで放電するようにしてもよい。この場合、プリチャージする場合には抵抗を用い、放電する場合には抵抗を用いずにモータのコイルを用いることができる。
また、上述した実施形態において、ステップS101において放電用の抵抗が過熱状態であったか否かを判定するようにしたが、このステップS101の処理を、抵抗を用いた放電回路に回路故障が発生しているか否かの判定処理に置き換え、回路故障が発生している場合に、モータのコイルを用いてディスチャージするようにしてもよい。また、ステップS101の処理に加え、抵抗が過熱状態ではない場合に、抵抗を用いた放電回路に回路故障が発生しているか否かの判定処理をさらに行うようにしてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態において、ステップS106において、コンデンサの電圧が閾値以下まで低下した場合にディスチャージ処理を停止するようにしたが、放電時間が予め決められた時間に到達したか否かを判定する判定処理に置き換え、放電を行った累積時間が、予め決められた時間に到達した場合に、ディスチャージ処理を終了するようにしてもよい。この場合、例えば、コンデンサの容量と、コイルへの通電時間から十分に放電が完了する時間を予め求めておき、この時間を目標放電時間とし、放電を開始してからの経過時間がこの目標放電時間に到達した場合に、ディスチャージを終了してもよい。
【0055】
上述した実施形態における制御回路150の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0056】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…モータ装置、10…モータ制御装置、20…バッテリ、30…コンタクタ、33…モータ制御装置、40…SRモータ、40U…コイル、40V…コイル、40W…コイル、50…回転センサ、60…電流センサ、110…プリチャージ・ディスチャージ回路、111…スイッチ、112…スイッチ、113…抵抗、114…温度センサ、120…コンデンサ、130…電圧センサ、140…インバータ、150…制御回路、151…起動・停止認識処理部、152…温度検出部、153…電圧検出部、154…プリチャージ・ディスチャージ判断処理部、155…スイッチ制御部、156…ロータ位置検出部、157…モータ駆動制御部、158…ディスチャージタイミング記憶部、159…ディスチャージ指令出力部、160…ゲート駆動出力部
図1
図2
図3
図4