(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ガスタービンの部品の補修方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/42 20060101AFI20240417BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20240417BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240417BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240417BHJP
C23C 4/11 20160101ALI20240417BHJP
C23C 4/08 20160101ALI20240417BHJP
【FI】
F23R3/42 C
F01D5/28
F02C7/00 D
F01D25/00 X
C23C4/11
C23C4/08
(21)【出願番号】P 2020191865
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】窪谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昭博
(72)【発明者】
【氏名】北山 和弘
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217246(JP,A)
【文献】特開2011-052686(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147282(WO,A1)
【文献】特開2012-000620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/42
F01D 5/28
F02C 7/00
F01D 25/00
C23C 4/11
C23C 4/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン部品の補修方法であって、
前記ガスタービン部品の
内側面である第一の面に、結合層およびこの結合層を介して形成されたセラミックス層からなる遮熱コーティングを形成するとともに、
前記ガスタービン部品の
外側面である第二の面の減肉部に、前記ガスタービン部材を形成する材料よりも耐酸化特性に優れる金属層を形成することを特徴と
し、
前記金属層は、Cr10~20wt%、Al5~20wt%含み、残部をNiまたはCoもしくはこれらの合金とする組成の合金層であり、前記ガスタービン部品の基材側から補修後の前記金属層の表面側に向けてCrおよび/またはAlの存在割合が増大している傾斜組成をしている、
ガスタービン部品の補修方法。
【請求項2】
前記セラミックス層は、前記ガスタービン部品側の近傍部の気孔率が前記ガスタービン部品の反対側表面の近傍部の気孔率よりも低い、請求項1に記載のガスタービン部の補修方法。
【請求項3】
前記セラミックス層は、前記結合層側界面の近傍部の気孔率が5~20%であり、前記結合層の反対側表面の近傍部の気孔率が15~30%である、請求項1または2に記載のガスタービン部の補修方法。
【請求項4】
前記セラミックス層は、厚さ方向に向けて、気孔率が段階的に異なる複数のセラミックス層からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスタービン部の補修方法。
【請求項5】
前記セラミックス層は、その燃焼ガス流と接触する面に、前記燃焼ガス流の方向に沿う方向に亀裂を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスタービン部の補修方法。
【請求項6】
前記金属層は、前記金属の理論密度に対し95%以上の密度を有するものである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスタービン部品の補修方法。
【請求項7】
前記金属層を、レーザー肉盛法、高速フレーム溶射法、プラズマ溶射法またはサスペンションプラズマ溶射法によって形成する、請求項
1~6のいずれか1項に記載のガスタービン部品の補修方法。
【請求項8】
前記金属層の表面に放熱性向上形状が形成されている、請求項
1~7のいずれか1項に記載のガスタービン部品の補修方法。
【請求項9】
前記ガスタービン部品は、燃焼器ライナ
ー、トランジションピース、シュラウドセグメント、動翼、静翼のいずれかである、請求項
1~8のいずれか1項に記載のガスタービン部品の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービンの部品の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン部品のうち、特に燃焼ガスにより高温に曝されるライナやトランジションピースなどは、運転時の振動や摺動、高温ガスによるエロージョン等の機械的な要因により、減肉や摩耗することが避けられない。そこで、ガスタービン部品の摩耗や損傷のしやすい部位を補強する方法(特許文献1)、硬質の皮膜を形成することで摩耗を抑制する方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3851161号公報
【文献】特願平9-191554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービン部品、特に燃焼器のライナやトランジションピースには、高温度条件下における長時間の運転寿命が求められている。近年、長期間運転に供された部品には、機械的な減肉だけではなく、高温酸化による化学的な要因による減肉が発生することが明らかになってきた。
【0005】
高温酸化による減肉は、高温部品の最終的な寿命を決定する要因になるため、このような酸化による減肉を補修しつつ、補修後においては、再度の酸化減肉の発生ならびに進行を抑制する補修方法が望まれている。
【0006】
また、高温ガスの流路であるライナやトランジションピースなどの内面側には、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating)(以下、本明細書において、TBCと記すことがある)と呼ばれる低熱伝導率のセラミックス(例えば、ジルコニアなど)により遮熱層が形成されることがある。
【0007】
TBC層は、燃焼ガスにより加熱される基材の温度を低減し、酸化減肉を抑制する効果がある。TBCを厚くすることで遮熱特性が向上し、基材の酸化減肉を低減することができるが、TBC層が厚くなると、剥離しやすくなるため、遮熱性を向上させられないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態によるガスタービン部品の補修方法は、高温部品の表面の減肉部に耐酸化性の緻密な金属層で被覆されるとともに、TBC層の劣化が防止ないし抑制されたガスタービン部品を補修する方法を提供する。
【0009】
したがって、本発明によるガスタービン部品の補修方法は、
ガスタービン部品の補修方法であって、
前記ガスタービン部品の第一の面に、結合層およびこの結合層を介して形成されたセラミックス層からなる遮熱コーティングを形成するとともに、
前記ガスタービン部品の第二の面の減肉部に、前記ガスタービン部材を形成する材料よりも耐酸化特性に優れる金属層を形成すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態は、長期間使用されたガスタービン部品、例えば燃焼器のライナやトランジションピース燃焼器ライナやトランジションピース部品、減肉部が補修され、さらにガスタービン部品の耐久性を向上させるTBCを補修する方法である。このような補修方法によれば、再び長時間用いることができるガスタービン部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】
図6Aは、補修前の燃焼器ライナの外観を示す斜視図であり、
図6Bは、
図6Aにおける酸化減肉部を拡大して示した燃焼器ライナの基材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態によるガスタービン部品の補修方法について添付図面を参照して説明する。
図6に示されるように、一般に、長期間運転に供された燃焼器ライナーやトランジッションピースなどのガスタービン部品1は、燃焼器ライナーの外面側が酸化によって減肉する。このような酸化減肉は、燃焼器ライナー1の外面側の冷却ガスの流れが不十分なことや、内面側の燃焼ガスにより、当初の設定以上に加熱されたために発生したものと考えられる。酸化減肉部1’の反対面の
セラミックス層3は、高温加熱により劣化の進行が速く、
セラミックス層の剥離が見られることがある。
【0013】
このような劣化したタービン部品に対して、本発明の実施形態によるガスタービン部品の補修方法を実施する際には、ガスタービン部品の外側面(第二の面)および/または内側面(第一の面)を有機または無機の洗浄液で洗浄することができる。例えば、ガスタービン部品の外側面(第二の面)に付着したスケールなどを除去することができる。また、特に、補修すべきタービン部品が劣化したTBCを有する物である場合、その劣化したTBCの全部あるいは一部(好ましくは全部)を、化学的処理ないし物理的処理などによって除去することが好ましい。そして、劣化したタービン部品の金属層、特に減肉部、が更なる使用に適さない程度まで脆弱化している場合には、その脆弱部を必要に応じて除去することができる。
【0014】
このような劣化したガスタービン部品を補修する際には、ガスタービン部品1の内側面(第一の面)のTBCの補修と、ガスタービン部品1の外側面(第二の面)の減肉部の補修がなされる。
【0015】
本発明の実施形態によって補修されたガスタービン部品は、補修された遮熱コーティングと、減肉部が補修された金属層とを有する。補修後のガスタービン部品は、
図1~
図5に示されるように、ガスタービン部品1の第一の面(内側面)に、結合層2およびこの結合層2を介して形成されたセラミックス層3からなる遮熱コーティング4を有しており、ガスタービン部品1の第二の面(外側面)の減肉部1’に耐酸化特性に優れる金属が肉盛りされた金属層5を有している。
【0016】
<実施形態(具体例)>
図1は、本発明の実施形態によって補修されたガスタービン部品の概要を示している。
図1に示される本発明の実施形態によって補修されたガスタービン部品1は、
ガスタービン部品1の第一の面(内側面)に、結合層2およびこの結合層2を介して形成されたセラミックス層3からなる遮熱コーティング4が形成されたものであって、
ガスタービン部品1の第二の面(外側面)の減肉部1’に、ガスタービン部材を形成する材料よりも耐酸化特性に優れる金属層4が形成されたものであり、
上記のセラミックス層3が、複数のセラミックス層(具体的には、二層のセラミックス層31および32)からなっており、
結合層2側のセラミックス層31が、気孔率が相対的に低いセラミックス層31であり、結合層2の反対側のセラミックス層32が、気孔率が相対的に高いセラミックス層32であるものである。
【0017】
すなわち、
図1に示されるセラミックス層3は、前記ガスタービン部品1側の近傍部の気孔率がガスタービン部品1の反対側表面の近傍部の気孔率よりも低いものである。セラミックス層3の結合層2側界面の近傍部の気孔率は、好ましくは5~20%であり、結合層2の反対側表面の近傍部の気孔率は、好ましくは15~30%である。
【0018】
そして、
図1に示されるセラミックス層3は、厚さ方向に向けて、気孔率が段階的に異なる複数のセラミックス層(具体的には、二層のセラミックス層31および32)からなっている。セラミックス層31は、気孔率が好ましくは5~20%のものであり、セラミックス層32は、気孔率が好ましくは15~30%のものである。
【0019】
なお、セラミック層3は、厚さ方向に向けて、気孔率が段階的に異なる三層以上のセラミックス層からなるものであってもよい(図示せず)。
【0020】
TBCを構成する結合層2は、NiCrやNiAlなど、耐酸化性に優れる材料が望ましく、MCrAlY(Mは、NiおよびCoを表す)で示される、CrやAlを多く含む耐酸化性により優れる材料が望ましい。セラミックス材料はZrO2やHfO2など、セラミックス材料の中でも熱伝導率の低い材料が望ましい。ZrO2はMgOやY2O3などの安定化元素を含有することで、機械的特性の向上させるDyやLaの酸化物を添加することで熱伝導率をより低減させることが出来るため、好ましい。
【0021】
TBCの施工方法は、電子ビーム等による物理蒸着(PVD)や加熱溶融した粉末材料を基材上に投射する溶射法などが挙げられるが、施工対象物である燃焼器部品が大型で、施工面積が大きいため、製膜速度が速い溶射法が望ましい。特に、融点の高いセラミックス材料の製膜に適したプラズマ溶射法によってTBCを施工することができる。
【0022】
TBCを構成するセラミックス層3は、結合層側に気孔率が低い緻密性の層が形成され、緻密層の上面に、より気孔率が高いセラミックス層が高いセラミックス層を形成することができる。運転後のTBCは、結合層とセラミックス層の界面で剥離していることがあって、この部分に密着性の優れた金属層を形成することが好ましい。気孔率の低い緻密性の金属層は、製膜時に金属層内に発生する残留応力の影響によって剥離しやすくなるため、金属層を厚くして遮熱性能を向上させることが困難である。気孔率を高めたTBCは製膜時に残留応力を低減するため、セラミックス層を厚くすることで遮熱性を向上させることが出来る。セラミックス層の気孔率は、製膜条件によって調整可能であり、溶射法の場合、プラズマを発生させる際の投入電力や、作動ガスの量、溶射距離、溶射粉末の粒径などの溶射条件により気孔率を変化させることが出来る。
【0023】
セラミックス層3全体の厚さは、基材の酸化減肉を抑制するため0.5~1.0mm、より好ましくは1.0~2.0mm程度とすることが望ましい。気孔率の低い層と高い層の厚さは、特に限定するものではなく、燃焼ガス温度や、冷却ガスの温度などの運転条件により調整することが出来るが、金属層形成時の残留応力を低減する観点から、気孔率の低いセラミックス層は、セラミックス層全体の厚さの5~20%程度とすることが望ましい。
【0024】
セラミックス層の最上面は燃焼ガスによるエロージョンが発生する可能性があるため、気孔率の高いセラミックス層は機械的に減肉させる可能性がある。そのため、
図2に示すように、非常に緻密で、金属層内に縦割れを有するセラミックス層33を形成することでエロージョンを抑制することができる。
【0025】
ガスタービン部品1の第二の面(外側面)の補修は、第二面の全体あるいはその一部分(例えば、減肉部1’を含む)の表面のスケールを除去した後に、行なうことが好ましい。
【0026】
減肉部1’に金属層5を形成する方法としては、任意の方法を採用をすることがきる。好ましくは、レーザー肉盛法、高速フレーム溶射法、プラズマ溶射法またはサスペンションプラズマ溶射法によって形成することができる。
【0027】
これらの中では、
図3に示されるように、金属層5を形成可能な金属粉末51を金属層形成部位に供給し、この金属粉末51をレーザー6によって加熱溶融させ、これを積層させることを含んでなるレーザー肉盛による金属層形成法が望ましい。また、高速の燃焼ガス中に溶融した粉末を投射することで金属層を形成する高速フレーム溶射法による金属層形成も好ましい。このうち、レーザー肉盛による金属層はより緻密になるため、金属層の耐酸化特性を向上させることができることから、特に好ましい。プラズマ溶射法による金属層は高速フレーム溶射法による金属層と比較して緻密性に劣るが、製膜後にレーザー加熱などで表面を緻密化することで、耐酸化性の高い金属層を得ることが出来る。プラズマ溶射法のなかでも、サスペンションプラズマ溶射法と呼ばれる、溶媒中に分散させた極微粉末を用いる方法では、通常のプラズマ溶射法と比較して非常に緻密な金属層を、後処理なしに得ることが出来るため、より好ましい。
【0028】
前記の傾斜組成をしている金属層5は、そのような傾斜組成の金属層が形成されるように、供給する金属粉末51の内容(例えば、組成等)を、金属粉末の供給場所に応じて適宜定めることによって形成することができる。例えば、ガスタービン部品の基材に近い部分の金属層5を形成するときは、Crおよび/またはAlの含有割合が相対的に低い合金からなる合金粉末を供給して金属薄膜を形成し、その上に、順次、Crおよび/またはAlの含有割合が次第に高くなっている合金粉末を供給して形成させた金属薄膜を累積することによって、傾斜組成の金属層5を形成することができる。
【0029】
所謂高速フレーム溶射法(具体的には、高速の燃焼ガス中に溶融した粉末を投射することで金属層を形成する溶射法)も有用であるが、レーザーによって加熱溶融させた粉末を積層させるレーザー肉盛法を採用することが特に好ましい。このようなレーザー肉盛によれば、緻密な金属層を形成することができ、金属層の耐酸化特性をより向上させることができる。ガスタービン部品の第二の面(外側面)の表面は、運転時に800℃から1000℃という温度になるため、ガスタービン部品1の基材を保護するために、金属層5は緻密であることが肝要である。
【0030】
レーザー肉盛による方法によれば、金属の密度を95%以上とすることで、基材を保護するために十分な耐酸化性を得ることができる。そして、レーザー肉盛法は、基材への入熱が少なく、ライナの内面側に施工されているTBCを剥離させずに金属層を施工することができるため、補修対象部品のTBCが剥離していない場合、補修の工数を削減することができる。
【0031】
金属層5を形成する金属の組成は、主として、基材を酸化から保護するための耐酸化性を考慮してその組成を定めることができる。本発明の実施形態では、AlやCr等の耐酸化性の金属元素を含む組成、好ましくは、AlやCr等の耐酸化性の金属元素を含む組成によって、Crを10~20wt%、Alを5~15wt%含むNiおよびCoの合金組成とすることで、基材と近い機械的特性を維持しつつ、耐酸化性を有する合金組成を得ることができる。
【0032】
ガスタービンの耐酸化金属層として用いられるMCrAlY合金(M=Ni、Co、Fe等を表す)の組成を用いることも有効である。MCrAlY系の合金に含まれるYやSiなどは、耐酸化合金表面に形成される保護性の酸化スケールの形成を助けるため、合金の耐酸化性を向上させることができる。
【0033】
減肉量が大きく、補修が必要な部分が深い場合は、
図4に示すように、CrやAlといった耐酸化性に寄与する成分を、耐酸化合金層の表面から基材側に向けて、Crおよび/またはAlの存在割合が増大するような傾斜組成とすることが有効である。CrやAl等を多く含むNiおよびCo合金は、高温部品に用いられる超合金と比較して硬くなるため、大きな補修が必要な場合、割れが発生しやすくなる。そのため減肉部について、AlやCrの少ない、基材と同等ないし近似する組成により補修し、表面側にAlやCrを多く含む耐酸化合金を施工することで、補修部の機械的特性を満足させつつ、表面の耐酸化性を有する金属層を得ることができる。
【0034】
金属層5の表面には、必要に応じて放熱性向上形状を形成することができる。
図5には、フィン形状の放熱性向上形状が示されている。このような放熱性向上形状が形成されているものは、冷却媒体への放熱が促進され、補修部分温度が低下するので、更なる酸化減肉を抑制することができる。フィンの加工方法は、機械加工やレーザー肉盛時に補修部位と合わせて成型する事ができる。フィンの形状のみに限らず、突起形状を設ける等、冷却面の表面積を増やし、補修部分の温度を低下させうる形状をとることができる。
【0035】
このようにして、燃焼器ライナやトランジションピースなどの高温部品の酸化減肉部の補修を行うことで、減肉部の温度が低減され、補修部がさらに酸化されることを防ぐことができる。
【0036】
この放熱性向上加工としては、肉盛した金属層5と冷却媒体との接触面積の向上や、冷却媒体を整流して冷却媒体の流速や接触方向、接触態様を制御することを可能にする、任意の加工方法を採用することができる。例えば、金属層5に放熱性向上形状7を形成して、例えば凹凸形状(好ましくは、フィン形状)とすることで、冷却媒体への放熱を促進し、補修部分の温度を低下させることによって、酸化減肉を抑制することができる。フィン形状は、機械加工やレーザー肉盛時に補修部位と合わせて成型することができる。フィン形状のみに限らず、突起形状を設ける等、冷却面の表面積を増やし、ガスタービン部品の温度を低下させうる形状をとることができる。
【0037】
このことによって、金属層5の放熱性が向上して、補修されたガスタービン部品、特に金属金属層4およびその周辺部、の温度をより効率的に低下させることができる。このことによって、酸化減肉の発生および進行を効果的に防止ないし抑制することができる。
【0038】
放熱性向上形状は、例えば、
図5に示されるように、金属層5を形成し、その後、金属層5の表面に、例えば研磨等の機械的手段を用い、例えば
図5に示されるように、フィン形状に加工することができる。また、金属層5を形成する際に、金属粉末の供給場所やレーザーの照射範囲、照射強度等を制御することによって、放熱性向上形状7を形成させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1:ガスタービン部品、1’:減肉部、2:結合層、3:セラミックス層、31:気孔率が相対的に低いセラミックス層、32:気孔率が相対的に高いセラミックス層、33:縦割れを有するセラミックス層、4:遮熱コーティング層(TBC)、5:金属層、51:金属粉末、6:レーザー、7:放熱性向上形状