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特許7474189サーボプレス機械及びサーボプレス機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】サーボプレス機械及びサーボプレス機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20240417BHJP
   B30B 1/26 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B30B15/14 B
B30B15/14 A
B30B1/26 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020209984
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096797
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055426(JP,A)
【文献】特開2016-123990(JP,A)
【文献】特開2019-104023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/14
B30B 15/28
B30B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換して被加工材料に対してプレス加工を行うサーボプレス機械であって、
所定のスライドモーションに基づいて前記スライドの昇降運動を制御する制御部と、
上昇中の前記スライドが所定の送り可能位置に達したときに、前記被加工材料を次工程に送る送り装置に送り指令を出力する指令出力部と、
前記送り装置による前記被加工材料の送り動作の完了を検出する検出器からの信号を検出する信号検出部とを含み、
前記制御部は、
上昇中の前記スライドが前記送り可能位置に達したときに、所定の第1加速度で前記スライドの減速を開始し、前記スライドが所定の最高位置に達したときに、前記第1加速度で前記スライドの加速を開始して前記スライドを下降させ、下降中の前記スライドが所定の検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出された場合には、前記スライドの速度が所定の速度に達するまで前記スライドの加速を継続し、下降中の前記スライドが前記検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出されなかった場合には、所定の第2加速度で前記スライドを減速させて前記スライドを前記送り可能位置で停止させる制御を行い、
前記第2加速度の絶対値は、前記第1加速度の絶対値より大であることを特徴とする、サーボプレス機械。
【請求項2】
請求項において、
下降中の前記スライドが前記検出チェック位置を通過する際の速度の絶対値は、上昇中の前記スライドが前記送り可能位置を通過する際の速度の絶対値よりも小さいことを特徴とするサーボプレス機械。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記検出チェック位置は、下降中の前記スライドを前記第2加速度で減速させた場合に、前記スライドを前記送り可能位置で停止させることができる位置であることを特徴とするサーボプレス機械。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項において、
前記スライドモーションは、振子モーションであることを特徴とするサーボプレス機械。
【請求項5】
回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換して被加工材料に対してプレス加工を行うサーボプレス機械の制御方法であって、
所定のスライドモーションに基づいて前記スライドの昇降運動を制御する制御ステップと、
上昇中の前記スライドが所定の送り可能位置に達したときに、前記被加工材料を次工程に送る送り装置に送り指令を出力する指令出力ステップと、
前記送り装置による前記被加工材料の送り動作の完了を検出する検出器からの信号を検出する信号検出ステップとを含み、
前記制御ステップでは、
上昇中の前記スライドが前記送り可能位置に達したときに、所定の第1加速度で前記スライドの減速を開始し、前記スライドが所定の最高位置に達したときに、前記第1加速度で前記スライドの加速を開始して前記スライドを下降させ、下降中の前記スライドが所定の検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出された場合には、前記スライドの速度が所定の速度に達するまで前記スライドの加速を継続し、下降中の前記スライドが前記検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出されなかった場合には、所定の第2加速度で前記スライドを減速させて前記スライドを前記送り可能位置で停止させる制御を行い、
前記第2加速度の絶対値は、前記第1加速度の絶対値より大であることを特徴とする、サーボプレス機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボプレス機械及びサーボプレス機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボプレス機械は、スライドの変速や停止・逆転を自由に行うことができる。特にアウトプットが上がる振子運転の振子モーション(振子の折り返し位置、折り返し位置に達するまでの減速時の加速度、減速開始位置、折り返し位置に停止してからの加速時の加速度、加速完了位置)の生成手法には様々な手法がある。振子運転を行う理由は、時間当たりの生産数の向上が目的であり、クランク角速度が同一であれば振子ストロークを小さくすることで、より生産数の向上が見込まれる。しかし、振子ストロークはいくらでも小さくできるわけではなく、振子モーション中に送り装置が材料(ワーク)を次工程へ送る必要があるため、振子の折り返し位置(最高位置)は、送り開始位置(送り可能位置)より高くする必要がある。特許文献1には、スライドが送り可能高さと待機高さ(最高位置)との間を移動している間に、ワークの搬送を行うプレスシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のプレスシステムでは、スライドは、送り可能高さを通過すると一定の加速度で減速し、待機高さの位置で停止したスライドは、所定時間後、一定の加速度で加速して降下を開始する。すなわち、上記のプレスシステムでは、スライドが最高位置に達するまでの減速時の加速度、及びスライドが最高位置に達してからの加速時の加速度が不必要に大きいことで、最高位置において無駄な待機時間が発生していた。また、不必要に大きなスライドの加速は、無駄なエネルギー消費を招いていた。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送り装置により送られた被加工材料を加工するサーボプレスにおけるスライドモーションを最適化することが可能なサーボプレス機械及びサーボプレス機械の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るサーボプレス機械は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換して被加工材料に対してプレス加工を行うサーボプレス機械であって、所定のスライドモーションに基づいて前記スライドの昇降運動を制御する制御部と、上昇中の前記スライドが所定の送り可能位置に達したときに、前記被加工材料を次工程に送る送り装置に送り指令を出力する指令出力部と、前記送り装置による前記被加工材料の送り動作の完了を検出する検出器からの信号を検出する信号検出部とを含み、前記制御部は、上昇中の前記スライドが前記送り可能位置に達したときに、所定の第1加速度で前記スライドの減速を開始し、前記スライドが所定の最高位置に達した後に、前記第1加速度で前記スライドの加速を開始して前記スライドを下降させ、下降中の前記スライドが所定の検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出された場合には、前記スライドの速度が所定の速度に達するまで前記スライドの加速を継続し、下降中の前記スライドが前記検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出されなかった場合には、所定の第2加速度で前記スライドを減速させて前
記スライドを前記送り可能位置で停止させる制御を行うことを特徴とするサーボプレス機械である。
【0007】
また本発明に係るサーボプレス機械の制御方法は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構によって、サーボモータの回転をスライドの往復直線運動に変換して被加工材料に対してプレス加工を行うサーボプレス機械の制御方法であって、所定のスライドモーションに基づいて前記スライドの昇降運動を制御する制御ステップと、上昇中の前記スライドが所定の送り可能位置に達したときに、前記被加工材料を次工程に送る送り装置に送り指令を出力する指令出力ステップと、前記送り装置による前記被加工材料の送り動作の完了を検出する検出器からの信号を検出する信号検出ステップとを含み、前記制御ステップでは、上昇中の前記スライドが前記送り可能位置に達したときに、所定の第1加速度で前記スライドの減速を開始し、前記スライドが所定の最高位置に達した後に、前記第1加速度で前記スライドの加速を開始して前記スライドを下降させ、下降中の前記スライドが所定の検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出された場合には、前記スライドの速度が所定の速度に達するまで前記スライドの加速を継続し、下降中の前記スライドが前記検出チェック位置に達するまでに前記検出器からの信号が検出されなかった場合には、所定の第2加速度で前記スライドを減速させて前記スライドを前記送り可能位置で停止させる制御を行うことを特徴とするサーボプレス機械の制御方法である。
【0008】
本発明によれば、スライドが送り可能位置に達したときに第1加速度でスライドの減速を開始し、スライドが最高位置に達したときに、スライドを一時停止させることなく、第1加速度でスライドの加速を開始してスライドを下降させることで、スライドの加減速時の加速度を必要最小限に抑えたスライドモーションを実現することができる。また、スライドが検出チェック位置に達するまでに被加工材料の送り動作の完了が検出できなかった場合には、第2加速度でスライドを減速させてスライドを送り可能位置で停止させることで、被加工材料の送り動作が正常に行われなかったときに金型部品が破損されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るサーボプレス機械の構成の一例を示す図。
図2】検出部による被加工材料の送り動作の完了の検出について説明するための図。
図3】本実施形態におけるスライドモーション(振子モーション)の一例を示す図。
図4】本実施形態における振子モーションの設計手法について説明するための図。
図5】本実施形態における振子モーションの設計手法について説明するための図。
図6】本実施形態における振子モーションの設計手法について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るサーボプレス機械の構成の一例を示す図である。サーボプレス機械1は、回転運動を直線運動に変換する偏心機構によってサーボモータ10の回転をスライド17の上下往復運動(往復直線運動、昇降運動)に変換し、スライド17の上下往復運動を利用して被加工材料C(例えば、シート状の材料)に対してプレス加工を施す。被加工材料Cは、外部装置である送り装置200(被加工材料Cを次工程に送る装置)によって供給され、被加工材料Cの送り動作の完了は、外部装置である検出器201(ミスフィード検出器)によって検出される。サーボプレス機械1は、サーボモータ10、エンコーダ11、ドライブシャフト12、ドライブギア13、メインギア14、クランクシャフト15、コネクティングロッド16、スライド17、ボルスタ18、制御装置100
を有する。
【0012】
サーボモータ10の回転軸にはドライブシャフト12が接続され、ドライブシャフト12にはドライブギア13が接続される。ドライブギア13にはメインギア14が噛み合わされ、メインギア14にはクランクシャフト15が接続され、クランクシャフト15にはコネクティングロッド16が接続される。クランクシャフト15とコネクティングロッド16とで偏心機構が形成される。この偏心機構によって、コネクティングロッド16に接続されたスライド17は、静止側のボルスタ18に対して昇降可能になる。なお、本実施形態では、スライド17が振子動作(上死点まで戻らない上下往復動作)を行うように制御される。スライド17には上金型19が装着され、ボルスタ18には下金型20が装着される。
【0013】
制御装置100は、制御部101、指令出力部102、信号検出部103を含む。制御部101は、記憶部に記憶された所定のスライドモーション(振子モーション)に基づいてスライド17の昇降運動を制御する。より詳細には、制御部101は、スライドモーションで規定されるスライド17の位置や速度の指令からモータ回転位置指令値を演算し、回転位置指令に基づいて、サーボモータ10の回転位置、回転速度及び電流の制御を行う。サーボモータ10の回転位置はサーボモータ10に取り付けられたエンコーダ11で検出される。
【0014】
指令出力部102は、上昇中のスライド17が所定の送り可能位置に達したときに、送り装置200に送り指令を出力する。この送り指令を受信した送り装置200は、被加工材料Cの送り動作を開始し、所定時間内に所定の送り量だけ被加工材料Cを送る。
【0015】
信号検出部103は、被加工材料Cの送り動作の完了を検出する検出器201からの信号(ON信号)を検出する。制御部101は、下降中のスライド17が所定の検出チェック位置に達するまでに検出器201からの信号(ON信号)が検出されなかった場合には、スライド17を減速して送り可能位置で停止させる。送り可能位置は、被加工材料Cの送り動作が可能になる位置(金型と被加工材料Cが干渉しなくなる高さ)であり、検出チェック位置は、送り可能位置よりも高く、スライドモーションの最高位置よりも低い位置である。すなわち、検出チェック位置は、送り装置200の送り時間Tf(後述)の経過後にスライド17が到達する位置であり、且つ、その位置から最高加速度(第2加速度)で下降中のスライド17を減速させれば送り可能位置で停止させることができる位置である。
【0016】
図2は、検出器201による被加工材料Cの送り動作の完了の検出について説明するための図である。図2の左側に示すように、送り動作の完了後のスライド17の下降中は、被加工材料Cの端部に、検出器201に備わるタッチセンサ202が接触している。続いて図2の中央に示すように、プレス加工が行われると、被加工材料Cとタッチセンサ202は非接触状態となる。続いて図2の右側に示すように、送り動作により被加工材料Cの端部とタッチセンサ202とが接近する。被加工材料Cが規定位置まで送られる(送り動作が完了する)と、再び被加工材料Cの端部とタッチセンサ202が接触することで検出器201からON信号が出力され、送り動作が正常に行われたと判断される。
【0017】
図3は、本実施形態におけるスライドモーション(振子モーション)の一例を示す図である。図中上側のグラフは、スライド位置の時間変化を示し、図中下側のグラフは、クランク角速度の時間変化を示す。また、図中実線は、正常運転時(被加工材料Cの送り動作が正常に行われた場合)の位置・角速度を示し、図中破線は、ミスフィード検出時(被加工材料Cの送り動作が正常に行われなかった場合)の位置・角速度を示す。
【0018】
本実施形態のスライドモーションは振子モーションであり、下死点から振子の折り返し位置(振子モーションの最高位置)までの距離が振子ストロークPSとなる。上昇中のスライド17が送り可能位置に達すると、送り装置200による被加工材料Cの送り動作が開始され、正常運転時においては、最高位置を通過して下降中のスライド17が検出チェック位置に達するまでに、検出器201からのON信号(送り動作の完了)が検出される。送り動作が開始されてから送り動作の完了が検出されるまでにかかる時間(スライド17が送り可能位置を通過してから検出チェック位置を通過するまでの時間)を送り時間Tfとする。
【0019】
上昇中のスライド17が所定の速度(例えば、プレス最高速度)で送り可能位置に達すると所定の第1加速度で減速を開始し、スライド17が最高位置に達すると同じ第1加速度で加速を開始して下降する。そして、下降中のスライド17が検出チェック位置に達するまでに検出器201からのON信号が検出された場合(送り動作が正常に行われた場合)には、所定の速度に達するまでスライド17の加速が継続される。一方、下降中のスライド17が検出チェック位置に達するまでに検出器201からのON信号が検出されなかった場合(ミスフィードが検出された場合)には、スライド17は所定の第2加速度で減速して送り可能位置で停止する。このように、ミスフィード検出時にスライド17を送り可能位置で急停止させることで、パイロットピン等の金型部品の破損を防止することができる。
【0020】
図4図6を用いて、本実施形態における振子モーションの設計手法について説明する。ここでは、上昇中のスライド17が送り可能位置に達してから最高位置を通過して再び送り可能位置に達するまでのモーションについて説明する。図中グラフの横軸は時間を示し、縦軸は、クランク回転速度(単位:rpm)を示す。なお、速度(rpm)は、クランクの回転方向を考慮せず絶対値で表す。図中実線は、正常運転時の速度の時間変化を示し、図中破線は、ミスフィード検出時の速度の時間変化を示す。
【0021】
また、プレス最高速度をVdとし、スライド17が送り可能位置を通過するときの時間を0とする。図4では、スライド17が送り可能位置を通過するときの速度と、その時点から送り時間Tfが経過したときの速度が、ともにVdとなっている。スライド17を急停止する間の加速度(第2加速度)は予め決まっており、速度Vdのときにミスフィードが検出されてから急停止によりスライド17が停止するまでの時間をTsとする。ここで、第2加速度の絶対値は第1加速度の絶対値以上である。なお、この第2加速度は、サーボモータ10の出力可能な最大トルク、サーボモータ10の軸上における被駆動部の慣性モーメント、連続ストローク数(spm)との関係で決まる。図中左側の三角形TLの面積は、スライド17が送り可能位置を通過してから最高位置に達するまでのクランクの回転量(スライド17の移動距離に対応)を表し、図中右側の三角形TRの面積は、スライド17が最高位置を通過してからミスフィードが検出されて急停止により停止するまでのクランクの回転量を示す。図4では、スライド17の送り可能位置通過後の減速時の加速度(クランク角速度)と、最高位置通過後の加速時の加速度を同一にする(加速及び減速をなるべく緩やかにする)ために、送り時間Tfの半分の時間(Tf/2)でスライド17が最高位置に達する(速度が0になる)ようにしている。しかし、この場合、三角形TLの面積に対して三角形TRの面積が大きく、スライド17はTfの時点で送り開始位置に達するため、ミスフィード検出時の急停止によるスライド17の停止位置(Tf+Tsの時点でのスライド位置)は、送り可能位置よりも低い位置となってしまう。
【0022】
そこで、図5に示すように、三角形TRの面積が三角形TLの面積と等しくなるような、時間Tfでの速度Va(Va<Vd)を算出する。このとき、急停止する間の加速度(Vd/Ts)は変わらないため、速度Vaのときにミスフィードが検出されてから急停止によりスライド17が停止するまでの時間は、Va/Ts’=Vd/Tsを満たす時間T
s’となる。すなわち、Vd×Tf/2=Va×(Tf+Ts’-Tf/2)を満たす速度Vaを算出する。しかし、この場合、時間Tfでの速度を変えたことで、減速時の加速度(Vd/(Tf/2))と加速時の加速度(Va/(Tf/2))が同一でなくなってしまう。
【0023】
そこで、図6に示すように、三角形TRの面積が三角形TLの面積と等しくなり、且つ、減速時の加速度と加速時の加速度が同一となるような、時間Tfでの速度Va及び時間Ts’と、スライド17が最高位置に達する時間Tf’とを算出する。すなわち、面積の条件であるVd×Tf’=Va×(Tf+Ts’-Tf’)を満たし、且つ、加速度の条件であるVd/Tf’=Va/(Tf-Tf‘)を満たす速度Va及び時間Tf’を算出する。本実施形態では、速度Vaの絶対値は速度Vdの絶対値よりも小さくなる。
【0024】
以上の設計手法により、上昇中のスライド17が速度Vdで送り可能位置に達すると第1加速度(Vd/Tf’)で減速を開始し、スライド17が最高位置に達すると第1加速度(Va/(Tf-Tf‘))で加速を開始して下降し、スライド17が検出チェック位置に達するTfの時点でミスフィードが検出された場合には、スライド17が第2加速度(Va/Ts’)で減速して送り可能位置で停止し、Tfの時点でミスフィードが検出されない(検出器201からのON信号が検出される)正常時には、速度Vdに達するまで第1加速度での加速が継続される振子モーションが実現される。
【0025】
本実施形態によれば、振子運転での振子折り返し時にスライド17を待機停止することなく、被加工材料Cの送り動作完了のチェックを最適な速度で実施可能となるため、生産効率の向上が見込める。また、送り時間Tf及びミスフィード検出による急停止を考慮しつつ、加速度を最小限に抑えることができ、且つ、振子ストロークPSを最小限にすることが可能となる。すなわち、加速及び減速を緩やかにし、無駄な待機停止や動作がなくなるため、省エネ効果や、サーボモータ10を駆動するためのエネルギー供給装置の容量削減が期待できる。
【0026】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0027】
1…サーボプレス機械、10…サーボモータ、11…エンコーダ、12…ドライブシャフト、13…ドライブギア、14…メインギア、15…クランクシャフト、16…コネクティングロッド、17…スライド、18…ボルスタ、19…上金型、20…下金型、100…制御装置、101…制御部、102…指令出力部、103…信号検出部、200…送り装置、201…検出器、202…タッチセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6