(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】太陽電池セル、太陽電池ストリング、太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240417BHJP
H01L 31/043 20140101ALI20240417BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20240417BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/04 510
H01L31/04 570
(21)【出願番号】P 2020550237
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035496
(87)【国際公開番号】W WO2020071062
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2018188155
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小島 広平
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0256661(US,A1)
【文献】特開2011-181965(JP,A)
【文献】中国実用新案第207367985(CN,U)
【文献】特表2018-515934(JP,A)
【文献】特開2014-154628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
H02S 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルであって、
発電に用いられる際の受光面に受光面集電電極を備え、
前記受光面に対する反対面における幅方向の一端部には、前記半導体基板上に形成された裏面集電電極を備えており、前記反対面における前記幅方向の他端部には、前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されており、
前記受光面における幅方向の端部には、前記受光面集電電極を備えない領域が形成されていない、太陽電池セル。
【請求項2】
前記太陽電池セルは、複数の前記太陽電池セルを前記幅方向に並べシングリング接続して集合体を構成するためのものであり、
前記裏面集電電極は、前記幅方向の一端部における端縁に沿う少なくとも1本の裏面バスバー電極を含み、
前記無電極領域の前記幅方向における寸法が、前記端縁から前記裏面バスバー電極における前記端縁から遠い側の端縁までの距離に対応した寸法とされ、当該対応した寸法は、前記シングリング接続で隣り合う2枚の前記太陽電池セルどうしで設定される重なり代の幅寸法を基に、前記重なり代が大きく設定される場合には前記裏面バスバー電極に関する前記距離及び前記無電極領域に関する前記寸法が共に大きい関係となり、前記重なり代が小さく設定される場合には前記裏面バスバー電極に関する前記距離及び前記無電極領域に関する前記寸法が共に小さい関係となるように定められる、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、
前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備える、請求項1または2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルが複数、幅方向に並べられシングリング接続された集合体であって、
各太陽電池セルの、受光面に受光面集電電極を備え、
前記受光面に対する反対面には、前記幅方向の一端部に裏面集電電極を備え、前記反対面における前記幅方向の他端部に前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されており、
前記受光面における幅方向の端部には、前記受光面集電電極を備えない領域が形成されていない、太陽電池ストリング。
【請求項5】
前記無電極領域は、前記幅方向で隣り合う2枚の太陽電池セルにおける前記シングリング接続の接続箇所にて、前記2枚の太陽電池セルの重なり代に略一致した幅寸法に形成されている、請求項4に記載の太陽電池ストリング。
【請求項6】
前記各太陽電池セルの、前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、
前記各太陽電池セルは、前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備える、請求項4または5に記載の太陽電池ストリング。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の太陽電池ストリングが複数組み合わされた、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2018-188155号に基づく優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、シングリング接続に好適な太陽電池セル、及び、複数の太陽電池セルがシングリング接続により接続された太陽電池ストリング、及び、複数の太陽電池ストリングが組み合わされた太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、種々の構造を有する太陽電池セルが提案されている。このうち、太陽電池ストリングを形成するために、短冊状である複数の太陽電池セルを、例えば屋根板を葺くようにして、各素子小片における長辺が重なるように順次配置していく「シングリング接続(shingling connection)」を行うことのできる太陽電池セルがある。このタイプの太陽電池セルは、例えば日本国特表2015-534288号公報に記載されている。シングリング接続を行うことで、隣り合う太陽電池セルの間の隙間を無くすことによる、太陽電池モジュール内における複数の太陽電池セルの充填率を向上できる。従って発電効率を向上できる。
【0004】
日本国特表2015-534288号公報に記載の技術では、当該文献の
図1A、
図1Bに示す短冊状の太陽電池セルを、当該文献の
図3Aのように重ねることで太陽電池ストリングを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、太陽電池セルの製造現場では、製造コストに関するコストダウンが要求されている。本願の発明者が前記コストダウンのために検討を行ったところ、シングリング接続を行うために前記短冊状の太陽電池セルを重ねている部分につき、接続後の太陽電池ストリングの性能を低下させることなしに、材料費、具体的には電極を構成する材料に係る費用を節約できる可能性があることを見出した。
【0007】
そこで本発明は、製造コストのコストダウンに寄与できる太陽電池セル、太陽電池ストリング、太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルであって、発電に用いられる際の受光面に受光面集電電極を備え、前記受光面に対する反対面における幅方向の一端部には、前記半導体基板上に形成された裏面集電電極を備えており、前記反対面における前記幅方向の他端部には、前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されている、太陽電池セルである。
【0009】
また、前記裏面集電電極は、前記幅方向の一端部における端縁に沿う少なくとも1本の裏面バスバー電極を含み、前記無電極領域の前記幅方向における寸法が、前記端縁から前記裏面バスバー電極における前記端縁から遠い側の端縁までの距離に対応した寸法とされているものとできる。
【0010】
また、前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備えるものとできる。
【0011】
また本発明は、半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルが複数、幅方向に並べられシングリング接続された集合体であって、各太陽電池セルの、受光面に受光面集電電極を備え、前記受光面に対する反対面には、前記幅方向の一端部に裏面集電電極を備え、前記反対面における前記幅方向の同他端部に前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されている、太陽電池ストリングである。
【0012】
また、前記無電極領域は、前記幅方向で隣り合う2枚の太陽電池セルにおける前記シングリング接続の接続箇所にて、前記2枚の太陽電池セルの重なり代に略一致した幅寸法に形成されているものとできる。
【0013】
また、前記各太陽電池セルの、前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、前記各太陽電池セルは、前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備えるものとできる。
【0014】
また本発明は、前記太陽電池ストリングが複数組み合わされた、太陽電池モジュールである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池セルの表面を示す正面図である。
【
図2】
図2は、前記太陽電池セルの裏面を示す背面図である。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に示す複数の太陽電池セルをシングリング接続する要領を示す、側面視の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る太陽電池セルの表面を示す正面図である。
【
図5】
図5は、前記太陽電池セルの裏面を示す背面図である。
【
図6】
図6は、
図4及び
図5に示す複数の太陽電池セルをシングリング接続する要領を示す、側面視の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明をPERC型の太陽電池セルに適用した場合における、太陽電池セルの裏面を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明につき実施形態を二つ取り上げて、図面とともに以下説明を行う。なお、本説明における「太陽電池セル」とは、「太陽電池ストリング」を構成する個々の板状部分を指す名称である。また、幅方向について用いる「一端」と「他端」とは、太陽電池セル1の表面11または裏面12における相対的な部位である。例えば「一端」が前記各面11,12の平面視における上端(
図1等における上端)である場合に、「他端」は前記「一端」に対向する端部であって平面視における下端となる。なお、図面は本実施形態の構成を略示したものであって設計図面とは異なる。このため、図中の寸法関係は必ずしも正しくない点がある。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態の太陽電池セル1は、
図3に示すように、隣り合う2枚の太陽電池セル1,1のうちで、第1の太陽電池セル1の表面11側の幅方向(または短手方向)の一端部と、第2の太陽電池セル1の裏面12側の幅方向の他端部とを重ねることで形成される、複数の太陽電池セル1…1の集合体である太陽電池ストリング10に使用される。
【0018】
この太陽電池セル1は半導体基板、例えばシリコン基板からなる。
図1に示すように、太陽電池セル1は平面視で短冊状(略長方形)であって、
図3に示すように、幅方向の一端部と他端部が太陽電池ストリング10を形成する際の重なり代となる。
図1に示す太陽電池セル1の表面11は、太陽電池ストリング10において、太陽光線の当たる受光面を構成する。なお、太陽電池セル1の発電及び集電に関する基本的構成は公知の構成と同様である。
【0019】
この太陽電池セル1は、発電に用いられる際の受光面に対応する表面11と、受光面に対する反対面に対応する裏面12にそれぞれ、集電電極(受光面集電電極、裏面集電電極)2としてのバスバー電極21a,21b及びフィンガー電極22a,22bを有する。つまり、半導体基板上には複数の集電電極2…2が形成されており、これら複数の集電電極2…2は、少なくとも1本のバスバー電極21a,21bと複数のフィンガー電極22a…22a,22b…22bを含んでいる。受光面に光が当たることによって半導体基板に生じた電気(電流)は、各フィンガー電極22a,22b及び各バスバー電極21a,21bを経由して集められ、太陽電池ストリング10から取り出されることができる。なお、この太陽電池セル1においては、半導体基板の表面及び裏面が前記集電電極2とは異なる透明電極(図示しない)に覆われており、その透明電極に前記集電電極2が接続されている。
【0020】
ここで、集電電極2の材料として、例えば、銀等の金属からなる微粒子とバインダー樹脂とを含むペースト状の材料等が含まれる。また、集電電極2の形成方法として、例えば、スクリーン印刷等の印刷方法が含まれる。ただし、これらに限定されない。
【0021】
太陽電池セル1の表面11においては、幅方向(短手方向)におけるひとつの端縁に沿う少なくとも1本の受光面バスバー電極21aが形成されている。そして、受光面バスバー電極21aに直交するように複数の受光面フィンガー電極22a…22aが形成されている。一方、太陽電池セル1の裏面12においては、幅方向におけるひとつの端縁に沿う少なくとも1本の裏面バスバー電極21bが形成されている。そして、裏面バスバー電極21bに直交するように複数の裏面フィンガー電極22b…22bが形成されている。
図3に示すように、裏面バスバー電極21bは、受光面バスバー電極21aの設けられた側の端縁と幅方向における他の端縁に設けられている。
【0022】
ここで、複数の太陽電池セル1…1が集合した太陽電池ストリング10において、隣り合う関係にある第1の太陽電池セル1及び第2の太陽電池セル1は第1の方向に沿って配列される。本実施形態における第1の方向とは、各太陽電池セル1の幅方向(
図1上の上下方向や、
図2上の上下方向)に一致する方向であって、
図3上の左右方向である。
【0023】
図2に示すように、太陽電池セル1の裏面12には特定領域が形成されている。特定領域が有する2辺は、太陽電池セル1の裏面12のうち、複数の集電電極2…2を備える側を一端部側とした場合の他端部側(図示の下側)において、前記第1の方向の全長(つまり、各太陽電池セル1の幅寸法)に対して所定割合の長さである第1長L1と、前記太陽電池セル1の前記第1の方向に交わる(本実施形態では直交する)第2の方向の全長(つまり、各太陽電池セル1の長手方向寸法)に対して所定割合の長さである第2長L2とが交わる2辺(本実施形態では縦横)の関係となっている。この特定領域が、集電電極(裏面集電電極)2(裏面バスバー電極21b及び裏面フィンガー電極22b)が形成されない無電極領域3である。つまり、太陽電池セル1の裏面12における幅方向の一端部には、半導体基板上に形成された複数の集電電極2…2(裏面バスバー電極21b及び裏面フィンガー電極22b)を備える。一方、太陽電池セル1の裏面12における幅方向の他端部には、前記複数の集電電極2…2を備えない無電極領域3が形成されている。
【0024】
ここで、無電極領域3の幅方向における寸法である第1長L1は、
図2に示す太陽電池セル1の一端部における端縁E1から裏面バスバー電極21bにおける前記端縁E1から遠い側の端縁E21b(この「端縁」は太陽電池セル1における端縁ではなく、裏面バスバー電極21bにおける端縁を指す)までの距離L3に対応した寸法とされている。なお、この「対応」については、一方の大小と他方の大小との間に相関関係があることを意味する。この相関関係は、前記距離L3に係る寸法が、シングリング接続の接続箇所における太陽電池セル1,1どうしの重なり代の幅寸法d(
図3参照)を基に定められ、かつ、後述のように、無電極領域3に関する前記第1長L1が重なり代に関する前記幅寸法dを基に定められることにより現れる関係である。このため、前記距離L3に係る寸法と無電極領域3に関する前記第1長L1とを比べると、L1>L3、L1=L3、L1<L3のいずれの場合もあり得る。そして第1長L1は、例えば、各太陽電池セル1の幅寸法に対して5%以上50%以下の長さとできる。また、第2長L2は、例えば、各太陽電池セル1の長手寸法に対して60%以上100%以下の長さとできる。本実施形態では、第2長L2が太陽電池セル1の長手寸法に一致している。つまり太陽電池セル1の長手寸法に対して100%である。
【0025】
このように、本実施形態の太陽電池セル1は、裏面12の幅方向におけるひとつの端部(他端部)に無電極領域3を有している。このため、無電極領域3を設けた分、複数の集電電極2…2の形成に必要な導電材料の使用量を減らすことができ、製造コストのコストダウンが可能となる。また、受光面(各太陽電池セル1の表面11)においてシングリング接続によって隠れる領域は、光が当たらないことから発電に寄与しない。このため、前記受光面に対応させ、各太陽電池セル1の裏面12において前記隠れる領域に対応する部分1X(
図3参照)を無電極領域3としても、太陽電池ストリング10の出力はほとんど低下しない。従って、複数の太陽電池セル1…1がシングリング接続された後の太陽電池ストリング10の性能をほとんど低下させることなしに複数の集電電極2…2を構成する材料を節約できる。
【0026】
また、シングリング接続の接続箇所における太陽電池セル1,1どうしの重なり代の幅寸法d(
図3参照)は、
図2に示す、幅方向の一端部における端縁E1から裏面バスバー電極21bにおける前記端縁E1から遠い側の端縁E21bまでの距離L3に対応する。なお、この「対応」についても、前述のL1とL3との関係と同じく、一方の大小と他方の大小とに相関関係があることを意味する。無電極領域3の寸法(特に第1長L1)を、幅方向の一端部における端縁E1から裏面バスバー電極21bにおける前記端縁E1から遠い側の端縁E21bまでの距離L3を基に定めることで、無駄のない(具体的には太陽電池ストリング10の性能に影響を与えない)無電極領域3の大きさとできる。
【0027】
太陽電池ストリング10における複数の太陽電池セル1…1の並べ方は、
図3に示すように、重ねた状態で下側の太陽電池セル1が有する受光面バスバー電極21aに上側の太陽電池セル1が有する裏面バスバー電極21bが重なるようにされ、各電極21a,21bが重なった部分は、導電性部材5を介して電気的に接続される(シングリング接続)。図示しないが、この太陽電池ストリング10が複数組み合わされることで、太陽電池モジュールが構成される。
【0028】
太陽電池ストリング10を構成する各太陽電池セル1における無電極領域3は、幅方向で隣り合う2枚の太陽電池セル1,1におけるシングリング接続の接続箇所にて、2枚の太陽電池セル1,1の重なり代に略一致した幅寸法に形成されている。このように、無電極領域3の寸法を、2枚の太陽電池セル1,1の重なり代を基に定めることで、無駄のない無電極領域3の大きさとできる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部分については図面に同一の符号を付しており、必要でない場合重複する説明は行わない。第1実施形態と同様に、本実施形態における太陽電池セル1の表面11の一端部側に、受光面バスバー電極21aが各太陽電池セル1の長手方向と平行に配置されている(
図4参照)。そして、この受光面バスバー電極21aに交差するように複数の受光面フィンガー電極22a…22aが配置されている。そして本実施形態では、太陽電池セル1の表面11の他端部側に、各太陽電池セル1の長手方向と平行に、複数の受光面フィンガー電極22a…22aを接続する受光面補助電極4aが配置される。本実施形態において、受光面補助電極4aは、太陽電池セル1の長手方向における一方と他方に別れて形成されている。
【0030】
また、太陽電池セル1の裏面12の一端部側に、各太陽電池セル1の長手方向と平行の向きに、複数の裏面フィンガー電極22b…22bを接続する裏面補助電極4bが配置される(
図5参照)。この裏面補助電極4bは、複数の裏面フィンガー電極22b…22bの端部どうしを接続する。本実施形態において、裏面補助電極4bは、太陽電池セル1の長手方向において連続して形成されている。
【0031】
これらの補助電極(受光面補助電極4a及び裏面補助電極4b)は、複数のフィンガー電極(受光面フィンガー電極22a…22a及び裏面フィンガー電極22b…22b)の少なくとも一部に交差するように設けられている。本実施形態では直交している。
【0032】
太陽電池セル1の表面11及び裏面12において、隣り合う2枚の太陽電池セル1,1の重なり領域の、端辺に相当する箇所に補助電極4a,4bを設けることで、フィンガー電極22a,22bの一部が断線する等、導通不良が発生しても、補助電極4a,4bを経由して、隣接する導通の点で健全なフィンガー電極22a,22bを経由した集電が可能になり、断線等による集電ロスが低減される。その結果、発電効率の低下が防止される。また、シングリング接続する際の太陽電池セル1,1どうしの位置合わせを行う際、作業者による位置合わせの目標を、太陽電池セル1の端縁だけでなく補助電極4a,4bにもできる。例えば、
図6において二点鎖線L4で示すように、補助電極4a,4bを位置合わせ対象の太陽電池セル1の端縁に合わせることができる。よって、太陽電池セル1,1どうしの位置合わせの精度が上がり、電極接続の位置ズレによる、太陽電池ストリング10の出力ロスを低減できる。
【0033】
(実施形態まとめ)
以上、第1実施形態及び第2実施形態によると、複数の太陽電池セル1…1がシングリング接続されることによって太陽電池ストリング10が形成されることから、配線が露出しないため意匠性に優れる。また、太陽電池セル1,1の重なり部分における複数の集電電極2…2をなくすことで、電極形成に必要な材料の使用量を減らすことができ、製造コストのコストダウンが可能となる。更に、複数の太陽電池セル1…1のシングリング配置を行う際に、例えば第2実施形態の補助電極4a,4bを目印にして太陽電池セル1,1どうしの位置合わせが可能となるため、位置合わせの精度が向上する。このため、太陽電池ストリング10を製造する際の歩留まりが向上する。
【0034】
(実施形態の変更例)
本発明につき実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、バスバー電極21a,21bは、前記各実施形態では1枚の太陽電池セル1の表裏各面において1本が設けられていた。しかしこれに限定されず、各バスバー電極21a,21bを複数本設けることもできる。また、1本のバスバー電極21a,21bを細い電極(例えばフィンガー電極22a,22bと同じ形態である細い電極)が複数本集合したものとして形成することもできる。
【0036】
また、補助電極4a,4bは、太陽電池セル1における表面11または裏面12の一方にのみ設けることもできる。
【0037】
また本発明は、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)型の太陽電池セル1にも適用可能である。PERC型の太陽電池セルにおいては裏面にフィンガー電極が形成されておらず、代わりにアルミニウム合金製等の面状の電極が広範囲に形成されている。この場合における、太陽電池セルの裏面の形状の一例を
図7に示す。このPERC型の太陽電池セル1における一端側に間欠的に形成された線状の電極23bが前記各実施形態の裏面バスバー電極21bに相当し、面状の電極24bが前記各実施形態の裏面フィンガー電極22bに相当する。前記面状の電極24bを設けない領域を形成することで、前記各実施形態と同様に、この部分を無電極領域3とできる。
図7に示す、無電極領域3に関する第1長L1と線状の電極23bに関する距離L3との関係は、前記第1実施形態と同じである。また、このPERC型の太陽電池セル1では、受光面においてシングリング接続によって隠れる領域が、光が当たらないことから発電に寄与しないという、前記各実施形態と同じ理由により、無電極領域3においてドープ層(半導体に対して異種金属をドーピングした層)を形成しないことが好ましい。
【0038】
(実施形態の構成と作用)
前記実施形態に関する構成と作用につき、以下にまとめて記載する。前記実施形態は、半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルであって、発電に用いられる際の受光面に受光面集電電極を備え、前記受光面に対する反対面における幅方向の一端部には、前記半導体基板上に形成された裏面集電電極を備えており、前記反対面における前記幅方向の他端部には、前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されている、太陽電池セルである。
【0039】
この構成によれば、シングリング接続の接続箇所において受光面が隠れる部分は、光が当たらないことから発電に寄与しない。このため、反対面において受光面が隠れる部分に対応する幅方向の他端部に無電極領域を形成することで、接続後の太陽電池ストリングの性能をほとんど低下させることなしに電極を構成する材料を節約できる。
【0040】
また、前記裏面集電電極は、前記幅方向の一端部における端縁に沿う少なくとも1本の裏面バスバー電極を含み、前記無電極領域の前記幅方向における寸法が、前記端縁から前記裏面バスバー電極における前記端縁から遠い側の端縁までの距離に対応した寸法とされているものとできる。
【0041】
この構成によれば、シングリング接続の接続箇所における太陽電池セルどうしの重なり代は、太陽電池セルの幅方向の一端部における端縁から裏面バスバー電極における前記端縁から遠い端縁までの距離に関係する。このため、当該距離を基に無電極領域の寸法を定めることで、無駄のない無電極領域の大きさとできる。
【0042】
また、前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備えるものとできる。
【0043】
この構成によれば、フィンガー電極にもしも断線等の導通不良が発生しても、補助電極を経由して集電が可能である。
【0044】
また前記実施形態は、半導体基板からなる短冊状の太陽電池セルが複数、幅方向に並べられシングリング接続された集合体であって、各太陽電池セルの、受光面に受光面集電電極を備え、前記受光面に対する反対面には、前記幅方向の一端部に裏面集電電極を備え、前記反対面における前記幅方向の同他端部に前記裏面集電電極を備えない無電極領域が形成されている、太陽電池ストリングである。
【0045】
この構成によれば、シングリング接続の接続箇所において受光面が隠れる部分は、光が当たらないことから発電に寄与しない。このため、反対面において受光面が隠れる部分に対応する幅方向の他端部に無電極領域を形成することで、太陽電池ストリングの性能をほとんど低下させることなしに電極を構成する材料を節約できる。
【0046】
また、前記無電極領域は、前記幅方向で隣り合う2枚の太陽電池セルにおける前記シングリング接続の接続箇所にて、前記2枚の太陽電池セルの重なり代に略一致した幅寸法に形成されているものとできる。
【0047】
この構成によれば、無電極領域の寸法を、2枚の太陽電池セルの重なり代を基に定めることで、無駄のない無電極領域の大きさとできる。
【0048】
また、前記各太陽電池セルの、前記受光面集電電極または前記裏面集電電極は複数のフィンガー電極を含み、前記各太陽電池セルは、前記複数のフィンガー電極の少なくとも一部に交差する補助電極を備えるものとできる。
【0049】
この構成によれば、フィンガー電極にもしも断線等の導通不良が発生しても、補助電極を経由して集電が可能である。
【0050】
また前記実施形態は、前記太陽電池ストリングが複数組み合わされた、太陽電池モジュールである。
【0051】
この構成によれば、前記利点を有する太陽電池モジュールを提供できる。
【0052】
前記実施形態は、接続後の太陽電池ストリングの性能をほとんど低下させることなしに電極を構成する材料を節約できる。よって、製造コストのコストダウンに寄与できる。
【符号の説明】
【0053】
1 太陽電池セル
10 太陽電池ストリング
11 受光面、表面
12 受光面の反対面、裏面
2 集電電極(受光面集電電極、裏面集電電極)
21a バスバー電極、受光面バスバー電極
21b バスバー電極、裏面バスバー電極
22a フィンガー電極、受光面フィンガー電極
22b フィンガー電極、裏面フィンガー電極
23b 線状の電極
24b 面状の電極
3 無電極領域
4a 受光面補助電極
4b 裏面補助電極
E1 反対面の一端部の端縁
E21b バスバー電極における遠い端縁
L1 無電極領域の幅方向における寸法、第1長
L3 反対面の一端部の端縁からバスバー電極における遠い端縁までの距離
d 重なり代の幅寸法