(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】塗料組成物、家具及び建築内装用塗料組成物、並びに積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240417BHJP
C09D 7/42 20180101ALI20240417BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240417BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240417BHJP
C09D 167/08 20060101ALI20240417BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/42
C09D5/02
C09D133/04
C09D167/08
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2021011978
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-090596(JP,A)
【文献】特開2020-090563(JP,A)
【文献】特開2016-138242(JP,A)
【文献】特開平07-186333(JP,A)
【文献】特開2000-297247(JP,A)
【文献】特開2015-120808(JP,A)
【文献】特開2013-241584(JP,A)
【文献】特開2020-147679(JP,A)
【文献】特表2010-508406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/04
C09D 7/42
C09D 5/02
C09D 133/04
C09D 167/08
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)成分を含む、
家具又は建築内装用塗料組成物
(A)(a1)下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン60~99質量部と(a2)アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体1~40質量部((a1)及び(a2)成分の合計は100質量部である)との共重合物であ
り、平均粒子径230nm~1200nmを有する、シリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョン: 固形分量で0.5~20質量部、
【化1】
(式中、R
1は、互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素 基であり(但し、後記するR
2で定義される基及びフェニル基を除く)、R
2は、互い に独立に、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素原子に結合する水素原子の一部が メルカプト基、ビニル基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基で置換されている 炭素数1~6のアルキル基であり、R
3は互いに独立に、フェニル基又は上記R
1で定 義される基であり、少なくとも1のR
3はフェニル基であり、Xは互いに独立に、置換 もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、 又はヒドロキシル基であり、a、b、c及びdは実数であり、a、b、c及びdの合計 に対し、aは0.11≦a/(a+b+c+d)<1となる数であり、bは0.000 01≦b/(a+b+c+d)≦0.05となる数であり、cは0≦c/(a+b+c +d)≦0.6となる数であり、及び、dは0.000001≦d/(a+b+c+d )≦0.24となる数である)
(B)前記(A)成分以外のアクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、及びアルキド樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種の樹脂エマルジョン:固形分量で20~80質量部、
(C)顔料: 1~50質量部、及び
(D)難燃剤: 1~10質量部
(但し、(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計は100質量部である)。
【請求項2】
前記(B)樹脂エマルジョンの配合量が、前記塗料組成物中に固形分量で10~35質量%である、請求項1記載の、家具又は建築内装用塗料組成物。
【請求項3】
前記塗料組成物中に、前記(A)シリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョンの量が固形分量で0.1~9質量%であり、前記(B)樹脂エマルジョンの量が固形分量で10~35質量%であり、前記(C)顔料の量が0.1~25質量%であり、及び、前記(D)難燃剤の量が0.1~5質量%である、請求項1記載の、家具又は建築内装用塗料組成物。
【請求項4】
さらに(E)つや消し剤を、塗料組成物の全質量に対し0.5~
10質量%で含む、請求項1記載の、
家具又は建築内装用塗料組成物。
【請求項5】
前記(C)顔料が酸化チタンである、請求項1記載の、家具又は建築内装用塗料組成物。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれか1項記載の家具又は建築内装用塗料組成物から成る皮膜。
【請求項7】
静摩擦係数と動摩擦係数の差が0.05未満である、請求項
6記載の皮膜。
【請求項8】
基材と、該基材の片面又は両面に形成された請求項
6又は7記載の皮膜とを有する積層体。
【請求項9】
前記基材が木材、金属、樹脂、及びセラミックから選ばれる、請求項
8記載の積層体。
【請求項10】
請求項
8又は
9記載の積層体を有する家具。
【請求項11】
請求項
8又は
9記載の積層体を有する建築内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具及び建築物内装材に使用される塗料組成物に関するものであり、より詳しくは木材や樹脂、金属、セラミックス等の基材表面に塗布することで、基材本来の意匠性を維持しながら、優れた触感、耐摩耗性、防汚性、難燃性、耐候性を付与できる、水系の塗料組成物である。また、本発明は、該塗料組成物により形成される皮膜を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家具及び建築物内装材塗料の分野においては、環境問題の点で有機溶剤系から水系へと分散媒の移行が進んでいる。特に揮発性有機化合物はシックハウス症候群を引き起こす恐れがあるため、水系塗料の活用が強く望まれている。水系塗料用で用いられるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などが優れた皮膜形成能があるため、広く用いられてきた。また、シリコーン系樹脂は、基材に滑り性や撥水性を付与することができる樹脂として知られている。
【0003】
例えば、特開2006-341163(特許文献1)ではシリコーンエマルジョンとそれ以外の合成樹脂エマルジョンの混合物を含有した建築物内装用の上塗塗料を開示している。しかし、シリコーンエマルジョンを塗料に添加する場合には、オイルのブリードアウトによる触感の低下、耐摩耗性の低下、基材ヘの密着性の低下などで目的とする塗膜が得られない場合がある。また汚れが付着しやすくなり、除去もしにくくなるという欠点があった。
【0004】
また、特開2011-213941号(特許文系2)公報では、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリル系重合体エマルジョンとシリコーン系樹脂水分散体を含有した水系塗料組成物を開示している。アクリル系エマルジョンとシリコーン系エマルジョンを混合する事で耐水性が良くなることを開示しているが、この水系塗料組成物では、優れた触感や防汚性も得ることは難しいと考えられる。
【0005】
本発明者らは、特開2013-67787号(特許文献3)の公報で、ウレタン系、アクリル系、塩化ビニル系のエマルジョンとシリコーン系の樹脂を混合したコーティング剤が基材に撥水性を付与できることを開示している。しかし、このコーティング剤では滑り性が十分でないために触感に改良の余地があり、また耐摩耗性も十分な性能ではないために改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-341163号公報
【文献】特開2011-213941号公報
【文献】特開2013-67787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた触感、耐摩耗性、防汚性、難燃性、及び耐候性を基材に与える、塗料組成物、並びに該塗料組成物からなる皮膜を有する積層体、家具及び建築内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)特定のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンと、前記(A)以外の(B)特定の樹脂エマルジョン、(C)顔料、及び(D)難燃剤とを所定の割合で配合した塗料組成物、並びに該塗料組成物による皮膜が家具及び建築内装用の塗料として最適であり、上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記(A)~(D)成分を含む、家具又は建築内装用塗料組成物を提供する。
(A)(a1)下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン60~99質量部と(a2)アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体1~40質量部((a1)及び(a2)成分の合計は100質量部である)との共重合物である、シリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョン: 固形分量で0.5~20質量部、
【化1】
(式中、R
1は、互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素 基であり(但し、後記するR
2で定義される基及びフェニル基を除く)、R
2は、互い に独立に、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素原子に結合する水素原子の一部が メルカプト基、ビニル基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基で置換されている 炭素数1~6のアルキル基であり、R
3は互いに独立に、フェニル基又は上記R
1で定 義される基であり、少なくとも1のR
3はフェニル基であり、Xは互いに独立に、置換 もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、 又はヒドロキシル基であり、a、b、c及びdは実数であり、a、b、c及びdの合計 に対し、aは0.11≦a/(a+b+c+d)<1となる数であり、bは0.000 01≦b/(a+b+c+d)≦0.05となる数であり、cは0≦c/(a+b+c +d)≦0.6となる数であり、及び、dは0.000001≦d/(a+b+c+d )≦0.24となる数である)
(B)前記(A)成分以外のアクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、及びアルキド樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種の樹脂エマルジョン:固形分量で20~80質量部、
(C)顔料: 1~50質量部、及び
(D)難燃剤: 1~10質量部
(但し、(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計は100質量部である)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗料組成物は、優れた触感、耐摩耗性、防汚性、難燃性、耐候性を有する皮膜を形成する。該皮膜は、基材に、基材本来の意匠性を維持しながら、優れた触感、耐摩耗性、防汚性、難燃性、及び耐候性を与える。また本発明の塗料組成物は水系であるため、作業面及び環境面で利点が大きい。本発明の水系塗料組成物は家具及び建築内装用の水系塗料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0012】
(A)シリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョン
(A)成分は、(a1)下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン60~99質量部と(a2)アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体1~40質量部((a1)及び(a2)成分の合計は100質量部である)との共重合物であるシリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョンである。
【化2】
(式中、R
1は、互いに独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素 基であり(但し、後記するR
2で定義される基及びフェニル基を除く)、R
2は、互い に独立に、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素原子に結合する水素原子の一部が メルカプト基、ビニル基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基で置換されている 炭素数1~6のアルキル基であり、R
3は互いに独立に、フェニル基又は上記R
1で定 義される基であり、少なくとも1のR
3はフェニル基であり、Xは互いに独立に、置換 もしくは非置換の炭素数1~20の1価炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、 又はヒドロキシル基であり、a、b、c及びdは実数であり、a、b、c及びdの合計 に対し、aは0.11≦a/(a+b+c+d)<1となる数であり、bは0.000 01≦b/(a+b+c+d)≦0.05となる数であり、cは0≦c/(a+b+c +d)≦0.6となる数であり、及び、dは0.000001≦d/(a+b+c+d )≦0.24となる数である)
より詳細には(a1)上記一般式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと(a2)アクリル酸エステル単量体及び/又はメタクリル酸エステル単量体とを、乳化グラフト重合させて得られる、シリコーンアクリル共重合樹脂のエマルジョンである。
【0013】
(a1)成分と(a2)成分の配合比は、(a1)成分と(a2)成分の合計量100質量部に対して、(a1)成分が60~99質量部であり、(a2)成分が1~40質量部であることが好ましい。好ましくは(a1)成分が70~95質量部であり、(a2)成分が5~30質量部である。
【化3】
【0014】
R1は、互いに独立に、置換もしくは非置換の、炭素数1~20の、好ましくは炭素数1~10の、より好ましくは炭素数1~6の、1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニルベンジル基、ビニルフェニルプロピル基等のアルケニルアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、及び、アルキル又はアルコキシなどで置換されたものが挙げられる。R1としては、非置換の炭素数1~6のアルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基である。
【0015】
R2は、互いに独立に、炭素数2~6のアルケニル基、又は、炭素原子に結合する水素原子の一部がメルカプト基、ビニル基、アクリロキシ基もしくはメタクリロキシ基で置換されている炭素数1~6のアルキル基である。炭素数2~6のアルケニル基としてはビニル基、アリル基等が挙げられる。R2は、好ましくは、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基を有する炭素数1~6のアルキル基である。該アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。R3は、互いに独立に、フェニル基又は上記R1で定義される基であり、少なくとも1のR3はフェニル基である。
【0016】
Xは、互いに独立に、置換もしくは非置換の、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の1価炭化水素基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基、又はヒドロキシル基である。非置換もしくは置換の炭素数1~20の1価炭化水素基としては、上記R1のために例示した基が挙げられる。炭素数1~20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基等が挙げられる。Xとして、好ましくはヒドロキシル基、メチル基、ブチル基、及びフェニル基である。
【0017】
a、b、c及びdは実数であり、a~dの合計数に対し、aは0.11≦a/(a+b+c+d)<1未満(例えば、0.999999以下)となる数であり、好ましくは0.59≦a/(a+b+c+d)≦0.99998の数である。bはa~dの合計数に対し0.00001≦b/(a+b+c+d)≦0.05となる数であり、好ましくは0.00001≦b/(a+b+c+d)≦0.01となる数である。cはa~dの合計数に対し0≦c/(a+b+c+d)≦0.6となる数であり、好ましくは0≦c/(a+b+c+d)≦0.30となる数である。dはa~dの合計数に対し0.000001≦d/(a+b+c+d)≦0.24となる数であり、好ましくは0.00001≦d/(a+b+c+d)≦0.1となる数である。bは5質量%を超えると塗膜の触感向上が見られなくなり、防汚性も落ちる。dは、24.0質量%を超えると重量平均分子量が小さくなり、触感の向上が見られなくなるため好ましくない。cはフェニル基を有するシロキサン単位の数である。上記範囲で有することにより透明性や耐熱性の点で好ましい。
【0018】
(a1)ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は5000~50万、好ましくは8000~45万、より好ましくは10万~45万であり、より好ましくは15万~40万である。該重量平均分子量を有することで、シリコーン特有の良好な滑り性を付与するコーティング剤が得られる。
ここで、ポリオルガノシロキサンの分子量は、1g/100ml濃度のオルガノポリシロキサンのトルエン溶液の比粘度ηsp(25℃)から計算することができる。
ηsp=(η/η0)-1
(η0:トルエンの粘度 η:溶液の粘度)
ηsp=[η]+0.3[η]2乗
[η]=2.15×10-4M0.65
具体的には、エマルジョン20gをIPA(イソプロピルアルコール)20gと混合し、エマルジョンを破壊した後、IPAを廃棄し、残ったゴム状のオルガノポリシロキサンを105℃×3時間乾燥する。これを1g/100ml濃度のオルガノポリシロキサンのトルエン溶液とし、ウベローデ粘度計にて25℃で測定を行う。上記式に粘度を代入することにより分子量を求めることができる(参考文献:中牟田、日化、77 858[1956]、Doklady Akad. Nauk. U.S.S.R. 89 65[1953])。
【0019】
このような(a1)ポリオルガノシロキサンは、エマルジョンの形態で使用されることが好ましく、市販品を使用してもよいし、合成してもよい。合成する場合は、公知の乳化重合法で実施でき、例えばフッ素原子、(メタ)アクリロキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基を有してもよい環状オルガノシロキサンあるいはα,ω-ジヒドロキシシロキサンオリゴマー、α,ω-ジアルコキシシロキサンオリゴマー、アルコキシシラン等と、下記一般式(2)で示されるシランカップリング剤を、アニオン系界面活性剤を用いて水中に乳化分散させた後、必要に応じて酸等の触媒を添加して重合反応を行うことにより容易に合成することができる。
R5
(4-e-f)R6
fSi(OR7)e (2)
(式中、R5は重合性二重結合を有する1価有機基、特にアクリロキシ基又はメタクリロキシ基置換の炭素数1~6のアルキル基を示す。R6は炭素数1~4のアルキル基、R7は炭素数1~4のアルキル基、eは2~3、fは0~1の整数を示し、e+f=2~3である。)
【0020】
上記環状オルガノシロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1-ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,1-ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3-トリフロロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(3-ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(p-ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ[3-(p-ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N-アクリロイル-N-メチル-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラ(N,N-ビス(ラウロイル)-3-アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。好ましくは、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンが用いられる。
【0021】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジブトキシシランなどのアクリルシラン類;γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類等が挙げられる。又はこれらを縮重合したオリゴマーはアルコールの発生が抑えられより好ましい場合がある。特にアクリルシラン系が好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシは、アクリロキシ又はメタクリロキシを示す。これらシランカップリング剤は、環状オルガノシロキサン100質量部に対し0.01~10質量部使用することが好ましく、0.01~5質量部の使用が更に好ましい。0.01質量部未満であると、コーティング剤とした際に透明性が低下し、10質量部を超えると、摺動性が発揮できない可能性がある。
【0022】
環状オルガノシロキサンに上記シランカップリング剤を共重合することにより、ポリオルガノシロキサンに重合性基(R2)が導入される。これにより(a2)(メタ)アクリル酸エステル単量体を(a1)ポリオルガノシロキサンにグラフトさせることができる。
【0023】
重合に用いる重合触媒としては、公知の重合触媒を使用すればよい。中でも強酸が好ましく、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸が例示される。好ましくは乳化能を持つドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0024】
酸触媒の使用量としては、環状オルガノシロキサン100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~2質量部である。
【0025】
重合する際の界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん、アルキルりん酸塩等が挙げられるが、中でも水に溶けやすく、ポリエチレンオキサイド鎖を持たないものが好ましい。更に好ましくは、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん及びアルキルりん酸塩であり、特に好ましくは、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0026】
アニオン系界面活性剤の使用量は、環状オルガノシロキサン100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0027】
重合温度は50~75℃が好ましく、重合時間は10時間以上が好ましく、15時間以上が更に好ましい。更に、重合後に5~30℃で10時間以上熟成させることが特に好ましい。
【0028】
(a2)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル(以下、アクリル成分ということがある)は、炭素数1~20の、好ましくは炭素数1~6の、より好ましくは炭素数1~3の、直鎖及び分岐のアルキルエステルである。アミド基、ビニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能基を有してもよい。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち1種のみ、又は2種以上を共重合させればよい。好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、又は、メタクリル酸エチルである。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルは、ガラス転移温度(以下、Tgと記載することがある)が120℃以下であるのがよく、110℃以下であるのがよい。下限値は-50℃が好ましい。好ましくは、得られるシリコーンアクリル共重合樹脂のTgが0℃以上、より好ましくは5℃以上となるように(a2)成分を調整して、グラフト共重合させるのがよい。シリコーンアクリル樹脂が上記Tgを有することにより、防汚性能の高い樹脂を得ることができる。
【0029】
上記(a1)ポリオルガノシロキサンと、(a2)(メタ)アクリル酸エステル単量体のグラフト共重合は従来公知の方法に従えばよく、例えばラジカル開始剤を用いて行えばよい。ラジカル開始剤は、特に制限されないが、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸水素水、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素が挙げられる。必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L-アスコルビン酸、酒石酸、糖類、アミン類等の還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。
【0030】
エマルジョンの安定性向上のため、アニオン系界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、脂肪族石けん、アルキルりん酸塩等を添加することができる。また、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のノニオン系乳化剤を添加することもできる。
【0031】
更に、分子量を調整するために連鎖移動剤を添加することができる。
【0032】
(A)シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの固形分は35~50質量%が好ましい。また、粘度(25℃)は、500mPa・s以下が好ましく、20~300mPa・sが更に好ましい。粘度は回転粘度計にて測定できる。エマルジョン粒子の平均粒子径は、1000nm以下、好ましくは100nm~500nm、さらに好ましくは150~350nmである。平均粒径が大きすぎる場合には、白化が見られ、小さすぎる場合には、分散性が低下する問題がある。樹脂エマルジョンの粒子径は、日本電子製JEM-2100TMを用いて測定される。
【0033】
(A)成分のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンは、(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対し、(A)成分の固形分量で0.5~20質量部が好ましく、好ましくは1.5質量部~15質量部、さらに好ましくは2質量部~10質量部が好ましい。(A)成分の固形分量が上記下限値未満では触感や防汚性が十分に発揮できず、上記上限値超では塗膜表面が汚れやすくなってしまうという欠点がある。塗料組成物中には固形分量で0.1~9質量%、好ましくは0.5~7質量%で含まれるのがよい。(A)シリコーンアクリル共重合樹脂のガラス転移温度(以下、Tgということがある)は0℃以上が好ましく、より好ましくは5℃以上である。
【0034】
尚、重合体樹脂のガラス転移温度(T)は以下の式より計算できる。
(Pa+Pb+Pc)/T=(Pa/Ta)+(Pb/Tb)+(Pc/Tc)
式中、Tは重合体粒子のガラス転移温度(K)を表し、Pa、Pb、Pcは、それぞれ単量体a、b、cの含有量(質量%)を表し、Ta、Tb、Tcは、それぞれ単量体a、b、cのホモポリマーガラス転移温度(K)を表す。ガラス転移温度は、JISK7121に基づき測定できる。
さらに単量体を追加する場合も上記式を応用すればよい。下記(B)樹脂エマルジョンのガラス転移温度も上記式より計算できる。
【0035】
(B)樹脂エマルジョン
(B)成分は、(A)成分以外のアクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、アルキド樹脂エマルジョンから選ばれる少なくとも1種の樹脂エマルジョンである。より詳細には、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系単量体を用いたアクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、及びアルキド樹脂エマルジョンである。好ましくは、皮膜形成能を有する樹脂エマルジョンであるのがよい。皮膜形成能とは、一定温度以上で、乾燥後の塗膜表面の粒子性がなくなり、かつ、乾燥時に細かいひび割れなどを起こさない性能である。皮膜形成のための乾燥温度(MFT)範囲は特に限定されない。(B)樹脂エマルジョンを乾燥した際の塗料の塗膜の硬度は、JIS K5400-5-4で測定した特に限定されないが鉛筆硬度で2B~2Hであることが好ましい。
【0036】
(B)樹脂エマルジョンの平均粒子径は20nm~1000nmであることが好ましく、より好ましくは20nm~500nm、さらに好ましくは20nm~350nmである。樹脂エマルジョンの粒子径は、日本電子製JEM-2100TMを用いて測定される。
【0037】
アクリル樹脂エマルジョンは、公知の方法、例えばアニオン又はノニオン系乳化剤等を用いた乳化重合法で合成したものを用いてもよいし、市販品を使用してもよい。
【0038】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、ガラス転移温度(以下、Tgと記載することがある)は、120℃以下であり、60℃以下が好ましく、30℃以下が更に好ましい。なお、ガラス転移温度の下限値は-50℃が好ましい。
【0039】
市販のアクリル系樹脂エマルジョンとしては、日信化学工業社製ビニブラン、ヘンケル
ジャパン社製ヨドゾール、東亜合成社製アロン等が挙げられる。
【0040】
ウレタン樹脂エマルジョンは、公知の方法、例えばアニオン又はノニオン系乳化剤等を用いた乳化重合法で合成したものを用いてもよいし、市販品を使用してもよい。
ウレタン系樹脂エマルジョンとしては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとの反応物で、該ポリオールとしてポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系等を用いた各種水溶性ウレタン樹脂が挙げられる。このウレタン系樹脂エマルジョンが皮膜形成能を有するためには、粒子径が10~500nmであることが好ましい。粘度(25℃)は10~500mPa・sであるものを用いるとよい。また、ガラス転移温度(以下、Tgと記載することがある)は、120℃以下であり、60℃以下が好ましく、30℃以下が更に好ましい。なお、ガラス転移温度の下限値は-50℃が好ましい。ガラス転移温度は、JIS K7121に基づき測定できる。
【0041】
市販のポリエーテル系ウレタン樹脂エマルジョンとしては、アデカ社製アデカボンタイターHUX-350、DIC社製WLS-201,WLS-202、第一工業製薬社製スーパーフレックスE-4000,E-4800などが挙げられる。ポリカーボネート系ウレタン樹脂エマルジョンとしては、例えば、DIC社製ハイドランWLS-210,WLS-213、宇部興産社製UW-1005E,UW-5502、三洋化成社製パーマリンUA-368、第一工業製薬社製スーパーフレックス460,スーパーフレックス470などが挙げられる。ポリエステル系ウレタン樹脂エマルジョンとしては、アデカ社製アデカボンタイターHUX-380,HUX-540、第一工業製薬社製スーパーフレックス420,スーパーフレックス860などが挙げられる。
【0042】
アルキド樹脂エマルジョンとしては、例えば、アルキド樹脂を高酸価のものとし、アミン化合物等の塩基性化合物で中和して水性化する方法、アルキド樹脂中にポリオキシエチレン基等の親水基を導入し、この親水基の働きにより水中に自己乳化させる方法、アルキド樹脂を乳化剤の存在下にてディスパー型攪拌機等のような高速攪拌機を使用し、水中に強制撹拌して水中に分散させる方法、さらにアルキド樹脂を低酸価のものとし、高速攪拌機で得られた水分散アルキド樹脂粒子を、水分散性を向上させ、粒子径をさらに小さくそろえる目的で、微粒化する特定の高エネルギーせん断能力を有する分散機を用いて水中に分散させる方法、これらを併用した方法等によって得たものを用いてもよいし、市販品を使用してもよい。
【0043】
市販の、アルキド樹脂エマルジョンとしては、例えば、DIC社製ウォーターゾールシリーズなどが挙げられる。
【0044】
(B)樹脂エマルジョンの配合量は、(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対し、固形分量で20~80質量部であり、好ましくは30~78質量部であり、より好ましくは40~75質量部である。塗料組成物中には固形分量で10~35質量%、好ましくは15~32質量%で含まれるのがよい。この樹脂エマルジョン(固形分)が上記下限値未満であると、耐摩耗性など被膜特性が非常に悪くなるという不具合があり、上記上限値を超えると触感が悪くなるという不具合がある。
(C)顔料
(C)顔料は、塗料組成物に配合される従来公知の顔料であればよく、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、酸化チタン、赤酸化鉄(べんがら)、黄酸化鉄、黒酸化鉄、紺青、亜鉛華、コバルト青、エメラルド緑、ビリジャン、チタン白などが挙げられる。有機顔料としてはアルカリブルー、リゾールレッド、カーミン6B、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリンエローなどが挙げられる。
【0045】
(C)顔料の平均粒子径は特に限定されないが、5nm~10μmであることが好ましく、より好ましくは10nm~5μmである。該顔料の平均粒径は、レーザー回折型粒子径測定装置により測定される、体積平均粒径である。
【0046】
(C)顔料の配合量は(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対して1~50質量部であり、好ましくは5~35質量部である。塗料組成物中には0.1~25質量%、好ましくは0.5~20質量%で含まれるのがよい。顔料が上記下限値未満であると、隠ぺい性が無く意匠性を変える事が出来ないという不具合があり、上記上限値を超えると分散性が悪く塗装してもブツなどが発生して好ましくないという不具合がある。
【0047】
(D)難燃剤
(D)難燃剤は、塗料組成物に配合される従来公知の難燃剤であればよい。例えば、無機系の難燃性向上成分であれば良く、リン化合物(トリフェニルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリスβ-クロロプロピルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム)や水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属化合物、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物(三酸化モリブデン)、アンチモン化合物(酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム)などが挙げられる。
【0048】
(D)難燃剤の配合量は(A)成分の固形分量、(B)成分の固形分量、(C)成分及び(D)成分の合計100質量部に対して1~10質量部であり、より好ましくは1~5質量部である。塗料組成物中には0.1~5質量%、好ましくは0.5~2質量%で含まれるのがよい。上記下限値未満又は上限値超では防汚性、耐候性等が低下する。平均粒径は0.5~20μmが好ましい。難燃剤の平均粒径は、レーザー回折型粒子径測定装置により測定される、体積平均粒径である。
【0049】
(E)つや消し剤
本発明の塗料組成物には、さらに(E)つや消し剤を含んでもよい。(E)つや消し剤としては、塗料組成物に配合される従来公知のつや消し剤であればよく、シリカや架橋型アクリル樹脂、架橋型ウレタン樹脂などなどが挙げられる。つや消し剤の量や種類を調整する事で、塗膜外観をマットやセミグロスといったものに調整しても良い。
【0050】
(E)つや消し剤の平均粒子径としては特に限定されないが、0.5μm~30μmであることが好ましく、より好ましくは1μm~15μmである。つや消し剤の平均粒径は、レーザー回折型粒子径測定装置により測定される、体積平均粒径である。
【0051】
(E)つや消し剤の配合量は、塗料組成物の全質量に対し、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~10質量%である。つや消し剤が下限値未満であると、つや消し効果が全く得られないおそれがある。上記上限値を超えると塗料組成物が白化するおそれがある。
【0052】
本発明の塗料組成物は、(A)シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョン及び(B)樹脂エマルジョンと、(C)顔料をあらかじめ水分散させたものと、(D)難燃剤及び(E)つや消し剤をあらかじめ水分散させたものとを、水系下でプロペラ式撹拌機やホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、ディスパーミキサーなどの公知の混合調製方法によって混合することによって得られる。
【0053】
例えば(B)成分をディスパーミキサーで500rpmにて撹拌しているところに(A)成分、(C)成分の水分散液、(D)成分及び(E)成分の水分散液を投入し、1000rpmで30分攪拌することで本発明の塗料組成物が得られる。
【0054】
塗料組成物の皮膜形成のための乾燥温度(MFT)範囲は特に限定されないが、30℃以下であることが好ましい。皮膜の硬度は、特に限定されないが鉛筆硬度で2B~4Hであることが好ましく、より好ましくは2B~2Hであることがよい。なお、硬度はJIS K5400-5-4で測定することができる。
【0055】
また、本発明の塗料用組成物には、性能に影響を与えない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、光安定化剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、増粘剤、界面活性剤、造膜助剤などの有機溶剤、他の樹脂等を添加してもよい。
【0056】
このようにして得られた本発明の家具及び建築内装用塗料組成物を木材、金属、樹脂、セラミックなどの基材の片面又は両面に塗布又は浸漬し、乾燥(室温~150℃)することで皮膜を形成する。本発明の塗料組成物からなる皮膜は、基材の長所を維持しながら、シリコーン樹脂の撥水性、耐候性、耐熱性、耐寒性、ガス透過性、摺動性などの利点を、長期に亘って付与することができる。これは、皮膜形成能を有する樹脂(B)と硬化性シリコーン樹脂(A)が丈夫な海島構造を作っているためと考えられる。
【0057】
木材基材としては、カエデ科、カバノキ科、クスノキ科、クリ科、ゴマノハグサ科、ナンヨウスギ科、ニレ科、ノウゼンカズラ科、バラ科、ヒノキ科、フタバガキ科、フトモモ科、ブナ科、マツ科、マメ科、モクセイ科等の木材が使用される。20~150℃、特に50~150℃で0.5~5時間熱風乾燥させる方法が好ましい。また、乾燥温度は120℃以下にすれば塗膜の変色を避けることができる。
【0058】
金属基材としては、Si、Cu、Fe、Ni、Co、Au、Ag、Ti、Al、Zn、Sn、Zr、それらの合金等が挙げられる。
【0059】
樹脂基材としては、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、セルロース、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー、ポリウレタン、及びエポキシ樹脂等が使用される。乾燥させる方法としては、室温下で1~10日間放置する方法が挙げられるが、硬化を迅速に進行させる観点から、20~150℃の温度で、1秒~10時間加熱する方法が好ましい。また、前記樹脂基材が加熱によって変形や変色を引き起こしやすい材質からなるものである場合には、20~100℃の比較的低温下で乾燥することが好ましい。
【0060】
セラミック基材としては、酸化物、炭化物、窒化物等の焼成物などが挙げられる。
【0061】
本発明の塗料組成物を基材へ塗装する方法は、特に限定しないが、例えば、グラビアコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、スクリーンコーター、カーテンコーター、などの各種コーターによる塗布方法、スプレー塗布、浸漬、刷毛塗り等が挙げられる。
【0062】
塗料組成物の基材への塗布量は、特に限定しないが、通常は、防汚性、施工作業性などの点から固形分換算で、好ましくは1~300g/m2、より好ましくは5~100g/m2の範囲または厚さ1~500μm、好ましくは5~100μmで形成し、自然乾燥又は100~200℃に加熱乾燥して成膜させるとよい。
【0063】
本発明の塗料組成物は、家具及び建築内装材に使用することで、優れた触感、耐摩耗性、防汚性を基材に与える。該塗料組成物による皮膜が形成された積層体は、基材本来の意匠性を維持しながら、優れた触感、耐摩耗性、及び防汚性を有する。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。重量平均分子量は、前述した方法で、1g/100ml濃度のオルガノポリシロキサンのトルエン溶液の比粘度ηsp(25℃)から計算した値である。また、下記製造例及び比較製造例で得た各樹脂エマルジョンの粒子径を、日本電子製JEM-2100TMを用いて測定した。
【0065】
<固形分の測定方法>
下記製造例及び比較製造例で得た樹脂エマルジョンの固形分は下記方法により測定した。
各樹脂エマルジョン(試料)約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ、1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出した。
【数1】
R:蒸発残分(%)
W:乾燥前の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
L:アルミ箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
アルミ箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
【0066】
(A)シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの製造
[製造例1]
オクタメチルシクロテトラシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン0.48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gを純水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水470gを徐々に加えて希釈した。圧力300kgf/cm
2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。該エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った。その後、15℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。
上記重合反応により得られるポリオルガノシロキサンの構造は
1H-NMR及び
29Si―NMR(装置名:JNM-ECA600、測定溶媒:CDCl
3、1H 周波数600MHz、室温、積算回数128回、29Si 周波数600MHz、室温、積算回数5000回)によって確認したところ、下記式(1-1)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)は250,000であった。
【化4】
式(1-1)において、R
2はγ-メタクリロキシプロピル基であり、Xはヒドロキシル基またはエトキシ基である。a、b、dの比率は表1に示す。
上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、メタクリル酸メチル(MMA)232gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで、上記ポリオルガノシロキサンとアクリル共重合させ、不揮発分45.2%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0067】
[製造例2]
オクタメチルシクロテトラシロキサン600g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン0.60g、ラウリル硫酸ナトリウム6gを純水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水470gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。該エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、5℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。
上記重合反応により得られるポリオルガノシロキサンの構造はNMR(装置名:JNM-ECA600、測定溶媒:CDCl3、測定条件は製造例1と同じ)によって確認したところ、上記式(1-1)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)は400,000であった。上記式(1-1)において、R2はγ-メタクリロキシプロピル基であり、Xはヒドロキシル基またはエトキシ基である。a、b、dの比率は表1に示す。
上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、メタクリル酸メチル(MMA)61gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで上記ポリオルガノシロキサンとアクリル共重合させ、不揮発分44.8%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0068】
[製造例3]
オクタメチルシクロテトラシロキサン300g、ジフェニルジメチルシロキサン300g(信越化学工業社製KF-54)、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン0.96g、50%アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム24g(ぺレックスSS-L、花王社製)を純水45gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水490gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm
2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。該エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で10~20時間重合反応を行った後、10℃で10~20時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gでpHを中性付近に中和した。
上記重合反応により得られるポリオルガノシロキサンの構造はNMR(装置名:JNM-ECA600、測定溶媒:CDCl
3、測定条件は製造例1と同じ)によって確認したところ、下記式(1-2)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)は8,000であった。
【化5】
上記式(1-2)において、R
2はγ-メタクリロキシプロピル基であり、R
3’及びR
3’’はフェニル基又はメチル基であり、R
3’及びR
3’’のうち少なくとも1はフェニル基であり、Xはヒドロキシル基またはエトキシ基である。a、b、c、dの比率は表1に示す。
上記中和後に得たエマルジョンは105℃で3時間乾燥後の不揮発分(固形分)が47.5%であった。上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、メタクリル酸メチル(MMA)242gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで上記ポリオルガノシロキサンとアクリル共重合させ、不揮発分45.5%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0069】
[製造例4]
上記製造例1を繰り返して均一な白色エマルジョンを得た。製造例1と同じく、該エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った。その後、15℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。得られたポリオルガノシロキサンは、上記式(1-1)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)250,000を有する。上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、アクリル酸ブチル(BA)116g、メタクリル酸メチル(MMA)116gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで上記ポリオルガノシロキサンとアクリル共重合させ、不揮発分44.9%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0070】
[比較製造例1]
上記製造例1を繰り返して均一な白色エマルジョンを得た。製造例1と同じく、エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、15℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。得られたポリオルガノシロキサンは、上記式(1-1)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)250,000を有する。
上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、メタクリル酸メチル(MMA)541gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで上記ポリオルガノシロキサンとアクリル共重合させ、不揮発分45.5%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0071】
[比較製造例2]
上記製造例1を繰り返して均一な白色エマルジョンを得た。製造例1と同じく、エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、15℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。得られたポリオルガノシロキサンは上記式(1-1)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)250,000を有する。アクリルを重合せず、このまま終了した。不揮発分44.8%のシリコーン樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0072】
[比較製造例3]
オクタメチルシクロテトラシロキサン552g、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン48g、ラウリル硫酸ナトリウム6gを純水54gに溶解したもの、及びドデシルベンゼンスルホン酸6gを純水54gに溶解したものを2Lのポリエチレン製ビーカーに仕込み、ホモミキサーで均一に乳化した後、水470gを徐々に加えて希釈し、圧力300kgf/cm
2で高圧ホモジナイザーに2回通し、均一な白色エマルジョンを得た。該エマルジョンを攪拌装置、温度計、還流冷却器の付いた2Lのガラスフラスコに移し、55℃で24時間重合反応を行った後、15℃で24時間熟成してから10%炭酸ナトリウム水溶液12gで中性付近に中和した。
上記重合反応により得られるポリオルガノシロキサンの構造はNMR(装置名:JNM-ECA600、測定溶媒:CDCl
3、測定条件は製造例1と同じ)によって確認したところ、下記式(1-3)で表され、Mw(重量平均分子量、測定方法は上述の通り)は250,000であった。
【化6】
式(1-3)において、R
2はγ-メタクリロキシプロピル基であり、Xはヒドロキシル基またはエトキシ基である。a、b、dの比率は表1に示す。
上記中和後の反応液(上記で得たポリオルガノシロキサン534g含む)に、メタクリル酸メチル(MMA)232gを3~5時間かけて滴下しながら30℃で過酸化物と還元剤でレドックス反応を行うことで上記ポリオルガノシロキサンへアクリル共重合させ、不揮発分45.0%のシリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンを得た。シリコーンアクリル共重合樹脂エマルジョンの平均粒径及び固形分量を表2に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
[調製例1]
(C)顔料を含む水分散液の調製
イオン交換水112部、デモールEP(花王社製ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)30部、ディスコートN-14(スチレン-マレイン酸モノエステル共重合体アンモニウム塩の水性分散液、第一工業製薬社製)50部、プロピレングリコール25部、(C)酸化チタン(タイペークCR-95(石原産業社製)平均粒子径0.28μmルチル型酸化チタン)500部およびガラスビーズ(直径:1mm)100部をホモディスパーで回転速度3000rpmにて60分間分散させた後、100メッシュの金網で濾過することにより、白色ペーストを調製した。
【0076】
[調整例2]
(D)難燃剤及び(E)つや消し剤を含む水分散液の調製
イオン交換水80部と、(D)難燃剤としてALH-3L(高耐熱 水酸化アルミニウム 河合石灰工業社製 平均粒子径4.5μm、1%熱分解温度280℃)10部と、(E)つや消し剤としてサイリシア550(平均粒径4μm、細孔容積0.8ml/g、富士シリシア社製コロイド状シリカ)10部とを混合し、ディスパーミキサー1000rpmで20分攪拌し、水分散液を得た。
【0077】
[調整例3]
(D)難燃剤を含む水分散液の調製
イオン交換水80部と、(D)難燃剤としてALH-3L(高耐熱 水酸化アルミニウム 河合石灰工業社製 平均粒子径4.5μm、1%熱分解温度280℃)20部とを混合し、ディスパーミキサー1000rpmで20分攪拌し、水分散液を得た。
【0078】
[調整例4]
(E)つや消し剤を含む水分散液の調製
イオン交換水80部と、(E)つや消し剤としてサイリシア550(平均粒径4μm、細孔容積0.8ml/g、富士シリシア社製コロイド状シリカ)20部とを混合し、ディスパーミキサー1000rpmで20分攪拌し、水分散液を得た。
【0079】
下記実施例及び比較例で用いた(B)樹脂エマルジョンは以下の通りである。
アロンA-104(水性アクリル樹脂エマルジョン、東亜合成社製、固形分40%)
ハイドランWLF-213(ポリウレタンディスパージョン DIC社製、固形分35%、平均分子量150,000)
ウォーターゾールBCD-3100(水性ポリエステル・アルキド樹脂、DIC社製、固形分43%)
【0080】
[実施例1]
(B)水性アクリル樹脂エマルジョンとして東亜合成社製の製品名「アロンA-104」(粘度300-1000mPa・s)を用いた。下記表3に記載の配合量にて、該樹脂エマルジョンを撹拌しているところに、(A)製造例1で得られたシリコ-ンアクリル共重合樹脂エマルジョンと、調製例1の白色ペースト、及び、調製例2の水分散液を加え、さらに固形分調整のためにイオン交換水を加え、ボールミルで2時間撹拌した。ボールを100メッシュでろ取して水系の塗料組成物を得た。該塗料組成物に含まれる固形分はおよそ35%であった。下記に示す方法に従い、杉木片及びPETフィルムに塗布し皮膜を形成した。
【0081】
[実施例2~8、比較例1~10]
下記表3又は4記載の組成にした他は上記実施例1の工程を繰り返して、水系の塗料組成物を製造した。各成分の配合量は塗料組成物全体として固形分が40%程度となるように調整した。該塗料組成物を、下記に示す方法に従い、杉木片及びPETフィルムに塗布し皮膜を形成した。
[実施例9~10、比較例11~12]
下記表8記載の組成にした他は上記実施例1の工程を繰り返して、水系の塗料組成物を製造した。各成分の配合量は塗料組成物全体として固形分が40%程度となるように調整した。該塗料組成物をSUS303のステンレス板に塗装に塗布し、皮膜を形成した。
【0082】
<成膜方法>
上記で得た塗料組成物を、杉木片、及びPETフィルム、またはSUS304のステンレス板に、バーコーターで、乾燥後の膜厚が26μmになる様に塗布した後、室温で2日間放置して皮膜を形成した。
杉木片及びSUS304のステンレス板上に形成した皮膜については、以下に示す方法にて触感、静動摩擦係数、及び防汚性を評価した。
PETフィルム上に形成した皮膜については、以下に示す方法にて、耐摩耗性を評価した。
【0083】
<静動摩擦係数測定及び触感>
HEIDON TYPE-38(新東科学社製)にて200gの金属圧子を上記各例の塗膜に垂直に接触させ、3cm/分で移動させた時の摩擦力を測定し、摩擦力から静摩擦係数、動摩擦係数を算出した。
また、静摩擦係数が0.10未満、動摩擦係数は0.07未満であり、かつ静摩擦係数と動摩擦係数の差が0.05未満である場合に、触感の評価を○とした。
【0084】
<耐摩耗性>
上記皮膜を形成したPETフィルムの耐摩耗性を、学振摩耗試験機にて測定した。100gfの重量をかけて金属接触物に綿布を装着し、塗膜が損傷するまでの回数を100回ごとに目視で確認した。破損する直前の回数を表に記載する。
【0085】
<防汚性(水性マジック・クレヨン除去性)>
皮膜に水性マジック及びクレヨンを5mm×2cmで塗った。夫々、5分間室温で乾燥させた後、ティシュに水を含ませて良くこすり取った。ほとんど除去できた場合(面積の70%以上を除去できた)を〇、少し除去できた場合(面積の10~30%を除去できた)を△、全く除去できなかった場合を×とし、表に記載する。
【0086】
<燃焼試験>
皮膜の燃焼試験及び耐候性試験は、下記の様にして塗料のフィルムを作成して評価した。
塗料組成物をPEのトレーに流し込み、60℃×24h乾燥して、120cm×1.3cmのフィルムを得た。
該フィルムをステンレス板に寝かせ、片方の端より着火ライターにて接炎し、もう片方の端まで燃焼するまでの時間を計測した。燃焼時間が長いほど、難燃性は良好である。
【0087】
<耐候性試験>
上記燃焼試験に記載の方法で得たフィルムを、JIS B7753:2007に規定するサンシャインカーボンアーク灯式の耐候性試験機を使用し、JIS A5759:2008の条件で500時間の促進耐候性試験を行った。全ての試験片において塗膜に膨れ、ひび割れ、及び剥がれ等の外観変化が無い場合を◎とし、それ以外は×とした。
【0088】
<水接触角>
各皮膜にイオン交換水の水滴0.2μLを接触させてから30秒後の水滴の接触角を自動接触角測定装置DMO―601(協和界面化学社製)を用いて測定した。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
上記表5乃至8に示す通り、本発明の塗料組成物は、各種基材に対し優れた触感、耐摩耗性、防汚性、難燃性、及び耐候性を付与する皮膜を形成する。また本発明の塗料組成物は水系であるため、作業面及び環境面で利点が大きい。本発明の水系塗料組成物は家具及び建築内装用の水系塗料として好適である。