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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】内燃機関のシリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/40 20060101AFI20240417BHJP
   F02F 1/36 20060101ALI20240417BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F02F1/40 B
F02F1/36 C
F01P3/02 F
F01P3/02 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021017524
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120557
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】岡林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】卯内 雄太
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-41487(JP,A)
【文献】特開2019-196734(JP,A)
【文献】特開2002-168147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
F01P 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気側面とシリンダボアとに連通した一対ずつの吸気ポートが、クランク軸線方向から見て前後に並ぶように形成されて、
前記各吸気ポートの対の下方には、前記シリンダボアの群の上方に広がる部分を有する下部冷却水ジャケットに連通した吸気ポート下方部冷却水ジャケットが個別に形成されている一方、前記吸気ポートの群の上方には上部冷却水ジャケットが形成されており、
前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットと前記上部冷却水ジャケットがポート間流路によって連通し、前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットとセンター側下部冷却水ジャケットには共通した冷却水導入口から通水される構成であって、
前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットは前記一対の吸気ポートを下方から覆うように形成されて、前記各吸気ポート下方部冷却水ジャケットの前後中間部から前記ポート間流路が分岐しており、
かつ、前記各吸気ポート下方部冷却水ジャケットと前記センター側下部冷却水ジャケットに前記共通の冷却水導入口が連通しており、前記冷却水導入口と前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットとを繋ぐ第1連通部の面積が、前記冷却水導入口と前記センター側下部冷却水ジャケットとを繋ぐ第2連通部の面積よりも大きくなっている、
内燃機関のシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内燃機関のシリンダヘッドに関するもので、特に、対ノッキング性に優れた冷却構造に特徴を有している。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンのような内燃機関において、点火プラグによる着火前に燃料に着火してしまうノッキングが予てより問題になっている。ノッキング対策としては様々な手段が提案されかつ実機に採用されているが、吸気の温度をできるだけ低く抑えることが有益である。
【0003】
吸気の温度を抑制する方法として、吸気ポートを断熱材で囲うことが行われているが、これは構造が複雑化してコストが嵩むという問題がある。他方、吸気ポートを冷却水で冷却することは従来から行われているが、特許文献1には、一対の吸気ポートの間に吸気ポート間流路を形成することが開示されており、このように吸気ポート間流路を形成すると、吸気ポートの冷却効果を増大して吸気温度の抑制に貢献できると解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-41487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、吸気ポートの対を挟んだ両側にシリンダ間流路が形成されて、シリンダ間流路の先端にシリンダブロックのウォータジャケットから冷却水が送られるようになっているが、シリンダ間流路の先端から吸気ポート間流路に向けて細い分岐路が形成されており、冷却水は、細い分岐路から吸気ポート間流路に送られている。
【0006】
他方、一対の吸気ポートに対応して各気筒ごとに一対の吸気バルブが配置されているが、吸気バルブやこれが当たるバルブシートは燃焼室の熱に晒されるため特に高温になる傾向があり、特に、シリンダヘッドは2つの吸気バルブシートの間の部位において高温になる傾向を呈する。
【0007】
従って、吸気の温度を効率良く抑制するには、一対の吸気ポート間の部位で且つできるだけ燃焼室に近い部位(バルブシートに近い部位)を冷却することが有益であるが、特許文献1では、シリンダ間流路の先端から吸気ポート間流路に向う分岐路は細いため、吸気ポート間流路に十分な量の冷却水を送れずに、吸気の冷却が不十分になることが懸念される。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、
「吸気側面とシリンダボアとに連通した一対ずつの吸気ポートが、クランク軸線方向から見て前後に並ぶように形成されて、
前記各吸気ポートの対の下方には、前記シリンダボアの群の上方に広がる部分を有する下部冷却水ジャケットに連通した吸気ポート下方部冷却水ジャケットが個別に形成されている一方、前記吸気ポートの群の上方には上部冷却水ジャケットが形成されており、
前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットと前記上部冷却水ジャケットがポート間流路によって連通し、前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットとセンター側下部冷却水ジャケットには共通した冷却水導入口から通水される」
という基本構成である。
【0010】
そして、上記基本構成において、
「前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットは前記一対の吸気ポートを下方から覆うように形成されて、前記各吸気ポート下方部冷却水ジャケットの前後中間部から前記ポート間流路が分岐しており、
かつ、前記各吸気ポート下方部冷却水ジャケットと前記センター側下部冷却水ジャケットに前記共通の冷却水導入口が連通しており、前記冷却水導入口と前記吸気ポート下方部冷却水ジャケットとを繋ぐ第1連通部の面積が、前記冷却水導入口と前記センター側下部冷却水ジャケットとを繋ぐ第2連通部の面積よりも大きくなっている」
という構成が付加されている。
【0011】
本願発明において、ポート間流路は、吸気側下部冷却水ジャケットから隆起しつつ上部冷却水ジャケットに向かうように形成するのが好ましい。また、吸気ポートには燃料噴射用のインジェクタが配置されるが、本願発明において、吸気側下部冷却水ジャケットはインジェクタの先端よりも下流側(すなわち燃料の噴霧エリア)に配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、冷却水導入口から吸気ポート下方部冷却水ジャケットに向かう第1連通部の開口面積が、冷却水導入口からセンター側下部冷却水ジャケットに向かう開口面積よりも大きくなっているため、冷却水は吸気側下部冷却水ジャケットに向けて強く流れる傾向を呈して、吸気ポート間流路にも強い水流を流すことができる。また、吸気ポート下方部冷却水ジャケットは一対の吸気ポートを下方から囲っているため、吸気ポートの冷却面積を大きくできる。
【0013】
このように、吸気ポート下方部冷却水ジャケット及びポート間流路に強い水流を形成できることと、吸気ポートの冷却面積を大きくできることが相まって、吸気ポートのうち特に燃焼室に近い部位を的確に冷却できる。これにより、吸気温度の低減機能を向上させてノッキング抑制効果を向上できる。
【0014】
上記のように、ポート間流路が吸気ポート下方部冷却水ジャケットから隆起する(立ち上がる)ように形成すると、吸気側下部冷却水ジャケットとポート間流路との接続面積が大きくなるため、ポート間流路への送水機能を向上できて特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態を吸気ポートの箇所で切断した縦断正面図である。
図2図1のII-II 視概略断面図で、下部冷却水ジャケットの平面図である。
図3図1のIII-III 視概略断面図で、上部冷却水ジャケットの平面図である。
図4】(A)は送水通路と吸気ポート下方部冷却水ジャケットの連通状態を示す図、(B)は送水通路と吸気側上部冷却水ジャケットの連通状態を示す図である。
図5図1の V-V視断面図である。
図6】要部の斜視図である。
図7】シリンダブロックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1).基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、方向を特定するため前後の文言を使用しているが、請求項で定義しているように、前後方向はクランク軸線方向である。前と後ろについては、タイミングチェーンが配置される側を前、変速機が配置される側を後ろとしている。平面視は、シリンダボアの軸心方向から見た状態である。
【0017】
本実施形態は、自動車用ガソリンエンジンに適用しており、エンジンは、シリンダブロック1と、その上面にガスケットを介して固定されたシリンダヘッド2とを備えている。シリンダヘッド2の上面には、ヘッドカバー3が固定されている。エンジンは、例えば3気筒又は4気筒であり、シリンダブロック1には、3つ又は4つのシリンダボア4がクランク軸線方向に並んで形成されている。
【0018】
シリンダヘッド2には、シリンダボア4に対応した下向き開口の燃焼室(凹所)5と、燃焼室5と吸気側面2aとに開口した吸気ポート6の群と、燃焼室5と排気側面(図示せず)とに開口した排気ポート7の群とが形成されている。吸気ポート6は1つの燃焼室5に対応して前後2つずつ形成されており、各吸気ポート6は、それぞれ吸気バルブ8によって開閉される。吸気ポート6は、下流側に向けて低くなるように(シリンダブロック1に近づくように)、シリンダボア軸心に対して傾斜している。
【0019】
排気ポート7も1つのシリンダボア4(燃焼室5)に対応して前後2つずつ形成されており、各排気ポート7は、それぞれ排気バルブ9によって開閉される。吸気バルブ8及び排気バルブ9は、ばね10で上向きに付勢されている。シリンダヘッド2には、バルブ8,9を受けるバルブシート10,11を嵌着している。
【0020】
吸気バルブ8と排気バルブ9とは、クランク軸線方向から見て、上に向けて互いの間隔が離れるようにシリンダボア軸心に対して傾斜している。シリンダヘッド2のうち各吸気ポート6の上の部位には、それぞれインジェクタ12が取付けられている。シリンダヘッド2の吸気側面2aには、吸気ポート6と連通する枝管を有する吸気マニホールド13が固定されている。
【0021】
(2).冷却構造
シリンダヘッド2には、冷却水が流れる冷却水ジャケットを設けている。冷却水ジャケットは、図2に全体を示す上部冷却水ジャケット15と、図3に全体を示す下部冷却水ジャケット14との2段構造になっており、下部冷却水ジャケット14は、各吸気ポート6の対の下方の箇所ごとに形成された吸気ポート下方部冷却水ジャケット14a(図1参照)と、排気ポート7の群の下方に位置した排気側下部冷却水ジャケット14bと、概ねシリンダボア4の群の上方部を中心に広がるセンター側下部冷却水ジャケット14cとを備えており、これらは一連に繋がっている。
【0022】
他方、上部冷却水ジャケット15も、吸気側上部冷却水ジャケット15aと、排気側上部冷却水ジャケット15bと、センター側上部冷却水ジャケット15cとを有しているが、吸気側上部冷却水ジャケット15aの面積は僅かであり、上部冷却水ジャケット15の大半は、センター側上部冷却水ジャケット15cと排気側上部冷却水ジャケット15bとで構成されている。
【0023】
図1に示すように、センター側下部冷却水ジャケット14cとセンター側上部冷却水ジャケット15cとは互いに連通しており、冷却水は、センター側下部冷却水ジャケット14cからセンター側上部冷却水ジャケット15cに流入するようになっている。
【0024】
詳細は後述するが、冷却水は、シリンダブロック1の吸気側から主としてセンター側下部冷却水ジャケット14cに流入し、図3に矢印の群で示すように、排気側下部冷却水ジャケット14bに向けて概ね横流れしつつ、排気側下部冷却水ジャケット14bの後端に設けた出口17に向かって縦流れてしていく。
【0025】
他方、上部冷却水ジャケット15では、冷却水は、センター側下部冷却水ジャケット14cからセンター側上部冷却水ジャケット15cに噴き上がって、吸気側と排気側とに分かれて横流れしつつ、排気側上部冷却水ジャケット15bの後端部に設けた出口17に向かって縦流れしていく。従って、上下の冷却水ジャケット14,15の出口17は共通化されている。なお、出口17は配水部と連通しており、冷却水は、温度に応じて配水部からラジエータやウォータポンプなどに送られる。
【0026】
図2,3において、符号18は点火プラグが挿入されるプラグホールを、符号19はバルブステムが挿通されるバルブ保持穴を、符号20はヘッドボルト挿通穴を示している。これらは、冷却水ジャケット14,15を上下に貫通する柱状の肉部に形成されており、冷却水は肉部の間等を縫って出口17に向かう。
【0027】
なお、下部冷却水ジャケット14と上部冷却水ジャケット15とを連通させずに、下部冷却水ジャケット14と上部冷却水ジャケット15とに独立して送水する構造も採用可能である。この場合も、下部冷却水ジャケット14の出口と上部冷却水ジャケット15の出口とは一体化される。
【0028】
吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aは、各吸気ポート6の対の箇所ごとに形成されており、平面視でシリンダボア4及び燃焼室5と同心の円弧状に形成されている。また、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aは、図5に示すように、一対の吸気ポート6を下方から囲うように下向きに膨れた(上向きに凹んだ)断面形状になっている。図1のとおり、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aは、吸気ポート6のうち吸気側面2aよりもバルブシート10に近い下流側に寄せて形成されている。従って、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aは、インジェクタ12よりも下流側に配置されている。
【0029】
下部冷却水ジャケット15を構成する各吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aとセンター側下部冷却水ジャケット14cとには、シリンダブロックに形成された送水通路21から冷却水が送られる。図7に示すように、送水通路21は、シリンダブロック1に形成されたウォータジャケット22の外側に位置してクランク軸線方向に長い形態になっており、シリンダブロック1の上面に開口してガスケットで塞がれることによって通路になっている。なお、図3において、送水通路21は形状を明確化するため点線のハッチングで表示している。
【0030】
そして、シリンダヘッド2(及びガスケット)に、請求項に記載した冷却水導入口の例として、シリンダブロック1の送水通路21と各吸気ポート下方部冷却水ジャケット14a及びセンター側下部冷却水ジャケット14cに連通した通水口23を形成して、各通水口23から、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aの前後端部と、センター側下部冷却水ジャケット14cの吸気側端部14dとに送水している。
【0031】
なお、符号14dで示した部位は、センター側下部冷却水ジャケット14cの一部に含めずに、吸気ポート側方冷却水ジャケットと呼ぶこともできる。すなわち、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aと吸気ポート側方部冷却水ジャケット14dとにより、吸気側下部冷却水ジャケットが構成されているということもできる。いずれにしても、請求項の構成に含まれる。
【0032】
従って、図4,5に示すように、通水口23と吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aの前後端部とに繋がった第1連通部24と、通水口23とセンター側下部冷却水ジャケット14cの吸気側端部14dとが繋がった第2連通部25とがあるが、第1連通部24は第2連通部25よりも大きい断面積になっている。従って、送水通路21から送られた冷却水は、センター側下部冷却水ジャケット14cよりも吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aに向けて強く圧送される傾向を呈している。
【0033】
更に、図1~5に示すように、一対の吸気ポート6の間に位置したポート間部26にポート間流路27が形成されており、ポート間流路27の下端は吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aに連通して、ポート間流路27の上端はセンター側上部冷却水ジャケット15cに連通している。図1のとおり、ポート間流路27は、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aからセンター側上部冷却水ジャケット15cに向けて斜め上向きに向かう傾斜姿勢になっている。
【0034】
センター側上部冷却水ジャケット15cは、基本的にはシリンダボア4の群の上方に位置している一方、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aもシリンダボア4に近い側に位置しており、このため、ポート間流路27の上端はシリンダボア4の上方に位置している。従って、ポート間流路27は、吸気ポート6の間の部位のうちバルブシート10に近接した部位に形成されている。このため、ポート間部27のうち燃焼室に近い部位やバルブシート10が冷却水によって的確に冷却される。
【0035】
図6に明示するように、ポート間流路27は、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aから上向きに立ち上がってセンター側上部冷却水ジャケット15cに向かっている。従って、ポート間流路27は、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aから立ち上がった隆起27aを有している。
【0036】
(3).まとめ
以上の説明とおり、ポート間部26にポート間流路27が形成されていることにより、ポート間部26やバルブシート10が冷却されるが、既述のとおり、通水口23と吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aとを繋ぐ第1連通部24が、通水口23とセンター側下部冷却水ジャケット14cとを繋ぐ第2連通部25よりも大きい面積になっていることにより、冷却水は吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aに対して前後両側から強く圧送されるため、ポート間流路27の断面積が小さくても、ポート間流路27に強い水流が発生して、ポート間部26やバルブシート10を的確に冷却できる。
【0037】
従って、吸気の温度低減機能を向上させて、ノッキング抑制効果を向上できる。なお、通水口23と吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aとを繋ぐ第1連通24は、通水口23とセンター側下部冷却水ジャケット14cとを繋ぐ第2連通部25よりも大きい面積になっているため、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aの水圧は高くなっているが、ポート間流路27は1つの吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aの箇所に1本だけあって細長いため、ポート間流路27を通過する水量よりもセンター側下部冷却水ジャケット14cに向かう水量の方が圧倒的に多い。従って、センター側下部冷却水ジャケット14cから排気側下部冷却水ジャケット14bに十分な量の冷却水を送水できる。
【0038】
実施形態のように、ポート間流路27に吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aと連通した隆起部27aを形成すると、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aからポート間流路27への冷却水の送りを確実化して、ポート間部26等の冷却性能を更に向上できる。
【0039】
また、冷機運転時に、インジェクタ12から噴出した霧化燃料が吸気ポート6の下面に付着するポートウェット現象が生じることがあるが、本実施形態のようにポート間流路27をインジェクタ12よりも下流側に配置すると、冷機運転時に冷却水によって吸気ポート6の下面を加温できるため、霧化燃料が付着しても、蒸発を促進してポートウェット現象を抑制できる利点がある。
【0040】
さて、シリンダヘッドの鋳造に際して、ウォータジャケットになる空洞の部分は砂の中子によって形成されるが、本実施形態では、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aはある程度の断面積があり、かつ、ポート間流路27によってセンター側下部冷却水ジャケット14cと繋がっているため、中子の強度と安定性を向上して歩留りを向上できる(特許文献1では、中子が折れやすくて歩留りが低いと解される。)。また、吸気ポート下方部冷却水ジャケット14aの前後両端部とセンター側下部冷却水ジャケット14cとも繋がっているが、この点でも、中子の強度を確保できて有利である。
【0041】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、上下冷却水ジャケットの具体的な形状や下部冷却水ジャケットに対する通水態様は、必要に応じて様々に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明は、実際に内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
4 シリンダボア
5 燃焼室
6 吸気ポート
10 バルブシート
12 インジェクタ
14 下部冷却水ジャケット
14a 吸気ポート下方部冷却水ジャケット
14b 排気側下部冷却水ジャケット
14c センター側下部冷却水ジャケット
15 上部冷却水ジャケット
15a 吸気側上部冷却水ジャケット
15b 排気側上部冷却水ジャケット
15c センター側上部冷却水ジャケット
21 シリンダブロックの送水通路
23 冷却水導入口の一例の通水口
24 通水口と吸気ポート下方部冷却水ジャケットを繋ぐ第1連通部
25 通水口とセンター側下部冷却水ジャケットを繋ぐ第2連通部
26 ポート間部
27 ポート間流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7