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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H01L23/50 U
H01L23/50 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021042330
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142230
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】田靡 京
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123614(JP,A)
【文献】特開2014-116499(JP,A)
【文献】特開2018-163962(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169485(WO,A1)
【文献】特開2011-077216(JP,A)
【文献】特開2014-007363(JP,A)
【文献】特開2018-067599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H01L23/28-23/31
H01L23/48
H01L23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、前記ダイパッドから延びる端子と、前記ダイパッドの上面に設けられた溝とを有するフレームと、
前記ダイパッドの前記上面における前記溝に重ならない領域に配置された半導体素子と、
前記半導体素子を覆うとともに、前記溝内に設けられた樹脂部材と、を備え、
前記溝は、底面と、前記底面に設けられた第1凹凸とを有し、
前記溝は、第1方向に延びる第1溝部と、前記第1方向と直交する第2方向における幅が前記第1溝部よりも広く、前記第1方向において前記第1溝部に連続する第2溝部とを有し、
前記第2溝部の底面に前記第1凹凸が設けられ、
前記第2溝部の深さは、前記第1溝部の深さよりも深い半導体装置。
【請求項2】
前記第1溝部と前記第2溝部との境界に、第2凹凸が設けられている請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2溝部は、前記第1溝部の前記第1方向の端に位置する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2溝部は、前記第1溝部の前記第1方向における中央部に位置する請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレームに溝を形成することで封止樹脂との密着性の向上を図る半導体装置がある。しかしながら、樹脂の種類と製品デザインとの組み合わせによっては、フレームと樹脂との密着性が不十分となり、半導体装置を車載等に用いる際の品質担保に影響し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2593912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、フレームと樹脂部材との密着性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、ダイパッドと、前記ダイパッドから延びる端子と、前記ダイパッドの上面に設けられた溝とを有するフレームと、前記ダイパッドの前記上面における前記溝に重ならない領域に配置された半導体素子と、前記半導体素子を覆うとともに、前記溝内に設けられた樹脂部材と、を備える。前記溝は、底面と、前記底面に設けられた第1凹凸とを有する。前記溝は、第1方向に延びる第1溝部と、前記第1方向と直交する第2方向における幅が前記第1溝部よりも広く、前記第1方向において前記第1溝部に連続する第2溝部とを有する。前記第2溝部の底面に前記第1凹凸が設けられ、前記第2溝部の深さは、前記第1溝部の深さよりも深い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の半導体装置の模式上面図である。
図2図2(a)は第1実施形態の溝の模式上面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA-A線に沿った断面図であり、図2(c)は図2(a)におけるB-B線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態による溝の形成方法を示す模式図である。
図4】第1実施形態による溝の形成方法を示す模式図である。
図5】第1実施形態による溝の形成方法を示す模式図である。
図6図6(a)は第2実施形態の溝の模式上面図であり、図6(b)は図6(a)におけるC-C線に沿った断面図であり、図6(c)は図6(a)におけるD-D線に沿った断面図である。
図7】第2実施形態による溝の形成方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
図1は、実施形態の半導体装置1の模式上面図である。
【0009】
半導体装置1は、フレーム10と、半導体素子30と、樹脂部材40とを備える。なお、図1では、内部構造の説明をわかりやすくするために、樹脂部材40は外形線のみを2点鎖線で表している。
【0010】
フレーム10は、ダイパッド20と、ダイパッド20の外側に延びる第1~第3端子11~13とを有する。フレーム10は、金属材料からなり、例えばCuからなる。
【0011】
ダイパッド20の平面形状は、例えば、第1方向Xに延びる1対の辺部21、22と、第1方向Xに直交する第2方向Yに延びる1対の辺部23、24を含む4つの辺部21~24を有する四角形状である。
【0012】
複数の第1端子11が、ダイパッド20の1つの辺部23から突出している。第1端子11は、ダイパッド20と一体に設けられている。
【0013】
第2端子12及び第3端子13は、ダイパッド20における第1端子11が設けられた辺部23の反対側の辺部24に対向するように位置し、第1端子11と反対方向に突出している。第2端子12及び第3端子13は、ダイパッド20から分離している。複数の第2端子12は一体に設けられている。第2端子12と第3端子13は互いに分離している。
【0014】
フレーム10は、複数のフレームが一体につながったリードフレームから切り出される。第2方向Yに隣接するフレーム同士は連結部14、15によって連結され、連結部14、15を切断することで、フレーム10は第2方向Yにおいて他のフレームと分離される。フレーム10における第1方向Xに延びる辺部21、22にはそれぞれ、切断後の連結部14、15の一部が突出して残っている。
【0015】
また、複数のフレームは第1~第3端子11~13を介して第1方向Xに連結され、第1~第3端子11~13を切断することで、フレーム10は第1方向Xにおいて他のフレームと分離される。
【0016】
ダイパッド20の上面に溝50が設けられている。例えば、第1方向Xに延びる2本の溝50が、第2方向Yに互いに離間して位置する。溝50は、ダイパッド20の4つの辺部21~24のうち、第1方向Xに沿って延びる辺部21、22の近傍に設けられている。例えば、溝50の一端は辺部23に達し、他端は辺部24に達する。
【0017】
半導体素子30は、ダイパッド20の上面20aにおける溝50に重ならない領域に配置されている。第2方向Yにおいて2つの溝50の間に半導体素子30が位置する。半導体素子30は、例えばはんだなどの接合部材により、ダイパッド20の上面20aに接合される。半導体素子30の上面に素子電極が形成され、素子電極は例えばCuなどの金属板により、端子12、13と電気的に接続される。なお、素子電極と端子12、13は、金属ワイヤにより接続してもよい。
【0018】
樹脂部材40は、少なくとも、ダイパッド20の上面20a及び半導体素子30を覆う。樹脂部材40は、ダイパッド20の上面20aに設けられた溝50内に設けられる。また、例えば、第1~第3端子11~13の一部は樹脂部材40に覆われ、第1~第3端子11~13の他の一部は樹脂部材40から露出している。
【0019】
例えば、連結部14、15の先端側の部分は、樹脂部材40の側面よりもわずかに突出する。連結部14、15の端面以外の面(上面、下面、及び側面)の大部分は樹脂部材40に覆われ、連結部14、15の端面は樹脂部材40から露出する。
【0020】
次に、溝50について詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図2(a)は第1実施形態の溝50の模式上面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA-A線に沿った断面図であり、図2(c)は図2(a)におけるB-B線に沿った断面図である。図2(b)及び(c)においても、図1と同様に樹脂部材40を2点鎖線で表す。
【0022】
溝50は、第1溝部51と第2溝部52とを有する。第1溝部51は第1方向Xに延び、後述するように、その第1溝部51の一部を金型で押しつぶすことで第2溝部52が形成される。
【0023】
第2溝部52は、第1溝部51よりも幅(第2方向Yの幅)が広く、第1方向Xにおいて第1溝部51に連続する。第2溝部52の深さは、第1溝部51の深さよりも深い。第2溝部52の底面52aに第1凹凸61が設けられている。第1凹凸61は、凹部61aと、凸部61b、61cとを含む。第1溝部51と第2溝部52との第1方向Xにおける境界に、第2凹凸62が設けられている。第2凹凸62は、凸部62aと、凹部62b、62cとを含む。
【0024】
例えば、第2溝部52は、第1溝部51の第1方向Xにおける少なくとも一方の端、好ましくは両端に位置する。したがって、図1においてフレーム10の四角形状のダイパッド20の四隅に第2溝部52が位置する。また、第2溝部52は、第1溝部51の第1方向Xにおける中央部に位置させてもよい。
【0025】
次に、図3(a)~図5(b)を参照して、第1実施形態による溝50の形成方法について説明する。
【0026】
まず、図3(a)及び(b)に示すように、ダイパッド20の上面20aに例えば金型を押し当てて第1溝部51を形成する。図3(a)は図2(a)と同部位の上面図であり、図3(b)は図2(b)と同部位の断面図である。
【0027】
例えば、第1溝部51は、ダイパッド20の上面20aと鈍角を形成する傾斜面を有する断面V字状に形成される。または、第1溝部51は、ダイパッド20の上面20aと直角な側面を有する断面凹形状に形成してもよい。第1溝部51は、平坦な底面51aを有する。また、第1溝部51は、エッチングにより形成してもよい。
【0028】
図4(a)は図3(a)に続く工程を表す上面図であり、図4(b)は図3(b)に続く工程を表す断面図である。第1溝部51を形成した後、図4(a)及び(b)に示すように、金型101を第1溝部51の一部の上に重ねる。
【0029】
図5(a)は図4(b)に続く工程を表す断面図であり、図5(b)は図5(a)に続く工程を表す断面図である。
【0030】
そして、図5(a)に示すように、金型101をダイパッド20の上面20aに押し当て、第1溝部51の周辺の上面20aを下方に押し込む。これにともない、第1溝部51は、断面形状を変形させて、潰れ始める。
【0031】
図5(b)に示すように、金型101によってさらにダイパッド20の上面20aを押し込み、第1溝部51をさらに押し潰す。これにより、図2(a)~(c)に示すように、第2溝部52が形成される。ダイパッド20において金型101に押し当てられた面が第2溝部52の底面52aになり、その底面52aに第1凹凸61が形成される。単なる平面を押し潰すのではなく、第1溝部51を押し潰すことで、第2溝部52の底面52aに第1凹凸61を形成することができる。
【0032】
また、図2(c)に示すように、第2溝部52が第1溝部51よりも深くなるように、上記金型101による押し潰しが行われ、第1溝部51と第2溝部52との境界に第2凹凸62が形成される。
【0033】
なお、第1溝部51の形状や金型101の形状によっては、第2溝部52の深さを、第1溝部51と同じ深さ又は第1溝部51よりも浅くしても、第1溝部51と第2溝部52との境界に凹凸を形成することが可能である。第2溝部52が第1溝部51よりも深くなるようにすることで、第1溝部51と第2溝部52との境界に確実に凹凸を形成することができる。
【0034】
本実施形態によれば、第1凹凸61及び第2凹凸62によるアンカー効果により、フレーム10と樹脂部材40との密着性が向上し、樹脂部材40のフレーム10からの剥離を抑制できる。これにより、樹脂部材40とフレーム10との隙間に水分が浸入することによる特性不良を防ぐことができ、例えば、車載用途のデバイスに求められる品質を担保することができる。
【0035】
樹脂部材40のフレーム10からの剥離を効果的に抑制するためには、第2溝部52はダイパッド20の四隅に配置することが望ましい。また、フレーム10は樹脂部材40を形成した後に切断され、連結部14、15の近傍に局所的に応力がかかりやすい。そのため、第2溝部52を、連結部14、15の近傍(例えば連結部14、15に対向する位置)に配置することも、樹脂部材40の剥離抑制に効果的である。
【0036】
また、半導体素子30をダイパッド20の上面20aにはんだで接合する場合には、第1凹凸61及び第2凹凸62は、はんだの上面20aからの流出を防ぐ機能も担う。
【0037】
[第2実施形態]
図6(a)は第2実施形態の溝50の模式上面図であり、図6(b)は図6(a)におけるC-C線に沿った断面図であり、図6(c)は図6(a)におけるD-D線に沿った断面図である。図6(b)及び(c)においても、図1と同様に樹脂部材40を2点鎖線で表す。
【0038】
第2実施形態においても溝50は、第1溝部51と第2溝部52とを有する。第2溝部52は、第1溝部51よりも幅(第2方向Yの幅)が広く、第1方向Xにおいて第1溝部51に連続する。第2溝部52の深さは、第1溝部51の深さよりも深い。第2溝部52の底面52aに第1凹凸63が設けられている。第1凹凸63は、凹部63aと、凸部63b、63cとを含む。第1溝部51と第2溝部52との第1方向Xにおける境界に、第2凹凸64が設けられている。第2凹凸64は、凸部64aと、凹部64b、64cとを含む。
【0039】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、先ず、第1溝部51を形成した後、その第1溝部51の一部を金型で押しつぶすことで第2溝部52が形成される。
【0040】
図7(a)は、図6(b)と同部位の断面図である。第1溝部51を形成した後、図7(a)に示すように、金型102を第1溝部51の一部の上に重ねる。金型102は、先端面102aと、先端面102aと鈍角を形成して傾斜した側面102bとを有する。
【0041】
図7(b)は図7(a)に続く工程を表す断面図であり、図7(c)は図7(b)に続く工程を表す断面図である。
【0042】
そして、図7(b)に示すように、金型102の先端面102aをダイパッド20の上面20aに押し当て、第1溝部51の周辺の上面20aを下方に押し込む。これにともない、第1溝部51は、断面形状を変形させて、潰れ始める。
【0043】
図7(c)に示すように、金型102によってさらにダイパッド20の上面20aを押し込み、第1溝部51をさらに押し潰す。これにより、図6(a)~(c)に示すように、第2溝部52が形成される。ダイパッド20において金型102の先端面102aに押し当てられた面が第2溝部52の底面52aになり、その底面52aに第1凹凸63が形成される。単なる平面を押し潰すのではなく、第1溝部51を押し潰すことで、第2溝部52の底面52aに第1凹凸63を形成することができる。
【0044】
ダイパッド20において金型102の傾斜した側面102bに押し当てられた面は、第2溝部52の側面となる。第2溝部52の側面は、金型102の側面102bの形状に合わせて、底面52aに対して傾斜した側面となる。
【0045】
また、図6(c)に示すように、第2溝部52が第1溝部51よりも深くなるように、上記金型102による押し潰しが行われ、第1溝部51と第2溝部52との境界に第2凹凸64が形成される。
【0046】
第2実施形態においても、第1凹凸63及び第2凹凸64によるアンカー効果により、フレーム10と樹脂部材40との密着性が向上し、樹脂部材40のフレーム10からの剥離を抑制できる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…半導体装置、10…フレーム、20…ダイパッド、30…半導体素子、40…樹脂部材、50…溝、51…第1溝部、52…第2溝部、61,63…第1凹凸、62,64…第2凹凸、101,102…金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7