(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240417BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240417BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240417BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240417BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240417BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240417BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20240417BHJP
H01L 21/385 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 653A
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 658F
H01L29/44 Y
H01L21/28 301A
H01L21/90 N
H01L21/385
(21)【出願番号】P 2021043658
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】可知 剛
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10304933(US,B1)
【文献】国際公開第2015/019862(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083335(US,A1)
【文献】特開2011-066067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 29/41
H01L 21/28
H01L 21/768
H01L 21/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層の一部の上に設けられた第2導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層の少なくとも一部の上に設けられた第1導電形の第3半導体層と
、
前記第3半導体層に接した第2電極と、
前記第2半導体層、前記第3半導体層及び前記第2電極とから離隔した第3電極と、
前記第3電極を覆い、前記第2半導体層及び前記第3半導体層に接した第1絶縁膜と、
前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に延設され、前記第2電極に接続され、前記第1半導体層及び前記第3電極から離隔した第4電極と、
前記第4電極の側面上に設けられ、空隙を介して前記第1半導体層に対向し、厚さが前記第1方向に向かうにつれて大きくなる第2絶縁膜と、
を備え
、
前記空隙の幅は前記第1方向に向かうにつれて小さくなり、
前記空隙の上端の幅は前記空隙の下端の幅よりも小さい半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体層に接し、前記空隙を介して前記第2絶縁膜に対向した第3絶縁膜を、さらに備え、
前記第3絶縁膜は、厚さ
が均一である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体層に接し、前記空隙を介して前記第2絶縁膜に対向した第3絶縁膜を、さらに備え、
前記第3絶縁膜は、厚さが前記第1方向に向かうにつれて大きくなる請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜と前記第3絶縁膜の間において前記第1半導体層と前記空隙に接した第4絶縁膜を、さらに備えた請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第4電極の下面と前記第1半導体層の間に設けられた第5絶縁膜を、さらに備えた請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2絶縁膜は、前記第5絶縁膜に接した下部を有する請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第4電極は、ネオジム、リン、ホウ素及びヒ素のうち、少なくともいずれか1つを不純物として含むポリシリコンからなり、前記不純物の濃度が、前記第1方向に向かうに従って高くなった請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば縦型パワー半導体には、トレンチ構造によってセルを微細化し、オン抵抗を低減するものがある。また、トレンチ構造によってドリフト層にフィールドプレート電極を設けて、オフ時における耐圧を向上する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性を向上できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、半導体部分と、第2電極と、第3電極と、第1絶縁膜と、第4電極と、第2絶縁膜と、を有する。前記半導体部分は、前記第1電極の上に設けられる。前記半導体部分は、第1半導体層と、第2半導体層と、第3半導体層とを有する。前記第1半導体層は、第1導電形であり、前記第1電極の上に設けられる。前記第2半導体層は、第2導電形であり、前記第1半導体層の一部の上に設けられる。前記第3半導体層は、第1導電形であり、前記第2半導体層の少なくとも一部の上に設けられる。前記第2電極は、前記第3半導体層に接する。前記第3電極は、前記第2半導体層、前記第3半導体層及び前記第2電極から離隔する。前記第1絶縁膜は、前記第3電極を覆い、前記第2半導体層及び前記第3半導体層に接する。前記第4電極は、前記第1電極から前記第2電極に向かう第1方向に延設される。前記第4電極は、前記第2電極に接続され、前記第1半導体層と前記第3電極から離隔する。前記第2絶縁膜は、前記第4電極の側面上に設けられ、空隙を介して前記第1半導体層に対向する。前記第2絶縁膜は、厚さが前記第1方向に向かうにつれて大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図4】(a)、(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【
図6】第2実施形態に係る半導体装置を示す拡大断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2は、
図1の領域Aを示す拡大平面図である。
図3は、
図2に示すB-B’線による断面図である。
図1~
図3においては、保護膜、及び、配線層が省略されている。視認性のため、
図2においては、後述する電極間絶縁膜46のみ二点鎖線で示している。
【0009】
本実施形態に係る半導体装置101は、電流を制御するために用いられ、例えば320V以下の電圧が印加されるパワー半導体装置である。半導体装置101は、複数のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を含む。
図1、
図2に示すように、半導体装置101は、複数のMOSFET101mが配列されている。
図2、
図3に示すように、一対のMOSFET101mは、後述する第4電極14に対して対称に設けられている。
【0010】
図1に示すように、半導体装置101は、上面に第2電極12とゲートパッド13pが設けられている。第2電極12は、例えばソース電極であって、ゲートパッド13pより広い。半導体装置101の上面の端縁には、終端絶縁膜70が設けられている。
【0011】
図1、
図3に示すように、半導体装置101は、底面に第1電極11が設けられている。第1電極11は、例えばドレイン電極であって半導体装置101の下面の略全域に設けられている。半導体装置101は、第1電極11と第2電極12の間に半導体部分20を有する。
【0012】
以下、説明の便宜上、本明細書においては、第1電極11から第2電極12に向かう方向を「上」といい、その逆方向を「下」というが、この表現は便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。上方向は「方向Z」ともいう。また、
図1に示すとおり、MOSFET101mの配列方向を「方向X」といい、方向Zおよび方向Xに直交する方向を「方向Y」という。方向Xの長さは「幅」ともいう。
【0013】
図3に示すように、半導体部分20は、第1電極11の上に設けられている。半導体部分20は、バッファ層24、ドリフト層21(特許請求の範囲における第1半導体層)、ベース層22(特許請求の範囲における第2半導体層)、ソース層23(特許請求の範囲における第3半導体層)を有し、上面に開口する複数のトレンチT1を含む。
【0014】
バッファ層24は、第1電極11に接している。バッファ層24は、第1導電形であって、例えばn形の半導体から成る。
ドリフト層21は、第1電極11の上に設けられ、詳細には、バッファ層24の上に設けられている。ドリフト層21は、第1導電形であって、例えばn-形の半導体から成る。ドリフト層21の不純物濃度は、例えば4×1015cm-3である。なお、「n-形」とは、「n形」よりもキャリア濃度が低いことを示し、「n+形」とは、「n形」よりもキャリア濃度が高いことを示す。p形についても同様である。
【0015】
図3に示すように、ベース層22は、ドリフト層21の一部の上に設けられ、詳細には、ドリフト層21におけるトレンチT1の側面を構成する部分の上に設けられている。ベース層22は、第2導電形であって、例えばp形の半導体から成る。
【0016】
ソース層23は、ベース層22の少なくとも一部の上に設けられ、詳細には、ベース層22におけるトレンチT1の側面を構成する部分の上に設けられている。ソース層23の方向Zの長さである厚さは、ベース層22の方向Zの長さである厚さより薄い。ソース層23は、第2電極12に接している。ソース層23は、第1導電形であって、例えばn形の半導体から成る。
【0017】
図3に示すように、トレンチT1は、半導体部分20において下方に延びた孔である。トレンチT1の方向Xの長さは、方向Zにおいて例えば略同一である。トレンチT1の側面は、大部分がドリフト層21によって構成されており、方向Zに沿って並んだドリフト層21、ベース層22、ソース層23によって構成されている。トレンチT1の底面は、ドリフト層21によって構成されている。トレンチT1は、方向Xに複数配列されている。
【0018】
図3に示すように、半導体装置101は、更に、コンタクト30、第3電極13、第4電極14、第1絶縁膜41、第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44、第5絶縁膜45、電極間絶縁膜46を有する。
図3においては、第1絶縁膜41、第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44及び第5絶縁膜45の境界を明示する為、これらの境界を実線で表示しているが、実際の半導体装置においては、これらの境界は明瞭に観察できないことがある。
【0019】
図3に示すように、コンタクト30は、ソース層23とベース層22の側方に設けられ、ソース層23の側面とベース層22の側面に接している。また、コンタクト30は、第2電極12に接している。コンタクト30は、例えばオーミックコンタクトである。
【0020】
第3電極13は、例えば、ゲート電極である。第3電極13は、半導体部分20内の例えばトレンチT1内に設けられている。第3電極13は、第1絶縁膜41を介して半導体部分20から離隔している。第3電極13は、第1絶縁膜41を介してドリフト層21の上部、ベース層22及びソース層23から離隔している。
【0021】
第4電極14は、例えばフィールドプレート電極である。第4電極14は、方向Xに複数配列されている。第4電極14は、トレンチT1内に設けられている。
図3に示すように、第4電極14は、方向Zに沿って延設され、幅が方向Zにおいて例えば均一である。第4電極14は、ドリフト層21と第3電極13から離隔している。第4電極14は、第2電極12に接続され、第2電極12と略同一の電位である。
【0022】
第4電極14は、例えばポリシリコンを含み、不純物としてネオジム(Nd)、リン(P)、ホウ素(B)、ヒ素(As)の少なくともいずれか1つを含み、導電性を有する。第4電極14は、例えばチタン(Ti)等の金属を含んでもよい。
【0023】
第1絶縁膜41は、例えばゲート絶縁膜であって、第3電極13の例えば上面を除いた面を覆っている。第1絶縁膜41は、第4電極14と第3電極13の間と、第3電極13とドリフト層21の上部、ベース層22及びソース層23の間とに設けられている。第1絶縁膜41は、ベース層22とソース層23に接している。第1絶縁膜41は、ドリフト層21の上部に接してもよい。第1絶縁膜41は、例えばケイ素(Si)と酸素(O)を含み、例えばシリコン酸化物(SiO2)である。
【0024】
図2、
図3に示すように、電極間絶縁膜46は、第2電極12と第3電極13の間と第2電極12と第4電極14の間に設けられている。電極間絶縁膜46は、第2電極12と第3電極13と第4電極14に接している。電極間絶縁膜46は、第1絶縁膜41の上部と接している。電極間絶縁膜46は、例えばシリコン酸化膜である。
【0025】
第2絶縁膜42は、トレンチT1内に設けられている。
図3に示すように、第2絶縁膜42は、第4電極14の側面に設けられている。第2絶縁膜42は、例えば、第4電極14における側面の上端を除く略全域に設けられている。一対の第2絶縁膜42が、1つの第4電極14の両側面に設けられている。第2絶縁膜42の上端部42bを除いた部分は、空隙G1を介してドリフト層21に対向している。
【0026】
図3に示すように、第2絶縁膜42の方向Xの長さである厚さは、方向Zである上方に向かうにつれて大きくなっている。第2絶縁膜42の上端部42bは、第1絶縁膜41に接している。第2絶縁膜42の下部42aは、第5絶縁膜45の側面に接し、下端が第4絶縁膜44の端部に接している。第2絶縁膜42は、例えばケイ素と酸素を含み、例えばシリコン酸化物である。
【0027】
第3絶縁膜43は、トレンチT1内に設けられている。第3絶縁膜43は、トレンチT1の側面において上端を除いた略全域に設けられている。
図3に示すように、第3絶縁膜43は、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の側面を構成する領域上に設けられ、ドリフト層21に接している。一対の第3絶縁膜43は、1つの第4電極14の両側に設けられている。
【0028】
第3絶縁膜43は、空隙G1を介して第2絶縁膜42に対向している。第3絶縁膜43は、空隙G1に接している。第3絶縁膜43の方向Xの長さである厚さは、上方に向かうにつれて大きくなっている。
【0029】
図3に示すように、第3絶縁膜43の上端部43bは、第1絶縁膜41に接し、第2絶縁膜42の上端部42bに接している。第3絶縁膜43の下端部43aは、第4絶縁膜44の端部に接している。第3絶縁膜43は、例えばケイ素と酸素を含み、例えばシリコン酸化物である。
【0030】
第4絶縁膜44は、トレンチT1内に設けられている。一対の第4絶縁膜44は、トレンチT1の底面の隅に設けられている。第4絶縁膜44は、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の底面を構成する領域上に設けられ、ドリフト層21に接している。第4絶縁膜44は、第2絶縁膜42と第3絶縁膜43の間に設けられており、空隙G1に接している。第4絶縁膜44の厚さである方向Zの長さは、略均一である。第4絶縁膜44は、例えばケイ素と酸素を含み、例えばシリコン酸化物である。
【0031】
第5絶縁膜45は、トレンチT1内に設けられている。
図3に示すように、第5絶縁膜45は、トレンチT1の底面の略中央に設けられている。第5絶縁膜45は、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の底面を構成する領域上に設けられ、ドリフト層21に接している。第5絶縁膜45は、ドリフト層21と第4電極14の下面の間に設けられている。第5絶縁膜45の幅は、第4電極14の下面の幅と同じである。第5絶縁膜45の側面は、第4絶縁膜44の端部と接している。
【0032】
また、第5絶縁膜45の厚さである方向Zの長さは、第4絶縁膜44の厚さより大きく、空隙G1の下面の幅よりも大きい。これにより、電界強度が高い傾向のある第4電極14の下面付近における電界強度は、低減される。第5絶縁膜45は、例えばケイ素と酸素を含み、例えばシリコン酸化物である。
【0033】
第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44及び第5絶縁膜45の比誘電率は、例えば3.0~3.9である。
第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44、第5絶縁膜45、及び、空隙G1により、第4電極14は、第3電極13、ドリフト層21、ベース層22、ソース層23から離隔し、絶縁されている。
【0034】
空隙G1は、トレンチT1内に設けられた空間であり、第2絶縁膜42と第3絶縁膜43の間の空間である。空隙G1は、例えば空気が充填されている。空隙G1の幅は、方向Zに向かうにつれて狭くなっている。
図3に示すように、空隙G1の断面形状は、略二等辺三角形であり、等辺にあたる2辺が第2絶縁膜42と第3絶縁膜43に接し、底辺が第4絶縁膜44に接している。
【0035】
空隙G1の下面は、第4電極14の下面より下に位置している。空隙G1の上端は、第4電極14の上面より下に位置している。空隙G1の比誘電率は、約1.0であり、第2絶縁膜42、第3絶縁膜43の比誘電率より低い。
【0036】
空隙G1の断面形状は、頂点や辺が変形した略三角形状でもよい。また、空隙G1の断面形状は、略三角形に限らず、下面側における幅が上方に向かうにつれて小さくなっていればよく、例えば略台形状でもよい。
【0037】
空隙G1が略台形状の場合は、第3絶縁膜43の上端部43bと第2絶縁膜42の上端部42bは、相互に接しないが、ともに第1絶縁膜41に接する。この場合、第2絶縁膜42の上端部42bと第3絶縁膜43の上端部43bの間には、空隙G1の上端が介在する。
【0038】
以下に、本実施形態に係る半導体装置101の動作を説明する。
半導体装置101は、オフ時において、第2電極12は、例えば、電源装置から0Vの電位が印加され、第1電極11は、例えば、電源装置から正の電位が印加される。このとき、ソース電位である第4電極14により、ドリフト層21には、トレンチT1の側面から空乏層が延びていく。
【0039】
空乏層は、第4電極14とトレンチT1の側面の間の電気容量を調整することによってトレンチT1の側面に対して略平行に伸びるため、半導体装置101の耐圧が向上する。電気容量の調整は、第4電極14とトレンチT1の側面の間に配置した第2絶縁膜42及び第3絶縁膜43によって行われており、詳細には、第2絶縁膜42の厚さと第3絶縁膜43の厚さの合計値を、上面側において大きく、下方に向かうにつれて小さくして行われている。これにより、第4電極14とドリフト層21の間の電気容量は、電位が低い上面側において大きく、電位が高い底面側に向かうにつれて小さくなっている。
【0040】
また、半導体装置101は、第4電極14とトレンチT1の側面の間に第2絶縁膜42と第3絶縁膜43を配置してドリフト層21の電界強度を上げている。電界強度の積分値が例えば耐圧となるため、半導体装置101は、耐圧が向上する。また、第2絶縁膜42の厚さと第3絶縁膜43の厚さの合計値は、上下方向において連続的に変化するため、トレンチT1の側面を構成するドリフト層21の電界強度も連続的に向上し、耐圧を更に向上している。
【0041】
以上のように、半導体装置101は、耐圧が向上するため、オン抵抗を低減するためにドリフト層21の不純物濃度を高く設定しても、耐圧性が良好となる。また、半導体装置101は、空隙G1を用いて第4電極14を絶縁するため、空隙G1を設けない場合と比較してMOSFET101mの幅を小さくすることができ、半導体装置101に設けるMOSFET101mの数を増やすことができる。この結果、オン抵抗を低減できる。
【0042】
以下に、本実施形態における半導体装置101の製造方法について説明する。
図4(a)、(b)及び
図5は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【0043】
図4(a)に示すように、半導体部分20にトレンチT1を形成し、トレンチT1の内面に絶縁膜F1を形成し、絶縁膜F1の内面に第4電極14を形成する。
絶縁膜F1は、例えばシリコン酸化膜である。
第4電極14は、例えば金属、または不純物が添加されたポリシリコンにより形成する。
【0044】
図4(b)に示すように、第4電極14の両側に位置する絶縁膜F1を、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)またはウェットエッチングにより除去して、第5絶縁膜45を形成する。
第5絶縁膜45は、第4電極14の下面とトレンチT1の底面との間に残存した絶縁膜F1である。第4電極14と第5絶縁膜45の両側には、空間が形成される。
【0045】
図5に示すように、第4電極14と第5絶縁膜45の両側の空間に、絶縁膜F2を形成する。絶縁膜F2は、例えばシリコン酸化膜である。絶縁膜F2を、所定条件のLPCVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition:減圧化学気相成膜)によって形成する。これにより、絶縁膜F2は、トレンチT1の側面及び底面と、第5絶縁膜45の側面と、第4電極14の側面に形成される。所定条件とは、例えば、ガス圧の設定によって、
図4(b)に示す空間の底部にガスが届き、空間の底部の堆積レートが空間の上部の堆積レートより小さくなるようにし、温度の設定によって、堆積レートが高まるようにすることである。
【0046】
図5に示すように、絶縁膜F2は、空間の底部から上方に向かうにつれて厚く形成され、トレンチT1の上部を例えば閉塞する。絶縁膜F2は、第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44である。このように、第2絶縁膜42と第3絶縁膜43と第4絶縁膜44は、相互に接した状態で形成される。
【0047】
以下に、本実施形態に係る半導体装置101の効果について説明する。
本実施形態に係る半導体装置101によれば、第4電極14の側面と、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の側面を構成する領域の間に比誘電率が低い空隙G1を配置することにより、MOSFET101mの幅を小さくでき、半導体装置101の導通経路を増やすことができる。この結果、オン抵抗を低減できる。
また、本実施形態に係る半導体装置101によれば、第2絶縁膜42と、第3絶縁膜43と、下方における幅が上方に向かうにつれて小さくなっていく空隙G1を、第4電極14の側面と、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の側面を構成する領域の間に設けることにより、耐圧を向上できる。耐圧が向上するため、オン抵抗を低減するためにドリフト層21の不純物濃度を高く設定しても、耐圧性を良好にできる。
【0048】
本実施形態のように第4電極14の側面に第2絶縁膜42と第3絶縁膜43を設けない場合、具体的には、第4電極14の側面と、ドリフト層21の表面におけるトレンチT1の側面を構成する領域の間に空隙のみが配置された半導体装置は、例えば340V以下の電圧が印加される設定の場合、ドリフト層の不純物濃度が約3×1015cm-3となり、オン抵抗が約1250mΩ・mm2となる。これに対し、同様の設定における本実施形態に係る半導体装置は、ドリフト層21の不純物濃度を例えば約5×1015cm-3に設定でき、オン抵抗が例えば約720mΩ・mm2となる。
このように、本実施形態に係る半導体装置101によれば、耐圧を向上し、かつ、電流量を向上できる。
【0049】
また、本実施形態に係る半導体装置101によれば、第2絶縁膜42と第3絶縁膜43の間に空隙G1を配置することにより、半導体部分20における応力の発生を抑制できる。また、第2絶縁膜42、第3絶縁膜43、第4絶縁膜44の製造工程は、空隙を設けずにトレンチT1の内側を絶縁膜で埋めるよりも容易になる。
【0050】
(第2実施形態)
本実施形態に係る半導体装置102は、第4電極14Aが、不純物の濃度勾配が設定されたポリシリコンによって形成され、空隙G1の断面形状が、略直角三角形である。
図6は、本実施形態に係る半導体装置を示す拡大断面図である。
【0051】
第4電極14Aは、不純物としてネオジム(Nd)、リン(P)、ホウ素(B)、ヒ素(As)の少なくともいずれか1つを含み、不純物濃度が、上部において高く、下方にむかうに従って低くなっている。第4電極14Aの不純物濃度は、下部から方向Zに向かって連続的に高くなっている。
【0052】
第2絶縁膜42Aの厚さは、下部42Aaから上に向かうにつれて大きくなっている。詳細には、第2絶縁膜42Aは、下部42Aaの厚さが略均一であり、下部42Aaより上の部分の厚さが、上方に向かうにつれて大きくなっている。第2絶縁膜42Aの上端部42Abは、第3絶縁膜43Aの上端部43Abに接している。
【0053】
第3絶縁膜43Aの厚さは、略均一である。第4絶縁膜44Aの厚さは、第3絶縁膜43Aの厚さと略同一である。
本実施形態に係る半導体装置102においても、第2絶縁膜42Aの厚さと第3絶縁膜43Aの厚さの合計値は、上面側において大きく、下方に向かうにつれて小さくなっている。空隙G1の幅は、下部において狭く、上方に向かうにつれて小さくなっている。
【0054】
以下、本実施形態に係る半導体装置102の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体装置102の製造方法を示す模式図である。
本実施形態における第4電極14Aは、トレンチT1の側面と底面に形成した絶縁膜の内面及び上面に、不純物を含まないポリシリコンを形成し、ポリシリコンの上面に例えば高濃度の不純物を含む膜を配置し、不純物をポリシリコンに熱拡散させた後、トレンチ内部以外のポリシリコンを除去することにより形成する。これにより、第4電極14Aは、不純物濃度が上部において高く、下方に向かうにつれて連続的に低くなる。
【0055】
次に、第4電極14Aの両側の絶縁膜を除去し、第4電極14Aと第5絶縁膜45の両側に空間を形成し、
図7に示すように、空間内に絶縁膜F2Aを熱酸化によって形成する。絶縁膜F2Aは、シリコン酸化膜である。熱酸化によるシリコン酸化膜の堆積レートは、不純物濃度が高くなると上がる。第5絶縁膜45における熱酸化の堆積レートは、第4電極14Aの下部における熱酸化の堆積レートより例えば低い。したがって、第4電極14Aにおける第2絶縁膜42Aの厚さは、第4電極14Aの下部から上部にむかって連続的に厚くなる。第2絶縁膜42Aの下部42Aaの厚さは、略均一であり、第4電極14Aにおける第2絶縁膜42Aの厚さより例えば小さい。
【0056】
本実施形態における半導体装置102によれば、第1実施形態と同様、耐圧を向上し、かつ、電流量を向上できる。
【0057】
本実施形態における上記以外の構成、動作、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0058】
(第2実施形態の変形例)
本変形例における第4電極14Aは、不純物濃度が例えば3段階に設定されたポリシリコンから形成され、空隙G1の断面形状が略直角三角形である。
図8は、本変形例に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
【0059】
図8に示すように、本変形例における第4電極14Aは、下部14A1と中間部14A2と上部14A3を含む。中間部14A2の不純物濃度は、下部14A1の不純物濃度より高く、上部14A3の不純物濃度より低い。このように、第4電極14Aの不純物濃度は、方向Zに向かう従って高くなっている。第4電極14Aは、不純物としてネオジム(Nd)、リン(P)、ホウ素(B)、ヒ素(As)の少なくともいずれか1つを含む。
【0060】
本実施形態における第4電極14Aは、低濃度の不純物を含むポリシリコンと、中濃度の不純物を含むポリシリコンと、高濃度の不純物を含むポリシリコンを堆積して形成される。
【0061】
図8に示すように、第4電極14Aと第5絶縁膜45の両側の空間に設ける絶縁膜F2Aは、第2実施形態と同様、例えばシリコン酸化膜であり、例えば熱酸化により形成される。これにより、第4電極14Aの中間部14A2における堆積レートは、上部14A3における堆積レートより低く、下部14A1における堆積レートよりも高い。また、絶縁膜F2Aのドリフト層21における堆積レートと第5絶縁膜45における堆積レートは、第4電極14Aにおける堆積レートより例えば低い。
【0062】
これにより、第4電極14Aの側面における絶縁膜F2Aの厚さは、上部において大きく、下方に向かうにつれて段階的に小さくなる。したがって、第2絶縁膜42Aの厚さも、上部42A3において大きく、下方に向かうにつれて段階的に小さくなる。
図8に示すように、第2絶縁膜42Aは、下部42Aa、中間下部42A1、中間上部42A2、上部42A3において例えば4段階の厚さになっている。第2絶縁膜42Aの中間上部42A2の厚さは、中間下部42A1の厚さよりも大きく、上部42A3の厚さより小さい。第2絶縁膜42Aは、第5絶縁膜45の側面に接する下部42Aaの厚さが、中間下部42A1の厚さより小さい。
【0063】
図8に示すように、空隙G1の幅は、下部において大きく、上方に向かうにつれて小さくなっている。空隙G1の断面形状は、略直角三角形状であるが、第2絶縁膜42Aと第5絶縁膜45に接した斜辺において複数の段差を含む。
【0064】
本実施形態における半導体装置によれば、第1実施形態と同様に電流量を向上し、耐圧を向上できる。
本変形例における上記以外の構成、動作、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0065】
本発明の実施形態によれば、信頼性を向上できる半導体装置を提供することができる。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれるMOSFETにおける半導体部分、複数の電極、及び、絶縁膜の具体的な構成や材質等に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
11:第1電極
12:第2電極
13:第3電極
13p:ゲートパッド
14、14A:第4電極
14A1:下部
14A2:中間部
14A3:上部
20:半導体部分
21:ドリフト層
22:ベース層
23:ソース層
24:バッファ層
30:コンタクト
41:第1絶縁膜
42、42A:第2絶縁膜
42A1:中間下部
42A2:中間上部
42A3:上部
42a、42Aa:下部
42b、42Ab:上端部
43、43A:第3絶縁膜
43b、43Ab:上端部
43a:下端部
44、44A:第4絶縁膜
45:第5絶縁膜
46:電極間絶縁膜
70:終端絶縁膜
101、102:半導体装置
101m:MOSFET
A:領域
F1:絶縁膜
F2、F2A:絶縁膜
G1:空隙
T1:トレンチ
X、Y、Z:方向