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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 7/18 20060101AFI20240417BHJP
   B02C 2/04 20060101ALI20240417BHJP
   B02C 7/08 20060101ALI20240417BHJP
   A23G 1/06 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
B02C7/18
B02C2/04 D
B02C7/08
A23G1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021511494
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012947
(87)【国際公開番号】W WO2020203450
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019068930
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】三角 勝
(72)【発明者】
【氏名】杉本 尚泉
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-070742(JP,A)
【文献】特開2005-081220(JP,A)
【文献】特開昭60-193551(JP,A)
【文献】特開2018-069136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
A23G 1/00- 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、
下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備え、
前記導入部を構成する壁面は、前記開口部から側方に延びる平面状の下面と、前記導入部の内径が上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなるように傾斜する筒状の内面とを含み、当該下面が前記コニカル臼の前記入口部の全面を覆い、
前記導入部において前記内面と前記下面とが鋭角をなす、ことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記導入部の内径は、上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記導入部の内面の傾斜角度をθとすると、
45°<θ<75°
が成り立つことを特徴とする請求項1または2に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記外臼と前記内臼との間に、回転する付着防止突起部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項5】
回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、
下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備え、
前記導入部を構成する壁面は、前記開口部から側方に延びる平面状の下面と、前記導入部の内径が上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなるように傾斜する筒状の内面とを含み、当該下面が前記コニカル臼の前記入口部の全面を覆い、
前記入口部の前記外臼の内径をD1、前記導入部の前記開口部の径をd1とすると、
0.5<d1/D1<0.8
が成り立つことを特徴とする粉砕機。
【請求項6】
回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、
下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備え、
前記導入部を構成する壁面は、前記開口部から側方に延びる平面状の下面と、前記導入部の内径が上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなるように傾斜する筒状の内面とを含み、当該下面が前記コニカル臼の前記入口部の全面を覆い、
前記導入部の前記下面と前記内臼の上面との隙間を隙間h1、前記内臼の上端部の外径をD2とすると、
0.5<2h1/(D1-D2)<1
が成り立つことを特徴とする粉砕機。
【請求項7】
回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、
下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備え、
前記導入部を構成する壁面は、前記開口部から側方に延びる平面状の下面と、前記導入部の内径が上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなるように傾斜する筒状の内面とを含み、当該下面が前記コニカル臼の前記入口部の全面を覆い、
前記導入部の上に、前記固体原料を前記導入部へ供給するホッパーと、
前記固体原料の前記導入部に至る経路に設けられ、回転する棒状の撹拌部材とを備えていることを特徴とする粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、カカオ豆等の固体原料を粉砕する粉砕機に関する。本願は、2019年3月29日に日本で出願された特願2019-068930号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
この種の粉砕機としては、例えば特許文献1に開示されている電動粉挽き機が知られている。この電動粉挽き機は、被粉砕物が投入され、次段に送る開口を有する投入部と、導入調整部からの被粉砕物を粗く粉砕する粗粉挽き部と、粗粉挽き部で粉砕された被粉砕物をさらに細かく粉砕する精細粉挽き部と、精細粉挽き部への被粉砕物の導入量を調整する調整部とを備えている。
【0003】
また、特許文献1では、導入領域の温度が被粉砕物が有する油分の温度より低くなるように構成し、排出領域の温度が被粉砕物が有する油分の温度よりも高くなるよう構成し、カカオ豆の粉同士の固着を防止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開公報「特開2018-69136号公報」(2018年5月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の粉砕機は、次のような問題点を有している。図10は、従来の粉砕機の要部の構成を示す縦断面図である。図10に示す粉砕機101は、回転臼である内臼121と固定臼である外臼122とからなるコニカル臼111を有している。内臼121と外臼122との間の入口部123には、粉砕される固体原料が導入部112から投入される。導入部112は、円筒形であり、下端部の内径が外臼122の内径と略同一になっている。固体原料は例えばカカオニブである。カカオニブは、カカオ豆を焙煎して粗粉砕したものである。カカオ豆は、油分が50%程度であり、融点は35℃程度である。
【0006】
このような粉砕機101において、カカオニブ113を粉砕するために、内臼121が回転すると、内臼121と外臼122とによりカカオニブ113が粉砕される。この場合、コニカル臼111での粉砕能力以上のカカオニブ113が入口部123に投入された場合、コニカル臼111の内部に入りきらないカカオニブ113、およびコニカル臼111によりカカオニブ113を粉砕して形成されたカカオ粉末は、図10に矢印にて示すように、コニカル臼111の入口部123から導入部112へと逆流する。また、カカオ粉末は粉砕されることで熱を持ち、コニカル臼111は粉砕動作時の摩擦によって熱を持ち、コニカル臼111の熱は導入部112へと伝わる。このため、カカオ粉末から油分が溶け出し、導入部112の内面にカカオ粉末が堆積する(図10の堆積粉末114)。この結果、導入部112からコニカル臼111へのカカオニブ113の供給を円滑に行えなくなる。
【0007】
図11は、図10に示した堆積粉末114が増加した結果に生じる一般的なトラブルの状態を示す。図11の(a)はラットホール、図11の(b)はブリッジ、図11の(c)はブロッキング、図11の(d)は付着残留が生じた状態である。
【0008】
本発明の一態様は、コニカル臼に固体原料を投入する導入部の内面における固体原料の粉末の堆積を抑制することができる粉砕機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉砕機は、回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、コニカル臼に固体原料を投入する導入部の内面における固体原料の粉末の堆積を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の粉砕機としての粉砕ユニットを備える粉砕装置の斜視図である。
図2図1に示した粉砕ユニットの斜視図である。
図3図2に示した粉砕ユニットの分解斜視図である。
図4図2に示した粉砕ユニットの縦断面を含む斜視図である。
図5図4に示した粉砕ユニットの縦断面部分の正面図である。
図6図5に示した粉砕ユニットの詳細な構成、および粉砕ユニットの動作を示す説明図である。
図7】本発明の他の実施形態の粉砕ユニットの詳細な構成、および粉砕ユニットの動作を示す説明図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態の粉砕ユニットの詳細な構成、および粉砕ユニットの動作を示す説明図である。
図9図8に示したコニカル臼の内臼に対する付着防止・撹拌部材の取り付け状態を示す斜視図である。
図10】従来の粉砕機の要部の構成を示す縦断面図である。
図11図10に示した堆積粉末が増加した結果に生じる一般的なトラブルの状態を示す図であって、図11の(a)はラットホール、図11の(b)はブリッジ、図11の(c)はブロッキング、図11の(d)は付着残留が生じた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(固体原料の粉砕についての概要)
穀類や豆類等の固体の粉砕は、固体が粉砕されることによって用途が飛躍的に拡大するため、さまざま食品に対して利用されている。しかしながら、均一な粉砕物を効率良く、かつ風味の劣化を防いで行うことの困難さもまた良く知られているところである。粉砕効率を重視すれば、粉砕物の粒子が粗く不均一となり、小麦粉、蕎麦粉等では滑らかさが失われ、うどんや蕎麦の品質が低下するのみならず、粉砕時に余分な熱が掛かるために酸化による風味の劣化が起こり易い。粉砕時に余分な摩擦熱が粉砕物に加わった場合、お茶では新鮮な風味が損なわれ、豆乳では青臭さの強いものになってしまう。臼をゆっくりと回転させて粉砕物を粉砕するという古くからの考え方は、摩擦熱の発生が抑えられるので、加工中の粉砕物の風味の劣化を防ぐという点で極めて理にかなっている。
【0013】
石臼のように回転する砥石と固定された砥石の間のクリアランスによって、粉砕物の粒度を調整するという粉砕方式は、材質が天然石からセラミック、金属へと変わっても、基本的な考えは同じである。これは乾式粉砕においても、湿式粉砕に於いても同様であり、蕎麦製造における蕎麦の実の粉砕は乾式で行われ、豆腐製造に於ける大豆の粉砕は湿式で行われている代表例である。石臼方式での粉砕は、様々な分野で利用されているが、乾式、湿式を問わず1段の粉砕で目的の粒子サイズとなるよう、回転砥石部と固定砥石部のクリアランス調整を行って実施されている。また、材質をステンレスの様な金属とした粉砕機においても、その回転刃と固定刃とのクリアランスの調整は、1段の粉砕で目的のサイズの粉砕物となるよう設計され、実施されている。
【0014】
例えば、チョコレートの場合、カカオ豆を、発酵、乾燥、焙煎、皮の除去処理がなされ、いわゆるカカオニブと呼ばれる状態に加工されたものを使用する。チョコレート工房など店舗で粉砕する場合は石臼方式を利用することがあり、石臼同士のクリアランスを段階的に調整する。所望の滑らかなチョコレートになるまで、クリアランスを徐々に狭くしながら粉砕を複数回繰り返す必要がある。原料であるカカオの一粒のサイズはクリアランスに対して比較的大きく不利である。すなわち、カカオは徐々に細かく粉砕されるので、目的とする粒子となるまでに時間が掛かることとなる。
【0015】
カカオの粉砕には、カカオの融点が35℃程度であり、カカオニブ粉砕時の臼とカカオニブとの摩擦熱により液(ペースト)状となることを利用し、湿式粉砕を採用する。粉砕中のカカオおよび臼の温度は成り行きで決まることになり従来制御されてこなかった。温度が低ければ、カカオが臼内で流動できず溝に固着し、粉砕できない上、モーターへの負荷が増大することになる。一方温度が高すぎる場合は、カカオが焦げ付くことがあり、カカオの品質を低下させることになる。
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態の粉砕機としての粉砕ユニット11を備える粉砕装置1の斜視図である。図2は、図1に示した粉砕ユニット11の斜視図である。図3は、図2に示した粉砕ユニット11の分解斜視図である。図4は、図2に示した粉砕ユニット11の縦断面を含む斜視図である。図5は、図4に示した粉砕ユニット11の縦断面部分の正面図である。
【0017】
(粉砕装置1の概要)
図1に示すように、粉砕装置1は、粉砕ユニット11、保温容器12、ホッパー13、モータ14および粉末取出しレバー15を備えている。
【0018】
粉砕ユニット11は保温容器12の内部に収容され、ホッパー13は粉砕ユニット11の上に取り付けられている。ホッパー13は固体原料を収容する。本実施形態では固体原料がカカオニブである場合について説明する。モータ14は粉砕装置1の下部に設けられ、粉砕ユニット11の粉砕部26を回転させる。粉末取出しレバー15は粉砕装置1の側部に位置する。粉末取出しレバー15が下方へ回転操作されることにより、粉砕ユニット11にて粉砕されたカカオニブの粉末(カカオ粉末)を取出し口16から取り出すことができる。
【0019】
(粉砕ユニット11の構成)
図2から図5示すように、粉砕ユニット11は、上部に筐体部21を有し、下部に回収搬送部22を有している。筐体部21は、粉砕ユニット11を保温容器12の内部に対して出し入れする際に使用するハンドル23を有している。筐体部21の内部には、上から下方へ、ホッパー受部24、導入部25および粉砕部26が設けられている。
【0020】
ホッパー受部24は、粉砕ユニット11の上に配置されるホッパー13を受ける。ホッパー受部24は下端部に開口部を有する。ホッパー13はカカオニブを収容しており、導入部25は、ホッパー13からホッパー受部24を介して供給されるカカオニブを受け入れる。導入部25は下端部に開口部25aを有する。
【0021】
粉砕部26は、中央部にコニカル臼27を有し、コニカル臼27の周りに平臼28を有する。コニカル臼27は、回転臼である内臼29と固定臼である外臼30とからなる。外臼30は円筒形状を有し、内臼29は外臼30に挿入され、下部から上部へ向かうにしたがって、外径が漸次小さくなった形状を有する。コニカル臼27の上端部における外臼30の内側は、カカオニブの入口部33となっている。コニカル臼27は、導入部25から投入されたカカオニブ45(図6参照、固体原料)を粉砕し、粗いカカオ粉末とする。
【0022】
平臼28は、回転臼である下臼31と固定臼である上臼32とからなる。下臼31は内臼29の外周部に固定され、内臼29と一体となっている。上臼32は外臼30の外周部に固定され、外臼30と一体となっている。内臼29および下臼31の中心部には中心軸37が設けられている。平臼28は、コニカル臼27にて形成された粗いカカオ粉を微細なカカオ粉末に粉砕する。
【0023】
回収搬送部22は、上部に材料受部34を有し、材料受部34に接続された搬送通路35を有し、材料受部34の下に駆動伝達部36を有している。材料受部34の上には粉砕部26が配置され、材料受部34は粉砕部26にて形成されたカカオ粉末を受ける。搬送通路35は、材料受部34が受けたカカオ粉末を下方へ搬送する。駆動伝達部36は、モータ14の駆動力を材料受部34上に載置されている粉砕部26の中心軸37に伝達し、粉砕部26(内臼29および下臼31)を回転させる。
【0024】
なお、図4および図5では、コニカル臼27の内臼29に図7にて説明する付着防止・撹拌部材44が設けられている状態を示している。
【0025】
(粉砕ユニット11の詳細な構成、動作および利点)
図6は、図5に示した粉砕ユニット11の詳細な構成、および粉砕ユニット11の動作を示す説明図である。
【0026】
図6に示すように、導入部25の開口部25aの径は、コニカル臼27の入口部33の外臼30の内径よりも小さくなっている。コニカル臼27の入口部33において、内臼29の回転力はカカオニブ45同士を伝搬し、導入部25のカカオニブ45も動かされることになるが、上記構成により、コニカル臼27の入口部33に投入されたカカオニブ45およびカカオニブ45を粉砕して形成されたカカオ粉末は、導入部25の下のコニカル臼27の入口部33内の小さい範囲にて回転し、導入部25へ逆流し難くなり、回転力が伝搬される範囲も抑制できる。これは、導入部25の下面がいわゆる返しとなり、カカオニブ45およびカカオ粉末の導入部25への逆流を抑制するためである。さらに、カカオニブ45同士の擦れを低減し、導入部25でのカカオ粉末の発生を抑制できる。この結果、導入部25でのカカオ粉末(固体原料の粉末)の堆積を抑制し、導入部25からコニカル臼27へのカカオニブ45の投入を円滑に行うことができる。また、コニカル臼27では、投入されたカカオニブ45の導入部25への逆流を導入部25の下面にて抑制し、投入されたカカオニブ45を効率よく粉砕することができる。
【0027】
また、導入部25の内径は、上部から開口部25aに向うにしたがって漸次小さくなっている。すなわち、導入部25の内面は、上部から開口部25aに向うにしたがって径が漸次小さくなる傾斜面となっている。カカオニブ45は、コニカル臼27の入口部33から伝搬される回転力を受け、開口部25a付近の導入部25においても回転(旋回)することになる。この回転によりカカオニブ45には遠心(外)方向に移動しようとする力が働き、カカオニブ45およびカカオ粉末は導入部25の内面に押しつけられ、カカオ粉末は徐々に押し固められるように堆積することになる。そこで、導入部25が傾斜面を備えることで、カカオ粉末は、上方へと移動し、導入部25の内面に押しけようとする力を受け流すことが可能となる。これにより、コニカル臼27から導入部25へカカオ粉末が戻ってきた場合であっても、そのカカオ粉末は、導入部25の斜面に沿って上方へ移動し易く、導入部25の開口部25a付近の一か所に堆積し難くなる。
【0028】
導入部25の内面の水平面に対する傾斜角度は、傾斜角度をθとすると、45°<θ<75°であることが好ましい。傾斜角度θは、45°以下にすると、導入部25の径が大きくなり過ぎる上、斜面にカカオニブが残留することがある。一方、傾斜角度θは、75°以上にすると、回転による遠心方向に働くカカオ粉末を押し固めようとする力を上方へ逃がす効果が少ない。したがって、コニカル臼27から導入部25へ戻ってきたカカオ粉末が導入部25の上方へ移動し難く、開口部25a付近にて堆積し易くなる。
【0029】
コニカル臼27の入口部33の外臼30の内径と導入部25の開口部25aの径との関係は、入口部33の外臼30の内径をD1、導入部25の開口部25aの径をd1とすると、0.5<d1/D1<0.8であることが好ましい。(請求項3)
導入部25の下面と内臼29の上面との隙間、および内臼29の上端部の外径の関係は、導入部25の下面と内臼29の上面との隙間を隙間h1、内臼29の上端部の外径をD2とすると、0.5<2h1/(D1-D2)<1であることが好ましい。
【0030】
2h1/(D1-D2)は、0.5以下であると、カカオニブ45がコニカル臼27の内臼29と外臼30との間に入り難くなる。一方、2h1/(D1-D2)は、1以上であると、導入部25から入口部33に投入されたカカオニブ45が導入部25へ戻り易くなる。
【0031】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0032】
(粉砕ユニット11の詳細な構成、動作および利点)
図7は、本実施形態の粉砕ユニット11の詳細な構成、および粉砕ユニット11の動作を示す説明図である。
【0033】
図7に示すように、本実施形態の粉砕ユニット11は、コニカル臼27の内臼29と外臼30との間に、回転する付着防止突起部材41を備えている。付着防止突起部材41は、一端部側部分が内臼29の上面にねじにて固定され、他端部側部分が内臼29と外臼30との間に入り込むように、斜め下方へ折り曲げられている。付着防止突起部材41の他端部側部分は、外臼30の内周面に生じた堆積粉末42を掻き取るようになっている。これにより、粉砕ユニット11では、コニカル臼27に堆積粉末42が生じることによるコニカル臼27での粉砕効率の低下を抑制できるようにしている。
【0034】
コニカル臼27では、カカオニブ45を長時間粉砕していると、入口部33における外臼30の内周面に堆積粉末42が生じ、コニカル臼27での粉砕効率が低下する。堆積粉末42が生じる理由は、図10にて説明した場合と同様、粉砕されることでカカオ粉末が熱を持ち、コニカル臼27が粉砕動作時の摩擦によって熱を持ち、これら熱によってカカオ粉末から油分が溶け出し、カカオ粉末が入口部33における外臼30の内周面に堆積するためである。そこで、本実施形態の粉砕ユニット11では、内臼29に付着防止突起部材41を設け、内臼29とともに回転する付着防止突起部材41により堆積粉末42を掻き落とすようにしている。
【0035】
なお、付着防止突起部材41は、内臼29に設けられ、内臼29ともに回転する構成に限定されず、他の機構に駆動されて回転する構成であってもよい。
【0036】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0037】
(粉砕ユニット11の詳細な構成、動作および利点)
図8は、本実施形態の粉砕ユニット11の詳細な構成、および粉砕ユニット11の動作を示す説明図である。図9は、コニカル臼27の内臼29に対する付着防止・撹拌部材44の取り付け状態を示す斜視図である。
【0038】
図8に示すように、本実施形態の粉砕ユニット11は、導入部25に至るカカオニブ45の移動経路に設けられた、回転する棒状の撹拌部材43を備えている。本実施形態では、撹拌部材43は、付着防止突起部材41の一端部に接続され、付着防止突起部材41および撹拌部材43を有する付着防止・撹拌部材44の一部として構成されている。
【0039】
撹拌部材43は、導入部25の開口部25aから導入部25の内部へ挿入され、ホッパー受部24の下部に達している。撹拌部材43は、内臼29に設けられているので、内臼29とともに回転する。これにより、導入部25に至るカカオニブ45の移動経路において、カカオニブ45が滞留する事態を防止し、導入部25を介してカカオニブ45を円滑にコニカル臼27に投入することができる。
【0040】
なお、撹拌部材43は、付着防止・撹拌部材44の一部として設けられた構成に限定されず、単独に設けられていてもよい。また、撹拌部材43は、内臼29に設けられ、内臼29ともに回転する構成に限定されず、他の機構に駆動されて回転する構成であってもよい。
【0041】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る粉砕機は、回転臼である内臼と固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部とを備えている。
【0042】
本発明の態様2に係る粉砕機は、上記態様1において、前記導入部の内径は、上部から前記開口部に向うにしたがって漸次小さくなっている構成としてもよい。
【0043】
本発明の態様3に係る粉砕機は、上記態様1または2において、前記入口部の前記外臼の内径をD1、前記導入部の開口部の径をd1とすると、0.5<d1/D1<0.8が成り立つ構成としてもよい。
【0044】
本発明の態様4に係る粉砕機は、上記態様1から3のいずれか1態様において、前記導入部の下面と前記内臼の上面との隙間を隙間h1、前記内臼の上端部の外径をD2とすると、0.5<2h1/(D1-D2)<1が成り立つ構成としてもよい。
【0045】
本発明の態様5に係る粉砕機は、上記態様1から4のいずれか1態様において、前記導入部の内面の傾斜角度をθとすると、45°<θ<75°が成り立つ構成としてもよい。
【0046】
本発明の態様6に係る粉砕機は、上記態様1から5のいずれか1態様において、前記外臼と前記内臼との間に、回転する付着防止突起部材を備えている構成としてもよい。
【0047】
本発明の態様7に係る粉砕機は、上記態様1から6のいずれか1態様において、前記導入部の上に、前記固体原料を前記導入部へ供給するホッパーと、前記固体原料の前記導入部に至る経路に設けられ、回転する棒状の撹拌部材とを備えている構成としてもよい。
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