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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】低温焼成粉体コーティング樹脂
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20240417BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20240417BHJP
   C09D 163/02 20060101ALI20240417BHJP
   C09D 163/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D5/03
C09D163/02
C09D163/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021521428
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079318
(87)【国際公開番号】W WO2020089132
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/751,797
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18214348.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19157915.0
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521158783
【氏名又は名称】オルネクス ユーエスエー インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】509282295
【氏名又は名称】オルネクス イタリー エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カヴァリエリ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】エジーグ、カリスタス ウゴー
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155893(JP,A)
【文献】特開2002-235032(JP,A)
【文献】特開平08-283656(JP,A)
【文献】特開2006-070082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
C09D 5/03
C09D 163/02
C09D 163/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃~150℃の間の低温で硬化するための粉体コーティング組成物であって、
a.カルボン酸基を有するポリエステル樹脂Aである、カルボン酸基官能性樹脂Aと、
b.グリシジル基を有するビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂である、第1のグリシジル官能性樹脂B1と、
c.グリシジル基を有するフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂である、第2のグリシジル官能性樹脂B2と、
d.少なくとも1つの熱硬化性触媒Cと、
を含む粉末コーティング組成物であって、
ビスフェノールAエポキシ樹脂の当量(B1樹脂中のエポキシ基のモル数)と、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂の当量(B2樹脂中のエポキシ基のモル数)との間の比率が、70/30~55/45の間であり、
該粉体コーティング組成物が追加成分を50重量%未満含有する、上記粉体コーティング組成物
【請求項2】
前記組成物が、15~80mgKOH/gの算術的な平均酸価を有するカルボキシ基を含有する結晶性ポリエステル樹脂または半結晶性ポリエステル樹脂を有さない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂Aが、
a.前記ポリエステル樹脂Aは、少なくとも50mgKOH/gの酸価および/または10mgKOH/g未満の水酸基価を有する、
b.前記ポリエステル樹脂Aは、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも1000の数平均分子量(Mn)を有する、
c.前記ポリエステル樹脂Aは非晶質樹脂であり、30~90℃の間に含まれるガラス転移温度を有する、
d.前記ポリエステル樹脂Aは、少なくとも2.0の官能価を有する、
の1つまたは複数の特徴を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂B1が、
a.前記エポキシ樹脂B1は、少なくとも450g/当量のエポキシ当量を有する、
b.前記エポキシ樹脂B1は、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも500の数平均分子量(Mn)を有する、
の特徴のうち、少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂B1が、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、30℃~45℃までのガラス転移温度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂B1が、2.0未満の官能価(「算出Mn」/EEWのように分子あたりのグリシジル基の平均数として記載される官能価)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂B2が、少なくとも190g/当量のエポキシ当量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂B2が、190~230g/当量の間に含まれるエポキシ当量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂B2が、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも700の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂B2が、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、38~53℃であるガラス転移温度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂B2が、3.0~6.0の間に含まれる官能価(「算出Mn」/EEWのように、分子あたりのグリシジル基の平均数として定義される官能価)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリエステルAのカルボン酸基の当量(樹脂A中のカルボキシ基のモル数)と、成分Bの当量(すなわち、B1およびB2におけるエポキシ基の総数)との間の比率が、25/75~55/45の間である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ポリエステルAのカルボン酸基の当量(樹脂A中のカルボキシ基のモル数)と、成分Bの当量(すなわち、B1およびB2におけるエポキシ基の総数)との間の比率が、25/75~45/55の間である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物
a.ポリエステル樹脂Dを含有する少なくとも1つのカルボン酸基含有ポリエステル樹脂D、
b.少なくとも1つのビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1、
c.任意選択的に少なくとも1つのフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2、及び
d.任意選択的に1つの熱硬化性触媒F、
を含む粉体コーティングと、が混合され乾式混合混合物
【請求項15】
前記基材の少なくとも一方の表面を、請求項1~13のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物によってコーティングする工程と、前記コーティングされた基材を加熱し、前記基材上の前記コーティングを熱硬化して、前記基材上に前記コーティング組成物の接着層を形成する工程と、を含む、基材をコーティングするためのプロセス。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いて、部分的にまたは全体的にコーティングされた、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸基含有ポリエステル樹脂、カルボン酸基と反応可能なエポキシ樹脂、および熱硬化性触媒を含む、低温硬化のための粉体コーティング組成物に関する。
【0002】
これらの熱硬化性粉体コーティングは、従来の粉体コーティング組成物を硬化するのに必要となる過剰な熱条件/超過した時間条件に耐えることが不可能である、木材、ファイバーボード、ガラス繊維、組立型金属材料および他の材料などの熱に弱い基材をコーティングするために設計されている。本発明の粉体コーティング組成物は、150℃未満の温度で硬化する場合、卓越した可撓性および溶剤耐性とともに高光沢で、滑らかな表面を呈する完成品を製造する。
【0003】
更には、本発明の粉体コーティング組成物は、異なる反応性の特定の粉体コーティング組成物と合わせられた際にも、依然としてこうした低温硬化条件にて相当の可撓性および溶剤耐性を維持する、低光沢の最終コーティングを提供することができる。粉体コーティング組成物は、室温にて乾燥状態であり、細かく分割され、流動性が非常に高く、固体材料であるものだが、これらは、液体コーティング組成物以上に、近年著しく普及してきている。
【0004】
近年、熱硬化性粉体コーティング組成物は、少なくとも150℃、または少なくとも160℃以上といったむしろ高温にて一般には硬化される。こうした推奨温度未満では、コーティングは不十分な見た目、ならびに不十分な物理特性および化学特性を有する。こうした制限の結果、粉体コーティング組成物は、木材および熱に弱い成分を含有しているプラスチックまたは組立型金属部品などの熱に弱い基材のコーティングには一般的に使用されない。熱に弱い基材または成分の両方は、著しい劣化および/または変形を避けるため、好ましくは140℃未満の低い硬化温度が求められている。低温にて硬化可能な粉体組成物はまた、製造時間および製造コストを減少させることが可能であり、完全な硬化を得るのに必要なエネルギーが少ないため、金属などの熱耐性基材にも望ましい。
【背景技術】
【0005】
低温の熱硬化性粉体コーティング組成物は、数年前からこうした課題に対する解決策として提案されてきている。
【0006】
例えば、国際公開第96/24628号は、予め加熱されたエポキシ化フェノール-ホルムアルデヒド樹脂と、ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂とが高温で反応することで得られる、特定のエポキシ樹脂を基材とする粉体コーティング組成物について記載している。フェノール-ホルムアルデヒド(ノボラック)エポキシ化樹脂は、樹脂の粘度を減少させ(反応希釈剤)、コーティングの流動性を向上させるために加えられる。
【0007】
逆に、エポキシ樹脂の物理混合は、例2(OK)対比較例3に報告されているような同様の可撓性/機械的要件を提供しないものとして示されている。
【0008】
国際公開第2004067650号は、放射線硬化性である粉体コーティングのための樹脂について記載している。相対的に低温で溶融(140℃で30分間)させた後、放射線硬化が行われる。ただしこうした硬化性組成物は、放射線硬化を提供するための特別な機器を必要とする(UVまたは電子ビーム搭載オーブンが必要となる)。
【0009】
国際公開第2016012252号、国際公開第2016012253号および国際公開第2016012254号は、カルボン酸基を有するポリエステル樹脂およびビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂を基材とする、異なる反応性の2種類の粉体コーティングを合わせて得られる、低光沢塗布物のための粉体コーティングについて記載している。160℃での粉体組成物硬化が可能である際には、この組成物は「低温焼成」として考えられる。
【0010】
国際公開第2018007373号は、ポリ酸官能性ポリエステル成分A、ポリエポキシ官能性成分B、ポリ無水物官能性成分C、および熱硬化性触媒Dを含む、低温硬化性粉体コーティング組成物について記載している。可塑剤として反応するポリ無水物官能性成分Cの存在を必要とするこの組成物は、より高額であり、ポリエステルとエポキシ硬化剤の特定の組合せに対してのみ有効である。
【0011】
国際公開第2018150038号は、低温硬化のための(半)結晶成分を含有する粉体コーティング組成物について記載している。結合剤は、非晶質ポリエステル樹脂、(半)結晶性樹脂およびエポキシ樹脂といった少なくとも3種類の成分を含む。このエポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノールAとフェノールのノボラックエポキシ樹脂である。(半)結晶性樹脂が存在することでコーティングの扱いにマイナスの影響が及ぶ。これにより押出し後の固体化および粉砕が更に困難となる。更には、最終粉体コーティング組成物は、通常状態で保存中に塊を形成する傾向がある。
【発明の概要】
【0012】
したがって、低温にて熱硬化可能(「低温焼成」組成物)であり、本明細書にて以下に定義されるように低温で硬化させた後に、溶剤で含浸させたとしても優れた溶剤耐性を呈するコーティングを生じさせることが可能である粉体コーティング組成物を提供することが本発明の目的である。更には、粉体コーティング組成物を硬化する際に得られたフィルムは、滑らかさ、可撓性(カッピング)、硬度および黄変への耐性など物理特性の優れた組合せを有し得る。
【0013】
ここで驚くべきことに、末端カルボン酸基を有する少なくとも1つのポリエステル樹脂、少なくとも1つの、ビスフェノールAエポキシ樹脂と、フェノールまたはクレゾールエポキシ樹脂との特定の組合せと、硬化触媒との混合物を含む結合剤を基材とする熱硬化性粉体コーティング組成物は、硬化の際、滑らかさ、可撓性、硬度およびとりわけMEK浸漬剥離試験に対する卓越した耐久性といった物理特性の優れた組合せを呈することがあることが見いだされた。
【0014】
したがって、
a.カルボン酸基を有するポリエステル樹脂Aである、カルボン酸基官能性樹脂A、
b.グリシジル基を有するビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂である、第1のグリシジル官能性樹脂B1、
c.グリシジル基を有するフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂である、第2のグリシジル官能性樹脂B2、および
d.少なくとも1つの熱硬化性触媒Cを含む、低温硬化用の粉体コーティング組成物が提供される。
【0015】
本発明の別の態様では、粉体コーティング組成物は、同種ではあるが異なる反応性の第2の組成物と合わせられて、つや消しコーティングを提供する。
【0016】
したがって、上記組成物は、
a.少なくとも1つのカルボン酸基含有ポリエステル樹脂D、
b.少なくとも1つのビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1、
c.任意選択的に少なくとも1つのフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2、および
d.任意選択的に1つの熱硬化性触媒F
を含む粉体コーティングと、乾式混合にて混合される。
【0017】
こうした変性粉体コーティング組成物は、低温で、低光沢(つや消し)、非常に滑らかで良好な溶剤耐性および可撓性の粉体コーティングを提供することが可能である。
【0018】
定義
「低温硬化」は、150℃未満、例えば100℃~150℃の温度で硬化するよう設計されていることを意味する。硬化温度は好ましくは、140℃未満、例えば100℃~140℃である。こうした温度での塗布および硬化の際、本発明のコーティング組成物は、非常に滑らかで高光沢である最終製品を得ることができ、良好な溶剤耐性および可撓性を実証している。
【0019】
「樹脂」は典型的には、その官能基に関連する反応を介して硬化または架橋することが可能である、官能基を有するポリマーである。当該反応は、熱(熱硬化性組成物)および/または放射線(放射線硬化性組成物向け)によって引き起こされ、恒久的に共有(架橋)結合を形成することで、ポリマー鎖を結合させ、硬化樹脂を生じさせる。
【0020】
「官能基」とは、本明細書では、例えばカルボン酸基(-COOH)、水酸基(-OH)またはオキシラン(またはグリシジルまたはエポキシドと呼ばれる)基などの分子内の原子の共有結合基を意味する。これは別の分子の官能基と反応することが可能である。例えば、カルボン酸官能性ポリエステル樹脂は、例えばエポキシド基を含有するエポキシ樹脂など、別の分子の官能基と反応可能であるカルボン酸官能基を含む。
【0021】
樹脂または熱硬化性粉体コーティング組成物を特徴付けるのに使用される用語「非晶質」および「結晶性」(時には「半結晶性」を含む)は、本技術にて使用されている非公式用語であり、結晶化度の程度に対し、該当の樹脂または熱硬化性粉体コーティング組成物の関連する特徴を示す。非晶質樹脂は、樹脂が温度範囲を超えた際に溶融する融点(Tm)を有さない。一方、結晶性樹脂は典型的にはTmを有する。非晶質樹脂は典型的には、そのTgによって定義される。結晶性樹脂がTgを有する場合、その時はTgはTm未満である。「Tg」とは、本明細書ではガラス転移温度を意味する。Tgは、本明細書に記載されるようにDSC(示差走査熱量測定)を用いて計測される。
【0022】
本発明の熱硬化性粉体コーティング組成物の硬化は熱を用いて行われるものであり、これは例えばIR(赤外線)ランプを使用し、「熱硬化」と呼ばれ得る。明確にするために記すと、用語、熱硬化は、紫外線(UV)または硬化を引き起こす電子ビームなどの放射線硬化を含まない。
【0023】
硬化可能熱硬化性粉体コーティング組成物は、例えば物品などの物体に適用され、熱硬化後に基材上にフィルムまたはコーティングを形成する。こうしたコーティングは、組成物が1つまたは複数の顔料を含有する場合、典型的には塗料と呼ばれ得る。
【0024】
「混合物」または「物理混合物」は、化学的変換なしに、および/または例えば成分間の化学反応に関連するいかなるプロセスなしに、2つまたは複数の成分を一緒にして生じさせることで得られる組成物を意味する。例えば「乾式混合」混合物は、熱の添加を伴わない、2つの成分または粉体組成物の物理混合によって得られる。
【0025】
官能性樹脂、および存在する際には硬化触媒を含有する組成物は(こうした官能性樹脂は一緒に反応して硬化の際(すなわち架橋の際)に硬化させた組成物を形成することが可能である)、多くの場合、コーティング組成物の結合剤成分と呼ばれる。顔料、流動添加剤などの他の成分を結合剤に添加して、物体上で適用される最終組成物を形成し、硬化後に物体上にコーティングを形成してもよい。
なお、下記[1]から[17]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
100℃~150℃の間の低温で硬化するための粉体コーティング組成物であって、
a.カルボン酸基を有するポリエステル樹脂Aである、カルボン酸基官能性樹脂Aと、
b.グリシジル基を有するビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂である、第1のグリシジル官能性樹脂B1と、
c.グリシジル基を有するフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂である、第2のグリシジル官能性樹脂B2と、
d.少なくとも1つの熱硬化性触媒Cと、
を含む、粉体コーティング組成物。
[2]
前記組成物が、15~80mgKOH/gの算術的な平均酸価を有するカルボキシ基を含有する結晶性ポリエステル樹脂または半結晶性ポリエステル樹脂を有さない、[1]に記載の組成物。
[3]
前記ポリエステル樹脂Aが、
a.前記ポリエステル樹脂Aは、少なくとも50mgKOH/gの酸価および/または10mgKOH/g未満の水酸基価を有する、
b.前記ポリエステル樹脂Aは、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1400の数平均分子量(Mn)を有する、
c.前記ポリエステル樹脂Aは非晶質樹脂であり、好ましくは30~90℃の間に含まれるガラス転移温度を有する、
d.前記ポリエステル樹脂Aは、少なくとも2.0、好ましくは少なくとも2.3、より好ましくは少なくとも2.5の官能価を有する、
の1つまたは複数の特徴を有する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記エポキシ樹脂B1が、
a.前記エポキシ樹脂B1は、少なくとも450g/当量、好ましくは少なくとも465g/当量、より好ましくは少なくとも500g/当量のエポキシ当量を有する、
b.前記エポキシ樹脂B1は、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも500、好ましくは少なくとも700、より好ましくは少なくとも1000の数平均分子量(Mn)を有する、
の特徴のうち、少なくとも1つを有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記エポキシ樹脂B1が、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、30℃~45℃までのガラス転移温度を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
前記エポキシ樹脂B1が、2.0未満の官能価(「算出Mn」/EEWのように分子あたりのグリシジル基の平均数として記載される官能価)を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記エポキシ樹脂B2が、少なくとも190g/当量のエポキシ当量、好ましくは190~230g/当量の間に含まれるエポキシ当量を有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
前記エポキシ樹脂B2が、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、少なくとも700、好ましくは少なくとも1200の数平均分子量(Mn)を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
前記エポキシ樹脂B2が、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、38~53℃、好ましくは41℃超、より好ましくは43℃超であるガラス転移温度を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
前記エポキシ樹脂B2が、3.0~6.0の間に含まれる官能価(「算出Mn」/EEWのように、分子あたりのグリシジル基の平均数として定義される官能価)を有する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の組成物。
[11]
ビスフェノールAエポキシ樹脂の当量(B1樹脂中のエポキシ基のモル数)と、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂の当量(B2樹脂中のエポキシ基のモル数)との間の比率が、70/30~55/45の間である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12]
ポリエステルAのカルボン酸基の当量(樹脂A中のカルボキシ基のモル数)と、成分Bの当量(すなわち、B1およびB2におけるエポキシ基の総数)との間の比率が、25/75~55/45の間である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の組成物。
[13]
ポリエステルAのカルボン酸基の当量(樹脂A中のカルボキシ基のモル数)と、成分Bの当量(すなわち、B1およびB2におけるエポキシ基の総数)との間の比率が、25/75~45/55の間である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の組成物。
[14]
[1]~[13]のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物であって、
a.ポリエステル樹脂Dを含有する少なくとも1つのカルボン酸基含有ポリエステル樹脂Dと、
b.少なくとも1つのビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1と、
c.任意選択的に少なくとも1つのフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2と、
d.任意選択的に1つの熱硬化性触媒Fと、
を含む粉体コーティングと乾式混合にて混合される、粉体コーティング組成物。
[15]
A、B1、B2およびC成分を有する前記粉体コーティング組成物と、D、E1、存在する場合にはE2、存在する場合にはFを含む前記コーティング組成物との物理混合物を硬化することにより、60°で40%未満の光沢を有するつや消しコーティングが提供される、[14]に記載の粉体コーティング組成物。
[16]
前記基材の少なくとも一方の表面を、[1]~[15]のいずれか一項に記載の粉体コーティング組成物によってコーティングする工程と、前記コーティングされた基材を加熱し、前記基材上の前記コーティングを熱硬化して、前記基材上に前記コーティング組成物の接着層を形成する工程と、を含む、基材をコーティングするためのプロセス。
[17]
[1]~[16]のいずれか一項に記載のコーティング組成物を用いて、部分的にまたは全体的にコーティングされた、物品。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ポリエステル樹脂A
本発明のカルボン酸基含有ポリエステルAは、カルボン酸官能性ポリエステルであるポリエステル樹脂である。これは、ポリオールを二酸および/またはその無水物と反応させ、水酸基官能性ポリエステルを形成し、次にこれを多塩基性有機カルボン酸(ポリカルボン酸)および/またはその無水物と反応させることで典型的には取得可能である。
【0027】
本発明のカルボン酸基含有ポリエステル樹脂Aは、一般に少なくとも50mgKOH/g、好ましくは少なくとも60mgKOH/g、より好ましくは少なくとも65mgKOH/gである酸価を有する。この第1のポリエステル樹脂Aの酸価は、一般に最大で90mgKOH/g、好ましくは最大で80mgKOH/g、より好ましくは最大で75mgKOH/gである。
【0028】
有利には、このポリエステル樹脂Aは、10mgKOH/g未満の水酸基価を有する。
【0029】
ポリエステルAの二酸成分は、一般には50~90モルパーセントのテレフタル酸、ならびにイソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸(azealic acid)、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、ウンドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸または対応する無水物およびこれらの任意の混合物といった、1つまたは複数の脂肪族二酸、脂環式二酸ならびに/または芳香族二酸から選択される、0~40モルパーセントの別の二酸成分から構成される。
【0030】
多塩基性有機カルボン酸は、少なくとも3つのカルボン酸基を含む有機化合物を示すことを意味している。多塩基性有機酸は、酸形態、無水物形態または酸と無水物の混合物として使用されることが可能である。ポリエステルAの多塩基性有機酸は、一般には、ポリエステルAの全ての酸および/または全ての無水物のうちの5~20モルパーセントとして存在する。多塩基性有機酸は好ましくは、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸無水物およびピロメリット酸無水物およびこれらの任意の混合物から選択される。トリメリット酸無水物が最も好ましい。
【0031】
本発明によるカルボン酸官能性ポリエステル樹脂Aは、水酸基官能性ポリエステル1モルあたり、好ましくは少なくとも1モルの、より好ましくは少なくとも1.5モルの、多塩基性有機カルボン酸の無水物基を開環反応させることで調製される。
【0032】
有利には、第1のポリエステルAの官能価は、2.0、好ましくは2.3、より好ましくは2.5よりも高い(官能価は、「算出Mn」/(56100/AV)のように、分子あたりの酸基の平均数として定義される)。
【0033】
ポリオール構成成分である第1のポリエステルAは、例えばグリコールといった2つのOH基を含むか、例えばグリセリンといった少なくとも3つのOH基を含む。
【0034】
こうしたグリコールは、40~100モルパーセントのネオペンチルグリコール、ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、水素添加ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバラート、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールといった、1つまたは複数の脂肪族グリコールおよび/または脂環式グリコールから選択される、0~60モルパーセントの別のグリコール成分から構成され得る。
【0035】
本発明のカルボキシ基官能性ポリエステル樹脂Aは、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1400の数平均分子量(Mn)を有する。このポリエステル樹脂AのMnは、GPC(35℃にて、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを使用)によって決定して、好ましくは最大で10000、更に特定的には最大で5000である。
【0036】
有利には、本発明のカルボキシ基官能性ポリエステル樹脂Aは、非晶質ポリエステルである。言及したような半結晶性ポリエステルは、合成中および粉体コーティング配合においては扱いがより困難である。コーティングを固体化し、首尾良く粉砕中に固体化するのに困難を伴うため、コーティングの調製中、注入成形などの後に樹脂を固形化して粉砕するのは更に困難である。その後の保存中に、コーティングは塊を形成する傾向がある。
【0037】
本発明のカルボキシ基官能性ポリエステル樹脂Aは、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、30℃~90℃のガラス転移温度を有する。好ましくはこのポリエステル樹脂Aは、40℃より高い、より好ましくは45℃より高いガラス転移温度を有する。
【0038】
本発明のカルボキシ基官能性ポリエステル樹脂Aは、有利には、175℃にて計測して、1000~10000mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0039】
成分B1:ビスフェノールAエポキシ樹脂
成分B1は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応によって取得可能なエポキシ樹脂である。このビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応から調製され得る。この場合、エピクロロヒドリンの過剰分は、エポキシ樹脂の数平均分子量を決定する(W.G.Potter:Epoxide Resins,Springer-Verlag,New York 1970;Y.Tanaka et al.(eds.):Epoxy Resins Chemistry and Technology,Marcel Dekker,New York 1973,Chapter 2,pp.9-134)。
【0040】
市販のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂の例としては、
D.E.R 661、D.E.R 6116、D.E.R.662、D.E.R.663、D.E.R.671(Dow Chemical製/Olin)、Araldite GT 7004、Araldite GT 6248、Araldite GT 7071、Araldite GT 7072(Huntsman製/Jana)、KD-211E、KD-211G、YD-012、KD-242G(Kukdo製)、Epotec epoxy YD901およびYD901H(Aditya Birla Chemicals製)がある。
【0041】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂成分B1は、グリシジル官能性である。これは、少なくとも450g/当量、好ましくは少なくとも465g/当量、より好ましくは少なくとも500g/当量のエポキシ当量を好ましくは有する。ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1のエポキシ当量は、好ましくは最大で725g/当量、より好ましくは最大で675g/当量、更により好ましくは最大で575g/当量である。
【0042】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1は、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも500、好ましくは少なくとも700、好ましくは少なくとも1000の数平均分子量(Mn)を有する。このビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1のMnは、GPC(35℃にて、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを使用)によって決定して、好ましくは最大3000、更に特定的には最大で2000である。
【0043】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1は、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、30℃~45℃のガラス転移温度を有する。好ましくは、このビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1は、34℃超の、より好ましくは36℃超のガラス転移温度を有する。
【0044】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1は、有利には、150℃で計測して、300~1500mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0045】
有利には、ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂B1の官能価は、2.0未満である(官能価は、「算出Mn」/EEWのように、分子あたりの酸基の平均数として定義された)。
【0046】
成分B2
本発明のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂成分B2は、グリシジル官能基を有するエポキシノボラック樹脂に関する。
【0047】
フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール、ナフトールノボラックは、フェノール、クレゾールなどいずれかを有するホルムアルデヒドの酸触媒縮合により調製され得る。エピクロロヒドリンを用いてノボラックをエポキシ化することで、エポキシノボラックを提供する。
【0048】
市販のエポキシノボラック樹脂の例には、Araldite GY280、Kukdo YDCN 500-90P、YDCN-500-80Pがある。
【0049】
本発明の、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2は好ましくは、少なくとも190g/当量のエポキシ当量を有する。好ましくはこれは、190~230g/当量間に含まれるエポキシ当量を有する。
【0050】
本発明の、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2は、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも700、好ましくは少なくとも1200の数平均分子量(Mn)を有する。このフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2のMnは、好ましくは、GPC(35℃で、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを用いる)によって決定して、最大で2000、更に特定的には最大で1800である。
【0051】
本発明のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2は、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、38~53℃のガラス転移温度を有する。好ましくは、このフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2は、41℃超の、より好ましくは43℃超のガラス転移温度を有する。フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2のガラス転移温度は、好ましくはビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂のガラス転移温度よりも高い。
【0052】
本発明のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2は有利には、150℃で計測して、1500~5000mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0053】
有利には、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂B2の官能価は、3.0~6.0の間に含まれる(官能価は、「算出Mn」/EEWのように、分子あたりのグリシジル基の平均数として定義された)。
【0054】
有利には、ビスフェノールAエポキシ樹脂の当量(B1樹脂中のエポキシ基のモル数)と、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂の当量(B2中のエポキシ基のモル数)の間の比率は、70/30~55/45の間に含まれている。有利には、ポリエステルAのカルボン酸基の当量(樹脂A中のカルボキシ基のモル数)と、成分Bの当量(すなわち、B1およびB2中のエポキシ基の総数)の間の比率は、25/75~55/45の間、好ましくは25/75~45/55の間に含まれている。
【0055】
ポリエステル樹脂Aと組み合わせてエポキシ樹脂B1およびB2といった両方の種類を用いることが、本発明においては重要である。個々の樹脂B1およびB2の物理混合物は、先行技術によって教示されているように、高温での反応後に化学的に合わせられた、ノボラックおよびビスフェノールA部分を有するエポキシ樹脂を用いるよりも良好な結果を提供し得ることが観察された。樹脂B1およびB2の物理混合物により、より少ないコストで、かつより容易な製造にて、成分を選択する自由度をより大きくすることができ、更に得られた特性といった点では、より良好な結果を提供することができる。
【0056】
触媒C
熱硬化性触媒Cは、アミン、イミダゾール、ホスフィン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ブロックアミンまたはホスフィン触媒、封入触媒およびこれらの組合せ、好ましくは、アリールホスホニウムハロゲン化物とイミダゾールの組合せ、より好ましくは2-メチル-イミダゾールとエチル-トリフェニルホスホニウムブロミドの組合せからなる群から選択され得る。
【0057】
結合剤中の熱硬化性触媒Cの総%は、0.8~3%の間である。触媒の組合せを使用する場合、2種類の触媒間の比率は0/100~100/0の間であり得る。
【0058】
一実施形態では、本発明による粉体コーティング組成物は、15~80mgKOH/gである算術平均酸価を有する、結晶性カルボキシ基または半結晶性カルボキシ基含有ポリエステル樹脂を含まない。より好ましくは、本発明による組成物は、結晶性カルボキシ基または半結晶性カルボキシ基含有ポリエステル樹脂を含まない。(半)結晶性樹脂の存在により、コーティングの扱いに負の影響が与えられ、これが押出し後に固体化するのがより困難で、粉砕されることがより困難な組成物を生じさせることになる。更には、(半)結晶性樹脂を含む最終粉体コーティング組成物は、通常条件にて保存中に塊を形成する傾向がある。
【0059】
この実施形態では、平均酸価は、結晶性または半結晶性カルボキシ基含有ポリエステル樹脂における、個々のポリエステル樹脂成分の酸価およびその割合から算出される。本発明の組成物から除外されたカルボキシ基含有結晶性ポリエステル樹脂または半結晶性ポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸およびポリオールを基材とするものである。ポリカルボン酸は、例えば、使用されている全ポリカルボン酸の総量に基づき、少なくとも85モル%の量である、2~22個のメチレン基を有する直鎖の脂肪族ジカルボン酸および/またはテレフタル酸/イソフタル酸である。例えば、とりわけ2~10個のCを有する脂環式アルコールが、ポリオールとして使用され得る。除外された(半)結晶性ポリエステル樹脂または結晶性ポリエステル樹脂の例としては、コハク酸および/またはその無水物、またはその誘導体、ポリオール、1,4-ブタンジオールなどのポリカルボン酸から作製されるものである。
【0060】
任意追加のポリエステル樹脂D
任意追加のポリエステル樹脂Dは、典型的にはカルボン酸基含有ポリエステルである。これは、ポリオールを二酸および/またはその無水物と反応させ、水酸基官能性ポリエステルを形成し、次にこれを多塩基性有機カルボン酸(ポリカルボン酸)および/またはその無水物と反応させることで典型的には取得可能である。
【0061】
好ましくは、このポリエステル樹脂Dは、最大で40mgKOH/gの酸価を有する。本発明のカルボン酸基含有ポリエステルDは一般には、最大で30mgKOH/g、好ましくは最大で25mgKOH/g、より好ましくは最大で22mgKOH/gの酸価を有する。このポリエステルDの酸価は、一般には少なくとも10mgKOH/g、好ましくは少なくとも14mgKOH/g、より好ましくは少なくとも17mgKOH/gである。
【0062】
有利には、このポリエステルDは、7mgKOH/g未満の水酸基価を有する。
【0063】
ポリエステルDの二酸成分は、一般には70~100モルパーセントのテレフタル酸、ならびにイソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸(azealic acid)、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、ウンドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸または対応する無水物およびこれらの任意の混合物といった、1つまたは複数の脂肪族二酸、脂環式二酸および/または芳香族二酸から選択される、0~30モルパーセントの別の二酸成分から構成される。
【0064】
多塩基性有機カルボン酸は、少なくとも3つのカルボン酸基を含む有機化合物を示すことを意味している。ポリエステルDの多塩基性有機酸は、一般には、ポリエステルDの全ての酸および/または全ての無水物のうちの0~2モルパーセントとして存在する。多塩基性酸または無水物は好ましくは、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸無水物およびピロメリット酸無水物およびこれらの任意の混合物から選択される。トリメリット酸無水物が最も好ましい。
【0065】
第2のポリエステルDのポリオール成分は、例えばグリコールなどのジオール、またはグリセリンといったトリオールであり得る。
【0066】
こうしたグリコールは、70~100モルパーセントのネオペンチルグリコール、ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、水素添加ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバラート、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールといった、1つまたは複数の脂肪族グリコールおよび/または脂環式グリコールから選択される、0~30モルパーセントの別のグリコール成分から構成され得る。
【0067】
本発明のカルボキシ基官能性ポリエステルDは、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも2000、好ましくは少なくとも3000の数平均分子量(Mn)を有する。この第1のポリエステルAのMnは、GPC(35℃にて、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを使用)によって決定して、好ましくは最大で10000、更に特定的には最大で5000である。
【0068】
本発明のカルボキシ基官能性の第2のポリエステルDは、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、30℃~90℃のガラス転移温度を有する。好ましくはこの第2のポリエステルDは、40℃より高い、より好ましくは45℃より高いガラス転移温度を有する。
【0069】
本発明のカルボキシ基官能性の第2のポリエステルDは、有利には、200℃で計測して、3000~20000mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0070】
有利には、本発明のカルボキシ基官能性の第2のポリエステルDは、非晶質ポリエステルである。
【0071】
有利には、第2のポリエステルDの官能価は、2.2未満、好ましくは2.1または2.0または1.8未満、より好ましくは1.5未満(官能価は、「算出Mn」/(56100/AV)のように、分子あたりの酸基の平均数として定義した)である。
【0072】
任意追加の樹脂E1
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応によって調製され得る、グリシジル官能性エポキシ樹脂である。
【0073】
当該ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応から調製され得る。この場合、エピクロロヒドリンの過剰分は、エポキシ樹脂の数平均分子量を決定する(W.G.Potter:Epoxide Resins,Springer-Verlag,New York 1970;Y.Tanaka et al.(eds.):Epoxy Resins Chemistry and Technology,Marcel Dekker,New York 1973,Chapter 2,pp.9-134)。
【0074】
市販のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂の例としては、D.E.R.662、D.E.R.663、D.E.R.671(Dow Chemical製/Olin)、Araldite GT 7004、Araldite GT 6248、Araldite GT 7071、Araldite GT 7072(Huntsman製/Jana)、KD-211E、KD-211G、YD-012、KD-242G(Kukdo製)がある。
【0075】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は好ましくは、少なくとも450g/当量のエポキシ当量を有する。好ましくは樹脂E1は、少なくとも450g/当量、好ましくは少なくとも465g/当量、より好ましくは少なくとも500g/当量のエポキシ当量を好ましくは有する。ビスフェノールEを主成分とするエポキシ樹脂のエポキシ当量は、最大で725g/当量、好ましくは最大で675g/当量、より好ましくは最大で575g/当量である。
【0076】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも500、好ましくは少なくとも1000の数平均分子量(Mn)を有する。このビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1のMnは、GPC(30℃にて、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを使用)によって決定して、好ましくは最大3000、更に特定的には最大で2000である。
【0077】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、30℃~45℃のガラス転移温度を有する。好ましくは、このビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、34℃超、より好ましくは36℃超のガラス転移温度を有する。
【0078】
本発明のビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1は、有利には、150℃で計測して、300~1500mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0079】
有利には、ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1の官能価は、2.0未満である(官能価は、「算出Mn」/EEWのように、分子あたりの酸基の平均数として定義された)。
【0080】
任意追加の樹脂E2
本発明の任意追加のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2は、グリシジル官能価を有するエポキシノボラック樹脂に関する。
【0081】
フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール、ナフトールノボラックは、フェノールまたはクレゾールなどいずれかを有するホルムアルデヒドの酸触媒縮合により調製され得る。エピクロロヒドリンを用いてノボラックをエポキシ化することで、エポキシノボラックを提供する。
【0082】
利用可能なエポキシノボラック樹脂の市販例には、Araldite GY280、Kukdo YDCN 500-90P、YDCN-500-80Pがある。
【0083】
樹脂E2は好ましくは、少なくとも190g/当量のエポキシ当量を有する。好ましくはこれは、190~230g/当量の間のエポキシ当量を有する。
【0084】
本発明の樹脂E2は、有利には、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)によって決定して、少なくとも700、好ましくは少なくとも1200の数平均分子量(Mn)を有する。このフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2のMnは、好ましくは、GPC(35℃で、標準ポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを用いる)によって決定して、最大で2000、更に特定的には最大で1800である。
【0085】
本発明のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2は、有利には、1分あたり10℃の熱勾配を伴うASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)によって計測して、38℃~53℃のガラス転移温度を有する。
【0086】
好ましくは、このフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2は、41℃より高い、より好ましくは43℃より高いガラス転移温度を有する。フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2のガラス転移温度は、ビスフェノールAを主成分とするエポキシ樹脂E1のガラス転移温度よりも好ましくは高い。
【0087】
本発明のフェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2は有利には、150℃で計測して、1500~5000mPa・sの範囲のASTM D4287-88によるブルックフィールドコーンプレート粘度を有する。
【0088】
有利には、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2の官能価は、3.0~6.0の間に含まれている(官能価は、「算出Mn」/EEWのように、分子あたりのグリシジル基の平均数として定義された)。
【0089】
有利には、ビスフェノールAエポキシ樹脂E1の当量と、フェノールまたはクレゾールエポキシノボラック樹脂E2の当量の間の比率は、100/0~90/10の間である。
【0090】
有利には、ポリエステルDのカルボン酸基の当量と、成分E(E1+E2)との当量の間の比率は、45/55~55/45の間である。
【0091】
任意追加の触媒F
熱硬化性触媒Fは、アミン、イミダゾール、ホスフィン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ブロックアミンまたはホスフィン触媒、封入触媒およびこれらの組合せ、好ましくは、アリールホスホニウムハロゲン化物とイミダゾールの組合せ、より好ましくは2-メチル-イミダゾールとエチル-トリフェニルホスホニウムブロミドの組合せからなる群から選択され得る。
【0092】
結合剤中の熱硬化性触媒Fの総%は、0~0.5%の間である。有利には、成分A、B(B1+B2)およびCを基材とする粉体コーティングと、成分D、E(E1+E2)およびFに基づく粉体コーティングの間の比率は、70/30~40/60の間に含まれている。
【0093】
有利には、上記のような乾式混合混合物によって得られた最終コーティングの光沢は、60°で40%未満である。
【0094】
本発明によるポリエステル樹脂Aおよびポリエステル樹脂Dは、当該技術にて周知である、従来のエステル化技術を用いて調製されてよい。
【0095】
ポリエステルは好ましくは、1つまたは複数の反応工程からなる一連の手順に従って調製される。これらのポリエステルを調製するためには、撹拌器、不活性ガス(窒素)注入口、熱電対、水冷凝縮器に接続された蒸留管、水分離器および真空連結管が搭載された従来の反応器が使用される。ポリエステルを調製するのに使用されるエステル化条件は従来のものである。換言すれば、酸化ジブチルすず、ジラウリン酸ジブチルすず、n-ブチルすずトリオクタノエート、酸化モノブチルすず、シュウ酸すず、硫酸またはスルホン酸といった標準エステル化触媒は、反応物質の0.0~0.50重量%の量で使用され得る。任意選択的には、色安定剤、例えば、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイトといったホスホニット型およびホスファイト型安定剤は、反応物質の0~1重量%の量で加えられ得る。ポリエステル化は一般には、130℃から、約190℃~250℃まで徐々に昇温される温度にて、最初に標準圧力下で、次に必要な場合には各処理工程の最後に減圧下で、所望の水酸基価および/または酸価を有するポリエステルが得られるまでこうした操作状態を維持しながら実施される。エステル化度は、一連の反応中に形成される水の量、ならびに例えば、水酸基価、酸価および粘度など、得られたポリエステルの特性を決定することにより観察される。触媒を含む最終添加剤は反応器内に、その排出中、および/または押出しもしくは混合中に粉体コーティングの調製物に加えられ得る。
【0096】
熱硬化性エポキシ成分B1、B2、E1およびE2は、粉体塗装成分を事前に混合するために使用可能な機械的混合手順を用いてエポキシ樹脂を乾式混合することにより得ることができる。ビスフェノールAエポキシ樹脂とノボラックエポキシ樹脂の両方はまた、Buss Ko-KneterまたはAPV押出機などで押出しすることで混合され得る。
【0097】
追加成分は、第2の物理混合成分D、E1、E2、Fに、および/またはA、B1、B2およびCを含む第1の物理混合物に加えられ得る。
【0098】
上記成分に加え、本発明の範囲内である組成物はまた、例えばADDITOL(登録商標)P 896、MODAFLOW(登録商標)P 6000(ALLNEX)、RESIFLOW(登録商標)P-67およびPV5(WORLEE)、ACRONAL(登録商標)4F、ACRONAL(登録商標)8820(BASF)、BYK360およびBYK(登録商標)361(BYK Chemie)といった流動制御剤、Benzoin(BASF)といった脱気剤、充填剤、TINUVIN(登録商標)900(BASF)といったUV光吸収体、TINUVIN(登録商標)144(BASF)といったヒンダードアミン系光安定剤、TINUVIN(登録商標)312およびTINUVIN(登録商標)1130(BASF)といった他の安定剤、IRGANOX(登録商標)1010(BASF)といった酸化防止剤、IRGAFOS(登録商標)168(BASF)、ULTRANOX(登録商標)626(ADDIVANT)またはHOSTANOX(登録商標)P-EPQ(CLARIANT)のようなホスホニット型およびホスファイト型安定剤、顔料および染料といった、1つまたは複数の成分も含み得る。
【0099】
着色ラッカーおよびクリアラッカーの両方が調製され得る。種々の染料および顔料は、本発明の組成物中に使用され得る。有用な顔料および染料の例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛および同等物などの金属酸化物、金属水酸化物、金属粉体、硫化物、硫酸塩、炭酸塩、アンモニウムケイ酸塩などのケイ酸塩、カーボンブラック、タルク、カオリン、酸化バリウム、アイアンブルー、リードブルー、有機レッド、有機マルーンおよび同等物である。
【0100】
熱硬化性粉体組成物は通常、これらの追加成分の50重量%未満を含有する。
【0101】
本発明による組成物の成分は、ミキサまたはブレンダ(例えばドラムミキサ)による乾式混合で混合されてよい。次にプレミックスを、BUSS-Ko-Kneterなどの1軸スクリュー押出機またはPRISMもしくはAPVなどの2軸スクリュー押出機で、50℃~120℃の範囲の温度で一般には均質化する。押出物は、冷却時に、10~150μmの範囲の粒径を有する粉体へと一般には粉砕される。粉体化された組成物は、静電CORONAガンまたは摩擦帯電TRIBOスプレーガンなどの粉体塗装ガンを使用して基材へと堆積されてよい。一方、流動層技術などの粉体積層についての周知の方法も使用され得る。堆積後、粉体は通常、IRを含む異なる加熱方法を用いて100~150℃の間の温度、好ましくは約130℃へと加熱される。この温度により、粒子を共に流動かつ溶融させ、基材面上に、滑らかで均質、連続しておりへこみのないコーティングを形成する。
【0102】
本発明による熱硬化性粉体組成物は、卓越した流動性を提供する。またこれにより、艶のあるものから低光沢のコーティングまで、優れた機械的特性および溶剤耐性を得ることができる。
【0103】
使用されているコーティング材料が本発明による熱硬化性粉体コーティング組成物である、全体的にまたは部分的にコーティングされた基材はまた、本発明の目的である。
【0104】
方法
1.酸価
1回分の分量の樹脂を、250mL三角フラスコへと正確に計量した。次に50~60mLのテトラヒドロフランを加えた。樹脂が完全に溶解するまで、および溶液が沸騰しないことを確認しながら、この溶液を静かに加熱した。この溶液を室温に冷却した。次に、3滴のフェノールフタレインを加え、その後終点に達するまで標準的な水酸化カリウムを用いて滴定した。酸価は、
酸価(mgKOH/g)=mL×N×56.1/gのように計算される。
式中、g=樹脂の質量、
N=規定濃度の水酸化カリウム溶液である。
【0105】
2.粘度
粘度は高粘度ポリエステルの粘度測定のために、粘度計であるBrookfield CAP 2000(可変速度)を用いるASTM D 4287に従って計測される。必要とされる温度および速度は選択される。少量の樹脂試料を、コーンを下ろした際に少量の余剰分が側部周辺に広がるように、加熱されたプレート上に置く。スピンドルの回転を開始する。試料は、コーン回転ボタンを停止しつつコーンを数回上げ下げすることで完全に脱気される。いったん完全に脱気されると、続けて読み取りが行われる。このプロセスは、再現可能な最高安定読み取り値が得られるまで繰り返される。
【0106】
3.DSCによるTg
本明細書にて報告されたTg値は、DSC曲線の変曲点において測定された中点Tg値である。DSC曲線は、10℃/分の加熱率を用いて測定された。
【0107】
4.GPCによる分子量
ポリマーの重量および数平均分子量およびモル質量分布は、溶離液としては35℃のHPLCグレードのテトラヒドロフラン、および3つのPLゲルカラム(100-1000-10000Å(300×7.8mm)、5ミクロン)、標準ポリスチレンを用いるPolymer Standards Services(PSS)(162~96000ダルトンのM範囲)および流動マーカピークとして各試料に加えられるトルエンを使用し、屈折率(RI)検出器を有するHPLC(Perkin-Elmer)上のゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)で測定された。
【0108】
5.官能価
官能価は、Mn/(56100/AV)またはMn/EEWによって算出されるように、分子あたりの酸基またはグリシジル基の平均数として定義した。
【0109】
6.エポキシ当量(EEW)
エポキシ当量は、ちょうど1モルのエポキシ基を含有するエポキシ化合物の重量である(g/molで表される)。
【0110】
0.7~0.8ミリエポキシド当量に等しい量の樹脂を、250mL三角フラスコへと正確に計量した。次に20mLの塩化メチレンを加えた。樹脂が完全に溶解するまで、および溶液が沸騰しないことを確認しながら、この溶液を静かに加熱した。溶液は室温に冷却される。次に、シリンダを用いて、約0.5~1gのテトラエチルアンモニウムブロミド粉末および4~6滴のクリスタルバイオレット指示薬を加える(色は青色から緑色に変化する)。
【0111】
次に、終点に達するまで0.1Nの過塩素酸溶液を用いて磁気撹拌することにより、これを直ちに滴定する。
計算値
エポキシド当量=(P*1000)/((V-Vo)*N)g/エポキシ当量
式中、
V=試料を滴定するのに使用される0.1Nの過塩素酸溶液のmL
Vo=ブランク溶液を滴定するのに使用される0.1Nの過塩素酸溶液のmL
N=過塩素酸の規定濃度
P=グラムで表される試料重量
【0112】

例1 ポリエステルA:
1194.8部のネオペンチルグリコールおよび285.8部のジエチレングリコールを、撹拌器、水冷凝縮器に接続された蒸留管、窒素用注入口および温度調節器に取り付けられた温度計が搭載された従来の4つ口丸底フラスコに入れた。フラスコの内容物を窒素下で撹拌させながら約140℃の温度まで加熱し、この時点で1914.1部のテレフタル酸、206.3部のアジピン酸および4.0部のシュウ酸すずを加えた。約95%の理論量の水が蒸留するまで大気圧下で240℃にて反応を続け、透明な水酸基官能化プレポリマーを得た。
【0113】
200℃にて第1の工程のプレポリマーに、3.2部のトリフェニルホスファイトを加え、235℃の温度にて50mmHgの真空を段階的にかけた。目標の酸価および粘度に達したら、ポリエステルを200℃に冷却した。414部のトリメリット酸無水物、52.6部のトリフェニル-エチル-ホスホニウム-ブロミド(BETP)を得た。60秒後、以下の特性を得た:
酸価 69.5mgKOH/g
ブルックフィールド(コーン/プレート)175℃で4800mPa・s
Tg(DSC)53℃
分子量分布:Mn 2051/ Mw 6217 官能価:2.6
【0114】
例2 ポリエステルE:
1489.7部のネオペンチルグリコール、72.0部のエチレングリコールおよび8.6部のトリメチロールプロパンを、撹拌器、水冷凝縮器に接続された蒸留管、窒素用注入口および温度調節器に取り付けられた温度計が搭載された従来の4つ口丸底フラスコに入れた。フラスコの内容物を窒素下で撹拌させながら約140℃の温度まで加熱し、この時点で2340部のテレフタル酸、および9.0部のブチル-すず-トリスオクタノアートを加えた。約95%の理論量の水が蒸留するまで大気圧下で240℃にて反応を続け、透明な水酸基官能化プレポリマーを得た。
【0115】
200℃である第1の工程のプレポリマーに、247.7部のアジピン酸および3.2部のトリフェニルホスファイトを加え、3時間後に50mmHgの真空を段階的にかけた。目標の酸価および粘度に達したら、ポリエステルを200℃に冷却した。次の特性を得た。
酸価 19.4mg KOH/g
ブルックフィールド(コーン/プレート)200℃で8400mPa・s
Tg(DSC)53℃
分子量分布:Mn:3800、Mw:12962
官能価:1.3
ビスフェノールAエポキシ樹脂型:
エポキシ当量:525g/当量
ブルックフィールド(コーン/プレート)150℃で700mPa・s
Tg(DSC)38℃
分子量分布:Mn:720およびMw 2317
官能価:1.4
クレゾールノボラックエポキシ:
エポキシ当量:205g/当量
ブルックフィールド(コーン/プレート)150℃で2400mPa・s
Tg(DSC)45.5℃
分子量分布:Mn:853およびMw 2767
官能価:4.2
【0116】
次に、上で例示されたようなポリエステルおよびエポキシ樹脂は、以下にて言及されるような配合に従って粉体へと配合された。
白色塗装配合物
結合剤 72.7
Kronos TR 2160 25.3
Modaflow P 6000 1.3
Benzoin 0.7
【0117】
異なる粉体配合の結合剤組成物は、以下の表に表される。
【0118】
粉体は最初にバッグ内で異なる固体成分を乾式混合し、次に450rpmの速度で約100℃の押出温度でZSK-30P押出機を用いて、溶融状態で均質化することにより調製された。次に均質化された混合物を冷却し、Vortisivで粉砕した。その後、粉体をふるいにかけ、粒径を200メッシュ未満とした。これにより粉体を、GEMA Optiflex-2スプレーガンを用いて静電塗装することにより、MDFまたはQ-Panel(CRS)上に0.02’’×3’’×5インチで堆積させた。約3ミル(約70ミクロン)のフィルム厚さにて、パネルをIR硬化させ、これを空気通風式オーブンに移動させ、ここで125℃の温度で15分間硬化を続行させた。
【0119】
粉体コーティングの配合(成分および量)を、表1に報告する。
【表1】

【表2】
【0120】
本発明による結合剤から得られた最終コーティング(粉体1、粉体2、粉体3)および参照(粉体4Rおよび粉体5R)の塗料特性を表2に示す。
【表3】
【0121】
同じ表では、比較例(粉体4Rおよび粉体5R)として、クレゾールノボラックエポキシを除いた結合剤a)由来の最終コーティング、または国際公開第96/24628号に記載された例によるもののような、ビスフェノールAエポキシおよび液体エポキシノボラックの組合せに基づく最終コーティングの塗装性能が示されている。
【0122】
列1および列2:特に200℃および180℃で計測されたゲル化時間を示す。
【0123】
列3:140℃で計測されたmm単位での溶融流れを示す。この場合、低流れはオレンジ皮状の凸凹の強い面と関係する反面、高流れはより滑らかなコーティングを意味する。
【0124】
列4:MEKに対する耐性を示す。これは、有害な影響を及ぼすMEKを含浸させたコットンパッドを使用する50回の往復摩擦運動の後、硬化フィルム表面の見た目に対応している(1=劣~4=優)。
【0125】
列5:ASTM D2794による裏面衝撃強度を示す。コーティングに亀裂が走らない最大の衝撃が、kg.cmにて記録される。
【0126】
列6:DIN53156によるエリクセンカッピングを示す。
【0127】
列7:粉体コーティングの60°での光沢を示す。
【0128】
列8:10は、非常に滑らかな高光沢のコーティングを意味し、1は、60°での、減少された光沢値を有する、オレンジ皮状の凸凹の強い面であるコーティングを意味する。
【0129】
本発明による粉体(粉体1、粉体2および粉体3)は、10分間125℃での硬化の際、非常に良好な流動性および溶剤耐性を有する、満足のゆく滑らかなコーティングを製造した。
【0130】
コーティング粉体4R相当の光沢および流れに加え、本発明の粉体コーティング組成物は、現在使用されている標準的な市販のポリエステルを主成分とする粉体を用いると上記低温で得ることのできない、優れた溶剤耐性および可撓性を提供した。
【0131】
ポリエステルA/エポキシB1+B2の比率を変更し、異なるパーセンテージおよび触媒Cを用いる追加の試験を行った。
【表4】

【表5】

【表6】
【0132】
粉体1はまた、この低温にて、同様に白色塗装配合物を基材とする選択された粉体コーティングと組み合わせた、つや消しコーティングを提供することができた。
白色塗装配合物
結合剤 73.0
Kronos TR 2160 25.0
Modaflow P 6000 1.3
Benzoin 0.7
【0133】
表7は、粉体10の詳細(成分および量)を示す。
【表7】
【0134】
粉体10は同様に調製され、かつ200℃でのゲル化時間について試験された。このゲル化時間は600秒より長いことが見いだされた。
【0135】
粉体1と、異なる比率である粉体コーティング組成物10とを乾式混合する場合、驚くべきことに、表8に報告されるように依然として非常に良好な流れおよび溶剤耐性を維持している低光沢度合いを得ることができることが見いだされた。
【表8】
【0136】
列6:つや消しコーティング向けに求められるような、60°での粉体コーティングの光沢を示す。
【0137】
光沢、滑らかさおよび溶剤耐性は、2成分の粉体間における広範囲の比率内では極めて安定している。
【0138】
粉体コーティング組成物1と、カルボキシ基およびエポキシ基間の変更された比率ならびに異なる種類の触媒Cおよびそのパーセンテージによって特徴付けられている粉体コーティング組成物6、7、8および9のうち任意のものとを置換することで、同様の挙動が観察されている。
【表9】