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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】マスカントの付着性を低下させる方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20240417BHJP
   C09D 9/04 20060101ALI20240417BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20240417BHJP
   C09D 175/02 20060101ALI20240417BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240417BHJP
   B32B 15/095 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240417BHJP
   B32B 43/00 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C09D9/00
C09D9/04
C09D5/20
C09D175/02
C09D175/04
B32B7/06
B32B15/095
B32B27/40
B32B43/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021525019
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019059414
(87)【国際公開番号】W WO2020092918
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】62/755,112
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521193555
【氏名又は名称】エイシー・プロダクツ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィヒマン,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,ピーター
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-534113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で除去しうるコーティング金属基材の間の付着性を初期付着性から低下させる方法であって、該手で除去しうるコーティングポリウレタン及びポリ尿素のうちの少なくとも1つを含む複数成分反応性コーティングを含み、金属基材の表面に付着しており、該方法が、ベンジルアルコールを含む溶媒を含む組成物手で除去しうるコーティングに施用して、初期付着性を下回る後続付着性を達成することを含む、前記方法。
【請求項2】
溶媒が、さらに、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
溶媒が、ベンジルアルコールの水溶液を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が、実質的に、
ベンジルアルコールの水溶液
ベンジルアルコールおよびエステルアルコールの水溶液、
ベンジルアルコールおよびトリエタノールアミンの水溶液、または
ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールの水溶液からなる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
組成物が、難燃剤、アミン、可塑剤および界面活性剤のうちの1以上をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
難燃剤がハロゲンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
難燃剤がリンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤がイオン性界面活性剤である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
手で除去しうるコーティングがポリ尿素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
手で除去しうるコーティングがポリウレタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
金属がアルミニウムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
アルミニウムがクラッドアルミニウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
クラッドアルミニウムが熱処理クラッドアルミニウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルミニウムが裸アルミニウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
裸アルミニウムが熱処理裸アルミニウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属が、オーステナイトニッケル-クロムに基づく超合金を含む、請求項に記載の方法。
【請求項18】
金属がスチールを含む、請求項に記載の方法。
【請求項19】
金属がチタンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項20】
施用が、塗装、浸漬、フローコーティングまたは噴霧による、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
後続付着性が初期付着性の60%~0.1%である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
後続付着性が45g/cm~1g/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
後続付着性が、施用から1時間以内に初期付着性の60%~0.1%に低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
後続付着性が、少なくとも1日間にわたり、初期付着性の60%~0.1%に低下したままである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
後続付着性が一定期間にわたり初期付着性を下回る、請求項1に記載の方法であって、該方法がさらに、組成物を手で除去しうるコーティングに追加的に1回以上施用して、後続付着性が初期付着性を下回る期間を延長することを含む、前記方法。
【請求項26】
手で除去しうるコーティングが、組成物施用前の初期引張り強さおよび組成物施用後の後続引張り強さを有し、後続引張り強さが、初期引張り強さの少なくとも15%である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物がベンジルアルコールを1重量%~50重量%の量で含む、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記組成物がベンジルアルコールを30重量%~50重量%の量で含む、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2018年11月2日提出の米国仮特許出願第67/755112号“Methods of Reducing the Adhesion of a Maskant”からの優先的利益を主張するものである。これを、全体として本明細書中で参考として援用する。
[0002]本発明は、一般にマスキング技術、より詳細には、マスカントと基材の間の付着性を低下させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]産業界には、金属、セラミック、プラスチックなどの表面を摩耗、腐食から保護するために使用するための、およびコーティングが施用されている基材の表面を選択的にエッチング、めっき、または処理する目的のための、手で除去しうるコーティング(本明細書中ではマスカントともよぶ)が存在する。古い技術で作製されるコーティングは、溶媒キャリヤーに溶解したゴムまたはエラストマーから作製され、浸漬、噴霧、フローコーティング、ローラーコーティングなどの典型的な施用方法を介して基材に施用される。その後、溶媒を蒸発させると、残ったコーティングは、基材上に規定レベルの付着性を有する。このようなコーティングは多くの異なる基材上で良好に機能するが、通常、しばしば有毒である溶媒を大量(典型的には体積に基づき約80%)に含有し、これにより、制御されていない環境における使用が難しくなっている。
【0003】
[0004]最近になって、これら溶媒に基づく系と同じ機能を提供するが、毒性溶媒を含有しない、複数成分反応性コーティング系が設計された。これらの成分は、施用中に噴霧器の先端で混合される(化学反応をもたらす)ことにより、さまざまな基材上に噴霧される。このタイプのコーティングの出願の一つは、アルミニウム、チタンおよびスチールなどさまざまな金属の“ケミカルミーリング”を使用するためのものである。これら複数成分コーティングは、この用途のためにほぼ20年間にわたり工業的に販売されてきた。しかしながら、この技術の弱点の一つは、コーティングの付着性がプロセスの間に実質的に変動する可能性がある点である。金属を除去するために用いられるエッチャントへの暴露中の付着性の低下が遅すぎる場合、劣った“線の鮮明度”がもたらされ、その部分は規格外と見なされる可能性があり、回収不可能になる可能性がある。他方、コーティングの付着性が高すぎる場合、金属除去プロセスの終了後、コーティングの除去が非常に難しく、基材からマスカントを除去するための労力または時間が過剰になる可能性がある。より最近では、はるかに大きな部分(例えば、長さ11m×高さ3~4m)の製造にこれらのコーティングを用いる傾向がある。しかしながら、同様の溶媒に基づくコーティングと比較して、複数成分コーティングは除去時間が大幅に長くなっており、例えば、溶媒に基づくコーティングで5分であったものが、今では複数成分コーティングで30~40分になっている。
【0004】
[0005]保護コーティングの付着性を低下させ、除去プロセスを補助するために、多大な尽力がなされてきた。複数成分でマスキングされた部分の水中での浸漬は、強度および伸びによって規定されるマスカントフィルムの望ましい機械的特性を維持しつつ、一時的に付着性(“剥離強さ”ともよばれる)を低下させることができる。しかしながら、この水中浸漬法がもたらす低減した付着性の持続期間は実用的なマスカント除去には不十分であり、典型的には30分未満である。時間的に必要な場合は、コーティングの除去を加速するために機械的補助の使用が試されてきた。これらの着想はすべて、許容可能な結果をもたらすことができていない。
【発明の概要】
【0005】
[0006]一態様において、マスカントと基材の間の付着性を初期付着性から低下させる方法であって、該マスカントが基材の表面に付着している前記方法は、組成物をマスカントに施用して、初期付着性を下回る後続付着性を達成することを包含する。いくつかの態様において、マスカントと基材の間の付着性を初期付着性から低下させる方法であって、該マスカントが基材の表面に付着している前記方法は、組成物をマスカントに施用して、初期付着性を下回る後続付着性を達成する一方、マスカントの除去に十分な時間にわたりマスカントフィルムの機械的特性を維持することを包含する。いくつかの態様において、このような期間は、少なくとも1日間、少なくとも4日間、または少なくとも1週間であることができる。
【0006】
[0007]いくつかの態様において、組成物は溶媒を含む。溶媒は、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上、例えば、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよび/もしくはエステルアルコールの水溶液、またはベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよび/もしくはエステルアルコールの水性分散液を含むか、実質的にそれからなることができる。いくつかの態様において、組成物は、実質的に、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよび/もしくはエステルアルコールの水溶液、またはベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよび/もしくはエステルアルコールの水性分散液からなる。溶媒は、ベンジルアルコール、ベンジルアルコールの水溶液、またはベンジルアルコールの水性分散液を含むか、実質的にそれからなることができる。溶媒は、トリエタノールアミン、トリエタノールアミンの水溶液、またはトリエタノールアミンの水性分散液を含むか、実質的にそれからなることができる。溶媒は、エステルアルコール、エステルアルコールの水溶液、またはエステルアルコールの水性分散液を含むか、実質的にそれからなることができる。いくつかの態様において、組成物は、難燃剤、アミン、可塑剤および界面活性剤のうちの1以上を包含する。難燃剤はハロゲンを包含することができ、および/または難燃剤はリン(phosphorous)を包含することができる。界面活性剤はイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であることができる。
【0007】
[0008]いくつかの態様において、マスカントは、二成分反応系の製品、例えば2Kマスカントである。いくつかの態様において、マスカントはポリ尿素を含む。いくつかの態様において、マスカントはポリウレタンを含む。
【0008】
[0009]いくつかの態様において、基材は金属を包含する。金属としては、アルミニウム、例えば、クラッドアルミニウム(clad aluminum)または裸アルミニウムを挙げることができる。金属は、熱処理されていることができ、例えば、熱処理クラッドアルミニウムまたは熱処理裸アルミニウムであることができる。いくつかの態様において、金属は、金属合金、例えば、スチールまたはオーステナイトニッケル-クロムに基づく超合金(Iconel)を包含することができる。いくつかの態様において、金属はチタンを包含することができる。
【0009】
[0010]いくつかの態様において、組成物は、塗装、浸漬、フローコーティングまたは噴霧により施用される。
[0011]本方法のいくつかの態様において、後続付着性は初期付着性の60%~0.1%である。本方法のいくつかの態様において、後続付着性は初期付着性の60%未満である。本方法のいくつかの態様において、後続付着性は、4オンス/インチ~0.1オンス/インチである。いくつかの態様において、後続付着性は、施用から1時間以内に初期付着性の60%~0.1%に低下する。いくつかの態様において、後続付着性は、少なくとも1日間、少なくとも4日間、または少なくとも1週間にわたり、初期付着性の60%~0.1%に低下したままである。いくつかの態様において、後続付着性は、少なくとも1日間、少なくとも4日間、または少なくとも1週間にわたり、初期付着性の60%未満に低下したままである。いくつかの態様において、後続付着性は一定期間にわたり初期付着性を下回り、該方法はさらに、組成物をマスカントに追加的に1回以上施用して、後続付着性が初期付着性を下回る期間を延長することを含む。
【0010】
[0012]本方法のいくつかの態様において、マスカントは組成物施用前の初期引張り強さおよび組成物施用後の後続引張り強さを有し、後続引張り強さは初期引張り強さの少なくとも15%である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013]理想的には、処理は、一旦施用されると、マスカントコーティングの付着性を低下させるが、規定期間にわたり、典型的には24時間より長く、基材からのマスカントフィルムの剥離はもたらさない、潜在的効果を有する。さらに、処理は、コーティングの付着性を規定量だけ低下させ、付着性を完全に排除してはならない。これは、依然として上部にコーティングを有する部分が、コーティングの除去前にさらなる加工(例えば、ルーティング、孔あけ、および切断またはトリミング)を必要とするためである。最後に、コーティングを有する部分が摩耗に抵抗し、比較的容易に除去されるのに十分な強さおよび伸びを保持する能力に影響を与えるので、処理は、コーティングの機械的特性または化学的耐性に実質的に影響を与えてはならない。
【0012】
[0014]目的に合うように配合された組成物を、基材に付着しているマスカントに施用すると、マスカントの保全性を損なうことなくマスカントの付着性を低下させることができることが見いだされた。そのような組成物は、単独で、または適した輸送ビヒクル(水または他の溶媒など)と混合されたときのいずれかに、マスカントフィルムに浸透してマスカントフィルムを膨潤させるか、またはマスカントフィルムと水素結合し、これによりフィルムと基材の付着性を低下させる、任意の化学種を含有することができる。このような組成物に適した化学種としては、限定されるものではないが、界面活性剤(イオン性および非イオン性)、難燃剤、アミン(第一級、第二級または第三級)、可塑剤、溶媒、ならびに有機および無機塩を挙げることができる。本発明に従ったマスカント軟化剤組成物はまた、従来のペイントリムーバー添加剤を包含することができ;そのような添加剤は、腐食抑制剤(例えば、さまざまなトリアゾール、バリウムジノニルスルホン酸塩、カルシウムジノニルスルホン酸塩、または亜鉛ジノニルスルホン酸塩)、共溶媒(例えば、二塩基性エステル、aromatic 100、アニソール、ジオキソラン、nipar S-10(ニトロパラフィン(niroparaffm))、ジメチルスルホネート)、活性剤、増粘剤(例えば、さまざまなセルロース系誘導体、シリカ、ベントナイト、ヘクトライト)、安定剤、および蒸発抑制剤の1以上を包含することができる。とりわけ、動物または植物由来の脂肪、例えば、特定のエステル化脂肪の添加は、組成物(例えば、ポリエチレン、パラフィン、非イオン性パラフィンワックス)の引火性を低下させるのに有用であることができる。セルロース系誘導体、例えば、メチルセルロースまたはAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカ(熱分解法シリカなど)は、組成物を増粘するために加えることができる。
【0013】
[0015]本発明の方法は、基材に対するマスカントの付着性を一定期間低下させて、組成物を施用してから数時間後、または数日後であっても、さらなる化学的加工なしでマスカントを容易に除去することを可能にする組成物を利用する。例えば、マスカントおよび基材を含む材料を1つの設備でケミカルミーリングに付すことができ、該設備はまた、本発明の態様に従った組成物の施用に必要または望ましい装置および安全性プロトコルを有することができ;その後、該材料を、マスカントを除去するための化学組成物の施用に必要または望ましい装置および安全性プロトコルを有さない別個の設備において、さらなる加工に付すことができる。本発明の方法と従来のペイントリムーバーの施用との顕著な差異は、本発明に従った方法が、マスカントの物理的保全性を失うことなく付着性を低下させることを可能にして、続いて材料を、所望により、組成物が施用される場所から離れた位置で、加工(機械加工)することを可能にする点である。
【0014】
[0016]いくつかの態様において、本発明の方法は、マスカントでコーティングされているか、部分的にコーティングされている基材に有用である。適したマスカントは、複数成分反応性コーティング系マスカント、すなわち、基材への施用中に複数の出発成分が混合されて(例えば、噴霧器先端において)、成分間の化学反応を引き起こしてマスカントを形成するコーティング系を包含する。このようなマスカントは、一般に2Kマスカントとよばれる。例えば、このようなマスカントは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリオール、多塩基酸、酸塩化物、または酸無水物ポリマーを含むことができる。適したマスカントとしては米国特許第3544400号に教示されているものが挙げられる。これを、全体として本明細書中で参考として援用する。
【0015】
[0017]適した基材としては、限定されるものではないが、金属、金属合金、セラミックおよびプラスチックが挙げられる。いくつかの態様において、基材は金属、例えば、アルミニウム、チタンまたはスチールである。いくつかの態様において、基材は、アルミニウム、マグネシウム、第一鉄、ベリリウムまたは他の金属合金、例えば、オーステナイトニッケル-クロムに基づく超合金(ICONEL(登録商標)の名称で販売されることもある)である。いくつかの態様において、金属はクラッドされており、例えばクラッドアルミニウムである一方、他の態様において、金属は裸であり、例えば裸アルミニウムである。いくつかの態様において、金属は熱処理されており、例えば、熱処理裸アルミニウムまたは熱処理クラッドアルミニウムである。
【0016】
[0018]いくつかの態様において、マスカントと基材との付着性を低下させる方法は、組成物をマスカントに施用することを含む。組成物は、有機溶媒、例えば、極性有機溶媒であることができる。
【0017】
[0019]いくつかの態様において、組成物はベンジルアルコールを含むか、実質的にベンジルアルコールからなることができる。いくつかの態様において、組成物はベンジルアルコールの水溶液または水性分散液を含むか、実質的にそれからなることができる。いくつかの態様において、組成物は、1重量%~5重量%のベンジルアルコールの水溶液、あるいは、1重量%~50重量%のベンジルアルコール、5重量%~50重量%のベンジルアルコール、10重量%~50重量%のベンジルアルコール、25重量%~50重量%のベンジルアルコール、35重量%~50重量%のベンジルアルコール、5重量%~25重量%のベンジルアルコール、10重量%~25重量%のベンジルアルコール、1重量%~15重量%のベンジルアルコール、5重量%~15重量%のベンジルアルコール、5重量%~10重量%のベンジルアルコール、1重量%~5重量%のベンジルアルコール、2重量%~5重量%のベンジルアルコール、または1重量%~10重量%のベンジルアルコールの水性分散液を含む。いくつかの態様において、組成物は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、または約50重量%のベンジルアルコールの水性分散液を含む。
【0018】
[0020]いくつかの態様において、組成物はトリエタノールアミンを含むか、実質的にトリエタノールアミンからなることができる。いくつかの態様において、組成物はトリエタノールアミンの水溶液を含むか、実質的にそれからなることができる。いくつかの態様において、組成物は、1重量%~50重量%のトリエタノールアミン、5重量%~50重量%のトリエタノールアミン、10重量%~50重量%のトリエタノールアミン、25重量%~50重量%のトリエタノールアミン、35重量%~50重量%のトリエタノールアミン、5重量%~25重量%のトリエタノールアミン、10重量%~25重量%のトリエタノールアミン、1重量%~15重量%のトリエタノールアミン、5重量%~15重量%のトリエタノールアミン、5重量%~10重量%のトリエタノールアミン、1重量%~5重量%のトリエタノールアミン、2重量%~5重量%のトリエタノールアミン、または1重量%~10重量%のトリエタノールアミンの水性分散液を含む。いくつかの態様において、組成物は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、または約50重量%のトリエタノールアミンの水溶液を含む。
【0019】
[0021]いくつかの態様において、組成物はエステルアルコールを含むか、実質的にエステルアルコールからなることができる。いくつかの態様において、組成物はエステルアルコールの水溶液を含むか、実質的にそれからなることができる。いくつかの態様において、組成物は、1重量%~50重量%のエステルアルコール、5重量%~50重量%のエステルアルコール、10重量%~50重量%のエステルアルコール、25重量%~50重量%のエステルアルコール、35重量%~50重量%のエステルアルコール、5重量%~25重量%のエステルアルコール、10重量%~25重量%のエステルアルコール、1重量%~15重量%のエステルアルコール、5重量%~15重量%のエステルアルコール、5重量%~10重量%のエステルアルコール、1重量%~5重量%のエステルアルコール、2重量%~5重量%のエステルアルコール、または1重量%~10重量%のエステルアルコールの水性分散液を含む。いくつかの態様において、組成物は、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、または約50重量%のエステルアルコールの水溶液を含む。
【0020】
[0022]いくつかの態様において、組成物は、ベンジルアルコールの水溶液もしくは水性分散液、トリエタノールアミンの水溶液もしくは水性分散液、またはエステルアルコールの水溶液もしくは水性分散液のうちの1以上から選択される。いくつかの態様において、組成物は界面活性剤を含むことができる。いくつかの態様において、組成物は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、および塩化メチレンのうちの1以上を含まない。
【0021】
[0023]いくつかの態様において、組成物は、塗装(例えば、はけ塗り、ローラーコーティング)、浸漬、フローコーティングまたは噴霧によってマスカントに施用される。マスカントに施用される組成物の量は、基材に対するマスカントの付着性に影響を与えることができる。望ましい付着性の低下を達成するのに要する組成物の量は、マスカントの厚さ、マスカントの組成、および組成物の構成(make-up)に依存することができる。本発明のいくつかの態様において、組成物は、約0.001インチ、約0.002インチ、約0.003インチ、約0.004インチ、約0.005インチ、約0.006インチ、約0.007インチ、約0.008インチ、約0.009インチ、約0.01インチ、約0.015インチ、約0.02インチ、または約0.025インチの厚さで施用される。いくつかの態様において、組成物は、約0.001インチ~約0.025インチ、または約0.005インチ~約0.01インチの厚さに施用される。マスカントがコーティングされた基材を組成物中に浸漬することによって組成物が施用されるいくつかの態様において、マスカントに施用される組成物の量は、マスカントがコーティングされた基材を組成物中に沈める時間量を測定することによって評価することができる。いくつかの態様では、マスカントコーティングされた基材を、組成物中に、約1秒間~約60分間、約1秒間~約30分間、約1秒間~約20分間、約1秒間~約10分間、約10分間~約20分間、約20分間~約30分間、約30分間~約40分間、約40分間~約50分間、約50分間~約60分間、約30分間~約60分間、約40分間~約60分間、約50分間~約60分間、または約15分間~約45分間にわたり沈める。
【0022】
[0024]付着性の低下は、さまざまな方法で測定することができる。本明細書中で用いられる場合、付着性の低下は、マスカントと基材の付着力の初期強度(すなわち、本明細書中に記載する方法の実施前の時点の強度)から後続強度(すなわち、本明細書中に記載する方法に従った組成物の施用後の時点の強度)への低下である。いくつかの態様において、付着性の低下は、初期付着強度から後続付着強度への付着強度の低下の百分率の観点で記載される。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から初期付着性の約60%、初期付着性から初期付着性の約55%、初期付着性から初期付着性の約50%、初期付着性から初期付着性の約45%、初期付着性から初期付着性の約40%、初期付着性から初期付着性の約35%、初期付着性から初期付着性の約30%、初期付着性から初期付着性の約25%、初期付着性から初期付着性の約20%、初期付着性から初期付着性の約15%、初期付着性から初期付着性の約10%、初期付着性から初期付着性の約5%、初期付着性から初期付着性の約1%、または初期付着性から初期付着性の約0.1%まで低下する。いくつかの態様において、付着性は、0%より大きい任意の最終付着性まで低下させることができる;すなわち、マスカントは基材から完全に除去されず、いくばくか最小限の付着性を維持する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から初期付着性の60%未満0%超、初期付着性から初期付着性の55%未満0%超、初期付着性から初期付着性の50%未満0%超、初期付着性から初期付着性の45%未満0%超、初期付着性から初期付着性の40%未満0%超、初期付着性から初期付着性の35%未満0%超、初期付着性から初期付着性の30%未満0%超、初期付着性から初期付着性の25%未満0%超、初期付着性から初期付着性の20%未満0%超、初期付着性から初期付着性の15%未満0%超、初期付着性から初期付着性の10%未満0%超、または初期付着性から初期付着性の5%未満0%超まで低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から初期付着性の約60%~約10%、初期付着性から初期付着性の約55%~約15%、または初期付着性から初期付着性の約50%~約20%に低下する。
【0023】
[0025]いくつかの態様において、付着性の低下は、付着力(例えばオンス/インチにおける)の測定の観点で記載される。ASTM D429B Rubber to Metal Adhesion Test Equipmentのガイドラインに従って、付着力の測定方法は、クランプグリップを備えるオンス/インチばね秤りを利用する。マスカントフィルム、例えばAC-2Kマスカントフィルムの幅1インチのストリップをばね秤りに取り付け、135°の角度で金属基材から引っ張り、基材からマスカントフィルム、例えばAC-2Kマスカントフィルムを剥離する力(オンス/インチ)を、付着力、または単に付着性の値として記録する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約40オンス/インチ、約30オンス/インチ、約20オンス/インチ、約10オンス/インチ、約5オンス/インチ、約2オンス/インチ、または約1オンス/インチの後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約40オンス/インチ~約0.1オンス/インチ、約30オンス/インチ~約0.1オンス/インチ、約20オンス/インチ~約0.1オンス/インチ、約10オンス/インチ~約0.1オンス/インチ、約5オンス/インチ~約0.1オンス/インチ、または約1オンス/インチ~約0.1オンス/インチの後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約1オンス/インチ~約6オンス/インチ、約2オンス/インチ~約6オンス/インチ、約2オンス/インチ~約4オンス/インチ、約1オンス/インチ~約40オンス/インチ、約1オンス/インチ~約30オンス/インチ、約1オンス/インチ~約20オンス/インチ、約1オンス/インチ~約10オンス/インチ、約2オンス/インチ~約6オンス/インチ、または約1オンス/インチ~約5オンス/インチの範囲内の後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約446g/cm、約335g/cm、約223g/cm、約112g/cm、約56g/cm、約22g/cm、または約11g/cmの後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約446g/cm~約1g/cm、約56g/cm~約1g/cm、約45g/cm~約1g/cm、約33g/cm~約1g/cm、約22g/cm~約1g/cm、または約11g/cm~約1g/cmの後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、初期付着性から、約11g/cm~約446g/cm、約11g/cm~約335g/cm、約11g/cm~約223g/cm、約11g/cm~約67g/cm、約22g/cm~約67g/cmまたは約22g/cm~約45g/cmの範囲内の後続付着性に低下する。
【0024】
[0026]いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用から1時間以内、組成物の施用から2時間以内、組成物の施用から4時間以内、組成物の施用から8時間以内、組成物の施用から12時間以内、または組成物の施用から24時間以内に、初期付着性から、約6オンス/インチ~約2オンス/インチの後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用から1時間以内、組成物の施用から2時間以内、組成物の施用から4時間以内、組成物の施用から8時間以内、組成物の施用から12時間以内、または組成物の施用から24時間以内に、初期付着性から、初期付着性の約15%~約50%の後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用から1時間以内、組成物の施用から2時間以内、組成物の施用から4時間以内、組成物の施用から8時間以内、組成物の施用から12時間以内、または組成物の施用から24時間以内に、初期付着性から、初期付着性の約15%~約30%の後続付着性に低下する。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用から1時間以内、組成物の施用から2時間以内、組成物の施用から4時間以内、組成物の施用から8時間以内、組成物の施用から12時間以内、または組成物の施用から24時間以内に、初期付着性から、初期付着性の約30%~約50%の後続付着性に低下する。
【0025】
[0027]本発明の一観点は、基材に対するマスカントの付着性が一定期間にわたり低下したままである点である。いくつかの態様において、この期間は、基材をさらに加工するのに十分な時間である。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用後12時間以上、組成物の施用後24時間以上、組成物の施用後36時間以上、組成物の施用後2日間以上、組成物の施用後4日間以上、組成物の施用後7日間以上、または組成物の施用後2週間以上にわたり、約40オンス/インチ~約2オンス/インチに低下したままである。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用後約24時間~約2週間にわたり、約40オンス/インチ~約2オンス/インチに低下したままである。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用後12時間以上、組成物の施用後24時間以上、組成物の施用後36時間以上、組成物の施用後2日間以上、組成物の施用後4日間以上、組成物の施用後7日間以上、または組成物の施用後2週間以上にわたり、初期付着性から、初期付着性の約15%~約50%の後続付着性に、低下したままである。いくつかの態様において、付着性は、組成物の施用後約24時間~約2週間にわたり、初期付着性の約15%~約50%に低下したままである。
【0026】
[0028]すべての態様で必須ではないが、いくつかの態様において、付着性は低下するが、マスカントの物理的保全性は実質的に維持される。いくつかの態様において、マスカントの物理的保全性は、マスカントフィルムの引張り強さを評価することによって測定される。いくつかの態様において、マスカントは、初期引張り強さ、すなわち、本明細書中に記載する方法に従った組成物の施用前の引張り強さと、後続引張り強さ、すなわち、本明細書中に記載する方法に従った組成物の施用後の引張り強さとを有する。いくつかの態様において、初期引張り強さおよび後続引張り強さは、実質的に同じである。実質的に同じとは、初期引張り強さから後続引張り強さの引張り強さの変化が、±1%未満、±5%未満、±10%未満、±20%未満、±40%未満、±60%未満、または±80%未満であることをさすことができる。いくつかの態様において、マスカントは、初期引張り強さの少なくとも15%、初期引張り強さの少なくとも17%、初期引張り強さの少なくとも20%、初期引張り強さの少なくとも25%、初期引張り強さの少なくとも30%、または初期引張り強さの少なくとも33%である後続引張り強さを有する。ASTM D 1708-13 “Standard Test Method for Tensile Properties Plastics by Use of Microtensile Specimens,”のガイドラインに従って、極限引張り強さ(本明細書中では引張り強さともよぶ)を、クランプグリップを備えるオンス/インチばね秤りを用いて測定する。マスカント軟化剤配合物を、厚さ0.012~0.018インチのマスカントを用いて、1/2インチ×6インチのマスカント(例えばAC-2Kマスカント)上の0.25inの面積に、10湿潤ミル(wet mil)で施用する。極限引張り強さは、マスカント(例えばAC-2Kマスカント)フィルムの一端をばね秤りに取り付け、マスカントフィルムが破断するまで180°の角度で毎秒1インチで引っ張ることにより測定する。ばね秤りで観察されるオンス/inでの最大値を、極限引っ張り強さ(オンス/in)として記録する。
【0027】
[0029]いくつかの態様において、マスカントの物理的保全性は、垂れに対するマスカントの抵抗性(すなわち耐垂れ性)を評価することによって査定される。耐垂れ性は、ASTM F1080-93(2019), “Standard Test Method for Determining the Consistency of Viscous Liquids Using a Consistometer”のガイドラインに従って測定することができる:体積100cmの材料を稠度計に入れ、5分間放置して流れるままにする。5分後に移動距離をセンチメートルで記録する。耐垂れ性は、流れのセンチメートルで測定する;良好な耐垂れ性を反映するマスカント軟化剤の標的値は、稠度計の流れで10~14cmである。
【実施例
【0028】
[0030]実施例
[0031]実施例1.
[0032]付着性を低下させる試みにおいて、化学的に加工したAC-2Kマスカント(ACP-3M)にベンジルアルコール(濃度100重量%)を浸潤させた。ベンジルアルコールの施用前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。100重量%ベンジルアルコールをAC-2Kマスカント(ACP-3M)に浸潤させ、2つのパネルそれぞれの平面の表面上に留まらせた。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表1に示す。
【0029】
[0033]
【表1】
【0030】
[0034]前記部分から流れ出るのを回避するために100重量%ベンジルアルコールを平面に施用した場合、付着性の顕著な低下が観察された。AC-2Kマスカントパネルは‘乾燥’しており、フィルムは1時間以内に膨潤した。AC-2Kマスカント(ACP-3M)は、良好な引張り特性および伸び特性を保持した。
【0031】
[0035]最初の結果は、引張りおよび伸び強さを維持する一方、付着性の顕著な低下を示している。
[0036]実施例2.
[0037]ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルを、付着性を低下させるために改良水浴に浸漬した。試験した原料は以下であった:(1)水中の5重量%ベンジルアルコール;(2)水中の5重量%DPM(ジプロピレングリコールメチルエーテル);および(3)水中の5重量%TEA(トリエタノールアミン 85重量%)。水浴中への浸漬前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表2に示す。
【0032】
[0038]
【表2】
【0033】
[0039]付着性の低下および低下した付着性の維持において、ベンジルアルコール浸漬は最良であった。
[0040]実施例3.
[0041]ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルを、付着性を低下させるために水浴に浸漬した。2つの浸漬浴を試験した:(1)水中の5重量%ベンジルアルコールおよび(2)Bonderite C-IC Aldox V。水浴中への浸漬前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表3に示す。
【0034】
[0042]
【表3】
【0035】
[0043]付着性の低下において、ベンジルアルコール浸漬はAldox Vより良好であった。
[0044]実施例4.
[0045]付着性を低下させる試みにおいて、市販のベンジルアルコールペイントリムーバー:Bonderite S-ST 1270-6 Aeroペイントリムーバー(40~50重量%ベンジルアルコール、1~5重量%アルキルフェノールエトキシレートエマルション)およびCee-Bee E-2787(40~60重量%ベンジルアルコールエマルション)を、ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルに施用した。水浴中への浸漬前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表4に示す。
【0036】
[0046]
【表4】
【0037】
[0047]マスカントフィルムの物理的特性(引張り/伸び)は、不利な影響を受けなかった。どちらの市販製品も優れた耐垂れ性を有する。Bonderite S-ST 1270-6 AeroペイントリムーバーおよびCee-Bee E-2787は、4日間にわたり付着性の低下に有効であった。
【0038】
[0048]実施例5.
[0049]付着性を低下させる試みにおいて、Bonderite S-ST 1270-6 Aeroペイントリムーバー(40~50重量%ベンジルアルコール、1~5重量%アルキルフェノールエトキシレートエマルション)およびCee-Bee E-2787(40~60重量%ベンジルアルコールエマルション)を、ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルに、ローラーで別個に施用した。水浴中への浸漬前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表5に示す。
【0039】
[0050]
【表5】
【0040】
[0051]Bonderite S-ST 1270-6 AeroペイントリムーバーおよびCee-Bee E-2787は、4日間にわたり付着性の低下に有効であった。マスカントフィルムの特性(引張り/伸び)は、不利な影響を受けなかった。どちらの市販製品も優れた耐垂れ性を有する。
【0041】
[0052]実施例6.
[0053]付着性を低下させる試みにおいて、AC Productsが製造したペイントリムーバー配合物:GD8-69(水中の40重量%ベンジルアルコール)およびGD8-72(水中の50重量%ベンジルアルコール)を、ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルにローラーで施用した。水浴中への浸漬前に、ベースラインのために初期付着性を測定した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表6に示す。
【0042】
[0054]
【表6】
【0043】
[0055]マスカントフィルムの物理的特性(引張り/伸び)は、不利な影響を受けなかった。どちらの配合物も優れた耐垂れ性を有する。
[0056]実施例7.
[0057]付着性を低下させる試みにおいて、AC Productsが製造したペイントリムーバー配合物:GD9-121およびGD9-122を、ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)パネルにローラーで施用した。GD9-121およびGD9-122は、エステルアルコールおよびベンジルアルコールを使用する低VOC配合物である。
【0044】
[0058]
【表7】
【0045】
[0059]GD9-121およびGD9-122の施用前に、初期付着性をベースラインとして測定した。すべての配合物を10湿潤ミルで施用した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表8に示す。
【0046】
[0060]
【表8】
【0047】
[0061]マスカントフィルムの物理的特性(引張り/伸び)は、不利な影響を受けなかった。配合物はすべて優れた耐垂れ性を有する。
[0062]結論:GD9-121およびGD9-122は、最長7日間は付着性の低下に成功した;付着性はそれぞれ82%および91%低下した。
【0048】
[0063]実施例8.
[0064]付着性を低下させる試みにおいて、AC Productsが製造したペイントリムーバー配合物:GD9-132およびGD9-122を、ケミカルミーリングプロセスを経たAC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)およびAC-2Kマスカント(ACP-5)パネルにローラーで施用した。
【0049】
[0065]
【表9】
【0050】
[0066]GD9-132およびGD9-122の施用前に、初期付着性をベースラインとして測定した。すべての配合物を10湿潤ミルで施用した。後続付着性を毎日測定して、2K-マスカントの付着性の低下を記録した。付着性の測定値(オンス/インチ)を表10に示す。
【0051】
[0067]
【表10】
【0052】
[0068]マスカントフィルムの物理的特性(引張り/伸び)は、不利な影響を受けなかった。配合物はすべて優れた耐垂れ性を有する。
[0069]結論:GD9-132およびGD9-122は、最長7日間は付着性の低下に成功した;付着性はそれぞれ60~82%および64~84%低下した。
【0053】
[0070]実施例9.
[0071]AC Productsが製造したペイントリムーバー配合物:GD9-132(ベンジルアルコールに基づく)、GD9-122(エステルアルコール、ベンジルアルコールのブレンド)および塩化メチレンに基づく配合物(Jasco)を、AC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)マスカントフィルムに施用した。マスカントフィルムを、ASTM D1708-13により引張り強さおよび伸びについて試験した。
【0054】
[0072]GD9-132、GD9-122、Jascoの施用前に、AC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)の初期引張り強さをオンス/inで測定した。後続引張り強さの測定を定期的に行って、2K-マスカントの引張り強さの低下を記録した。引張り強さの測定値(オンス/in)を表11に示す。
【0055】
[0073]
【表11】
【0056】
[0074]GD9-132(ベンジルアルコール)およびGD9-122(エステルアルコール/ベンジルアルコールのブレンド)は、不利でない伸びおよび引張り強さの維持に成功し、引張り強さはそれぞれ11~55%および16~50%であった。Jasco(塩化メチレン)は、2K-マスカントの除去に適した伸びおよび引張り強さを良好にもたらすことができず、静置した場合に回復不能な2K-マスカントの損傷を示し、0~5%の引張り強さを示した。
【0057】
[0075]実施例10.
[0076]AC Productsが製造したペイントリムーバー配合物:GD9-132(ベンジルアルコールに基づく)、GD9-122(エステルアルコール、ベンジルアルコールのブレンド)およびAC-2K NMPリムーバー(1-メチル-2-ピロリドン)を、AC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)マスカントフィルムに施用した。マスカントフィルムを、ASTM D1708-13により引張り強さおよび伸びについて試験した。
【0058】
[0077]GD9-132、GD9-122、AC-2K NMPリムーバーの施用前に、AC-2Kマスカント(ACP-3A Tan)の初期引張り強さをオンス/inで測定した。後続引張り強さの測定を定期的に行って、2K-マスカントの引張り強さの低下を記録した。引張り強さの測定値(オンス/in)を表12に示す。
【0059】
[0078]
【表12】
【0060】
[0079]GD9-132(ベンジルアルコール)、GD9-122(エステルアルコール/ベンジルアルコールのブレンド)およびAC-2K NMPリムーバー(1-メチル-2-ピロリドン)は、不利でない伸びおよび引張り強さの維持に成功し、引張り強さはそれぞれ20~29%、29~32%および17~33%であった。
【0061】
[0080]当業者なら、本発明の広範な概念から逸脱することなく、先に示し記載した代表的態様に変更を加えることができることを理解するであろう。したがって、本発明は示し記載した代表的態様に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるように本発明の精神および範囲内に修正を包含することを意図していることが理解される。例えば、代表的態様の具体的特徴は、特許請求される発明の一部であってもなくてもよく、開示される態様のさまざまな特徴を組み合わせてもよい。本明細書中で特記しない限り、“1つの(a)”、“1つの(an)”および“その(the)”は、1つの要素に限定されず、その代わりに“少なくとも1つ”を意味するとして解釈すべきである。
【0062】
[0081]本発明の図面および説明の少なくとも一部は、本発明の明確な理解に関連する要素に焦点を合わせるために簡略化されている一方、明確にする目的で、当業者なら理解する他の要素を排除することも本発明の一部を構成することができることを、理解すべきである。しかしながら、そのような要素は当分野で周知なので、そしてそれらは本発明のよりよい理解を必ずしも促進しないので、そのような要素の記載は本明細書中に提供しない。
【0063】
[0082]さらに、本発明の方法が本明細書中に記載される段階の特定の順序に依存しない範囲内において、段階の特定の順序を、特許請求の範囲に対する制限と解釈すべきでない。本発明の方法を対象にする任意の請求項は、記載された順序でそれらの段階を実施することに限定されるべきでなく、当業者なら、段階を変動させてもよく、それでもなお本発明の精神および範囲内にあるままであることを、容易に理解することができる。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
マスカントと基材の間の付着性を初期付着性から低下させる方法であって、該マスカントが基材の表面に付着しており、該方法が、組成物をマスカントに施用して、初期付着性を下回る後続付着性を達成することを含む、前記方法。
[2]
組成物が溶媒を含む、1に記載の方法。
[3]
溶媒が、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上を含む、2に記載の方法。
[4]
溶媒が、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上の水溶液を含む、2に記載の方法。
[5]
溶媒が、実質的に、ベンジルアルコール、トリエタノールアミンおよびエステルアルコールのうちの1以上の水溶液からなる、2に記載の方法。
[6]
組成物が、難燃剤、アミン、可塑剤および界面活性剤のうちの1以上をさらに含む、2に記載の方法。
[7]
難燃剤がハロゲンを含む、6に記載の方法。
[8]
難燃剤がリンを含む、6に記載の方法。
[9]
界面活性剤がイオン性界面活性剤である、6に記載の方法。
[10]
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、6に記載の方法。
[11]
マスカントがポリ尿素を含む、1に記載の方法。
[12]
マスカントがポリウレタンを含む、1に記載の方法。
[13]
基材が金属を含む、1に記載の方法。
[14]
金属がアルミニウムを含む、13に記載の方法。
[15]
アルミニウムがクラッドアルミニウムである、14に記載の方法。
[16]
クラッドアルミニウムが熱処理クラッドアルミニウムである、15に記載の方法。
[17]
アルミニウムが裸アルミニウムである、14に記載の方法。
[18]
裸アルミニウムが熱処理裸アルミニウムである、14に記載の方法。
[19]
金属が、オーステナイトニッケル-クロムに基づく超合金を含む、13に記載の方法。
[20]
金属がスチールを含む、13に記載の方法。
[21]
金属がチタンを含む、13に記載の方法。
[22]
施用が、塗装、浸漬、フローコーティングまたは噴霧による、1に記載の方法。
[23]
後続付着性が初期付着性の60%~0.1%である、1に記載の方法。
[24]
後続付着性が4オンス/インチ~0.1オンス/インチである、1に記載の方法。
[25]
後続付着性が、施用から1時間以内に初期付着性の60%~0.1%に低下する、1に記載の方法。
[26]
後続付着性が、少なくとも1日間、好ましくは少なくとも4日間、より好ましくは少なくとも1週間にわたり、初期付着性の60%~0.1%に低下したままである、1に記載の方法。
[27]
後続付着性が一定期間にわたり初期付着性を下回る、1に記載の方法であって、該方法がさらに、組成物をマスカントに追加的に1回以上施用して、後続付着性が初期付着性を下回る期間を延長することを含む、前記方法。
[28]
マスカントが、組成物施用前の初期引張り強さおよび組成物施用後の後続引張り強さを有し、後続引張り強さが、初期引張り強さの少なくとも15%である、1に記載の方法。