(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ライン案内装置、特に、エネルギーチェーンにおいてケーブルを監視するためのシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/02 20220101AFI20240417BHJP
【FI】
H04L43/02
(21)【出願番号】P 2021527037
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081859
(87)【国際公開番号】W WO2020104491
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】202018106543.2
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト ヘイバリング
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン クリスタ
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/115528(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/004304(WO,A1)
【文献】特開2014-216709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/66,13/00,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン案内装置、特にエネルギー案内チェーンによって案内されるラインの状態を監視するための監視システムであって、
固定接続点とそれに対して可動な接続点との間の前記ラインを案内するための変位可能な前記ライン案内装置であって、第1の接続端を有する少なくとも1つの可動ラン及び第2の接続端を有する更なるランを形成する前記ライン案内装置と、
前記ライン案内装置によって案内される少なくとも1本の前記ラインと、
監視される
少なくとも1本の前記ラインの状態についての情報を検出する評価ユニットを有する監視デバイスと
を備え、
前記監視デバイスは、データ通信のためのインターフェースを有する第1のデバイス及びデータ通信のための前記インターフェースを有する第2のデバイスを備え、2つの前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスはデジタルデータ伝送のためのプロトコルによるデータ通信のために構成され、各インターフェースはデータ通信についての固有アドレスを有し、
前記少なくとも1本のラインは、前記ライン案内装置によって案内される
とともに、電気データケーブルを含み、データ通信のための前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスの前記インターフェースは、前記電気データケーブルを介して接続され、
前記評価ユニットは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間のデータリンクの情報技術上の品質特徴に基づいて、監視される前記ラインの状態についての情報を検出し、前記品質特徴は、前記第2のデバイスにアドレス指定されたデータ伝送によって情報技術(IT)を用いて判定可能であるように構成されたことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記プロトコルは、パケットベースのデジタルデータ伝送のための前記プロトコル、好ましくは、イーサネット、PROFIBUSなどのIEEE802.3によるデータネットワークプロトコルであり、及び/又は前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスは、パケット交換によるデータ通信について構成されたことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記プロトコルは、CANバス、EIA-485などのデータバスプロトコル、特に産業分野のバスプロトコルであることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記評価ユニットは、前記品質特徴を継続的に、特に一定間隔で判定するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記評価ユニットは
、プロトコル本来の機能に基づいて
、情報技術(IT)を用いて又はソフトウェアを用いて前記品質特徴を判定するように構成されたことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載
の監視システム。
【請求項6】
前記第1のデバイスは、上位プロトコルによる可用性リクエスト(PING)を前記第2のデバイスに送信し、前記評価ユニットは、対応するレスポンス(PONG)がないこと又は基準レスポンスに対するレスポンスの変化に基づいて、前記データリンクの品質を評価する
、及び/又は
前記評価ユニットは、前記第1のデバイスから前記第2のデバイスへの可用性リクエスト、前記第2のデバイスから前記第1のデバイスへの受信アクノリッジメント、及び/若しくはパケットベースのデータ伝送におけるパケット損失若しくはパケット損失率、並びに/又はサービス品質(QoS)パラメータを評価するための少なくとも1つのプロトコル本来の機能に基づいて、前記品質特徴を判定するように構成されたことを特徴とする請求項
5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記第1のデバイスは前記評価ユニットを備え、該評価ユニットは、好ましくはマイクロコントローラなどのプログラム可能な集積回路を有することを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項8】
動作中のネットワークデバイス、特にイーサネットスイッチが、前記第1の接続端において前記ラインに接続され、当該ネットワークデバイスに前記第1のデバイスが接続され、及び/又は
動作中のネットワークデバイス、特にイーサネットスイッチが、前記第2の接続端において前記ラインに接続され、当該ネットワークデバイスに前記第2のデバイスが接続されることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項9】
前記監視デバイスは、前記第2のデバイスとして、データネットワーク又はデータバスに存在するアドレス指定可能なネットワークデバイス又はフィールドデバイスを用い、当該ネットワークデバイス又はフィールドデバイスは
、監視システムのために特化しては設けられないことを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載
の監視システム。
【請求項10】
前記監視デバイスは、監視システムのために特別に設けられた前記第2のデバイスを備えることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載
の監視システム。
【請求項11】
前記ライン案内装置は
、前記第1の接続端を有する前記可動ラン、前記第2の接続端を有する固定ラン及び2つの前記ランの間の偏向アークを形成するエネルギー案内チェーンであり、及び/又は
少なくとも1つの更なる前記ラインが前記ライン案内装置によって案内され、各更なる前記ラインは、2つの前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスの前記インターフェースがそれを介して接続される前記ラインの通常運用寿命以上の通常運用寿命を有することを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項12】
前記インターフェースは、POWERLAN、PLC又はIEEE1901標準などに対して実現され、2つの前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスの前記インターフェースは、前記ライン案内装置によって案内される電力供給ラインを介したシグナリングのために接続されることを特徴とする請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項13】
前記ライン案内装置によって案内され
る前記ラインは
、イーサネット可能
な銅データケーブルであり、又は
2つの前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスの前記インターフェースは、
前記ラインガイド装置によって案内される電気データケーブルからなるハイブリッドサーボラインを介してデータ通信のために接続されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項14】
前記第1のデバイスは、前記ライン案内装置のベース側端部に固定して配置され、前記第2のデバイスは、前記ライン案内装置によってデータ及び/又はエネルギーが供給される可動機械部品に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項
13のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項15】
請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の監視システムを特徴とする産業用ロボットであって、前記ライン案内装置は三次元偏向可能であり、産業用ロボットのエンドエフェクタに設けられたアドレス指定可能なネットワークデバイス又はフィールドデバイスが前記第2のデバイスとして使用される、産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略として、動作中のライン案内装置内又はそれによって案内されるラインの動作即応性又は摩耗状態を監視するためのシステムに関する。そのようなライン案内装置は、固定接続点又はベースと、それに対して可動な更なる接続点、例えば、主に移動端との間で、例えば、ケーブル、ホースなどの少なくとも1本のラインの動的な案内において作用する。
【0002】
本発明は、特に、例えば、機械又は設備の可動部品にデータを供給し、又はそこから到来するデータを送信するデータラインであってライン案内装置によって保護又は案内されるデータラインを監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
対象となる種類のライン案内装置は、移動する機械又は設備の構成要素にエネルギー、データ及び/又は動作媒体を供給する標準的なラインを保護する。対象となる種類のライン案内装置の例は、事実上公知の設計の変位可能なエネルギー案内チェーンである。
【0004】
動作において、単一平面において変位可能なエネルギー案内チェーンは、通常、接続端を有する可動ラン、接続端を有する固定ラン、及び2つのランの間の偏向アークを形成する。出願人は、例えば、特許文献1又は特許文献2において、例えば、水平又は垂直に、一平面を移動することができるエネルギー案内チェーンを提案した。さらに、三次元偏向可能なエネルギー案内チェーンが知られており、それは特に産業用ロボットで用いられる。三次元偏向可能なエネルギー案内チェーンは、例えば、特許文献3において出願人によって提案された。
【0005】
ライン案内装置又はエネルギー案内チェーンの設計にかかわらず、案内されるラインには、動作中には動的に負荷がかかる。ラインは、不可避な摩耗を受けるので、実行される移動サイクル数が増加するにつれて故障のリスクを伴う。
【0006】
ライン案内装置に加えて、システムは、監視されるラインの状態、特に摩耗状態についての情報を検出する少なくとも1つの評価ユニットを有する監視デバイスを備える。
【0007】
請求項1の導入部による、対象となる種類のシステムは、特許文献4から知られている。このシステムは、差し迫ったライン故障の早期識別の目的のため、特に、供給された機械又は設備の予知保全の目的のため又は望まれない故障の回避のために、進行中の動作におけるライン監視を可能とする。この目的のため、特許文献4のシステムは、抵抗値又はコンダクタンスを測定するための測定装置とともに特殊なインジケータ導体及び回路を必要とする。
【0008】
特に、可動に案内されるデータラインは、通常は、とりわけライン品質に関する一層厳しい要件のために、電力供給ラインと比較して摩耗の影響をより受け易く、又は運用寿命はより短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許第0803032号明細書
【文献】国際公開第02/086349号
【文献】国際公開第2004/093279号
【文献】国際公開第2018/196949号
【発明の概要】
【0010】
特に、以前から知られている解決手段よりも安価に実施することを目的とする代替の解決手段を提案することが本発明の課題である。この課題は、請求項1によるシステムによって達成される。有利な又は好適な実施形態は、従属請求項によって明らかとなる。更なる課題は、より摩耗の影響を受け易いデータラインに特に適した監視システムを提案することにある。
【0011】
最も簡素でかつ最も上位の形態では、課題は以下により達成される。監視デバイスは、データ通信のためのインターフェースを有する第1のデバイス及びデータ通信のためのインターフェースを有する第2のデバイスを備え、これらのデバイス又はインターフェースはデジタルデータ伝送のためのプロトコルによるデータ通信のために構成される。この場合、2つのデバイスのインターフェースは、ライン案内装置によって又はライン案内装置内でその長さの少なくとも一部にわたって案内されるラインを介して接続される。評価ユニットは、第1のデバイスと第2のデバイスの間のデータリンクの情報技術上の品質特徴に基づいて、監視されるラインの状態、特に摩耗状態についての情報をそれが取得又は検出するように、本発明によって設置又は構成される。情報技術上の(つまり、ITベースの)品質特徴は、特に、情報技術ベースの方法、特に事実上公知の情報技術上の(ITベースの)方法を用いて判定可能なデータリンクの品質に応じた特徴である。品質特徴は、例えば、選択される伝送特性又はそのためのインジケータに対応し得る。
【0012】
この解決手段の2つの顕著に有利な効果は、一方では、例えば、ネットワーク技術又はバス技術などの事実上公知のデータ通信技術が使用可能となることであり、他方では、適切なプログラミングによってソフトウェア判定可能なデータリンク品質特徴を用いることによって、監視されるラインの摩耗状態について又はそれが実際に動作可能な状態にあるか否かについての結論を出すことができることである。監視されるラインは、必ずしもではないが、特に、第1及び第2のデバイスのインターフェース間のデータリンクを生成するラインであり得る。後者のラインは、監視されるべき重要とみなされる異なるラインのためのインジケータとして用いられてもよい。更なる有利な効果は、監視のために特殊なインジケータ導体(いわゆる「犠牲ワイヤ」)は特段必要ではなく、むしろ既に入手可能又は既存のデジタル通信ラインが利用され得ることにある。提案される解決手段はまた、監視されるラインの何らかの修正又は特定の適合化を一般に必要としない。
【0013】
IT又はデータ処理技術を用いて判定可能なデータリンクの品質特徴によって、データラインの状態についての結論を出すことができる。以前に比較的高かった接続品質の劣化は、動的負荷、例えば、エネルギー案内チェーンの移動サイクルによって、若しくは実際には他の何らかの起こり得る動作不能、例えば、チェーンの破断によって引き起こされる摩耗について、又はデータラインの中断についての有力なインジケータである。監視されるラインの状態について、結論はそこから直接出されてもよいし、間接的に出されてもよく、後者は必ずしもデータラインに対応している必要はない。データリンクの品質特徴は、この場合、事実上公知のソフトウェア機能によって判定又は検出される。したがって、解決手段の実施は、簡素かつ安価なものとなる。
【0014】
データリンクの情報技術上の品質特徴は、この意味では、特に、第1のデバイスと第2のデバイスの間のデータリンクであってライン案内装置において少なくともある程度案内されるラインによって物理的に実現されるデータリンクの、より高い又はより低い品質のIT検出可能な劣化である。
【0015】
評価ユニットは、第1のデバイスの一体化構成要素であってもよいし、分離モジュールの形態をとっていてもよい。評価ユニットは、特定用途向けハードウェアの形態で、又はコンピュータ上の純粋なソフトウェアモジュールとして提供され得る。
【0016】
提案されるシステムは、電気的又は実際には光学的ライン、特に、少なくともデータ伝送にも適するラインを監視するのに原則として適する。本発明は、データライン及び/又はバスラインの、また、例えば、データをデジタル伝送するモータ及び/又はサーボラインなどの制御目的のためのラインの監視、特に、動作即応性の直接の監視を可能とする。
【0017】
適切なプロトコルは、好ましくは、パケットベースのデジタルデータ伝送のためのプロトコルである。一実施形態では、データ伝送のための通信プロトコルが、データネットワークプロトコル、好ましくは、IEEE802.3によるプロトコルとなるように構成される。例えば、イーサネット、PROFIBUSなどの事実上公知の技術が使用可能である。パケット交換でのデータ通信に対して構成されたデバイス又はインターフェースが実施可能である。同様に回路交換も考えられるが、好ましくはない。
【0018】
代替の一実施形態では、データ伝送のためのプロトコルが、データバスプロトコル、特に、産業分野のバスプロトコルとなるように構成される。例えば、CAN、EIA-485などの事実上公知の種類のものが実施可能である。
【0019】
データリンクの情報技術上の品質特徴を判定又は検出することは、好ましくは、デバイス又はインターフェースをアドレス指定する事実上公知の方法を利用することによって、行われる。各インターフェースは、好ましくは、例えば、MACアドレスなどの、データネットワーク又はデータバスにおける任意のイベントにおいて固有に指定されたデータ通信のための固有アドレスを有する。
【0020】
特に、品質特徴のアドレスベースの判定の場合には、品質特徴は、好ましくは、第2のデバイスにアドレス指定されたデータ伝送を用いてIT毎に検出される。
【0021】
好適な更なる展開では、評価ユニットが、品質特徴を連続して判定するように構成される。評価ユニットは、監視されるラインの動作即応性に関して「良好」の場合又は「不良」の場合を識別又は区別するために、例えば、現在判定されている品質特徴を、所定の又は経年依存的に適合された参照値と比較することができる。評価ユニットは、例えば、品質特徴を一定時間間隔で検出するように構成され得る。
【0022】
本発明による解決手段のために、評価ユニットは、品質特徴を、特にライン上の電気量のアナログ測定を要することなく、専らIT又はソフトウェアに基づいて判定するように構成され得る。
【0023】
品質特徴のソフトウェアベースの判定は、特に好ましくは、接続品質を評価するプロトコル本来の機能を用いて行われる。これらの機能は、OSIモデルのいずれかの所望のレイヤにおいて提供され得る。
【0024】
品質特徴の判定又は評価は、例えば、以下に基づいて様々なソフトウェア測定によって実行され得る:
-第1のデバイスから第2のデバイスへの可用性リクエスト、第2のデバイスから第1のデバイスへの受信アクノリッジメント、
及び/又は
-パケットベースのデータ伝送におけるパケット損失若しくはパケット損失率、
及び/又は
-例えば、パケット損失率、パケット往復時間(RTT)、待ち時間などのサービス品質(QoS)パラメータを評価するための少なくとも1つのプロトコル本来の機能。可用性リクエスト、受信アクノリッジメント又はパケット損失の検出は、この場合、使用されるデータプロトコルの機能として既にプロトコルに本来的に提供されていたものであってもよいし、この目的のために特別にプログラムされてもよい。
【0025】
他の品質特徴も、用途の分野に応じて実施可能である。1つの好適なアプローチは、パケット損失率の現在進行中の監視、及び閾値又はプログラムされ若しくは学習された参照値に対するその比較である。複数の異なる品質特徴が、例えば、ラインを交換する必要について決定する際の重み付けの目的、又は監視パラメータを相互に対してクロスチェックする目的のために、監視及び評価されてもよい。
【0026】
一実施形態では、例えば、第1のデバイスが、例えば、ECHOリクエスト又はPINGメッセージタイプの可用性リクエストをOSIモデルにおける上位のプロトコルに応じて第2のデバイスに送信するように構成される。IPプロトコルによるICMP ECHOリクエスト、UDPエコーリクエストなどが、好適な例となる。これを基準として、評価ユニットは、例えば、ECHOレスポンス、PONGメッセージなど、第2のデバイスからの対応のレスポンスがないことに基づいて、データリンクの品質を評価することができる。評価は、同様に、基準レスポンスに対するレスポンスの変化に基づいて行われてもよい。
【0027】
一実施形態では、第1のデバイスは、評価ユニットを備え、又はそれを構成し得る。評価ユニットは、好ましくは、例えば、プログラミングによってソフトウェア毎に上記実施形態の1つを実施するように構成されたマイクロコントローラなどのプログラム可能な集積回路を有する。
【0028】
既存の技術を利用するために、例えば、イーサネットスイッチ、イーサネットルータなどの動作中のネットワークデバイスがライン案内装置のベース側接続端におけるラインに接続されるように構成され、第1のデバイスはこのネットワークデバイスに接続される。代替的に又は追加的に、動作中のネットワークデバイスは、同様に、移動端側において接続端でラインに接続されてもよく、第2のデバイスはこのネットワークデバイスに接続される。従来的な市販ネットワークデバイスを用いることによって、評価ユニットを設けるのに必要となるハードウェアが最小限まで減少し得る。一方、特別に又は特化して設けられた第2のデバイスが、最小限のハードウェア費用で、可用性リクエストに対するレスポンスを与えるのに使用されてもよい。分散ネットワークデバイスを用いると、さらに、監視システムの目的のための所望の用途についていずれかの態様で設けられたデータラインの利用が可能となる。
【0029】
監視デバイスが、データネットワーク又はデータバスにいずれにしても存在する既知のアドレスを有するネットワークデバイス又はフィールドデバイスを第2のデバイスとして利用することも同様に本発明の範囲内である。使用は、特に、監視システムについて特化して設けられるわけではない既存のデバイスから構成されてもよい。
【0030】
あるいは、ただし、監視システムのために特別に設けられた第2のデバイスがデータラインに接続されてもよい。いずれの場合も、第1のデバイスは、好ましくは、評価ユニットを備え、又はそれからなる。
【0031】
第1のデバイスと第2のデバイスの間のデータリンクに使用されるデータラインは、ライン案内装置によって案内される更なる被監視ラインのための一種のインジケータとして作用し得る。この場合、この更なるライン又は各更なるラインの通常運用寿命は、好ましくは、2つのデバイスのインターフェースを接続してそのまま所定の破壊点又は弱いリンクとして作用するデータラインの通常運用寿命よりも長く、又は少なくともそれに等しい。したがって、例えば、その用途について特に重要な他のラインの間接的な監視が行われてもよい。あるいは、監視されるラインが、インターフェース間のデータラインを備えていてもよいし、それからなるものであってもよい。
【0032】
2つのデバイス間のインターフェースは、好ましくは、ライン案内装置又はエネルギー案内チェーンによって案内される電気データラインを介してデータ通信のために接続される。このデータラインは、監視システム用に特別に設けられてもよいが、本発明はまた、特に有利なことに、監視システムの構成要素としての用途のために既に存在する既存のデータラインの使用を可能とする。
【0033】
さらに、好適な一構成は、従来のデータラインの代わりに、第1のデバイスと第2のデバイスの間のデータ通信のために電力供給ラインの使用を可能とする。この目的のため、インターフェースは、例えば、POWERLAN、PLC又は他のIEEE1901標準について実現され得る。例えば、2つのデバイスのインターフェースは、エネルギー案内チェーンにおいて案内される電力供給ラインを介したシグナリングのために接続され得る。
【0034】
さらに又は代替として、ハイブリッドサーボラインが、2つのデータ通信デバイス又はそれらのインターフェースに接続してもよい。ハイブリッドサーボラインは、電力伝送のためのサーボライン及び統合データライン、特にセンシングデバイスラインを備える。単線ケーブルライン又はワンケーブルテクノロジー(OCT)ラインともよくいわれるハイブリッドサーボラインの有利な効果は、省配線であるだけでなく、省スペース及び省コストでもあることである。データ伝送は、通常はデジタルで、ただし、供給される機械の製造者に応じて可能な限り広い範囲のバス技術を用いて行われる。
【0035】
第1のデバイスは、ライン案内装置のベース側端部において、すなわち、静止機械部品上に固定して配置され得る。そして、第2のデバイスは、ライン案内装置によってデータ及び/又はエネルギーが供給される可動機械部品上に配置される。
【0036】
本発明による、2つのデバイス間のデータ通信のITベース又はデータ技術ベースの品質特徴の活用は、産業用ロボット上でライン監視について特に有利に用いられることになる。そして、ライン案内装置は、好ましくは、例えば、特許文献3において説明する設計の三次元偏向可能エネルギー案内チェーンである。そして、産業用ロボットのエンドエフェクタにおいていずれにしても設けられるアドレス指定可能なネットワーク又はフィールドデバイスは、第2のデバイスとして利用され得る。産業用ロボットの場合だけでなく、ただし、特に産業用ロボットの場合、休止時間は自動化ロボット設備では通常は特に望ましくないため、切迫したライン故障の早期識別は特に有利となる。
【0037】
個々のリンクからなるエネルギー案内チェーンに加えて、動作中にラインに動的に負荷がかかる他の全ての種類の動的ライン案内も考慮され得る。純粋に例示として、国際公開第2016/042134号は、例えば、本発明が同様に適用可能なクリーンルームの用途のための柔軟なライン案内路を開示する。
【0038】
ただし、提案される監視システムは、実際のエネルギー案内チェーンの進行中の動作におけるデータ若しくは電力供給ケーブルの状態監視に、及び/又は故障回避のための予測的若しくは予防保全の目的のために、特に適する。
【0039】
本発明の更なる有利な特徴及び効果を、添付図面を参照して好適な実施形態に基づいて、上記の一般的な適応可能性を制限することなく、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1の実施形態による、本発明に係る監視システムを有するエネルギー案内チェーンの側面模式図である。
【
図2】第2の実施形態による、本発明に係る監視システムを有するエネルギー案内チェーンの側面模式図である。
【
図3】第3の実施形態による、本発明に係る監視システムを有する複数のエネルギー案内チェーンの側面模式図である。
【
図4】
図1、
図2又は
図3に係る監視システムが設けられ得る三次元偏向可能エネルギー案内チェーンを有する産業用ロボットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、動的ライン案内装置の例として、一般に符号1が付されて模式的に示されたエネルギー案内チェーンを示す。エネルギー案内チェーン1は、より詳細には図示されないケーブル、ホース又は類似のラインの保護された案内のために作用する。ここでは上部ランである可動ラン2とここでは下部ランである固定ラン3との間に、エネルギー案内チェーン1は、ともに移動する特定曲率の偏向アーク4を形成する。ライン破断を回避するために、偏向アーク4は、特に、指定された最小曲率半径を有し、このようにして、曲率半径が、案内されるラインに対して許容可能な曲率半径を下回らないことを確実にする。ライン案内装置は、通常は、用途に応じた数及び種類のラインが案内される内側案内チャネルを形成する。エネルギー案内チェーン1の設計は本発明にとって重要ではなく、個々の枢動可能に相互接続されたチェーンリンクからなる全ての事実上公知のエネルギー案内チェーン1が実施可能である。
【0042】
図1乃至
図3は、単に例示として、リニアにかつ水平に変位可能なエネルギー案内チェーン1を示す。可動ラン2は第1の接続端2Aにおいて、例えば、可動機械部品(図示せず)の移動端に固定される端部リンクにおいて終端する。固定ラン3は、第2の接続端3Aにおいて、例えば、
図1乃至
図2に模式的に示すような機械又は設備の固定点に固定される端部リンクにおいて終端する。偏向アーク4は、移動する接続端2Aの移動に対して半分の速度で追従する。
【0043】
図1は、本発明の基本的な態様として、一般に符号10が付される監視デバイスの模式的表示である。監視デバイス10は、データ通信のためのインターフェースを有する第1のデバイス11及びデータ通信のためのインターフェースを有する第2のデバイス12を備える。デバイス11及び12は、それらのインターフェースに基づいて、
図1では、例えば、PROFINETなど、例えば、イーサネットプロトコル又はIEEE802.3と同等の若しくはそれと互換可能なプロトコルに従うデータ通信のために構成され、したがって相互にデジタルデータを交換できる。2つのデバイス11及び12のインターフェースは、この目的のため、イーサネットデータライン13、例えば、データ撚線対を有する汎用のCAT5データケーブルを介して接続される。データライン13の長手部分は、ここでは
図1に示すように、ライン案内装置すなわちエネルギー案内チェーン1において案内及び保護される。
【0044】
データライン13を有するイーサネットインターフェースに加えて、第1のデバイス11は、デバイス11とデバイス12の間のデータリンクの情報技術上の(ITベースの)品質特徴に基づいて、監視されるライン、ここでは例えばデータライン13自体の状態についての情報を検出するように構成された少なくとも1つの評価ユニットを備える。
【0045】
第1のデバイス11は、例えば、マイクロプロセッサ及びイーサネットインターフェースを含む種々のI/Oインターフェースを有する従来的な市販のモジュール式コンピュータプラットフォームの形態をとり得る。デバイス11とデバイス12の間のデータリンクの品質特徴のITベースの確認のため、従来的な市販のオペレーティングシステムが、IPプロトコルによるパケット交換データ伝送に適したコンピュータプラットフォームに使用されてもよく、例えば、TCP/IPプロトコル又は互換可能なプロトコルファミリによるICMPエコーリクエスト又はPINGメッセージなどの可用性リクエストについての機能をプロトコルの本来的態様として又はオペレーティングシステムとともに提供する。ここでは第1のデバイス11における評価ユニットにおいて、可用性リクエストが第2のデバイス12にアドレス指定されることを可能とするように、第2のデバイス12の既知の又は所定のネットワークアドレスがこの目的のために記憶される。評価ユニットは、ここでは第1のデバイス11において、第2のデバイス12から評価ユニットへの対応のレスポンス、例えば、ECHOレスポンス若しくはPONGメッセージがないことに基づいて、又は実際には基準レスポンスに対するそれらのレスポンスの特性の変化に基づいて、データリンクの品質を継続的に、例えば、一定時間間隔で確認する。この目的のため、評価ユニットは適切なソフトウェア機能を提供され、さらには、対象となる品質特徴を継続的に確認するソフトウェアベースの診断機能を有する。
【0046】
パケット損失の検出数を品質特徴として用いることができ、これは通常、ICMPエコーリクエスト又はPING機能の出力値を表す。パケット損失数が所定数以上に増加した場合、これは、特に、摩耗によってもたらされるデータライン13の摩耗及び断裂若しくは中断又は故障を示す。この場合、評価ユニットは、予知保全を可能とするように、例えば、データライン13を介して又は好ましくは別個のチャネルを介して、警告又はエラーメッセージを上位監視手段に出力する(
図3参照)。
【0047】
第2のデバイス12は、原則として、例えば、TCP/IPプロトコルによる、例えば可用性リクエストなどの選択されたプロトコル機能をサポートし、又は例えばCANバス、EIA-485などのフィールドバスプロトコルがイーサネットデータリンクの代わりに使用される場合には、実際には少なくとも第1のデバイス11への受信アクノリッジメントの送信に適した任意の安価で従来的な市販ネットワークデバイス又は構成要素であり得る。後者の場合、ここでは第1のデバイス11における評価ユニットは、例えば、第2のデバイス12からの受信アクノリッジメントが各リクエストについて受信されたか否かを、同様に、所定のエラー閾値に達した場合には警告又はエラーメッセージを出力しているか否かを単に監視することになる。
【0048】
第1のデバイス11と同様に、第2のデバイス12も、特化してプログラムされたハードウェアモジュールとして提供され得る。
【0049】
事実上公知の通信技術の利用は、更なる有利な効果をもたらす。
図1に示すように、監視デバイス10の2つのデバイス11及び12の各々は、イーサネットスイッチ又は同等に動作中のスイッチング若しくはネットワークデバイスなどのスイッチングデバイス14に接続される。これは、監視デバイス10がそのデバイス11及び12を既存の又は所望の用途に応じたネットワーク又はバス構造にシームレスに一体化されること、並びに用途に関連するユーザデータについていずれにしても提供されるデータライン13が監視に使用されることを可能とする。データライン13は、例えば、データネットワーク又はデータバスの第1の領域15とデータネットワーク又はデータバスの第2の領域16との間で交換される、例えば、制御及び/又は測定データなどのユーザデータのために作用し得る。領域15及び16は、ここでは、スイッチングデバイス14によってデータライン13を介して接続される。
【0050】
スイッチングデバイス14のために、監視デバイス10のデバイス11及び12は、領域15と領域16の間での顕著な通信障害をもたらすことはない。スイッチングデバイス14は双方とも、確認されるライン部分をライン案内装置内の領域に対して可能な限り遠くに制限するために、エネルギー案内チェーン1の接続端2A及び3Aの可能な限り近くに配置される。
【0051】
通信トポロジの第1の領域15は、この場合、機械又は設備の固定部品に配置され、例えば、制御ユニットを備え得る。第2の領域16は、例えば、相対移動が可能な機械又は設備の部品にセンサ及び/又はアクチュエータを備える。
【0052】
図1による監視デバイス10のアーキテクチャにおいて、第1のデバイス11において必要なソフトウェアでプログラムされた特化して構成された評価ユニットに加えて、監視デバイス10の目的のために特別に構成された第2のデバイス12が設けられる。ただし、これは、既存の技術の利用のために不要となる。
【0053】
データネットワーク又はデータバスの第2の領域16に設けられた更なるデバイス12´の固有のネットワークアドレス又はバスアドレスが事前に知られていることを前提として、この更なるデバイス12´が上記の目的に使用可能である。共通のネットワークデバイス又はフィールドデバイスは、通常、対象となる品質特徴の適切な選択の場合にいずれにしても必要な技術を既に含んでいる。対応する第2の実施形態を
図2に模式的に示す。
図2による監視デバイス20は、例えば、第1のデバイス11において実装された評価ユニットが第2の領域16における特定用途向けデバイス12´と直接通信する点において異なる。そして、更なるデバイス12´は、例えば、ECHOリクエスト又はアドレス指定されたバスデータのアクノリッジメントの受信に対して応答するように本来的に構成されていてもよい。したがって、
図1による特定の第2のデバイス12及びスイッチングデバイス14は、絶対的に不可欠というわけではない。さらに、
図2による監視デバイス20の構造及び機能は、
図1のものに対応する。
【0054】
監視デバイス30の更なる変形例を
図3に示す。ここで、第1のデバイス11として、評価ユニット11´が追加のモジュールとして一体化される特定用途向け制御又は監視ユニットが、例えば、適切なハードウェア又はソフトウェアの形態で設けられる。評価ユニット11´は、この場合、共通の第1のデバイス11と、幾つかの第2のデバイス12A、12Bなどの各1つと、の間の複数のデータリンクからの選択されたITベースの品質特徴を並行して検出するように構成される。評価ユニット11´を有する第1のデバイス11は、このようにして、異なるエネルギー案内チェーン1において複数のライン13A、13Bなどを並行して監視し得る。
図3は、純粋に例示として、2つの監視されるエネルギー案内チェーン1を示す。第1のデバイス11は、ここでは、更なる機能のために第1のネットワーク又はデータバスの第1の領域15と、ライン13A、13Bなどを介したさらに複雑な設備又は機械の複数の第2のネットワーク又はデータバスの第2の領域16とも各々接続され得る。
【0055】
図4は、監視デバイス10、20又は30のための例示的用途として、例えば、製造プロセスにおいてワークの完全に自動化されたハンドリングのための多関節ロボット40を示す。多関節ロボット40の固定ベース40Aから、
図1乃至
図3にあるような第1のリニアに変位可能なエネルギー案内チェーン1が、そこから(例えば、特許文献3による)三次元偏向可能な第2のエネルギー案内チェーン41がエンドエフェクタ42又は末端ロボット工具に続く旋回ジョイントに繋がる。エンドエフェクタ42には、共通フィールドバスプロトコル又は例えばPROFINETプロトコルに既に適している多数のアクチュエータ及びセンサが通常は設けられる。
【0056】
これらのフィールドデバイス又はネットワークデバイスのアドレスは、事前決定可能であり、又はプログラム可能である。
図1乃至
図3の原理による監視デバイス10、20又は30を用いると、エネルギー案内チェーン1又は41によって案内される少なくとも1つの又は実際には全部のデータライン13が、それらの摩耗状態について監視される。この目的のため、例えば、コンピュータ上のソフトウェアモジュールの形態において評価ユニット11´を有する安価に実施可能な第1のデバイス11だけが必要となる。既存の制御ユニット又は監視ユニットは、この目的のために使用され得る(
図3参照)。
【0057】
したがって、ライン状態を監視するための提案の監視システムは、予知保全を支援し、及び/又は休止時間を短縮若しくは回避するための安価な解決手段を提供する。本発明は、とりわけ、それらの可能な運用寿命に関して、より故障の影響を受け易く、そして選択的に実際には高価なデータライン、特殊ラインなどを最大限利用すること、すなわち、不要に早い交換を回避することを可能とする。
【符号の説明】
【0058】
図1~3
1 ライン案内装置(エネルギー案内チェーン)
2 可動ラン
2A 第1の接続端
3 固定ラン
3A 第2の接続端
4 偏向アーク
10、20、30 監視デバイス
11 第1のデバイス
12;12´;12A、12B 第2のデバイス
13;13A、13B データライン
14 スイッチングデバイス(イーサネットスイッチ)
15 第1の領域(顧客ネットワーク/バス)
16 第2の領域(顧客ネットワーク/バス)
図4
1 第1のエネルギー案内チェーン(リニアに変位可能)
2 第1のラン
3 第2のラン
4 偏向アーク
40 多関節ロボット
40A ベース
41 第2のエネルギー案内チェーン(三次元偏向可能)
42 エンドエフェクタ