(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 7/11 20060101AFI20240417BHJP
B02C 7/04 20060101ALI20240417BHJP
A23G 1/06 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B02C7/11 A
B02C7/04
A23G1/06
(21)【出願番号】P 2021537235
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028780
(87)【国際公開番号】W WO2021024840
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019143193
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】三角 勝
(72)【発明者】
【氏名】杉本 尚泉
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-018755(JP,A)
【文献】米国特許第02763440(US,A)
【文献】米国特許第03347178(US,A)
【文献】特開2002-253981(JP,A)
【文献】特開2016-159235(JP,A)
【文献】実開昭48-017478(JP,U)
【文献】特開2000-070742(JP,A)
【文献】特開平09-253516(JP,A)
【文献】米国特許第02266652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 7/11
B02C 7/04
A23G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下臼と上臼とを有する粉砕部であって、前記下臼に同期して回転する回転臼である内臼と、前記上臼に設けられた固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、
下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部と、
前記内臼の上端部に設けられ、前記固体原料を前記導入部から前記入口部に導く導入部材と、を備え、
前記導入部材は、少なくとも2枚の導入板を含み、
前記少なくとも2枚の導入板の各々は、
所定の水平面である基準面から上方に突出する凸部と、前記凸部の上方に設けられ水平面に対して所定の角度で傾斜する傾斜面
とを有し、
前記少なくとも2枚の導入板における
前記傾斜面の中央から前記入口部の水平面までの高さがそれぞれ異なって
おり、
前記少なくとも2枚の導入板は、
第1凸部と第1傾斜面とを含む第1導入板と、
第2凸部と第2傾斜面とを含み、前記第1導入板の前記第1凸部と同じ向きに突出し前記第1導入板よりも高さが低い第2導入板と、
を含み、
前記第1導入板の前記第1傾斜面及び前記第2導入板の前記第2傾斜面は、傾斜方向が逆になっていることを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記第1導入板は、当該第1導入板の傾斜面の下方端が、前記入口部の水平面と同じ高さかそれよりも高い高さとなるように形成され、
前記第2導入板は、当該第2導入板の傾斜面の下方端が、前記入口部の水平面と同じ高さかそれよりも低い高さとなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記第2導入板の傾斜面の上方端の高さが、前記第1導入板の傾斜面の下方端の高さと同じまたはより高いことを特徴とする請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記導入部は、前記入口部に向かって傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面に、前記入口部に向かって延設された突起部が形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオ豆等の固体原料を粉砕する粉砕装置に関する。本願は、2019年8月2日に、日本に出願された特願2019-143193に優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
この種の粉砕装置としては、例えば特許文献1に開示されている電動粉挽き機が知られている。この電動粉挽き機は、被粉砕物が投入され、次段に送る開口を有する投入部と、導入調整部からの被粉砕物を粗く粉砕する粗粉挽き部と、粗粉挽き部で粉砕された被粉砕物をさらに細かく粉砕する精細粉挽き部と、精細粉挽き部への被粉砕物の導入量を調整する調整部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、被粉砕物が粉砕される粉砕領域における、被粉砕物の導入領域の温度を、被粉砕物が有する油分が抽出される温度より低くなるようにし、排出領域の温度を、被粉砕物が有する油分が抽出される温度より高くする。これにより、被粉砕物であるカカオ豆の粉同士の固着を防止している。
【0005】
しかしながら、一般に、被粉砕物であるカカオ豆はある程度温められていると粉砕が容易になる。特に、粉砕装置における粉砕初期段階で、カカオ豆が所望する温度(粉砕を効率的に行える温度)まで温められた状態にすれば、粉砕を最適に行うことができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、上述したとおり、粉砕領域において、被粉砕物の粉砕初期段階(導入領域)において、被粉砕物が有する油分が抽出される温度より低くなるように構成されている。これにより、被粉砕物を粉砕が効率的に行える温度まで温められているとは言えない。従って、特許文献1に開示された技術では、被粉砕物の粉砕を最適に行えないという問題が生じる。
【0007】
また、粉砕装置における粉砕初期段階(被粉砕物の導入領域)で、カカオ豆が所望する温度(粉砕を効率的に行える温度)まで温められた状態にすれば、粉砕を最適に行うことができる。しかしながら、被粉砕物の導入領域からカカオ豆が逆流して、カカオ豆の供給部(ホッパー)に戻るような事態になれば、導入領域で所望温度まで温められたカカオ豆によって、ホッパー内の他のカカオ豆が温められる。このような場合には、ホッパー内でカカオ豆同士が染み出た油分により固着してしまい、ホッパーから被粉砕物の導入領域にカカオ豆を適切な量供給することができないという問題が生じる。
【0008】
本発明の一態様は、粉砕に適した温度まで温められた被粉砕物が逆流しないようにすることで、被粉砕物の供給部における温度の上昇を抑制して、被粉砕物を適切な量供給できる粉砕装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粉砕装置は、下臼と上臼とを有する粉砕部であって、前記下臼に同期して回転する回転臼である内臼と、前記上臼に設けられた固定臼である外臼とからなるコニカル臼を有し、前記内臼と前記外臼との間の入口部に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼にて粉砕する粉砕部と、下端部に開口部を有し、前記開口部の径が前記入口部の前記外臼の内径よりも小さく、供給された前記固体原料を前記開口部から前記コニカル臼の前記入口部に投入する導入部と、前記内臼の上端部に設けられ、前記固定原料を前記導入部から前記入口部に導く導入部材と、を備え、前記導入部材は、少なくとも2枚の導入板を含み、前記少なくとも2枚の導入板の各々は、水平面に対して所定の角度で傾斜する傾斜面を有し、前記少なくとも2枚の導入板における傾斜面の中央から前記導入部における水平面までの高さがそれぞれ異なっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、粉砕に適した温度まで温められた被粉砕物が逆流しないようにすることで、被粉砕物の供給部における温度の上昇を抑制して、被粉砕物を適切な量供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る粉砕装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示した粉砕装置が備える粉砕ユニットの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した粉砕装置が備える粉砕ユニットの縦断面部分の正面図である。
【
図4】
図3に示す粉砕ユニットが備える下臼と内臼の斜視図である。
【
図6】
図5に示す下臼と内臼の上面図の矢印A方向に向かって見たときの側面図である。
【
図7】
図5に示す下臼と内臼の上面図の矢印B方向に向かって見たときの側面図である。
【
図8】
図5示す内臼上部に設けられた第1導入板の傾斜角を説明するための図である。
【
図9】
図5示す内臼上部に設けられた第2導入板の傾斜角を説明するための図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る粉砕装置が備える粉砕ユニットの上面図である。
【
図11】
図10に示す粉砕ユニットの縦断面部分の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(固体原料の粉砕についての概要)
穀類や豆類等の固体の粉砕は、固体が粉砕されることによって用途が飛躍的に拡大するため、さまざま食品に対して利用されている。しかしながら、均一な粉砕物を効率良く、かつ風味の劣化を防いで行うことの困難さもまた良く知られているところである。粉砕効率を重視すれば、粉砕物の粒子が粗く不均一となり、小麦粉、蕎麦粉等では滑らかさが失われ、うどんや蕎麦の品質が低下するのみならず、粉砕時に余分な熱が掛かるために酸化による風味の劣化が起こり易い。粉砕時に余分な摩擦熱が粉砕物に加わった場合、お茶では新鮮な風味が損なわれ、豆乳では青臭さの強いものになってしまう。臼をゆっくりと回転させて粉砕物を粉砕するという古くからの考え方は、摩擦熱の発生が抑えられるので、加工中の粉砕物の風味の劣化を防ぐという点で極めて理にかなっている。
【0013】
石臼のように回転する砥石と固定された砥石の間のクリアランスによって、粉砕物の粒度を調整するという粉砕方式は、材質が天然石からセラミック、金属へと変わっても、基本的な考えは同じである。これは乾式粉砕においても、湿式粉砕に於いても同様であり、蕎麦製造における蕎麦の実の粉砕は乾式で行われ、豆腐製造に於ける大豆の粉砕は湿式で行われている代表例である。石臼方式での粉砕は、様々な分野で利用されているが、乾式、湿式を問わず1段の粉砕で目的の粒子サイズとなるよう、回転砥石部と固定砥石部のクリアランス調整を行って実施されている。また、材質をステンレスの様な金属とした粉砕機においても、その回転刃と固定刃とのクリアランスの調整は、1段の粉砕で目的のサイズの粉砕物となるよう設計され、実施されている。
【0014】
例えば、チョコレートの場合、カカオニブと呼ばれる、焙煎したカカオ豆を粗粉砕した原料を使用する。チョコレート工房など店舗で粉砕する場合は石臼方式を利用することがあり、石臼同士のクリアランスを段階的に調整する。所望の滑らかなチョコレートになるまで、クリアランスを徐々に狭くしながら粉砕を複数回繰り返す必要がある。原料であるカカオの一粒のサイズはクリアランスに対して比較的大きく不利である。すなわち、カカオは徐々に細かく粉砕されるので、目的とする粒子となるまでに時間が掛かることとなる。
【0015】
カカオの粉砕には、カカオの融点が35℃程度であり、カカオニブ粉砕時の臼とカカオニブとの摩擦熱により液(ペースト)状となることを利用し、湿式粉砕を採用する。粉砕中のカカオおよび臼の温度は成り行きで決まることになり従来制御されてこなかった。温度が低ければ、カカオが臼内で流動できず溝に固着し、粉砕できない上、モータへの負荷が増大することになる。一方温度が高すぎる場合は、カカオが焦げ付くことがあり、カカオの品質を低下させることになる。
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の粉砕機としての粉砕ユニット11を備える粉砕装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示した粉砕ユニット11の分解斜視図である。
図3は、
図1に示した粉砕ユニット11の縦断面部分の正面図である。なお、粉砕ユニット11は、熱伝導性の良い材料で構成されているのが好ましい。
【0017】
(粉砕装置1の概要)
図1に示すように、粉砕装置1は、粉砕ユニット11、保温容器12、ホッパー13、モータ14およびカカオマス取出しレバー15を備えている。
【0018】
粉砕ユニット11は保温容器(温調容器)12の内部に収容され、ホッパー13は粉砕ユニット11の上に取り付けられている。ホッパー13は固体原料を収容する。本実施形態では固体原料がカカオニブである場合について説明する。モータ14は粉砕装置1の下部に設けられ、粉砕ユニット11の粉砕部26を回転させる。カカオマス取出しレバー15は粉砕装置1の側部に位置する。カカオマス取出しレバー15が下方へ回転操作されることにより、粉砕ユニット11にて粉砕されたカカオニブのカカオマス(カカオ粉末)を取出し口16から取り出すことができる。
【0019】
粉砕装置1では、清掃のために、粉砕ユニット11は、保温容器12に対して着脱可能に嵌合され、ホッパー13は、粉砕ユニット11に対して着脱可能に嵌合されている。また、粉砕ユニット11には、ハンドル(図示せず)が設けられており、このハンドルを利用し当該粉砕ユニット11の着脱を行うようになっている。
【0020】
(粉砕ユニット11の構成)
図2および
図3に示すように、粉砕ユニット11は、ミルケース21を有している。ミルケース21の内部には、上から下方へ、ミルケース蓋22、上臼ホルダー24、金属板41、粉砕部26、材料受部34、搬送通路35および駆動伝達部36が設けられている。
【0021】
ミルケース蓋22は、ミルケース21の蓋として機能し、内部に、粉砕ユニット11の上に配置されるホッパー13を受けるホッパー受け部として機能する導入部25が設けられている。導入部25は、ホッパー13から供給されるカカオニブを受け入れ、粉砕部26に導入する。導入部25は下端部に開口部25aを有する。
【0022】
粉砕部26は、中央部にコニカル臼27を有し、コニカル臼27の周りに平臼28を有する。コニカル臼27は、回転臼である内臼29と固定臼である外臼30とからなる。外臼30は円筒形状を有し、内臼29は外臼30に挿入され、下部から上部へ向かうにしたがって、外径が漸次小さくなった形状を有する。コニカル臼27の上端部における外臼30の内側は、カカオニブの入口部33となっている。コニカル臼27は、導入部25から投入されたカカオニブを粉砕し、粗いカカオマスとする。
【0023】
平臼28は、回転臼である下臼31と固定臼である上臼32とからなる。下臼31は内臼29の外周部に固定され、内臼29と一体となっている。上臼32は外臼30の外周部に固定され、外臼30と一体となっている。内臼29および下臼31の中心部には中心軸37が設けられている。平臼28は、コニカル臼27にて形成された粗いカカオマスを微細なカカオマスに粉砕する。
【0024】
材料受部34は、粉砕部26で粉砕されたカカオマスを直接受ける。搬送通路35は、材料受部34が受けたカカオマスを下方へ搬送する。駆動伝達部36は、モータ14の駆動力を材料受部34上に載置されている粉砕部26の中心軸37に伝達し、粉砕部26(内臼29および下臼31)を回転させる。
【0025】
内臼29の上面29aには、中心軸37に接続された導入部材51が設けられている。導入部材51は、2枚の導入板(第1導入板51a、第2導入板51b)で構成されており、導入部25の開口部25a内で内臼29と共に回転する。これにより、ホッパー13から供給されるカカオ豆を確実に粉砕領域へ導入できる。導入部材51の詳細は後述する。
【0026】
金属板41は、上臼32の上面に接触して当該上臼32の温度を伝達する熱伝導部材である。金属板41は、SUSからなり、上臼32の上面の大きさに合わせた大きさの円板状に形成されている。さらに、金属板41は、外縁に一部を突出させて上側に曲げた温度測定部41aを有している。温度測定部41aは、金属板41と一体的に形成されていることが好ましいが、別部材として金属板41に貼り付けるようにしてもよい。
【0027】
金属板41は、上臼32の温度を伝達することを目的としているため、上述した通り、上臼32の上面の大きさに合わせて同じ大きさにするのが好ましい。しかしながら、上臼32の温度を伝達するという目的であれば、金属板41の大きさは、上臼32の上面の大きさよりも小さくてもよい。また、金属板41の素材としては、熱伝導性、弾性を有する点からSUSを用いているが、熱伝導性、弾性を有する素材であればどのような素材であってもよい。
【0028】
温度測定部41aは、
図3に示すように、粉砕部26がミルケース21内の所定の位置に収納された状態で、温度センサ20の測定部20aと接触するように形成されている。ここでは、温度測定部41aは、弾性力により、温度センサ20の測定部20aに対して付勢力を抗して接触するように形成されている。このように、温度測定部41aに弾性を持たせれば、粉砕部26がミルケース21内の所定の位置に収納されると、金属板41の温度測定部41aを温度センサ20の測定部20aに確実に接触させることができる。
【0029】
温度センサ20は、
図3に示すように、測定部20aがミルケース21の内面に露出し、本体部がミルケース21の外面に形成された内部に空洞を有する係止部23内に配置されている。温度センサ20の本体部は、係止部23の底部23aに形成された接触端子21aに接続されている。接触端子21aは、粉砕ユニット11が保温容器12にセットされたときに、当該保温容器12内の制御部に接続されるようになっている。
【0030】
係止部23は、粉砕ユニット11が保温容器12内の所定の位置に正しくセットできるように、ミルケース21の外面に形成されたものである。本実施形態では、係止部23内に温度センサ20を配置することで、温度センサ20を配置するための部材を別途設けずに済んでいる。しかしながら、温度センサ20を配置するための部材を別途設けてもよい。
【0031】
(導入部材51)
図5~
図7に示すように、導入部材51は、内臼29の上面29aに設けられている。導入部材51は、第1導入板51aおよび第2導入板51bを含む。第1導入板51aおよび第2導入板51bは、それぞれ内臼29の上面29aに対して傾斜した傾斜面51c、傾斜面51dを有している。
【0032】
第1導入板51aおよび第2導入板51bは、それぞれ一枚の金属板を加工して一体的に形成してもよいし、別々の部材として形成してもよい。
【0033】
第1導入板51aと第2導入板51bは、
図7に示すように、略平行に配され、内臼29の上面29aからの高さは第2導入板51bよりも第1導入板51aが高くなっている。具体的には、第1導入板51aは、
図8に示すように、傾斜面51cが水平面に対して角度αで傾斜している。具体的には、傾斜面51cは、導入部25の開口部25aの周縁に向かって長手方向に角度αで傾斜している。第2導入板51bは、
図9に示すように、傾斜面51dが水平面に対して角度βで傾斜している。具体的には、傾斜面51cは、導入部25の開口部25aの周縁に向かって長手方向に角度βで傾斜している。α=βであってもよいし、α=βでなくてもよい。
【0034】
第1導入板51aにおける傾斜面51cの中心x1から導入部25の開口部25aの水平面y1までの高さをh1とする。また、第2導入板51bにおける傾斜面51dの中心x2から導入部25の開口部25aの水平面y1までの高さをh2とする。この場合、h1>h2となる。なお、h1とh2は、等しくてもよい。
【0035】
また、第1導入板51aは、
図8に示すように、当該第1導入板51aの傾斜面51cの下方端が、導入部25の粉砕部26の入口部33に連通する開口部25aの水平面よりも高くなるように形成されている。なお、第1導入板51aの傾斜面51cの下方端が、導入部25の粉砕部26の入口部33に連通する開口部25aの水平面と同じ高さであってもよい。
【0036】
さらに、第2導入板51bは、
図9に示すように、当該第2導入板51bの傾斜面51dの下方端が、導入部25の粉砕部26の入口部33に連通する開口部25aの水平面よりも低くなるように形成されている。なお、第2導入板51bの傾斜面51dの下方端が、導入部25の粉砕部26の入口部33に連通する開口部25aの水平面と同じ高さであってもよい。
【0037】
第1導入板51aと第2導入板51bとの傾斜面51cと傾斜面51dは、傾斜方向が逆になっている。つまり、
図6に示すように、第1導入板51aは、傾斜面51cの斜面上端(図の右側)から斜面下端(図の左側)に傾斜し、第2導入板51bは、傾斜面51dの斜面上端(図の左側)から斜面下端(図の右側)に傾斜している。この構成に上記したように、内臼29の上面29aからの高さは第2導入板51bよりも第1導入板51aが高くなっている構成を加えると、第1導入板51aと第2導入板51bとは非連続のスクリュー構造をなしているとも言える。従って、導入部材51が、上臼32の上面側から見て時計回りに回転することで、カカオニブが粉砕部26側に導入されることになる。すなわち、内臼29が、上臼32の上面側から見て時計回りに回転すると第1導入板51aおよび第2導入板51bも、上臼32の上面側から見て時計回りに回転する。これより、第1導入板51aの傾斜面51cの上端側から下端側に向かってカカオニブが搬送され、一部のカカオニブが粉砕部26に導入され、残りのカカオニブが第2導入板51b側に搬送され、当該第2導入板51bによって粉砕部26に導入される。そして、第2導入板51bによっても粉砕部26に導入しきれなかったカカオニブは、第1導入板51aと第2導入板51bとの間に逃げて、その後、第1導入板51aによって粉砕部26に導入される。
【0038】
第1導入板51aと第2導入板51bは、何れも、回転することで、カカオニブを粉砕部26に導入するような形状であればよいので、
図8,
図9等に示した形状に限定されるものではない。要は、導入部材51としては、第1導入板51a、第2導入板51bを有することに限定されず、回転することで、カカオニブを粉砕部26に対して断続的に供給するような構造であれば、どのような構造であってもよい。
【0039】
カカオニブを断続的に、且つ安定して粉砕部26に導入するためには、第2導入板51bの上方端の高さは、第1導入板51aの下方端の高さにほぼ同じであるのが好ましい。しかしながら、第2導入板51bの上方端の高さは、第1導入板51aの下方端の高さより高くてもよい。この場合、第2導入板51bの上方端の高さは、第1導入板51aの上方端の高さよりも低いことが必要である。これは、原料であるカカオニブを断続的に粉砕部26に押し込むことができないためである。
【0040】
また、第1導入板51a、第2導入板51bの傾斜角が大きくなり過ぎると、供給能力が落ちる、逆戻りする、等の問題が生じる。従って、第1導入板51a、第2導入板51bの傾斜角は、カカオニブが複数個入るような傾斜角にするのが好ましい。すなわち、原料の大きさによって第1導入板51a、第2導入板51bの傾斜角は変わる。
【0041】
(効果)
以上のように、コニカル臼27の内臼29の上面29aに備えられた導入部材51は、2枚の第1導入板51a、第2導入板51bによって構成されている。これら第1導入板51a、第2導入板51bが回転することで、カカオニブが上部より順次引き渡されるように傾斜して配置される。これにより、コニカル臼27の入口である入口部33にカカオニブを安定的に供給することができる。
【0042】
上記構成によれば、第1導入板51aによって粉砕部26に導入されるカカオニブのうち、当該粉砕部26に導入しきれなかったカカオニブを第2導入板51bによって粉砕部26に押し込むようにして導入する。そして、第2導入板51bによっても粉砕部26に導入しきれなかったカカオニブは、第1導入板51aと第2導入板51bとの間の空間に逃げる。つまり、スクリューのように、カカオニブを連続して粉砕部26に導入する構成では、粉砕部26へのカカオニブの供給量が過多となり、粉砕部26の入口部33付近でカカオニブが詰まるという問題が生じる。しかしながら、上記構成のように、第1導入板51aと第2導入板51bとを用いてカカオニブを断続的に粉砕部26に導入するようにすれば、粉砕部26への供給量は常に一定となり、粉砕部26の入口部33付近でのカカオニブの詰まりは生じない。
【0043】
このように、上記構成の粉砕装置1では、粉砕部26の入口部33付近でのカカオニブの詰まりが生じないため、粉砕部26に導入しきれなかったカカオニブが導入部25から溢れてホッパー13に逆流することはない。
【0044】
通常、粉砕部26近傍はカカオニブの粉砕に適した温度まで加熱されているため、粉砕部26に導入されていないカカオニブであっても加熱されている可能性がある。このため、粉砕部26近傍のカカオニブが導入部25を経てホッパー13に戻ってしまうと、ホッパー13が温められ、ホッパー13内のカカオニブが加熱されて油分が染み出し固着するので、ホッパー13からカカオニブを適切な量供給できないという問題が生じる。
【0045】
しかしながら、上記構成の粉砕装置1のように、カカオニブが粉砕部26の導入口付近で詰まらないようにすれば、カカオニブが導入部25から溢れてホッパー13に逆戻りすることに起因する上述した問題は生じない。
【0046】
このように、粉砕部26における粉砕に必要なカカオニブが順に当該粉砕部26に導入され、不要なカカオニブは上部で待機することができ、カカオニブの安定した粉砕性能を確保出来る。ここで、粉砕性能とは、粉砕物の細かさと生成速度を示す。
【0047】
従って、原料であるカカオニブを補充するだけで、導入部材51の回転によってカカオニブを粉砕部26へ常に適量供給することが可能となるので、従来のように、原料の投入量を調整し粉砕性能を調整する手間を省くことができる。また、原料の供給量を安定化させるために、原料を毎回投入(シャッターの開閉など)する手間が省ける。
【0048】
導入部25の開口部25a付近は、傾斜している。この傾斜部と、第1導入板51aが交差(高さ方向)する位置に当該第1導入板51aが設置されることで、当該第1導入板51aの中心から開口部25aまでの高さ分(
図8の高さh1)からカカオニブが当該開口部25aに導入される。この場合、高さh1は、カカオニブ一つの大きさよりも大きいことが好ましい。
【0049】
しかも、開口部25aに導入されず、円周方向に押し出されたカカオニブは、第1導入板51aが回転しているため、当該第1導入板51aの傾斜面51cを登ることで、当該カカオニブにかかる力を受け流して移動することで、縦方向の循環が生じる。これにより、導入部25の開口部25aから粉砕部26に至る経路にカカオニブが詰まり(ブリッジ)、当該経路でのカカオニブの固着を防止できる。
【0050】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
本実施形態では、導入部25におけるカカオニブが堆積することによる詰まりを低減可能な粉砕装置について説明する。
【0052】
一般に、ホッパー13から粉砕部26に導入する導入部25が円筒の場合、円筒面に原料が堆積し、つまりの原因になる。従って、本実施形態の粉砕ユニット111では、
図10および
図11に示すように、導入部25の開口部25a近傍を入口部33に向かって傾斜する傾斜面が形成され、傾斜面に入口部33に向かって延設された突起部52が設けられている。
【0053】
導入部25の傾斜面に突起部52を設けることで、当該導入部25において突起部52を起点にして少量のカカオニブを導入部材51から粉砕部26に導入することができる。
【0054】
このように、粉砕部26に少量ずつカカオニブを供給すれば、粉砕部26のカカオニブの入口部33付近での詰まりを低減できるので、粉砕部26に導入されずに導入部25にカカオニブが堆積することがない。このため、カカオニブが堆積することによる粉砕部26の詰まりも生じない。
【0055】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る粉砕装置は、下臼31と上臼32とを有する粉砕部26であって、前記下臼31に同期して回転する回転臼である内臼29と、前記上臼32に設けられた固定臼である外臼30とからなるコニカル臼27を有し、前記内臼29と前記外臼30との間の入口部33に投入された、油分を有する固体原料を前記コニカル臼27にて粉砕する粉砕部26と、下端部に開口部25aを有し、前記開口部25aの径が前記入口部33の前記外臼30の内径よりも小さく、供給された前記固体原料(カカオニブ)を前記開口部25aから前記コニカル臼27の前記入口部33に投入する導入部25と、前記内臼29の上端部(上面29a)に設けられ、前記固体原料(カカオニブ)を前記導入部25から前記入口部33に導く導入部材51と、を備え、前記導入部材51は、少なくとも2枚の導入板(第1導入板51a、第2導入板51b)を含み、前記少なくとも2枚の導入板(第1導入板51a、第2導入板51b)は、水平面に対して所定の角度で傾斜する傾斜面(傾斜面51c、傾斜面51d)を有し、前記少なくとも2枚の導入板(第1導入板51a、第2導入板51b)におけるそれぞれの傾斜面(傾斜面51c、傾斜面51d)の中央から前記導入部25における水平面までの高さ(h1,h2)がそれぞれ異なっていることを特徴としている。
【0056】
上記の構成によれば、粉砕部の入口部付近での原料の詰まりが生じないため、粉砕部に導入しきれなかった原料が導入部から溢れて供給部に逆流することはなく、原料の供給部における温度の上昇を抑制して、被粉砕物を適切な量供給できる。
【0057】
本発明の態様2に係る粉砕装置は、上記態様1において、前記少なくとも2枚の導入板は、第1導入板51aと、第1導入板51aよりも高さが低い第2導入板51bとを含み、前記第1導入板51aは、当該第1導入板51aの傾斜面51cの下方端が、前記入口部33の水平面と同じ高さかそれよりも高い高さとなるように形成され、前記第2導入板51bは、当該第2導入板51bの傾斜面51dの下方端が、前記入口部33の水平面と同じ高さかそれよりも低い高さとなるように形成されていてもよい。
【0058】
上記の構成によれば、固体原料を詰まらせることなく粉砕部に供給することができる。
【0059】
本発明の態様3に係る粉砕装置は、上記態様2において、前記第2導入板51bの傾斜面51dの上方端の高さが、前記第1導入板51aの傾斜面51dの下方端の高さと同じまたはより高くてもよい。
【0060】
上記構成によれば、固体原料を安定して粉砕部に供給することができる。
【0061】
本発明の態様4に係る粉砕装置は、上記態様1~3の何れか1態様において、前記導入部25は、前記入口部33に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記傾斜面に、前記入口部33に向かって延設された突起部52が形成されていてもよい。
【0062】
上記構成によれば、導入部の傾斜面に突起部を設けることで、当該導入部において突起部を起点にして少量の固定原料を導入部材から粉砕部に導入することができる。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。