(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】正確な電流測定を用いるモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 6/28 20160101AFI20240417BHJP
【FI】
H02P6/28
(21)【出願番号】P 2021562120
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020025657
(87)【国際公開番号】W WO2020222953
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ルー,イソン
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-230049(JP,A)
【文献】特開2011-091992(JP,A)
【文献】特表2010-508536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位相コイルを有するモータと、
前記位相コイルを介して電流を流すために前記複数の位相コイルに結合された複数のスイッチを有するモータドライバ回路と、
前記複数のスイッチに結合され、複数の出力制御信号を与えるように構成されたモータ制御装置回路であって、各々の出力制御信号がそれぞれの位相コイルを介して電流を流すために前記スイッチを制御するための前記それぞれの位相コイルと関連付けられる、モータ制御装置回路と、
前記複数の出力制御信号のうちの第1の出力制御信号を変更して、
当該変更された第1の出力制御信号と前記複数の出力制御信号のうちの第2の出力制御信号と
が互いに180度位相がずれ
るようにするための位相回路であって、
当該変更
された第1の出力制御信号のハイパルスの中心が前記第2の出力制御信号のローパルスの中心と揃
っている、位相回路と、
電流測定回路であって、
当該変更された第1の出力制御信号がアクティブであるときに第1の期間中に前記電流を測定することと、
前記
第2の出力制御信号がアクティブであるときに第2の期間中に前記電流を測定することと
により前記位相コイルのうちの少なくとも1つを通る電流を測定するための、電流測定回路と
を備える、システム。
【請求項2】
前記電流測定回路が、前記第1の期間中に測定した前記電流と前記第2の期間中に測定した前記電流とを平均するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の位相コイルが、三相コイルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の出力制御信号が、3つの出力制御信号を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の出力制御信号が、パルス幅変調制御信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の期間は、
当該変更
された第1の出力制御信号がハイであるときの期間に対応し、前記第2の期間は、前記第2の出力制御信号がハイであるときの期間に対応する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電流測定回路が、前記第1の期間の中間点のところで及び前記第2の期間の中間点のところで前記電流を測定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電流測定回路に結合された単一のシャントレジスタをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記位相回路が、前記第1の出力制御信号の中心を2分の1期間だけシフトさせる位相シフト回路を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
モータの複数の位相コイルを介して電流を流すために前記モータの前記複数の位相コイルに結合されるように構成された複数のスイッチを有するモータドライバ回路と、
前記複数のスイッチに結合され、複数の出力制御信号を与えるように構成されたモータ制御装置回路であって、各々の出力制御信号がそれぞれの位相コイルを介して電流を流すために前記スイッチを制御するための前記それぞれの位相コイルと関連付けられる、モータ制御装置回路と、
前記複数の出力制御信号のうちの第1の出力制御信号を変更して、
当該変更された第1の出力制御信号と前記複数の出力制御信号のうちの第2の出力制御信号と
が互いに180度位相がずれ
るようにするための位相回路であって、
当該変更
された第1の出力制御信号のハイパルスの中心が前記第2の出力制御信号のローパルスの中心と揃
っている、位相回路と、
電流測定回路であって、
当該変更
された第1の出力制御信号がアクティブであるときに第1の期間中に前記電流を測定することと、
前記第2の出力制御信号がアクティブであるときに第2の期間中に前記電流を測定することと
により前記位相コイルのうちの少なくとも1つを通る電流を測定するための、電流測定回路と
を備える、回路。
【請求項11】
前記電流測定回路が、前記第1の期間中に測定した前記電流と前記第2の期間中に測定した前記電流とを平均するようにさらに構成される、請求項
10に記載の回路。
【請求項12】
前記複数の位相コイルが、三相コイルを備える、請求項
10に記載の回路。
【請求項13】
前記複数の出力制御信号が、3つの出力制御信号を含む、請求項
12に記載の回路。
【請求項14】
前記出力制御信号が、パルス幅変調制御信号である、請求項
10に記載の回路。
【請求項15】
前記第1の期間は、
当該変更
された第1の出力制御信号がハイであるときの期間に対応し、前記第2の期間は、前記第2の出力制御信号がハイであるときの期間に対応する、請求項
14に記載の回路。
【請求項16】
前記電流測定回路が、前記第1の期間の中間点のところで及び前記第2の期間の中間点のところで前記電流を測定するように構成される、請求項
10に記載の回路。
【請求項17】
前記電流測定回路に結合された単一のシャントレジスタをさらに備える、請求項
10に記載の回路。
【請求項18】
前記位相回路が、インバータを備える、請求項
10に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、モータ制御装置に関し、より詳細には、モータを通り流れる電流を測定するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ブラシレスDC(「BLDC」)電動モータを精密に制御し、駆動し、調整するための回路が、多くの用途で必要とされる。これらの回路は、モータへの電力を制御するために使用されるパルス幅変調(「PWM」)駆動信号を多くの場合に作り出す。
【0003】
[0003]BLDCモータは、多数のコイルを含むことができる。これらのコイルは、励磁されたときに、モータを回転させる。しかしながら、モータを連続的に回転させるために、モータ制御装置回路は、一度にコイルのうちの(すべてではないが)1つ又は複数を励磁しなければならない、特定の順番でコイルを励磁しなければならない、異なる時間に順方向及び逆方向にコイルを励磁しなければならない、等のことがある。コイルが励磁される期間は、いわゆるモータの「位相」としばしば呼ばれる。ある位相の間に励磁されるコイル(又は複数のコイル)は、位相コイルと呼ばれることがある。
【0004】
[0004]どのコイルが励磁されるかの順序及びタイミングは、BLDCモータの設計に依存する。例として、1つのBLDCモータは、モータを回転させるために順番に、すなわち、ラウンドロビン方式で励磁されなければならない3つのコイルを有するだろう。コイルを励磁する他の順番もまた使用されることがある。このようなモータは、3つの「位相」を有するだろう。各々の位相では、3つのコイルのうちの異なる1つ又は複数が励磁される。モータが回転するにつれて、位相は変わるだろう、モータドライバは、モータを回し続けるため次の1つ又は複数のコイルを励磁するだろう。
【0005】
[0005]各々の位相が励磁されるので、各位相がモータの回転子を物理的に駆動する。コイルに供給される電力の量は、モータにより生成されるトルクの大きさに正比例するだろう。多くのBLDCモータでは、コイルに与えられる電力の量は、コイルが励磁されるにつれて時間とともに上下する。結果として、モータは、一定のトルク出力を生成しない。
【0006】
[0006]様々な電動モータ駆動回路が、米国特許第7,590,334号(2007年8月8日出願)、米国特許第7,747,146号(2007年8月8日出願)、米国特許第8,729,841号(2011年10月12日出願)、米国特許出願第13/595,430号(2012年、8月27日出願)、米国特許第9,088,233号(2012年12月18日出願)、米国特許第9,291,876号(2013年5月29日出願)、及び米国特許出願第15/967,841号(2018年5月1日出願)に記載されており、これらの各々が参照により本明細書に取り込まれており、これらの各々が、この特許の譲受人に譲渡される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モータを通り流れる電流を測定するモータ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]ある実施形態では、システムは、複数の位相コイルを有するモータと、位相コイルを介して電流を流す(drive)ために複数の位相コイルに結合された複数のスイッチを有するモータドライバ回路と、複数のスイッチに結合され、複数の出力制御信号を与えるように構成されたモータ制御装置回路とを備える。各々の出力制御信号が、それぞれの位相コイルを介して電流を流すためにスイッチを制御するためのそれぞれの位相コイルと関連付けられる。位相回路が、複数の出力制御信号のうちの第2の出力制御信号とは位相がずれている変更した制御信号を生成するために複数の出力制御信号のうちの第1の出力制御信号を変更するために含まれる。電流測定回路は、第1の出力制御信号がアクティブ(active)であるときに第1の期間中に電流を測定することと、変更された制御信号がアクティブであるときに第2の期間中に電流を測定することとにより位相コイルのうちの少なくとも1つを通る電流を測定するために含まれる。
【0009】
[0008]下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれることがある。
[0009]電流測定回路が、第1の期間中に測定した電流と第2の期間中に測定した電流とを平均するようにさらに構成されることがある。
【0010】
[0010]複数の位相コイルが、三相コイルを備えることがある。
[0011]複数の出力制御信号が、3つの出力制御信号を含むことがある。
[0012]複数の出力制御信号が、パルス幅変調制御信号であってもよい。
【0011】
[0013]第1の期間は、変更した制御信号がハイであるときの期間に対応することがあり、第2の期間は、第2の出力制御信号がハイであるときの期間に対応する。
[0014]変更した制御信号及び第2の出力制御信号は、約180度位相がずれることがある。
【0012】
[0015]電流測定回路が、第1の期間の中間点のところで及び第2の期間の中間点のところで電流を測定するように構成されることがある。
[0016]単一のシャントレジスタが、電流測定回路に結合されることがある。
【0013】
[0017]位相回路が、第1の出力制御信号の中心を2分の1期間だけシフトさせる位相シフト回路を備えることがある。
[0018]もう1つの実施形態では、回路は、モータの複数の位相コイルを介して電流を流すためにモータの複数の位相コイルに結合されるように構成された複数のスイッチを有するモータドライバ回路と、複数のスイッチに結合され、複数の出力制御信号を与えるように構成されたモータ制御装置回路とを備える。各々の出力制御信号が、それぞれの位相コイルを介して電流を流すためにスイッチを制御するためのそれぞれの位相コイルと関連付けられる。位相回路が、複数の出力制御信号のうちの第2の出力制御信号とは位相がずれている変更した制御信号を生成するために複数の出力制御信号のうちの第1の出力制御信号を変更するために設けられる。電流測定回路は、変更した制御信号がアクティブであるときに第1の期間中に電流を測定することと、第2の出力制御信号がアクティブであるときに第2の期間中に電流を測定することとにより位相コイルのうちの少なくとも1つを通る電流を測定するために設けられる。
【0014】
[0019]下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれることがある。
[0020]電流測定回路が、第1の期間中に測定した電流と第2の期間中に測定した電流とを平均するようにさらに構成されることがある。
【0015】
[0021]複数の位相コイルが、三相コイルを備えることがある。
[0022]複数の出力制御信号が、3つの出力制御信号を含むことがある。
[0023]出力制御信号が、パルス幅変調制御信号であってもよい。
【0016】
[0024]第1の期間は、変更した制御信号がハイであるときの期間に対応することがあり、第2の期間は、第2の出力制御信号がハイであるときの期間に対応する。
[0025]変更した制御信号及び第2の出力制御信号は、約180度位相がずれることがある。
【0017】
[0026]電流測定回路が、第1の期間の中間点のところで及び第2の期間の中間点のところで電流を測定するように構成されることがある。
[0027]単一のシャントレジスタが、電流測定回路に結合されることがある。
【0018】
[0028]位相回路が、インバータを備えることがある。
[0029]もう1つの実施形態では、回路は、複数の位相コイルを介して電流を流すためにモータの複数の位相コイルに結合されるように構成された複数のスイッチを有するモータドライバ回路と、位相コイルのうちの少なくとも1つを通る平均電流を測定するための手段とを備える。
【0019】
[0030]前述の特徴は、図面の下記の説明からより完全に理解されるだろう。図面は、開示した技術を説明する際及び理解する際に助けとなる。すべての可能な実施形態を図示すること、及び説明することは多くの場合に実際的ではない又は不可能であるので、提供される図は、1つ又は複数の例示的な実施形態を描く。したがって、図は、発明の範囲を限定するものではない。図中の同様な数字は、同様な要素を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】[0031]モータ制御システムの回路図である。
【
図2】[0032]モータ電流及び位相信号のグラフである。
【
図3】[0033]実際のモータ電流及びサンプリングしたモータ電流のグラフである。
【
図4】[0034]モータ位相信号のタイミング図である。
【
図5】[0035]モータ位相信号及びモータ電流のグラフである。
【
図6】[0036]実際のモータ電流及びサンプリングしたモータ電流のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0037]
図1は、モータ102を制御するためのモータ制御システム100の回路図である。モータ制御システム100は、モータドライバ回路106に結合されたモータ制御回路104を含む。モータドライバ回路106は、モータ102に結合され、モータ102に電力を供給する。実施形態では、モータ制御回路104を、非サイン波ブラシレスDCモータ制御回路とすることができる。
【0022】
[0038]
図1に示した例では、モータ102は三相モータである。したがって、モータドライバ回路106は、電源線108と戻り線110との間に対で結合された6個の電界効果トランジスタ(FET)スイッチを有する。対の間のノード(すなわち、ノードA、B、及びC)は、モータ102のコイルに結合される。FETスイッチが開閉するので、これらのスイッチは、モータ102に電力を供給し、モータ102からの戻り経路を提供する。例えば、FETスイッチ112及びFETスイッチ114が閉じられ(例えば、導電状態にあり)、一方で他のFETスイッチが開かれる(例えば、非導電状態にある)場合には、電流は、電源線108からFETスイッチ112を通りノードAへ、ノードAからモータ102の内部コイルを通りノードBへ、ノードBからFETスイッチ114を通りグランドへと流れるだろう。
【0023】
[0039]図説を容易にするために、FETスイッチ112、113、及び115のゲートだけが、モータ制御回路104に結合されて示される。しかしながら、実施形態では、モータドライバ回路106内部の各々のFETスイッチのゲートを、モータ制御回路104に結合することができる。モータ制御回路104は、FETスイッチを選択的に開閉するために様々な信号(例えば、信号104a、104b、及び104c)を用いて各々のFETスイッチのゲートを駆動できる。これが、モータ102のコイルに電力を向けることによりモータ102を効果的に駆動する。当業者は、他の実施形態では、バイポーラ接合トランジスタ(「BJT」)、リレー、等などのスイッチとして動作できるいずれかのデバイスによって、FETスイッチが置き換えられてもよいことを認識するだろう。
【0024】
[0040]実施形態では、モータ制御信号104a、104b、及び104cを、パルス幅変調(「PWM」)信号とすることができる。PWMオン時間がゼロから100%まで増加するので、モータに供給される電流の量は、ゼロからその最大値まで比例して増加する。このように、モータ制御回路104は、信号104a~104cのパルス幅を変えることによりモータ102に供給される電流の量を制御できる。
【0025】
[0041]実施形態では、モータ制御回路104は、信号104a(及びしたがって位相A)が信号104b(すなわち、位相B)と180度位相がずれるように信号104aを変更する位相回路105を含むことができる。位相信号104a~104cのタイミング及び位相は、下記に非常に詳細に論じられるだろう。
【0026】
[0042]モータ制御システム100は、モータ102に供給される(又はモータ102から戻る)電流を測定するためのセンサを含むことができる。モータ102を通り流れる電流を測定するために、モータ制御システム100は、電流経路内にシャントレジスタ120を含むことができる。差動増幅器122の入力を、シャントレジスタ120の両端に結合することができる。このように、増幅された信号122a(すなわち、差動増幅器122の出力)は、シャントレジスタ120の両端の電圧を表すことができる。ADC124は、増幅された信号122aをディジタル信号124aへと変換でき、ディジタル信号124aはまた、シャントレジスタ120の両端の電圧を表すこともできる。シャントレジスタ120の抵抗が知られているという理由で、モータ制御回路104は、モータ102を通って流れる電流を測定するためにシャントレジスタ120の両端の電圧を使用できる。このように、ディジタル信号124aはまた、測定された電流を表現できる。
【0027】
[0043]実施形態では、シャントレジスタ120は、非常に小さな抵抗を有することができ、そのためシャントレジスタ120は、電流の流れを大きくは妨げず、また大量の電力を浪費しない。シャントレジスタ120に関する典型的な値を、0.1オーム以下とすることができる。また、シャントレジスタ120がモータ102から戻る電流(Iout)を測定するために戻り線110に結合されて示されるけれども、シャントレジスタ120は、モータ102へと流れ込む電流(Iin)を測定するために電源線108に結合されることがある。
【0028】
[0044]実施形態では、信号124aを、モータ制御回路104に結合することができて、モータ制御回路104によって受信することができ、このことはモータ制御回路104がモータ102を通る電流を測定し計算することを可能にできる。例えば、動作中に、モータ制御回路104は、様々な時刻に信号124aを定期的にサンプリングできる。モータ制御回路104は、サンプリングした値を直接使用できる、又はモータ102を通り流れる電流の大きさを決定するためにサンプルに数学演算(例えば、サンプルの平均を計算すること)を実行できる。モータ制御回路104は、次いでモータ102を制御するためのパラメータとして測定した電流を使用できる。
【0029】
[0045]モータ102が複数の位相を有することがあるけれども、単一のシャントレジスタ120が、電流を測定するために使用されることがある。シャントレジスタが戻り経路108に(又は代わりに電源線108に)設置されるという理由で、シャントレジスタ120を通る電流は、アクティブなモータ位相を通る電流を反映するだろう。モータ位相A、B、及びCの各々に関連付けられる電流(これらの総計はゼロに等しい)を検知するために、3つのモータ位相のうちの2つの位相中の電流をサンプリングする必要があるだけであり、これから3番目のモータ位相の電流を計算できる。言い換えると、シャントレジスタ120を通る電流は、位相A電流を検出するために位相A中にサンプリングされることがあり、次いでさらに、位相B電流を検出するために位相B中にサンプリングされることがあり、次いで、位相Cモータ電流を、式IA+IB+IC=0に基づいて検出した位相A電流及び位相B電流から計算できる。
【0030】
[0046]
図2を参照して、グラフ200は、モータが先行技術のモータ制御回路により駆動されるときに平均モータ位相電流を計算する際の潜在的な誤差を図示する。波形202は、モータの1つの位相に関する現実の電流を表す。波形204は、モータを通る平均位相A電流を表す。波形206、208、及び210は、モータの各々の位相をアクティブにする制御信号を表す。
【0031】
[0047]波形206、208、及び210は、モータを制御するための従来からの二相変調を図示する。このタイプの変調では、各々のPWMサイクル中に、三相のうちの二相が、トグルで切り替えられ、各々のアクティブな位相のハイパルスの中心が揃えられる(すなわち、時刻216のところ)。図示した例では、位相Aモータ制御信号206は、時刻212のところでローからハイへ遷移し、次いで位相Bモータ制御信号208は、位相A信号206が依然としてハイである間に、時刻214のところでハイに遷移する。位相A電流のサンプリングは、時刻212と214との中間の点S1のところで生じ、時刻214の後の点S2のところで再び生じる。
【0032】
[0048]波形202により示したように、モータ102を通る位相電流は、リプルを有する。実施形態では、リプルは、その位相に関するPWM周波数に等しい周波数及びモータ巻線のインダクタンスに関係した大きさを有することがある。経時的にランダムに電流をサンプリングすることは、リプルの大きさ程度に大きいことがある誤差を導入することがある。平均電流を計算するために、期間T1及びT2内でサンプルS1及びS2を平均することならびに平均電流を計算するためにS1及びS2を使用することは、平均電流204が現実の電流と交差する時点で、S1及びS2がサンプリングされないという理由で、計算した平均電流が正確であるだろう(すなわち、平均電流204を反映するだろう)ことを保証しない。
【0033】
[0049]
図3を参照して、グラフ300は、モータ位相を通る現実の電流を表している波形302及び先行技術のモータ制御回路内のサンプリングした電流を表している波形304を含む。縦軸は任意単位の電流を表し、横軸は任意単位の時間を表す。示したように、サンプリングした電流304は、現実の電流302のリプルに対して中心に置かれず、サンプリングした電流が誤差を含有し、平均モータ電流を正確には示さないことを示している。
【0034】
[0050]
図4を参照して、グラフ400は、本開示によるモータ102を制御するための二相変調を図示しているタイミング図である。縦軸は電圧を表し、横軸は時間を表す。波形400は、A位相モータ制御信号を表し、波形402は、B位相モータ制御信号を表し、波形404は、C位相モータ制御信号を表す(これらの信号は、
図1のそれぞれ、モータ制御信号104a、104b、104cと同じであっても類似していてもよい)。
【0035】
[0051]開示によれば、モータ制御回路104(例えば、位相シフト回路105)は、A位相波形400を180度だけ位相シフトさせることによりA位相波形400を変更できる。言い換えると、位相A及び位相B制御信号400、402は、位相Aハイパルス412の中心が位相Bローパルス410の中心と揃うように逆中心で揃えられることがある。位相Aハイパルス412の中心が位相Bローパルス410の中心と揃うように、信号400、402が互いに対して180度位相シフトされる限り、モータ制御信号の逆中心揃えを、位相A信号400又は位相B信号402のいずれかを位相シフトすることにより実現できることが認識されるだろう。
【0036】
[0052]一般に、時刻420のところで、波形400(A位相)はローであり、波形402(B位相)はハイであるだろう。時刻422のところでは、波形400(A位相)はハイであり、波形402(B位相)はローであるだろう。より具体的に、波形402のハイ部分406は、波形400のロー部分408の内部に中心を置かれるだろう、波形400のハイ部分412は、波形402のロー部分410内に中心を置かれるだろう。サイクルは時刻424(波形402のハイ部分が再び波形400のロー部分内に中心を置かれる場所)以上に続く。このように、位相Aハイパルスの中心が位相Bローパルスの中心と揃い、位相Bハイパルスの中心が位相Aローパルスの中心と揃い、これによりそれぞれ位相A及び位相Bモータ制御信号400、402の逆中心揃えを実現する。
【0037】
[0053]
図5を参照して、グラフ500は、モータ制御システム100の位相及びモータ102の1つの位相を通る電流のタイミング図である。横軸は時間を表す。波形500、502、及び504の縦軸は電圧を表す。波形505の縦軸は電流を表す。例えば、波形505は、シャントレジスタ120(
図1参照)を通る電流を表すことができる。
【0038】
[0054]波形501は、A位相モータ制御信号を表し、波形502は、B位相モータ制御信号を表し、波形504は、C位相モータ制御信号を表す(これらの信号は、
図1のそれぞれ、モータ制御信号104a、104b、104cと同じであっても類似していてもよい)。この例では、
図4の例と同様に、モータ制御回路104の位相シフト回路105は、A位相波形501を180度だけ位相シフトさせることができる。言い換えると、時刻S1のところでは、波形501(A位相)がローであり、波形502(B位相)がハイであるだろう。時刻S2のところでは、波形501(A位相)がハイであり、波形502(B位相)がローであるだろう。
【0039】
[0055]また、波形502のハイ部分506が、波形501のロー部分508の内部に中心を置かれるだろう、波形501のハイ部分512が、波形502のロー部分510内に中心を置かれるだろう。このように、位相Aハイパルスの中心が位相Bローパルスの中心と揃い、位相Bハイパルスの中心が位相Aローパルスの中心と揃う。
【0040】
[0056]電流波形505のリプルは、モータ102を通る電流をサンプリングするときに誤差を生じることがある。例えば、平均電流が線507により示される。このように、サンプリングが、例えば、時間T1の始まり及び時間T3の始まりのところで生じる場合、計算される平均電流は、実際の平均電流507よりも高いことがある。しかしながら、S1のところの電流は、リプルの立ち下がりエッジのほぼ中間であり、S2のところの電流は、リプルの立ち上がりエッジのほぼ中間である。このように、実施形態では、モータ制御回路104は、電流波形505のリプルによってモータ電流の計算へと導入される誤差を最小にする又は削除するために、時刻S1及びS2のところでモータ102の出力(又は入力)電流をサンプリングできる。
【0041】
[0057]一般に、電流波形505は、位相Aが期間T1、T2、及びT3中の(例えば、波形501のロー部分508中の)アクティブではない間に下がり、位相Aが期間T4中の(例えば、波形501のハイ部分512中の)アクティブである間に上がる。ハイ部分506がロー部分508の内部に中心を置かれるという理由で、及びサンプルS1がハイ部分506の内部に中心を置かれるという理由で、サンプルS1もまた、ロー部分508の内部に中心を置かれることがある。結果として、サンプルS1は、電流波形505の立ち下がり部分の中心点を表すことができる。また、サンプルS2がハイ部分512の内部に中心を置かれるという理由で、サンプルS2は、電流波形505の立ち上がり部分の中心点を表すことができる。
【0042】
[0058]加えて、位相出力パターンは、期間T1とT3とで同じである。言い換えると、T1及びT3中には、位相A波形501がローであり、位相B波形502がローであり、位相C波形504がローである。これゆえ、モータが定常状態で運転している場合には、位相電流は、期間T1とT3とで同じだろう。言い換えると、I1-I2=I3-I4である。また、下記の式が当てはまる:
S1A=(I2+I3)/2=(I1+I4)/2=S2A (1)
ここでは、I1、I2、I3、I4が、それぞれ、期間T1、T2、T3、T4の始まりのところでの位相電流レベルを表し、S1A及びS2Aが、それぞれ、時刻S1及びS2のところでの実際の位相A電流を表す。明らかなように、S2のところでA位相電流をサンプリングすることは、誤差がないだろう。いくつかの実施形態では、プロセッサ回路は、サンプルS1、S2、S3、等の平均を生成できる。平均値はまた、モータ102を通る平均電流も表すことができる。このように、それぞれハイ部分506及びハイ部分512の中心でS1及びS2をサンプリングすることは、モータ102を通る平均電流を計算するときに波形505の電流リプルによって引き起こされる誤差を削減できる又は削除できる。
【0043】
[0059]実施形態では、波形505のリプル及び電流をサンプリングするためのサンプリングレートは、モータ102を通る平均電流507の周波数よりも大きい周波数を有することがある。実施形態では、サンプリングレートを、波形505の周波数よりはナイキスト周波数の2倍に(又はよりも大きく)することができる。また、実施形態では、波形505の周波数を、波形507の周波数よりはナイキスト周波数の2倍に(又はよりも大きく)することができる。必然的な結果として、波形501及び502のPWM周波数を、モータ周波数よりも大きくすることができる。
【0044】
[0060]
図6を参照して、グラフ600は、あるモータ位相を通る現実の電流を表している波形602及びモータ制御回路104によるサンプリングした電流を表している波形604を含む。縦軸は任意単位の電流を表し、横軸は任意単位の時間を表す。示したように、サンプリングした電流604は、現実の電流602のリプルに対して中央に置かれ、サンプリングした電流が誤差を含まない又は最小の誤差を含む(すなわち、モータ電流の実際の平均を表す)ことを示している。
【0045】
[0061]上の例は、二相変調を使用するときのシステム100の動作を図示する。しかしながら、当業者は、システム100がモータ102を制御するために三相変調を使用している場合に、同じシステム及び技術を、電流を測定するために使用できることを認識するだろう。
図5を参照して、三相変調が使用される場合に、波形504は時刻514の後のある時に立ち上がりエッジを有するだろう。しかしながら、波形501及び502は、三相変調の下では変化しない(又は類似の)ままであるかもしれない、これゆえ、S1及びS2のところでのサンプリングは、波形505のリプルにより引き起こされる誤差を依然として削減できる。
【0046】
[0062]様々な実施形態が、この特許に記載される。しかしながら、特許の範囲は、記載した実施形態に限定されるべきではなく、むしろ別記の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によってのみ限定されるべきである。この特許において引用したすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。