(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】蒸気タービンプラント及びその改良方法
(51)【国際特許分類】
F01K 9/00 20060101AFI20240417BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20240417BHJP
F01D 25/32 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
F01K9/00 E
F01D17/10 G
F01D25/32 Z
(21)【出願番号】P 2022042175
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】坂中 貴一
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-200013(JP,A)
【文献】特公昭46-005843(JP,B1)
【文献】特開平10-103018(JP,A)
【文献】特開2000-027749(JP,A)
【文献】特開昭59-051109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 9/00
F01D 17/10
F01D 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生源から供給される蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器と、
前記復水器内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器を含み、前記復水器に接続されたガス抽出系統とを備え、
前記蒸気タービンは、
軸方向一方側及び軸方向他方側にそれぞれ第1シャフト部及び第2シャフト部を有し、前記蒸気発生源から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータと、
前記第1シャフト部及び前記第2シャフト部が貫通した状態で前記タービンロータを収容するケーシングと、
前記第1シャフト部と前記ケーシングとの間の第1隙間に対して設けられた第1のグランドシール及び前記第2シャフト部と前記ケーシングとの間の第2隙間に対して設けられた第2のグランドシールとを含み、
前記第1のグランドシールには、前記第1のグランドシールに流入した気体を排出するための第1の排出系統のみが接続され、
前記第2のグランドシールには、前記第2のグランドシールに流入した気体を排出するための第2の排出系統のみが接続され、
前記第1の排出系統は、前記第1のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され、
前記第2の排出系統は、前記第2のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され、
前記ガス抽出器は、予め定められた閾値以上の容量を有し、
前記閾値は、前記復水器が要求される凝縮すべき蒸気量に基づいて決定され、
前記閾値は以下の式によって規定されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【数1】
ここで、Xは
前記復水器に対して要求される凝縮すべき蒸気量を、Yは
前記ガス抽出器の容量の
前記閾値を示している。X及びYの単位はlb/hrである。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記蒸気タービンは、前記蒸気発生源から供給された蒸気が2方向に分流して前記タービンロータを回転駆動して前記タービンロータにおける前記軸方向一方側と前記軸方向他方側の2方向から排出される複流排気式のタービンによって構成され、
前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールはそれぞれ、前記蒸気タービンの外部側から内部側に向かって間隔をあけて配置された第1シール部と第2シール部とを含み、
前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールはそれぞれ、前記第1シール部と前記第2シール部とによって区画され、圧力調整が可能なチャンバを1つのみ有し、
前記第1の排出系統は、一方側が前記第1のグランドシールの前記チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第1排出ラインによって構成され、
前記第2の排出系統は、一方側が前記第2のグランドシールの前記チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第2排出ラインによって構成されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項3】
請求項
2に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記第1排出ラインおよび前記第2排出ラインは、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構の設置が回避されるように構成されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記蒸気タービンは、前記蒸気発生源から供給された蒸気が分流せずに前記タービンロータの前記軸方向一方側から前記軸方向他方側に流れて1方向から排出される単流排気式のタービンによって構成され、
前記第2のグランドシールは、前記蒸気タービンの外部側から内部側に向かって間隔をあけて配置された第1シール部と第2シール部とを含み、
前記第2のグランドシールは、前記第1シール部と前記第2シール部とによって区画され、圧力調整が可能なチャンバを1つのみ有し、
前記第2の排出系統は、一方側が前記第2のグランドシールの前記チャンバに接続され
ると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第2排出ラインによって構成されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項5】
請求項
4に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記第2排出ラインは、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構の設置が回避されるように構成されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項6】
蒸気発生源から供給される蒸気により駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器と、
前記復水器内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器を含み、前記復水器に接続されたガス抽出系統とを備え、
前記蒸気タービンは、
軸方向一方側及び軸方向他方側にそれぞれ第1シャフト部及び第2シャフト部を有し、前記蒸気発生源から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータと、
前記第1シャフト部及び前記第2シャフト部が貫通した状態で前記タービンロータを収容するケーシングと、
前記第1シャフト部と前記ケーシングとの間の第1隙間に対して設けられた第1のグランドシール及び前記第2シャフト部と前記ケーシングとの間の第2隙間に対して設けられた第2のグランドシールとを含み、
前記第1のグランドシールには、前記第1のグランドシールに流入した気体を排出するための第1の排出系統のみが接続され、
前記第2のグランドシールには、前記第2のグランドシールに流入した気体を排出するための第2の排出系統のみが接続され、
前記第1の排出系統は、前記第1のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され、
前記第2の排出系統は、前記第2のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され、
前記蒸気タービンは、前記蒸気発生源から供給された蒸気が分流せずに前記タービンロータの前記軸方向一方側から前記軸方向他方側に流れて1方向から排出される単流排気式のタービンによって構成され、
前記第1のグランドシールは、前記蒸気タービンの外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部と第2シール部と第3シール部とを含み、
前記第1のグランドシールは、前記第1シール部と前記第2シール部とによって区画され圧力調整が可能な第1チャンバ、及び、前記第2シール部と前記第3シール部とによって区画され圧力調整が可能な第2チャンバを有し、
前記第1の排出系統は、一方側が前記第1チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第1ラインと、一方側が前記第2チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第2ラインとで構成され、
前記第2ラインは、前記第2チャンバと前記ガス抽出系統とに接続される主ラインと、前記主ラインから分岐し前記蒸気タービンにおける前記軸方向一方側と前記軸方向他方側との間の中途位置に接続される分岐ラインとを有し、
前記第2ラインの前記主ライン上であって、前記分岐ラインとの分岐点と
前記ガス抽出系統との接続点との間に第1の開閉弁が設けられ、
前記第2ラインの前記分岐ライン上に第2の開閉弁が設けられている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項7】
請求項
6に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記第1ライン上に圧力調整機構が設けられている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項8】
請求項
6に記載の蒸気タービンプラントにおいて、
前記第2チャンバ内の圧力に対応する圧力を検出する圧力センサと、
前記第1の開閉弁及び前記第2の開閉弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記蒸気タービンの起動前において、前記第1の開閉弁及び前記第2の開閉弁を開状態にし、
前記蒸気タービンの起動時において、前記第1の開閉弁を開状態にする一方、前記第2の開閉弁を閉状態にし、
前記蒸気タービンの負荷運転時において、前記圧力センサの検出値が予め定められた圧力閾値を超えている場合には、前記第1の開閉弁を閉状態にする一方、前記第2の開閉弁を開状態にするように構成されている
ことを特徴とする蒸気タービンプラント。
【請求項9】
蒸気発生源から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータ、前記タービンロータにおける軸方向一方側の第1シャフト部及び軸方向他方側の第2シャフト部が貫通した状態で前記タービンロータを収容するケーシング、前記第1シャフト部と前記ケーシングとの間の第1隙間に対して設けられた第1のグランドシール及び前記第2シャフト部と前記ケーシングとの間の第2隙間に対して設けられた第2のグランドシールを含む蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器と、
前記復水器内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器を含み、前記復水器に接続されたガス抽出系統と、
前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールに接続され、前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールに対してグランド蒸気を供給するグランド蒸気供給系統と、
一方側が前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールに接続され、前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールに流入した気体を外部へ導き排出する排出系統とを備える蒸気タービンプラントを改良する蒸気タービンプラントの改良方法であって、
前記グランド蒸気供給系統を廃止し、
前記排出系統の他方側を、前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールに流入した気体が前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導かれるように、前記ガス抽出系統に接続する変更を行い、
前記蒸気タービンは、前記蒸気発生源から供給された蒸気が分流せずに前記タービンロータの前記軸方向一方側から前記軸方向他方側に流れて1方向から排出される単流排気式のタービンによって構成され、
前記第1のグランドシール及び前記第2のグランドシールがそれぞれ、前記蒸気タービンの外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部と第2シール部と第3シール部とを含むと共に、前記第1シール部と前記第2シール部とによって区画された第1チャンバ及び前記第2シール部と前記第3シール部とによって区画された第2チャンバを有し、
前記排出系統が、前記第1のグランドシールの前記第1チャンバに接続された排出ラインのみで構成される第1の排出系統と、前記第2のグランドシールの前記第1チャンバに接続された排出ラインのみで構成される第2の排出系統と有する構成に対して、
前記第1の排出系統を、一方側が前記第1のグランドシールの前記第1チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第1ラインと、一方側が前記第1のグランドシールの前記第2チャンバに接続されると共に他方側が前記ガス抽出系統に接続される第2ラインとで構成されるように変更し、
前記第2ラインを、前記第1のグランドシールの前記第2チャンバと前記ガス抽出系統とを接続する主ラインと、前記主ラインから分岐し前記蒸気タービンにおける前記軸方向一方側と前記軸方向他方側との間の中途位置に接続される分岐ラインとを含むように構成し、
前記第2ラインの前記主ライン上であって、前記分岐ラインとの分岐点と
前記ガス抽出系統との接続点との間に第1の開閉弁を設け、
前記第2ラインの前記分岐ライン上に第2の開閉弁を設ける
ことを特徴とする蒸気タービンプラントの改良方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の蒸気タービンプラントの改良方法において、
前記第1ライン上に圧力調整機構を設ける
ことを特徴とする蒸気タービンプラントの改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンプラント及びその改良方法に係り、更に詳しくは、蒸気タービンの軸封システムを備えたプラント及びその改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントなどに用いられる蒸気タービンは、蒸気発生源から供給された蒸気によってタービンロータが回転駆動されることで発電機などの負荷を駆動する。蒸気タービンでは、タービンロータがケーシングに収容されており、タービンロータのシャフト部がケーシングを貫通している。そのため、タービンロータの当該シャフト部とケーシングの当該貫通部分との間には隙間が形成されている。蒸気タービンプラントでは、タービン内部の蒸気の当該隙間を介したケーシング外への漏出やタービン外部の空気(外気)の当該隙間を介したタービン内部への流入を防ぐため、当該隙間に対してグランドシールを設けると共にグランドシールに対してグランド蒸気を供給することで軸封するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、タービンの後段の復水器と復水器から不凝縮性ガスを抽出して系外に排出するガス抽出器とを組み合せた地熱復水タービンにおいて、グランド蒸気排気システムが次のように構成されている。グランド蒸気排気システムは、タービンのグランドパッキン部から引出したグランド蒸気排出ラインを圧力調整用の絞り(オリフィス)を介して復水器に接続されたガス抽出器の吸込側に接続するように構成されている。このグランド蒸気排気システムでは、グランド漏洩蒸気及び軸端から吸い込んだ空気(外気)を復水器から抽出した不凝縮性ガスと一緒にガス抽出器を介して系外(大気中)へ排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
復水器を備えた蒸気タービンプラントでは、上述の隙間を介した外気(空気)のタービン内部への流入を防止することは重要である。なぜなら、空気は不凝縮ガスなので、タービン内部へ流入した空気(外気)が最終的に復水器に流入して滞留すると、復水器の真空度が悪化してしまう。復水器の真空度が悪化すると、タービンの排圧が上昇してタービン出力が低下する。その結果、蒸気タービンプラントの効率が悪化してしまう。このようなプラント効率の悪化を抑制するためには、外気(空気)のタービン内部への流入を防止する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の地熱復水タービンプラントのようにグランドパッキンにグランド蒸気を供給することは、外気(空気)のタービン内部への流入を防止する有効な手段である。しかし、そのような技術は、グランド蒸気をグランドパッキンに供給するための設備、例えば、グランド蒸気ヘッダやグランド蒸気供給ラインなどを要する。蒸気タービンプラントではシステム構成の簡素化が求められており、本発明者らはグランド蒸気を投入せずに外気(空気)のタービン内部への流入を防止する蒸気タービンの軸封システムを検討した。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、外気の蒸気タービン内部への流入を防止しつつ蒸気タービンの軸封システムを簡素化することができる蒸気タービンプラント及びその改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、蒸気発生源から供給される蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器と、前記復水器内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器を含み、前記復水器に接続されたガス抽出系統とを備え、前記蒸気タービンは、軸方向一方側及び軸方向他方側にそれぞれ第1シャフト部及び第2シャフト部を有し、前記蒸気発生源から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータと、前記第1シャフト部及び前記第2シャフト部が貫通した状態で前記タービンロータを収容するケーシングと、前記第1シャフト部と前記ケーシングとの間の第1隙間に対して設けられた第1のグランドシール及び前記第2シャフト部と前記ケーシングとの間の第2隙間に対して設けられた第2のグランドシールとを含み、前記第1のグランドシールには、前記第1のグランドシールに流入した気体を排出するための第1の排出系統のみが接続され、前記第2のグランドシールには、前記第2のグランドシールに流入した気体を排出するための第2の排出系統のみが接続され、前記第1の排出系統は、前記第1のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され、前記第2の排出系統は、前記第2のグランドシールに流入した気体を前記復水器を介さずに前記ガス抽出器に導くように前記ガス抽出系統に接続され
、前記ガス抽出器は、予め定められた閾値以上の容量を有し、前記閾値は、前記復水器が要求される凝縮すべき蒸気量に基づいて決定され、前記閾値は以下の式によって規定されていることを特徴とする。
【数1】
ここで、Xは前記復水器に対して要求される凝縮すべき蒸気量を、Yは前記ガス抽出器の容量の前記閾値を示している。X及びYの単位はlb/hrである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、復水器の真空度を保持するためのガス抽出器を用いて第1のグランドシール及び第2のグランドシールに流入する外気を吸引するので、第1のグランドシール及び第2のグランドシールに対してグランド蒸気を供給することなく、第1のグランドシール及び第2のグランドシールを介した外気の蒸気タービン内部への流入を防止することができる。このため、蒸気タービンの軸封システムには、グランド蒸気を第1のグランドシール及び第2のグランドシールに供給するための設備が不要である。すなわち、蒸気タービン内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービンの軸封システムを簡素化することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンのグランドシールの構造を示す断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムの作用を示す説明図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第1の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び既存の蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンのグランドシールの構造を示す断面図である。
【
図6】
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおけるガス抽出器の容量の閾値(下限)を規定する方法を示す説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
【
図8】
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの蒸気導入(入口)側のグランドシール(第1のグランドシール)の構造を示す断面図である。
【
図9】
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける制御装置の蒸気タービンの軸封システムに対する制御手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムのプラント負荷運転時(高負荷運転時)の作用を示す説明図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムのプラント起動時(真空上昇から低負荷運転までの間)の作用を示す説明図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第2の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び既存の蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の蒸気タービンプラント及びその改良方法の実施の形態について図面を用いて説明する。本発明の実施の形態は、地熱蒸気を用いる蒸気タービンプラントに好適なものである。
【0012】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
図2は
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンのグランドシールの構造を示す断面図である。
【0013】
図1において、蒸気タービンプラントは、蒸気発生源90から供給される蒸気によって駆動する蒸気タービン1と、蒸気発生源90の蒸気を蒸気タービン1に導く主蒸気系統2と、蒸気タービン1から排出された蒸気を冷却することで凝縮させて水に戻す復水器3と、復水器3に接続されたガス抽出系統4とを備えている。蒸気タービンプラントは、地熱発電や火力発電、原子力発電などで用いられるプラントである。蒸気発生源90としては、例えば、地熱エネルギにより生じた地熱蒸気を噴出する蒸気井、燃料の燃焼エネルギにより蒸気を発生させるボイラ、原子力エネルギにより蒸気を発生させる原子炉などがある。蒸気タービン1の構成については後述する。
【0014】
主蒸気系統2は、蒸気発生源90と蒸気タービン1とを接続する主蒸気ライン21と、主蒸気ライン21上に上流側から順に設置された主蒸気止め弁22及び主蒸気加減弁23とを備えている。主蒸気ライン21は、蒸気発生源90から蒸気タービン1に供給される主蒸気が流通するラインである。主蒸気止め弁22は、蒸気タービン1への主蒸気の供給又は供給の遮断を切り換えるものである。主蒸気加減弁23は、蒸気タービン1に導入する主蒸気の流量を調整するものである。
【0015】
復水器3は、蒸気タービン1から排出された気体である蒸気を凝縮させて液体である水に戻すことで、内部を真空に近い非常に低い圧力状態にするものである。復水器3の内部を非常に低い圧力に保持すると、蒸気タービン1の入口側と出口側との間に大きな圧力差が生じるので、タービンロータ11を効率的に回転駆動させることができる。このため、復水器3は、所定以上の真空度に保持する必要がある。しかし、復水器3には、蒸気中に含まれる空気などの不凝縮ガスが滞留することがある。特に、地熱発電の場合には、火力発電や原子力発電の場合に比べて、蒸気中に含まれる不凝縮ガス(例えば、炭酸ガスやメタンガスなど)の割合が大きくなっている。
【0016】
ガス抽出系統4は、復水器3の真空度を所定以上に保持するために、復水器3内の不凝縮ガスを抽出するものである。具体的には、ガス抽出系統4は、復水器3内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器41と、復水器3とガス抽出器41とを接続するガス抽出ライン42とを備えている。ガス抽出器41としては、例えば、電動モータなどの駆動源によって駆動される真空ポンプ、若しくは、蒸気などの気体を駆動源としたエジェクタ、又は、それらの組合せなどが用いられる。ガス抽出系統4は、例えば、復水器3内から抽出した不凝縮ガスを大気へ放出する。
【0017】
蒸気タービン1は、蒸気発生源90から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータ11と、タービンロータ11を収容するケーシング14とを備えている。蒸気タービン1は、例えば、蒸気発生源90から供給された蒸気が2方向に分流してタービンロータ11を回転駆動してタービンロータ11における軸方向一方側(
図1中、左側)と軸方向他方側(
図1中、右側)の2方向から排出される複流排気式のタービンによって構成されている。タービンロータ11は、蒸気の導入部(入口)を中央として軸方向両側に動翼列をそれぞれ少なくとも1段有している(模式図として図示)。また、タービンロータ11は、その軸方向一方側及び軸方向他方側にそれぞれ第1シャフト部12及び第2シャフト部13を有している。ケーシング14は、第1シャフト部12及び第2シャフト部13が貫通した状態でタービンロータ11を収容している。タービンロータ11の第1シャフト部12とケーシング14との間には第1隙間G1が形成されている。同様に、タービンロータ11の第2シャフト部13とケーシング14との間には第2隙間G2が形成されている。
【0018】
第1隙間G1には、当該第1隙間G1を封止する第1のグランドシール15が設けられている。同様に、第2隙間G2には、当該第2隙間G2を封止する第2のグランドシール16が設けられている。第1のグランドシール15は、蒸気タービン1の外部から内部に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部15aと第2シール部15bとを有している。第1のグランドシール15は、第1シール部15aと第2シール部15bとによって区画されたチャンバ15dを1つのみ有している。同様に、第2のグランドシール16は、蒸気タービン1の外部から内部に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部16aと第2シール部16bとを有している。第2のグランドシール16は、第1シール部16aと第2シール部16bとによって区画されたチャンバ16dを1つのみ有している。第1のグランドシール15のチャンバ15d及び第2のグランドシール16のチャンバ16dは、蒸気タービン1の外部と内部とを区分し、蒸気タービン1の外部及び内部に対して相対的な圧力の調整が可能な空間として形成されている。
【0019】
第2のグランドシール16の第1シール部16aは、例えば
図2に示すように、複数のフィンを有する1つのラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第2のグランドシール16の第2シール部16bは、複数のフィンを有する2組のラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第2のグランドシール16では、第1シール部16aと第2シール部16bとそれらを繋ぐ部分とによってチャンバ16dが1つ形成されている。チャンバ16dは、後述の排出系統(
図1に示す排出ライン6)を介してガス抽出系統4に接続されることで、蒸気タービン1の外部の空気(外気)及び蒸気タービン1の内部の蒸気が流入するように圧力が調整される。
【0020】
第1のグランドシール15も、
図2に示す第2のグランドシール16と同様な構造を有している。つまり、第1のグランドシール15の第1シール部15a及び第2シール部15bは、第2のグランドシール16の第1シール部16a及び第2シール部16bと同様な構造の非接触型のシール部である。第1のグランドシール15のチャンバ15dは、蒸気タービン1の外部と内部の間に位置すると共に後述の排出系統(
図1に示す排出ライン5)を介してガス抽出系統4に接続されることで、蒸気タービン1の外部及び内部の圧力に対して相対的な圧力を調整可能な空間として機能する。
【0021】
本実施の形態に係る蒸気タービンプラントは、
図1に示すように、第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16に対してグランド蒸気の供給を不要とする蒸気タービン1の軸封システムを備えている。すなわち、本蒸気タービンプラントは、第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16に対してグランド蒸気を供給するための設備が不要となっている。
【0022】
具体的には、第1のグランドシール15には、第1のグランドシール15のチャンバ15d内に流入した気体を排出するための第1の排出系統5のみが接続されている。ここで「排出系統5のみが接続」とは、少なくともチャンバ15d内にグランド蒸気を意図的に供給する系統は存在しないという意味である。以下に記載する本実施の形態でも同様である。第1の排出系統5は、第1のグランドシール15に流入した気体(蒸気タービン1の外部の空気(外気)や内部の蒸気など)を復水器3を介さずにガス抽出器41の吸込側に導くようにガス抽出系統4に接続されている。第1の排出系統5は、例えば、一方側が第1のグランドシール15のチャンバ15dに接続されていると共に他方側がガス抽出系統4のガス抽出ライン42に接続された排出ラインのみで構成されている。第1の排出系統(排出ライン)5は、例えば、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構(例えば、絞りや弁など意図的に流体の圧力を損失させる機構であって、構造上不可避な機構、例えば菅内面の表面粗さなどは該当しない、以下同様)の設置が回避されるように構成されている。
【0023】
同様に、第2のグランドシール16には、第2のグランドシール16のチャンバ16d内に流入した気体を排出するための第2の排出系統6のみが接続されている。第2の排出系統6は、第2のグランドシール16に流入した気体を復水器3を介さずにガス抽出器41の吸込側に導くようにガス抽出系統4に接続されている。第2の排出系統6は、例えば、一方側が第2のグランドシール16のチャンバ16dに接続されていると共に他方側がガス抽出系統4のガス抽出ライン42に接続された排出ラインのみで構成されている。第2の排出系統(排出ライン)6も、例えば、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構(例えば、絞りや弁など)の設置が回避されるように構成されている。
【0024】
本実施の形態においては、第1のグランドシール15のチャンバ15dを第1の排出系統5を介してガス抽出系統4のガス抽出器41に接続することで、蒸気タービンプラントの運転時(蒸気タービン1及びガス抽出器41の駆動中)において、チャンバ15dの圧力を蒸気タービン1の外部の大気圧よりも低くすると共に、蒸気タービン1内部における蒸気排出側(出口側)の圧力よりも低くする。同様に、第2のグランドシール16のチャンバ16dを第2の排出系統6を介してガス抽出系統4のガス抽出器41に接続することで、蒸気タービンプラントの運転時において、チャンバ16dの圧力を蒸気タービン1の外部の大気圧よりも低くすると共に、蒸気タービン1内部における蒸気排出側(出口側)の圧力よりも低くする。
【0025】
このように、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン1の軸封システムは、第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16をそれぞれ第1の排出系統5及び第2の排出系統6を介してガス抽出系統4のガス抽出器41に接続することで、グランド蒸気の第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16への供給が不要となる構成である。
【0026】
また、上述したように、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントは、ガス抽出器41によって第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16d内の圧力を蒸気タービン1内部における蒸気排出側(出口側)の圧力よりも低くするように構成されている。そのため、ガス抽出器41は、復水器3の真空度を所定以上に保持することが可能で、かつ、第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16のチャンバ15d、16dを蒸気タービン1内部の蒸気排出側の圧力よりも低い圧力に保持することが可能な容量を有している必要がある。ガス抽出器41の容量は、事前に定めた閾値以上に設定される。当該閾値は、例えば、復水器3が要求される凝縮すべき蒸気量に基づいて決定される。なお、ガス抽出器41の容量の決定方法の詳細は後述する。
【0027】
次に、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムの作用について
図1~
図3を用いて説明する。
図3は第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムの作用を示す説明図である。
図2及び
図3中、実線の矢印は外気の流れを、破線の矢印は蒸気の流れを示している。
【0028】
図1に示す本実施の形態の蒸気タービンプラントにおいては、蒸気発生源90にて生成された高圧の蒸気が主蒸気ライン21を介して蒸気タービン1に供給される。このとき、蒸気タービン1に供給される蒸気流量が主蒸気加減弁23によって調整される。なお、非常時には、蒸気タービン1への蒸気の供給が主蒸気止め弁22によって瞬時に遮断される。
【0029】
蒸気タービン1における軸方向中央部に供給された高圧の蒸気は、軸方向の一方側(
図1中、左側)及び他方側(
図1中、右側)に向かう2方向に分流し、圧力を低下させながらタービンロータ11を回転駆動する。タービンロータ11を駆動した蒸気は、蒸気タービン1の軸方向の一方側及び他方側の両側(2方向)から排出されて復水器3に導かれる。復水器3に流入した蒸気は、冷却されて凝縮して水に戻る。復水器3では、気体の蒸気が液体の水に変化して体積が急激に減少することで、圧力が非常に低い真空に近い状態となる。
【0030】
復水器3内では、蒸気タービン1から流入した蒸気が凝縮されると、当該蒸気中に含まれていた空気などの不凝縮ガスが残留する。復水器3内に残留した不凝縮ガスは、ガス抽出系統4のガス抽出器41によって抽出されて大気へ放出される。これにより、復水器3の真空度が高く保持されるので、蒸気タービン1の効率の低下を防止することができる。
【0031】
このような複流排気式の蒸気タービンプラントでは、蒸気タービン1における軸方向の一方側及び他方側の蒸気排出(出口)側の圧力が復水器3内の圧力に近い負圧となっている。このため、
図1~
図3に示すように、第1及び第2のグランドシール15、16の第2シール部15b、16bよりも蒸気タービン1の内部側の圧力は、復水器3内の圧力に近い非常に低い負圧となっている。一方、第1及び第2のグランドシール15、16の第1シール部15a、16aよりも蒸気タービン1の外部側の圧力は、外気の圧力、すなわち大気圧となっている。このため、蒸気タービン1の外部側の空気(外気)が第1及び第2のグランドシール15、16を介して相対的に低圧である蒸気タービン1の内部へ流入しようとする。
【0032】
本実施の形態においては、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dが第1及び第2の排出系統5、6(排出ライン)を介してガス抽出器41に接続されている。このため、当該チャンバ15d、16dがガス抽出器41の吸引力によって蒸気タービン1内部の蒸気排出(出口)側の圧力よりも更に低圧の高真空の状態になっている。このため、蒸気タービン1の外部側の空気(外気)は、第1及び第2のグランドシール15、16の第1シール部15a、16aを介して高真空状態のチャンバ15d、16d内に流入し、第1及び第2の排出系統5、6を介してガス抽出器41によって吸引される。また、蒸気タービン1内部における第1及び第2のグランドシール15、16近傍に存在する負圧の蒸気は、第1及び第2のグランドシール15、16の第2シール部15b、16bを介して高真空状態のチャンバ15d、16d内に流入し、外気と共にガス抽出器41によって吸引される。このため、外気(空気)が第1及び第2のグランドシール15、16を介して相対的に低圧である蒸気タービン1の内部へ流入することをグランド蒸気の供給無しに防止することができる。
【0033】
また、本実施の形態においては、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dとガス抽出器41とを接続する第1及び第2の排出系統5、6の排出ラインに対して、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構(例えば、絞りや弁など)の設置が回避されるように構成されている。これにより、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dの内部を確実に高真空の状態にすることができるので、当該チャンバ15d、16dの圧力が蒸気タービン1内部の圧力よりも低く保持される。したがって、外気(空気)が蒸気タービン1の内部へ流入することを確実に防止することができる。
【0034】
ここでは、蒸気タービンプラントの負荷運転時(正確には、高負荷運転時をいう)における蒸気タービン1の軸封システムの作用を説明した。蒸気タービンプラントの起動時(正確には、真空上昇から低負荷運転までの間をいう)における蒸気タービン1の軸封システムの作用も、負荷運転時の場合と同様である。蒸気タービンプラントの起動時でも、負荷運転時と同様に、ガス抽出器41の駆動によって復水器3を真空に近い状態に保持する。このため、蒸気タービン1内部における軸方向の一方側及び他方側の蒸気排出(出口)側の圧力は、非常に低い負圧になる。一方、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dの圧力もガス抽出器41の駆動によって高真空の状態になる。したがって、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dの圧力と蒸気タービン1の内部及び外部の圧力の大小関係については、蒸気タービンプラントの起動時と負荷運転時において変わりがない。
【0035】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法について説明する。まず、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第1の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第1の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び既存の蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
図5は
図4に示す第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンのグランドシールの構造を示す断面図である。なお、
図4及び
図5において、
図1~
図3に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図4に示す第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラント100の構成が本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの構成と異なる点は、蒸気タービン101の軸封システム(破線で結ばれている部分)の構成及び構造が異なることである。特に、蒸気タービン101の軸封にグランド蒸気を用いる点が異なっている。具体的には、第1の改良対象の蒸気タービンプラント100における蒸気タービン101の軸封システムは、タービンロータ11の軸方向の一方側(
図4中、左側)及び他方側(
図4中、右側)にそれぞれ配置された第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116にグランド蒸気を供給するグランド蒸気供給系統と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体を軸封システムの外部へ導いて排出するための排出系統とを備えている。
【0037】
グランド蒸気供給系統は、例えば、主蒸気ライン21から分岐して第1のグランドシール115に接続された供給ラインとしての第1の供給系統107と、主蒸気ライン21から分岐して第2のグランドシール116に接続された供給ラインとしての第2の供給系統108とで構成されている。つまり、グランド蒸気として、蒸気発生源90から蒸気タービン101に供給される蒸気の一部が用いられている。グランド蒸気の圧力及び流量は、調整弁109によって調整される。
【0038】
排出系統は、第1のグランドシール115に接続された排出ラインとしての第1の排出系統105と、第2のグランドシール116に接続された排出ラインとして第2の排出系統106と、第1の排出系統105及び第2の排出系統106に接続されたグランド蒸気ファン110とを含むように構成されている。蒸気タービン101の軸封システムの排出系統は、ガス抽出器41を含むガス抽出系統4とは無関係の系統として構成されている。
【0039】
なお、ここでは、第1の改良対象の蒸気タービンプラント100がグランド蒸気の供給源として蒸気タービン101に高圧の蒸気を供給する蒸気発生源90を用いる構成の例を示した。しかし、グランド蒸気の供給源は大気圧よりも高圧な蒸気を供給可能であれば任意である。
【0040】
蒸気タービン101の第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116は、
図4及び
図5に示すように、蒸気タービン101の外部から内部に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとで構成されている。また、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116は、第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cとによって区画された第1チャンバ115e、116e、及び、第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとによって区画された第2チャンバ115f、116fを有している。第1及び第2のグランドシール115、116の第2チャンバ115f、116fは、蒸気タービン101の外部と内部と区分し、グランド蒸気が供給される空間として形成されている。一方、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eは、蒸気タービン101の外部と内部と区分し、蒸気タービン1の外部及び隣接する第2チャンバ115f、116fに対して相対的な圧力の調整が可能な空間として形成されている。
【0041】
第2のグランドシール116の第1シール部116aは、例えば
図5に示すように、複数のフィンを有する1つのラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第2シール部116cは、例えば、第1シール部116aと同様に、複数のフィンを有する1つのラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第3シール部116bは、例えば、複数のフィンを有する2組のラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第2のグランドシール116では、第1シール部116aと第2シール部116cとそれらを繋ぐ部分とによって第1チャンバ116eが形成されていると共に、第2シール部116cと第3シール部116bとそれらを繋ぐ部分とによって第2チャンバ116fが形成されている。第1のグランドシール115も、
図5に示す第2のグランドシール116と同様な構造を有している。つまり、第1のグランドシール115の第1シール部115aと第2シール部115cと第3シール部115bは、第2のグランドシール116の第1シール部116aと第2シール部116cと第3シール部116bと同様な構造の非接触型のシール部である。第1のグランドシール115では、第1シール部115aと第2シール部115cとそれらを繋ぐ部分とによって第1チャンバ115eが形成されていると共に、第2シール部115cと第3シール部115bとそれらを繋ぐ部分とによって第2チャンバ115fが形成されている。
【0042】
図4に示すように、第1のグランドシール115の第2チャンバ115fには第1の供給系統107が接続されている。同様に、第2のグランドシール116の第2チャンバ116fには第2の供給系統108が接続されている。第1及び第2のグランドシール115、116の第2チャンバ115f、116fは、高圧のグランド蒸気が第1の供給系統107及び第2の供給系統108を介して供給されることで、蒸気タービン101の外部及び蒸気タービン101内部における蒸気排出(出口)側よりも高圧の空間となるように構成されている。
【0043】
第1のグランドシール115の第1チャンバ115eは、第1の排出系統105を介してグランド蒸気ファン110に接続されている。同様に、第2のグランドシール116の第1チャンバ116eは、第2の排出系統106を介してグランド蒸気ファン110に接続されている。グランド蒸気ファン110は、
図4及び
図5に示すように、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eに流入した気体(蒸気タービン101の外部からの空気(外気)や第2チャンバ115f、116fからのグランド蒸気)を吸引するものである。グランド蒸気ファン110は、例えば、第1チャンバ115e、116eの圧力を大気圧よりも若干低い負圧(以下、微負圧と称することがある)に保持するような吸引力を有する排気ファンとして構成されている。すなわち、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eは、グランド蒸気ファン110の吸引力によって蒸気タービン1外部の空気(外気)及び第2チャンバ116f内のグランド蒸気が流入するように圧力が調整される空間として構成されている。
【0044】
このように構成された第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラント100においては、蒸気タービン101の軸封システムがプラント100の負荷運転時及び起動時に次のように作動する。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第1及び第2のグランドシール115、116の第2チャンバ115f、116fに対して高圧のグランド蒸気が第1及び第2の供給系統107、108を介して供給される。さらに、グランド蒸気ファン110が駆動することで、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eの圧力が微負圧になる。
【0046】
第2チャンバ115f、116fに供給されたグランド蒸気は、蒸気タービン101内部の蒸気排出(出口)側の圧力(復水器3の圧力に応じた負圧)よりも高圧であると共に、第1チャンバ115e、116eの圧力(微負圧)よりも高圧である。このため、第2チャンバ115f、116f内のグランド蒸気は、第3シール部115b、116bを介して相対的に低圧な蒸気タービン101の内部に流入すると共に、第2シール部115c、116cを介して相対的に低圧な第1チャンバ115e、116eに流入する。また、蒸気タービン1の外部側の外気(空気)が第1シール部115a、116aを介して相対的に低圧な第1チャンバ115e、116eに流入する。第1チャンバ115e、116eに流入したグランド蒸気及び外気(空気)は、第1及び第2の排出系統105、106を介してグランド蒸気ファン110によって吸引される。
【0047】
このように、第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラント100における蒸気タービン101の軸封システムでは、第1及び第2のグランドシール115、116に対して高圧なグランド蒸気を供給することによって、蒸気タービン101の外部側の空気(外気)が第1及び第2のグランドシール115、116を介して相対的に低圧な蒸気タービン101の内部へ流入することを防いでいる。このため、第1の改良対象(既存)の蒸気タービン101の軸封システムは、第1及び第2のグランドシール115、116にグランド蒸気を供給するための設備、例えば、第1及び第2の供給系統107、108などを要する。
【0048】
しかし、既存の蒸気タービンプラントに対しては、システム構成の簡素化が求められている。そこで、本発明者らは、検討の結果、グランド蒸気を投入せずに外気(空気)のタービン内部への流入を防止することが可能である上述の本実施の形態に係る蒸気タービン1の軸封システムを見出した。
【0049】
次に、上述の第1の改良対象の既存の蒸気タービンプラントに対する第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法について
図1、
図2、
図4、及び
図5を用いて説明する。
【0050】
上述したように、第1の改良対象の既存の蒸気タービンプラント100においては、
図4に示すように、蒸気タービン101が複流排気式のタービンによって構成されている。さらに、蒸気タービン101の軸封システムは、タービンロータ11の軸方向の一方側(
図4中、左側)及び他方側(
図4中、右側)にそれぞれ配置された第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116にグランド蒸気を供給するグランド蒸気供給系統と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体を外部へ導き排出するための排出系統とを備えている。グランド蒸気供給系統は、第1のグランドシール115に接続された第1の供給系統107と、第2のグランドシール116に接続された第2の供給系統108とを含んで構成されている。排出系統は、第1のグランドシール115に接続された第1の排出系統105と、第2のグランドシール116に接続された第2の排出系統106と、第1の排出系統105及び第2の排出系統106に接続されたグランド蒸気ファン110とで構成されている。
【0051】
このような構成の第1の改良対象の蒸気タービンプラント100に対して、次の変更を施すことで、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに相当する構成に改良することが可能である。
【0052】
第1に、
図4に示す既存の蒸気タービン101の軸封システムにおける第1及び第2の供給系統107、108を含むグランド蒸気供給系統を廃止する。この変更により、
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン1の軸封システムのように、グランド蒸気の供給を不要とする軸封システムに改良することができる。
【0053】
第2に、
図4及び
図5に示す蒸気タービン101の第1及び第2のグランドシール115、116の第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bのうち、第2シール部115c、116cを廃止する。この変更により、第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cとによって区画された第1チャンバ115e、116e、及び、第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとによって区画された第2チャンバ115f、116fを有するシール部から、第1シール部115a、116aと第3シール部115b、116bとによって区画された1つのチャンバのみを有するシール部に変更される。すなわち、既存の第1及び第2のグランドシール115、116を第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける
図1及び
図2に示す蒸気タービン1の第1及び第2のグランドシール15、16(第1シール部15a、16aと第2シール部15b、16bとによって区画されたチャンバ15d、16dのみを有するシール部)に相当する構成に改良することが可能である。
【0054】
第3に、
図4に示す既存の蒸気タービン101の軸封システムにおける排出系統の一部を構成するグランド蒸気ファン110を廃止する。
【0055】
第4に、
図4に示す既存の蒸気タービン101の軸封システムの排出系統の第1及び第2の排出系統105、106におけるグランド蒸気ファン110に接続されていた部分を、第1及び第2のグランドシール115、116に流入した気体を復水器3を介さずにガス抽出器41に導くように、ガス抽出系統4に接続する。さらに、既存の第1及び第2の排出系統105、106における既存の第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eに接続されていた一方側を、既存の第1及び第2のグランドシール115、116を改良して得られた本実施の形態の第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dに相当する部分に接続する。この変更により、
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービン1の軸封システムにおける第1及び第2の排出系統5、6に相当する構成に改良することが可能である。
【0056】
このように、
図4に示す第1の改良対象の既存の蒸気タービンプラント100を
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに改良すると、復水器3の真空度を保持するための吸引力の強いガス抽出器41によって、第1及び第2のグランドシール15、16に流入した外気を蒸気タービン1の内部へ流入させることなく吸引することができる。このため、第1及び第2のグランドシール15、16に対してグランド蒸気を供給せずとも、第1及び第2のグランドシール15、16を介した外気の蒸気タービン1内部への流入を防止することができる。
【0057】
次に、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムの一部を構成するガス抽出器の容量について
図6を用いて説明する。
図6は
図1に示す第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおけるガス抽出器の容量の閾値(下限)を規定する方法を示す説明図である。
図6中、横軸は復水器が要求される凝縮すべき蒸気量を、縦軸はガス抽出器の容量を示している。なお、復水器の蒸気量及びガス抽出器の容量の単位は、lb/hrである。
【0058】
一般に、復水器の真空度を保持するために用いられるガス抽出器の容量は、例えば、
図6の実線で示されているHEI規格(熱交換器協会の規格)によって定められている(蒸気タービンプラントの起動時及び運転時)。ただし、このHEI規格は、火力発電プラントなどに用いられる蒸気タービンから復水器に排出された蒸気中に含まれる空気などの不凝縮ガスを抽出することを想定したものである。
【0059】
しかし、本実施の形態のガス抽出器41は、蒸気タービン1から復水器3に排出された蒸気中に含まれる空気などの不凝縮ガスを抽出する通常の機能に加えて、第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16d内に流入した外気(空気)を蒸気タービン1の内部へ流入させることなく抽出する追加の機能を有している。このため、第1の実施の形態に係るガス抽出器41の容量に対してHEI規格を適用した場合に、第1及び第2のグランドシール15、16を介した外気の蒸気タービン1の内部への流入を防止することが可能であるか否かの知見を有していなかった。
【0060】
そこで、本願発明者は本実施の形態のガス抽出器41が上述の追加機能を維持可能な容量の検討を行い、上述の追加機能を維持することが可能な地熱発電プラントを抽出し、そのプラントでの実績値を基に
図6の一点鎖線で示されている閾値ラインP
thを得た。すなわち、ガス抽出器41の容量の閾値(下限)は、
図6の一点鎖線で示されている閾値ラインP
thを用い、復水器3が凝縮すべき蒸気量に応じて決定される。
【0061】
具体的には、地熱発電プラントにおけるガス抽出器の容量と復水器が凝縮すべき蒸気量との関係を示す実績値の分布の下限にある3つのプロットを通る回帰線を算出し、算出結果の回帰線を100%の実績ラインとする。地熱発電プラントの場合、火力発電や原子力発電のプラントに比べて、蒸気中に含まれる不凝縮ガス(例えば、炭酸ガスやメタンガスなど)の割合が大きくなっている。そのため、ガス抽出器の容量は、復水器の蒸気量に対して火力発電などで用いられる場合よりも大きく設定されている。地熱発電プラントの実績値を基に得られた回帰線(実績ライン)は、以下の式として算出されている。
【0062】
【0063】
ここで、Xは復水器が要求される凝縮すべき蒸気量であり、Yはガス抽出器の容量である。X及びYの単位は、lb/hrである。
【0064】
この実績ラインに対してデータのばらつきや性能の余裕代を考慮して、実績ラインの75%を閾値ラインPthとして決定する。すなわち、閾値ラインPthは、以下の式として算出されている。
【0065】
【0066】
このように、本実施の形態に係るガス抽出器41は、その容量の閾値(下限)が閾値ラインPthによって決定される。そのため、ガス抽出器41の容量は、HEI規格を適用する場合よりも大きくなる。なお、特に地熱発電プラントにありがちな、蒸気タービンを駆動する主蒸気に不凝縮ガスが大量に含まれている場合には、HEI規格に対して十分な余裕がある容量を有するガス抽出器が設置されていることが多い。このような既設の発電プラントに本実施の形態を適用する場合には、新たなガス抽出器を導入することなく既存のガス抽出器をそのまま活用することができ、かつ、グランド蒸気を供給する設備を除去することができるというメリットがある。
【0067】
上述したように、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントは、蒸気発生源90から供給される蒸気により駆動する蒸気タービン1と、蒸気タービン1から排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器3と、復水器3内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器41を含み、復水器3に接続されたガス抽出系統4とを備える。蒸気タービン1は、軸方向一方側及び軸方向他方側にそれぞれ第1シャフト部12及び第2シャフト部13を有し、蒸気発生源90から供給された蒸気によって回転駆動するタービンロータ11と、第1シャフト部12及び第2シャフト部13が貫通した状態でタービンロータ11を収容するケーシング14と、第1シャフト部12とケーシング14との間の第1隙間G1に対して設けられた第1のグランドシール15及び第2シャフト部13とケーシング14との間の第2隙間G2に対して設けられた第2のグランドシール16とを含む。第1のグランドシール15には第1のグランドシール15に流入した気体を排出するための第1の排出系統5のみが接続され、第2のグランドシール16には第2のグランドシール16に流入した気体を排出するための第2の排出系統6のみが接続されている。第1の排出系統5は第1のグランドシール15に流入した気体を復水器3を介さずにガス抽出器41に導くようにガス抽出系統4に接続され、第2の排出系統6は第2のグランドシール16に流入した気体を復水器3を介さずにガス抽出器41に導くようにガス抽出系統4に接続されている。
【0068】
この構成によれば、復水器3の真空度を保持するためのガス抽出器41を用いて第1及び第2のグランドシール15、16に流入する外気を吸引するので、第1及び第2のグランドシール15、16に対してグランド蒸気を供給することなく、第1及び第2のグランドシール15、16を介した外気の蒸気タービン1の内部への流入を防止することができる。このため、蒸気タービン1の軸封システムには、グランド蒸気を第1及び第2のグランドシール15、16に供給するための設備が不要である。すなわち、蒸気タービン1内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービン1の軸封システムを簡素化することができる。
【0069】
また、この構成によれば、第1及び第2のグランドシール15、16に対してグランド蒸気を供給せずとも、第1及び第2のグランドシール15、16を介した外気の蒸気タービン1の内部への流入を防止することができるので、グランド蒸気として供給していた蒸気を蒸気タービン1に供給することが可能となる。その結果、蒸気タービン1の出力を増加させることができる。
【0070】
また、この構成によれば、地熱蒸気を用いるプラントの場合には、塩化物や硫化物等の腐食性を有する成分を含む地熱蒸気をグランド蒸気として利用する必要がないので、第1及び第2のグランドシール15、16の腐食のリスクを低減することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、ガス抽出器41が予め定めた閾値以上の容量を有し、当該閾値は復水器3が要求される凝縮すべき蒸気量に基づいて決定されている。
【0072】
この構成によれば、復水器3から不凝縮ガスを抽出する通常の機能に加えて、第1及び第2のグランドシール15、16内に流入した外気(空気)を更に抽出する追加の機能を含むようにガス抽出器41の容量を設定することが可能である。
【0073】
さらに、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、ガス抽出器41の容量の閾値が以下の式によって規定されている。
【0074】
【0075】
ここで、Xは復水器が要求される凝縮すべき蒸気量であり、Yはガス抽出器の容量である。また、変数X及びYの単位は、lb/hrである。
【0076】
この構成よれば、ガス抽出器41の容量が地熱発電プラントの実績値を基に得られた閾値以上に設定されるので、ガス抽出器41の容量不足による第1及び第2のグランドシール15、16を介した外気の蒸気タービン1の内部への流入を確実に防止することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン1は、蒸気発生源90から供給された蒸気が2方向に分流してタービンロータ11を回転駆動してタービンロータ11における軸方向一方側と軸方向他方側の2方向から排出される複流排気式のタービンによって構成されている。蒸気タービン1の第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16はそれぞれ、蒸気タービン1の外部側から内部側に向かって間隔をあけて配置された第1シール部15a、16aと第2シール部15b、16bとを含み、第1シール部15a、16aと第2シール部15b、16bとによって区画され圧力調整が可能なチャンバ15d、16dを1つのみ有している。第1の排出系統5は一方側が第1のグランドシール15のチャンバ15dに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第1排出ラインによって構成され、第2の排出系統6は一方側が第2のグランドシール16のチャンバ16dに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2排出ラインによって構成されている。
【0078】
この構成によれば、蒸気タービン1が複流排気式である場合において、グランド蒸気の供給を前提とする既存のグランドシールの構造(シール部が3つ及びチャンバが2つ)に対して、第1及び第2のグランドシール15、16の構造を簡素化することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、蒸気タービン1の軸封システムの第1の排出系統5としての第1排出ライン及び第2の排出系統6としての第2排出ラインが、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構の設置が回避されるように構成されている。
【0080】
この構成によれば、ガス抽出器41の吸引力が第1及び第2の排出系統5、6を介して第1及び第2のグランドシール15、16のチャンバ15d、16dに作用する際に、圧力調整機構の影響を受けることがない。このため、当該チャンバ15d、16dの圧力をガス抽出器41の吸引力によって確実に高真空の状態に保持することができる。
【0081】
また、上述したように、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法は、蒸気発生源90から供給された蒸気により回転駆動するタービンロータ11、タービンロータ11における軸方向一方側の第1シャフト部12及び軸方向他方側の第2シャフト部13が貫通した状態でタービンロータ11を収容するケーシング14、第1シャフト部12とケーシング14との間の第1隙間G1に対して設けられた第1のグランドシール115及び第2シャフト部13とケーシング14との間の第2隙間G2に対して設けられた第2のグランドシール116を含む蒸気タービン101と、蒸気タービン101から排出された蒸気を凝縮させて水に戻す復水器3と、復水器3内の不凝縮ガスを抽出するガス抽出器41を含み復水器3に接続されたガス抽出系統4と、第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16に接続され第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に対してグランド蒸気を供給するグランド蒸気供給系統107、108と、一方側が第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に接続され第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体を外部へ導き排出する排出系統105、106とを備える蒸気タービンプラント100を改良するものである。当該改良方法は、グランド蒸気供給系統107、108を廃止すると共に、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体が復水器3を介さずにガス抽出器41に導かれるように、排出系統105、106における他方側をガス抽出系統4に接続する変更を行うものである。
【0082】
この改良方法によれば、復水器3の真空度を保持するガス抽出器41を用いて第1のグランドシール及び第2のグランドシールに流入する外気を吸引することが可能となるので、グランド蒸気供給系統107、108を廃止しても、第1のグランドシール及び第2のグランドシールを介した外気の蒸気タービン内部への流入を防止することできる。したがって、蒸気タービン内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービンの軸封システムを簡素化することができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法においては、蒸気タービン101が蒸気発生源90から供給された蒸気が2方向に分流してタービンロータ11を回転駆動してタービンロータ11における軸方向一方側と軸方向他方側の2方向から排出される複流排気式のタービンによって構成され、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116がそれぞれ蒸気タービン101の外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとを含むと共に第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cとによって区画された第1チャンバ115e、116e及び第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとによって区画された第2チャンバ115f、116fを有し、排出系統105、106の一方側が第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116の第1チャンバ115e、116eに接続されている構成に対する改良方法である。当該改良方法は、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116における第2シール部115c、116cを廃止して第1シール部と第3シール部とによって1つのチャンバが区画されるように第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116を変更するものである。
【0084】
この改良方法によれば、既存の蒸気タービン101が複流排気式である場合に、グランド蒸気の供給を前提とする既存の第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116よりも構造が簡素な第1のグランドシール15及び第2のグランドシール16を利用することができる。
【0085】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの構成について
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。
図8は
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの蒸気導入(入口)側のグランドシール(第1のグランドシール)の構造を示す断面図である。なお、
図7及び
図8において、
図1~
図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0086】
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントが第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントと相違する主な点は、蒸気タービン1Aが複流排気式ではなく単流排気式のタービンによって構成されていること、並びに、単流排気式のタービンに応じて第1のグランドシール15A及び第1の排出系統5Aの構成が異なることである。
【0087】
具体的には、単流排気式の蒸気タービン1Aは、蒸気発生源90から供給された蒸気が分流せずにタービンロータ11Aの軸方向一方側(
図7中、左側)から軸方向他方側(
図7中、右側)に流れて1方向から排出されるものである。タービンロータ11Aは、蒸気導入(入口)側である軸方向一方側から蒸気排出(出口)側である軸方向他方側に向かって動翼列を複数段有している。蒸気発生源90からの高圧の蒸気は、蒸気タービン1Aにおける軸方向一方側に流入し、軸方向他方側(
図7中、右側)に向かって流れて圧力を低下させながらタービンロータ11Aを回転駆動する。タービンロータ11Aを駆動した蒸気は、蒸気タービン1Aの軸方向他方側から排出されて復水器3に導かれ、復水器3で凝縮されて水に戻る。このため、蒸気タービン1Aでは、プラントの負荷運転時には蒸気導入(入口)側である軸方向一方側が高圧の状態になる一方、蒸気排出(出口)側である軸方向他方側は復水器3内の圧力に近い非常に低い圧力の負圧となっている。
【0088】
本実施の形態の第1のグランドシール15Aは、第1の実施の形態の第1のグランドシール15とは異なり、蒸気タービン1Aの蒸気導入(入口)側に位置するものである。このため、プラントの負荷運転時では、第1のグランドシール15Aの近傍の蒸気タービン1Aの内部側は、導入される蒸気によって高圧状態になる。一方、本実施の形態の第2のグランドシール16は、第1の実施の形態の第2のグランドシール16と同様、蒸気タービン1Aの蒸気排出(出口)側に位置するものである。このため、プラントの負荷運転時では、第2のグランドシール16の近傍の蒸気タービン1Aの内部側は、復水器3内の圧力に近い負圧になる。
【0089】
また、プラントの起動時では、蒸気タービン1Aの内部全体を真空に近い状態にするので、蒸気タービン1Aの蒸気導入(入口)側及び蒸気排出(出口)側の両方とも圧力の非常に低い負圧になる。つまり、プラントの起動時では、本実施の形態の第1のグランドシール15Aは第1の実施の形態の第1のグランドシール15と同様な状態に曝される。
【0090】
そこで、第1のグランドシール15Aは、
図7及び
図8に示すように、蒸気タービン1Aの外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部15aと第2シール部15cと第3シール部15bとで構成されている。また、第1のグランドシール15Aは、第1シール部15aと第2シール部15cとによって区画された第1チャンバ15e、及び、第2シール部15cと第3シール部15bとによって区画された第2チャンバ15fを有している。第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eは、蒸気タービン1Aの外部と内部と区分し、蒸気タービン1Aの外部及び隣接する第2チャンバ15fに対して相対的な圧力の調整が可能な空間として形成されている。一方、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fは、蒸気タービン1Aの内部及び隣接する第1チャンバ15eに対して相対的な圧力の調整が可能な空間として形成されている。
【0091】
第1のグランドシール15Aの第1シール部15aは、例えば
図8に示すように、複数のフィンを有する1つのラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第2シール部15cは、例えば、第1シール部15aと同様に、複数のフィンを有する1つのラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第3シール部15bは、例えば、複数のフィンを有する3組のラビリンスパッキンで構成された非接触型のシール部である。第1のグランドシール15Aでは、第1シール部15aと第2シール部15cとそれらを繋ぐ部分とによって第1チャンバ15eが形成されていると共に、第2シール部15cと第3シール部15bとそれらを繋ぐ部分とによって第2チャンバ15fが形成されている。第1チャンバ15eは、蒸気タービン1Aの外部からの空気(外気)及び第2チャンバ15fからの気体(高圧の蒸気)が流入するように圧力が調整される。第2チャンバ15fは、蒸気タービン1Aの内部からの気体(蒸気又は空気)及び第1チャンバ15eからの気体(外気)が流入するように圧力が調整される。なお、本実施の形態の第2のグランドシール16は、
図2に示す第1の実施の形態の第2のグランドシール16と同様な構成及び構造であり、その説明を省略する。
【0092】
本実施の形態に係る蒸気タービンプラントは、
図7に示すように、第1のグランドシール15A及び第2のグランドシール16に対してグランド蒸気の供給を不要とする蒸気タービン1Aの軸封システムを備えている。第1のグランドシール15Aに接続されている第1の排出系統5Aは、第1のグランドシール15Aに流入した気体(蒸気タービン1Aの外部からの空気(外気)や蒸気タービン1Aの内部からの蒸気又は空気)を復水器3を介さずにガス抽出器41に導くようにガス抽出系統4に接続されている。具体的には、本実施の形態の第1の排出系統5Aは、第1の実施の形態の第1の排出系統5とは異なり、一方側が第1チャンバ15eに接続されていると共に他方側がガス抽出系統4に接続されている第1ライン51と、一方側が第2チャンバ15fに接続されていると共に他方側がガス抽出系統4に接続されている第2ライン52とを含んでいる。
【0093】
第1ライン51上には、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構としての絞り56(例えば、オリフィス)が設けられている。圧力調整機構としての絞り56は、第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eの圧力を調整するものである。具体的には、絞り56は、ガス抽出器41の吸入力によるガス抽出系統4の高真空状態に対して、第1チャンバ15eの圧力を蒸気タービン1Aの外部の大気圧よりも若干低い圧力である微負圧に保持するように構成されている。
【0094】
第2ライン52は、第2チャンバ15fとガス抽出系統4とを接続する主ライン53と、主ライン53から分岐して蒸気タービン1Aの中間位置(タービンロータ11Aの第1段と最終段との間の中間段)に接続された分岐ライン54とで構成されている。主ライン53における分岐ライン54の接続点よりも下流側の部分には、第1の開閉弁57が設けられている。第1の開閉弁57は、主ライン53の気体の流れの許容又は遮断を切り換えるものである。分岐ライン54上には、第2の開閉弁58が設けられている。第2の開閉弁58は、分岐ライン54の気体の流れの許容又は遮断を切り換えるものである。第2ライン52における第1のグランドシール15A側の部分には、第2ライン52を流れる気体の圧力を検出する圧力センサ59が設けられている。圧力センサ59は、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15f内の圧力に対応する圧力を検出するものであり、検出した圧力値に応じた検出信号を制御装置8へ出力する。
【0095】
なお、第2のグランドシール16に接続されている第2の排出系統6は、
図1に示す第1の実施の形態の第2の排出系統6と同様な構成であり、その説明を省略する。
【0096】
制御装置8は、蒸気タービン1Aの軸封システムを制御するものであり、第1の開閉弁57、第2の開閉弁58、圧力センサ59に電気的に接続されている。制御装置8は、圧力センサ59の検出値に基づき第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58の開閉を制御することで、第1のグランドシール15Aに流入した気体の流れを切り換えるように構成されている。
【0097】
制御装置8は、ハード構成として、入出力装置81、ROMやRAM等で構成された記憶装置82、CPUやMPUなどで構成された処理装置83を備えている。入出力装置81には、圧力センサ59の検出信号(検出値)が入力される。記憶装置82には、後述のフローチャートに係る処理を含む制御プログラム及びその制御プログラムの実行に必要な各種情報が記憶されている。処理装置83は、記憶装置82から制御プログラムや各種情報を適宜読み込むと共に圧力センサ59から検出信号(検出値)を適宜取り込み、当該制御プログラムに従って演算処理を実行することで各種機能を実現する。入出力装置81は、処理装置83の演算結果に応じた指令信号を第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58へ出力する。
【0098】
次に、第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける制御装置による蒸気タービンの軸封システムの制御手順について
図9を用いて説明する。
図9は
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける制御装置の蒸気タービンの軸封システムに対する制御手順の一例を示すフローチャート図である。
【0099】
図9において、
図7に示す制御装置8は、蒸気タービン1Aの起動前、第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58を開状態にしておき(ステップS10)、ガス抽出器41を駆動させる(ステップS20)。ガス抽出器41が復水器3及び蒸気タービン1Aの内部から気体を吸引することで、復水器3及び蒸気タービン1Aの内部が真空に近い状態になる。なお、ガス抽出器41の駆動は、制御装置8とは異なる別の制御装置によって制御する構成も可能である。
【0100】
次に、制御装置8は、第1の開閉弁57を開状態に維持する一方、第2の開閉弁58を開状態から閉状態へ切り換える(ステップ30)。これにより、第1の排出系統5Aの第2ライン52のうち、主ライン53が連通した状態である一方、分岐ライン54が遮断された状態になる。
【0101】
次いで、蒸気タービン1Aを起動させる(ステップS40)。すなわち、蒸気供給源90の蒸気を主蒸気系統2を介して蒸気タービン1Aへ導入する。主蒸気加減弁23によって蒸気タービン1Aへ導入する蒸気流量や蒸気圧力を調節する。なお、蒸気タービン1Aの起動は、制御装置8とは異なる別の制御装置によって制御する構成も可能である。
【0102】
続いて、制御装置8は、圧力センサ59の検出値(第2ライン52を流れる流体の圧力)が圧力閾値を超えたか否かを判定する(ステップS50)。ステップS50においてNO(圧力センサ59の検出値が圧力閾値以下)の場合には、再びステップS50に戻り、圧力センサ59の検出値が圧力閾値を超えるまでステップS50を繰り返す。圧力閾値は、予め記憶装置82に記憶されており、蒸気タービン1Aの外部の空気(外気)が第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに流入不能な圧力に設定されている。圧力閾値は、例えば、1.2baraに設定されている。
【0103】
ステップS50においてYESの場合には、制御装置8は、ステップS60に進み、第1の開閉弁57を開状態から閉状態へ切り換えると共に、第2の開閉弁58を閉状態から開状態へ切り換える(
図7に示す第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58の状態を参照)。これより、第1の排出系統5Aの第2ライン52のうち、主ライン53が遮断状態になる一方、分岐ライン54が連通状態になる。これは、蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに流出した蒸気を第2ライン52の分岐ライン54を介して蒸気タービン1Aの中間段に回収するためである。換言すると、制御装置8は、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fの圧力が外気の流入を阻止可能な圧力になるまでは、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに流入する気体をガス抽出器41によって吸引するように制御する。
【0104】
次に、第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムの作用について
図7、
図10、
図11を用いて説明する。
図10は第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムのプラント負荷運転時の作用を示す説明図である。
図11は第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービンの軸封システムのプラント起動時の作用を示す説明図である。
図10及び
図11中、実線の白抜き矢印は外気の流れを、破線の白抜き矢印は蒸気の流れを示している。なお、
図7は負荷運転時の蒸気タービンプラントの状態を示している。
【0105】
本実施の形態に係る蒸気タービンプラントが負荷運転のとき、
図7に示す蒸気タービン1Aにおける軸方向一方側(
図7中、左側)に供給された高圧の蒸気は、軸方向他方側(
図7中、右側)に向かって圧力を低下させながら流れることで、タービンロータ11Aを回転駆動する。タービンロータ11Aを駆動した蒸気は、蒸気タービン1Aの軸方向他方側(1方向)から排出され、復水器3の内部で冷却されることで凝縮して水に戻る。これにより、復水器3は、真空に近い非常に低い圧力の状態となる。また、復水器3内に残留した不凝縮ガスがガス抽出器41によって抽出されることで、復水器3の真空度が高く保持される。
【0106】
このような負荷運転時の蒸気タービンプラントにおいては、蒸気タービン1Aの内部における軸方向一方側の蒸気導入(入口)側の圧力が高圧になる一方、軸方向他方側の蒸気排出(出口)側の圧力は復水器3の圧力に近い負圧となる。蒸気タービン1Aの蒸気排出(出口)側の圧力状態は、第1の実施の形態の蒸気タービン1の軸方向一方側及び軸方向他方側の圧力状態と同様な状態である。そのため、蒸気タービン1Aの蒸気排出(出口)側に配置された本実施の形態の第2のグランドシール16の機能及び作用が第1の実施の形態の第2のグランドシール16と同様なので、ここでの説明を省略する。
【0107】
一方、蒸気タービン1Aの蒸気導入(入口)側に配置された第1のグランドシール15Aにおいては、
図10に示すように、第3シール部15bよりも蒸気タービン1Aの内部側の圧力が導入蒸気と同等の高圧力(例えば、5bara程度)になっている。一方、第1のグランドシール15Aの第1シール部15aよりも蒸気タービン1Aの外部側の圧力は、外気の圧力、すなわち大気圧となっている。このため、蒸気タービン1Aの内部側の蒸気が第1のグランドシール15Aを介して相対的に低圧側な蒸気タービン1Aの外部へ流出しようとする。
【0108】
本実施の形態においては、蒸気タービン1Aの負荷運転時、
図7に示す第1の排出系統5Aの第2ライン52上の第1の開閉弁57が閉状態に制御されると共に第2の開閉弁58が開状態に制御されるので、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fが第2ライン52の分岐ライン54を介して蒸気タービン1Aの中間段に連通している。このため、
図10に示すように、蒸気タービン1Aの内部側の高圧蒸気が第1のグランドシール15Aの第3シール部15bを介して第2チャンバ15fに漏出し、第2チャンバ15fに流入した蒸気の大部分が第2ライン52の分岐ライン54を介して相対的に低圧な蒸気タービン1Aの中間段に導入される。蒸気タービン1Aの中間段に導入された蒸気はタービンロータ11Aを回転駆動するエネルギとなる。このように、蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aに漏出した蒸気は、蒸気タービン1Aの中間段に回収されて有効利用することができるので、エネルギ損失を抑制することができる。
【0109】
また、本実施の形態においては、
図7に示す第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eが第1の排出系統5Aの第1ライン51を介してガス抽出器41に接続されているので、当該第1チャンバ15eはガス抽出器41の吸引力によって大気圧よりも低圧状態になっている。ただし、第1チャンバ15eの圧力は、第1ライン51上に設けた圧力調整機構としての絞り56によってガス抽出器41の吸引力にもかかわらず微負圧になるように調整されている。このため、
図10に示すように、蒸気タービン1Aの外部側の空気(外気)が第1のグランドシール15Aの第1シール部15aを介して相対的に低圧(微負圧)の第1チャンバ15eに流入すると共に、蒸気タービン1Aの内部側から第2チャンバ15fに漏出した高圧蒸気の一部が第2シール部15cを介して相対的に低圧(微負圧)の第1チャンバ15eに流入する。このため、第1チャンバ15eに流入した外気(空気)及び蒸気が第1の排出系統5Aの第1ライン51を介してガス抽出器41によって吸引される。このように、外気(空気)が第1のグランドシール15Aを介して蒸気タービン1Aの内部へ流入することを、第1のグランドシール15Aにグランド蒸気を供給することなく阻止することができる。さらに、蒸気タービン1Aの内部側の蒸気が第1のグランドシール15Aを介して蒸気タービン1Aの外部へ流出することを抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの起動前から、
図7に示すガス抽出器41の駆動によって蒸気タービン1Aの内部全体が真空に近い状態に保持されている。すなわち、蒸気タービン1Aの内部における軸方向一方側の蒸気導入(入口)側及び軸方向他方側の蒸気排出(出口)側の両側が真空に近い非常に低い圧力となっている。
【0111】
本実施の形態においては、プラントの起動時、第1の排出系統5Aの第2ライン52上の第1の開閉弁57が開状態に制御されると共に第2の開閉弁58が閉状態に制御されるので(
図9のステップS30を参照)、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fは第2ライン52の主ライン53を介してガス抽出系統4に連通している。このため、当該第2チャンバ15fは、ガス抽出器41の吸引力によって真空度が高い非常に低い圧力になっている。そのため、
図11に示すように、蒸気タービン1Aの内部側に存在する真空に近い圧力の気体が第1のグランドシール15Aの第3シール部15bを介して第2チャンバ15fに流入し、第2ライン52の主ライン53を介してガス抽出器41によって吸引される。
【0112】
また、
図7に示す第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eは、第1の排出系統5Aの第1ライン51を介してガス抽出器41に接続されているので、当該第1チャンバ15eはガス抽出器41の吸引力によって大気圧よりも低圧状態になっている。ただし、第1チャンバ15eの圧力は、第1ライン51上に設けた圧力調整機構としての絞り56によってガス抽出器41の吸引力にもかかわらず微負圧になるように調整されている。このため、
図11に示すように、蒸気タービン1Aの外部側の空気(外気)が第1のグランドシール15Aの第1シール部15aを介して相対的に低圧(微負圧)の第1チャンバ15eに流入し、第1の排出系統5Aの第1ライン51を介してガス抽出器41によって吸引される。また、第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eに流入した外気(空気)の一部は、第2シール部15cを介して、ガス抽出器41の吸引力によって真空度が高い相対的に低圧の第2チャンバ15fにも流入する。第2チャンバ15fに流入した外気は、蒸気タービン1Aの内部へ流入することなく、第1の排出系統5Aの第2ライン52の主ライン53を介してガス抽出器41によって吸引される。
【0113】
このように、本実施の形態においては、蒸気タービンプラントの起動時であっても、外気(空気)が第1のグランドシール15Aを介して蒸気タービン1Aの内部へ流入することを、第1のグランドシール15Aにグランド蒸気を供給することなく阻止することができる。
【0114】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法について説明する。まず、第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第2の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成について
図12を用いて説明する。
図12は第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに対する第2の改良対象である既存の蒸気タービンプラントの概略構成を示す系統図及び既存の蒸気タービンの概略構成を示す模式図である。なお、
図12において、
図1~
図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0115】
図12に示す第2の改良対象(既存)の蒸気タービンプラント100Aの構成が
図5に示す第1の改良対象(既存)の蒸気タービンプラント100と異なる点は、蒸気タービン101Aが複流排気式ではなく単流排気式のタービンによって構成されていること及び蒸気タービン101Aの構成の違いに応じて第1のグランドシール115の運用方法が異なることである。
【0116】
具体的には、第2の改良対象の蒸気タービンプラント100Aにおける蒸気タービン101Aは、蒸気発生源90から供給された蒸気が分流せずにタービンロータ11Aの軸方向一方側(
図12中、左側)から軸方向他方側(
図12中、右側)に流れて1方向から排出される単流排気式である。タービンロータ11Aは、蒸気導入(入口)側である軸方向一方側から蒸気排出(出口)側である軸方向他方側に向かって動翼列を複数段有している。第2の改良対象の蒸気タービンプラント100Aのそれ以外の構成は、前述した第1の改良対象の蒸気タービンプラント100の構成と同様なものである。
【0117】
このように構成された第2の改良対象の蒸気タービンプラント100Aにおいては、プラントの起動時に、蒸気タービン101Aの軸封システムが次のように作動する。
【0118】
第1及び第2のグランドシール115、116の第2チャンバ115f、116fに対して高圧のグランド蒸気をグランド蒸気供給系統107、108を介して供給する。これにより、第2チャンバ115f、116fが蒸気タービン101Aの外部側の圧力(大気圧)及び蒸気タービン101Aの内部側の圧力(真空状態に近い圧力)よりも相対的に高圧になる。また、グランド蒸気ファン110を駆動させることで、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eを蒸気タービン101Aの外部側及び第2チャンバ115f、116fよりも相対的に低圧の微負圧にする。これにより、第2チャンバ115f、116fに供給されたグランド蒸気は、第3シール部115b、116bを介して相対的に低圧な蒸気タービン101の内部に流入すると共に、第2シール部115c、116cを介して相対的に低圧(微負圧)な第1チャンバ115e、116eに流入する。また、蒸気タービン101Aの外部側の空気(外気)が第1シール部115a、116aを介して相対的に低圧な第1チャンバ115e、116eに流入する。第1チャンバ115e、116eに流入したグランド蒸気及び外気は、第1及び第2の排出系統105、106を介してグランド蒸気ファン110によって吸引される。これにより、外気(空気)の蒸気タービン101Aの内部への流入を防止する。これは、第1の改良対象の蒸気タービンプラント100における蒸気タービン101の軸封システムの作動と同様なものである。
【0119】
一方、プラントの負荷運転時には、蒸気タービン101Aの軸封システムが次のように作動する。
【0120】
グランド蒸気ファン110を駆動させることで、第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eを蒸気タービン101Aの外部側よりも相対的に低圧の微負圧にする。また、第1のグランドシール115の第2チャンバ115fに対して蒸気タービン101Aの内部の蒸気導入(入口)側の高圧蒸気が漏出することで、第2チャンバ115fが第1チャンバ115e(微負圧)よりも相対的に高圧になる。このため、蒸気タービン101Aの内部の蒸気導入(入口)側から第2チャンバ115fに漏出した高圧蒸気は、第2シール部115cを介して相対的に低圧(微負圧)な第1チャンバ115eに流入すると共に、第1の供給系統107から第2の供給系統108を経て第2のグランドシール116の第2チャンバ116fに供給される。
【0121】
第2のグランドシール116の第2チャンバ116fは、蒸気タービン101A内部の蒸気導入(入口)側の高圧蒸気が第1のグランドシール115の第2チャンバ115fを介して供給されることで、蒸気タービン101A内部の蒸気排出(出口)側の圧力(復水器3内の圧力に近い負圧)及び第2のグランドシール116の第1チャンバ116eの圧力(微負圧)よりも相対的に高圧になる。このため、第2チャンバ116fに流入した高圧蒸気は、第3シール部116bを介して相対的に低圧な蒸気タービン101Aの内部の蒸気排出(出口)側に流入すると共に、第2シール部116cを介して相対的に低圧な第1チャンバ116eに流入する。
【0122】
また、外気(空気)が第1及び第2のグランドシール115、116の第1シール部115a、116aを介して相対的に低圧(微負圧)な第1チャンバ115e、116eに流入する。第1及び第2のグランドシール115、116の第1チャンバ115e、116eに流入した外気(空気)及び高圧蒸気は、第1及び第2の排出系統105、106を介してグランド蒸気ファン110によって吸引される。これにより、外気の第1及び第2のグランドシール115、116を介した蒸気タービン101A内部への流入を防止する。
【0123】
次に、上述した第2の改良対象の既存の蒸気タービンプラントに対する第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法について
図7及び
図12を用いて説明する。
【0124】
上述したように、第2の改良対象の蒸気タービンプラント100Aにおいては、
図12に示すように、蒸気タービン101Aが単流排気式のタービンによって構成されている。蒸気タービン101Aの軸封システムは、タービンロータ11Aの軸方向の一方側(
図12中、左側)及び他方側(
図12中、右側)にそれぞれ配置された第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116にグランド蒸気を供給するグランド蒸気供給系統と、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体を外部へ導き排出するための排出系統とを備えている。グランド蒸気供給系統は、第1のグランドシール115に接続された第1の供給系統107と、第2のグランドシール116に接続された第2の供給系統108とを含んで構成されている。排出系統は、第1のグランドシール115に接続された第1の排出系統105と、第2のグランドシール116に接続された第2の排出系統106と、第1の排出系統105及び第2の排出系統106に接続されたグランド蒸気ファン110とで構成されている。
【0125】
このような構成の第2の改良対象の蒸気タービンプラント100Aに対して、次の変更を施すことで、第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに相当する構成に改良することが可能である。
【0126】
第1に、
図12に示す既存の蒸気タービン101Aの軸封システムにおける第1の供給系統107及び第2の供給系統108を含むグランド蒸気供給系統を廃止する。この変更により、
図7に示す第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン1Aの軸封システムのように、グランド蒸気の供給を不要とする構成に改良することができる。
【0127】
第2に、
図12に示す蒸気タービン101Aの第2のグランドシール116の第1シール部116aと第2シール部116cと第3シール部116bのうち、第2シール部116cを廃止する。この変更により、第1シール部116aと第2シール部116cとによって区画された第1チャンバ116e、及び、第2シール部116cと第3シール部116bとによって区画された第2チャンバ116fを有するシール部から、第1シール部116aと第3シール部116bとによって区画された1つのチャンバのみを有するシール部に変更される。すなわち、既存の第2のグランドシール116を第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける
図7に示す蒸気タービン1Aの第2のグランドシール16(第1シール部16aと第2シール部16bとによって区画されたチャンバ16dのみを有するシール部)に相当する構成に改良することが可能である。
【0128】
第3に、
図12に示す既存の蒸気タービン101Aの軸封システムにおける排出系統の一部を構成するグランド蒸気ファン110を廃止する。
【0129】
第4に、
図12に示す既存の蒸気タービン101Aの軸封システムの排出系統のうち、第2の排出系統106におけるグランド蒸気ファン110に接続されていた部分を、第2のグランドシール116に流入した気体を復水器3を介さずにガス抽出器41に導くように、ガス抽出系統4に接続する。さらに、既存の第2の排出系統106における既存の第2のグランドシール116の第1チャンバ116eに接続されていた一方側を、既存の第2のグランドシール116を改良して得られた本実施の形態の第2のグランドシール16のチャンバ16dに相当する部分に接続する。この変更により、
図7に示す第2の実施の形態に係る第2の排出系統6に相当する構成に改良することが可能である。
【0130】
第5に、
図12に示す既存の排出系統のうち、第1のグランドシール115の第1チャンバ115eに接続されている1つの排出ラインで構成された第1の排出系統105を、一方側が第1チャンバ115eに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第1ラインと、一方側が第2チャンバ115fに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2ラインの2つの排出ラインによって構成するように変更する。さらに、第2ラインを、第2チャンバ115fとガス抽出系統4とを接続する主ラインと、主ラインから分岐し蒸気タービン101Aにおける軸方向一方側と軸方向他方側との間の中途位置(タービンロータ11Aの中間段)に接続される分岐ラインとを含むように構成する。加えて、第2ラインの主ライン上に第1の開閉弁を設けると共に、第2ラインの分岐ライン上に第2の開閉弁を設ける。また、第1ライン上に圧力調整機構(例えば、絞り)を設ける。この変更により、
図7に示す本実施の形態に係る第1の排出系統5Aに相当する構成に改良することが可能である。
【0131】
このように、
図12に示す第2の改良対象の既存の蒸気タービンプラント100Aを第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントに改良すると、復水器3の真空度を保持するための吸引力の強いガス抽出器41によって、第1及び第2のグランドシール15A、16に流入した外気を蒸気タービン1Aの内部へ流入させることなく吸引することができる。このため、第1及び第2のグランドシール15A、16に対してグランド蒸気を供給せずとも、第1及び第2のグランドシール15A、16を介した外気の蒸気タービン1A内部への流入を防止することができる。
【0132】
上述した第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントによれば、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントと同様に、復水器3の真空度を保持するためのガス抽出器41を用いて第1及び第2のグランドシール15A、16に流入する外気を吸引するので、第1及び第2のグランドシール15A、16に対してグランド蒸気を供給することなく、第1及び第2のグランドシール15A、16を介した外気の蒸気タービン1の内部への流入を防止することができる。このため、蒸気タービン1Aの軸封システムでは、グランド蒸気を第1及び第2のグランドシール15A、16に供給するための設備が不要である。すなわち、蒸気タービン1A内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービン1Aの軸封システムを簡素化することができる。さらに、既存の軸封システムでグランド蒸気として供給していた蒸気を蒸気タービン1Aに供給することが可能となるので、蒸気タービン1Aの出力を増加させることができる。また、地熱蒸気を用いるプラントの場合には、塩化物や硫化物等の腐食性を有する成分を含む地熱蒸気をグランド蒸気として利用する必要がないので、第1及び第2のグランドシール15A、16の腐食のリスクを低減することができる。
【0133】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおける蒸気タービン1Aは、蒸気発生源90から供給された蒸気が分流せずにタービンロータ11Aの軸方向一方側から軸方向他方側に流れて1方向から排出される単流排気式のタービンによって構成されている。蒸気タービン1Aの第2のグランドシール16は、蒸気タービン1Aの外部側から内部側に向かって間隔をあけて配置された第1シール部16aと第2シール部16bとを含み、第1シール部16aと第2シール部16bとによって区画され圧力調整が可能なチャンバ16dを1つのみ有している。第2の排出系統6は一方側が第2のグランドシール16のチャンバ16dに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2排出ラインによって構成されている。
【0134】
この構成によれば、蒸気タービン1Aが単流排気式である場合において、グランド蒸気の供給を前提とする既存のグランドシールの構造(シール部が3つ及びチャンバが2つ)よりも第2のグランドシール16の構造を簡素化することができる。
【0135】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、蒸気タービン1Aの軸封システムの第2の排出系統6としての第2排出ラインが、流体の圧力損失により圧力を調整する圧力調整機構の設置が回避されるように構成されている。
【0136】
この構成によれば、ガス抽出器41の吸引力が第2の排出系統6を介して第2のグランドシール16のチャンバ16dに作用する際に、圧力調整機構の影響を受けることがない。このため、当該チャンバ16dの圧力をガス抽出器41の吸引力によって確実に高真空の状態に保持することができる。
【0137】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、蒸気タービン1Aが単流排気式のタービンによって構成されており、第1のグランドシール15Aが、蒸気タービン1Aの外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部15aと第2シール部15cと第3シール部15bとを含み、第1シール部15aと第2シール部15cとによって区画され圧力調整が可能な第1チャンバ15e及び第2シール部15cと第3シール部15bとによって区画され圧力調整が可能な第2チャンバ15fを有する。また、第1の排出系統5Aは、一方側が第1チャンバ15eに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第1ライン51と、一方側が第2チャンバ15fに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2ライン52とで構成されている。第2ライン52は、第2チャンバ15fとガス抽出系統4とに接続される主ライン53と、主ライン53から分岐し蒸気タービン1Aにおける軸方向一方側と軸方向他方側との間の中途位置に接続される分岐ライン54とを有する。第2ライン52の主ライン53上に第1の開閉弁57が設けられていると共に、第2ライン52の分岐ライン54上に第2の開閉弁58が設けられている。
【0138】
この構成よれば、単流排気式の蒸気タービン1Aの負荷運転時に第1の開閉弁57を閉状態にすると共に第2の開閉弁58の開状態にすることで、蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fへ流出した高圧の蒸気を第2ライン52の分岐ライン54を介して蒸気タービン1Aに回収することができる。これにより、第1のグランドシール15Aに漏出した高圧蒸気をタービンロータ11Aの駆動エネルギとして有効活用することができるので、蒸気タービン1Aの効率低下を抑制することができる。
【0139】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントにおいては、第1の排出系統5Aの第1ライン51上に圧力調整機構としての絞り56が設けられている。
【0140】
この構成によれば、第1ライン51を流れる流体には絞り56によって圧力損失が生じるので、ガス抽出器41の吸引力にもかかわらず第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eの圧力を大気圧よりも若干低い微負圧に調整することが可能である。当該第1チャンバ15eの圧力を微負圧に保持することで、蒸気タービン1Aの負荷運転時に蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに漏出した高圧蒸気が蒸気タービン1Aに回収されずに第1チャンバ15e及び第1ライン51を介してガス抽出器41に吸引されることを抑制することができる。
【0141】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントは、第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15f内の圧力に対応する圧力を検出する圧力センサ59と、第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58を制御する制御装置8とを備える。制御装置8は、蒸気タービン1Aの起動前において第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58を開状態にし、蒸気タービン1Aの起動時において第1の開閉弁57を開状態にする一方、第2の開閉弁58を閉状態にし、蒸気タービン1Aの負荷運転時において圧力センサ59の検出値が予め定められた圧力閾値を超えている場合には、第1の開閉弁57を閉状態にする一方、第2の開閉弁58を開状態にするように構成されている。
【0142】
この構成よれば、制御装置8が蒸気タービン1Aの起動前や起動時や負荷運転時の各状態に応じて第1の開閉弁57及び第2の開閉弁58の開閉を制御することで、蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aへ漏出した高圧蒸気の蒸気タービン1Aへの回収および第1のグランドシール15Aを介した蒸気タービン1Aの内部への外気の流入の防止を自律的に行うことができる。
【0143】
また、上述した第2の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法は、第1の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法と同様に、グランド蒸気供給系統107、108を廃止すると共に、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116に流入した気体が復水器3を介さずにガス抽出器41に導かれるように、排出系統105、106における他方側をガス抽出系統4に接続する変更を行うものである。
【0144】
この改良方法によれば、復水器3の真空度を保持するためのガス抽出器41を用いて第1及び第2のグランドシールに流入する外気を吸引することが可能となるので、グランド蒸気供給系統107、108を廃止しても、第1及び第2のグランドシールを介した外気の蒸気タービン内部への流入を防止することできる。したがって、蒸気タービン内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービンの軸封システムを簡素化することができる。
【0145】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法においては、既存の蒸気タービン101Aが蒸気発生源90から供給された蒸気が分流せずにタービンロータ11Aの軸方向一方側から軸方向他方側に流れて1方向から排出される単流排気式のタービンによって構成され、第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116がそれぞれ蒸気タービン101Aの外部側から内部側に向かって間隔をあけて順に配置された第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとを含むと共に第1シール部115a、116aと第2シール部115c、116cとによって区画された第1チャンバ115e、116e及び第2シール部115c、116cと第3シール部115b、116bとによって区画された第2チャンバ115f、116fを有し、排出系統105、106の一方側が第1のグランドシール115及び第2のグランドシール116の第1チャンバ115e、116eに接続されている構成に対する改良方法である。当該改良方法は、第2のグランドシール116における第2シール部116cを廃止して第1シール部と第3シール部とによって1つのチャンバが区画されるように第2のグランドシール116を変更するものである。
【0146】
この改良方法によれば、既存の蒸気タービン101Aが単流排気式である場合に、グランド蒸気の供給を前提とする既存の第2のグランドシール116よりも構造の簡素化な第2のグランドシール16を利用することができる。
【0147】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法においては、既存の蒸気タービン101Aが単流排気式のタービンによって構成され、蒸気タービン101Aの軸封システムの排出系統が第1のグランドシール115の第1チャンバ115eに接続された排出ラインのみで構成される第1の排出系統105と第2のグランドシール116の第1チャンバ116eに接続された排出ラインのみで構成される第2の排出系統106とを有する構成に対する改良方法である。当該改良方法は、第1の排出系統105を、一方側が第1チャンバ115eに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第1ライン51と、一方側が第2チャンバ15fに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2ライン52とで構成するように変更する共に、第2ライン52を、第2チャンバ115fとガス抽出系統4とを接続する主ライン53と、主ライン53から分岐し蒸気タービン1Aにおける軸方向一方側と軸方向他方側との間の中途位置に接続される分岐ライン54とを含むように構成する。さらに、第2ライン52の主ライン53上に第1の開閉弁57を設けると共に、第2ライン52の分岐ライン54上に第2の開閉弁58を設ける。
【0148】
この改良方法によれば、単流排気式の蒸気タービン1Aの負荷運転時に第1の開閉弁57を閉状態にすると共に第2の開閉弁58の開状態にすることで、蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに漏出した高圧蒸気を第1の排出系統5Aの第2ライン52の分岐ライン54を介して蒸気タービン1Aに回収することができる。これにより、第1のグランドシール15Aに漏出した高圧蒸気をタービンロータ11Aの駆動エネルギとして有効活用することができるので、蒸気タービン1Aの効率低下を抑制することができる。
【0149】
また、本実施の形態に係る蒸気タービンプラントの改良方法においては、第1ライン51上に圧力調整機構としての絞り56を設ける。
【0150】
この改良方法によれば、第1ライン51を流れる流体には絞り56によって圧力損失が生じるので、ガス抽出器41の吸引力にもかかわらず第1のグランドシール15Aの第1チャンバ15eの圧力を大気圧よりも若干低い微負圧に調整することが可能である。当該第1チャンバ15eの圧力を微負圧に保持することで、蒸気タービン1Aの負荷運転時に蒸気タービン1Aの内部から第1のグランドシール15Aの第2チャンバ15fに漏出した高圧蒸気が蒸気タービン1Aに回収されずに第1チャンバ15e及び第1ライン51を介してガス抽出器41に吸引されることを抑制することができる。
【0151】
[その他の実施形態]
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施の形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0152】
例えば、上述した第2の実施の形態においては、一方側が第1チャンバ15eに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第1ライン51と、一方側が第2チャンバ15fに接続されると共に他方側がガス抽出系統4に接続される第2ライン52とによって第1の排出系統5Aを構成する例を示した。しかし、蒸気タービン1A内部への外気の流入を防止しつつ、蒸気タービン1Aの軸封システムを簡素化する観点から、第1の排出系統を第1ライン51のみで構成し、第2ライン52を削除する構成も可能である。この場合、第1ライン51上の絞り56も削除することが好ましい。
【符号の説明】
【0153】
1、1A…蒸気タービン、 3…復水器、 4…ガス抽出系統、 5…第1の排出系統(第1排出ライン)、 5A…第1の排出系統、 6…第2の排出系統(第2排出ライン)、 8…制御装置、 11、11A…タービンロータ、 12…第1シャフト部、 13…第2シャフト部、 14…ケーシング、 15、15A…第1のグランドシール、 15a…第1シール部、 15b…第2シール部又は第3シール部、 15c…第2シール部、 15d…チャンバ、 15e…第1チャンバ、 15f…第2チャンバ、 16…第2のグランドシール、 16a…第1シール部、 16b…第2シール部、 16d…チャンバ、 41…ガス抽出器、 51…第1ライン、 52…第2ライン、 53…主ライン、 54…分岐ライン、 56…絞り(圧力調整機構)、 57…第1の開閉弁、 58…第2の開閉弁、 59…圧力センサ、 90…蒸気発生源、 101、101A…既存の改良対象の蒸気タービン、 105…既存の第1の排出系統(排出ライン)、 106…既存の第2の排出系統(排出ライン)、 107…第1の供給系統(グランド蒸気供給系統)、 108…第2の供給系統(グランド蒸気供給系統)、 115…既存の第1のグランドシール、 115a…第1シール部、 115c…第2シール部、 115b…第3シール部、 115e…第1チャンバ、 115f…第2チャンバ、 116…既存の第2のグランドシール、 116a…第1シール部、 116c…第2シール部、 116b…第3シール部、 116e…第1チャンバ、 116f…第2チャンバ、 G1…第1隙間、 G2…第2隙間