(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】カリウムチャンネル開口薬としての有用な新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 275/30 20060101AFI20240417BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20240417BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C07C275/30 CSP
A61K31/17
A61P27/16
(21)【出願番号】P 2022122598
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2020163507の分割
【原出願日】2018-02-27
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519311695
【氏名又は名称】アコージア セラピューティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ベーズ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-008479(JP,A)
【文献】特表2013-540750(JP,A)
【文献】特表2003-503385(JP,A)
【文献】国際公開第2010/139481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物:
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレア。
【請求項2】
- 請求項1に記載の化合物、及び
- 医薬的に許容される担体又は希釈剤
を含む医薬組成物又は医薬。
【請求項3】
コルチ器官の感覚有毛細胞の損傷又は喪失後の内耳難聴の予防または治療のための、医薬組成物または医薬として使用するための、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
コルチ器官の感覚有毛細胞の損傷又は喪失後の内耳難聴の予防または治療のための、活性成分として((S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレアを含む医薬組成物または医薬。
【請求項5】
コルチ器官の感覚有毛細胞の損傷又は喪失後の内耳難聴の予防または治療のための医薬組成物または医薬の調製のための、(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレアの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリウムチャンネル開口薬として、特にKv7.4カリウムチャンネルの開口薬として有用な新規化合物に関する。本発明はまた、これら化合物を含む医薬及び医薬組成物、並びにヒトの医学及び獣医学におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国の人口の約10%が難聴の影響を受けていると推定される。これらの症例の大多数は、発話を聞き理解する能力に影響を与える高周波聴力損失によって最初に特徴付けられる、いわゆる感音難聴(Sensorineural Hearing Loss)に起因する可能性がある。この感音難聴又は感音性難聴(sensorineural deafness)は、主に「有毛」細胞として知られる内耳の細胞の損傷に起因する。これらの非常に複雑な感覚細胞は、外側から、鼓膜及び中耳の骨を介して蝸牛に伝えられる音の振動を検出する。これらの感覚有毛細胞は、いわゆるコルチ器官にある。
【0003】
哺乳動物は、2つの全く異なる有毛細胞、すなわち内有毛細胞(IHC」)及び外有毛細胞(OHC)を備える。IHCは、求心性神経に関連する聴覚の実際の受容体であり、一方、OHCは、内耳に達する音の振動を機械的に増幅する働きをする。このプロセス、「蝸牛増幅」は、哺乳類の聴覚の感度及び高周波数分解能にとって極めて重要である。結果として、難聴の多くの場合は、機能不全又はOHCの喪失に起因する。
【0004】
これに関連して、哺乳動物の体の他の部分と同様に、カリウムチャンネルが細胞、ここでは、OHCの正常な機能に重要な役割を果たすことが知られている。外有毛細胞からのK+出口の主要な経路は、カリウムチャンネルKv7.4によって表される。このチャンネルは、コルチ器官の感覚外有毛細胞(OHC)で高発現される。この事実は、他の研究結果と共に、カリウムチャンネル、特にKv7.4が難聴の予防及び治療のための有望な標的であることを示唆する。
【0005】
現時点で、難聴は通常、補聴器で処置しなければならず、これは、その周波数範囲の難聴を克服するために、プリセット周波数で音を増幅する。他のアプローチにおいて、難聴は、蝸牛神経を直接刺激する蝸牛インプラントで処置しなければならない。
【0006】
既に上述したように、カリウムチャンネルは、ほとんどの細胞型に見られ、そして多種多様な細胞機能を制御する。従って、カリウムチャンネル開口薬である化合物は、多種多様な障害の予防又は治療にとって重要であり得る。これに関連して、カリウムチャンネルKv7.4は、上記のように、ニューロンの興奮性の調節において重要な役割を果たすと考えられる。
【0007】
異常なカリウムチャンネル活性に関連する障害は、様々な神経変性障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病等の発端であると考えられる。さらなる障害は、てんかん等の神経学的状態、又はうつ病、躁病及び統合失調症等の認知障害及び精神障害である。
【0008】
他の重要な障害は、様々な種類の疼痛、すなわち、神経因性疼痛、慢性疼痛、急性疼痛、及び片頭痛等の頭痛である。
【0009】
他の障害が、カリウムチャンネル開口薬の機能を有する化合物の標的であり得るという示唆もある。例えば、カリウムチャンネルKv7.4の活性化は、心臓保護に有用であると推測される。
【0010】
従って、本発明の目的は、哺乳動物における異常なカリウムチャンネル活性に関連する障害に対処することが出来る、すなわち、予防又は治療することが出来る新規な一群の化合物を提供することである。必須ではないが、好ましくは、治療されるべき前記障害は、コルチ器官における損傷後の内耳難聴又は感覚有毛細胞の喪失である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】インビボでの聴覚毒性薬剤誘導聴覚喪失モデルにおける聴覚保護化合物を調べるための実験計画の概略図。
【
図2】0日目のCAP反応の定量分析。(A)ACOU001による前処理後のCAP閾値の喪失。(B)聴覚毒性薬物単独での処理と比較した、ACOU001及びカナマイシン/フロセミドの局所投与後の聴覚保護。
【
図3】異なる観測辞典でのCAP応答の定量分析。聴覚毒性薬剤単独による処理と比較した、ACOU001及びカナマイシン/フロセミドによる処理の7日後(A)及び21日後(B)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、一般式(I):
【化1】
(式中、
n=0又は1であり、
RLが、非置換又は置換シクロアルキル基、好ましくは、ビシクロアルキル基、非置換又は置換フェニル基、非置換又は置換チエニル基又はシクロペンタチエニル基及び非置換又は置換インダニル基からなる群から選択され、これは、任意にヘテロ原子を含み、及び
RRが、非置換若しくは置換フェニル基又は非置換若しくは置換ベンジル基からなる群から選択される置換基であり、これは、任意にヘテロ原子を含む)
で表される新規化合物、又はその立体異性体、互変異性体、プロドラッグ若しくは塩、好ましくはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0013】
前記ヘテロ原子が、硫黄(S)である式(I)の化合物が好ましい。
【0014】
本発明によれば、RLは、好ましくは5~10個の炭素原子、特に6~8個の炭素原子を含むシクロアルキル基又はビシクロアルキル基から選択される。
【0015】
本発明の他の実施形態において、RLは、好ましくは、少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換されているフェニル基から選択されることが好ましい。
【0016】
本発明の他の好ましい基において、RLは、好ましくは少なくとも1個のF原子若しくはCl原子で置換されているチエニル基又はシクロペンタチエニル基から選択される置換基である。
【0017】
本発明の化合物の他の好ましい実施形態において、RLは、好ましくは少なくとも1個のF原子又はCl原子で置換されているインダニル基から選択される。
【0018】
本発明によれば、RRは、好ましくは置換フェニル基又は置換ベンジル基からなる群から選択される置換基である。RRとして選択されるこれら好ましい置換基もまた、置換され得る。結果として、好ましい実施形態の第1の基において、これらの置換基は、F、SF5、CF3、OCF3からなる(第1)基から選択され、ここで、SF5は、前記置換基としてさらに好ましい。好ましい実施形態の第2の基において、これらの置換基は、ジメチルアミノ-、ピロリジノ-、及びモルフォリノ-からなる(第2)群から選択される。
【0019】
ここで、置換基RL及びRRとしてそれぞれ使用されることが好ましい基及び置換基を考慮すると、本発明による好ましい化合物の異なる基が定義及び言及され得る。これらの基は次の通りである:
- これらの化合物において置換基RLが、フェニル基又はシクロアルキル基又はシクロペンタチエニル基又はインダニル基から選択される場合、及びこれらの化合物において置換基RRが、上記の第1の置換基群からの置換基で置換されている場合、本発明の化合物が好ましい。
- これらの化合物において置換基RLが、チエニル基である場合、及びこれらの化合物において置換基RRが、上記の第1の置換基の群又は上記の第2の置換基の群からの置換基で置換されている場合、本発明の化合物が好ましい。
- これらの化合物において置換基RLが、シクロアルキル基又はビシクロアルキル基から選択される場合、及び置換基RRが、上記の第2の置換基群からの置換基で置換される場合、本発明の化合物が好ましい。
【0020】
本発明によれば、以下の化合物が好ましい、すなわち、
(1R,2R,4S)-レル-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1R,2R,4S)-レル-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1R,2R,4S)-レル-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
(1S,2R,4R)-レル-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-レル-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-レル-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-レル-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド
(1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド、であり、
ここで、以下の化合物がさらに好ましい:
- (1R,2R,4S)-レル-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
- (1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
- (1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメチル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
- (1S,2S,4R)-N-(3-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
- (1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
- (1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド
- (1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル-フェニル)アセトアミド
- (1S,2R,4R)-2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル-N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-フェニル)アセトアミド。
【0021】
本発明によれば、以下の化合物も好ましい、すなわち、
p-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド
p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド
p-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)ベンズアミド
p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド
p-クロロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド
p-フルオロ-N-(4-(トリフルオロメチル)ベンジル)ベンズアミド、であり、
ここで、以下の化合物がさらに好ましい、
- p-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド
- p-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ベンズアミド。
【0022】
本発明によれば、以下の化合物もまた好ましい、すなわち、
5-クロロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-フルオロ-N-(4-トリフルオロメトキシ)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-フルオロ-N-(4-(triフルオロメチル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-クロロ-N-(4-(triフルオロメチル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル)-フェニル)-2-(チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル)-フェニル)-2-(チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル)フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル)-フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル)-フェニル)-2-(5-フルオロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ピロリジン-1-イル)-フェニル)-2-(5-フルオロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)-フェニル)-2-(チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)-フェニル)-2-(チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)-フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)-フェニル)-2-(5-フルオロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2-メチル-4-(ジメチルアミノ-1-イル)-フェニル)-2-(5-フルオロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(モルフォリノ-1-イル)-フェニル)-2-(チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(モルフォリノ-1-イル)-フェニル)-2-(5-フルオロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
N-(2,6-ジメチル-4-(モルフォリノ-1-イル)-フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチルウレア
(S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチルウレア、であり、
ここで、以下の化合物がさらに好ましい:
- 5-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
- 5-フルオロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミド
- N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル)フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
- (S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチルウレア
- (S)-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)-1-(2-クロロ-5,6-ジヒドロ-4H-シクロペンタ[b]チオフェン-6-イル)-1-メチルウレア
【0023】
本発明によれば、以下の化合物もまた好ましい、すなわち、
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレア
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレア
(S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレア
(S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ウレア、であり、
ここで、以下の化合物がさらに好ましい:
- (S)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1イル)-1-メチルウレア
- (S)-1-(5-クロロ-2,3-ジヒドロ-1-H-インデン-1-イル)-1-メチル-3-(3-ペンタフルオロスルファニルフェニル)ウレア。
【0024】
哺乳動物における異常なカリウムチャンネル活性に関連する障害の治療又は予防のための本発明の化合物の使用が好ましい。特に、本発明によれば、治療されるべき前記障害は、コルチ器官における損傷後の内耳難聴又は感覚有毛細胞の喪失である。
【0025】
結果として、本発明はさらに、以下を含む医薬組成物又は医薬を提供する:
- 上記で請求され及び定義された少なくとも1つの本発明の化合物、及び
- 医薬的に許容される担体又は希釈剤。
【0026】
最終的に、本発明は、そのような治療を必要とする哺乳動物における障害を治療するための方法を提供し、ここで、
- 前記障害が、異常なカリウムチャンネル活性に関連する障害、特にコルチ器官における損傷後の内耳難聴又は感覚有毛細胞の喪失を含み、及び
- 前記方法が、前記哺乳動物に治療上有効量の請求項に記載の化合物及び上記で定義された化合物を投与することを含む。
【0027】
特に、上記哺乳動物は、ヒトである。
【0028】
本発明によれば、上記の本発明の組成物又は医薬が、少なくとも1つの本発明の化合物のみではなく、少なくとも1つの追加の活性医薬成分も含む場合がさらに好ましい。そのような組み合わせ組成物又は組み合わせ薬剤は、少なくとも1つの障害を同時に又は少なくとも2つの障害を並行して治療するための本発明の方法において使用され得る。前記追加の活性医薬成分は、例えば、特定の疾患のための標準的な薬物治療として使用される化合物であり得る。内耳の障害を参照すると、本発明の組成物又は医薬において、本発明の化合物は、好ましくは、突発性難聴(ドイツ語:ホルストゥルツ)を治療するための標準的な薬物(例えば、デキサメタゾン)と組み合わせられ得る。
【0029】
特許請求の範囲及び全体の説明において用いられる用語は、以下のように定義される。
【0030】
本明細書で使用される用語「直鎖」は、側鎖が結合していない分子中の原子の非分岐鎖の形態の化学構造を意味する。好ましくは、前記(非分岐)鎖は、開鎖である。それとは対照的に「分岐」構造は、分子中の原子鎖に結合した1つ以上の側鎖を含む。
【0031】
本明細書で使用される用語「置換(substituted)」は、対応する基における何れか又はそれ以上の水素が、他の原子又は基によって置き換えられていることを意味する。例えば、「置換シクロアルキル」は、1つ以上の水素が、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ又は他の原子若しくは基によって置換されているシクロアルキル基を指す。「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0032】
用語「アルキル」は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子の(直鎖又は分岐鎖)炭化水素基を指す。一般に、本明細書では、用語C1、C2、C6、C20等は、対応する基に存在するC原子(炭素原子)の数を指す。アルキル基の例は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、及びペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)を含む。用語「シクロアルキル」は、飽和環状炭化水素環系を指す。例示的な基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、アダマンチル等を含む。
【0033】
用語「ヘテロ原子」は、酸素、硫黄及び窒素を含むものとする。
【0034】
本発明による化合物の定義は、全ての可能な「立体異性体」及びそれらの混合物を含む。特に、特定の活性を有するラセミ体及び単離された光学異性体が含まれる。ラセミ体は、例えば、分別晶析法、ジアステレオマー誘導体の分離若しくは結晶化、又はキラルカラムクロマトグラフィーによる分離等の物理的方法によって分解され得る。個々の光学異性体は、例えば光学的に活性な酸との塩形成とそれに続く結晶化等の従来の方法からのラセミ体から得られ得る。
【0035】
用語「互変異性体」は、互変異性化と称される化学反応によって容易に相互変換する本発明の化合物の構成異性体を指す。この反応は、一般に、単結合及び隣接する二重結合の転換を伴って、水素原子又はプロトンの形式的な移動をもたらす。
【0036】
式(I)の本発明の化合物はまた、「プロドラッグ」形態を有し得る。プロドラッグは、医薬品の品質(例えば、溶解度、製造等)を向上させることが知られているため、本発明の化合物は、プロドラッグの形態で送達され得る。「プロドラッグ」は、そのようなプロドラッグが、哺乳動物対象に投与されたときに、インビボで本発明の活性親薬物を放出する何れかの共有結合した担体を含むことが意図される。プロドラッグは、本発明の化合物を含み、ここで、例えば、ヒドロキシル、アミノ又は他の基は、プロドラッグが投与された際に開裂し遊離ヒドロキシル、遊離アミノ、又はその他のそれぞれを形成する何れかの基に結合される。プロドラッグの例は、限定されないが、本発明の化合物中のアルコール及びアミン官能基のアセテート、ホルメート、及びベンゾエート誘導体を含む。様々な形態のプロドラッグが、当該技術分野において公知である。これに関連して、本発明によれば、プロドラッグエステル又はプロドラッグペプチドは、プロドラッグ化合物として使用され得る。特定の場合において、例えばビオチン又はマレイミドプロピオン酸等の細胞浸透促進分子を、任意に適切なスペーサー分子を介して、一級アミノ基にカップリングすることによって、又はこのアミノ基のアシル化によって、バイオアベイラビリティ、従って本発明による化合物の有効性を改善することが可能である。
【0037】
「医薬的に許容される塩」という句は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作ることによって修飾される開示された化合物の誘導体を指す。例としては、限定されないが、アミン等の塩基性基の無機酸塩又は有機酸塩; 並びにカルボン酸等の酸性基のアルカリ及び有機塩を含む。医薬的に許容される塩は、例えば、無毒の無機又は有機酸から形成された従来の無毒の塩又は四級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような従来の無毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、及び硝酸等の無機酸から誘導されるもの; 並びに酢酸、プロピオン酸等の有機酸から調製された塩を含む。
【0038】
「医薬的に許容される担体」という句及び「医薬的に許容される希釈剤」は、生物学的に活性な薬剤を動物、特に哺乳動物に送達するために当該技術分野において一般に認められる媒体を指す。そのような媒体は、当該技術分野において周知である。
【0039】
「治療有効量」という句は、単独又は組み合わせで投与された場合に有効である本発明による化合物の量を含むことが意図される。この句はまた、哺乳動物における最終分化細胞の内因性の再生を刺激することに有効である、特許請求の範囲に記載の化合物の組み合わせの量を含むことが意図される。好ましくは、前記化合物の組み合わせは、相乗的組み合わせである。そのような相乗効果は、組み合わせて投与した際の化合物の効果が、単独薬剤として単独で投与された時の化合物の相加効果よりも大きい場合に生じる。
【0040】
本明細書で使用される用語「治療すること(treating)」又は「治療(treat)」は、哺乳動物、特にヒトにおける障害の状態の治療を包含し、そして以下を含む、
- 哺乳動物において障害の状態が発生することを防ぐこと、例えば、前記哺乳動物が、その障害に罹りやすいが、その障害を有すると診断されていない等、
- 障害の状態を阻害すること、すなわち、さらなる発達を止めること、及び/又は
- 障害の状態を緩和すること、すなわち、障害の症状を改善すること。
【0041】
本発明によれば、特許請求の範囲に記載の化合物及び特許請求の範囲に記載の医薬組成物/医薬は、異なる剤形で哺乳動物に投与され得る。損傷を受けた細胞又は組織(例えば、哺乳動物の蝸牛に)への化合物の直接の投与を可能にする剤形が好ましい。従って、本発明の一実施形態によれば、非経口剤、特に注射剤が好ましい。これらの場合、内耳上への又は内耳内への投与は、例えば、中耳への注射によって、内耳の円形又は楕円形窓への投与によって、又は内耳への(直接)注射によって行われる。これに関連して、例えば、ポンプ又は類似の装置が使用され得る。好ましい剤形として、ゲル又は類似の材料もまた、言及されなければならない。例えば、前記ゲルは、それらのゼリー状の粘度のために、中耳に投与され得、そして長期間にわたり活性剤を放出することができる。
【0042】
化合物(医薬組成物、医薬)を漸進的に投与(例えば、経口剤形で)することも可能である。これらの剤形は、顆粒剤、散剤、錠剤又はカプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等を含む。
【0043】
全ての剤形は、製薬手順において従来使用されているそれ自体既知の技術によって、例えば、混合、造粒又は積層法によって製造され得る。医薬組成物又は医薬は、さらに滅菌され得る。
【0044】
本発明による化合物又は医薬組成物/医薬の正確な投与量(治療有効量)は、受領者、その年齢及び体重、現在の臨床状態、投与時間、剤形、投与方法、実際に使用される化合物、そして適切な場合に用いられる他の医薬に従って適切に選択され得る。
【0045】
成人受領者についての用量範囲、好ましくは、経口投与用量範囲は、0.01~10mg/kg体重、好ましくは0.05~10mg/kg体重、より好ましくは0.05~5mg/kg体重の間で選択され得る。コルチ器官における損傷又は感覚有毛細胞の喪失後の内耳難聴の治療において、投与量は、「治療される内耳の数」及び/又は「投与回数」に関連され得る。その理由は、ある期間、例えば、数日~数週間/月の間、好ましくは数日の間隔(1~7日)にわたって化合物/医薬組成物を繰り返し投与することである。これらの場合において、使用される活性化合物の量は、好ましくは先に記載されたように蝸牛に直接、例えば注入を介して、内耳及び投与当たり0.5μg~1.0mgの範囲内であるべきである。
【0046】
式(I)の本発明による化合物は、先行技術による方法によって調製され得る。一例として、以下の一般的手順が、それぞれ「...アミド」及び「...ウレア」である本発明の化合物を提供するために開示される。
【0047】
アミド(ウレア)の合成の一般的手順
1. 対応する炭素環式酸(0.5mmol)が、3mlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)、に溶解され、及びジイソプロピルエチルアミン(1.5mmol)及びカップリング剤HATU[O-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロフォスファト](0.55mmol)が加えられた。混合物は、15分間攪拌され、対応するアミン(0.55mmol)が加えられた。得られた反応物は、さらに4~16時間攪拌され、その反応の完了は、TLC(薄層クロマトグラフィー)又はLC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)で制御された。混合物は、25mlの酢酸エチル(EtOAc)で希釈され、20mlのブラインで1回洗浄され、20mlの飽和NaHCO3溶液で1回洗浄され、20mlの5%クエン酸溶液で3回洗浄され、及び再度20mlの飽和NaHCO3溶液で1回洗浄され、無水Na2SO4で乾燥され、そして真空中で濃縮された。得られた残渣は、フラッシュクロマトグラフィー(典型的に石油エーテル-EtOAc系を用いる)及び/又は結晶化及び/又は必要な場合、逆相分取HPLCにより精製された。
【0048】
2. 対応するアミン(0.5mmol)溶液(2.5mlのジクロロメタン中)に、対応するイソシアネート(0.5mmol)の溶液(2.5mlのジクロロメタン中)が加えられた(攪拌しながら滴下して)。混合物は、1時間(又は必要な場合、さらに長い時間)攪拌され、反応の進行が、TLC又はLC-MSによって制御された。次いで、混合物は、20mlのEtOAcで希釈され、20mlのブラインで1回洗浄され、20mlの飽和NaHCO3溶液で1回洗浄され、20mlの5%クエン酸溶液で3回洗浄され、及び再度20mlの飽和NaHCO3溶液で1回洗浄され、無水Na2SO4で乾燥され、そして真空中で濃縮された。得られた残渣は、フラッシュクロマトグラフィー(典型的に石油エーテル-EtOAc系を用いる)及び/又は結晶化及び/又は必要な場合、逆相分取HPLCにより精製された。
【0049】
上記の手順において、市販のイソシアネートを用いるか、又はこれらのイソシアネートを以下の方法の1つに従って製造した。
【0050】
- イソシアネート合成1
5mlのジクロロメタン及び5mlの水の混合物に、(対応する)置換アニリン(0.5mmol)、NaHCO3(100mg、1.2mmol)及び59mg(0.2mmol)のトリホスゲンが順次加えられた。得られた反応混合物は、30分間激しく攪拌され、ジクロロメタン層が、10mlのブラインで2回洗浄され、MgSO4上で短時間乾燥され、そして対応するウレアの合成のためにイソシアネートストック溶液として使用された。
【0051】
- イソシアネート合成2
(対応する)置換アニリン(0.5mmol)が、2.5mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解され、そしてカルボニルジイミダゾール(100mg、0.6mmol)が加えられた。溶液は、室温で2時間攪拌され、対応するウレアの合成に直接使用された。
【0052】
薬理学的結果
Kv7.4活性化は、機能的Kv7.4細胞株及びタリウム感受性蛍光色素を用いることによってFLIPRTetra(モレキュラーデバイス製のハイスループットセルラースクリーニングシステム、LLC、米国)で測定された。アッセイの原理は、タリウムに対するカリウムチャネルの浸透性に基づく。タリウムの侵入は、Kv7.4コード遺伝子で安定にトランスフェクトされたCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)において測定された。細胞は、この段階ではプロ蛍光色素であるThallos(商標)色素(TEFLABS、cat.♯0913)が充填された。チャネル活性化後、タリウムを含有する細胞外溶液で、タリウムイオンは、細胞膜を横切って開いたカリウムチャンネルを通って濃度勾配を下に移動する。タリウムイオンが、Thallos(商標)色素に結合すると、490nmでの励起により515nmで明るい蛍光を発する。重要なことに、測定された蛍光発生シグナルは、タリウムを透過するイオンチャンネルの活性を定量的に反映する。
【0053】
実験は、以下の手順に従って、384ウェルプレートで行われた。
1. 384ウェルプレート(黒色の壁、透明な底)に10.000c/wで細胞を播種する。
2. 播種の24時間後、手動で培地を排出し、製造元の指示に従って調製された20μL/wの0.5×Thallos(商標)感受性色素を加えた。
3. 細胞を1時間、室温でインキュベートする。
4. タリウムフリー、塩化物フリーのタイロードバッファー(5mM D-グルコネートカリウム、130mM D-グルコネートナトリウム、2mMD-グルコネートカルシウム、5mM NaHCO3、1mMD-グルコネートマグネシウム、20mM HEPES、pH7.4)2.5%DMSO(最終DMSOは、0.5%である)で5倍濃縮されたテスト化合物を5μL/ウェルのオフラインで注入する。
5. 10分間インキュベーションした後、FLIPRTetraで25μL/ウェルの2×濃縮タリウムEC20(5mM)を注入し、動的応答(kinetic response)を120秒間モニターする。
【0054】
本発明のテスト化合物の効果は、EC100(100μM)における参照オープナーML213に対する活性パーセントとして測定され、それに応じてEC50値が計算された。本発明の化合物は、10nM~5μMの間に含まれるEC50を有するKv7.4オープナーとして活性であった。
【0055】
インビボ実験
本発明の化合物はまた、インビボでテストされた。これに関連して、聴覚神経の複合活動電位(CAP)を繰り返し記録するために、モルモットの正円窓小窩に永久金電極が、両側に移植された。正円窓は、中耳から内耳への開口部である。金電極は、頭蓋骨の小型プラグに接続された。実験の間、オージオグラムは、オクターブ当たり8ステップの分解能で、0.5~45.6kHzの間で決定された。自動閾値検索アルゴリズムが適用された。
【0056】
ベースラインのオージオグラムを測定した後、動物は、イオンチャンネルの活性化剤としての本発明の化合物で、中耳への局所投与により前処理された。本発明の化合物の対応する溶液は、曝露時間の後、例えば2時間後に除去された。次いで、閾値シフトを評価するために、CAP記録を行う前に、中耳をすすぎ、乾燥させた。
【0057】
次いで、聴覚喪失が、モルモットで少なくとも1つの聴覚毒性剤及び少なくとも1つの本発明の化合物との混合物の中への局所投与によって誘導された。例えば、カナマイシン、フロセミド、又はこれらの化合物の混合物が、聴覚毒性剤として使用され得る。
【0058】
得られたCAP応答閾値は、聴覚毒性剤単独で曝された耳と比較された。
【0059】
これらの実験により、聴覚毒性剤単独での曝露、例えば、カナマイシン、フロセミド又はこれらの化合物の混合物に曝されると、深刻な内耳性難聴を表すことが示され得る。対照的に、これらの聴覚毒性剤を本発明の化合物の少なくとも1つと一緒に投与すると、聴覚毒性剤単独による難聴と比較して、難聴の有意な減少を示す。
【0060】
インビボ実験のさらなる詳細は、以下の通りである。
【0061】
インビボ実験の典型的なワークフローが、
図1に示される。全ての動物は、ドイツの「動物保護に関する法律」(Tierschutzgesetz)及び実験目的で使用される動物の保護に関する欧州指令2010/63/EUに記載される基準に従ってケアを受けた。実験は、地方自治体によって承認された(申請HN03/15)。
【0062】
全ての手順は、フェンタニル、ミダゾラム及びメデトミジンの混合物を用いて麻酔下で行われた。手術及び測定の間、動物は、37℃の加温パッド上に保たれた。聴覚神経の複合活動電位(CAP)を繰り返し記録するために、モルモットは、頭蓋骨の小型プラグに接続された正円窓小窩に永久金電極が、両側に移植された。オージオグラムは、オクターブ当たり8ステップの分解能で、0.5~45.6kHzの間で決定された。自動閾値検索アルゴリズムが、適用された。
【0063】
ベースラインのオージオグラムを測定した後、動物は、イオンチャンネルアクチベーター、この場合は、ACOU001で、中耳への局所投与によって前処理された。ACOU001(出願人の内部名称)は、5-クロロ-N-(4-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)チオフェン-2-カルボキサミドである。
【0064】
この化合物ACOU001の化学構造は次の通りである:
【化2】
【0065】
ACOU001を含有する溶液は、2時間後に除去され、そして閾値シフトを評価するためにCAP記録を行う前に中耳をすすぎ、そして乾燥させた。次いで、モルモットは、200mg/mlのカナマイシン、50mg/mlのフロセミド及び100μMのACOU001の混合物を用いて中耳に局所投与することによって聴覚を喪失させられた。CAP反応閾値は、聴覚毒性薬剤単独に曝された耳と比較された。CAP記録は、この処理の7、14、及び21日後に行われた。21日目の最終測定後、動物は、屠殺され、蝸牛は、4%パラホルムアルデヒドでの灌流により固定され、そして有毛細胞(HC)保護を定量するための免疫組織学的分析用に調製された。
【0066】
この一連の実験から得られた結果は、
図2及び3に示される。未処理の耳におけるベースラインCAP閾値(
図2A、(中央)破線)と比較して、化合物ACOU001((上)実線)での前処理は、小さく、最も可能性の高い伝導性の難聴を招く((下)点線:上と中の線の差)。この伝導性聴覚障害は、局所投与後に内耳内に液体が残っていることによって説明され得る。残りの液体は、低周波数で内耳の伝達を損なう(
図2A、黒三角)。
【0067】
カナマイシン及びフロセミドへの曝露(
図2B、(上)破線)は、重症のパン内耳性難聴(pancochlear hearing loss)をもたらした。対照的に、ACOU001を聴覚毒性薬剤((中)実線)と一緒に投与すると、中~高周波数(5~11kHz)において、聴覚毒性薬剤単独と比較して(点線下)、~25dB SPL(SPL:Sound Pressure Level)の難聴が大幅に減少した。
【0068】
カナマイシン及びフロセミドの投与の7日後、深刻な難聴が記録され、21日の期間にわたって全周波数範囲(PTS: Permanent Threshold Shift)において持続的なままであった(
図3A/B、上の破線)。カナマイシン/フロセミド プラス ACOU001で処理した後のCAP曲線はまた、7日後にはより高い閾値レベルにシフトしたが、21日後には改善した(
図3A/B、中央実線)。1匹の聴覚を失った動物と比較して、アミノグリコシドカナマイシン プラス ACOU001との同時処理の21日後に、全周波数で聴覚の喪失の有意な減少(~25~40dB SPL)が記録された(
図3B、下の破線)。
【0069】
以下の化合物を用いたインビボ実験中に、同様の有意な結果(少なくとも20~30dB SPLの聴覚保護(難聴の減少)を伴う)が得られる。
- (1R,2R,4S)-レル-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
【化3】
- (1S,2S,4R)-N-(3-(ペンタフルオロスルファニル)ベンジル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキサミド
【化4】
- N-(2,6-ジメチル-4-(ピロリジン-1-イル)フェニル)-2-(5-クロロ-チオフェン-2-イル)アセトアミド
【化5】