(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】Ptとヨウ素を用いるオレフィンのヒドロホルミル化方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/50 20060101AFI20240417BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240417BHJP
C07C 47/12 20060101ALI20240417BHJP
C07C 47/228 20060101ALI20240417BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20240417BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/02
C07C47/12
C07C47/228
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193972
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カロリン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベルラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-512817(JP,A)
【文献】特開昭53-050102(JP,A)
【文献】国際公開第2020/057878(WO,A1)
【文献】特開昭57-131734(JP,A)
【文献】Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2003年,200,147-156
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2020年,142,18251-18265
【文献】Inorg. Chem.,2006年,45 ,7197-7209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/50
C07C 47/02
C07C 47/12
C07C 47/228
B01J 31/24
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最初にオレフィンを加える工程と、
b)下記一般式(I)で表される化合物を添加する工程と、
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、-H、-(C
1~C
12)アルキル及び-(C
6~C
20)アリールから選択される。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8が-(C
6~C
20)アリールの場合、アリール環は-(C
1~C
12)アルキル及び-O-(C
1~C
12)アルキルから選択される置換基を有していてもよい。)
c)錯体形成可能なPt化合物を加える工程と、
d)ヨウ素化合物を加える工程と、
e)CO及びH
2を供給する工程と、
f)前記工程a)~前記工程e)からの反応混合物を加熱し、前記オレフィンをアルデヒドに転化する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8は、-(C
1~C
12)アルキル及び-(C
6~C
20)アリールから選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
R
5、R
6、R
7、R
8は、-(C
6~C
20)アリールであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
R
2及びR
3は、-(C
1~C
12)アルキルであることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項5】
R
1及びR
4は、それぞれ-Hであることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項6】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)の構造を有することを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【化2】
【請求項7】
前記Pt化合物が、Pt(II)I
2、Pt(IV)I
4、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II) 、Pt(II)(acac)
2、Pt(0)(PPh
3)
4、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2) 、Pt(0)(エチレン)(PPh
3)
2、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0) 、Pt(II)(OAC)
2溶液、Pt(0)(t-Bu)
2、Pt(II)(COD)Me
2、Pt(II)(COD)I
2、Pt(IV)IMe
3及びPt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトン)
2から選択されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項8】
前記Pt化合物が、Pt(II)I
2及びPt(II)(acac)
2から選択されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項9】
前記ヨウ化合物が、Pt(II)I
2及びLiIから選択されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項10】
前記ヨウ化合物は、Ptに対する当量で、0.1~10の範囲の量で添加されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項11】
更に、e’)溶媒を加える工程を含むことを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、THF、DCM、ACN、DMF、トルエン、テキサノール、ペンタン、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、マルロサーム、炭酸プロピレン、MTBE、ジグリム、トリグリム、ジエチルエーテル、ジオキサン、イソプロパノール、tert-ブタノール、イソノナノール、イソブタノール、イソペンタノール及び酢酸エチルから選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記CO及びH
2は、1~6MPa(10~60バール)の圧力で供給されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物は、25~150℃の温度に加熱されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【請求項15】
前記オレフィンは、エテン、プロペン、1-ブテン、シス-および/またはトランス-2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエン、1-ペンテン、シス-および/またはトランス-2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、ヘキセン、テトラメチルエチレン、ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、ジ-n-ブテン、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1
又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ptとヨウ素を用いるオレフィンのヒドロホルミル化に関する。
【背景技術】
【0002】
C. Botteghi et al., Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 200, (2003), 147-156 は、2-トシルオキシスチレンのヒドロホルミル化のためのPt(キサントフォス)Cl2の使用を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、新規のヒドロホルミル化プロセスを提供することである。ここでのプロセスは、Pt(キサントフォス)Cl2を使用する従来技術から知られているプロセスと比較して収率を増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1記載の方法により達成される。
a)最初にオレフィンを加える工程と、
b)下記一般式(I)で表される化合物を添加する工程と、
【0005】
【0006】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、-H、-(C1~C12)アルキル及び-(C6~C20)アリールから選択される。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8が-(C6~C20)アリールの場合、アリール環は-(C1~C12)アルキル及び-O-(C1~C12)アルキルから選択される置換基を有していてもよい。)
c)錯体形成可能なPt化合物を加える工程と、
d)ヨウ素化合物を加える工程と、
e)CO及びH2を供給する工程と、
f)前記工程a)~前記工程e)からの反応混合物を加熱し、前記オレフィンをアルデヒドに転化する工程と、
を有する方法。
【0007】
この方法において、工程a)からe)は、任意の順序で実施することができる。しかしながら、典型的には、工程a)からd)において共反応物が最初に充填された後に、COおよびH2が添加される。
【0008】
ここで、工程c)およびd)は、PtI2を添加することによって、1つの工程で行うことが可能である。この方法の好ましい変形では、PtI2を添加することにより、Pt化合物とヨウ化合物を1つの工程で添加する。
【0009】
(C1-C12)-アルキルという表現は、1~12個の炭素原子を有する直鎖および分枝アルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C1-C8)-アルキル基、より好ましくは(C1-C6)-アルキル、最も好ましくは(C1-C4)-アルキルである。
【0010】
適切な(C1-C12)-基は、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1 ,2-ジメチルプロピル, 1,1-ジメチルプロピル, 2,2-ジメチルプロピル, 1-エチルプロピル, n-ヘキシル, 2-ヘキシル, 2-メチルペンチル, 3-メチルペンチル, 4-メチルペンチル, 1,1-ジメチルブチル, 1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-エチル -2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0011】
(C6-C20)-アリールという表現は、6~20個の炭素原子を有する単環式または多環式芳香族ヒドロカルビル基を包含する。 これらは、好ましくは(C6-C14)-アリール、より好ましくは(C6-C10)-アリールである。
【0012】
適切な(C6-C20)-アリール基は、特にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル、コロネニルである。 好ましい(C6-C20)-アリールは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルである。
【0013】
1つの変形では、R2、R3、R5、R6、R7、R8は、-(C1~C12)アルキル及び-(C6~C20)アリールから選択される。
【0014】
1つの変形では、R5、R6、R7、R8は、-(C6~C20)アリールである。
【0015】
1つの変形では、R5、R6、R7、R8は、Phである。
【0016】
1つの変形では、R2及びR3は、-(C1~C12)アルキルである。
【0017】
1つの変形では、R2及びR3は、-CH3である。
【0018】
1つの変形では、R1及びR4は、それぞれ-Hである。
【0019】
1つの変形では、一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)の構造を有する。
【0020】
【0021】
1つの変形では、Pt化合物が、Pt(II)I2、Pt(IV)I4、ジフェニル(1,5-COD)Pt(II) 、Pt(II)(acac)2、Pt(0)(PPh3)4、Pt(0)(DVTS)溶液(CAS:68478-92-2) 、Pt(0)(エチレン)(PPh3)2、トリス(ベンジリデンアセトン)Pt(0) 、Pt(II)(OAC)2溶液、Pt(0)(t-Bu)2、Pt(II)(COD)Me2、Pt(II)(COD)I2、Pt(IV)IMe3及びPt(II)(ヘキサフルオロアセチルアセトン)2から選択される。
【0022】
1つの変形では、Pt化合物が、Pt(II)I2及びPt(II)(acac)2から選択される。
【0023】
1つの変形では、ヨウ化合物は、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、NH4X、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキル、ハロゲン化トリアルキル、ハロゲン化テトラアルキル及びハロゲン化シクロアルキルアンモニウムから選択される。
【0024】
1つの変形では、ヨウ化合物が、Pt(II)I2及びLiIから選択される。
【0025】
1つの変形では、ヨウ化合物は、Ptに対する当量で、0.1~10の範囲の量で添加される。
【0026】
1つの変形では、更に、e’)溶媒を加える工程を含む。
【0027】
1つの変形では、溶媒が、THF、DCM、ACN、DMF、トルエン、テキサノール、ペンタン、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、マルロサーム、炭酸プロピレン、MTBE、ジグリム、トリグリム、ジエチルエーテル、ジオキサン、イソプロパノール、tert-ブタノール、イソノナノール、イソブタノール、イソペンタノール及び酢酸エチルから選択される。
【0028】
1つの変形では、溶媒が、THF、DCM、ACN、DMF、トルエン及びテキサノールから選択される。
【0029】
1つの変形では、CO及びH2は、1~6MPa(10~60バール)の圧力で供給される。
【0030】
1つの変形では、CO及びH2は、1~6MPa(20~50バール)の圧力で供給される。
【0031】
1つの変形では、反応混合物は、25~150℃の温度に加熱される。
【0032】
1つの変形では、反応混合物は、30~130℃の温度に加熱される。
【0033】
1つの変形では、オレフィンは、エテン、プロペン、1-ブテン、シス-および/またはトランス-2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエン、1-ペンテン、シス-および/またはトランス-2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、ヘキセン、テトラメチルエチレン、ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、ジ-n-ブテン、及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
本発明は、以下、実施例によって詳細に説明される。
【実施例】
【0035】
バイアルに PtX2(X=ハロゲン)、リガンド、およびオーブンで乾燥させたスターラー バーを入れた。バイアルを、セプタム(PTFEコーティングスチレン-ブタジエンゴム)とフェノール樹脂キャップで密閉した。バイアルを排気し、アルゴンを3回再充填した。シリンジを使用して、トルエンおよびオレフィンをバイアルに添加した。バイアルを合金板に入れ、これをアルゴン雰囲気下でパー・インスツルメント社の4560シリーズのオートクレーブに移した。オートクレーブをCO/H2で3回パージした後、合成ガスの圧力を室温で40バールに上げた。 反応は120℃/80℃で20時間/18時間行った。反応が終了したら、オートクレーブを室温まで冷却し、注意深く減圧した。収率および選択性をGC分析によって決定した。
【0036】
【0037】
反応条件:20mmolの1-オクテン、0.1mol%の金属、2.2当量のキサントフォス(Xantphos)(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:80℃、t:20h
収率:
PtI2:99%
PdI2:0%
【0038】
【0039】
反応条件:20mmolの2-オクテン、1.0mol%のPt、1.1当量のキサントフォス(Xantphos)(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
収率:
PtI2:99%
PtCl2:16%
【0040】
<ハロゲンの変化(1-オクテン)>
反応条件:10.0mmolの1-オクテン、0.1mol%のPtX2、2.2当量のリガンド、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
【0041】
【0042】
<オレフィンの変化>
反応条件:1.0mmolのオレフィン、0.5mol%のPtI2、2.2当量のキサントフォス(Xantphos)(1)、溶媒:ジクロロメタン(DCM)、p(CO/H2):40バール、T:80℃、t:18h
【0043】
太字のC-C結合は、二重結合、つまりオレフィンの二重結合の位置を示す。
【0044】
<リガンドとハロゲンの変化>
反応条件:1.0mmolの1-オクテン、0.5mol%のPtX2、2.0当量のリガンド、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:80℃、t:18h
【0045】
【0046】
<当量数とハロゲンの変化>
反応条件:1.0mmolの1-オクテン、1.0mol%のPt(acac)2、 LiX(X=ハロゲン)、2.2当量のキサントフォス(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
【0047】
【0048】
実験結果が示すように、この問題は本発明による方法によって解決される。