(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】複合不燃成形体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240417BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240417BHJP
C08J 9/228 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B5/18
C08J9/228 CEZ
(21)【出願番号】P 2022544597
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030871
(87)【国際公開番号】W WO2022045083
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020144648
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】谷 重成
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128580(JP,A)
【文献】特開2019-172735(JP,A)
【文献】特許第4968780(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/061263(WO,A1)
【文献】特開2019-178262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と発泡体層との積層構造を含み、
前記発泡体層がビーズ発泡体からなり、
前記発泡体層がポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記金属層の厚みTm(mm)と、前記発泡体層の密度ρe(g/cm
3)とが、Tm×ρe>0.02を満たし、
前記発泡体層の1%寸法収縮温度が100℃以上である
ことを特徴とする複合不燃成形体。
【請求項2】
前記積層構造において、前記金属層と前記発泡体層との界面に溝を備える、請求項1に記載の複合不燃成形体。
【請求項3】
前記溝が、少なくとも一方の端が前記複合不燃成形体の端までのびる溝である、請求項2に記載の複合不燃成形体。
【請求項4】
前記発泡体層中の難燃剤の質量割合が、前記発泡体層100質量%に対して、1~30質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合不燃成形体。
【請求項5】
前記難燃剤が、リン原子を含む難燃剤である、請求項4に記載の複合不燃成形体。
【請求項6】
前記発泡体層中に、芳香族を有する単量体単位を50質量%以上含む基材樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合不燃成形体。
【請求項7】
前記金属層の厚みTmが0.5mm以上3.0mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合不燃成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合不燃成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡体は、軽量性、断熱性に優れる観点から、建材等の用途に使用されている。しかしながら、発泡体に含まれる気泡は、空気を内包していることが多く、未発泡の樹脂と比較して燃えやすいという問題があった。
【0003】
発泡体の難燃性を向上させる試みとして、金属等の不燃性材料と発泡体とを積層した複合成形体が知られている。これらの複合体においては、発泡体の欠点であった耐火性不足の問題を改善できることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年二次電池の普及に伴い、特に自動車、飛行機、鉄道用途等を中心に火災に対する安全性への要求が更に高くなっていることから、より耐火性を高めた複合成形体の要求が強くなっている。また、同用途においては構造体の重さが燃費等の性能に直結するため、軽量性も同時に要求される。更に、同用途へ適用する複合成形体においては、一般に単純な板形状ではなく、部品等に合わせた形状を作りこむ必要があるが、特に耐火性を高めるために金属層の厚みを大きくすると、複合体の重量が大きくなることや、金属層の形状に合わせた発泡体を準備して積層する必要があり、複合体の生産性が悪化することがあった。
【0006】
本発明は上記状況を鑑みてなされたものであり、軽量で、高い耐火性を有し、更に生産性が高い複合成形体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
金属層と発泡体層との積層構造を含み、
前記発泡体層がビーズ発泡体からなり、
前記発泡体層がポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、
前記金属層の厚みTm(mm)と、前記発泡体層の密度ρe(g/cm3)とが、Tm×ρe>0.02を満たし、
前記発泡体層の1%寸法収縮温度が100℃以上である
ことを特徴とする複合不燃成形体。
[2]
前記積層構造において、前記金属層と前記発泡体層との界面に溝を備える、[1]に記載の複合不燃成形体。
[3]
前記溝が、少なくとも一方の端が前記複合不燃成形体の端までのびる溝である、[2]に記載の複合不燃成形体。
[4]
前記発泡体層中の難燃剤の質量割合が、前記発泡体層100質量%に対して、1~30質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の複合不燃成形体。
[5]
前記難燃剤が、リン原子を含む難燃剤である、[4]に記載の複合不燃成形体。
[6]
前記発泡体層中に、芳香族を有する単量体単位を50質量%以上含む基材樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の複合不燃成形体。
[7]
前記金属層の厚みTmが0.5mm以上3.0mm以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の複合不燃成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合不燃成形体は、上記構成を有するため、軽量で、高い耐火性を有し、生産性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】複合不燃成形体の一例を示す概略図(斜視図)である。
【
図2】溝が設けられた発泡体層の一例を示す概略図(斜視図)である。
【
図3】一般財団法人 日本鉄道車両機械技術協会の定める鉄道車両用材料燃焼性試験を説明する図である。
【
図4】実施例6~11で、発泡体層の、金属層との発泡体層との界面に、作製した溝の形状を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施形態の複合不燃成形体は、金属層と発泡体層との積層構造を含み、上記発泡体層がビーズ発泡体からなり、上記金属層の厚みTm(mm)と、上記発泡体層の密度ρe(g/cm
3)とが、Tm×ρe>0.02を満たし、上記発泡体層の1%寸法収縮温度が100℃以上である。
上記積層構造は、金属層と、該金属層の一方の表面上に設けられた発泡体層との、2層からなる積層構造である(
図1)。
【0012】
上記複合不燃成形体は、上記積層構造のみからなる2層積層体であってもよいし(
図1)、上記積層構造以外に他の層を含む3層以上の積層体や上記積層構造を複数備える4層以上の積層体であってもよい。
上記複合不燃成形体としては、例えば、金属層と発泡体層との2層積層体、金属層/発泡体層/金属層の3層積層体等が挙げられる。中でも、不燃性を有していながら軽量性を高める観点から、金属層と発泡体層との2層積層体が好ましい。
また、本実施形態の複合不燃成形体は、例えば、自動車、鉄道、飛行機等の内装材としての好適に用いることができる。火災等が発生した場合には金属面側に接炎するように配置することが好ましい。またこの場合、強い衝撃が加わる等して金属層に損傷が発生すると、直接発泡体層へ接炎することになるため、発泡体層は難燃性を有し、また厚みは薄い方が好ましい。
【0013】
(発泡体層)
上記発泡体層は、基材樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
上記基材樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、中でも、より不燃性になりやすい観点、及び耐熱性を高めやすい観点から、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂が好ましく、さらに、長期信頼性を高める観点で、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂がより好ましい。ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、加水分解が起きやすいエステル結合やアミド結合を有していないため、長期信頼性を高めやすい。また、一般に熱硬化樹脂はビーズ発泡法の適用が難しいため成形品の賦形性を向上させる観点においては熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、発泡体のリサイクル性の観点においても、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
上記基材樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記基材樹脂100質量%中のポリフェニレンエーテル系樹脂の質量割合は、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、上記基材樹脂100質量%中のポリスチレン系樹脂の質量割合は、15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、上記基材樹脂100質量%中のポリオレフィン系樹脂の質量割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0015】
上記基材樹脂は、芳香族を有する単量体単位を含む樹脂を含むことが好ましく、芳香族を有する単量体単位を含む樹脂のみであることがより好ましい。芳香族を有する単量体単位を含む上記樹脂としては、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフラテート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
上記基材樹脂中の芳香族を有する単量体単位の質量割合は、燃焼時に基材樹脂が炭化しやすいため樹脂への着火・着炎を抑えやすく、また、可燃性ガスの発生を抑制することで、不燃性が一層向上しやすくなる観点から、基材樹脂100質量%に対して、20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは25~100質量%、さらに好ましくは30~100質量%であり、さらに好ましくは50~100質量%である。
上記芳香族を有する単量体単位の質量割合は、分子構造が分かる場合には構成単位に含まれる分子構造から算出できる。複数の樹脂が含まれる場合であっても、それぞれの樹脂や添加剤に対して同様の計算を行い、混合する重量割合に応じて平均化することで基材樹脂全体における芳香族を有する単量体単位の質量割合を算出可能である。また、構造が不明な場合にはNMRやIR等を用いて芳香族を有する単量体単位を推定し、算出することも可能である。
芳香族を有する上記単量体単位としては、後述の式(1)で表される単量体単位、スチレン系モノマー等が挙げられる。
【0016】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、下記一般式(1)で表される単量体単位を含む重合体であってよい。上記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される単量体単位のみからなる単独重合体であってもよいし、他の単量体単位を含む共重合体であってもよい。
【化1】
ここで、式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲンと一般式(1)中のベンゼン環との間に少なくとも2個の炭素原子を有するハロアルキル基若しくはハロアルコキシ基で第3α-炭素を含まないもの、を示す。また、式(1)中、nは、重合度を表す整数である。
【0017】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジラウリル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-ジフェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メトキシ-6-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-ステアリルオキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジベンジル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレン)エーテル、等の上記式(1)で表される単量体単位の単独共重合体;2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体等の2種以上の上記式(1)で表される単量体単位を含む共重合体;等が挙げられる。この中でも、R1及びR2が炭素数1~4のアルキル基であり、R3及びR4が水素若しくは炭素数1~4のアルキル基のものが好ましく、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体がより好ましく、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)がさらに好ましい。
これらは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記のポリフェニレンエーテル系樹脂の例には、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量%に対して、上記式(1)で表される単量体単位以外の単量体単位を20質量%以下(好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは0質量%)含む樹脂が含まれるものとする。
【0018】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、20,000~60,000であることが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、樹脂についてゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンについての測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量をいう。
【0019】
上記発泡体層中の上記基材樹脂の質量割合としては、発泡性を高め発泡層の生産性を高めやすい観点から、発泡体層100質量%に対して、50~100質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0020】
上記発泡体層は、さらに難燃剤を含むことが好ましい。発泡体層が難燃剤を含むと難燃性が高くなるため、燃焼時に発泡体層の着火・着炎を抑えやすく、また、可燃性ガスの発生を抑制しやすく、不燃性が一層向上する。
【0021】
上記難燃剤としては、例えば、有機系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられる。
有機系難燃剤としては、臭素化合物に代表されるハロゲン系化合物や、リン系化合物やシリコーン系化合物に代表される非ハロゲン系化合物等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムに代表される金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンに代表されるアンチモン系化合物等が挙げられる。
上記難燃剤は、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記難燃剤の中でも、芳香族を有する単量体単位の炭化を促進し、不燃性が一層向上する観点から、リン原子を含むリン系の難燃剤がより好ましい。
【0023】
リン系の難燃剤としては、リン又はリン化合物を含むものを用いることができる。リンとしては赤リンが挙げられる。また、リン化合物として、リン酸エステルや、リン原子と窒素原子の結合を主鎖に有するホスファゼン化合物等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート等が挙げられ、また、これらを各種の置換基で変性したタイプのリン酸エステル化合物や、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物も挙げられる。
【0024】
上記シリコーン系難燃剤としては、(モノ又はポリ)オルガノシロキサンが挙げられる。
(モノ又はポリ)オルガノシロキサンとしては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のモノオルガノシロキサン;これらを重合して得られるポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン;これらの共重合体等のオルガノポリシロキサン;等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンの場合、主鎖や分岐した側鎖の結合基は、水素、アルキル基、フェニル基であり、好ましくはフェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基であるが、これに限定されない。末端結合基は、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、フェニル基であってよい。
シリコーン類の形状には、特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状等の任意の形状が利用可能である。
【0025】
上記発泡体層中の上記難燃剤の質量割合としては、不燃性が一層向上する観点から、発泡体層100質量%に対して、1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは3~30質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。難燃剤の添加量が多くなると一般に耐熱性が低下する傾向にあるため、複合不燃成形体における発泡体層においては、発泡体層が適切な難燃性と耐熱性を有するように、添加する難燃剤の種類や量を調整することが好ましく、上記の好適な難燃剤を上記の好適質量割合で用いることがより好ましい。
【0026】
上記発泡体層は、上記基材樹脂及び上記難燃剤以外に、さらに添加剤を含んでいてよい。
【0027】
上記添加剤としては、難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、可塑剤、離型剤、染顔料、ゴム成分等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0028】
上記発泡体層中の上記添加剤の質量割合としては、発泡体層100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0質量%超25質量%以下である。
【0029】
上記発泡体層の厚みとしては、用途にあわせて適宜選択することができるが、軽量性を高めながら不燃性を維持しやすい観点から、2~60mmであることが好ましく、より好ましくは3~50mm、さらに好ましくは3~30mmである。
【0030】
上記発泡体層の密度ρeとしては、一般に密度が低いほど単位体積中に含まれる樹脂量が増えるため耐火性が高くなるが、一方で軽量性が悪化する。このため、耐火性と軽量性が適切な範囲で扱いやすくなる観点から、0.01~0.5g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.02~0.4g/cm3、さらに好ましくは0.03~0.3g/cm3である。
また、上記発泡体層の発泡倍率は、密度の逆数によって定義される値であるため、上記発泡体の密度から計算される範囲であることが好ましい。
なお、密度及び発泡倍率は、後述の実施例に記載の方法により測定される値をいう。
【0031】
上記発泡体層は、ビーズ発泡体からなる。ビーズ発泡体とは、発泡粒子からなる発泡体をいう。ビーズ発泡体を用いることで、発泡体層を、金属層表面の形状に合わせた形状に容易に成形でき、発泡体層と金属層との密着性に優れた構造を容易に得ることができる。
【0032】
上記ビーズ発泡体は、基材樹脂として熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。上記ビーズ発泡体は、上記基材樹脂を含み、任意選択的に難燃剤等の添加剤を更に含む基材樹脂ペレットを発泡させたものとしてよい。
【0033】
上記ビーズ発泡体は、樹脂発泡体であることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリメタクリルイミド、メラミン、フェノール樹脂等の発泡体があげられる。中でも、断熱性、耐熱性が高いという観点から、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0034】
上記ビーズ発泡体は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、光吸収剤、可塑剤、離型剤、染顔料、ゴム成分、上記基材樹脂以外の樹脂等が挙げられ、本開示の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0035】
添加剤の含有量としては、基材樹脂100質量部に対して、好適には0~40質量部であり、より好適には5~30質量部である。
【0036】
また、ビーズ発泡体は一般に空気を含むため可燃性が高く、安全性が悪化することがある。このため、発泡体は難燃性を有していることが好ましい。発泡体の難燃性を高める方法としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の基材樹脂として難燃性が高い樹脂を選定する方法、上記芳香環を含む樹脂を選定する方法、基材樹脂へ難燃剤を添加する方法等がある。難燃剤を使用する場合、上述のものを使用することができる。難燃剤の含有量としては、添加剤の含有量の範囲内としてよいところ、基材樹脂を100質量部として、好適には0質量部超30質量部以下であり、より好適には5~25質量部である。添加する難燃剤が多いほど発泡体の難燃性が向上する効果が得られやすいが、一般に難燃剤を添加すると発泡成形時の製造安定性が悪化する傾向がある。
【0037】
また、ゴム成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは、ポリスチレン系樹脂からなる連続相中に粒子状に分散しているものが好ましい。これらゴム成分を添加する方法として、ゴム成分そのものが加えられてもよく、スチレン系エラストマーおよびスチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂がゴム成分供給源として用いられてもよい。ゴム成分を添加する場合、ゴム成分の含有量は、添加剤の含有量の範囲内としてよいところ、基材樹脂を100質量部として、0.3~15質量部が好ましく、0.5~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。0.3質量部以上であると、樹脂の柔軟性、伸びに優れ、発泡時に発泡セル膜が破膜しにくく、成形加工性および機械強度に優れる発泡体が得られやすい。なお、上記ゴム成分は、上述の基材樹脂以外の成分をいうものとする。
【0038】
上記ビーズ発泡体の製造方法は、ビーズ発泡法(型内発泡法)が挙げられる。ビーズ発泡法または型内発泡法は、発泡粒子を型内に充填し、水蒸気等で加熱して発泡粒子を膨張させると同時に発泡粒子同士を熱融着させることによって、発泡体を得る方法である。
押出発泡法の場合、通常、得られる発泡体は板状、シート状等となり、所望の形状に加工する場合は、抜き工程、切り取ったパーツを貼り合わせる熱貼り工程等が必要になる。一方、ビーズ発泡法の場合、所望の形状の型を作製し、そこに発泡粒子を充填させて成形するため、発泡体は複雑な形状に成形され得る。なお、射出発泡法の場合でも、発泡体を複雑な形状に成形することは可能であるが、ビーズ発泡の場合には、発泡体の発泡倍率を高めやすく、断熱性に優れるうえ、柔軟性を発現しやすい。
【0039】
発泡剤としては、特には限定されず、一般的に用いられているガスを使用することができる。その例として、空気、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、アンモニアガス、水素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス等の無機ガス;トリクロロフルオロメタン(R11)、ジクロロジフルオロメタン(R12)、クロロジフルオロメタン(R22)、テトラクロロジフルオロエタン(R112)、ジクロロフルオロエタン(R141b)、クロロジフルオロエタン(R142b)、ジフルオロエタン(R152a)、HFC-245fa、HFC-236ea、HFC-245ca、HFC-225ca等のフルオロカーボン;プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタン等の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルi-ブチルケトン、メチルn-アミルケトン、メチルn-ヘキシルケトン、エチルn-プロピルケトン、エチルn-ブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステル等のカルボン酸エステル類;塩化メチル、塩化エチル等の塩素化炭化水素類;等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
難燃性の観点から、発泡剤は可燃性および支燃性がないかまたは少ないことが好ましく、ガスの安全性の観点から、無機ガス又は空気がより好ましく、無機ガスがさらに好ましい。また、無機ガスは炭化水素等の有機ガスに比べて樹脂に溶けにくく、樹脂からガスが抜けやすいので、成形後の発泡体の経時での寸法安定性がより優れる利点もある。更に、無機ガスを用いた場合、残存ガスによる樹脂の可塑化が起こりにくい。そのため、熟成等の工程を経ずに、より早い段階から優れた耐熱性を発現しやすいメリットがある。無機ガスの中でも、樹脂への溶解性、取り扱いの容易さの観点から、炭酸ガスが好ましい。また、炭化水素系の有機ガスは一般に可燃性が高く、発泡体中に残存した場合に難燃性が悪化する傾向にある。
【0041】
ビーズ発泡法に用いる発泡粒子は、基材樹脂及び難燃剤等を含む基材樹脂ペレットに発泡剤を含有(含浸)させて、発泡を生じさせることにより得ることができる。具体的には、基材樹脂ペレット(ペレット状、ビーズ状等)を耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤(ガス)を圧入して基材樹脂ペレットに発泡剤(ガス)を含浸させた後、圧力を開放して圧力容器から発泡炉に基材樹脂ペレットを移送し、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽を回転させながら加圧水蒸気により加温して発泡させることにより、発泡粒子を製造する方法が挙げられる。基材樹脂ペレットに対して発泡剤(ガス)を含浸させる際の条件は、特には限定されることなく、発泡剤(ガス)の基材樹脂ペレットへの含浸をより効率的に進める観点から、例えば、含浸圧が0.3~30MPa、含浸温度が-20~100℃、および、含浸時間が10分~96時間であることが好ましい。また、発泡炉内の加圧水蒸気の最大蒸気圧は、所望の倍率を得やすく外観を良化する観点から、30~700kPa・Gであることが好ましい。
【0042】
発泡粒子を用いて発泡体を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば、発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填し、加熱することによって膨張を生じさせると同時に発泡粒子同士を熱融着させた後、冷却により生成物を固化し、成形する方法が挙げられる。発泡粒子の充填方法は、特には限定されず、公知の方法を用いることができる。発泡粒子を成形用金型のキャビティ内に充填する前に、発泡粒子に対してガスによる加圧処理を行うことが好ましい。発泡粒子の気泡に一定のガス圧力を付与することで、得られる発泡体を構成する発泡粒子同士を強固に融着させ、成形体の剛性および外観を改善することが出来る。加圧処理に用いるガスとしては、特には限定されないが、取り扱い容易性および経済性の観点から、空気および無機ガスが好ましい。加圧処理の方法としては、特には限定されないが、発泡粒子を加圧容器内に充填後、加圧ガスを導入し、最大圧力0.1~20MPaまで10分~96時間かけて昇圧することにより、該加圧容器内にガスを供給する手法等が挙げられる。発泡粒子を成形する際の加熱方法は、水蒸気等の熱媒体を用いた加熱、IRヒーター等のヒーターによる加熱、マイクロ波を用いた加熱等が挙げられる。熱媒体を用いた加熱を行う際は、汎用の熱媒体としてよく、樹脂を効率的に加熱する観点から、水蒸気であることが好ましい。
【0043】
本実施形態の複合不燃成形体においては、燃焼時の変形を小さくすることでより不燃性が高まる観点、及び燃焼時に発泡体層側の変形を抑制でき成形体として機械特性や外観を維持しやすい観点から、発泡体層の耐熱性が高いことが好ましい。発泡体層の耐熱性としては、後述の実施例に記載の発泡体層の1%寸法収縮温度が、100℃以上であることが好ましい。
発泡体の気泡構造として、連通気泡構造であっても独立気泡構造であっても良いが、独立気泡構造だと発泡体層の機械強度や断熱性が高まりやすいため、独立気泡構造であることが好ましい。
上記1%寸法収縮温度は、基材樹脂の種類や質量割合、難燃剤の種類や質量割合によって調整することができる。例えば、基材樹脂として上記の好適な樹脂を上記の好適質量割合で用いたり、難燃剤として上記の好適な難燃剤を上記の好適質量割合で添加したりして調整することができる。
【0044】
(金属層)
上記金属層は、金属を含む層であり、金属のみからなる層であることが好ましい。
【0045】
上記金属としては、アルミニウム、ステンレス、鉄、鋼、チタニウム、これらの金属の合金等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、軽量性と強度とのバランスに優れ、所定形状に加工しやすく、また腐食等が起きにくい観点から、アルミニウムやステンレスが好ましい。
【0046】
上記金属層の厚みTmとしては、不燃性を高めやすく、且つ軽量性を損ないにくい観点から、0.1~5.0mmであることが好ましく、より好ましくは0.15~3.0mm、さらに好ましくは0.3~3.0mmである。
【0047】
(溝)
一般に、物体が燃焼する際には燃焼または加熱によってガスが発生し、そのガスがさらに火災の拡大を招く。このため、上記積層構造は、燃焼中に発生するガスを効果的に散逸でき、不燃性を高めやすい観点から、上記金属層と上記発泡体層との界面に溝を備えることが好ましい。
ここで、上記溝とは、形状は特に限定されず、金属層と発泡体層とが接着せず、ガスを排出又は拡散できる隙間が空いている箇所をいうものとする。上記溝は、ガスを拡散するガス拡散路(例えば、複合不燃成形体の端までのびない溝)であってもよいし、ガスを排出するガス排出流路(例えば、少なくとも一方の端が複合不燃成形体の端までのびる溝)であってもよい。
ビーズ発泡後の発泡体層表面は、発泡後の発泡粒子が完全に平面を形成せずに、隣り合う発泡粒子間に小さな間隙が存在することがある。そして、金属層と発泡体層とは、該間隙において接着せずに未接着となることがある。発泡体層表面の発泡粒子間の間隙と金属層との未接着箇所は、上記間隙が隣接する間隙等と合一して巨大な間隙構造を形成していない場合の該間隙や、ビーズ発泡体の発泡粒子同士の間隙を溝として使用する場合の巨大な間隙構造を含む。
ビーズ発泡体からなる発泡体層の金属層との接合する面において、任意の5cm2の範囲(好ましくは四角形状の範囲)を観察した場合に、一つの間隙から連結した未接着箇所が観察面全体に連結して形成(観察部分の端から、対向する端まで連結した未接着箇所が形成されている)している場合に巨大な間隙構造を有するとし、またその構造を巨大な間隙構造とする。上記巨大な間隙構造は、直線状とはならない。これらの巨大な間隙構造は、観察面積に対する未接着部分の面積割合が1%以上あることが好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上である。上記巨大な間隙構造は、少なくとも一方の端が複合不燃成形体の端まで延びる構造であることが好ましく、両端が複合不燃成形体の端まで延びる構造であることがより好ましい。
【0048】
また、上記溝は、発泡体層側に意図的に作製した溝(例えば、直線状部分を少なくとも一部含む溝、直線状部分が流路全長100%に対して50%超(好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%)である溝、など)、上記巨大な間隙構造であってもよい。
上記溝は、火災が発生して成形体が加熱された場合に、発泡体層や他の層で発生したガスが効果的に散逸しやすい観点や、発生したガスの濃度を下げて燃焼しにくくなる観点から、多く存在することが好ましい。また、積層構造外部にガスが逃げやすくなり、難燃性が一層向上する観点から、少なくとも一方の端が上記複合不燃成形体の端(例えば、上記積層構造の界面の端)までのびる溝であることがより好ましい(
図2)。即ち、一方の端と他方の端とが上記複合不燃成形体の端までのびる溝(
図2の左から2つ目の溝5、
図2の左から3つ目の溝5)、又は一方の端が上記複合不燃成形体の端までのび他方の端が上記積層構造の界面内にとどまる溝(
図2の一番左の溝5)であることが好ましい。
発泡体層と金属層との界面にガスを一時的にためることができ、燃焼を遅延させることができるため、両端が成形体の端まで延びていない溝(
図2の一番右、ガス拡散路)が含まれることが好ましい。
【0049】
上記溝は、一直線状であってもよいし、屈曲部を有していてもよい(
図2)。中でも、発泡体層で発生した可燃ガスが積層構造外部に逃げやすくなる観点から、直線状であることが好ましい。ここで、直線状とは、溝の内壁が任意の方向に略直線に延びる部分の構造をいう。
【0050】
上記溝は、加工が容易であること、成形体表面の平滑性を高めやすいことから、上記界面のビーズ発泡体表面に形成され、金属層表面は平面であることが好ましい。
【0051】
上記溝は、一方の端から他方の端までの、溝の延在方向に対して垂直な断面の形状が、略同一であることが好ましい。
上記断面の面積としては、ガスの外部への逃げやすさと、強度や接着性とのバランスの観点から、0.1~30mm2であることが好ましく、より好ましくは0.5~20mm2、更に好ましくは1~15mm2である。
【0052】
上記溝の数は、1個であってもよいし複数個であってもよい。中でも、発泡体層で発生した可燃ガスが積層構造外部に逃げやすくなり、難燃性が一層向上する観点から、複数個あることが好ましい。
複数個の溝は、形状及び/又は大きさが、同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0053】
上記溝の形成方法としては、予め発泡体層や金属層に溝を作りこんでおき、その後両者を積層する方法等が挙げられる。加工が容易で溝形状を自由に設計しやすい観点から発泡体層に予め溝を形成しておくことが好ましい。
また、発泡体層への溝の形成方法として、切削などの2次加工により溝を作製する方法、予め金型に溝を形成しておき得られる発泡体に溝を転写させる方法等が挙げられる。特にビーズ発泡体は金型へ形状を付与しておけば2次加工の必要が無く溝を形成できるため、生産性が高くなる。また、ビーズ発泡体の場合、発泡粒子同士の間隙や巨大な間隙構造を形成させることで溝を形成することもできる。上記発泡粒子同士の間隙や巨大な間隙構造は、成形時の追添工程における追添ガスの圧力を下げる方法、成形時の最大温度を比較的低温にする方法(例えば、発泡体を形成する基材樹脂を含む組成物(基材樹脂や添加剤等の混合物)のガラス転移温度+20℃以下)、成形時の加熱時間を短時間にする方法等により、成形時の発泡粒子の膨張を抑制することで発泡粒子間に間隙を作ることができる。また別の方法として、成形中の加熱温度を非常に高くしたり、加熱時間を長くしたりする方法や成形後に発泡体を形成する基材樹脂を含む組成物のガラス転移温度(ガラス転移温度が明確でない場合には発泡体を形成する基材樹脂を含む組成物の板材を用いて測定されるビカット軟化点以上)以上で加熱する方法があり、これにより発泡粒子を熱収縮させ間隙を形成させることができる。また、予め金型内に金属を配置した状態でビーズ発泡成形を行う事で、接着工程などを経ずに不燃複合成形体を得ることが出来るが、一般に金属層とビーズ発泡体が接する部分は、成形時の蒸気等による加熱時に熱が伝わりにくくなるため他部分と比較して加熱が不十分になる傾向があり、これにより発泡粒子同士の間隙をつくって溝とすることもできる。
また、上記溝を作る別の方法として、金属層と発泡体層の間にガスが通過できる層を配置する方法もある。ガスが通過できる層とは、例えば連通気泡構造を有する発泡体や、スペーサーなどを配置した層等が挙げられる。また、他の方法として、発泡体層を形成するビーズ発泡体において、発泡粒子の形を球形ではなく異形(例えばドーナツ状等)によることによって、発泡体層自身を溝として使用することも可能である。
【0054】
以下、上記積層構造の特性について説明する。
【0055】
上記積層構造において、上記溝を除き、上記金属層の一方の表面と上記発泡体層の一方の表面とが密着していることが好ましい。
上記積層構造において、金属層と発泡体層とが密着している面積の割合としては、上記金属層の上記一方の表面の面積100%に対して、50~100%であることが好ましく、より好ましくは70%以上100%未満、さらに好ましくは80~99%である。
【0056】
上記積層構造において、上記金属層の厚みTm(mm)と、上記発泡体層の密度ρe(g/cm3)とは、軽量性を保ちながら高い耐火性を維持する観点から、Tm×ρe>0.02を満たし、1.0≧Tm×ρe>0.02を満たすことが好ましく、0.3≧Tm×ρe>0.025を満たすことがより好ましく、0.15≧Tm×ρe>0.025を満たすことが更に好ましい。一般に、金属層を備えることで、火炎に晒された場合に、輻射による火炎から複合不燃成形体への伝熱を抑えられると共に、金属層の厚みTmが大きいほど、金属層の熱伝導による熱の拡散、比熱の増加による温度上昇速度の低下、金属層の変形量や変形が開始するまでの時間の延長、等の効果が得られるため、複合不燃成形体として不燃性を一層高めやすいが、金属層Tmの厚みが大きいと軽量性が損なわれる。一方で、火炎に晒された場合に、発泡体層の密度ρeが大きくなるほど、単位体積当たりの樹脂量が増えるため、発泡体層が燃えにくくなると共に、熱容量が増えるため温度上昇速度や変形を抑えやすく、また発泡体層の耐熱性も高まりやすいため、複合不燃成形体としての不燃性を一層高めやすいが、発泡体層の密度が高いと軽量性が損なわれる。Tm×ρeの値が上記範囲にあることで、非常に高い不燃性を維持しながら、同時に軽量性を維持可能な、不燃複合成形体を得ることができる。
なお、本実施形態において金属層が複数ある場合、火炎と接する側の表面に近い金属層、火炎と接する側が不明確であれば最も外表面に近い金属層の厚みを基に算出する。また、火炎と接する側が不明確で、外表面からの距離が同じ場所に金属層が2層以上ある場合(例えばサンドイッチ構造のように上下の最表面にそれぞれ金属層が配置されている場合)は、金属層部分のみの単位表面積当たりの重量(g/cm2)が小さい方を参考にし、同じ場合にはどちらの層を基準にしても良い。
また、上記複合不燃成形体は軽量性を高め、一般的な金属板等と比較して大きな軽量化を図ることができるため、不燃複合体としての単位表面積当たりの重さ(g/cm2)が3.0g/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは1.0g/cm2以下、更に好ましくは0.5g/cm2以下である。さらに、上記複合不燃成形体は、一般的な金属板と同等或いはそれ以下の単位表面積当たりの重さであっても、全体としての厚みを大きくすることができるため、特に曲げ剛性を高めやすく、構造材として利用しやすくなる。
【0057】
上記積層構造の厚みは、2~60mmmmであることが好ましく、より好ましくは3~50mmである
【0058】
(他の層)
本実施形態の複合不燃成形体に含まれる、上記積層構造以外の他の層としては、金属層(上記積層構造に含まれる金属層とは別の金属層)、粘接着層、樹脂層、繊維強化樹脂層等が挙げられる。
上記他の層としての金属層は、上記金属層と同様の層が挙げられ、積層構造に含まれる金属層と同じ金属層であってもよいし、異なる金属層であってもよい。
【0059】
(複合不燃性成形体の製法)
本実施形態の複合不燃成形体において、金属層と発泡体層とを接着積層させる方法は特に限定されないが、例えば、接着剤、粘着剤、接着シート等で発泡体層と金属層とを接着させる方法、発泡体層表面を溶解させて金属層に融着させる方法、加熱して圧着する方法、発泡体層中に金属層を挿しこむ等して保持する方法、発泡体を保持できるように予め金属層に形状を付与しておく方法、金属層の表面粗さを大きくしておくことで発泡体層との接触面積を増やしアンカー効果により積層する方法、等が挙げられる。
【0060】
以下、本実施形態の複合不燃成形体の特性を説明する。
【0061】
本実施形態の複合不燃成形体の単位表面積当たりの重さとしては、軽量性と不燃性のバランスから、0.05~1.00g/cm2であることが好ましく、より好ましくは0.05~0.50g/cm2である。
なお、単位表面積当たりの重さとは、複合不燃成形体の重さを、金属層側の表面積で割ることにより算出することができる。
【0062】
本実施形態の複合不燃成形体は、後述の鉄道車両用材料燃焼性試験において、極難燃性又は不燃性であることが好ましく、より不燃性を高める観点から不燃性であることが好ましい。
【0063】
本実施形態の複合不燃成形体は、軽量性と耐火性とを備えるため、燃費が要求されつつ、着火時に燃焼が広がりやすい高速移動中での耐火性が要求される、鉄道、自動車、二輪車、航空機用の構造体に好適に用いることができる。特に、静置状態での耐火性が要求される建材用途と異なり、単純な不燃性だけでなく軽量性、組付けや補修時の容易性を同時に求められるため、鉄道、自動車、二輪車、航空機用の構造体に好適に用いることができる。また、本実施形態の複合不燃成形体によれば、壁や天井へ適用する構造体を軽量化できるため、重心をできるだけ低くすることができ、走行時の安定性を高めやすく、鉄道、自動車、二輪車、航空機用の構造体として好適に使用できる。
上記鉄道、自動車、二輪車、航空機用途の中でも、不燃性が要求される、客室の天井及び内張、床板、床下面に用いる用途として好適である。なお、客室の天井等に用いる用途とは、天井等そのものを構成する材料に加え、天井に備え付けられる部品(例えば、蛍光灯、エアコン、通気ダクト等)の一部を構成する材料も含むものとする。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
【0066】
(1)発泡体層の発泡倍率
後述の実施例及び比較例で得られた複合不燃成形体の発泡体層より、30mm角、10mm厚みを目安にサンプルを切り出し、当該サンプルの質量W(g)を測定し、サンプル体積(cm3)を質量で除した値(V/W)を発泡倍率(cm3/g)とした。
なお、上記切り出しが難しい場合には各実施例及び各比較例と同じ材料を準備してサンプル質量を測定し、水没法により体積を測定し、それぞれの値を使用して密度を算出してもよい。
【0067】
(2)発泡体層の難燃性
後述の実施例及び比較例で得られた発泡体層について、米国UL規格のUL-94垂直法(20mm垂直燃焼試験)に準拠した試験を行い、難燃性の評価を行った。
以下に測定方法の詳細を示す。
発泡体層から切り出した、長さ125mm、幅13mm、厚さ5mmの試験片を5本用いた。試験片をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV-0、V-1、V-2の判定を行った。
V-0:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は10秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V-1:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火なし。
V-2:1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間は30秒以内、更に2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が60秒以内、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が250秒以内、固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない、燃焼落下物による綿着火有り。
なお、上記V-0、V-1、V-2のいずれにも該当しないものは不適合(×)とした。
【0068】
(3)鉄道車両用材料燃焼性試験
図3に示す通り、実施例、及び比較例に記載の成形体を、B5サイズ(182mm×257mm)にて準備した。続いて、試験サンプル(供試体)を45°傾斜の状態で配置し、アルコール容器の底の中心が、試験サンプルの下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のとなるように、熱伝導率の低い材質からなる容器受台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで燃焼させた。
燃焼判定は、一般財団法人 日本鉄道車両機械技術協会の定める鉄道車両用材料燃焼性試験を基に、以下の表1のとおり判定した。
試験室内の条件は、温度18℃、湿度65%で空気の流動がない状態とした。
なお、本試験において、アルコール燃焼時間は、90~100秒であった。
また、試験後の成形体より、金属層を注意深く剥がし、燃焼試験において金属層の着炎した部分の直下の発泡体の金属層側表面を観察した。剥離時に発生する表面荒れ部分を除外して、発泡体の表面に最大深さ0.5mm以上の変形があった場合を×(不良)、無かった場合を〇(良好)として、外観観察を行った。
【0069】
(4)発泡体の1%寸法収縮温度
後述の実施例及び比較例で得られた発泡体層について、JIS K6767の高温時の寸法安定性試験B法に従って加熱寸法変化の試験を行った。このとき、加熱温度を70℃、80℃、90℃のように10℃毎に変化させて試験を行い、加熱寸法変化率が1%を超えたときの温度を1%寸法収縮温度とした。
【0070】
【0071】
(実施例1)
ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成株式会社製)を60質量%と、非ハロゲン系難燃剤としてビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)(BBP)を15質量%と、ゴム濃度が6質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を10質量%と、汎用ポリスチレン樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン(株)製)を15質量%とを加え、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。尚、基材樹脂はポリフェニレンエーテル系樹脂と汎用ポリスチレン樹脂であり、共に構成単位に芳香環を有することから、基材樹脂中の芳香族を有する単量体単位は100質量%である。
特開平4-372630号公報の実施例1に記載の方法に準じ、基材樹脂ペレットを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、圧力3.0MPa、温度10℃の条件下で3時間かけて基材樹脂ペレットに対して二酸化炭素を含浸させた後、圧力容器から取り出してすぐに基材樹脂ペレットを移送し、基材樹脂ペレットを発泡炉内で攪拌羽を77rpmにて回転させながら最大260kPa・Gの加圧水蒸気により発泡し、発泡粒子(発泡ビーズ)を得た。また、発泡粒子の炭化水素ガスの含有量を発泡直後にガスクロマトグラフィーにより測定したが、検出限界(0.01質量%)以下であった。
その後、この発泡粒子を容器内に入れ、加圧空気を導入(0.4MPaまで4時間かけて昇圧し、その後0.4MPaで16時間保持)することで、加圧処理を施した。これを、水蒸気孔を有する成形金型内に充填し、水蒸気で加熱して発泡粒子を相互に膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出して、発泡粒子からなる発泡体(B5サイズ、182×257mm、厚みは表2に記載)を得た。
得られた発泡体と、表2に記載の厚みのアルミニウム板(A5052)を、接着剤(セメダイン社製、SX720W、0.05mm厚みで発泡体へ塗布)により貼合して、成形体を得た。発泡体の形状は、金型形状によく追従しており、成形性が良好であることを確認した。
得られた成形体、及び発泡体層について評価を行った結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2)
基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する際の加圧水蒸気の最大蒸気圧を280kPa・Gへ変更した事、アルミニウム板の厚みを変更した事以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
(実施例3~5、比較例2)
基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する際の加圧水蒸気の最大蒸気圧を330kPa・Gへ変更した事、アルミニウム板の厚みを変更した事、発泡体層の厚みを変更した事以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(実施例6~11)
基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する際の加圧水蒸気の最大蒸気圧を330kPa・Gへ変更した事、アルミニウム板の厚みを変更した事、発泡体層の厚みを変更した事、更に以下に記載の通り予め発泡体層に溝を形成しておき、金属層との積層の際に溝以外の部分が密着するように積層した事以外は、実施例3と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。尚、成形体を作製する際、接着剤は発泡体の溝以外の場所に塗布し、成形体を得た。また、密着面積割合は、得られた成形体から金属層を剥がして接着状態を目視で確認し、金属層と発泡体層が接していた部分の面積を測定して算出した。
発泡体層の溝作製:
発泡体を成形する際、最終的に得られる発泡体に
図4に示す溝が形成されるように金型を修正し、発泡粒子から成る発泡体を得た。実施例6~11のいずれにおいても、発泡体は金型に形成した溝形状によく追従しており、成形性が良好であることを確認した。
【0075】
(実施例12)
発泡体を成形した後、更に150℃のオーブン中で加熱することにより発泡ビーズを熱収縮させ、発泡体の表面に巨大なビーズ間隙構造を作製した事以外は、実施例3をと同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。尚、成形体を作製する際、接着材は発泡体の間隙部以外の場所に塗布し、成形体を得た。また、密着面積割合は、得られた成形体から金属層を剥がして接着状態を確認し、金属層と発泡体層が接していた部分の面積を測定して算出した。
【0076】
(実施例13)
基材樹脂ペレットの作製工程を以下のとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
基材樹脂ペレット製造工程:
ポリスチレン系樹脂(PS)としてGP685(PSジャパン株式会社製)を60質量%と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)としてS201A(旭化成株式会社製)を40質量%とを、押出機にて加熱溶融混練の後に押出し、基材樹脂ペレットを作製した。尚、基材樹脂はポリフェニレンエーテル樹脂と汎用ポリスチレン樹脂であり、共に構成単位に芳香環を有することから、基材樹脂中の芳香族を有する単量体単位は100質量%である。
【0077】
(実施例14)
特開平4-372630号公報の実施例2に記載の内容を参考に、最終的に得られる発泡体の倍率が表2に記載の内容となるように、2次発泡粒子の製造工程における発泡粒子の内圧を調整し、得られた2次発泡粒子を用いて実施例4と同様の方法にて成形体を作製した。上記評価を行った結果を表2に示す。尚、基材樹脂はポリエチレンのみであることから、基材樹脂中の芳香族を有する単量体単位は0質量%である。
【0078】
(実施例15)
発泡体層の製造方法を以下の通り変更したこと、アルミニウムの板厚を表2に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
発泡体層の製造方法:
特開2018-44127の実施例5に記載の方法に準じて、ポリアミド系樹脂から成る発泡体を作製した。
【0079】
(実施例16、実施例17)
使用するアルミニウム板の厚みを変更した以外は、実施例3と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
(実施例18)
発泡粒子に対して加圧処理を施した後、金型に充填して成形を行う際、金型(面積:300×300mm)の中に、予め金型の壁面に沿うように0.3mm厚みのアルミニウム板(B5サイズ、182×257mm)を設置して置いた状態で、発泡粒子の充填、及び水蒸気加熱を行う事で、接着剤による貼合を行うことなく複合不燃成形体を得た。得られた成形体に対して、上記評価を行った結果を表2に示す。なお、予めアルミニウム板を金型内に設置することにより、アルミニウム板近傍には加熱のために使用する水蒸気が行き渡りにくくなるため、アルミニウム板側の発泡体表面は加熱不足による発泡粒子間の間隙が認められ、巨大な間隙構造を形成した。なお、該巨大な間隙構造は、両端が複合不燃成形体の端までのびる構造である。また、該巨大な間隙構造の寸法は、位置によって異なるため、表2に寸法は記載していない。なお、位置によって寸法が異なる構造であっても、溝全体の各位置の寸法の平均値を、溝の幅、長さ、深さとしてよい。
【0081】
(実施例19)
基材樹脂ペレットから発泡粒子を製造する際の加圧水蒸気の最大蒸気圧を210kPa・Gへ変更した事、アルミニウム板の厚みを変更した事、発泡体層の厚みを変更した事以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
アルミニウム板の厚みを変更した事以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
(比較例3)
発泡体層の製造方法を以下の通り変更したこと、アルミニウムの板厚を表2に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
発泡体層の製造方法:
特開平4-372630号公報の実施例3記載の内容を参考に発泡温度を調整することで、最終的に得られる発泡体の倍率が15.0(cm3/g)となるように、2次発泡粒子の製造工程における発泡粒子の内圧を調整し、低密度ポリエチレン(LDPE)の2次発泡粒子を得た。
その後、この発泡粒子を容器内に入れ、加圧空気を導入(0.4MPaまで4時間かけて昇圧し、その後0.4MPaで16時間保持)することで、加圧処理を施した。これを、水蒸気孔を有する型内成形金型内に充填し、水蒸気で加熱して発泡粒子を相互に膨張・融着させた後、冷却し、成形金型より取り出して、発泡体を得た。
【0084】
(比較例4)
発泡体層として発泡スチロール(タミヤ社、高密度発泡スチロール10mm厚、Item No. 70165)を使用したこと、アルミニウムの板厚を表2に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、上記評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の複合不燃成形体は、軽量性と耐火性とを備えるため、燃費が要求されつつ、着火時に燃焼が広がりやすい高速移動中での耐火性が要求される、鉄道、自動車、二輪車、航空機用の構造体に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 複合不燃成形体
2 金属層
3 発泡体層
4 積層構造
5 溝