(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】搾乳ポンプの動作を制御する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/06 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A61M1/06
(21)【出願番号】P 2022548893
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2021053592
(87)【国際公開番号】W WO2021160875
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503465052
【氏名又は名称】メデラ ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】プライム、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミトウラス、 レオン
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-507577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0228342(US,A1)
【文献】国際公開第00/057934(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空源の動作を制御するための制御装置と動作可能に結合される真空源によって真空を印加することにより、搾乳ポンプの動作を制御する方法であって、
前記制御装置は、母乳の体積流量(V)を示す信号を受信し、前記母乳の体積流量(V)を示す前記信号に応答して、前記真空源の経時的な真空プロファイルの形状を調整
し、
前記母乳の体積流量(V)を示す前記信号が低流量閾値と高流量閾値との間にある場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状はデフォルト(D)に設定され、
前記母乳の体積流量(V)を示す前記信号が前記高流量閾値を超える場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は増強され(I)、
前記母乳の体積流量(V)を示す前記信号が前記低流量閾値を下回る場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状の少なくとも1つが減少される(DE)、方法。
【請求項2】
前記経時的な真空プロファイルの形状は、搾乳フェーズ(E、G)の開始後に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号は定量的な体積流量(V)を示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
刺激(S)の間に適用される前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は、前記母乳の体積流量(V)を示す前記信号が前記低流量閾値を下回る場合、搾乳フェーズ(E、G)において選択される、請求項
1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記経時的な体積流量(V)の変化(dV/dt)の値がゼロ値に近づく場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は調整される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記経時的な体積流量(V)の変化(dV/dt)の正の値がゼロ値に近づく場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は増強される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記経時的な体積流量(V)の変化(dV/dt)の負の値がゼロ値に近づく場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は減少される、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの真空サイクル(C1、C2、C3)の間の前記体積流量(V)は分析されて、少なくとも1つの後続の真空サイクル(C2,C3)のために前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状を調整する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの真空サイクル(C1、C2、C3)の間の前記体積流量(V)は、前記少なくとも1つの真空サイクル(C1、C2、C3)の間のピーク体積流量(V)及び/又は全体積流量(V)について分析され、
前記ピーク体積流量(PV1、PV2)及び/又は前記全体積流量(V)が前の真空サイクルと後の真空サイクルとの間で増加する場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は、少なくとも1つの後続の真空サイクル(C2,C3)において増強され、
前記ピーク体積流量(V)及び/又は前記全体積流量(V)が前の真空サイクルと後の真空サイクルとの間で減少する場合、前記真空源の前記経時的な真空プロファイルの形状は、少なくとも1つの後続の真空サイクル(C2,C3)において減少される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記経時的な真空プロファイルの形状は、経時的な真空プロファイル履歴及び/又は母乳の体積流量(V)履歴を記憶するメモリに記憶されたデータに基づいて調整される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの真空サイクルの間の体積流量(V)を示す情報は、経時的な真空プロファイル履歴及び/又は母乳の体積流量(V)履歴を記憶するメモリから取得される、請求項
8又は
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空源の動作を制御する制御装置と動作可能に結合される真空源によって真空を印加することにより、搾乳ポンプの動作を制御する方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、母乳を搾るための母乳ポンプにおけるそのような方法に関し、特に、電動式等のモータ駆動式の母乳ポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
授乳中の母親が使用する母乳ポンプは周知である。これは、授乳中の女性が必要又は都合に応じて、母乳を搾ること、さらに後の使用のために母乳を採取することを可能にする。母親によっては、例えば、子供が授乳の問題を抱えている場合、又は母親が母乳生成の過剰若しくは不足、又は乳頭の痛み、変形若しくは損傷等の問題を抱えている場合に、母乳ポンプが必要になることがある。
【0004】
手動式の母乳ポンプは一般的であるが、これは主に比較的安価で輸送が容易であるためである。しかしながら、手動で駆動すると、発生するストローク速度と吸引圧が不均一になり、最終的にはポンプの操作に疲れる可能性がある。電動式の母乳ポンプも一般的である。これらは、非携帯型又は半携帯型の実質的に大きなサイズを有する場合があり、一般的には標準的な家庭電流に差し込む電気モータを備えた真空ポンプを含んでいる。
【0005】
このタイプのポンプの利点は、真空の素早い制御性及び調整、並びに両方の乳房を一度にポンプでくみ出す能力である。すなわち、授乳中の女性は、2つの母乳ポンプシールドを所定の位置に保持して同時に両乳房をポンプでくみ出すために、両手を自由に動かすことができる。電池駆動式の母乳ポンプも開発されている。これらの母乳ポンプは、真空の制御性及び調整だけでなく、持ち運びも簡単であるという利点を有する。このような電池駆動式の携帯型母乳ポンプは、例えばUS4,964,851に記載されている。この母乳ポンプは、Medela社によってMINIELECTRICという名前で販売されており、軽量であり、例えば、約30から約300mmHgの間の好ましい限度で良好な真空(すなわち負圧)調整を達成する。
【0006】
また、Medela社が販売しているLACTINA母乳ポンプも、家庭用の電流だけでなく電池でも駆動し得る別のタイプの母乳ポンプである。これは、概して、US5,007,899に開示されている。
【0007】
電動式のモータ駆動母乳ポンプは、ほぼ例外なく、所与のポンプのための1種類の「サイクル」を有するように開発されている。すなわち、より洗練されたポンプで乳房に印加される真空(負圧)を発生させる駆動機構は、負圧増加(すなわち吸引力増加)及びその後の放出の特定のシーケンス、又は曲線に合わせて調整される。これは、多くの場合、例えば乳児の吸引行動をある意味で再現することを目的としている。搾乳ポンプは様々な範囲の状態をカバーすることができるが、例えば、母親の乳首が何らかの理由で痛みがある場合、著しい充血状態があり、何らかの乳首刺激が特に望まれる場合があり、排出及び弛緩が特に関心の対象であってもよく、母乳の生産量を増やすことが望まれる場合等がある。この要求に対処するため、WO2003/082378A1には、とりわけ、複数の異なる搾乳シーケンス、又は曲線を生成するようにプログラムされた母乳ポンプが開示されている。
【0008】
WO2010/096547A1には、新生児の吸引パターンを模倣した電動モータ式の母乳ポンプの制御が開示されている。
【0009】
一般的に、電動モータ式の母乳ポンプは、少なくとも2つの異なる吸引パターンを提供するように制御される。サイクルの開始時には、通常毎分100サイクル以上の高速真空サイクル周波数が適用され、母乳の放出を誘発し、すなわち最初の母乳の流れを引き起こす。この乳汁排出プログラムとは別に、母乳ポンプのコントローラは、より遅い真空サイクル周波数を適用するように適応されており、その結果、一度母乳が排出された後、すなわち母乳の流れが発生した後に、乳房から母乳を抽出するための真空サイクルは長くなる。例えば、WO2003/082378A1には、メインポンププログラムの動作パラメータとして100から250mmHgの範囲の真空及び毎分47から78の周波数が開示されており、一方で、乳汁排出プログラム又は刺激プログラムは毎分120から150のサイクルで50から150mmHgの範囲の真空を印加する。WO2003/082378A1によるポンプの動作パラメータを制御するための各種プログラムは、ユーザによって選択される。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、授乳中の母親の乳房からの搾乳ポンプの操作を調整する方法であって、乳房組織の特性に悪影響を及ぼすことなく、十分な量の母乳を供給することができる方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記の問題の解決策として、本発明は、請求項1に定義された方法を提供する。
【0012】
この方法は、実際の母乳の体積流量に依存する真空源の動作パラメータを調整することによって、真空源の動作を制御し、この体積流量は母乳ポンプのポンプ実行によって生じる。
【0013】
母乳ポンプは、通常、電気駆動式の母乳ポンプであり、例えばWO2003/082378A1に記載されているような構成を有し得る。
【0014】
母乳ポンプは、授乳中の母親の乳房を受け入れるように適合される乳房シールドと、通常は乳房シールドと流体連通している採取容器との間の母乳の体積流量を感知するように適合されるセンサをさらに有する。通常、乳房シールドと採取容器との間に母乳チャネルが設けられており、この母乳チャネルは、乳頭に陰圧を印加して母乳の流れを強制するために真空源に接続されている。
【0015】
母乳の体積流量を示す信号を取得するために、乳房シールドから採取容器に向かう途中の母乳の飛沫を数える等の任意の適切な測定技術を使用することができる。このため、例えばUS2015/0283311A1に記載されているように、母乳の流れは連続的に測定され得る。また、例えばWO2018/045349A1に教示されているように、採取容器に含まれる流体の体積の経時的な測定から母乳の流れを計算することも可能である。さらに、乳房シールドと採取容器との間に配置された測定室で所定の体積が測定され得るが、この測定室は開口弁を有しており、経時的に測定室内で採取された体積を測定するために母乳を所定期間保存するように適合されている。
【0016】
上記の全ての測定で、母乳シールドから採取容器への母乳の体積流量を示す信号が取得され得る。センサは単に体積流量の存在を測定するだけであってもよい。したがって、センサは、例えば、体積流量の有無を示す信号を提供するだけであってもよい。
【0017】
言い換えれば、母乳の体積流量を示す信号は、乳首から乳房シールドを経て、採取容器に至るまでの実際の母乳の体積流量の有無又は量に関する情報を連続的に提供する信号であってもよい。あるいは、チャンバ内での存在又は実際の体積及びその体積の経時変化に関する離散的な情報が、母乳の体積流量を示す信号として利用されてもよい。
【0018】
この信号に基づいて、真空源の少なくとも1つの動作パラメータが調整される。母乳の体積流量を示す信号に応答して調整される動作パラメータは、真空源、すなわちポンプの任意の動作パラメータであってもよい。しかしながら、真空強度、サイクル周波数又は経時的な真空プロファイルの形状の動作パラメータのうち少なくとも1つは、母乳の体積流量を示す信号から取得された情報に従って調整される。
【0019】
このうち、真空強度は、実際には、印加された真空準位の絶対値である。サイクル周波数は、最大真空強度、すなわち印加された吸引の最高絶対値と0mmHgの吸引であり得る最低吸引値との間で真空が周期的に印加されることを想定している。
【0020】
吸引圧は通常負圧である。技術的な教示を分かりやすくするために、印加される吸引圧は絶対吸引圧と呼ばれ、高い吸引圧は乳頭において最も吸引効果が高く、低い吸引圧は乳頭において及び/又は母乳ポンプのいずれかの領域内で最も吸引効果が低いか又はまったくない。吸引圧の最低値は通常0mmHgである。吸引サイクルは、乳房又は乳首にある程度の陽圧を印加してもよい。
【0021】
さらに、体積流量を示す信号に応答して調整される少なくとも1つの動作パラメータは、真空プロファイルの形状であってもよい。WO2003/082378A1には、1つの特定のサイクル内の様々な真空プロファイルが開示されている。真空プロファイルは、最高値と最低吸引値の間に放物線又は正弦曲線を示し得る。WO2003/082378A1の
図14に示されているように、吸引曲線は、同様に、最大吸引力のピークと、最低吸引力から相当の急勾配を持つピークの次の安定期、すなわち安定期又はピークへの0mmHgの吸引を持つ特定のプロファイルを示し得る。真空プロファイルは、真空源としてのポンプの単一又は複数のストローク動作から生じ得る。体積流量を示す信号に応答して、モータの速度、すなわちポンプ集合は、母乳ポンプ内で動かされた空気の気流の速度と共に変更され得る。
【0022】
動作パラメータと実際のプロファイル及び値、すなわち、真空の強度、サイクル周波数又は経時的な真空プロファイルの形状は、母乳ポンプの特定の位置に、すなわち、真空源、母乳チャネル、採取容器又は乳房シールド内で、特に乳頭の近くに存在し得る。空気の圧縮性により、例えば乳頭において測定された実際の真空強度、サイクル周波数及び/又は経時的な真空プロファイルの形状は、この点に関してポンプに対して設定された動作パラメータから逸脱し得る。
【0023】
本発明を実行するためには、母乳ポンプ内の特定の位置における各パラメータ及び各パラメータの構成をどこで測定するかは決定的ではない。しかしながら、この方法を適用する装置の1つ以上の真空源のポンプ動作中に、実際の母乳の流れに応じて、母乳ポンプ内の真空源の動作パラメータを調整することが決定的である。
【0024】
本方法は、特に搾乳フェーズの開始後、すなわち母乳の「排出」の時点又はその後に適用される。言い換えれば、母乳の体積流量を示す信号に応じた動作パラメータの制御及び調整は、好ましくは、刺激フェーズの終了後であって、乳房から母乳を採取するいわゆる搾乳フェーズで実行される。
【0025】
動作パラメータは連続的又は周期的に適応される。真空源パラメータが瞬時に変化するような真空源の不安定な動作状態を避けるために、真空源の制御は、母乳の体積流量を示す信号に応答して動作パラメータが設定された後で、所定のレベルで一定期間にわたって設定された動作パラメータを保持するための保持時間を適用してもよい。このような保持フェーズは、数秒から数分まで適用されてもよい。好ましくは、保持時間は、5秒から300秒の間で設定される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの動作パラメータを調整するために使用される信号は、母乳の定量的な体積流量を示す信号である。言い換えれば、少なくとも1つの動作パラメータの調整には、母乳の流れの有無だけでなく、実際の体積流量が使用される。特に、測定チャンバ内の体積を測定することによって体積流量が周期的に決定される場合、経時的な体積流量の分解能は相当に粗くなり得る。本発明の方法を実行するためには、体積流量の実際の量に関する連続的な情報は必要ない場合がある。例えば、通常の体積流量、高い体積流量、又は低い体積流量のように、体積流量を異なる品質に割り当てることで十分な場合があり、低い体積流量にはゼロ体積流量の母乳が含まれてもよい。
【0027】
通常、真空源の動作パラメータ、特に真空強度、サイクル周波数、又は経時的な真空プロファイルの形状は、母乳の体積流量が低流量閾値と高流量閾値との間にある場合に、一定の範囲内で選択されてもよい。このような通常の又はデフォルトの動作パラメータは、最先端の搾乳フェーズで通常適用されるパラメータに対応し得る。母乳ポンプのユーザの個々の要求に応じて、このようなデフォルトの操作状態は、ユーザが(複数の)事前に設定されたデフォルトの動作パラメータに不快感を感じる場合に、より低刺激の状態に適応され得る一方で、快適な状態でより高い収量を得るために、体積流量を最適化するパラメータを設定するようにユーザによって変更されてもよい。
【0028】
ユーザによって設定されると、母乳の体積流量が低流量閾値と高流量閾値との間にある場合に、(複数の)それぞれの動作パラメータが新しい通常の動作パラメータとして適用され、新しいデフォルトとして保存され得る。
【0029】
好ましくは、デフォルトの動作パラメータは、母乳の体積流量を示す信号が高流量閾値を超える場合に、真空源の動作パラメータを増強するように調整される。発明者による観測によって、特に高体積流量の母乳は、ユーザの快適性レベルに悪影響を与えず及び/又は乳房組織の特性に悪影響を与えることなく、授乳中の女性の乳房に増強された動作パラメータを適用することが可能になるという結論に至った。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態は、母乳の流れが高流量閾値を超える場合には、増強された動作パラメータを選択し、この増強された動作パラメータはより高い収量を得るために使用される。
【0030】
増強された真空強度の場合、それぞれの真空強度は、母乳の体積流量が低流量閾値と高流量閾値の間にある場合に適用される通常の真空強度よりも高い絶対値を有する。例えば、デフォルトの真空強度が200mmHgに設定されている場合、増強された真空強度は250mmHg又は300mmHgに相当する吸引力になり得る。
【0031】
増強されたサイクル周波数は、デフォルト周波数より低くてもよい。刺激フェーズでは、サイクル周波数は毎分100から150サイクルに設定され得る一方で、搾乳フェーズでは、母乳の体積流量が存在する場合には、毎分約10から78サイクル、好ましくは毎分約28から78サイクルのサイクル周波数が適用されてもよい。この範囲内で、デフォルトのサイクル周波数は、例えば、毎分45から99サイクル、好ましくは、毎分45から78サイクルの間で設定されてもよく、一方、増強されたサイクル周波数は、毎分28から44サイクルの間で設定されてもよい。
【0032】
真空プロファイルに関して、母乳の体積流量が低流量閾値と高流量閾値との間にある場合に、通常の、すなわち一般的に適用される状態が適用されてもよい。経時的な真空プロファイルの増強された形状は、より高い体積流量、すなわち乳房からの母乳の搾乳につながることが観測された任意のプロファイルであり得る。経時的な真空プロファイルの増強された形状は、低い又はゼロの真空強度値から最大吸引値までの相当に急峻な曲線を示し、最大吸引値に近い安定期と、サイクルの終了時に低い又はゼロの真空に戻る急な低下とがサイクルの終了時に適用されてもよい。
【0033】
まとめると、1つ以上の増強された動作パラメータは、乳房からの母乳抽出の効率を高めるために、より高い真空強度が適用される。センサは、例えば、体積流量を通知し、体積流量の量を示す情報を観測することができる。このようなセンサの信号は、増加した母乳出力動作に移行するように動作パラメータを変更するために、アルゴリズムで定義された閾値レベルに転送されてもよい。デフォルトの動作状態は、それ自体である場合もあれば、母乳ポンプのユーザが個別に調整した後で、低流量閾値及び高流量閾値の範囲内の快適な動作に従ってもよく、1つ以上のこれらの動作パラメータは、母乳の出力を増加させるために増強される。
【0034】
真空強度のような増強された動作パラメータに対するユーザの許容可能な範囲は、体積流量、すなわち乳房からの母乳の流れによって変化し得る。センサは、アルゴリズムで定義された閾値レベルを超える体積流量を検出することが可能であり、真空源システムが少なくとも1つの動作パラメータを自動的に増強することを可能にすることができる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、母乳の体積流量を示す信号が低流量閾値を下回る場合、真空源の動作パラメータの少なくとも1つが減少する。減少した真空強度は、より低い真空強度である。このようなより低い真空強度は、刺激フェーズで適用される真空強度と同じくらい低くすることができる。減少した真空強度は、刺激フェーズに適用された真空強度よりもさらに低い値をとってもよい。異なる真空強度値が適用されてもよく、それぞれはデフォルトの真空強度よりも低くなる。
【0036】
減少したサイクル周波数は、より緩やかなサイクル周波数であり、1分間により多くのサイクル数を適用することによって具現化され得る。減少したサイクル周波数は、刺激フェーズで適用される周波数に対応し得る。
【0037】
経時的な真空プロファイルの減少した形状は、例えばWO2003/082378A1(
図12を比較)に極めて緩やかな吸引として記載されているように、真空の滑らかな曲線によって具現化され得る。詳細には、ゼロ吸引強度から最大吸引強度への円滑な移行と、真空強度曲線の急激な増減及び鋭いエッジを伴わないゼロ吸引強度への復帰は、経時的な真空プロファイルの減少する形状を特徴付け得る。さらに、各サイクルは吸引力のない期間を含んでもよく、これは各サイクル時間の30から50%に相当する期間を想定し得る。言い換えれば、吸引力は各真空サイクルの一部にのみ印加されてもよく、残りの部分には吸引力は印加されない。
【0038】
減少した動作パラメータが適用された状況で、上記のセンサは、アルゴリズムで定義された低流量閾値を超える母乳の体積流量を検出してもよく、真空源が少なくとも1つの動作パラメータを自動的に増強してデフォルトのパラメータを適用し、例えば、搾乳フェーズで母乳の体積流量がゼロであるか又は非常に減少したことが検出された期間の後で、母乳の出力を増加させることを可能にする。
【0039】
母乳の流れが低下して低流量又は無流量状態になったときに、かなり高い真空強度及びより遅く長いサイクルを適用すると、乳房組織の特性に悪影響を及ぼして腫れや浮腫を助長し、乳管の収縮及び母乳の排出量の減少をもたらす。この発見により、本発明は、好ましくは、母乳の流れが低流量閾値を下回る場合に、少なくとも1つの動作パラメータを減少させることを提案する。
【0040】
一般に、母乳シールドから採取容器に流れる実際の母乳の量が、体積流量を示す信号として利用され得る。しかしながら、例えば、異なる流れ状態又は異なる予想流れ状態に対処するために動作パラメータの1つ以上を調整するかどうかを決定するために、そのような値を事前に選択された閾値と比較するために、当該信号の経時的な一次微分又は二次微分が使用されてもよい。
【0041】
ゼロ値に近づく経時的な一次微分は、母乳の体積流量の変化を検出するために利用され得る。経時的な体積流量の変化が正の値の場合、すなわち体積流量の経時的な変化が正の一次微分の場合に、それぞれの一次微分がゼロ値に近づくと、体積流量の極大値又は絶対最大値に達する可能性があり、これが動作パラメータを増強された又は減少した動作パラメータに適応させる理由となり得る。経時的な体積流量のそれぞれの一次微分、すなわち、経時的な体積流量の変化が負であり、ゼロ値に近づく場合、経時的な母乳曲線の体積流量の絶対又は極小値に近づいている可能性があり、これも少なくとも1つの動作パラメータを適応させる必要を生じさせ得る。
【0042】
経時的な体積流量の変化、すなわち、高い値を想定した経時的な体積の一次微分の場合には、搾乳の効率を高めるために動作パラメータは増強され得るが、低い経時的な一次微分、すなわち、経時的な体積流量の相当に遅い増加の場合、すなわち、経時的な体積流量信号が安定期に達する状態では、少なくとも1つの動作パラメータは減少され得る。
【0043】
高い経時的な体積変化(dV/dt)は、通常毎分15ml(0,27g/秒)から低い18ml(0,33g/秒)の間であるのに対し、低いdV/dtは低い5ml(0,9g/秒)から低い7ml(1、3g/秒)の間である。
【0044】
前述のように、経時的な体積流量の二次微分は、少なくとも1つの動作パラメータを増強状態又は減少状態のいずれかに調整することを決定するために、経時的な体積流量の二次微分の値を事前に選択された閾値と比較することによって、動作パラメータを調整するために使用されてもよい。
【0045】
少なくとも1つの動作パラメータを適応させるために真空源の制御装置に同様に実装され得る別の実施形態によれば、少なくとも1つの後続の真空サイクルのために真空源の動作パラメータの少なくとも1つを調整するために少なくとも1つの真空サイクル中の体積流量が分析される。言い換えれば、動作パラメータを設定する決定的な基準は、乳房から母乳を抽出する過程で得られる絶対体積流量ではなく、後続の真空サイクルのために少なくとも1つの動作パラメータを設定するための少なくとも1つの特定の以前の真空サイクルの収量であり、これは以前の真空サイクルの直前の真空サイクルであり得る。前述したように、各サイクル間の動作パラメータの瞬時の適応を回避するために、この実施形態でも同様に保持時間が適用されてもよい。したがって、少なくとも1つの真空サイクルは複数の真空サイクルであってもよく、及び/又は少なくとも1つの後続の真空サイクルは複数の真空サイクルのシーケンスであってもよい。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの真空サイクル中の母乳の体積流量は、少なくとも1つの真空サイクル中のピーク体積流量及び/又は全体積流量について分析される。このサイクルの分析に応じて、前のサイクルと後のサイクルとの間の全体積流量及び/又はピーク体積流量が増加する場合、真空源の少なくとも1つの動作パラメータは、少なくとも1つの後の真空サイクルで増強される。一方で、後の真空サイクルのピーク流量及び/又は全体積流量が、前の真空サイクルのような後の真空サイクルに先行する真空サイクルよりも低い場合、真空源の動作パラメータの少なくとも1つは減少される。
【0047】
サイクルごとの分析に基づく少なくとも1つの動作パラメータの調整により、実際の母乳の流れの状態に応じて動作パラメータを瞬時に適応させることができるようになり、それは少なくとも1つの真空サイクル中のピーク流量又は全体積流量に基づいて評価される。
【0048】
この方法の好ましい実施形態は、メモリからの少なくとも1つの真空サイクル中の体積流量を示す情報を利用することによって実行することができる。このメモリには、動作パラメータが調整される1つの特定のセッション中の体積流量を示すデータが記憶され得る。動作パラメータの設定も同様に、母乳の体積流量を示す信号に応じた動作パラメータの制御の挙動から学習して得られる情報に基づいて実行され得る。したがって、母乳の体積流量の特定の挙動に応じた動作パラメータの類似の制御がメモリから取得されて、少なくとも1つの動作パラメータを調整し得る。言い換えれば、メモリは、動作パラメータ履歴及び/又は母乳の体積流量履歴を記憶してもよい。前述のように、各データは、同じセッション中に取得されてもよい。同様に、メモリは、以前の1つの又は以前の全てのセッションの少なくとも1つの動作パラメータと経時的な母乳の体積流量との相関関係を記憶し、それらのデータを実際のセッション中の少なくとも1つの動作パラメータの実際の制御に適用してもよい。
【0049】
一般的に、この好ましい実施形態による動作パラメータの適切な設定は履歴に基づいて実行され、この履歴はメモリに記憶され、この履歴は動作パラメータ履歴及び/又は母乳の体積流量履歴に関係している。動作パラメータ履歴は、経時的な真空源の少なくとも1つの、好ましくは、全ての動作パラメータの設定を記憶してもよい。好ましくは、これらのデータは、個々のユーザの結果として生じる母乳の流れを相関させ、個々のユーザの母乳の排出効率を少なくとも1つの動作パラメータの設定と相関させるために、母乳履歴の体積流量と共に記憶される。
【0050】
このように、真空源の制御は、母乳の体積流量を示す信号によって、それぞれのユーザに対する最適な母乳抽出効率を提供するように、特定のユーザによる経験に基づいて行われる。
【0051】
以上をまとめると、本発明の方法は、母乳の体積流量を示す信号が、少なくとも増強された動作パラメータが抽出された母乳の体積流量を増加させるという想定を正当化する場合に、少なくとも1つの増強された動作パラメータを適用することによって、母乳抽出の効率を向上させることが可能になる。一方で、母乳の体積流量の信号が、母乳の搾乳中に低流量又は無流量の期間が近づいているか存在することを示している場合には、無流量又は低流量の期間よりも高い体積流量を発生させるために使用される高い又は通常の動作パラメータによる乳房組織の特性への悪影響を避けるために、少なくとも1つの動作パラメータが減少される。
【0052】
少なくとも1つの動作パラメータは、母乳の実際の体積流量に応じて設定されてもよい。母乳の体積流量を示す信号は、例えば、経時的な一次微分(dV/dt)又は経時的な二次微分(d2V/dt2)に基づいて分析され、経時的な母乳の流れの増加量から経時的な母乳の流れの減少量への遷移、及び/又は母乳の流れが異なる流量に到達する変化速度を識別し得る。上記の説明が経時的な体積流量の一次微分を指している限り、ゼロ値に近づくことは、経時的な体積流量の変化(dV/dt)に対する実際のゼロ値を観測しなければならないことを必ずしも意味するものではない。実際、第1の母乳の流れ増加期間と第2の母乳の流れ増加期間との間の安定期は、同様に、経時的な体積流量の変化がゼロ値に近づくと考えられる。安定期は依然として体積流量のわずかな増加を示し得る。第1の母乳の流れ減少期間と第2の母乳の流れ減少期間との間の安定期にも同様に当てはまり、安定期は経時的な母乳の流れの変化を示さないか又はわずかな減少を示し得る。
【0053】
あるいは、異なる真空サイクルが母乳の流れを示す信号と比較されて、実際の又は以前の真空サイクルに関する少なくとも1つの動作パラメータを設定してもよい。この制御により、単一の真空サイクル又は複数の真空サイクルが分析され、及び/又は単一の真空サイクル又は複数の後続の真空サイクルに対して少なくとも1つの動作パラメータが設定されてもよい。
【0054】
加えて又は代替として、特に母乳ポンプのより長い期間の動作後に、母乳の流れを示す信号に応答する真空源の制御は、履歴に基づいて、特に少なくとも1つの動作パラメータの設定又は調整と、母乳の抽出率、すなわち母乳の体積流量に関する特定のユーザの応答との間の相関関係に基づいて調整されてもよい。特に、この態様は、特定のユーザの個々の要求及び行動に対処するのに適している。このシステムは、好ましくは、人工知能を使用して、母乳の体積流量に関する動作パラメータ設定を改善し、片手で母乳の流れを最適化し、流れのない期間に乳房組織を低刺激で処理するために、個々のユーザに最適な少なくとも1つの動作パラメータを最終的に設定することを可能にする。
【0055】
本発明は、上述のように真空源を制御するために採用された制御を有する母乳ポンプに関する。
【0056】
本発明は、次に、本発明の異なる実施形態を参照すると共に図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】経時的な母乳の体積流量(
図1a)と、異なる動作パラメータ、詳細には、真空強度(
図1b)、サイクル周波数(
図1c)、及び経時的な真空プロファイル(
図1d)、並びに刺激及び搾乳のフェーズにおける異なるフェーズ(
図1e)を相関させる略図である。
【
図2】経時的な母乳の体積流量(
図2b)と、各サイクルで適用される真空強度(
図2a)を相関させるグラフを使用したサイクルごとの分析の例である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1aでは、縦軸が体積流量の実際の値を識別するのに対し、横軸は時間に関係している。時間t=0において、刺激フェーズが適用される。その反応として、母乳の排出は最終的にt1で起こる。t1は最初に顕著な母乳の体積流量を識別する。t1の直後、体積曲線は低流量閾値線Iと交差し、これは毎分5ml(0,09g/秒)の母乳の体積流量に相当する。t2では、体積流量曲線は、毎分11,9ml(0,22g/秒)で高流量閾値線IIと交差する。t2とt4との間では、母乳の体積流量はこの高流量閾値IIを超えている。その結果、増強された動作パラメータが適用され、これは
図1b~
図1dを参照してさらに説明される。
【0059】
刺激フェーズにおいて、かつt1の前に、約50mmHgの刺激真空強度(
図1b)及び毎分100から120サイクルのサイクル周波数(
図1c)が適用される。曲線形状(
図1d)、すなわち経時的な真空プロファイルは、放物線形をしており、最大値が各サイクルの中間にあり、0mmHg値から最大真空強度へ滑らかに移行している。
図1dでは、曲線は全て100%の真空強度に達するが、各曲線の真空強度レベルは異なる場合があり、
図1bから取得され得る。
【0060】
t1において母乳の第1の体積流量を感知すると、刺激フェーズの動作パラメータが母乳ポンプの制御装置によって遮断され、搾乳フェーズの動作パラメータが母乳ポンプの真空源の実行を制御する。母乳の流れが開始すると、通常の、すなわちデフォルトの動作パラメータが真空源の制御に使用される。サイクル周波数は刺激フェーズより低く設定される。通常のサイクル周波数は50CPMに設定される。真空プロファイルは、最大真空強度で安定期に達するための各サイクルにおける真空の急激な増加を示し、この安定期は最大真空強度の約80%のさらなる安定期に低下する。安定期の終わりには、真空は0mmHgまで低下し、その後すぐに上昇して次の真空プロファイルに対する次の安定期に達する。各サイクル周波数で、それぞれの経時的な真空プロファイルが適用される。これは、図面において経時的な真空プロファイルのいくつかの詳細を解明する必要があるため、
図1c及び
図1dに適切に反映されていない。
【0061】
しかしながら、サイクル周波数及びサイクルプロファイルは、一般的に真空源を形成する真空ポンプのストローク作用に直接起因する必要はない。各サイクル周波数及び/又は経時的な各真空プロファイルは、ポンプの複数回のストロークによって生じる可能性があり、ポンプは、保存するための追加のチャンバを有してもよく、及び/又は、例えば、母乳シールドにおいて又は母乳チャネルにおいて、実際の真空、経時的な真空のプロファイル、及び場合によっては真空の周波数を制御するためのバルブを有してもよい。
【0062】
図1aと
図1cと
図1dとの比較から明らかなように、サイクル周波数及び経時的な真空プロファイルのデフォルトの動作パラメータは、実際の母乳の体積流量が高流量閾値IIを下回るか又は上回るかに関わらず同じである。しかしながら、t4で明らかなように、体積流量が負のdV/dtを有する高い流量閾値、すなわち体積曲線の減少フェーズと交差する場合、真空強度は低下する。t5において、dV/dt=ゼロ値が観測され、これは通常の真空強度の設定を引き起こす。
【0063】
t2とt4との間では、サイクル周波数及び経時的な真空プロファイルと共に真空強度の増強された動作パラメータが適用される。明らかなように、増強された真空強度はt1の前の通常の真空強度よりも高い。一方で、増強されたサイクル周波数及び増強された経時的な真空プロファイルは、t1とt2との間のそれぞれのデフォルト動作パラメータと同じである。
【0064】
t6において、dV/dtは、dV/dt>0からdV/dt<0の間で観測される。しかしながら、この観測は、高流量閾値IIと低流量閾値Iとの間にあり、したがって、例示された実施形態における真空源の動作パラメータの調整を引き起こさない。
【0065】
t7において、流量曲線は低流量閾値Iと交差する。その結果、真空強度は80mmHgまで低下し、これが第1の減少された真空強度となる。サイクル周波数は、第1の減少されたサイクル周波数値である78CPMに上昇するが、
図1dに例示されている第1の減少された曲線形状は刺激フェーズの曲線に対応する。
【0066】
t9とt10の間において、流量体積は非常に少なく、最終的にゼロになる。これにより、真空強度は50mmHgの第2の減少されたレベルまでさらに低下し、一方で、刺激フェーズと同様に毎分100から120サイクルのサイクル周波数が適用され、これは第2の減少されたサイクル周波数を表す。t9とt10の間の曲線形状は、t7とt9の間と基本的に同じである。この経時的な真空プロファイルの減少形状は、安定期のない滑らかな増減を示す。これは、真空強度0mmHgに相当する絶対最小値を持つ正弦曲線に相当する。
【0067】
t10とt11の間の体積流量プロファイル、すなわちゼロ流量からt11において低流量閾値を超える流量値までのプロファイルは、t1後の体積流量曲線と類似している可能性があるが、ポンプの制御装置は、この体積流量の挙動が搾乳フェーズで観測されているという事実を認識している。真空強度及びサイクル周波数は以前と同様に「デフォルト」に設定されているが、t11とt13の間、すなわち高流量閾値IIと低流量閾値Iとの間の真空プロファイルは、t1とt7の間とは異なる曲線を示している。経時的な真空プロファイルは、ゼロから最大強度値までの複数のステップ、及びそこから次のサイクルが開始される前のゼロ線までの急激な低下を示している。
【0068】
t13の後で、母乳の体積流量はさらに減少し、最終的にt14で枯渇する。この期間では、真空プロファイルの減少した形状が適用され、真空の上昇と真空のゼロ線への下降との間で相当に鋭いエッジがある。t13とt14の間のサイクル周波数は、t10とt13の間と同じである。真空強度は、t7とt9の間と同様であり、すなわち80mmHgである。
【0069】
t14の後で、刺激フェーズと同様に50mmHgの減少された真空強度が適用される。サイクル周波数は刺激フェーズと同じである。減少した真空プロファイルを示すt14の後の経時的な真空プロファイルは、t13とt14の間と同じである。
【0070】
図1eから明らかなように、搾乳フェーズにおいて、かつ刺激の後で、すなわちt1の後で、ユーザの乳房からの母乳の抽出が問題となる。t8とt10との間で、乳房組織を低刺激で処理するための真空源の制御が、真空源の制御の最終目標である。乳汁抽出を最適化しようとする過程は、
図1eのEで増強されるが、組織の一般的な処理はGで識別される。
【0071】
t10の後に母乳の流れが増加すると、低刺激の過程Gは、母乳抽出の効率を改善するために抽出過程Eに移行するが、一方で、低い流量閾値Iと負のdv/dtを交差させることは、すなわち母乳の流れが減少している場合は、低刺激の処理過程Gを有効にする(
図1eを比較)。
【0072】
上記の
図1の説明は単なる例である。この実施形態における動作パラメータの調整は、ほとんどが閾値I,IIによって引き起こされる。しかしながら、経時的な第1の微分によって引き起こされてもよい。例えば、t1とt2の間の体積流量の増加が大きいと考えられる場合、このような経時的な体積流量の変化dV/dtを観測することは、同様に動作パラメータの調整を引き起こし得る。一方、t4とt5との間の低下が大きいと考えられる場合であって、体積曲線が負のdV/dtを持つ場合、dV/dtの絶対値が非常に高いと、同様に、増強された動作パラメータからデフォルト又は減少への移行が引き起こされ得る。
【0073】
図2は、サイクルごとの唯一の動作パラメータとしての真空強度の調整を例示している。上記の実施形態では、
図2bで観測される体積流量は、適用されたサイクルC1;C2;C3(
図2a)に対する応答として分析される。
図2aの縦軸は、正のスケールで負の圧力値を有することに留意されたい。
【0074】
DV1、DV2、DV3はそれぞれ後続のピーク流量の差である。例えば、DV2は、第1のサイクルC1によるピーク流量PV1と第2のサイクルC2で観測された最小流量との差である。各サイクルC1、C2、C3は、高フェーズ真空強度HV、及び低フェーズ真空強度LVを有する。後続の各サイクルにおいて、DV値は経時的に増加し、したがってサイクルが進む。したがって、経時的な体積流量の正の進展が観測される。
【0075】
これにより、第2のサイクルC2の高フェーズ真空強度HVはC1よりも高く設定されているのに対し、この第2のサイクルC2の低フェーズ真空強度LVはC1よりも低く設定されている。したがって、後続のサイクルC1、C2では、乳頭への絶対圧力差が大きくなる。DV3とDV2とを比較したそれぞれの結果として、LVとHV及び/又はサイクルCの高フェーズにおける真空強度HVの絶対圧力差は、後のサイクルC4又はC5又はC6での体積流量のさらなる増加を期待して(図には示されていない)、上昇し、したがって増強され得る。
【0076】
サイクルC2の絶対体積流量PV2も、前のサイクルC1のピーク体積流量PV1と比較して高く、これは次のサイクルC3の真空強度を増強する別の基準を構成し得る。