(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】光電変換素子、表示装置、および光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/16 20230101AFI20240417BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240417BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20240417BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240417BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240417BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240417BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20240417BHJP
【FI】
H10K50/16
H05B33/14 Z
H10K50/115
H10K50/15
H10K71/20
H10K30/60
H10K30/85
(21)【出願番号】P 2022551097
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036639
(87)【国際公開番号】W WO2022064697
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061369(JP,A)
【文献】特開2019-052302(JP,A)
【文献】国際公開第2016/126928(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109216567(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0109326(KR,A)
【文献】特開2006-013464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/16
H05B 33/14
H10K 50/115
H10K 50/14
H10K 50/15
H10K 71/20
H10K 71/60
H10K 30/60
H10K 30/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、
前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、
前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記光電変換層との間の第1最短距離は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記第2電極との間の第2最短距離よりも、大きいことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、
前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、
前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第1端部領域に含まれる有機リガンドの第1比率は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第2端部領域に含まれる有機リガンドの第2比率よりも、大きいことを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
前記第2比率は、前記第1比率の0以上1/2以下であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第2電極はカソードであり、
前記キャリア輸送層は電子輸送層であり、
前記複数のキャリア輸送材料は、電子輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物、あるいは前記群から選択された2種以上の混晶系を含む請求項1~3の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記複数のキャリア輸送材料は、ZnO、MgO、LiO、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、Nb
2O
3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含むことを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記複数のキャリア輸送材料は、ZnOまたはZnOを含む混晶系を含み、
前記複数の有機リガンドは、アルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する有機化合物を含むことを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記第2電極はアノードであり、
前記キャリア輸送層は正孔輸送層であり、
前記キャリア輸送材料は、正孔輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物または2種以上の混晶系を含むことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記キャリア輸送材料は、NiO、MgO、LaO、MnO
3、V
2O
5、WO
3、ReO
3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含むことを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記複数の有機リガンドはPVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含むことを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記キャリア輸送層の前記第2端部領域は、前記第2電極に接していることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記複数のキャリア輸送材料のうちの前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料は、前記第2電極に接していることを特徴とする請求項10に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記キャリア輸送層の前記厚み方向において、前記第1端部領域の厚みは、前記第2端部領域の厚みよりも、大きく、
前記複数のキャリア輸送材料は粒子であり、
前記第1端部領域および前記第2端部領域は各々、前記複数のキャリア輸送材料について、1粒子層であることを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項13】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、
前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、
前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記光電変換層との間の第1最短距離は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記第2電極との間の第2最短距離よりも、大きい光電変換素子であって、
前記キャリア輸送材料は、1nm以上10nm以下の粒径を有する金属酸化物であることを特徴とす
る光電変換素子。
【請求項14】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、
前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、
前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第1端部領域に含まれる有機リガンドの第1比率は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第2端部領域に含まれる有機リガンドの第2比率よりも、大きい光電変換素子であって、
前記キャリア輸送材料は、1nm以上10nm以下の粒径を有する金属酸化物であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項15】
前記キャリア輸送層の前記厚み方向において、前記第2端部領域の厚みは、前記キャリア輸送層の厚みの1/30以上1/2以下であり、
前記複数のキャリア輸送材料は粒子であり、
前記第2端部領域は、前記複数のキャリア輸送材料について、1粒子層であることを特徴とする請求項1~
14の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項16】
前記光電変換層は、量子ドットを含むことを特徴とする請求項1~
15の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項17】
前記光電変換層は、発光層であることを特徴とする請求項1~
16の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項18】
前記光電変換層は、受光層であることを特徴とする請求項1~
16の何れか1項に記載の光電変換素子。
【請求項19】
請求項
2に記載の光電変換素子を2つ以上備え、
前記2つ以上の光電変換素子は、第1光電変換素子と第2光電変換素子とを含み、
前記第1光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第1光電変換層及び第1キャリア輸送層とし、
前記第2光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第2光電変換層および第2キャリア輸送層とし、
前記第1光電変換層の真空準位からの電子親和力は、前記第2光電変換層の真空準位からの電子親和力よりも小さく、
前記第1キャリア輸送層の前記第1比率は、前記第2キャリア輸送層の前記第1比率よりも小さい、表示装置。
【請求項20】
請求項1~
17の何れか1項に記載の光電変換素子を2つ以上備え、
前記2つ以上の光電変換素子は、第1光電変換素子と第2光電変換素子とを含み、
前記第1光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第1光電変換層及び第1キャリア輸送層とし、
前記第2光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第2光電変換層および第2キャリア輸送層とし、
前記第1光電変換層の真空準位からの電子親和力は、前記第2光電変換層の真空準位からの電子親和力よりも小さく、
前記第1キャリア輸送層に含まれる前記キャリア輸送材料の粒径は、前記第2キャリア輸送層に含まれる前記キャリア輸送材料の粒径よりも小さい、表示装置。
【請求項21】
第1電極を形成する第1工程と、
前記第1電極の上層に光電変換層を形成する第2工程と、
前記光電変換層の上層にキャリア輸送層を、前記キャリア輸送層が複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有するように、形成する第3工程と、
前記キャリア輸送層の上層に第2電極を形成する第4工程と、を含み、
前記キャリア輸送層から前記複数の有機リガンドの一部を除去する第5工程をさらに含むことを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項22】
前記第5工程は、前記第3工程と前記第4工程との間に行われることを特徴とする請求項
21に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項23】
前記第5工程において、前記複数のキャリア輸送材料は全て残存することを特徴とする請求項
21または
22に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項24】
前記第5工程において、アッシング処理、エッチング処理、紫外線照射、オゾン暴露、および有機溶剤で洗浄する有機洗浄から成る群から選択される1種以上の方法を用いて、前記複数の有機リガンドの上記一部を除去することを特徴とする請求項
21~
23の何れか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項25】
前記複数のキャリア輸送材料はZnO、ZnMgOから成る群から選択された1種以上の金属酸化物または2種以上の金属酸化物の混晶系を含み、
前記複数の有機リガンドはPVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含み、
前記第5工程において、アッシング処理およびエッチング処理から成る群から選択される1種以上の方法を用いて、前記複数の有機リガンドの上記一部を除去することを特徴とする請求項
24に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項26】
前記第5工程において、前記キャリア輸送層の厚み方向において、前記複数の有機リガンドを1nm以上20nm以下だけ除去することを特徴とする請求項
21~
25の何れか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、表示装置、および光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまなフラットパネルディスプレイが開発されており、特に、QLED(Quantum dot Light Emitting Diode:量子ドット発光ダイオード)またはOLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)を電界発光素子として備えた表示装置が注目を浴びている。
【0003】
特許文献1は、正孔輸送層に接する面と電子輸送層に接する面とが互いに異なる有機リガンド分布を有する量子ドット発光層を含む構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開2010-114079号(2010年5月20日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光素子および受光素子などの光電変換素子における電子輸送層および正孔輸送層などの電荷輸送層が、電荷輸送材料のナノ粒子とこれに配位する有機リガンドとを含む構成が知られている。
【0006】
このような電荷輸送層中の電荷輸送材料のナノ粒子と、アノードおよびカソードなどの電極との間には、有機リガンドが介在する。有機リガンドは誘電体である。これらのため、ナノ粒子と電極との間に電気的な接触不良が生じ、静電容量が形成される。
【0007】
この結果、発光素子に点灯中に注入された(または受光素子で露光中に発生した)電荷が、消灯(または遮光)後も当該素子に長時間滞留するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光電変換素子は、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記光電変換層との間の第1最短距離は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記第2電極との間の第2最短距離よりも、大きい構成である。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光電変換素子は、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第1端部領域に含まれる有機リガンドの第1比率は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第2端部領域に含まれる有機リガンドの第2比率よりも、大きい構成である。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光電変換素子の製造方法は、第1電極を形成する第1工程と、前記第1電極の上層に光電変換層を形成する第2工程と、前記光電変換層の上層にキャリア輸送層を、前記キャリア輸送層が複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有するように、形成する第3工程と、前記キャリア輸送層の上層に第2電極を形成する第4工程と、を含み、前記キャリア輸送層から前記複数の有機リガンドの一部を除去する第5工程をさらに含む方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、キャリア輸送層のキャリア輸送材料と第2電極との間は、電気的な接触が良好である。この結果、電界発光素子に電荷が滞留する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の上記一実施形態に係る表示デバイスの表示領域の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の上記一実施形態に係る発光素子層の概略構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の上記一実施形態に係る、互いに異なる色に発光するサブ画素における、電子輸送層の発光層に近い側に位置する第1端部領域を示す概略断面図である。
【
図5】
図3に示した発光素子層を形成する工程を概略的に示すフロー図である。
【
図6】
図3に示した発光素子層を形成する工程が含む工程を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図3に示した発光素子層を形成する工程が含む工程を概略的に示す別の断面図である。
【
図8】
図3に示した発光素子層を形成する工程が含む工程を概略的に示す別の断面図である。
【
図9】
図7に示す工程の別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図10】比較例に係る発光素子層205の概略構成を示す断面図である。
【
図11】本発明の別の一実施形態に係る発光素子層の概略構成を示す断面図である。
【
図12】
図11に示した発光素子層を形成する工程を概略的に示すフロー図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
(表示デバイスの製造方法及び構成)
以下においては、「同層」とは同一のプロセス(成膜工程)にて形成されていることを意味し、「下層」とは、比較対象の層よりも先のプロセスで形成されていることを意味し、「上層」とは比較対象の層よりも後のプロセスで形成されていることを意味する。
【0014】
図1は表示デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2は、表示デバイス2の表示領域の構成の一例を示す概略断面図である。
【0015】
フレキシブルな表示デバイスを製造する場合、
図1および
図2に示すように、まず、透光性の支持基板(例えば、マザーガラス)上に樹脂層12を形成する(ステップS1)。次いで、バリア層3を形成する(ステップS2)。次いで、薄膜トランジスタ層4(TFT層)を形成する(ステップS3)。次いで、トップエミッション型の発光素子層5を形成する(ステップS4)。次いで、封止層6を形成する(ステップS5)。次いで、封止層6上に上面フィルムを貼り付ける(ステップS6)。
【0016】
次いで、レーザ光の照射等によって支持基板を樹脂層12から剥離する(ステップS7)。次いで、樹脂層12の下面に下面フィルム10を貼り付ける(ステップS8)。次いで、下面フィルム10、樹脂層12、バリア層3、薄膜トランジスタ層4、発光素子層5、封止層6を含む積層体を分断し、複数の個片を得る(ステップS9)。次いで、得られた個片に機能フィルム39を貼り付ける(ステップS10)。次いで、複数のサブ画素が形成された表示領域よりも外側(非表示領域、額縁領域)の一部(端子部)に電子回路基板(例えば、ICチップおよびFPC)をマウントする(ステップS11)。なお、ステップS1~S11は、表示デバイス製造装置(ステップS1~S5の各工程を行う成膜装置を含む)が行う。
【0017】
樹脂層12の材料としては、例えばポリイミド等が挙げられる。樹脂層12の部分を、二層の樹脂膜(例えば、ポリイミド膜)およびこれらに挟まれた無機絶縁膜で置き換えることもできる。
【0018】
バリア層3は、水、酸素等の異物が薄膜トランジスタ層4および発光素子層5に侵入することを防ぐ層であり、例えば、CVD法により形成される、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは酸窒化シリコン膜、またはこれらの積層膜で構成することができる。
【0019】
薄膜トランジスタ層4は、半導体膜15と、半導体膜15よりも上層の無機絶縁膜16(ゲート絶縁膜)と、無機絶縁膜16よりも上層のゲート電極GEおよびゲート配線GH1と、ゲート電極GEおよびゲート配線GHよりも上層の無機絶縁膜18(層間絶縁膜)と、無機絶縁膜18よりも上層の容量電極CEと、容量電極CEよりも上層の無機絶縁膜20(層間絶縁膜)と、無機絶縁膜20よりも上層のソース配線SH、ソース配線SHよりも上層の平坦化膜21(層間絶縁膜)とを含む。
【0020】
半導体膜15は、例えば低温ポリシリコン(LTPS)あるいは酸化物半導体(例えばIn-Ga-Zn-O系の半導体)で構成される。
図2では、トランジスタがトップゲート構造で示されているが、ボトムゲート構造でもよい。
【0021】
ゲート電極GE、ゲート配線GHおよび容量電極CE、およびソース配線SHは、例えば、アルミニウム、タングステン、モリブデン、タンタル、クロム、チタン、および銅の少なくとも1つを含む金属の単層膜あるいは積層膜によって構成される。
【0022】
無機絶縁膜16・18・20は、例えば、CVD法によって形成された、酸化シリコン(SiOx)膜、窒化シリコン(SiNx)膜、または酸窒化シリコン(SiNO)あるいはこれらの積層膜によって構成することができる。平坦化膜21は、例えば、ポリイミド、アクリル等の塗布可能な有機材料によって構成することができる。
【0023】
発光素子層5は、平坦化膜21よりも上層のアノード22(陽極,いわゆる画素電極)と、アノード22のエッジを覆う絶縁性のエッジカバー23と、エッジカバー23よりも上層のEL(エレクトロルミネッセンス)層である活性層24と、活性層24よりも上層のカソード25(陰極,いわゆる共通電極)とを含む。エッジカバー23は、例えば、ポリイミド、アクリル等の有機材料を塗布した後にフォトリソグラフィよってパターニングすることで形成される。
【0024】
サブ画素ごとに、島状のアノード22、活性層24、およびカソード25を含み、QLEDである発光素子ES(電界発光素子)が発光素子層5に形成され、発光素子ESを制御するサブ画素回路が薄膜トランジスタ層4に形成される。
【0025】
活性層24は、例えば、下層側から順に、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を積層することで構成される。電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層のうち1以上の層を形成しない構成も可能である。
【0026】
アノード22は、光反射性を有する反射電極である。反射電極は例えばITO(Indium Tin Oxide)とAg(銀)あるいはAgを含む合金との積層によって構成されたり、Au,Ag,CuまたはAlを含む材料から構成されたりする。カソード25は、透光性の導電材で構成された透明電極である。透光性の導電材は例えばAg、Au、Pt、Ni、Irの薄膜、MgAg合金の薄膜、ITO、IZO(Indium zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped zinc Oxide)、GZO(Galium doped zinc Oxide)等である。表示デバイスがトップエミッション型でなく、ボトムエミッション型の場合、下面フィルム10および樹脂層12が透光性であり、アノード22が透明電極であり、カソード25が反射電極である。
【0027】
あるいは、平坦化膜21よりも上層に島状のカソード25を、いわゆる画素電極として形成し、活性層24よりも上層にアノード22を、いわゆる共通電極として形成した構成も可能である。この場合、活性層24は、例えば、下層側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を積層することで構成される。正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のうち1以上の層を形成しない構成も可能である。また、表示デバイスがトップエミッション型の場合、アノード22が透明電極であり、カソード25が反射電極であり、一方、表示デバイスがボトムエミッション型の場合、カソード25が透明電極であり、アノード22が反射電極である。
【0028】
発光素子ESでは、アノード22およびカソード25間の駆動電流によって正孔と電子が発光層内で再結合し、これによって生じたエキシトンが、量子ドットの最低空軌道(LUMO)あるいは伝導帯(conduction band)から最高被占軌道(HOMO)あるいは価電子帯(valence band)に遷移する過程で光が放出される。
【0029】
封止層6は透光性であり、カソード25を覆う無機封止膜26と、無機封止膜26よりも上層の有機バッファ膜27と、有機バッファ膜27よりも上層の無機封止膜28とを含む。発光素子層5を覆う封止層6は、水、酸素等の異物の発光素子層5への浸透を防いでいる。
【0030】
無機封止膜26および無機封止膜28はそれぞれ無機絶縁膜であり、例えば、CVD法により形成される、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは酸窒化シリコン膜、またはこれらの積層膜で構成することができる。有機バッファ膜27は、平坦化効果のある透光性有機膜であり、アクリル等の塗布可能な有機材料によって構成することができる。有機バッファ膜27は例えばインクジェット塗布によって形成することができるが、液滴を止めるためのバンクを非表示領域に設けてもよい。
【0031】
下面フィルム10は、支持基板を剥離した後に樹脂層12の下面に貼り付けることで柔軟性に優れた表示デバイスを実現するための、例えばPETフィルムである。機能フィルム39は、例えば、光学補償機能、タッチセンサ機能、および保護機能の少なくとも1つを有する。
【0032】
以上にフレキシブルな表示デバイスについて説明したが、非フレキシブルな表示デバイスを製造する場合は、一般的に樹脂層の形成、基材の付け替え等が不要であるため、例えば、ガラス基板上にステップS2~S5の積層工程を行い、その後、ステップS9に移行する。また、非フレキシブルな表示デバイスを製造する場合は、封止層6を形成する代わりに或いは加えて、透光性の封止部材を、封止接着剤によって、窒素雰囲気下で接着してもよい。透光性の封止部材は、ガラスおよびブラスチックなどから形成可能であり、凹形状であることが好ましい。
【0033】
本実施形態1は、特に、上述した表示装置の構成のうち、活性層24の正孔輸送層または電子輸送層に関する。本実施形態1は、特に、上述した表示装置の製造方法のうち、発光素子層5を形成する工程(ステップS4)に関する。
【0034】
(発光素子の構成)
図3は、本実施形態1に係る発光素子ES(光電変換素子)における発光素子層5の概略構成を示す断面図である。
【0035】
図3に示すように、発光素子層5は、互いに対向するアノード22(第1電極)およびカソード25(第2電極)と、アノード22およびカソード25の間に設けられた発光層43(光電変換層)と、発光層43およびアノード22の間に設けられた正孔輸送層42と、発光層43およびカソード25の間に設けられた電子輸送層44(キャリア輸送層)と、を備える。
【0036】
本明細書は、光電変換層として発光層43を備える発光素子ES、複数の発光素子ESを備える表示装置、および発光素子ESの製造方法を例示して説明するが、本発明の範囲はこれに限らない。例えば、光電変換層として受光層を備える受光素子、複数の受光素子を備えるセンサ装置、および受光素子の製造方法も、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
(正孔輸送層)
正孔輸送層42は、どのような構成であってもよく、正孔輸送層42は正孔輸送性の有機材料を1種以上含んでもよい。正孔輸送性の有機材料は例えば、PEDOT:PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルフォネートネート),PVK(ポリ-N-ビニルカルバゾール),TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))]),poly‐TPD(N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン)である。
【0038】
正孔輸送層42およびアノード22との間の電気的な接触は、良好であることが好ましい。あるいは、正孔輸送層42およびアノード22の間に、正孔注入層がさらに設けられてもよい。
【0039】
(発光層)
発光層43は、有機発光材料を含んでもよいが、量子ドットを含むことが好ましい。当該量子ドットは、無機物のナノ結晶およびリガンドから成る。このため、有機発光材料よりも量子ドットの方が、後述の除去工程(
図5のステップS26を参照)において、発光層43の性能を損なわずに有機リガンド52の一部を除去することが容易である。
【0040】
量子ドットのナノ結晶は、コア型、コアシェル型、コアマルチシェル型などの何れであってもよい。量子ドットのナノ結晶は、例えば、CdSe、ZnSe、CdZnSe、InPから選択される1種以上を含んでもよい。
【0041】
(電子輸送層)
電子輸送層44は、複数の粒子50(キャリア輸送材料)と、複数の有機リガンド52とを含む。粒子50は、電子輸送性材料から成り、その粒径がナノ単位(すなわち、1nm以上1000nm未満の範囲)に収まる粒子である。
【0042】
電子輸送層44は適度な厚みを有することが好ましく、具体的には、粒子50が2粒子以上積層した2粒子層以上であり、かつ、粒子50が30粒子以上積層した30粒子層以下であることが好ましい。なぜならば、電子輸送層44が薄すぎる場合、電子輸送層44に穴が生じやすく、その結果、発光層43とカソード25とが短絡する傾向にあるからである。また、電子輸送層44が厚すぎる場合、電子輸送層44の電気抵抗が大きくなり、その結果、発光素子ESの発光効率が低下するからである。
【0043】
粒子50は、電子輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物、あるいは、前記群から選択された2種以上の混晶系を含むことが好ましい。これによって、粒子50が無機物から成る一方、有機リガンド52が有機物から成る。このため、後述の除去工程(
図5のステップS26を参照)において、粒子50を損なわずに有機リガンド52の一部を除去することが容易である。
【0044】
粒子50は、ZnO、MgO,LiO,TiO2、ZrO2、SnO2、Nb2O3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含むことがより好ましい。なぜならば、上記の材料を用いることで、汎用性が高いナノ粒子を製造することができるからである。混晶系は、例えば、ZnMgO、LiZnOなどが挙げられる。なぜならば、混晶によってより細かく伝導帯準位を制御できるからである。
【0045】
粒子50は、1nm以上10nm以下の粒径を有することが好ましい。粒径が1nmを下回る場合、粒径の平均に比して粒径の分散が大きくなると共に、粒径の差異に対して敏感にバンドギャップが変化する。これらのため、複数の粒子50を、そのバンドギャップの分散が十分に小さいように製造することが困難になる。故に、粒子50の粒径は1nm以上が好ましい。粒径が10nmを上回る場合、量子効果が薄れる。量子効果は、電子輸送層44における電子移動度を高めるように寄与している。故に、粒子50の粒径は10nm以下が好ましい。
【0046】
有機リガンド52は、粒子50に配位可能な有機化合物である。有機リガンド52は例えば、アルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する化合物を含む。有機リガンド52は例えば、PVP(ポリビニルフェノール)、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含み得る。
【0047】
有機リガンド52は、1nm以上10nm以下の分子長を有することが好ましい。なぜならば、分子長が1nmを下回る場合、粒子50の失活を防止困難だからである。また、分子長が10nmを上回る場合、粒子50同士の間の電子移動が顕著に妨げられるからである。
【0048】
好ましくは、粒子50は、ZnO、MgO,LiOから成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含み、かつ、有機リガンド52は、アルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する化合物を含む。なぜならば、粒子50と結合するために上記の置換基のいずれか一つが必要だからである。上記いずれかの置換基を有する有機リガンド52が、粒子50と結合することで、粒子50の適切な粒子間距離を保つことができる。例えば、有機リガンド52がPVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含む。粒子50が上記材料から成りかつ、有機リガンド52が上記の有機化合物を含む場合、粒子50と有機リガンド52特に強く結合する。これによって、ナノ粒子の化学的安定性を向上することができる。また、粒子50の粒子間距離を最適化することができる。
【0049】
(電子輸送層の端部領域)
電子輸送層44は、第1端部領域46と第2端部領域47とを有する。第1端部領域46は、電子輸送層44の厚み方向における発光層43に近い側に位置する端部領域である。第2端部領域47は、電子輸送層44の厚み方向におけるカソード25に近い側に位置する端部領域である。電子輸送層44において、第1端部領域46に含まれる粒子50と発光層43との間の最短距離D1(第1最短距離)は、第2端部領域47に含まれる粒子50とカソード25との間の最短距離D2(第2最短距離)よりも、大きい。
【0050】
このため、本実施形態1に係る電子輸送層44の粒子50とカソード25との間は、電気的な接触が良好である。この結果、粒子50とカソード25との間に静電容量が形成されないか、あるいは、後述の比較例(
図10参照)よりも小さな静電容量が形成される。このため、発光素子ESの内部に電荷が滞留することが防止される。したがって、発光素子ESの点灯中に発光素子ESに注入された電荷が、発光素子ESの消灯後に発光素子ESに滞留する時間を短縮することができる。
【0051】
前述のような最短距離の差は、第1端部領域46および第2端部領域47が有機リガンド52の互いに異なる分布を有することによって実現されている。具体的には、第1端部領域46に含まれる粒子50に対する第1端部領域46に含まれる有機リガンド52の比率(第1比率)は、第2端部領域47に含まれる粒子50に対する第2端部領域47に含まれる有機リガンド52の比率(第2比率)よりも、大きい。
【0052】
第1端部領域46(およびあれば、第1端部領域46と第2端部領域47との間の中間領域)においては、有機リガンド52の比率が大きいため、粒子50は有機リガンド52で十分に被覆されている。この結果、第1端部領域46に含まれる粒子50と発光層43との間の最短距離D1は、大きい。また、第1端部領域46(およびあれば、中間領域)における粒子50は失活が十分に防止されている。
【0053】
一方、第2端部領域47においては、第2端部領域47における有機リガンド52の比率が小さいため、粒子50を被覆する有機リガンド52が不足する。このため、有機リガンド52が粒子50を被覆する厚さが部分的または全体的に薄かったり、粒子50が部分的または全体的に露出していたり、する。この結果、第2端部領域47に含まれる粒子50とカソード25との間の最短距離D2は、小さい。
【0054】
第2端部領域47における有機リガンド52の比率は、第1端部領域46における有機リガンド52の比率の0以上1/2以下であることが好ましい。1/2以下である場合、第2端部領域47における粒子50は部分的または全体的に露出しやすい。このため、電子輸送層44とカソード25との間の静電容量の形成を防止できる。
【0055】
ここで、粒子50に対する有機リガンド52の比率は、質量比率または物質量比率である。第1端部領域46および第2端部領域47の双方で、質量比率が粒子50:有機リガンド52=100:1~1:300であり、物質量比率が粒子50:有機リガンド52=3:1~1:1500である。当該比率は、次の手順で測定することができる。まず、電子輸送層44の第1端部領域46または第2端部領域47の部分を採取する。次に、各部分を有機溶媒に溶かして溶液を得る。次に、各溶液をカラムクロマトグラフィーに入れる。次に、カラムクロマトグラフィーから出てきた各溶液を回収する。次に、各溶液に含まれる有機リガンド52の濃度を計測する。そして、この濃度から、第1端部領域46または第2端部領域47の部分における粒子50に対する有機リガンド52の比率を算出する。あるいは、第1端部領域46の部分と第2端部領域47の部分とを同量ずつ採取して、同量の有機溶媒に溶かしてもよい。この場合、当該比率の大小関係は、カラムクロマトグラフィーから出てきた各溶液に含まれる有機リガンド52の濃度の大小関係に一致する。
【0056】
第2端部領域47は、他の層を挟まずに直接、カソード25に接していることが好ましい。前述のように、第2端部領域47における有機リガンド52の比率は、小さい。このため、第2端部領域47が接する層によっては、粒子50が凝集またはオストワルド成長によって失活しやすい。したがって、粒子50の失活を防止するために、第2端部領域47が接する層は、カソード25であることが好ましい。
【0057】
さらに、第2端部領域47に含まれる粒子50が直接、カソード25に接していることが好ましい。電子輸送層44の第2端部領域47の粒子50とカソード25との間の最短距離は、直接接している場合、0である。このため、電子輸送層44とカソード25との間の静電容量の形成が防止できる。
【0058】
第2端部領域47は、粒子50について1粒子層であることが好ましい。なぜならば、第2端部領域47が2粒子層以上である場合、第2端部領域47内部で粒子50が失活しやすいからである。これは、前述のように、第2端部領域47において、粒子50を被覆する有機リガンド52が不足することに起因する。
【0059】
第1端部領域46および第2端部領域47は各々、粒子50について1粒子層であるとする。この場合、電子輸送層44の厚み方向において、第1端部領域46の厚みは、第2端部領域47の厚みよりも、大きい。なぜならば、第1端部領域46における有機リガンド52の比率は、第2端部領域47における有機リガンド52の比率よりも、大きいからである。
【0060】
第2端部領域47は、粒子50について1粒子層であるとする。この場合、電子輸送層44の厚み方向において、第2端部領域47の厚みは、電子輸送層44全体の厚みの1/30以上1/2以下であることが好ましい。なぜならば、前述のように、電子輸送層44は2粒子層以上30粒子層以下のであることが好ましいからである。
【0061】
(多色表示)
本実施形態1に係る表示装置2は、三原色表示などの多色表示が可能なことが好ましい。例えば、
図3に示すように表示装置2は、赤色発光する発光素子ESを有する赤色サブ画素Prと、緑色発光する発光素子ESを有する緑色サブ画素Pgと、青色発光する発光素子ESを有する青色サブ画素Pbとを備える。
【0062】
図4は、各サブ画素Pr,Pg,Pbにおける、電子輸送層44r,44g,44bの発光層43r,43g,43bに近い側に位置する第1端部領域層46r,46g,46bを示す概略断面図である。
【0063】
図4に示すように、赤色サブ画素Prにおける発光素子ESは、赤色発光する赤色発光層43r(第3光電変換層)と、赤色発光層43rへの電子輸送に適合する赤色電子輸送層44r(第3キャリア輸送層)と、を備える。同様に、緑色サブ画素Pgにおける発光素子ESは、緑色発光する緑色発光層43g(第2光電変換層)と、緑色発光層43gへの電子輸送に適合する緑色電子輸送層44g(第2キャリア輸送層)と、を備える。同様に、青色サブ画素Pbにおける発光素子ESは、青色発光する青色発光層43b(第1光電変換層)と、青色発光層43bへの電子輸送に適合する青色電子輸送層44b(第1キャリア輸送層)と、を備える。
【0064】
青色発光層43bの真空準位からの電子親和力は緑色発光層43gの真空準位からの電子親和力よりも小さく、緑色発光層43gの真空準位からの電子親和力は赤色発光層43rの電子親和力よりも小さい。ここで、各発光層43r,43g,43bの電子親和力は、各発光層43r,43g,43bに含まれる量子ドット(特に、量子ドットのナノ結晶のコア)の電子親和力を意味する。
【0065】
このため、各電子輸送層44r,44g,44bに同一の電子輸送層を用いた場合、青色発光層43bは緑色発光層43gよりも電子注入困難であり、緑色発光層43gは赤色発光層43rよりも電子注入困難である。したがって、各発光素子ESへのキャリア注入バランスを揃えるために、各電子輸送層44r,44g,44bは互いに異なることが好ましい。
【0066】
具体的には、青色電子輸送層44bの第1端部領域46bにおける有機リガンド52の比率は、緑色電子輸送層44gの第1端部領域46gにおける有機リガンド52の比率よりも小さいことが好ましい。代わりにまたは加えて、青色電子輸送層44bに含まれる粒子50bの粒径は、緑色電子輸送層44gに含まれる粒子50gの粒径よりも小さいことが好ましい。
【0067】
同様に、緑色電子輸送層44gの第1端部領域46gにおける有機リガンド52の比率は、赤色電子輸送層44rの第1端部領域46rにおける有機リガンド52の比率よりも小さいことが好ましい。代わりにまたは加えて、緑色電子輸送層44gに含まれる粒子50gの粒径は、赤色電子輸送層44rに含まれる粒子50rの粒径よりも小さいことが好ましい。
【0068】
なお、これに限らず、カラーフィルタ方式によって多色表示可能な表示装置も、本発明の範囲である。
【0069】
(発光素子層の製造方法)
以下に、
図5~
図9を参照して、
図3に示した発光素子層5を形成する方法に関して詳細に説明する。
【0070】
図5は、発光素子層5を形成する工程(
図1のステップS4)を概略的に示すフロー図である。
図6~
図8は、発光素子層5を形成する工程が含む各工程を概略的に示す断面図である。
図9は、
図7に示す工程の別の一例を概略的に示す断面図である。
【0071】
図5および
図6に示すように、まず、薄膜トランジスタ層4の上層にアノード22を島状に形成し(第1工程,ステップS21)、
図5に示すように、アノード22のエッジを覆うエッジカバー23(
図2参照)を形成する(ステップS22)。次に、
図5および
図6に示すように、アノード22およびエッジカバー23の上層に正孔輸送層42を形成する(ステップS23)。
【0072】
続いて、
図5および
図6に示すように、アノード22の上層に発光層43を形成する(第2工程,ステップS24)。すなわち、正孔輸送層42の上層に発光層43を形成する。次に、
図5および
図6に示すように、発光層43の上層に電子輸送層44を形成する(第3工程,ステップS25)。電子輸送層44は前述したように、複数の粒子50(キャリア輸送材料)と、粒子50に配位可能な複数の有機リガンド52とを含む。
【0073】
続いて、
図5および
図7に示すように、電子輸送層44から複数の有機リガンド52の一部を除去する(第5工程,ステップS26)。ここで、有機リガンド52は、厚みD3だけ除去される。一方、粒子50は除去されず、その全てが残存する。
【0074】
ステップS26においては、アッシング処理、エッチング処理、紫外線照射、オゾン暴露、および有機溶剤で洗浄する有機洗浄から成る群から選択される1種以上の方法を、電子輸送層44の上側端部領域に対して用いる。有機溶剤は例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類、ギ酸等のカルボン酸類などである。
【0075】
ステップS26においては、下記2条件を満たす場合に、アッシング処理およびエッチング処理から成る群から選択される1種以上の方法を用いることが好ましい。
・粒子50がZnO、MgO,LiOから成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含む。
・有機リガンド52がアルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する化合物を含む。例えば、有機リガンド52は、PVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含む。
【0076】
なぜならば、上記2条件を満たす場合、アッシング処理およびエッチング処理の一方のみを用いて、電子輸送層44の上面に粒子50を露出できるからである。
【0077】
ステップS26において有機リガンド52を除去する厚みD3は、電子輸送層44の厚み方向において、1nm以上20nm以下であることが好ましい。なぜならば前述のように、第2端部領域47は粒子50について1粒子層であることが好ましく、かつ、粒子50は1nm以上10nm以下の粒径を有することが好ましく、かつ、有機リガンド52は1nm以上10nm以下の分子長を有することが好ましいからである。厚みD3が1nmを下回る場合、厚みD3は有機リガンド52の分子長よりも小さい。このため、粒子50が露出し得ない。故に、厚みD3は1nm以上が好ましい。厚みD3が20nmを上回る場合、厚みD3は粒子50の粒子径と有機リガンド52の分子長との和よりも大きい。このため、電子輸送層44の一番上側に位置する粒子50と、二番目に上側に位置する粒子50との間の有機リガンド52が除去され得る。これは、粒子50を失活し易くする。故に、厚みD3は20nm以下が好ましい。
【0078】
図7は、除去する各有機リガンド52の全体を電子輸送層44から除去する例を示すが、本発明の範囲はこれに限らない。
図9に示すように、除去する各有機リガンド52の一部を電子輸送層44から除去してもよい。
図9に示す場合、第1端部領域46に含まれる有機リガンド52の平均分子長は、第2端部領域47に含まれる有機リガンド52の平均分子長よりも、大きい。
【0079】
最後に、
図5および
図8に示すように、電子輸送層44の上層にカソード25を形成する(第4工程,ステップS27)。
【0080】
(比較例)
図10は、比較例に係る発光素子層205の概略構成を示す断面図である。
【0081】
このような発光素子層205は、ステップS21~S25を行った後に、ステップS26を行わずに、ステップS27を行うことによって、得られる。
【0082】
図3と
図10とを対照して、本実施形態1に係る第1端部領域46に含まれる粒子50と発光層43との間の最短距離D1(
図3参照)は、比較例に係る第1端部領域246に含まれる粒子50と発光層43との間の最短距離D201(
図10参照)と略同等である。一方、本実施形態1に係る第2端部領域47に含まれる粒子50とカソード25との間の最短距離D2(
図3参照)は、比較例に係る第2端部領域247に含まれる粒子50とカソード25との間の最短距離D202(
図10参照)よりも小さい。
【0083】
したがって、比較例に係る構成よりも、本実施形態1に係る構成において、電子輸送層44の粒子50とカソード25との間は、電気的な接触が良好である。すなわち、粒子50とカソード25との間に静電容量が形成されないか、あるいは、比較例よりも小さな静電容量が形成される。
【0084】
(実施例)
ステップS21~S24の後、ステップS25において、粒子50としてZnOのナノ結晶を含み、有機リガンド52としてPVPを含む電子輸送層44を形成した。ZnOのナノ結晶は、バンドキャップが3.3eVであり、動的光散乱法により測定した粒径の中央値が3.7nmであった。また、ZnOのナノ結晶とそれを修飾するPVPとを含むナノ粒子について、動的光散乱法により測定した粒径の中央値が12nmであった。
【0085】
したがって、除去する有機リガンド52の厚みを、(12-3.7)/2=4.15nmと算出した。
【0086】
続いて、ステップS26において、電子輸送層44の表面から有機リガンド52を厚み4.15nmだけ、酸素プラズマアッシングを用いて除去した。アッシング条件は、サンプルステージを常温(摂氏20度)に温度調整しながら、圧力20Paで、出力150Wで、酸素を5秒間照射した。
【0087】
さらにステップS27を行い、
図3に示す構成の発光素子層5を得た。
【0088】
〔実施形態2〕
図11~
図12を参照して、本発明に係る別の実施形態について説明する。
【0089】
前述の実施形態1と同一または類似する部材には、同一または類似する符号を付して、その説明を省略する。
【0090】
図11に示すように、本実施形態2に係る発光素子層105は、互いに対向するカソード25(第1電極)およびアノード22(第2電極)と、カソード25およびアノード22の間に設けられた発光層43(光電変換層)と、発光層43およびカソード25の間に設けられた電子輸送層144と、発光層43およびアノード22の間に設けられた正孔輸送層142(キャリア輸送層)と、を備える。
【0091】
このように、本実施形態2に係る発光素子層105は、前述の実施形態1に係る発光素子層5と比較して、積層順序が上下逆である。
【0092】
(電子輸送層)
電子輸送層144は、どのような構成であってもよい。電子輸送層144は、電子輸送性の無機材料を1種以上含んでもよく、電子輸送性の有機材料を1種以上含んでもよく、その両方を1種以上ずつ含んでもよい。電子輸送性の無機材料は例えば、ZnO、MgO、LiO、TiO2、ZrO2、SnO2、Nb2O3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系である。電子輸送性の有機材料は例えば、TPBi(2,2’,2”-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール))である。
【0093】
電子輸送層144およびカソード25の間の電気的な接触は、良好であることが好ましい。あるいは、電子輸送層144およびカソード25の間に、電子注入層がさらに設けられてもよい。
【0094】
(正孔輸送層)
正孔輸送層142は、複数の粒子150(キャリア輸送材料)と、複数の有機リガンド152とを含む。粒子150は、正孔輸送性材料から成り、その粒径がナノ単位(すなわち、1nm以上1000nm未満の範囲)に収まる粒子である。
【0095】
正孔輸送層142は、前述の実施形態1に係る電子輸送層44と同様に、適度な厚みを有することが好ましい。具体的には、正孔輸送層142は、粒子150について2粒子層以上30粒子層以下であることが好ましい。
【0096】
粒子150は、正孔輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物、あるいは、前記群から選択された2種以上の混晶系を含むことが好ましい。これによって、粒子150が無機物から成る一方、有機リガンド152が有機物から成る。このため、後述の除去工程(
図12のステップS36を参照)において、粒子150を損なわずに有機リガンド152の一部を除去することが容易である。
【0097】
粒子150は、NiO、MgO、LaO、MnO3、V2O5、WO3、ReO3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含むことがより好ましい。混晶系は、例えば、MgNiO、LaNiO3、などが挙げられる。なぜならば、混晶によってより細かく伝導帯準位を制御できるからである。
【0098】
粒子50は、前述の実施形態1に係る粒子150と同様に、1nm以上10nm以下の粒径を有することが好ましい。
【0099】
有機リガンド152は、粒子150に配位可能な有機化合物である。有機リガンド52は例えば、アルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する化合物を含む。有機リガンド152は例えば、PVP(ポリビニルフェノール)、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含み得る。
【0100】
有機リガンド152は、前述の実施形態1に係る有機リガンド52と同様に、1nm以上10nm以下の分子長を有することが好ましい。
【0101】
(正孔輸送層の端部領域)
正孔輸送層142は、第1端部領域146と第2端部領域147とを有する。第1端部領域146は、正孔輸送層142の厚み方向における発光層43に近い側に位置する端部領域である。第2端部領域147は、正孔輸送層142の厚み方向におけるアノード22に近い側に位置する端部領域である。正孔輸送層142において、第1端部領域146に含まれる粒子150と発光層43との間の最短距離D101(第1最短距離)は、第2端部領域147に含まれる粒子150とアノード22との間の最短距離D102(第2最短距離)よりも、大きい。
【0102】
前述のような最短距離の差は、第1端部領域146および第2端部領域147が有機リガンド152の互いに異なる分布を有することによって実現されている。具体的には、第1端部領域146に含まれる粒子150に対する第1端部領域146に含まれる有機リガンド152の比率(第1比率)は、第2端部領域147に含まれる粒子150に対する第2端部領域147に含まれる有機リガンド152の比率(第2比率)よりも、大きい。
【0103】
(発光素子層の製造方法)
以下に、
図12を参照して、
図11に示した発光素子層105を形成する方法に関して詳細に説明する。
【0104】
図12は、発光素子層105を形成する工程(
図1のステップS4)を概略的に示すフロー図である。
【0105】
図12に示すように、まず、薄膜トランジスタ層4の上層にカソード25を島状に形成し(第1工程,ステップS23)、カソード25のエッジを覆うエッジカバー23(
図2参照)を形成する(ステップS32)。次に、カソード25およびエッジカバー23の上層に電子輸送層144を形成する(ステップS33)。
【0106】
続いて、カソード25の上層に発光層43を形成する(第2工程,ステップS34)。すなわち、電子輸送層144の上層に発光層43を形成する。次に、発光層43の上層に正孔輸送層142を形成する(第3工程,ステップS35)。正孔輸送層142は前述したように、複数の粒子150(キャリア輸送材料)と、粒子150に配位可能な複数の有機リガンド152とを含む。
【0107】
続いて、正孔輸送層142から複数の有機リガンド152の一部を除去し(第5工程,ステップS36)、正孔輸送層142の上層にアノード22を形成する(第4工程,ステップS37)。
【0108】
(まとめ)
本発明の態様1に係る光電変換素子は、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記光電変換層との間の第1最短距離は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料と前記第2電極との間の第2最短距離よりも、大きい構成である。
【0109】
本発明の態様2に係る光電変換素子は、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間に設けられた光電変換層と、前記光電変換層および前記第2電極の間に設けられたキャリア輸送層であって、複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有し、前記キャリア輸送層の厚み方向における前記光電変換層に近い側に位置する端部領域を第1端部領域とし、前記キャリア輸送層の前記厚み方向における前記第2電極に近い側に位置する端部領域を第2端部領域とするキャリア輸送層と、を含み、前記第1端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第1端部領域に含まれる有機リガンドの第1比率は、前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料に対する前記第2端部領域に含まれる有機リガンドの第2比率よりも、大きい構成である。
【0110】
本発明の態様3に係る光電変換素子は、上記態様2に記載の構成であって、前記第2比率は、前記第1比率の0以上1/2以下である構成であってよい。
【0111】
本発明の態様4に係る光電変換素子は、上記態様2に記載の構成であって、
前記第2電極はカソードであり、上記態様1~3の何れか1態様に記載の構成であって、前記キャリア輸送層は電子輸送層であり、前記複数のキャリア輸送材料は、電子輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物、あるいは前記群から選択された2種以上の混晶系を含む構成であってよい。
【0112】
本発明の態様5に係る光電変換素子は、上記態様4に記載の構成であって、前記複数のキャリア輸送材料は、ZnO、MgO、LiO、TiO2、ZrO2、SnO2、Nb2O3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含む構成であってよい。
【0113】
本発明の態様6に係る光電変換素子は、上記態様4に記載の構成であって、前記複数のキャリア輸送材料は、ZnOまたはZnOを含む混晶系を含み、
前記複数の有機リガンドは、アルコール基、ケト基、カルボニル基、フェニル基、エーテル基、エステル基、アミノ基、チオール基からなる群から選択された1種以上の置換基を有する有機化合物を含む構成であってよい。
【0114】
本発明の態様7に係る光電変換素子は、上記態様1~3の何れか1態様に記載の構成であって、前記第2電極はアノードであり、前記キャリア輸送層は正孔輸送層であり、前記キャリア輸送材料は、正孔輸送性を有する元素半導体、化合物半導体、酸化物半導体、金属酸化物、カルコゲナイド、およびペロブスカイとから成る群から選択される1種または2種以上の混合物または2種以上の混晶系を含む構成であってよい。
【0115】
本発明の態様8に係る光電変換素子は、上記態様7に記載の構成であって、前記キャリア輸送材料は、NiO、MgO、LaO、MnO3、V2O5、WO3、ReO3から成る群から選択された1種以上の金属酸化物または前記群から選択された1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含む構成であってよい。
【0116】
本発明の態様9に係る光電変換素子は、上記態様7に記載の構成であって、前記複数の有機リガンドはPVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含む構成であってよい。
【0117】
本発明の態様10に係る光電変換素子は、上記態様1~9の何れか1態様に記載の構成であって、前記キャリア輸送層の前記第2端部領域は、前記第2電極に接している構成であってよい。
【0118】
本発明の態様11に係る光電変換素子は、上記態様10に記載の構成であって、前記複数のキャリア輸送材料のうちの前記第2端部領域に含まれるキャリア輸送材料は、前記第2電極に接している構成であってよい。
【0119】
本発明の態様12に係る光電変換素子は、上記態様1~11の何れか1態様に記載の構成であって、前記キャリア輸送層の前記厚み方向において、前記第1端部領域の厚みは、前記第2端部領域の厚みよりも、大きく、前記複数のキャリア輸送材料は粒子であり、前記第1端部領域および前記第2端部領域は各々、前記複数のキャリア輸送材料について、1粒子層である光電変換素子。
【0120】
本発明の態様13に係る光電変換素子は、上記態様1~12の何れか1態様に記載の構成であって、前記キャリア輸送材料は、1nm以上10nm以下の粒径を有する金属酸化物である構成であってよい。
【0121】
本発明の態様14に係る光電変換素子は、上記態様1~13の何れか1態様に記載の構成であって、前記キャリア輸送層の前記厚み方向において、前記第2端部領域の厚みは、前記キャリア輸送層の厚みの1/30以上1/2以下であり、前記複数のキャリア輸送材料は粒子であり、前記第2端部領域は、前記複数のキャリア輸送材料について、1粒子層である構成であってよい。
【0122】
本発明の態様15に係る光電変換素子は、上記態様1~14の何れか1態様に記載の構成であって、前記光電変換層は、量子ドットを含む構成であってよい。
【0123】
本発明の態様16に係る光電変換素子は、上記態様1~15の何れか1態様に記載の構成であって、前記光電変換層は、発光層である構成であってよい。
【0124】
本発明の態様17に係る光電変換素子は、上記態様1~15の何れか1態様に記載の構成であって、前記光電変換層は、受光層である構成であってよい。
【0125】
本発明の態様18に係る表示装置は、上記態様1~16の何れか1態様に記載の光電変換素子を2つ以上備え、前記2つ以上の光電変換素子は、第1光電変換素子と第2光電変換素子とを含み、前記第1光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第1光電変換層及び第1キャリア輸送層とし、前記第2光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第2光電変換層および第2キャリア輸送層とし、前記第1光電変換層の真空準位からの電子親和力は、前記第2光電変換層の真空準位からの電子親和力よりも小さく、前記第1キャリア輸送層の前記第1比率は、前記第2キャリア輸送層の前記第1比率よりも小さい構成である。
【0126】
本発明の態様19に係る表示装置は、上記態様1~16の何れか1態様に記載の光電変換素子を2つ以上備え、前記2つ以上の光電変換素子は、第1光電変換素子と第2光電変換素子とを含み、前記第1光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第1光電変換層及び第1キャリア輸送層とし、前記第2光電変換素子に含まれる前記光電変換層および前記キャリア輸送層をそれぞれ第2光電変換層および第2キャリア輸送層とし、前記第1光電変換層の真空準位からの電子親和力は、前記第2光電変換層の真空準位からの電子親和力よりも小さく、前記第1キャリア輸送層に含まれる前記キャリア輸送材料の粒径は、前記第2キャリア輸送層に含まれる前記キャリア輸送材料の粒径よりも小さい構成で合う。
【0127】
本発明の態様20に係る光電変換素子の製造方法は、第1電極を形成する第1工程と、前記第1電極の上層に光電変換層を形成する第2工程と、前記光電変換層の上層にキャリア輸送層を、前記キャリア輸送層が複数のキャリア輸送材料と前記複数のキャリア輸送材料の各々に配位可能な複数の有機リガンドとを有するように、形成する第3工程と、前記キャリア輸送層の上層に第2電極を形成する第4工程と、を含み、前記キャリア輸送層から前記複数の有機リガンドの一部を除去する第5工程をさらに含む方法である。
【0128】
本発明の態様21に係る光電変換素子の製造方法は、上記態様20に記載の方法であって、前記第5工程は、前記第3工程と前記第4工程との間に行われる方法であってよい。
【0129】
本発明の態様22に係る光電変換素子の製造方法は、上記態様20または21に記載の方法であって、前記第5工程において、前記複数のキャリア輸送材料は全て残存する方法であってよい。
【0130】
本発明の態様23に係る光電変換素子の製造方法は、上記態様20~22の何れか1態様に記載の方法であって、前記第5工程において、アッシング処理、エッチング処理、紫外線照射、オゾン暴露、および有機溶剤で洗浄する有機洗浄から成る群から選択される1種以上の方法を用いて、前記複数の有機リガンドの上記一部を除去する方法であってよい。
【0131】
本発明の態様24に係る光電変換素子の製造方法は、上記態様23に記載の方法であって、前記複数のキャリア輸送材料はZnO、ZnMgOから成る群から選択された1種以上の金属酸化物または1種以上の金属酸化物を含む混晶系を含み、前記複数の有機リガンドはPVP、オクタデセン、オレイン酸、オレイルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンからなる群から選択された1種以上の有機化合物を含み、前記第5工程において、アッシング処理およびエッチング処理から成る群から選択される1種以上の方法を用いて、前記複数の有機リガンドの上記一部を除去する方法であってよい。
【0132】
本発明の態様25に係る光電変換素子の製造方法は、上記態様20~24の何れか1態様に記載の方法であって、前記第5工程において、前記キャリア輸送層の厚み方向において、前記複数の有機リガンドを1nm以上20nm以下だけ除去する方法であってよい。
【0133】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0134】
22 アノード(第1電極,第2電極)
25 カソード(第2電極,第1電極)
43 発光層(光電変換層)
43b 青色発光層(第1光電変換層)
43g 緑色発光層(第2光電変換層)
44 電子輸送層(キャリア輸送層)
44b 青色電子輸送層(第1キャリア輸送層)
44g 緑色電子輸送層(第2キャリア輸送層)
142 正孔輸送層(キャリア輸送層)
50、50b、50g、50r、150 粒子(複数のキャリア輸送材料)
52、152 有機リガンド(複数の有機リガンド)
46,46b、46g、46r、146 第1端部領域
47,47b、47g、47r、147 第2端部領域
D1 第1最短距離
D2 第2最短距離
ES 発光素子(光電変換素子,第1光電変換素子,第2光電変換素子)