IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本除雪機製作所の特許一覧

<>
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図1
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図2
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図3
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図4
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図5
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図6
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図7
  • 特許-プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両
(51)【国際特許分類】
   E01H 8/04 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E01H8/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023054515
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】作山 篤
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰規
(72)【発明者】
【氏名】上野 優太朗
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-217506(JP,A)
【文献】中国実用新案第210658201(CN,U)
【文献】特開2000-120037(JP,A)
【文献】実公昭56-008970(JP,Y2)
【文献】特開2000-178936(JP,A)
【文献】特開2011-236586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00-15/00
B61F 19/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一方に設けられたスノープラウと他方に設けられた除雪機器を有する軌道用除雪車両のプラウ昇降装置であって、
前記軌道用除雪車両の車体と前記スノープラウとの間に設けられた固定枠に接続され、前記スノープラウを支持する可動枠であって、前記スノープラウにより除雪作業する除雪位置と前記スノープラウが前記除雪位置よりも上方に位置する退避位置との間で移動可能な可動枠と、
前記除雪機器による除雪時に前記可動枠を介して前記スノープラウを前記除雪位置から前記退避位置に上昇可能な昇降駆動装置と、
を備え、
前記スノープラウは、一対の案内板を備え、前記一対の案内板は、前端が角を成して互いに接続されており、
前記昇降駆動装置は、シリンダと、前記シリンダに対して伸長する方向及び短縮する方向へ往復動可能なピストンロッドとを有し、
前記可動枠は、除雪位置において、前記軌道用除雪車両の車幅方向から見て、前記シリンダ及び前記ピストンロッドの上方で前記昇降駆動装置と前記可動枠との接続部よりも前記車体に近い位置、かつ、前記車体と前記スノープラウの最後端との間、に位置する回動軸周りに回動可能に前記固定枠に接続され、前記除雪位置と前記退避位置との間で回動可能であるプラウ昇降装置。
【請求項2】
前記一対の案内板は、
前端に位置する固定案内板と、
前記固定案内板の後端部に連なる可動案内板と、を備え、
前記可動案内板は、前記固定案内板に上下方向に延びる回動軸周りに揺動可能にヒンジを介して連結され、外側面が前記固定案内板の外側面と略面一に連続する除雪姿勢と、前記後端部が除雪姿勢よりも前記車幅方向内側に位置するように折り畳んだ収納姿勢との間で揺動可能であり、
前記可動枠の前記回動軸は、前記車幅方向から見て、前記車体と、前記収納姿勢における前記スノープラウの最後端との間に配置される、請求項1に記載のプラウ昇降装置。
【請求項3】
前記除雪機器は、雪を取り込むオーガを有するロータリ除雪装置である、請求項1に記載のプラウ昇降装置。
【請求項4】
軌道を走行する軌道用除雪車両であって、
前記軌道用除雪車両の長手方向の一方に設けられたスノープラウと、
他方に設けられた除雪機器と、
前記軌道用除雪車両の車体と前記スノープラウとの間に設けられた固定枠に接続され、前記スノープラウを支持する可動枠であって、前記スノープラウにより除雪作業する除雪位置と前記スノープラウが前記除雪位置よりも上方に位置する退避位置との間で移動可能な可動枠と、
前記除雪機器による除雪時に前記可動枠を介して前記スノープラウを前記除雪位置から前記退避位置に上昇可能な昇降駆動装置と、
を備え、
前記スノープラウは、一対の案内板を備え、前記一対の案内板は、前端が角を成して互いに接続されており、
前記昇降駆動装置は、シリンダと、前記シリンダに対して伸長する方向及び短縮する方向へ往復動可能なピストンロッドとを有し、
前記可動枠は、除雪位置において、前記軌道用除雪車両の車幅方向から見て、前記シリンダ及び前記ピストンロッドの上方で前記昇降駆動装置と前記可動枠との接続部よりも前記車両に近い位置、かつ、前記車体と前記スノープラウの最後端との間、に位置する回動軸周りに回動可能に前記固定枠に接続され、前記除雪位置と前記退避位置との間で回動可能である軌道用除雪車両。
【請求項5】
前記除雪機器は、雪を取り込むオーガを有するロータリ除雪装置である、請求項4に記載の軌道用除雪車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラウ昇降装置及び軌道用除雪車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鉄道車両の雪掻き装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この雪掻き装置は、左右のラッセル翼を有するメインプラウと、レール上面より下の雪を除雪するためのV型サブプラウとを備えている。V型サブプラウは、線路の踏切におけるレール間の平坦部との干渉を避けるため、昇降可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願平9-59337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の雪掻き装置は、例えば車両の後退時において、V型サブプラウを上昇させた場合においても、メインプラウの内側に雪が溜まり、溜まった雪にメインプラウが乗り上げるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係るプラウ昇降装置は、長手方向の一方に設けられたスノープラウと他方に設けられた除雪機器を有する軌道用除雪車両のプラウ昇降装置であって、前記軌道用除雪車両の車体と前記スノープラウとの間に設けられた固定枠に接続され、前記スノープラウを支持する可動枠であって、前記スノープラウにより除雪作業する除雪位置と前記スノープラウが前記除雪位置よりも上方に位置する退避位置との間で移動可能な可動枠と、前記除雪機器による除雪時に前記可動枠を介して前記スノープラウを前記除雪位置から前記退避位置に上昇可能な昇降駆動装置と、を備える。
【0007】
この構成によれば、軌道用除雪車両の後退時に、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、軌道用除雪車両の後退時に、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る除雪車両の構成例を示す側面図である。
図2図1の除雪車両の前側の部分の構成例を示す平面図である。
図3図1の除雪車両の前側の部分の構成例を示す側面図である。
図4図1の除雪車両の正面図である。
図5図1の除雪車両の背面図である。
図6図1の除雪車両のプラウ除雪装置の動作例を示す側面図である。
図7】実施の形態2に係る除雪車両のプラウ除雪装置の構成例を示す側面図である。
図8】実施の形態3に係る除雪車両のプラウ除雪装置の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る除雪車両の構成例を示す側面図である。
除雪車両100は、軌道101上に積もった雪の除雪を行うために用いられる軌道用除雪車両である。軌道101は、線路を意味してもよく、道床及び一対のレール102を含む。以下では、一対のレール102の間に形成される道床上の空間を軌道間ということがある。除雪車両100は、例えば、軌道モーターカーであり、動力付きの車体1を備える。車体1は、運転室及び機関室を備え、軌道101を走行する車体である。車体1の運転室には、運転者が着座する運転席と、運転席の前方に設けられ、運転席に着座した運転者が除雪作業時における運転のために操作する運転卓とが設けられている。
【0012】
本実施形態において、除雪車両100は、除雪機器として、除雪車両100の長手方向の一方に設けられたプラウ除雪装置2及び他方に設けられたロータリ除雪装置3の2種類の除雪機器を備える。しかし、これに限られるものではなく、除雪車両100は、例えば、プラウ除雪装置2のみを備えていてもよい。便宜上、車体1からプラウ除雪装置2に向かう方向を前といい、その反対方向、すなわち、車体1からロータリ除雪装置3に向かう方向を後ろという。そして、プラウ除雪装置2により除雪作業する際に車体1を移動させる方向を前進方向といい、ロータリ除雪装置3により除雪作業を行う際に車体1を移動させる方向を後退方向という。
【0013】
プラウ除雪装置2は、軌道101に積もった雪を軌道101の側方に押し除く雪掻き装置である。本実施の形態において、プラウ除雪装置2は、雪を軌道101の両側に押し除く所謂Vプラウであるが、一方に押し除く所謂ストレートプラウであってもよい。プラウ除雪装置2は、図1に示すように車体1に全体が支持され、車体1から前方に突き出すように設けられている。このように、プラウ除雪装置2は、車体1に片持ち支持され、除雪車両100の前輪11より前方のオーバーハング部分に位置している。同様に、ロータリ除雪装置3は、除雪車両100の後輪12より後方のオーバーハング部分に位置している。
【0014】
図2は、除雪車両100の前側の部分の構成例を示す平面図である。図3は、除雪車両100の前側の部分の構成例を示す側面図である。図4は、除雪車両100の正面図である。
【0015】
図3に示すように、プラウ除雪装置2は、スノープラウ21と、プラウ昇降装置22とを含む。
【0016】
図2に示すように、スノープラウ21は、車体1の前方、すなわち、車体1よりも車体1の前進方向に位置する。本実施の形態において、スノープラウ21は、図4に示すように、正面視において、車体1の台車の前面を覆うように位置する比較的小型の除雪機器である。しかし、これに限られるものではなく、スノープラウ21は、例えば、車体1の台車及び胴部の前面を覆うように位置する比較的大型の除雪機器であってもよい。スノープラウ21は、一対の案内板50を備える。一対の案内板50は、前端が角を成して互いに接続されている。また、当該前端は、軌道間中央の上方に位置している。そして、各案内板50は、前端から後端に向かって、軌道101上を横切って車体1の後退方向且つ車幅方向に延び、車体1から車幅方向に張り出している。すなわち、各案内板50は、平面視において、軌道間の中央に前端が位置し、後ろ斜め後方に向かって真っ直ぐ伸延し、スノープラウ21は、軌道101の上方において軌道101を車幅方向に横切るように配置されている。また、各案内板50は、下端から中間部に亘る部分が平板であり、上部が外側に湾曲している。この湾曲した上部は、除雪作業において上方に跳ね飛ばされた雪が上方に舞い上がることを阻止するように機能する。そして、各案内板50は、すくい角が設けられており、下部は後方に傾斜している。すなわち、各案内板50の下部は、側面視において、レール102の上面と成す角が鋭角となっている。これによって、除雪作業時に雪をすくい上げることができ、また、切削抵抗を緩和することができる。
【0017】
各案内板50は、前端に位置する固定案内板51と、固定案内板51の後端部に連なる可動案内板52とを備える。可動案内板52は、固定案内板51に上下方向に延びる回動軸周りに揺動可能にヒンジを介して連結され、外側面が固定案内板51の外側面と略面一に連続する除雪姿勢と、後端部が除雪姿勢よりも車幅方向内側に位置するように折り畳んだ収納姿勢との間で揺動させることができる。これによって、除雪作業を行わないときは、可動案内板52に収納姿勢をとらせることによって、除雪車両100の車幅寸法を小さくすることができる。
【0018】
そして、スノープラウ21は、更にフランジャ53を備える。フランジャ53は、一対のレール102の上面より下に積もった雪、特に、軌道間に積もった雪を除去する装置である。フランジャ53は、固定案内板51の下端部の外側に位置し、下端が固定案内板51の下端のうち一対の軌道101の間の部分から下方に突出させることができるように構成されている。フランジャ53は、案内板50と平行に延びる姿勢をとる。また、フランジャ53の側縁とレール102との間には、干渉を防ぐために所定のクリアランスが設けられている。
【0019】
なお、自動列車停止装置の地上子、踏切の軌道間の舗装板、ポイント等、軌道間に設備が設けられている場所がある。このような場所において、フランジャ53と上記設備との干渉を防止するため、フランジャ53は、固定案内板51に対して昇降させることができるように構成されている。これにより、フランジャ53と干渉しうる設備が設けられている場所においては、フランジャ53を上昇させ、設備とフランジャ53との干渉を防止することができる。フランジャ53は、フランジャ昇降駆動装置により昇降駆動される。
【0020】
プラウ昇降装置22は、スノープラウ21の全体を昇降させる装置である。プラウ昇降装置22は、車体1に固定された固定枠61と、固定枠61に接続されている可動枠62と、61に対して可動枠62を移動させる昇降駆動装置63とを含む。
【0021】
固定枠61は、車体1とスノープラウ21との間に設けられ、車体1の前端に固定されている枠体である。固定枠61は、主に車幅方向及び上下方向に延びる矩形の枠体を含む。したがって、固定枠61の前後方向の寸法は小さくなっている。
【0022】
図6は、除雪車両100のプラウ除雪装置2の動作例を示す側面図である。可動枠62は、スノープラウ21の全体を支持する枠体であり、固定枠61に対峙する矩形の枠体と、この矩形の枠体から前方に水平方向に延び、スノープラウ21が取り付けられている枠体とを含む。可動枠62及び可動枠62に支持されているスノープラウ21は、図6に示すように、スノープラウ21により除雪作業する除雪位置P1とスノープラウ21が除雪位置P1よりも上方に位置する退避位置P2との間で移動可能である。本実施の形態において、可動枠62は、固定枠61に対して揺動し、図2に示す回動軸66の軸線L周りに回動可能に固定枠61に接続され、除雪位置P1と退避位置P2との間で回動可能である。回動軸66は、側面視において、スノープラウ21と車体1との間であって、昇降駆動装置63の上方に設けられている。より具体的には、回動軸66は、後述する昇降駆動装置63のシリンダ67及びピストンロッド68の上方且つ車体1の走行方向において車体1とスノープラウ21との間に位置する。このように、固定枠61と可動枠62とが回動関節によって接続されている。
【0023】
除雪位置P1は、プラウ除雪装置2により除雪作業するときの可動枠62及びスノープラウ21の角度位置である。可動枠62及びスノープラウ21を除雪位置P1に位置させた状態において、案内板50の下端は、一対のレール102の上面に近づき、一対のレール102の上面と略並行に伸延する状態となる。そして、例えば、案内板50の下端とレール102との間に約100mmの間隙が形成される。また、スノープラウ21を除雪位置P1に位置させた状態において、フランジャ53を下降させることにより、例えば、フランジャ53の下端をレール102の上面よりも約30mm下方に位置させることができる。
【0024】
退避位置P2は、ロータリ除雪装置3により除雪作業するときや、除雪作業しないときの可動枠62及びスノープラウ21の角度位置である。可動枠62及びスノープラウ21を退避位置P2に位置させた状態において、案内板50の下端は、除雪位置P1よりも一対のレール102の上面から離れた状態となる。また、可動枠62及びスノープラウ21を退避位置P2に位置させた状態において、案内板50の下端は傾斜して伸延し、前端50aとレール102との間隙は、案内板50の下端の後端とレール102との間隔よりも大きくなる状態となる。例えば、スノープラウ21を退避位置P2に位置させた状態における案内板50の前端50aとレール102との間隙は、約300mmである。
【0025】
昇降駆動装置63は、除雪機器による除雪時に可動枠62を介してスノープラウ21を除雪位置P1から退避位置P2に上昇可能な駆動装置である。昇降駆動装置63は、例えば、油圧駆動システムであり、図3に示すように、シリンダ67と、ピストンロッド68とを含む。なお、昇降駆動装置63は、空気圧駆動システム等の油圧駆動システム以外の駆動装置であってもよい。ピストンロッド68は、シリンダ67に対して伸長する方向及び短縮する方向へ往復動可能に設けられている。伸長する方向にピストンロッド68が移動することによって、ピストンロッド68がシリンダ67から突出し、可動枠62及びスノープラウ21が除雪位置P1から退避位置P2に向かって回動する。また、短縮する方向にピストンロッド68が移動することによって、ピストンロッド68の基端側の部分がシリンダ67に収容され、可動枠62及びスノープラウ21が退避位置P2から除雪位置P1に向かって回動する。除雪位置P1と退避位置P2との間の回動角は、約4度である。
【0026】
このように、プラウ昇降装置22は、固定枠61と可動枠62とが回動軸66によって連結され、中間リンクを含まない構造である。これによって、昇降駆動装置63の車体1方向の長さ寸法をコンパクトにすることができ、オーバーハングを短くすることができる。オーバーハングに位置するプラウ除雪装置2が短くなると、カーブにおけるフランジャ53の側縁とレール102の側面との干渉を防止するために設けられているクリアランスを少なくすることができる。したがって、プラウ除雪装置2は、除雪作業時に軌道間に残留する雪を少なくすることができる。また、オーバーハングに位置するプラウ除雪装置2は、カーブにおいて、車幅方向外側に寄るように一対のレール102に対する水平方向の相対的な位置が変化する。これによって、案内板50のカーブ内側への張り出しが少なくなる。そのため、案内板50は、カーブにおいて張り出しが少なくなることを前提に、余裕をもって車体1からの案内板50の張り出し量が設定されている。そのため、オーバーハングが短くなると、案内板50の車体1からの余分な張り出しを少なくすることができ、案内板50をコンパクトにすることができる。
【0027】
また、プラウ除雪装置2を用いた除雪作業時においてピストンロッド68は短縮側に移動し、シリンダ67に収容された状態となるので、オイルシールの破損など、除雪作業時にピストンロッド68の側面に付着した雪氷に起因する昇降駆動装置63の故障を防止することができる。
【0028】
図5は、除雪車両100の背面図である。ロータリ除雪装置3は、一対のレール102を有する線路の上に積もった雪を掻き集め、装置に取り込み、軌道101の側方に向けて吹き飛ばす装置である。図5に示すように、ロータリ除雪装置3は、雪を掻き集め、雪を取り込む機能を果たす螺旋状の回転刃であるオーガ31を有する。オーガ31は、車体1よりも車体1の後退方向に位置する。ロータリ除雪装置3は、周知のロータリ除雪装置であるため、その詳細な説明を省略する。
【0029】
[動作例]
次に、図6を参照してプラウ除雪装置2の動作例を説明する。プラウ除雪装置2により除雪作業するときは、昇降駆動装置63を駆動し、ピストンロッド68を短縮させる。これによって、可動枠62を介してスノープラウ21を退避位置P2から除雪位置P1に下降させ、スノープラウ21を一対のレール102に近づけることができる。また、ピストンロッド68の基端側の部分は、シリンダ67に収容される。この状態で、除雪車両100を前進させると、一対のレール102の上面よりも上に積もった雪は、一対の案内板50の外側面に当たって、すくい上げられ、後ろ斜め上方に跳ね飛ばされる。そして、跳ね飛ばされた雪は案内板50によって線路の両側に向かって案内される。これによって、一対のレール102よりも上に積もった雪を押し除くことができる。
【0030】
また、軌道間の雪を除雪するときは、フランジャ53を下降させる。この状態で、除雪車両100を前進させると、軌道間に積もった雪が、後ろ斜め上方に跳ね飛ばされ、線路の両側に向かって案内される。これによって、軌道間に積もった雪を押し除くことができる。
【0031】
次に、ロータリ除雪装置3により除雪作業を行うときや、除雪作業しないときは、昇降駆動装置63を駆動し、ピストンロッド68を伸長させる。これによって、可動枠62を介してスノープラウ21を除雪位置P1から退避位置P2に上昇させ、スノープラウ21を一対のレール102から遠ざけることができる。可動枠62及びスノープラウ21が退避位置P2に位置する状態において、案内板50の下端は、回動軸66から遠ざかるに従いレール102から離れ、特に、案内板50の下端の前端50aは、案内板50の下端の後端と比べて軌道101から大きく離れる。これによって、スノープラウ21が軌道101や軌道101の周辺に残留した雪を避けることができる。これによって、残留した雪がロータリ除雪作業の障害となることを防止することができる。
【0032】
また、軌道101や軌道101の周辺に残留した雪が多い状態において、スノープラウ21を退避位置P2に位置させ、除雪車両100を後退させると、残留した雪が、スノープラウ21の内側面に当たることがある。このとき、スノープラウ21の内側面に当たった雪は、一対の案内板50の内側面によって、プラウ除雪装置2の案内板50の外側面が押し除く雪を案内する方向の反対方向、すなわち、軌道間の中央に向かう方向に案内され、案内板50の前端50aの内側に掻き集められることとなる。しかし、可動枠62を回動させてスノープラウ21を退避位置P2に位置させることにより、案内板50の前端50aと軌道101との間を上記の通り大きく空けることができ、案内板50の前端50aの内側に掻き集められた雪をスノープラウ21の外に逃がすように効果的に排出することができる。これにより、軌道101上や軌道101の周辺に溜まった雪がスノープラウ21の内側に堆積することを効果的に防止することができる。また、前進時にスノープラウ21の切削抵抗を緩和するためのスノープラウ21のすくい角が、後退時にはスノープラウ21が雪を撫でるように作用し、溜まった雪への乗り上げを誘発するおそれがあった。しかし、上述の通り、軌道間の中央に掻き集められた雪をスノープラウ21の外に効果的に排出することができるので、後退時における堆積した雪への乗り上げを効果的に防止することができる。
【0033】
以上に説明したように、除雪車両100は、車体1の後退時に、軌道101上や軌道101の周辺に残留した雪がスノープラウ21の内側に堆積することを防止することができる。
【0034】
(実施の形態2)
以下では実施の形態2の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。図7は、実施の形態2に係る除雪車両のプラウ除雪装置202の構成例を示す側面図である。
【0035】
上記実施の形態1において、プラウ昇降装置22は、昇降駆動装置63が下方に位置し、回動軸66が昇降駆動装置63のシリンダ67及びピストンロッド68の上方に位置する。これに対し、本実施の形態において、プラウ除雪装置202のプラウ昇降装置222は、昇降駆動装置63が上方に位置し、回動軸66が昇降駆動装置63のシリンダ67及びピストンロッド68の下方に位置する。
【0036】
(実施の形態3)
以下では実施の形態3の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。図8は、実施の形態3に係る除雪車両のプラウ除雪装置302の構成例を示す側面図である。
【0037】
上記実施の形態1及び2において、プラウ昇降装置22は、昇降駆動装置63の駆動力によって、固定枠61に対して可動枠62を回動させて、スノープラウ21を昇降させている。これに対し、本実施の形態において、プラウ除雪装置302のプラウ昇降装置322は、固定枠361と可動枠362とを連結し、固定枠361に対して可動枠362を昇降させるスライダ昇降装置363を備える。スライダ昇降装置363は直動関節を成す。
【0038】
(実施形態の列挙)
以下、実施形態を列挙する。以下の実施形態に付した番号は、上記実施の形態の番号との関連性を有しない。
【0039】
実施形態1: 長手方向の一方に設けられたスノープラウと他方に設けられた除雪機器を有する軌道用除雪車両のプラウ昇降装置であって、
前記軌道用除雪車両の車体と前記スノープラウとの間に設けられた固定枠に接続され、前記スノープラウを支持する可動枠であって、前記スノープラウにより除雪作業する除雪位置と前記スノープラウが前記除雪位置よりも上方に位置する退避位置との間で移動可能な可動枠と、
前記除雪機器による除雪時に前記可動枠を介して前記スノープラウを前記除雪位置から前記退避位置に上昇可能な昇降駆動装置と、を備える、プラウ昇降装置。
【0040】
この構成によれば、軌道用除雪車両の後退時に、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができる。
【0041】
実施形態2: 前記昇降駆動装置は、シリンダと、前記シリンダに対して伸長する方向及び短縮する方向へ往復動可能なピストンロッドとを有し、
前記可動枠は、前記シリンダ及び前記ピストンロッドの上方かつ前記車体と前記スノープラウとの間に位置する回動軸周りに回動可能に前記固定枠に接続され、前記除雪位置と前記退避位置との間で回動可能である、実施形態1に記載の軌道用除雪車プラウ昇降装置。
【0042】
この構成によれば、昇降駆動装置の車両本体方向の長さ寸法をコンパクトにすることができる。これによって、車両本体のプラウ除雪装置のオーバーハングを短くすることができる。その結果、スノープラウの車両本体からの余分な張り出しを抑制することができる。
【0043】
また、プラウ除雪装置を用いた除雪作業時においてピストンロッドは短縮側に移動した状態にあるため、ピストンロッドへの雪氷の付着を抑制することができる。これにより、ピストンロッドに付着した雪氷に起因する昇降駆動装置の動作不良を防止することができる。
【0044】
実施形態3: 前記除雪機器は、雪を取り込むオーガを有するロータリ除雪装置である、実施形態1に記載のプラウ昇降装置。
【0045】
この構成によれば、ロータリ除雪装置を用いた除雪作業時にスノープラウを退避位置に位置させることができ、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができる。
【0046】
実施形態4: 軌道を走行する軌道用除雪車両であって、
前記軌道用除雪車両の長手方向の一方に設けられたスノープラウと、
他方に設けられた除雪機器と、
前記軌道用除雪車両の車体と前記スノープラウとの間に設けられた固定枠に接続され、前記スノープラウを支持する可動枠であって、前記スノープラウにより除雪作業する除雪位置と前記スノープラウが前記除雪位置よりも上方に位置する退避位置との間で移動可能な可動枠と、
前記除雪機器による除雪時に前記可動枠を介して前記スノープラウを前記除雪位置から前記退避位置に上昇可能な昇降駆動装置と、
を備える、軌道用除雪車両。
【0047】
この構成によれば、軌道用除雪車両の後退時に、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができる。
【0048】
実施形態5: 前記除雪機器は、雪を取り込むオーガを有するロータリ除雪装置である、実施形態4に記載の軌道用除雪車両。
【0049】
この構成によれば、ロータリ除雪装置を用いた除雪作業時にスノープラウを退避位置に位置させることができ、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができる。
【0050】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0051】
P1 除雪位置
P2 退避位置
1 車体
2 プラウ除雪装置
3 ロータリ除雪装置
11 前輪
21 スノープラウ
22 プラウ昇降装置
31 オーガ
50 案内板
50a 前端
51 固定案内板
52 可動案内板
53 フランジャ
61 固定枠
62 可動枠
63 昇降駆動装置
66 回動軸
67 シリンダ
68 ピストンロッド
100 除雪車両
101 軌道
102 レール
【要約】
【課題】 軌道用除雪車両の後退時に、軌道上や軌道の周辺に溜まった雪がスノープラウの内側に堆積することを防止することができるプラウ昇降装置を提供する。
【解決手段】 プラウ昇降装置は、長手方向の一方に設けられたスノープラウ21と他方に設けられた除雪機器3を有する軌道用除雪車両100のプラウ昇降装置2であって、軌道用除雪車両100の車体1とスノープラウ21との間に設けられた固定枠61に接続され、スノープラウ21を支持する可動枠62であって、スノープラウ21により除雪作業する除雪位置P1とスノープラウ21が除雪位置P1よりも上方に位置する退避位置P2との間で移動可能な可動枠62と、除雪機器3による除雪時に可動枠62を介してスノープラウ21を除雪位置P1から退避位置P2に上昇可能な昇降駆動装置63と、を備える。
【選択図】 図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8