(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-16
(45)【発行日】2024-04-24
(54)【発明の名称】給電方法、装置、ネットワークデバイスおよび読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240417BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240417BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H02J1/00 306B
H02J13/00 N
H02J13/00 301A
G06F1/26 306
(21)【出願番号】P 2023501541
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2021105096
(87)【国際公開番号】W WO2022007868
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】202010663233.5
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン シン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジャングオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェー シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シー シーチャオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ミンミン
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208489801(CN,U)
【文献】HUAWEI TECHNOLOGES CO., LTD.,5G Power Whitepaper,2019年02月27日,https://www.huawei.com/minisite/5g-ultra-lean-site-2019/pdf_v1.0/5G-Power-White-Paper-en.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 13/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔デバイスに給電する給電装置が実行する給電方法であって、
前記遠隔デバイスを監視して得られる入力給電電圧およびリアルタイム給電電流を含む入力給電パラメータに基づいて前記遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得する
取得ステップと、
予め定められたプリセット給電効率と前記リアルタイム給電効率に基づいて前記遠隔デバイスに給電する
ための前記給電装置の電源出力電圧および電圧出力電流を含む電源出力パラメータを確定する
パラメータ確定ステップと、
前記遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する
ために、前記電源出力パラメータに基づいて前記遠隔デバイスに対して給電する給電ステップと、を
含み、
前記パラメータ確定ステップは、
前記リアルタイム給電効率が前記プリセット給電効率よりも小さいと確定した場合、前記
リアルタイム給電電流に基づいて前記遠隔デバイスの入力給電電圧を確定する電圧確定ステップと、
前記給電装置と前記遠隔デバイスを接続する導電ケーブルの等価インピーダンスと、確定された入力給電電圧に基づいて、前記導電ケーブルで損失した電圧を補償する前記電源出力パラメータを算出して取得するステップと、を含み、
前記電圧確定ステップは、
前記リアルタイム給電電流に基づいて給電効率パラメータテーブルを照会し、前記プリセット給電効率に対応する前記遠隔デバイスの入力給電電圧を確定するステップと、を含む、
給電方法。
【請求項2】
前記取得ステップの前に、
リアルタイム給電電流と
前記導電ケーブルの等価インピーダンスを取得
するインピーダンス取得ステップと、
前記導電ケーブルの等価インピーダンスとリアルタイム給電電流に基づいて前記導電ケーブルの給電電圧を算出して取得するステップと、をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記給電効率パラメータテーブルは、前記リアルタイム給電電流、前記遠隔デバイスの入力給電電圧と前記プリセット給電効率の対応関係を
示す、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記
入力給電パラメータに基づいて前記遠隔デバイスの負荷が
降下したことを確定したとき、前記遠隔デバイスの入力給電電
圧が前記遠隔デバイスの負荷耐圧値以下
となるように前記電源出力パラメータを確定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記給電装置は、第1電源および第2電源を含み、
前記電源出力パラメータは、
前記第1電源の出力パラメータと
前記第2電源の出力パラメータとを含み、
前記
給電ステップは、
前記第2電源が故障していると確定した場合
、前記遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する
ために、前記第1電源の出力パラメータに基づいて前記第1電源から前記遠隔デバイスに対して給電するステップを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記取得ステップの前に、
前記入力給電パラメータと前記等価インピーダンスとを含む訓練パラメータを含む訓練パラメータセットを取得するステップと、
前記訓練パラメータセットに基づいて給電効率モデルを構築するステップと、
テスト給電パラメータを前記給電効率モデルに入力してテストを行い、
前記遠隔デバイスの給電要求を満たす前記プリセット給電効率を取
得するステップと、をさらに含む
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記給電ステップは、
前記遠隔デバイスの入力給電パラメータをリアルタイムで動的に調整する
ために、前記電源出力パラメータに基づいて前記遠隔デバイスに対してリアルタイムで給電するステップを、含む
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前
前記給電ステップは、
コントローラローカルエリアネットワーク方式、ピアトゥピアのインタフェース通信方式、短距離通信方式、無線通信ネットワーク方式、シリアル通信方式及び電力線通信方式のいずれかの通信方式を用いて前記電源出力パラメータをリアルタイムで前記遠隔デバイスに出力することにより、前記遠隔デバイスの前記入力給電パラメータを動的に調整する
ステップを、含む
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記取得ステップの前に、
前記給電装置と前記遠隔デバイスの間の
前記入力給電パラメータを動的に監視し、前記
入力給電パラメータを含む検出情報を取得する
監視ステップを、含む
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記監視ステップは、
前記遠隔デバイスに検出命令を送信するステップと、
前記遠隔デバイスが返した検出応答に応じて
、前記入力給電パラメータと前記遠隔デバイスの型番とを含む前記検出情報を
取得するステップと、を含む
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記
インピーダンス取得ステップは、
前記リアルタイム給電電流を取得するステップと、
前記導電ケーブルの抵抗率と前記
導電ケーブルの長さに基づいて前記導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して取得するステップ、
または、
前記導電ケーブルの現在の電流と前記導電ケーブル上の電圧差とに基づいて導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して取得するステップと、を含む
請求項2に記載の方法。
【請求項12】
遠隔デバイスに給電する給電装置であって、
前記遠隔デバイス
を監視して得られる入力給電電圧およびリアルタイム給電電流を含む入力給電パラメータに基づいて前記遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得するように構成された算出モジュールと、
予め定められたプリセット給電効率と前記リアルタイム給電効率に基づいて前記遠隔デバイスに給電する
ための前記給電装置の電源出力電圧および電圧出力電流を含む電源出力パラメータを確定するように構成された確定モジュールと、
前記遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する
ために、前記電源出力パラメータに基づいて前記遠隔デバイスに対して給電するように構成された調整モジュールと、を
含み、
前記確定モジュールは、
前記リアルタイム給電効率が前記プリセット給電効率よりも小さいと確定した場合、前記
リアルタイム給電電流に基づいて前記遠隔デバイスの入力給電電圧を確定する電圧確定機能と、
前記給電装置と前記遠隔デバイスを接続する導電ケーブルの等価インピーダンスと、確定された入力給電電圧に基づいて、前記導電ケーブルで損失した電圧を補償する前記電源出力パラメータを算出して取得する機能と、を含み、
前記電圧確定機能は、
前記リアルタイム給電電流に基づいて給電効率パラメータテーブルを照会し、前記プリセット給電効率に対応する前記遠隔デバイスの入力給電電圧を確定する、
給電装置。
【請求項13】
1つまたは複数のプロセッサと、
1つまたは複数のプログラムが記憶してあり、前記1つまたは複数のプログラムが前記1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサが
請求項1から11のいずれか1項に記載の
方法を実現するメモリと、を備える
ネットワークデバイス。
【請求項14】
プロセッサにより実行されるときに請求項
1~11のいずれか1項に記載の
方法を実現するコンピュータプログラムを記憶した、
読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年7月10日に中国特許庁へ提出された出願番号を202010663233.5とし、発明の名称を「給電方法、装置、ネットワークデバイスおよび読み取り可能な記憶媒体」とする中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容を参照により本願に援用する。
【0002】
本願実施例は通信技術分野に関するものであるが、これに限定されず、具体的には、給電方法、装置、ネットワークデバイスおよび読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
通信電源は基本電源(例えば48V電源)を使用することが多く、この48V電源の電圧を逆変換して昇圧した後、遠隔デバイスに使用するために高圧直流電圧に変換する。電圧の変換過程におけるエネルギー消費効率は通常80%程度であり、エネルギー損失が大きい。第5世代移動通信技術(5th Generation Mobile Networks、5G)を迎える前の段階においては、基地局データが少なく遠隔基地局(つまり遠方のデバイスに適切な電源を供給する基地局)の数が少ないため、電圧エネルギー消費の問題が際立っていないが、5Gの発展に伴って遠隔基地局の数は指数関数的に増加し、電圧エネルギー消費の問題が一層浮き彫りになるはずである。ネットワーク障害についての統計によれば、5G通信ネットワークが途切れる原因は電源関係が多く、通信の安全性が保障されていないことが明らかになっている。
【0004】
現在、遠隔デバイスと遠隔基地局の遠隔供給電源との間には電力線通信(Power Line Communication、PLC)が多く採用されているが、これは遠隔デバイスへの入力電圧がその給電要求を満たすことができずに通信ネットワークの給電安全性に影響を与えることになりやすい。
【発明の概要】
【0005】
本願は、給電方法、装置、ネットワークデバイスおよび読み取り可能な記憶媒体を提供する。遠隔基地局の供給する遠隔電源が適切な電源を遠隔デバイスに適時供給できないために通信ネットワークが途切れて通信の安全性が低下するという問題を解決するためのものである。
【0006】
本願実施例は、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得するステップと、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定するステップと、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整するステップと、を含む給電方法を提供する。
【0007】
本願実施例は、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得するように構成された算出モジュールと、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定するように構成された確定モジュールと、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整するように構成された調整モジュールと、を含む、給電装置を提供する。
【0008】
本願実施例は、1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のプログラムが記憶してあり、1つまたは複数のプログラムが1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、1つまたは複数のプロセッサが本願実施例における任意の給電方法を実現するメモリと、を備えるネットワークデバイスを提供する。
【0009】
本願実施例は、プロセッサにより実行されるときに本願実施例における任意の給電方法を実現するコンピュータプログラムを記憶した、読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【0010】
本願実施例の給電方法、装置、ネットワークデバイス及び読み取り可能な記憶媒体によれば、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得することにより、遠隔デバイスが最適な給電効率に達しているかどうかを動的に検出することを可能にし、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定することにより、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整することを可能にしている。これにより、遠隔デバイスへの入力給電パラメータの動的制御を実現し、遠隔デバイスの負荷が頻繁に変動することによる不安全要素を低減したほか、遠隔デバイスの安全かつ効率的な運用を保証し、通信ネットワークの断絶を回避して通信ネットワークの給電安全性を高めている。
【0011】
本願の上記実施例と他の態様及びその実現方式については、図面の説明、具体的な実施形態及び請求項においてより多くの説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来の給電システムの構成ブロック図を示す。
【
図2】本願実施例における給電方法のフローチャートを示す。
【
図3】本願の例示的な実施例において電源出力パラメータを確定する方法のフローチャートを示す。
【
図4】本願の一実施例における給電システムの構成ブロック図を示す。
【
図5a】本願の一実施例における第2電源の構造模式図を示す。
【
図5b】本願の別の実施例における第2電源の構造模式図を示す。
【
図6】本願の別の実施例における給電システムの構成ブロック図を示す。
【
図7】本願の更に別の実施例における給電システムの構成ブロック図を示す。
【
図9】本願実施例における制御電源の出力給電電圧の効果図を示す。
【
図10】本発明の一実施例において提供される給電装置の構造模式図を示す。
【
図11】本発明の実施例における給電方法及び装置を実現できる電子デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を示す構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の目的、技術案および利点をより明確にするために、以下において図面を組み合わせて本願の実施例について詳細に説明する。なお、本願における実施例および実施例における特徴は矛盾しない限り互いに任意に組み合わせることができる。
【0014】
図1は従来の給電システムの構成ブロック図である。
図1に示したように従来の給電システムでは、第1電源110と第2電源120とを直列に接続することにより、導電ケーブル130を介して遠隔デバイス140に給電が行われている。ここで第1電源110は整流モジュール111を含み、第2電源120は昇圧モジュール121を含む。
【0015】
第1電源110と第2電源120が直列動作している場合、第2電源120の昇圧モジュール121がひとたび故障すると、給電システム全体が停電し、システムの給電の信頼性を保証することができない。また、昇圧モジュール121が昇圧できず負荷を帯びたまま動作すると、給電システムの電力損失が余計に増加する。通信システムにおいては、遠隔デバイス140と遠隔基地局の遠隔供給電源(例えば第1電源110と第2電源120)との間に電力線通信が多く採用されているため、遠隔デバイス140に出力する給電電圧をリアルタイムで調整することができず、遠隔デバイス140への入力電圧がその給電需要を満たせないことになる。遠隔デバイス140と遠隔基地局の遠隔供給電源との間の回線負荷変動が大きい場合、遠隔デバイス140への入力電圧がその最大耐圧電圧を超える可能性があり、遠隔デバイス140の損傷を招きやすく、通信ネットワークの給電安全性に影響が及ぶ。
【0016】
図2は本願実施例における給電方法のフローチャートである。当該給電方法は基地局に設置可能な給電装置に適用することができる。
図2に示したように、本願実施例における給電方法は以下のステップを含んでもよい。
【0017】
ステップ210では、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出する。
【0018】
ここで遠隔デバイスは、無線周波数遠隔制御ユニット(Remote Radio Unit、RRU)、アクティブアンテナユニット(Active Antenna Unit、AAU)、またはその他の通信デバイスであってもよい。なお遠隔デバイスについては例を挙げて説明したにすぎず、説明していない他の遠隔デバイスも本願の請求範囲内にあり、具体的な状況に応じて具体的に設定することができるが、ここでは詳しく説明しない。
【0019】
1つの具体的な態様において、当該方法はステップ210の前に、給電装置と遠隔デバイスとの間の給電パラメータを動的に監視し、検出情報を得るステップをさらに含む。
【0020】
ここでは、給電装置と遠隔デバイスとの間の給電パラメータを動的に監視することにより、遠隔デバイスの動作状況を速やかに取得し、遠隔デバイスが給電需要に合致する給電パラメータを取得できるかどうかを確認することができる。遠隔デバイスの入力給電パラメータがこの遠隔デバイスの給電需要を満たすことができない場合、給電装置は検出情報を通して遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を速やかに算出することができる。これにより、遠隔デバイスのリアルタイム給電効率がその給電需要を満たすかどうかを正確に取得し、出力する電源給電パラメータを調整するための参考にする。
【0021】
1つの例示的な実施形態において、給電装置と遠隔デバイスとの間の給電パラメータを動的に監視し、検出情報を得るというステップは、検出コマンドを遠隔デバイスに送信し、遠隔デバイスから返された検出応答に応じて検出情報を取得するという方法で実現できる。
【0022】
1つの例示的な実施形態において、検出情報は遠隔デバイスの入力給電パラメータと遠隔デバイスの型番を含み、入力給電パラメータは例えば入力給電電圧、入力給電電流などを含んでもよい。遠隔デバイスの型番を通じて遠隔デバイスの動作チャンネルを把握できるほか、当該遠隔デバイスが具体的に備える無線周波数チャンネルの数や各無線周波数チャンネルの無線周波数ポートの出力電力などの情報を知ることができ、ひいては当該遠隔デバイスが正常に動作しているときの消費電力を知り、当該遠隔デバイスに適切な電源出力パラメータを提供するための参考にすることができる。なお検出情報については例を示して説明したに過ぎず、説明していない他の検出情報も本願の請求範囲内にあり、具体的な状況に応じて具体的に設定することができるが、ここでは詳しく説明しない。
【0023】
ステップ220では、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて、遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定する。
【0024】
1つの例示的な実施形態において、プリセット給電効率は予め設定したパラメータであってもよく、ビッグデータを分析することによって得た数値であってもよいが、リアルタイム給電効率を当該プリセット給電効率と比較することにより、遠隔デバイスが正常に動作しているか、不要な電力消費負荷が存在しているかどうかを知ることができる。状況に応じ、遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定するために給電電源を調整するが、電源出力パラメータは例えば電源出力電圧、電圧出力電流などのパラメータであってもよい。
【0025】
ステップ230では、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する。
【0026】
例えば、電源出力パラメータを通じて遠隔デバイスの入力給電パラメータを高める(例えば遠隔デバイスへの入力給電電圧を高めるなど)ことにより、遠隔デバイスが安全かつ効率的な運用を保証できるようにする、あるいは、電源出力パラメータを通じて遠隔デバイスの入力給電パラメータを低下させることにより、不要な電力損失を減少させて給電効率を向上させる。
【0027】
本願実施例の給電方法によれば、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得し、遠隔デバイスが最適な給電効率を実現しているかを動的に検出するステップと、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに出力する電源出力パラメータを確定し、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整するステップと、を含む。これにより、遠隔デバイスへの入力給電パラメータの動的制御を実現し、遠隔デバイスの負荷が頻繁に変動することによる不安全要素を低減したほか、遠隔デバイスの安全かつ効率的な運用を保証し、通信ネットワークの断絶を回避し、通信ネットワークの給電安全性を高めている。
【0028】
一実施例において、当該方法はステップ210の前に、リアルタイム給電電流と導電ケーブルの等価インピーダンスを取得するステップ240、をさらに含む。
【0029】
1つの例示的な実施形態において、導電ケーブルは遠隔デバイスに接続されたケーブルである。導電ケーブルは例えば、電源によって出力された給電電圧や給電電流などを遠隔デバイスが得ることができるように、遠隔デバイスと電気的に接続するための銀、銅、アルミニウムなどの材質のケーブルであってもよい。また、自動計測器(または計器)による回路中のリアルタイム測定により、リアルタイム給電電流を取得することができる。
【0030】
1つの具体的な態様においてステップ240は、リアルタイム給電電流を取得する、導電ケーブルの抵抗率とケーブルの長さに基づいて導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して得る、あるいは、導電ケーブルの現在の電流と導電ケーブル上の電圧差に基づいて、導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して得るという方法で実現できる。
【0031】
例えば、導電ケーブルの抵抗率ρと当該導電ケーブルの長さLに基づいて当該導電ケーブルの等価インピーダンスRを算出して取得する(即ちR=ρ*L)。例えば銅線の抵抗率は1.72*10^(-8)Ω/m、アルミニウム線の抵抗率は2.9*10 ^(-8)Ω/mであり、異なる材質の導電ケーブルは異なる抵抗率を有する。導電ケーブルの入力端電圧と当該導電ケーブルの出力端電圧との差がΔU、導電ケーブルを流れる現在の電流がIである場合、当該導電ケーブルの等価インピーダンスはR=ΔU/Iとなる。
【0032】
以上の異なる方法を通じ導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して得て、それをエレクトリカリーイレーサブルプログラマブルリードオンリーメモリ(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、EEPROM)に書き込むことにより、EEPROMがリアルタイムで電気ケーブルの等価インピーダンスを得ることが可能となる。これは導電ケーブルの電力損失を動的に算出する際の利便性が高い。
【0033】
ステップ250では、導電ケーブルの等価インピーダンスとリアルタイム給電電流に基づいて導電ケーブルの給電電圧を算出して取得する。
【0034】
ここでは、導電ケーブル自身のパラメータを通じて導電ケーブルの等価インピーダンスを算出して取得し、それにリアルタイム給電電流を組み合わせることにより、導電ケーブルで損失した電力量を反映する導電ケーブルの給電電圧の算出を可能にしている。また、電源がリアルタイムで出力した電源出力パラメータを組み合わせることにより、遠隔デバイスの入力給電パラメータを速やかに調整することを可能にしており、遠隔デバイスの入力給電パラメータの動的制御を実現するとともに、遠隔デバイスの負荷が頻繁に変動することによる非安全要素を低減し、遠隔デバイスの安全かつ効率的な運用を保証して通信ネットワークの給電安全性を高めている。
【0035】
図3は本願実施例において電源出力パラメータを確定する方法のフローチャートである。
図3に示したように、ステップ220はステップ221~222を含む方法で実現することができる。
【0036】
ステップ221では、リアルタイム給電効率がプリセット給電効率よりも小さいと確定した場合、リアルタイム給電電流に基づいて遠隔デバイスの入力給電電圧を確定する。
【0037】
例えば、遠隔デバイスAのリアルタイム給電効率が60%でありプリセット給電効率が84%である場合、60%<84%なので、リアルタイム給電電流IA、プリセット給電効率84%、プリセット給電電圧U0、プリセット給電電流I0から、遠隔デバイスAのリアルタイム給電効率60%に対応する入力給電電圧UAを算出する必要がある。
【0038】
一実施例において、ステップ221においてリアルタイム給電電流に基づき遠隔デバイスの入力給電電圧を確定することは、リアルタイム給電電流に基づいて給電効率パラメータテーブルを照会し、プリセット給電効率に対応する遠隔デバイスの入力給電電圧を取得することと理解できる。
【0039】
ここで給電効率パラメータテーブルは、リアルタイム給電電流と遠隔デバイスの入力給電電圧とプリセット給電効率の対応関係を示す表である。
【0040】
給電効率パラメータテーブルを参照する方法による遠隔デバイスの入力給電電圧の取得は、遠隔デバイスの入力給電電圧をリアルタイムで迅速に取得することを保証できる。これは後に遠隔デバイスの給電パラメータを調整する際の利便性に優れる。
【0041】
ステップ222では、導電ケーブルの等価インピーダンスと遠隔デバイスの入力給電電圧に基づき電源出力パラメータを算出して取得する。
【0042】
例えば、導電ケーブルの等価インピーダンスとリアルタイム給電電流を通じ、導電ケーブル上で損失した電圧を算出して取得した後、この損失した電圧を遠隔デバイスの入力給電電圧と組み合わせ、電源出力電圧を算出して取得することができる。
【0043】
また、リアルタイム給電効率とプリセット給電効率を比較することにより、リアルタイム給電効率がプリセット給電効率より小さい場合、導電ケーブルの等価インピーダンスと遠隔デバイスの入力給電電圧に基づいて前記電源出力パラメータを算出して取得し、電源出力パラメータを調整することにより遠隔デバイスの入力給電パラメータを間接的に調整し、遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を最適化する。これにより遠隔設備の安全かつ効率的な運用を保証し、通信ネットワークの断絶を回避し、通信ネットワークの給電安全性を高めている。
【0044】
1つの具体的な態様において、遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスの負荷が突然降下したことを確定した場合、遠隔デバイスの入力給電電圧は遠隔デバイスの負荷耐圧値以下である。
【0045】
例えば、遠隔デバイスBの安全性を保証するために、遠隔デバイスの検出情報により遠隔デバイスB中の負荷が突然電気的に降下したことが分かった場合(例えば遠隔デバイスBの消費電力が明らかに低下した場合)、遠隔デバイスBの正常な動作を保証するためには、遠隔デバイスの入力給電電圧を遠隔デバイスBの負荷耐圧値以下に制御する必要がある。例えば、入力給電電圧UBがUB=min{UB、負荷耐圧値}の式を満たすようにするが、ここで負荷耐圧値は遠隔デバイスBに入力される最大電圧値を表す。
【0046】
ここでは遠隔デバイスの入力給電電圧が遠隔デバイスの負荷耐圧値以下になるよう制御することにより、入力された高電圧によって遠隔デバイスが損傷することを回避し、遠隔デバイスの正常な動作を保証すると同時に電源給電効率を高めている。
【0047】
1つの具体的な態様において、電源出力パラメータは第1電源の出力パラメータと第2電源の出力パラメータとを含み、第2電源に故障が発生したと判断した場合は、第1電源の出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する。
【0048】
例えば、第2電源に故障が発生したことを検出した場合、直ちに第1電源の出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整する必要がある。例えば、第1電源の出力した電圧のみを用いて遠隔デバイスに給電することにより遠隔デバイスの正常な動作を保証し、通信ネットワークの断絶を回避して通信ネットワークの安全性を向上させることができる。
【0049】
1つの具体的な態様においてステップ230は、電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータをリアルタイムで動的に調整するステップ231を含む。
【0050】
ここでは遠隔デバイスの入力給電パラメータをリアルタイムで動的に調整することにより、遠隔デバイスに発生した異常状況を速やかに処理することを可能にしており、遠隔デバイスのリアルタイム給電効率の最適化を保証している。
【0051】
1つの具体的な実現においては、下記方法でステップ231を実現することができる。即ち、コントローラネットワーク(Controller Area Network,CAN)方式、ピアトゥピアのインタフェース通信方式(例えばRS485インタフェース通信など)、短距離通信方式(例えばWIFI通信など)、無線通信ネットワーク方式(例えばBluetooth通信など)、シリアル通信方式(Serial Communication)、PLC方式のいずれかの通信方式を用いて電源出力パラメータをリアルタイムで遠隔デバイスに出力し、遠隔デバイスの入力給電パラメータを動的に調整するという方法である。なお通信方式については例を挙げて説明したに過ぎず、説明していない他の通信方式も本開示の保護範囲内にあり、具体的な状況に応じて具体的に設定することができるが、ここでは詳しく説明しない。
【0052】
このように、異なる通信方式を通じて電源出力パラメータをリアルタイムで遠隔デバイスに出力し、遠隔デバイスの入力給電パラメータを動的に調整することにより、遠隔デバイスの給電入力ポートが標準仕様範囲内の給電装置が提供する給電パラメータを得ることができることを保証したほか、通信故障率を低減して給電信頼性を高め、運営コストを削減している。
【0053】
一実施例においては、ステップ210の前に、訓練遠隔デバイスの入力給電パラメータと導電ケーブルの等価インピーダンスとを含む訓練パラメータを含む訓練パラメータセットを取得するステップと、入力給電パラメータと導電ケーブルの等価インピーダンスに基づいて給電効率モデルを構築するステップと、テスト給電パラメータを給電効率モデルに入力してテストを行い、プリセット給電効率を取得し、プリセット給電効率に対応するテスト遠隔デバイスの入力給電パラメータはテスト遠隔デバイスの給電要求を満たすステップと、をさらに含む。
【0054】
例えば、給電効率パラメータテーブルのデータに基づき、異なる材質の導電ケーブルを用いて導電し、訓練パラメータセットを取得することにより、給電効率モデルを構築する。そして、リアルタイムで測定したテスト給電パラメータを給電効率モデルに入力してテストを行う。得られた給電効率が遠隔デバイスの給電要求を満たした(例えば遠隔デバイスのリアルタイム給電効率がプリセット給電効率に合致した)場合、このとき取得した給電効率を、遠隔デバイスへの給電状況を評価するためのプリセット給電効率とすることができる。これにより、給電装置は遠隔デバイスへの給電状況を速やかに調整することが可能となっており、給電効率と給電信頼性を向上させている。
【0055】
ここでは大量のデータを訓練サンプルとして使用し給電効率モデルを構築することにより、テストを通してプリセット給電効率を取得している。これを後に遠隔デバイスの給電状況を評価するための準備作業とすることで、遠隔デバイスの給電状況に対する評価を速やかなものとし、遠隔デバイスの効率的かつ安全な運用を確保し、遠隔デバイスの給電効率を最適化すると同時に不要なリソースの浪費を回避し、省エネと排出削減を実現している。
【0056】
図4は本願の一実施例における給電システムの構成ブロック図である。当該給電システムは、長距離の導電ケーブルの等価インピーダンスによる出力電圧の損失を補償し、遠隔デバイスへの給電効率を高めるための、遠隔デバイスに適切な直流電源を提供する基地局電源システムであってもよい。また遠隔デバイスは、RRU、AAUまたはその他の通信デバイスであってもよい。
【0057】
図4に示したように、給電システムは第1電源310、第2電源320、導電ケーブル330、および遠隔デバイス340を含み、第1電源310の出力端は第2電源320の入力端に電気的に接続される。第1電源310は第1監視モジュール311と整流モジュール312とを含み、第2電源320は第2監視モジュール321と、昇圧モジュール322と、自動変換スイッチ素子(Automatic Transfer Switching Equipment、ATSE)323とを含み、遠隔デバイス340は第3監視モジュール341を含む。
【0058】
一実施例において、整流モジュール312が正常に出力する電圧範囲は42V~59.5Vであり、昇圧モジュール322が出力する電圧範囲は57V-63Vであり、導電ケーブル330を介して遠隔デバイス340に伝送される。
【0059】
なお、第1電源310は交流-直流(Alternating Current-Direct Current、AC-DC)変換を行うために使用される。即ち第1電源310は、受信した交流電力を整流モジュール312を介して直流電力に変換し、第2電源320に出力する。ここで受信する交流電力は都市電力、つまり一般の交流電力であってもよい。第2電源320は、昇圧モジュール322を介して直流-直流(Direct Current-Direct Current、DC-DC)変換を行い(即ち第1電源310から入力された直流電力を昇圧処理し、昇圧後の直流電力を得る)、変換された直流電力を導電ケーブル330を介して遠隔デバイス340に供給する。一つの例示的な実施例において、第1監視モジュール311、第2監視モジュール321および第3監視モジュール341の間は給電システムにおける給電状況を監視するために通信することができる。
【0060】
例えば、第2監視モジュール321は第3検出モジュール341に検出命令を送信し、第3検出モジュール341は遠隔デバイス340を検出することにより遠隔デバイス340の検出情報を取得した上で、当該検出情報に基づいて検出応答を生成し、第3検出モジュール341は遠隔デバイス340の検出情報を第2監視モジュール321に取得させるために、検出応答を第2監視モジュール321に送信する。一つの例示的な実施形態において、検出情報は遠隔デバイス340の入力給電パラメータ(例えば遠隔デバイス340の給電入力ポートの給電電圧や給電電流など)と遠隔デバイス340の型番を含む。第2監視モジュール321は検出情報を取得した後、まず検出情報を第1監視モジュール311に通知してから、当該検出情報に基づいてスイッチ切替指令を生成し、ATSE 323にスイッチ切替指令を送信して、給電システムにおける給電状況を調整する。
【0061】
図5aは本願の一実施例における第2電源の構造模式図である。
図5aに示したように、第2電源320は昇圧モジュール322と自動変換スイッチ素子323を含み、自動変換スイッチ素子323は第2電源320の内部に集積され、スイッチK1とスイッチK2を含む。
【0062】
図5bは本願の別の実施例における第2電源の構造模式図である。
図5bに示したように、第2電源320は昇圧モジュール322を含む。例示的な実施形態において、自動変換スイッチ素子323は第2電源320の外部に配置され、スイッチK1とスイッチK2を含む。
【0063】
一つの例示的な実施形態において、自動変換スイッチ素子はスイッチングK1とスイッチングK2とを含んでもよい。スイッチK1が閉じK2が開いている場合、第2電源320は昇圧モジュール322を介して給電システムに対し、直流から直流に変換した電源を供給することができる。例えば、第1電源310(図示せず)の入力した電圧は、昇圧モジュール322による処理を経て昇圧後の直流電圧を取得する。スイッチK2が閉じK1が開いている場合、給電システムは昇圧モジュール322による昇圧処理を必要とせず、第1電源310から供給される電圧のみを用いて遠隔デバイス340(図示せず)の給電需要を満たすことができる。
【0064】
本願実施例における給電システムでは、リアルタイムで自動変換スイッチ素子を制御することにより、給電効率が最適になるように給電システムにおける電源制御を実現している。第2電源が故障した場合は、自動変換スイッチ素子を制御することにより給電電源を第1電源に切り替えることもでき、給電システムの運用信頼性を向上させている。
【0065】
図6は本願の別の実施例における給電システムの構成ブロック図である。第2電源320内の昇圧モジュール322に故障が発生した場合、昇圧モジュール322は第1電源310の入力した電圧を昇圧することができない。この場合は、整流モジュール312を自動変換スイッチ素子323に直接接続し、第1電源310の整流モジュール312が出力する電圧U1を用いて遠隔デバイス340に給電すればよい。これにより給電システムの正常動作を確保し、遠隔デバイス340が電源切れにより動作不能に陥ることを回避している。
【0066】
図6に示したように、第1電源310は第1監視モジュール311と整流モジュール312とを含み、遠隔デバイス340は第3監視モジュール341を含む。ここで、第1監視モジュール311、第2監視モジュール321、第3監視モジュール341の間は、給電システムにおける給電状況を監視するために、異なる通信方式(例えば無線通信など)で通信することができる。整流モジュール312は受信した交流を直流に変換するためのものであり、遠隔伝送の利便性を高めている。
【0067】
自動変換スイッチ素子323の入力端は第1電源310中の整流モジュール312の出力端に電気的に接続され、自動変換スイッチ素子323の出力端は導電ケーブル330に電気的に接続され、自動変換スイッチ素子323は閉状態にある(即ち、
図5aまたは
図5b中のK2は閉状態、K1は開状態)。
【0068】
第2監視モジュール321による昇圧モジュール322の監視結果により昇圧モジュール322が故障していることが分かった場合(例えば昇圧モジュール322の出力電圧が0vであるなど)、昇圧モジュール322は整流モジュール312が出力する電圧を昇圧処理することができない。この場合は、給電システムの正常動作を保証するために、自動変換スイッチ素子323中のK2を閉状態、K1を開状態にするような制御指令を第2監視モジュール32が発出する。このとき、U1=U2となる。ただ、遠隔デバイス340の負荷インピーダンスと導電ケーブル330の等価インピーダンスの変化に伴い、リアルタイム給電電流Iは変化する。導電ケーブル330の等価インピーダンスRは一定の条件下で一定に保たれるため、U2とU3の変化を招くことは必至である。導電ケーブル330上の給電電圧は式ΔU=U3-U2により得られる。ΔUの変化が第1電源310の調整範囲内(例えば、導電ケーブル330の給電電圧ΔUがプリセット電圧閾値(例えば5V)未満)である場合、第2電源320による昇圧処理は不要であり、第1電源310から出力された電圧のみを用いて遠隔デバイス340の給電要求を満たすことができる。
【0069】
また、コントローラのローカルエリアネットワーク方式、ピアトゥピアのインターフェース通信方式、短距離通信方式、無線通信ネットワーク方式、シリアル通信方式、電力線通信方式のいずれかの通信方式を用いて第1電源310が出力する電源給電パラメータ(例えば給電電圧)をリアルタイムで遠隔デバイス340に出力することにより、遠隔デバイス340の入力給電パラメータ(例えば入力給電電圧やリアルタイム給電電流など)を動的に調整することができる。
【0070】
本実施例においては、第2監視モジュールを通じて自動変換スイッチデバイスを制御し、第1電源から出力された電源給電電圧を直接導電ケーブルに出力し、導電ケーブルを通じて遠隔デバイスに出力し、遠隔デバイスの安全な動作を保証し、給電システムの動作効率を向上させている。
【0071】
図7は本願の更なる別の実施例における給電システムの構成ブロック図である。導電ケーブル330の伝送距離が長く、導電ケーブル上のエネルギー損失が大きい場合、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率がプリセット給電効率よりも小さくなる。この場合、第2電源320は第1電源310と協力して動作し、遠隔デバイス340に適切な電源出力パラメータを提供することにより、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率を高める必要がある。
【0072】
図7に示したように、第1電源310は第1監視モジュール311と整流モジュール312とを含み、遠隔デバイス340は第3監視モジュール341を含む。ここで、第1監視モジュール311、第2監視モジュール321、第3監視モジュール341の間は、給電システムにおける給電状況を監視するために、異なる通信方式(例えば無線通信など)で通信することができる。整流モジュール312は受信した交流を直流に変換するためのものであり、遠隔伝送の利便性を高めている。
【0073】
ここでは自動変換スイッチ素子323は開状態にあり(即ち
図4aまたは
図4bのK1は閉状態、K2は開状態)、第2電源320の入力端(即ち第2監視モジュール321の入力端)が第1電源310の出力端に電気的に接続されている。また、第2電源320の出力端(即ち昇圧モジュール322の出力端)は導電ケーブル330に電気的に接続されており、第2電源320が昇圧モジュール322を用いて第1電源310への入力電圧U1を昇圧し、昇圧後の直流電源を得ることができるようになっている。次いで、この昇圧後の直流電源は導電ケーブル330を介して遠隔デバイス340に出力され、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率を向上させている。
【0074】
具体的には次のようなステップを経ることで、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率を向上させることができる。
【0075】
ステップ701において、第2監視モジュール321はアナログデジタル変換サンプリング方式または第1監視モジュール311と通信する方式により、第1電源310が出力する給電電圧U1を取得する。第2監視モジュール321は、昇圧モジュール322により処理された電源給電電圧U4、遠隔デバイス340の入力ポートの入力給電電圧U5、及び現在の給電システムにおけるリアルタイム給電電流Iを取得する。
【0076】
なお第2監視モジュール321は、給電効率パラメータテーブルを参照することにより入力給電電圧U5を取得してもよく、効率適合曲線により入力給電電圧U5を取得してもよい。なお、入力給電電圧U5の取得方式については例を挙げて説明したに過ぎず、具体的には実際の状況に応じて具体的に設定することができる。例を挙げていない他の入力給電電圧U5の取得方式も本願の保護範囲内になるが、ここでは詳しく説明しない。
【0077】
例えば、表1は本願実施例における給電効率パラメータテーブルである。表1に示したように、給電効率パラメータテーブルにはリアルタイム給電電流Iと、遠隔デバイス340の入力給電電圧Uと、プリセット給電効率ηとが含まれる。給電効率パラメータテーブルを参照すれば、異なるリアルタイム給電電流Iの下における遠隔デバイス340の入力給電電圧Uとプリセット給電効率ηの関係が得られる。
【0078】
【0079】
例えば、
図8は本願実施例における効率適合曲線である。
図8に示したように、この効率適合曲線の横軸は遠隔デバイス340の入力給電電圧U5、縦軸は遠隔デバイス340のプリセット給電効率ηを示す。リアルタイム給電電流が異なれば(例えば電流I1、電流I2、電流I3など)、それに対応する遠隔デバイス340の入力給電電圧とプリセット給電効率は異なるが、この3つの関係はη=f(U,I)で表される。
図8を見ると、現在のリアルタイム給電電流がI3である場合、遠隔デバイス340の入力電圧が53Vに等しいときに遠隔デバイス340の給電効率は約89.10%の最高値に達することが分かる。
【0080】
ステップ702において、第2監視モジュール321は遠隔デバイス340の入力ポートの入力給電電圧U5とリアルタイム給電電流Iから、遠隔デバイス340の現在のリアルタイム給電効率を算出することができる。例えば、まず遠隔デバイス340のリアルタイム給電電力P2(例えばP2=U5*I)を算出して取得してから、このリアルタイム給電電力P2をプリセット給電電力P0と比較し、遠隔デバイス340の現在のリアルタイム給電効率を得ることができる(η2=P2/P0=60%)。
【0081】
なお、給電システムにおける導電ケーブル330の等価インピーダンスは、給電システムにおけるリアルタイム給電電流及びU4とU5の差の変化に伴って変化するほか、遠隔デバイス340における負荷の個数や環境温度などの要因も導電ケーブル330の等価インピーダンスの変化に影響を与えることがある。
【0082】
表2は本願実施例における導電ケーブル等価インピーダンスの関係を示す。表2に示すように、環境温度が異なれば、異なる断面積を有する導電ケーブルの抵抗等価インピーダンスも異なる。例えば、導電ケーブルの断面積が2.5平方ミリメートルの場合、常温での1キロメートルあたりの抵抗は7.98オーム、高温環境での1キロメートルあたりの抵抗は8.94オームである。導電ケーブルが長ければ(例えば10キロ)、その等価インピーダンスは大きくなる(例えば7.98*10=79.8オーム、または8.94*10=89.4オーム)。
【0083】
表2-導電ケーブル等価インピーダンス関係表
【表2】
【0084】
例えば、導電ケーブル330の抵抗率ρと長さLに基づいて当該導電ケーブルの等価インピーダンスRを算出して取得する(即ちR=ρ*L)。2本の導電ケーブルが平行である場合、2本の導電ケーブル間のインダクタンスの強弱も導電ケーブルの等価インピーダンスに影響を与える。例えば、導電ケーブルAに電流が流れて導電ケーブルBから流出する場合、2本の導電ケーブル間のインダクタンスの算出式は次の通りである。
【0085】
L=4l(ln(2a/d)-a/l)×10^(-7)(H) ここでlは平行導電ケーブルの長さを表し、単位はメートル(m)である。dは導電ケーブルの直径を表し、単位はメートル(m)である。aは2本の導電ケーブルの間の距離を表し、単位はメートル(m)である。
【0086】
具体的な態様では、プログラムによって設定した自動算出モードを用いて、式R=(U2-U3)/Iにより導電ケーブル330の等価インピーダンスを得ることもできる。
【0087】
なおリアルタイム給電電流Iは、遠隔デバイス340の負荷インピーダンスと導電ケーブル330の等価インピーダンスの変化に伴い変化する。導電ケーブル330の等価インピーダンスRは一定の条件下で一定に保たれるため、U4とU5の変化を招くことは必至である。導電ケーブル330上の給電電圧は式ΔU=U5-U4により得られる。ΔUが大きく変化すると、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率η2はプリセット給電効率に達しない。この場合、遠隔デバイス340の正常な動作を保証するためには、第1電源310と第2電源320が同時に遠隔デバイス340に給電電源を提供する必要がある。
【0088】
ステップ803では、遠隔デバイス340の現在のリアルタイム給電効率60%をプリセット給電効率84.9%と比較する。リアルタイム給電効率がプリセット給電効率より明らかに小さいが、この場合、遠隔デバイス340の給電効率の最適化を保証できないので、より多くの電源をもって遠隔デバイス340にサービスを提供する必要がある。例えば、第1電源310が入力した直流電圧を昇圧モジュール322により昇圧処理し、昇圧後の直流電圧を得た後、この昇圧後の直流電圧を導電ケーブル330を介して遠隔デバイス340に出力し、遠隔デバイス340のリアルタイム給電効率を向上させる。
【0089】
なお、式U4=U5+I*Rにより第2電源320が出力する電源給電電圧U4を取得するにあたっては、遠隔デバイス340が突然負荷をパワーダウンした際の安全性を保証することを考慮し、遠隔デバイス340の入力給電電圧が遠隔デバイス340の負荷耐圧値以下になるようにする。例えばU5について、U5=min{U5、Umax}の式を満たすようにする(Umaxは負荷耐圧値を表す)。
【0090】
図9は本願実施例における制御電源の出力給電電圧の効果図である。
図9に示したように、遠隔デバイス340が突然負荷をパワーオフしたとき、即ち遠隔デバイス340の負荷上の電圧が突然0Vまで低下したときは、上記方式で第1電源310の出力給電電圧が負荷耐圧値(例えば60V)を超えないように制御する。ここで、Voutは遠隔デバイス340の負荷耐圧値、Iinはリアルタイム入力電流値、Ioは給電端の出力給電電流を表す。
【0091】
例えば、コントローラのローカルエリアネットワーク方式、ピアトゥピアのインターフェース通信方式、短距離通信方式、無線通信ネットワーク方式、シリアル通信方式及び電力線通信方式のいずれかの通信方式を用いて第2電源320が出力する電源給電パラメータ(例えば給電電圧)をリアルタイムで遠隔デバイス340に出力し、遠隔デバイス340の入力給電パラメータ(例えば入力給電電圧やリアルタイム給電電流など)を動的に調整する。
【0092】
本実施例においては、第2監視モジュールを通じて給電システムにおける給電状況を監視し、自動変換スイッチ素子をリアルタイムで制御し、回路の構造を調整することにより、遠隔デバイスの給電効率の最適化を保証している。また、第1電源から入力された直流電圧を第2電源内の昇圧モジュールで昇圧処理し、昇圧後の直流電圧を得た後、それを導電ケーブルを介して遠隔デバイスに出力することにより、遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を向上させている。
【0093】
以下、本発明実施例に係る給電装置について、図面を組み合わせて詳細に説明する。
図10は本発明の一実施例により提供される給電装置の構造模式図である。
図10に示したように、給電装置は以下のモジュールを含んでもよい。
【0094】
遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得するように構成された算出モジュール410。
【0095】
プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに給電する電源出力パラメータを確定するように構成された確定モジュール420。
【0096】
電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整するように構成された調整モジュール430。
【0097】
本願実施例に係る給電装置によれば、算出モジュールが遠隔デバイスの検出情報に基づいて遠隔デバイスのリアルタイム給電効率を算出して取得することにより、遠隔デバイスが最適な給電効率に達しているかどうかを動的に検出できるようにしている。また、確定モジュールを用いて、プリセット給電効率とリアルタイム給電効率に基づいて遠隔デバイスに出力する電源出力パラメータを確定し、調整モジュールが電源出力パラメータに基づいて遠隔デバイスの入力給電パラメータを調整できるようにしている。これにより、遠隔デバイスの入力給電パラメータに対する動的制御を実現し、遠隔デバイスの負荷が頻繁に変動することによる不安全要素を低減したほか、遠隔デバイスの安全かつ効率的な運用を保証し、通信ネットワークの断絶を回避して通信ネットワークの給電安全性を高めている。
【0098】
なお、本願は上述の実施例で説明して図示した特定の構成および処理に限定されるものではない。説明の利便性と簡潔性のために、ここでは既知の方法についての詳細な説明を省略する。また、上記で説明したシステム、モジュール、ユニットの具体的な動作過程は、上述した方法実施例における対応過程を参照できるため、ここでは改めて説明しない。
【0099】
図11は本発明実施例における給電方法及び装置を実現できる電子デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を示す構成図である。
【0100】
図11に示したように、電子デバイス500は入力デバイス501、入力インタフェース502、中央プロセッサ503、メモリ504、出力インタフェース505および出力デバイス506を含む。ここで、入力インタフェース502、中央プロセッサ503、メモリ504および出力インタフェース505はバス507を介して相互に接続され、入力デバイス501と出力デバイス506はそれぞれ入力インタフェース502と出力インタフェース505を介してバス507に接続され、さらに電子デバイス500の他のコンポーネントに接続されている。
【0101】
具体的には、入力デバイス501は外部からの入力情報を受信し、入力インタフェース502を介して中央プロセッサ503に入力情報を送信する。中央プロセッサ503はメモリ504に格納されたコンピュータ実行可能命令に基づいて入力情報を処理して出力情報を生成し、出力情報を一時的または恒久的にメモリ504に格納した後、出力インタフェース505を介して出力情報を出力デバイス506に送信する。出力デバイス506は電子機器500の外部に出力情報を出力してユーザの使用に供する。
【0102】
一実施形態において、
図11に示した電子デバイスは、プログラムを記憶するように構成されたメモリと、上述の実施例で説明した給電方法を実行するためにメモリに記憶されたプログラムを実行するように構成されたプロセッサと、を含むネットワークデバイスとして実現できる。
【0103】
一実施形態において、
図11に示した電子デバイスは、プログラムを記憶するように構成されたメモリと、上述の実施例で説明した給電方法を実行するためにメモリに記憶されたプログラムを実行するように構成されたプロセッサと、を含む給電システムとして実現できる。
【0104】
以上は本願の例示的な実施例に過ぎず、本願の請求範囲を限定するものではない。本願の様々な実施例は一般に、ハードウェアや専用回路、ソフトウェア、ロジックボード、またはそれらの任意の組み合わせにおいて実現することができる。例えば、一態様においてはハードウェアにおいて実現することができ、他の態様においてはコントローラやマイクロプロセッサ、他のコンピューティングデバイスで実行されるファームウェアまたはソフトウェアにおいて実現することができる。本願はこれについて限定しない。
【0105】
本願実施例はモバイルデバイスのデータプロセッサがコンピュータプログラム指令を実行することにより実現できる。例えば、プロセッサ本体において、もしくはハードウェアによって、或いはソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現することができる。コンピュータプログラム指令は、アセンブラ指令、指令セットアーキテクチャ(ISA)指令、機械指令、機械関連指令、マイクロコード、ファームウェア指令、状態設定データ、あるいは1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれたソースコードやターゲットコードであってもよい。
【0106】
本願の図面における任意の論理フローのブロック図は、プログラムステップを表すことも、相互に接続された論理回路、モジュールおよび機能を表すことも、プログラムステップと論理回路、モジュールおよび機能との組み合わせを表すこともできる。コンピュータプログラムはメモリに記憶することができる。メモリは、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、光メモリデバイスおよびシステム(デジタル多機能ディスクDVDまたはCDディスク)など、ローカル技術環境に適した任意のタイプを有することができ、任意の適切なデータ記憶技術を使用して実現することができるが、これらに限定されない。コンピュータの読み取り可能な記憶媒体は不揮発性メモリ媒体を含んでもよい。データプロセッサは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、専用集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(FGPA)、およびマルチコアプロセッサアーキテクチャに基づくプロセッサなど、ローカル技術環境に適した任意のタイプであってよいが、これらに限定されない。
【0107】
本願の例示的な実施例については、例示的および非限定的な例示により上記内容にて詳細に説明した。しかし、図面と請求項を組み合わせて考慮すると、上述実施例の様々な修正および調整は当業者にとって自明であるが、本願の範囲から逸脱することはない。よって、本願の適切な範囲は請求項に基づいて確定される。