(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】循環ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 23/04 20060101AFI20240418BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20240418BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F04B23/04
F04B53/00 B
F04B53/16 Z
(21)【出願番号】P 2020087942
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真輔
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和晃
(72)【発明者】
【氏名】庄司 賢吾
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-184558(JP,A)
【文献】特開平10-009135(JP,A)
【文献】特開平04-063972(JP,A)
【文献】特開昭50-134219(JP,A)
【文献】特開2014-141942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/04
F04B 53/00
F04B 53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の循環ポンプと、これら複数の循環ポンプの吸込側にそれぞれ接続された吸込配管と、前記複数の循環ポンプの吐出側にそれぞれ接続された吐出配管と、前記複数の吸込配管に接続された吸込集合管と、前記複数の吐出配管に接続された吐出集合管とを、一体的にケーシング内に収容してなる循環ポンプユニットにおいて、
前記吸込集合管および吐出集合管にはそれぞれ
1つの防振継手が設けられ
、
前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、継手の軸方向が互いに直交する方向に向けて配設され、
前記複数の循環ポンプは並列的に配置されており、複数の循環ポンプの並び方向と、前記吸込集合管に設けられた防振継手の軸方向と、前記吐出集合管に設けられた防振継手の軸方向とが互いに直交し、
前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、前記複数のポンプを挟んで両側に配置されていることを特徴とする循環ポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即湯循環システムに組み込まれる循環ポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
即湯循環システムの循環ポンプユニットは、通常2つの循環ポンプと、複数の吸込配管及び吸込集合管と、複数の吐出配管及び吐出集合管とを一体的にケーシング内に収容してある。2つの循環ポンプは所定周期ごとに交互に稼働するように設定され、即湯循環システムの稼働中にはどちらか一方の循環ポンプが作動し、循環ポンプで発生する振動が配管を介してケーシングに伝播し、その振動により騒音が発生し、振動が機器類に悪影響を及ぼす。
【0003】
上記の循環ポンプユニットでは、多数の配管部材、バルブ類、ポンプ類の接続に管用テーパネジ接続が採用される。これは、バルブ類に汎用性のある市販品を採用するためである。しかし、管用テーパネジ接続では、雌ねじと雄ねじの螺合具合によって嵌合寸法にバラツキが発生することが多い。そのため、循環ポンプユニットの組立て作業の負荷が大きくなる。
【0004】
一方、配管構造の防振対策として、ゴム継手等の防振材を組み込んだり、防振継手を組み込んだり技術は公知である。
例えば、特許文献1に記載の配管構造においては、循環ポンプの吐出配管に3つの防振材(ゴム継手)を組み込み、循環ポンプの吸込配管に2つの防振材(ゴム継手)を組み込む技術が採用されている。
【0005】
特許文献2に記載の給水装置においては、サポート板の上側に2つのポンプを倒立状に配置し、サポート板の下側に吸込集合管を配置し、それらポンプのフランジと吸込集合管のフランジをサポート板に固定し、そのサポート板の端部を防振材を介してケーシングに支持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-120887号公報
【文献】特許第3933355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
循環ポンプユニットに振動防止のための複数の防振継手を組み込む場合、複数の防振継手の振動吸収方向が同一方向とならないように複数の防振継手を配置することで、防振機能を高めることが望ましい。
また、防振継手は配管の寸法誤差を吸収する機能を有するため、この寸法誤差吸収機能と、防振機能が両立するように防振継手を配置することが望ましい。
特に、防振継手を採用する場合、防振継手は高価なものであるから、極力少ない数の防振継手により効果的に防振機能を発揮させることが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、少数の防振継手でもって効果的に防振できかつ防振継手により配管構造の寸法誤差を吸収可能にした循環ポンプユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の循環ポンプユニットは、複数の循環ポンプと、これら複数の循環ポンプの吸込側にそれぞれ接続された吸込配管と、前記複数の循環ポンプの吐出側にそれぞれ接続された吐出配管と、前記複数の吸込配管に接続された吸込集合管と、前記複数の吐出配管に接続された吐出集合管とを、一体的にケーシング内に収容してなる循環ポンプユニットにおいて、前記吸込集合管および吐出集合管にはそれぞれ1つの防振継手が設けられ、前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、継手の軸方向が互いに直交する方向に向けて配設され、前記複数の循環ポンプは並列的に配置されており、複数の循環ポンプの並び方向と、前記吸込集合管に設けられた防振継手の軸方向と、前記吐出集合管に設けられた防振継手の軸方向とが互いに直交し、前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、前記複数のポンプを挟んで両側に配置されていることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、吸込集合管と吐出集合管にそれぞれ1つの防振継手を設けるため、防振継手の数を少なくすることができるうえ、離隔した異なる位置にある吸込集合管と吐出集合管を防振することで、循環ポンプユニット全体の振動を効果的に防振することができる。
また、少なくとも一方の防振継手の軸方向を、配管部材の管用テーパネジ接続の接続方向と平行方向に向けることで、配管の寸法誤差を吸収することができる。
【0011】
前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、継手の軸方向が互いに直交する方向に向けて配設されているため、吸込集合管に設けられた防振継手により第1の方向の振動を吸収できるうえ、吐出集合管に設けられた防振継手により前記第1の方向と直交する第2の方向の振動を吸収することができる。
【0012】
前記複数の循環ポンプは並列的に配置されており、複数の循環ポンプの並び方向と、前記吸込集合管に設けられた防振継手の軸方向と、前記吐出集合管に設けられた防振継手の軸方向とが互いに直交している。
【0013】
複数の循環ポンプは、複数の吸込配管や複数の吐出配管を介して連結されるため、複数の循環ポンプの並び方向への振動は発生しにくいが、この複数の循環ポンプの並び方向と直交する方向への振動は発生しやすい。
そのため、複数の循環ポンプの並び方向と、前記吸込集合管に設けられた防振継手の軸方向と、前記吐出集合管に設けられた防振継手の軸方向とを互いに直交させることで、循環ポンプユニットに発生する種々の方向の振動を効果的に吸収することができる。
【0014】
前記吸込集合管に設けられた防振継手と、前記吐出集合管に設けられた防振継手は、前記複数の循環ポンプを挟んで両側に配置されているため、循環ポンプユニットの重心が複数の循環ポンプの付近から離隔するのを抑制して、振動発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように種々の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る循環ポンプユニットをケーシング内に収容した状態を示す斜視図である。
【本発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図3に示すように、即湯循環システムに設けられる循環ポンプユニット1において、矢印F,B,L,Rは前方、後方、左方、右方を示す。この循環ポンプユニット1は、メカニカルシール式の1対の循環ポンプ2,3と、1対の膨張タンク4,5と、配管類と、バルブ類と、制御ユニット(図示略)等をケーシング6内に収容したものである。尚、配管類とバルブ類等は管用テーパネジ継手により接続されている。
【0018】
前記のケーシング6は、フレーム6aと、その底面と前後左右の4面と天面を覆う複数のパネル(図示略)とから直方体形状に形成されている。
左右1対の循環ポンプ2,3は、左右方向に所定間隔離して配置されている。
前記配管類は、1対の循環ポンプ2,3の吸込口に夫々接続された1対の吸込配管8,9と、これら吸込配管8,9が集合した吸込集合管10と、1対の循環ポンプ2,3の吐出口に夫々接続された1対の吐出配管12,13と、これら吐出配管12,13が集合した吐出集合管14と、吸込集合管10に設けられた防振継手15と、吐出集合管14に設けられた防振継手16等を備えている。
【0019】
左側の吸込配管8は、接続フランジ8aと開閉弁8bとを有し、吸込集合管10の上端のT形管10aから左方へ延びてから後方へ90°屈曲し、その後後方へ延びて左側の循環ポンプ2の吸込口にフランジ接続されている。右側の吸込配管9は、接続フランジ9a と開閉弁9bとを有し、吸込集合管10の上端のT形管10aから右方へ延びてから後方へ90°屈曲し、その後後方へ延びて右側の循環ポンプ3の吸込口にフランジ接続されている。尚、吸込集合管10の一部は断熱材10bで覆われている。
【0020】
吸込集合管10は、上端のT形管10aから鉛直下方へストレートに延びる直管を有し、この吸込集合管10の上流端は配管10eを介して貯湯タンク(図示外)に接続されている。吸込集合管10の上端近傍部には軸方向を鉛直方向に向けた防振用の防振継手15が介装されている。
【0021】
この防振継手15は、合成樹脂製の蛇腹管の両端に1対のフランジ15a,15bを固定した一般的な構造のものであり、これら1対のフランジ15a,15bが吸込集合管10のフランジ10c,10dに夫々接続されている。防振継手15は、1対の循環ポンプ2,3から前方へ所定距離離隔した位置であって、左右方向のほぼ中間位置に配設されている。
【0022】
左側の吐出配管12は、接続フランジ12aと開閉弁12bと逆止弁12cを有し、吐出集合管14の後端近傍部のT形管14aから左方へ延びてから下方へ90°屈曲し、その後下方へ延びてから前方へ90°屈曲して前方へ延びて左側の循環ポンプ2の吐出口にフランジ接続されている。
【0023】
右側の吐出配管13は、接続フランジ13aと開閉弁13bと逆止弁13cを有し、吐出集合管14の後端近傍部のT形管14aから右方へ延びてから下方へ90°屈曲し、その後下方へ延びてから前方へ90°屈曲して前方へ延びて右側の循環ポンプ3の吐出口にフランジ接続されている。尚、吐出集合管14の一部は断熱材14bで覆われている。
【0024】
吐出集合管14は、前記のT形管14aから前方へストレートに延びる水平直管と、この水平直管から下方屈曲して鉛直に延びる鉛直直管と、この鉛直直管から左方へ屈曲して延びる左向き水平直管とを有し、この吐出集合管14の下流端は配管を介して給湯供給管(図示略)に接続されている。水平直管には配管内の空気を排除するためのエア抜き弁17と開閉弁18が介装されている。
【0025】
吐出集合管14の後端近傍部には、軸方向を前後方向に向けた防振用の防振継手16が介装されている。この防振継手16は、合成樹脂製の蛇腹管の両端に1対のフランジ16a,16bを固定した一般的な構造のものであり、これら1対のフランジ16a,16b が吐出集合管14のフランジ14c,14dに夫々接続されている。防振継手16は、1対の循環ポンプ2,3から後方へ所定距離離隔した位置であって、左右方向のほぼ中間位置に配置されている。
【0026】
上記のように、吸込集合管10に設けられた防振継手15と、吐出集合管14に設けられた防振継手16は、継手の軸方向(上下方向と前後方向)が互いに直交する方向に向けて配設されている。
【0027】
1対の循環ポンプ2,3は並列的に左右に並べて配置されており、1対の循環ポンプ2,3の並び方向(左右方向)と、吸込集合管10に設けられた防振継手15の軸方向(上下方向)と、吐出集合管14に設けられた防振継手16の軸方向(前後方向)とが互いに直交している。吸込集合管10に設けられた防振継手15と、吐出集合管14に設けられた防振継手16は、1対の循環ポンプ2,3を挟んで前後両側に配置されている。
【0028】
尚、この循環ポンプユニット1には、1対の循環ポンプ2,3からの漏水を受ける漏水パン(図示略)、これら循環ポンプ2,3の下部から漏水が飛散するのを防止するスプラッシュガード2a,3a、排水管19に連なる排水系統なども設けられている。
【0029】
次に、以上説明した循環ポンプユニット1の作用、効果について説明する。
上記のように、吸込集合管10と吐出集合管14に防振継手15,16を夫々設けるため、防振継手の数を少なくすることができるうえ、離隔した異なる位置にある吸込集合管10と吐出集合管14を防振することで、循環ポンプユニット1全体の振動を効果的に吸収することができる。
【0030】
また、少なくとも一方の防振継手16(後側の防振継手16)の軸方向(前後方向)を、一部の配管部材の管用テーパネジ接続の接続方向(前後方向)と平行方向に向けることで、吐出配管12,13の寸法誤差を吸収することができる。
【0031】
吸込集合管10に設けられた防振継手15と、吐出集合管14に設けられた防振継手16は、継手の軸方向(上下方向と前後方向)が互いに直交する方向に向けて配設されているため、吸込集合管10に設けられた防振継手15により上下方向の振動を吸収できるうえ、吐出集合管14に設けられた防振継手16により上下方向と直交する前後方向の振動を吸収することができる。
【0032】
1対の循環ポンプ2,3は並列的に配置されており、1対の循環ポンプ2,3の並び方向(左右方向)と、吸込集合管10に設けられた防振継手15の軸方向(上下方向)と、吐出集合管14に設けられた防振継手16の軸方向(前後方向)とが互いに直交している。
【0033】
それ故、1対の循環ポンプ2,3は、1対の吸込配管8,9や1対の吐出配管12,13を介して連結されるため、1対の循環ポンプ2,3の並び方向への振動は発生しにくいが、この1対の循環ポンプ2,3の並び方向と直交する方向への振動は発生しやすい。
そして、1対の循環ポンプ2,3の並び方向と、吸込集合管10に設けられた防振継手15の軸方向と、吐出集合管14に設けられた防振継手16の軸方向とを互いに直交させることで、循環ポンプユニット1に発生する種々の方向の振動を効果的に防振することができる。
【0034】
吸込集合管10に設けられた防振継手15と、吐出集合管14に設けられた防振継手16は、1対の循環ポンプ2,3を挟んで両側に配置されているため、循環ポンプユニット1の重心が1対の循環ポンプ2,3の付近から離隔するのを抑制して、振動発生を抑制することができる。
【0035】
次に、前記実施形態を部分的に変更する例について説明する。
1)吸込配管8,9及び吸込集合管10、吐出配管12,13及び吐出集合管14等の配管構造の形態は一例を示すものであり、この例に限定されるものではない。
2)防振継手15,16も一例を示すものであり、この例に限定されるものではない。
3)その他、当業者ならば、本発明の技術思想を逸脱することなく前記実施形態に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はその種の変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0036】
1 循環ポンプユニット
2,3 循環ポンプ
6 ケーシング
8,9 吸込配管
10 吸込集合管
12,13 吐出配管
14 吐出集合管
15,16 防振継手