(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20240418BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01J65/00 B
A61N5/06 B
(21)【出願番号】P 2021551644
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2020037742
(87)【国際公開番号】W WO2021070781
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019184817
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 英昭
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166091(JP,A)
【文献】特開2006-040867(JP,A)
【文献】特許第6729820(JP,B1)
【文献】特開2020-092968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/00
A61N 5/06
B01J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの面に光取り出し面が形成されたランプハウスと、
前記ランプハウス内において前記光取り出し面に対して第一方向に離間した位置に収容され、紫外線を発するエキシマランプと、
前記エキシマランプの発光管の外表面に接触して配置された第一電極ブロックと、
前記第一電極ブロックに対して前記エキシマランプの管軸に平行な第二方向に離間した位置において、前記エキシマランプの発光管の外表面に接触して配置された第二電極ブロックと、
前記ランプハウス内の、前記第一方向に関して前記光取り出し面とは反対側であって、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとの間の位置に配置され、前記エキシマランプから出射される紫外線に対する反射性を示す材料を含む反射部材とを備え
、
前記反射部材は、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとに挟まれた領域に位置する前記エキシマランプの部分に対して、前記第一方向に関して前記光取り出し面とは反対側で対向するように覆うことを特徴とする、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記反射部材は、絶縁性材料からなり、前記第一電極ブロックの前記第二電極ブロックに対向する面、及び前記第二電極ブロックの前記第一電極ブロックに対向する面の双方に接触するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に離間して配置された複数の前記エキシマランプを有し、
前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックは、複数の前記エキシマランプそれぞれの発光管の外表面に接触しつつ、複数の前記エキシマランプに跨るように配置され、
前記反射部材は、前記第一方向に関して複数の前記エキシマランプの全てに対向する位置において、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとに挟まれた領域を覆うように配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記反射部材は、前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックの双方の、前記第一方向に直交する面に接触するように配置されていることを特徴とする、請求項2~
3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記反射部材は、前記第一方向に関して前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックの双方から離間した位置に配置されていることを特徴とする、請求項
1に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記反射部材は、板形状を呈していることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記反射部材は、前記エキシマランプの発光管の外表面に沿う曲面を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記反射部材は、フッ素樹脂又はセラミックからなることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記エキシマランプは、主たる発光波長が190nm以上、225nm以下に属する波長帯に属する紫外線を発することを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エキシマランプを光源として備えた、小型の紫外線照射装置が開発されている(下記特許文献1参照)。なお、下記特許文献1で開示されている紫外線照射装置は、主として皮膚疾患の治療の用途が想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15は、特許文献1に開示されている小型の紫外線照射装置の構造を模式的に示す図面である。紫外線照射装置100は、把持部101を含む筐体102内に収容されたランプ収容部103と、光照射窓104とを備える。ランプ収容部103内には、紫外線を出射するエキシマランプ110が内蔵されている。
【0005】
図16は、エキシマランプ110の構造を模式的に示す図面である。エキシマランプ110は、円筒状の外側管121と、外側管121の内側において外側管121と同軸上に配置されており、外側管121よりも内径が小さい円筒状の内側管122とを有する。外側管121と内側管122とは方向d1に係る端部において封止されており、両者の間には円環状の発光空間が構成され、当該空間内には発光ガス123Gが封入される。
【0006】
外側管121の外壁面には網状又はメッシュ状の外側電極124が設けられ、内側管122の内壁面には、ステンレス鋼やアルミニウムからなる膜状の内側電極125が設けられている。外側電極124及び内側電極125は、それぞれ高周波の交流電圧を発生可能な電源部126と電気的に接続されている。
【0007】
電源部126によって外側電極124と内側電極125との間に高周波の交流電圧が印加されることにより、外側管121と内側管122の管体を介して発光ガス123Gに対して電圧が印加され、発光ガス123Gが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じる。これにより発光ガス123Gの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0008】
ところで、
図16に図示されたエキシマランプ110は、上述したように、2種類の管体(121,122)が同軸上に配置されてなる。このため、エキシマランプ110を収容する筐体102は、ある程度の大きさを確保せざるを得ない。上述したように、特許文献1に記載された紫外線照射装置100は、皮膚疾患の治療に利用されることが想定されており、利用者や利用状況が制限されていたため、これまで
図15に示すような形状、大きさであっても、実用上大きな問題とはならなかった。
【0009】
しかし、例えば、一般消費者が家庭内において、トイレ、台所、浴室、靴の中といった、比較的菌が繁殖しやすいと考えられる場所に対して殺菌処理を行うには、容易に持ち運びできる程度の大きさや重量であるのが好ましい。このような用途に利用されることを想定すると、
図16に示すエキシマランプ110を光源として備える紫外線照射装置100の構造では、実用上問題が生じる可能性がある。
【0010】
なお、上記では殺菌の用途について言及しているが、医療現場に限らず一般的な産業上に利用される用途であっても、従来よりも小型の紫外線照射装置が実現されれば、取付可能箇所、利用可能場所の範囲が拡げられるため効果的である。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、従来構造よりも大幅に小型化した紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る紫外線照射装置は、
少なくとも1つの面に光取り出し面が形成されたランプハウスと、
前記ランプハウス内において前記光取り出し面に対して第一方向に離間した位置に収容され、紫外線を発するエキシマランプと、
前記エキシマランプの発光管の外表面に接触して配置された第一電極ブロックと、
前記第一電極ブロックに対して前記エキシマランプの管軸に平行な第二方向に離間した位置において、前記エキシマランプの発光管の外表面に接触して配置された第二電極ブロックと、
前記ランプハウス内の、前記第一方向に関して前記光取り出し面とは反対側であって、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとの間の位置に配置され、前記エキシマランプから出射される紫外線に対する反射性を示す材料を含む反射部材とを備えたことを特徴とする。
【0013】
上記紫外線照射装置は、エキシマランプの発光管の外表面に接触した、第一電極ブロックと第二電極ブロックを備える。これらの電極ブロックは、それぞれ、エキシマランプの管軸方向に離間した位置においてエキシマランプの発光管の外表面と接触する。このため、エキシマランプは、単なる直管型の構造によって放電が可能となるため、従来のエキシマランプとして一般的に利用されていた、同心円状に管体が二重に設けられて内側管と外側管の間に発光ガスが封入される構造、いわゆる「二重管構造」の採用を必要としない。
【0014】
一例として、前記紫外線照射装置が備えるエキシマランプの発光管の大きさは、管軸方向(第二方向)に係る長さが15mm以上、200mm以下であり、外径が2mm以上、16mm以下である。
【0015】
第一電極ブロックと第二電極ブロックとの間に電圧が印加されると、主として、この電極ブロックの間に位置するエキシマランプの発光管内で発光する。この発光により生成された紫外線は、光取り出し面側に進行すると、光取り出し面を通過して紫外線照射装置の外側に取り出される。
【0016】
ただし、生成された紫外線は、全てが光取り出し面に向かって進行するわけではなく、一部の紫外線は、光取り出し面とは反対方向に進行する。この紫外線は光取り出し面から取り出されず、また、ランプハウスの筐体に照射されると、筐体を劣化させるおそれがある。
【0017】
これに対し、上記紫外線照射装置は、ランプハウス内において、光取り出し面とは反対側であって、各電極ブロックの間の位置に反射部材が設けられている。このため、第二方向に関して電極ブロックに挟まれた領域内において、エキシマランプで生成されて光取り出し面とは反対側に進行した紫外線は、反射部材によって反射して、光取り出し面側に進行方向を変更する。従って、光取り出し効率が向上すると共に、ランプハウスの筐体が劣化するのを抑制できる。
【0018】
前記反射部材は、板形状を呈しているものとしても構わないし、前記エキシマランプの発光管の外表面に沿う曲面を有するものとしても構わない。
【0019】
前記反射部材は、絶縁性材料からなり、前記第一電極ブロックの前記第二電極ブロックに対向する面、及び前記第二電極ブロックの前記第一電極ブロックに対向する面の双方に接触するように配置されているものとしても構わない。
【0020】
かかる構成によれば、反射部材によって反射される紫外線の光量を増加させることができる。
【0021】
絶縁性と紫外線に対する反射性とを示す反射部材の材料としては、フッ素樹脂、セラミックなどを利用することができる。反射部材のより具体的な例としては、セラミック材料からなる部材、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる部材、セラミックや樹脂からなる部材の表面にSiO2、Al2O3などからなるセラミック微粒子を形成した部材、ガラスなどの基板の表面に誘電体多層膜などのセラミック系の反射層を形成した部材、などを採用することができる。
【0022】
前記反射部材は、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとに挟まれた領域に位置する前記エキシマランプの部分を、前記光取り出し面とは反対側から前記第一方向に覆うように配置されているものとしても構わない。
【0023】
かかる構成によれば、光取り出し面とは反対側に位置する、ランプハウスの筐体の領域に対して、紫外線が照射されることを実質的に防止できる。また、両電極ブロックに挟まれた離間部分が絶縁性の反射部材で埋められているため、エキシマランプの発光管の外側において両電極間で放電が極めて生じにくくなり、オゾンの発生を抑制できるという効果がある。オゾンが発生すると、発生したオゾンがランプハウスの筐体を劣化させるおそれがある。上記構成によれば、オゾンの発生が抑制できるため、筐体の劣化の進行を更に抑制できる。
【0024】
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に離間して配置された複数の前記エキシマランプを有し、
前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックは、複数の前記エキシマランプそれぞれの発光管の外表面に接触しつつ、複数の前記エキシマランプに跨るように配置され、
前記反射部材は、前記第一方向に関して複数の前記エキシマランプの全てに対向する位置において、前記第二方向に関して前記第一電極ブロックと前記第二電極ブロックとに挟まれた領域を覆うように配置されているものとしても構わない。
【0025】
かかる構成によれば、ランプハウス内に複数のエキシマランプが搭載されるため、光取り出し面から高い出力の紫外線を出射することができる。そして、各エキシマランプにおいて、両電極ブロックに挟まれた領域に対して第一方向に対向する領域を覆うように、反射部材が設けられているため、多くの光を光取り出し面側に導くことができる。
【0026】
前記反射部材は、前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックの双方の、前記第一方向に直交する面に接触するように配置されているものとしても構わない。
【0027】
かかる構成によれば、紫外線照射装置が持ち運びされる場合であっても、反射部材がランプハウス内で位置ずれを起こしにくい。
【0028】
前記エキシマランプは、主たる発光波長が190nm以上、225nm以下に属する波長帯に属する紫外線を発するものとしても構わない。
【0029】
DNAは、波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すことが知られている。このため、低圧水銀ランプなどから出射される波長254nmの紫外線は、殺菌作用を有する反面、人体に対する悪影響のおそれがある。
【0030】
しかし、主たる発光波長が190nm以上、225nm以下に属する波長帯の紫外線は、仮に人体の皮膚に対して照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行しない。角質層に含まれる角質細胞は細胞としては死んだ状態であるため、例えば、波長254nmの紫外線が照射される場合のように、有棘層、顆粒層、真皮など、生きた細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクがほとんど存在しない。
【0031】
また、この190nm以上、225nm以下の波長帯の紫外線についても、照射対象物に対する殺菌効果が存在する。よって、かかる波長帯の紫外線を発するエキシマランプを備えることで、人体に対する影響を最小限に抑制しながらも、対象物に対する殺菌処理の用途に利用できる。このような波長帯の紫外線は、KrCl、KrBr、又はArFを含む発光ガスを封入したエキシマランプによって生成できる。
【0032】
なお、本明細書において「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。例えばKrCl、KrBr、ArFを含む発光ガスが封入されているエキシマランプなどのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対強度が最も高い波長(主たるピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
【0033】
前記反射部材は、前記第一方向に関して前記第一電極ブロック及び前記第二電極ブロックの双方から離間した位置に配置されているものとしても構わない。
【発明の効果】
【0034】
本発明の紫外線照射装置によれば、従来構造よりも大幅に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】紫外線照射装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1から、紫外線照射装置のランプハウスの本体ケーシング部と蓋部とを分解した斜視図である。
【
図3】紫外線照射装置が備える電極ブロック、エキシマランプ、及び反射部材の構造を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図4からエキシマランプ及び反射部材の図示を省略し、電極ブロックの構造を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図3の斜視図をZ方向に見たときの模式的な平面図である。
【
図7】
図3の斜視図を、光取り出し面とは反対側からX方向に見たときの模式的な平面図である。
【
図8】発光ガスにKrClが含まれるエキシマランプの発光スペクトルの一例である。
【
図9】
図6の一部拡大図に、紫外線の進行の様子を付した図面である。
【
図10】反射部材の別の配置態様を模式的に示す平面図である。
【
図11】反射部材の別の配置態様を模式的に示す平面図である。
【
図12】反射部材の別の態様を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図12の形状の反射部材を配置したときの態様を模式的に示す平面図である。
【
図14】反射部材の別の配置態様を模式的に示す平面図である。
【
図15】従来の小型の紫外線照射装置の構造を模式的に示す図面である。
【
図16】
図15に示す紫外線照射装置に搭載されているエキシマランプの構造を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る紫外線照射装置の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0037】
図1は、紫外線照射装置の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1から、紫外線照射装置1のランプハウス2の本体ケーシング部2aと蓋部2bとを分解した斜視図である。
【0038】
以下の各図では、紫外線L1の取り出し方向をX方向とし、X方向に直交する平面をYZ平面とした、X-Y-Z座標系を参照して説明される。より詳細には、
図2以下の図面を参照して後述されるように、エキシマランプ3の管軸方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。X方向が「第一方向」に対応し、Y方向が「第二方向」に対応し、Z方向が「第三方向」に対応する。
【0039】
また、以下の説明では、方向を表現する際に正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0040】
図1及び
図2に示すように、紫外線照射装置1は、一方の面に光取り出し面10が形成されたランプハウス2を備える。ランプハウス2は、本体ケーシング部2aと蓋部2bとを備え、本体ケーシング部2a内には、エキシマランプ3と、電極ブロック(11,12)と、反射部材8とが収容されている。なお、本実施形態では、ランプハウス2内に4本のエキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)が収容されている場合を例に挙げて説明するが(
図3参照)、エキシマランプ3の本数は1本でも構わないし、2本、3本又は5本以上でも構わない。電極ブロック(11,12)は、各エキシマランプ3に対して給電するための電極を構成する。
【0041】
本実施形態では、
図2に示すように、ランプハウス2の一部を構成する蓋部2bの光取り出し面10を構成する領域に、光学フィルタ21が設けられている。この光学フィルタ21の特性については、後述される。
【0042】
図3及び
図4は、
図2からランプハウス2の一部を構成する本体ケーシング部2aの図示を省略し、電極ブロック(11,12)、エキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)、及び反射部材8のみを図示した斜視図である。
図3と
図4は、見る角度のみが異なっている。また、
図5は、
図4から更にエキシマランプ3及び反射部材8の図示を省略した斜視図である。
【0043】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の紫外線照射装置1は、Z方向に離間して配置された4本のエキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)を備える。また、それぞれのエキシマランプ3の発光管の外表面に接触するように、2つの電極ブロック(11,12)が配置されている。以下では、適宜、電極ブロック11を「第一電極ブロック11」と称し、電極ブロック12を「第二電極ブロック12」と称する。
【0044】
第一電極ブロック11と第二電極ブロック12とは、Y方向に離間した位置に配置されている。
図5に示す例では、第一電極ブロック11は、エキシマランプ3の発光管の外表面の曲面に沿う形状を呈してエキシマランプ3が載置される載置領域11aと、エキシマランプ3に対してZ方向に離れた位置に形成され、YZ平面に対して傾斜したテーパ面11bとを有して構成される。同様に、第二電極ブロック12についても、載置領域12aとテーパ面12bとを有する。
【0045】
なお、第一電極ブロック11と第二電極ブロック12は、導電性の材料からなり、好ましくは、エキシマランプ3から出射される紫外線に対する反射性を示す材料からなる。一例として、第一電極ブロック11と第二電極ブロック12は、共に、Al、Al合金、ステンレスなどで構成される。
【0046】
第一電極ブロック11と第二電極ブロック12とは、いずれも各エキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)の発光管の外表面に接触しつつ、Z方向に関して各エキシマランプ3に跨るように配置されている。
【0047】
図6は、エキシマランプ3、電極ブロック(11,12)、及び反射部材8の位置関係を模式的に示す図面であり、エキシマランプ3を+Z方向に見たときの模式的な平面図に対応する。また、
図7は、エキシマランプ3、電極ブロック(11,12)、及び反射部材8の位置関係を模式的に示す図面であり、エキシマランプ3を+X方向に見たときの模式的な平面図に対応する。
【0048】
なお、
図6では、4本のエキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)のうち、最も-Z側に位置しているエキシマランプ3aのみが図示されており、他のエキシマランプ(3b,3c,3d)の図示が省略されているが、上述したように、エキシマランプ(3b,3c,3d)についても+Z方向に並べられている。
【0049】
反射部材8は、エキシマランプから出射される紫外線L1に対する反射性を示す材料を含む。反射部材8は更に、絶縁性及び紫外線L1に対する高い耐性を示すのが好ましい。このような特性を示す反射部材8としては、例えば、セラミック材料からなる部材、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂からなる部材、セラミックや樹脂からなる部材の表面にSiO2、Al2O3などからなるセラミック微粒子を形成した部材、ガラスなどの基板の表面に誘電体多層膜などのセラミック系の反射層を形成した部材、などを採用することができる。
【0050】
本実施形態において、反射部材8は、Y方向に関して電極ブロック(11,12)の間の位置において、エキシマランプ3の発光管の外表面に一部接触するように配置されている。より詳細には、
図7に示すように、反射部材8は、Y方向に関して電極ブロック(11,12)に挟まれた領域において、Z方向に関して全てのエキシマランプ3に跨るように配置されている。これにより、+X方向にエキシマランプ3を見たとき、電極ブロック(11,12)に挟まれた領域は、反射部材8に隠れてエキシマランプ3の発光管の外表面が現れない。
【0051】
また、反射部材8は、第一電極ブロック11の第二電極ブロック12側の面11c、及び、第二電極ブロック12の第一電極ブロック11側の面12cの双方に接触するように配置されている。ただし、上述したように、反射部材8は絶縁性材料からなるため、第一電極ブロック11と第二電極ブロック12との間を短絡することはない。
【0052】
エキシマランプ3はY方向を管軸方向とした発光管を有し、Y方向に離間した位置において、エキシマランプ3の発光管の外表面が各電極ブロック(11,12)に対して接触している。エキシマランプ3の発光管には、発光ガス3Gが封入されている。各電極ブロック(11,12)の間に、例えば10kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、エキシマランプ3の発光管を介して発光ガス3Gに対して前記電圧が印加される。このとき、発光ガス3Gが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガス3Gの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0053】
エキシマランプ3から出射される紫外線L1の波長は、発光ガス3Gの物質に依存して決定される。例えば、発光ガス3GとしてKrClを含む場合、エキシマランプ3から出射される紫外線L1は、主たるピーク波長が222nm近傍のスペクトルを示す(
図8参照)。
【0054】
発光ガス3Gとしては、KrClの他、KrBr、ArFなどが利用可能である。発光ガス3GにKrBrが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たるピーク波長が207nm近傍の紫外線L1が出射される。発光ガス3GにArFが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たるピーク波長が193nm近傍の紫外線L1が出射される。これらのいずれのガス種においても、エキシマランプ3からは、主たる発光波長が190nm以上、225nm以下の波長帯に属する紫外線L1が生成される。なお、前記のガス種に加えて、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)などの不活性ガスが混合されていても構わない。
【0055】
発光ガス3GにKrClが含まれる場合、
図8に示すように、紫外線L1のスペクトルには、ほぼ主たるピーク波長である222nm近傍に光出力が集中しているが、人体に対する影響が懸念される240nm以上の波長帯についても、ごくわずかながら光出力が認められる。このため、光取り出し面10を構成する領域に、かかる波長帯の光成分を遮断する目的で光学フィルタ21が設けられている。すなわち、光学フィルタ21は、240nm以上、300nm以下の紫外線を遮断する機能を有している。
【0056】
図9は、
図6の一部拡大図である。なお、
図9には、紫外線L1の進行の様子が模式的に付されている。
【0057】
両電極ブロック(11,12)の間に電圧が印加されると、上述したように、エキシマランプ3の発光管に封入されていた発光ガス3Gが発光する。この発光により生じた紫外線L1のうち、+X方向に進行した紫外線L1aは、そのまま光取り出し面10から紫外線照射装置1の外部に出射される。一方、紫外線L1のうち、-X方向に進行した紫外線L1bは、反射部材8によって反射されて進行方向を+X方向に変更された後、同様に、取り出し面10から紫外線照射装置1の外部に出射される。
【0058】
仮に反射部材8が設けられていない場合、紫外線L1bは-X方向に進行し、いずれはランプハウス2の筐体に照射される。この結果、紫外線L1bは、紫外線照射装置1から取り出されない上、ランプハウス2の筐体の劣化を進行させるおそれを生む。紫外線照射装置1によれば、反射部材8が設けられているため、光取り出し面10から取り出される紫外線L1の取り出し効率が高められると共に、ランプハウス2の筐体が劣化することが抑制される。
【0059】
[実施例]
Y方向に関して電極ブロック(11,12)に挟まれた領域内に反射部材8を設けることで、紫外線照射装置1から取り出される紫外線L1の照度に及ぼす影響を検証した。
【0060】
管軸方向(Y方向)の長さ70mm、外径φ6mmの管体に、発光ガス3Gとして、Kr、Cl2、Ar、及びNeの混合ガスを封入したエキシマランプ3を、4本準備した。そして、これら4本のエキシマランプ3を、Y方向に7mm離間して配置された、Al製の電極ブロック(11,12)に接触させた。なお、各エキシマランプ3同士のZ方向に係る離間距離は、14mmとされた。
【0061】
上記条件の下で、ピークピーク値約4kV、周波数70kHzの交流電圧を、電極ブロック(11,12)間に印加して、各エキシマランプ3に対して誘電体バリア放電を生じさせ、光取り出し面10から+X方向に20mm離れた、4本のエキシマランプ3の中央の位置における照度を照度計で測定した。
【0062】
かかる条件で、PTFEからなり、X方向×Y方向×Z方向が21mm×7mm×65mmの寸法を有する反射部材8を、
図3~
図7を参照して上述したような位置に配置した場合と、反射部材8を配置しなかった場合で、照度を比較した。この結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
表1によれば、反射部材8を設けることで、光の取り出し効率が向上し、照射面上における照度が24%向上したことが分かる。
【0065】
なお、反射部材8は、エキシマランプ3の発光管の外表面から-X方向に離間した位置に配置されていてもよい。一例として、
図10に示すように、反射部材8が、第一電極ブロック11の-X側の面11dと、第二電極ブロック12の-X側の面12dとに跨るように配置されていても構わない。別の一例として、
図11に示すように、電極ブロック(11,12)は、それぞれ切り欠き部(11e,12e)を有しており、この切り欠き部(11e,12e)の位置に反射部材8が嵌め込まれるようにして配置されるものとしても構わない。
【0066】
更に別の例として、反射部材8は、
図12に示すように、電極ブロック(11,12)と同様にエキシマランプ3の発光管の外表面に沿う曲面を有していても構わない。
図12によれば、反射部材8は、各エキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)を嵌め込むことができるように、エキシマランプ3(3a,3b,3c,3d)の発光管の外表面に沿った形状を呈した凹部(8a,8b,8c,8d)を有している。かかる反射部材8が、Y方向に係る電極ブロック(11,12)の間に配置されることで、電極ブロック(11,12)の間の位置において、エキシマランプ3と密接した状態で反射部材8が配置される(
図13参照)。
図13は、
図12に示す形状の反射部材8を配置したときの態様を、
図10や
図11にならって模式的に示す平面図である。
【0067】
このように電極ブロック(11,12)の間を、絶縁性部材からなる反射部材8で密接させることにより、エキシマランプ3の外側の位置において、電極ブロック(11,12)の間で放電することが抑制され、これによりオゾンの発生が防止できる。
【0068】
なお、
図6、
図10、及び
図11に示すような反射部材8の配置態様によっても、エキシマランプ3の外側の位置における放電の発生を抑制する効果は、
図12に示す配置態様よりは効果が低下するものの、一定程度認められる。
【0069】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0070】
〈1〉上記実施形態では、第一電極ブロック11及び第二電極ブロック12が、共にテーパ面(11a,11b)を有するものとして説明した。しかし、本発明において、各電極ブロックがテーパ面を有するか否かは任意である。すなわち、
図12に示した反射部材8の形状のように、エキシマランプ3が嵌め込まれる箇所以外の部分は、平坦面で構成されていても構わない。
【0071】
〈2〉紫外線照射装置1が複数本のエキシマランプ3を備える場合において、2本以上のエキシマランプ3のX方向に関する配置位置が変位していても構わない。
【0072】
〈3〉上記実施形態では、紫外線照射装置1は、光取り出し面10に光学フィルタ21が設けられているものとして説明したが、本発明において紫外線照射装置1が光学フィルタ21を備えるか否かは任意である。特に、人体に対して紫外線L1が照射される可能性が限りなく低い状況で紫外線照射装置1が設置される場合には、光学フィルタ21が設けられなくてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、紫外線照射装置1から出射される紫外線L1の主たる発光波長が190nm以上、225nm以下の波長帯に属する場合について説明したが、本発明は、主たる発光波長が225nmを超える紫外線を発するものを排除しない。例えば、紫外線照射装置1は、発光ガス3GにXeClを用い、主たるピーク波長が307nmを示す紫外線L1を発するエキシマランプ3を備えるものとしても構わない。
【0074】
〈4〉上記実施形態では、反射部材8が、第一電極ブロック11と第二電極ブロック12の双方に接触している場合について説明した。しかし、本発明は、反射部材8が各電極ブロック(11,12)に対して接触していない場合を排除しない。
【0075】
例えば、
図6において、反射部材8が両電極ブロック(11,12)の間の位置において、面11c及び12cには接触しないように配置されるものとしても構わない。
【0076】
また、別の例として、
図14に示すように、反射部材8が各電極ブロック(11,12)に対して-X方向に離間した位置に配置されているものとしても構わない。この場合、反射部材8はランプハウス2の筐体の内側に固定されているものとしても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1 : 紫外線照射装置
2 : ランプハウス
2a : 本体ケーシング部
2b : 蓋部
3 : エキシマランプ
3a,3b,3c,3d : エキシマランプ
3G : 発光ガス
8 : 反射部材
8a,8b,8c,8d : 凹部
10 : 光取り出し面
11 : 第一電極ブロック
11a : 載置領域
11b : テーパ面
11c,11d : 第一電極ブロックの面
11e : 第一電極ブロックの切欠部
12 : 第二電極ブロック
12a : 載置領域
12b : テーパ面
12c,12d : 第二電極ブロックの面
12e : 第二電極ブロックの切欠部
21 : 光学フィルタ
100 :紫外線照射装置
101 :把持部
102 :筐体
103 :ランプ収容部
104 :光照射窓
110 :エキシマランプ
121 :外側管
122 :内側管
123G :発光ガス
124 :外側電極
125 :内側電極
126 :電源部
L1 : 紫外線