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  • 特許-成膜装置一体型顕微鏡 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】成膜装置一体型顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G01Q 30/20 20100101AFI20240418BHJP
   G01Q 30/16 20100101ALI20240418BHJP
   G01Q 60/60 20100101ALI20240418BHJP
【FI】
G01Q30/20
G01Q30/16
G01Q60/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020093058
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188987
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000166960
【氏名又は名称】鯉沼 秀臣
(73)【特許権者】
【識別番号】390038896
【氏名又は名称】バキュームプロダクツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康史
(72)【発明者】
【氏名】鯉沼 秀臣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利弘
(72)【発明者】
【氏名】松木 伸行
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-183488(JP,A)
【文献】特開平06-204144(JP,A)
【文献】特表2013-533497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q10/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡と、成膜装置とシャフトからなる搬送手段とを備え、
前記走査型プローブ顕微鏡は計測するために内部制御されるチャンバーと、前記チャンバーに配置した、試料を装着するステージ部を有し、
前記成膜装置は成膜するための成膜室と、前記成膜室内に配置し膜するための基材の固定部を有し、
前記チャンバーと前記成膜室とは大気と遮断された連通部にて連結され、
前記シャフトの先端部に試料ホルダーを介し、前記基材を取り付けることができ
前記シャフトの先端部を前記走査型プローブ顕微鏡の側部から前記ステージ部を通過して、前記成膜室内に有する固定部に向けて前進させることで、前記固定部に前記基材を固定でき、前記基材に前記成膜室内で成膜された試料を前記シャフトの後退移動により、前記試料を前記ステージ部に搬送できることを特徴とする成膜装置一体型顕微鏡。
【請求項2】
前記シャフトの回転により前記試料ホルダーがシャフトの先端部に着脱可能になっていることを特徴とする請求項記載の成膜装置一体型顕微鏡。
【請求項3】
前記走査型プローブ顕微鏡は、走査型電気化学セル顕微鏡であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置一体型顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡の範疇に含まれる顕微鏡に各種機能性を有する材料を成膜するのに用いられる成膜装置を一体化した新規の顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
新材料を探索する手法の1つにコンビナトリアル手法が知られている。
本発明者らは、例えば非特許文献1に薄膜電子材料におけるコンビナトリアルデバイスプロセスを提案している。
1つのライブラリ(基板)上に、可動・可換メタルマスクを利用して実験条件の異なる多数の試料区画を集積形成することで、1回の実験で数回から数100回実験分の試料やデバイス構造を作製し、最適条件の探索が可能となる。
このように機能性材料をコンビナトリアル手法にて薄膜合成することで、その物性のハイスループット評価が可能になるものの、例えば有機無機ハイブリッドペロブスカイト(ペロブスカイト)薄膜と結晶Siによるタンデム型太陽電池等の評価の場合には、減圧下で成膜されるが、その後に大気に触れると直ちに劣化することから減圧下(真空中)での計測,評価が必要となる。
また、リチウムイオン2次電池の電解質のように、所定の非反応性ガス圧の下に反応性ガスを制御し成膜されたもの等、大気に暴露できないものが多く、成膜した固体電解質をそのまま計測できるシステムが求められる。
【0003】
一方、本発明者らは、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscopy)の範疇に含まれる顕微鏡であるが、微小セル構造を用いた走査型電気化学顕微鏡(SECM:Scanning Electrochemical Microscopy)として、走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM:Scanning Electrochemical Cell Microscopy)を提案している(特許文献1)。
SECCMは図6に模式図を示すように、参照極と電解液を充填したナノピペットをプローブとして局所的な電気化学測定が可能である。
機能性材料の成膜装置と走査型プローブ顕微鏡とを融合できれば、試料合成,材料の品質評価及び物性評価のプロセスを連続的に行うことができ、コンビナトリアル手法を用いたハイスループットな電気化学計測が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5467473号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】松本 伸行,鯉沼 秀臣,「ペロブスカイト/Siタンデム型太陽電池開発を加速するコンビナトリアルデバイスプロセスシステムの設計指針,第63回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,P10-562,2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて、成膜装置と顕微鏡とを融合した成膜装置一体型顕微鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成膜装置一体型顕微鏡は、走査型プローブ顕微鏡と、成膜装置とを備え、前記走査型プローブ顕微鏡は計測するために内部制御されるチャンバーと、前記チャンバーに配置した、試料を装着するステージ部を有し、前記成膜装置は成膜するための成膜室と、前記成膜室内に配置した成膜するための基材の固定部を有し、前記チャンバーと前記成膜室とは連通部にて連結され、前記連通部を介して、前記チャンバーと前記成膜室との間にて試料の受け渡しをするための搬送手段を有していることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記搬送手段は、前記成膜室にて成膜された試料を大気と遮断された状態で前記チャンバーに搬送可能であるのが好ましい。
また、前記試料は試料ホルダーに取り付けられ、前記搬送手段は、前記走査型プローブ顕微鏡のステージ部と前記成膜装置の成膜室とにわたって前進及び後退制御されたシャフトであり、前記シャフトに前記ホルダーが着脱可能になっていてもよい。
【0009】
本発明は、顕微鏡の試料の計測室を減圧(真空)や不活性ガス圧等の内圧条件,ガス圧条件等が制御可能なチャンバー構造にした点に特徴があり、顕微鏡としては各種顕微鏡が採用され、代表例としては、上記に説明したSPM,SECM,SECCM等が挙げられる。
成膜室は、対象となる成膜材料に応じて超高真空から、ガス置換により大気圧以上の圧力下で成膜される。
顕微鏡のチャンバーもこの成膜室に合せて、超高真空であったり、所定のガス圧であってもよい。
また、顕微鏡のチャンバー内に制御下において、水蒸気,酸素等の反応性ガスを導入して、試料の特性変化や劣化試験等の機能性評価も可能である。
よって、チャンバー及び成膜室は、減圧制御手段,非反応ガスと反応ガスの調整制御手段を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、成膜装置を用いて機能性材料をライブラリとして網羅的に作成し、そのまま顕微鏡のチャンバーに引き渡して計測可能となる。
従来は、成膜室にて得られた試料を大気に触れないように、真空ケース体に保存しなければならなかったが、本発明においては成膜プロセスから計測プロセスまでを連続的に行うことができ、材料評価のスループットを飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】顕微鏡の計測用チャンバーと成膜装置の成膜室とを連通させた状態を模式的に示す。顕微鏡は試料の装着ステージ部のみを透視図として示し、成膜装置は成膜室のみを透視図として記載してある。
図2】シャフトからなる搬送手段にて、試料ホルダーを成膜室に挿入した状態を示す。
図3】ステージ部に試料ホルダーを装着固定する流れを(a)~(c)に示し、(d)は試料ホルダーをステージ部から取り外す状態を示す。
図4】(a)はシャフトの先端部に取り付けた試料ホルダーを成膜室に挿入する状態、(b)は挿入した状態を示す。
図5】顕微鏡のステージ部に試料ホルダーを装着し、シャフトが後退する状態を示す。
図6】ナノピペットをプローブとして用いた電気化学セル顕微鏡の構成の模式図を示す。
図7】顕微鏡のXYZ軸制御機構の例を示す。
図8】チャンバーの内部の例を示す。
図9】成膜機構の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る成膜装置一体型顕微鏡の構成例を以下、図に基づいて説明する。
図1は、本発明のポイントが分かりやすいように模式図として表現してある。
本発明は、顕微鏡10と成膜装置20とを一体化した点に特徴があり、具体的には顕微鏡10の計測台となるステージ部11を図示を省略した減圧可能であったり、非反応性ガス等に置換可能なチャンバー内に設けるとともに、チャンバー内と成膜装置20の成膜室21とを筒状の連通部30にて連結してある。
連通部30は、開閉タンバー等を有しているのが好ましい。
【0013】
ライブラリを作製する基板等を固定する試料ホルダー40を有し、この試料ホルダー40を顕微鏡10のステージ部11と成膜室21とで相互に引き渡し可能になるように搬送手段を有する。
ここで、搬送手段は大気と遮断された状態で成膜された試料をそのまま成膜室から顕微鏡側に移送できれば、特に制限はない。
本実施例では、搬送手段として前進及び後退制御されたシャフト50を有し、このシャフト50の先端部に試料ホルダー40が脱着可能になっている。
その構造例を図3に示す。
シャフト50は、前進及び後退制御されているとともに回転(旋回)可能になっている。
試料ホルダー40には、めねじ部41を有し、シャフト50の先端部には、おねじ部51を有している例になっている。
ここで、シャフトに試料ホルダーのハンドリング機構を有していれば、これに限定されない。
これにより、図3(a),(b)に示すように試料ホルダー40をステージ部11に搬送し、ステージ部11に設けた弾性固定片11a,11bに装着させると、シャフト50が回転し試料ホルダー40のめねじ部41からシャフト50の先端部のおねじ部51の螺合を解除する。
試料ホルダー40を介して試料がステージ部11に装着されると、アーム13に取り付けられた計測用のプローブ12が旋回し、走査計測される。
また、試料ホルダー40をステージ部11から取りに行くときは、図3(d)に示すようにねじ部で螺合し引き取る。
【0014】
これにより例えば、図4(a),(b)に示すようにシャフト50を前進させて試料ホルダー40を成膜室21の側部に設けた挿入口22から内部に基板等を挿入固定する。
成膜室21にて例えば減圧下(真空化)でライブラリが作成されると、そのまた図5に示すように顕微鏡10のステージ部11に連通部30を経由して移送及び装着され、電気化学的な計測が行われる。
【0015】
本発明に係る顕微鏡10は、例えば減圧下で計測可能になっている。
例えば、図6にナノピペットの内部にイオン液体を充填したものに参照電極を挿入したものや、固体電解質を先尖化したものが配置された顕微鏡の構成例を示す。
図6に示した模式図では走査機構をXYZステージと表現してあるが、その機構に特に制限はない。
例えば、図7は顕微鏡10のチャンバーの上部側に設けたXYZ軸方向制御機構を示し、上記ナノピペットに対してナノレベルの領域を走査可能にするためのピエゾ素子を組み合せることができる。
また、ステージ部11を配置するチャンバーは真空ポンプ等により減圧されていて、例えば図8にチャンバーの内部写真を示す。
【0016】
本発明において用いられる成膜装置は、例えば10-8Pa~3×10Pa等の範囲にて、非反応性ガスの下に反応性ガスを導入することができ、顕微鏡側のチャンバーも減圧にしたり、上記成膜室の条件に合せて内部を制御することができる。
また、チャンバー内に水蒸気や酸素等を制御しながら、導入することで、試料の特性変化を計測してもよい。
例えば、図9にはマスクパターン(mask pattern)を用いて、エピタキシャル成長のRHEED振動を観察しながらコンビナトリアル手法にて成膜する例を示す。
【符号の説明】
【0017】
10 顕微鏡
11 ステージ部
12 プローブ
20 成膜装置
21 成膜室
30 連通部
40 試料ホルダー
50 シャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9