(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】電流注入有機半導体レーザダイオード、その設計および製造方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H01S 5/36 20060101AFI20240418BHJP
H01S 5/12 20210101ALI20240418BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240418BHJP
H05B 33/24 20060101ALI20240418BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
H01S5/36
H01S5/12
H05B33/14 A
H05B33/24
H05B33/02
(21)【出願番号】P 2022162035
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2019515680の分割
【原出願日】2018-02-07
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2017020797
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519423895
【氏名又は名称】株式会社KOALA Tech
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】サンダナヤカ サンガランゲ ドン アトゥラ
(72)【発明者】
【氏名】松島 敏則
(72)【発明者】
【氏名】ベンシュイク ファティマ
(72)【発明者】
【氏名】合志 憲一
(72)【発明者】
【氏名】リビエル ジャン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-039236(JP,A)
【文献】特開2002-217489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0229073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電極と、光共振器構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層とを有する電流注入有機半導体レーザダイオードを設計する方法であって、
各部の材料とサイズを特定した特定設計済みダイオードと、前記特定設計済みダイオードから光増幅層の有機半導体の種類を変えた1つ以上の設計済みダイオードについて
、計算手段が、前記特定設計済みダイオードおよび前記設計済みダイオードの各光増幅層の有機半導体のパラメータを用いて、それぞれ、電流注入中の下記式で表されるモード利得gmを計算するステップと、
【数1】
[式において、σstimは誘導放射断面の面積、E(x,y)は共振光モードの電界強度分布、S(x,y)は励起子密度分布、Lは光共振器構造の共振器長、dは光増幅層の厚さをそれぞれ表す。共振光モードの電界強度分布はヘルムホルツの式を解くことにより求められ、励起子密度分布は一重項励起子の連続方程式を解くことにより求められる。]
材料選択手段が、前
記計算手段が求めた計算結果と有機半導体のパラメータの関係に基づいて、有機半導体の群の中から前記特定設計済みダイオードのモード利得gmよりも大きなモード利得gmをもたらすと評価される光増幅層の材料を選択するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記電流注入有機半導体
レーザダイオードが、光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
1対の電極と、光共振器構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層とを有する電流注入有機半導体レーザダイオードを製造する方法であって、
請求項
1に記載の設計方法を用いて、光増幅層の材料を選択するステップと、
設計手段が、各部の材料とサイズを特定した特定設計済みダイオードの光増幅層の材料を、前記設計方法により選択された材料に変えて新しいダイオードを設計するステップと、
ダイオード作成手段が、前記新しいダイオードを作成するステップとを含む方法。
【請求項4】
前記特定設計済みダイオードが、既存のダイオードである、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記電流注入有機半導体レーザダイオードが、光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、請求項
3または4に記載の方法。
【請求項6】
一対の電極と、光共振器構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層とを有する電流注入有機半導体レーザダイオードを設計するためのプログラムであって、
請求項1に記載の方法を実施させるために、コンピュータを
前記計算手段および
前記材料選択手段として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
前記電流注入有機半導体
レーザダイオードが、光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、請求項
6に記載のプログラム。
【請求項8】
光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計する方法であって、
各部の材料とサイズを特定した特定設計済みダイオードと、前記特定設計済みダイオードから光増幅層の有機半導体の種類を変えた1つ以上の設計済みダイオードについて、計算手段が、前記特定設計済みダイオードおよび前記設計済みダイオードの各光増幅層の有機半導体のパラメータを用いて、それぞれ、電流注入中の下記式で表されるモード利得gmを計算するステップと、
【数2】
[式において、σstimは誘導放射断面の面積、E(x,y)は共振光モードの電界強度分布、S(x,y)は励起子密度分布、Lは光共振器構造の共振器長、dは光増幅層の厚さをそれぞれ表す。共振光モードの電界強度分布はヘルムホルツの式を解くことにより求められ、励起子密度分布は一重項励起子の連続方程式を解くことにより求められる。]
材料選択手段が、前記計算手段が求めた計算結果と有機半導体のパラメータの関係に基づいて、有機半導体の群の中から前記特定設計済みダイオードのモード利得gmよりも大きなモード利得gmをもたらすと評価される光増幅層の材料を選択するステップを含む方法。
【請求項9】
光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計する方法であって、
各部の材料とサイズを特定した特定設計済みダイオード又は既存ダイオードと、前記特定設計済みダイオード又は既存ダイオードから光増幅層の有機半導体の種類を変えた1つ以上の設計済みダイオードについて、計算手段が、前記特定設計済みダイオード又は既存ダイオード、および前記
1つ以上の設計済ダイオードの各光増幅層の有機半導体のパラメータを用いて、それぞれ、電流注入中の下記式で表されるモード利得gmを計算するステップと、
【数3】
[式において、σstimは誘導放射断面の面積、E(x,y)は共振光モードの電界強度分布、S(x,y)は励起子密度分布、Lは光共振器構造の共振器長、dは光増幅層の厚さをそれぞれ表す。共振光モードの電界強度分布はヘルムホルツの式を解くことにより求められ、励起子密度分布は一重項励起子の連続方程式を解くことにより求められる。]
材料選択手段が、前記計算手段が求めた計算結果と有機半導体のパラメータの関係に基づいて、有機半導体の群の中から前記特定設計済みダイオード又は既存ダイオードのモード利得gmよりも大きなモード利得gmをもたらすと評価される有機半導体を選択するステップと、
前記特定設計済みダイオード又は既存ダイオードの光増幅層の材料を、前記材料選択手段が選択した有機半導体に変えて新しいダイオードを設計するステップとを含む方法。
【請求項10】
光共振器構造である回折格子構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層と、前記有機層とは別に形成された1対の電極とを含み、前記1対の電極のうちの一方の電極と、絶縁体で構成される回折格子構造とで構成される基板の表面に、前記1つ以上の有機層が形成されている、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計させるために、コンピュータを、
各部の材料とサイズを特定した特定設計済みダイオードと、前記特定設計済みダイオードから光増幅層の有機半導体の種類を変えた設計済みダイオードについて、その光増幅層の有機半導体のパラメータを用いて、それぞれ、電流注入中の下記式で表されるモード利得gmを計算する計算手段と、
【数4】
[式において、σstimは誘導放射断面の面積、E(x,y)は共振光モードの電界強度分布、S(x,y)は励起子密度分布、Lは光共振器構造の共振器長、dは光増幅層の厚さをそれぞれ表す。共振光モードの電界強度分布はヘルムホルツの式を解くことにより求められ、励起子密度分布は一重項励起子の連続方程式を解くことにより求められる。]
前記計算手段が求めた計算結果と有機半導体のパラメータの関係に基づいて、有機半導体の群の中から、前記設計済みダイオードのモード利得gmよりも大きなモード利得gmをもたらすと評価される光増幅層の材料を選択する材料選択手段として機能させる、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流注入有機半導体レーザダイオードとその作成方法に関する。本発明は、また、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ポンピング有機半導体レーザ(OSL)の特性は、高利得の有機半導体材料の開発と高Q係数共振器構造の設計の両方が大きく進歩した結果、過去20年間に大きく改善された1-5。レーザ用利得媒体としての有機半導体の利点は、その高いフォトルミネセンス(PL)量子収率、大きい誘導放射断面、及び化学的同調性と処理容易性と共に可視領域全体にわたる幅広い放射スペクトルがある。低しきい値の分布帰還型(DFB)OSLの最近の進歩によって、電気駆動ナノ秒パルス無機発光ダイオードによる光ポンピングが実証され、新しい小型で低コストの可視レーザ技術への道筋が提供された6。しかしながら、最終的な目的は、電気駆動有機半導体レーザダイオード(OSLD)である。OSLDの実現は、有機フォトニクスとオプトエレクトロニクス回路の完全一体化を可能にする他、分光学、表示装置、医療機器(網膜ディスプレイ、センサ及び光線力学的治療装置など)及びLIFI電気通信における新しい用途を切り開く。
【0003】
有機半導体の直接電気ポンピングによるレーザ発振の実現を妨げる問題は、主に、電気接点からの光損失と高電流密度で起こる三重項及びポーラロン損失による4,5,7-9。これらの基本的な損失問題を解決するために提案された手法には、一重項-三重項励起子消滅による三重項吸収損及び一重項消失を抑制する三重項消光剤の使用10-12、並びに励起子形成と励起子放射崩壊が起こる場所を空間的に分離しポーラロン消失プロセスを最小にするデバイス活性領域の縮小13がある。有機発光ダイオード(OLED)と光ポンピング有機半導体DFBレーザは進歩したが5、電流注入OSLDは最終的にまだ実証されていない。
【0004】
特許文献1P1は、電流注入OSLDの実現について述べている。文献によれば、デバイスは、ITO膜上にピッチ500nmの回折格子(共振器)を形成し、次に蒸着によってΝ,Ν-ジフェニル-N,N’,-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)の厚さ250nmの正孔輸送層を形成し、更に芳香族ポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液をスピンコートすることによって厚さ100nmの放射層を形成し、蒸着によって2-(4-ターシャリ-ブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-l,3,4-オキサジアゾールの厚さ250nmの電子輸送層を形成し、厚さ200mmのMgAg合金層を形成することによって作成される。この文献は、このデバイスへの30Vの電圧印加によるレーザ放射について述べている。しかしながら、実際には、スピンコートによってポリカーボネートのジクロロメタン溶液をTPD層上に塗布するとき、TPD層が溶け、したがって当然デバイスを再現できなかった。更に、このデバイスは、厚さ100nmの有機発光層に加えて形成された厚さ250nmをそれぞれ有する有機正孔輸送層と有機電子輸送層を有し、したがって有機層の全厚がかなり大きい。大きい全厚の有機層を含むデバイスに30Vの直流を印加してレーザ発振は得られない。
【0005】
他の特許文献P2,P3は、電流注入OSLDを実現する可能性について述べている。しかしながら、これらの特許文献は、電流注入OSLDに関する一般的説明を行っているだけで、レーザ発振を確認した具体的な電流注入OSLDも全く示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特許公開第2004-186599号
【文献】日本特許公開平成10-321941号
【文献】日本特許公開第2008-524870号
【非特許文献】
【0007】
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
その意味で、レーザ発振電流注入OSLDはまだ提供されていない。本発明の目的は、レーザ発振電流注入OSLDを提供することである。熱心な研究の結果、本発明者は、本発明が目的を達成できることを発見した。本発明は、1対の電極と、光共振器構造と、有機半導体からなる光増幅層を含む1つ以上の有機層とを含む電流注入有機半導体レーザダイオードを提供し、これは、以下の「2」から「16」のうちの少なくとも1つを満たし、かつ/又は後述される少なくとも1つの実施形態を有しうる。本発明は、以下の実施形態を含む。
【0009】
1.1対の電極と、光共振器構造と、有機半導体を含む光増幅層を含む1つ以上の有機層とを含み、レーザ光を放射するために電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の十分な重なりを有する、電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0010】
2.光共振器構造が、分布帰還型(DFB)構造を有する、項1による電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0011】
3.光共振器構造が、一次ブラッグ散乱領域に取り囲まれた二次ブラッグ散乱領域からなる、項2による電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0012】
4.二次ブラッグ散乱領域と一次ブラッグ散乱領域が、光共振器構造で交互に形成された、項2による電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0013】
5.1つ以上の有機層の数が2以下である、項1から4のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0014】
6.1つ以上の有機層の全厚さに対する光増幅層の厚さが50%超である、項1から5のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0015】
7.光増幅層に含まれる有機半導体が非晶質である、項1から6のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0016】
8.光増幅層に含まれる有機半導体の分子量が1000以下である、項1から7のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0017】
9.光増幅層に含まれる有機半導体が非高分子である、項1から8のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0018】
10.光増幅層に含まれる有機半導体が、少なくとも1つのスチルベン単位を有する、項1から9のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0019】
11.光増幅層に含まれる有機半導体が、少なくとも1つのカルバゾール単位を有する、項1から10のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0020】
12.光増幅層に含まれる有機半導体が、4,4’-ビス[(N-カルバゾール)スチリル]ビフェニル(BSBCz)である、項1から11のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0021】
13.有機層の1つとして電子注入層を有する、項1から12のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0022】
14.電子注入層がCsを含む、項13による電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0023】
15.無機層として正孔注入層を有する、項1から14のいずれかによる電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0024】
16.正孔注入層が、酸化モリブデンを含む、項15による電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0025】
17.電流注入有機半導体レーザダイオードを設計する方法であって、
電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを大きくするようにダイオードの材料を選択し構造を設計するステップを含む方法。
【0026】
18.電流注入有機半導体レーザダイオードを作成する方法であって、
設計済み又は既存のダイオードにおける電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを評価するステップと、
電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを大きくするようにダイオードの材料と構造の少なくとも1つを変化させて新しいダイオードを設計するステップと、
新しいダイオードを作成するステップとを含む方法。
【0027】
19.項18の方法によって作成された電流注入有機半導体レーザダイオード。
【0028】
20.電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを大きくするように電流注入有機半導体レーザダイオードを設計する、電流注入有機半導体レーザダイオードを設計するためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】有機半導体DFBレーザダイオード構造、a,有機レーザダイオードの概略図、b,c,ITOの上に作成されたDFB SiO
2回折格子構造の5,000倍及び200,000倍(挿入図)のレーザ顕微鏡(b)及びSEM画像(c)を示す図である。d,完全OSLDの断面SEM画像。e,OSLDの断面EDX画像。低濃度Csの視認性を改善するためにコントラストを高めた。
【
図2】OSLDの製造と構造を示す図である。a,OSLDの製造工程の概略図。b,DFB回折格子の一般的構造と共にこの研究で使用されたITO被覆ガラス基板の構造。様々な回折格子パラメータの詳細値を表1に見ることができる。c,d,ITO上に作成されたミクストオーダDFB回折格子のEDX及びSEM分析。これらの画像からITOと電気接触を達成する可能性が分かる。
【
図3】電気ポンピング有機半導体DFBレーザの電気的性質を示す図であり、a,有機物と無機物の仕事関数に関して示された最高被占有分子軌道と最低空分子軌道準位を有するOSLDのエネルギー準位図、b,3.0VでDC動作条件下のOSLD及び基準OLEDの顕微鏡写真である。一次及び二次回折格子領域の長さは、1.68及び1.12μmである。c,d,パルス動作(パルス幅400 ns及び繰り返し率1kHz)条件下のOLED及びOSLDの電流密度電圧(J-V)特性(c)及η
EQE-J特性(d)。
【
図4】有機層の正孔及び電子輸送を示す図であり、a,b,伝達の評価に使用される正孔オンリーデバイス(a)と電子オンリーデバイス(b)の構造、c,対数及び線形(挿入図)目盛の直流動作(塗りつぶし記号)とパルス動作(白抜き記号)条件下の正孔オンリーデバイス(HOD)と電子オンリーデバイス(EOD)の代表的な電流密度-電圧(J-V)特性である。デバイス領域は200x200μmである。これらのJ-V曲線は、この研究で製造されたレーザダイオードの高電圧領域内の正孔と電子の良好な輸送を示す。低電圧の電流は、正孔電流のトラップ制限のため、正孔より電子の方が多い。
【
図5】様々なDFB形状を有するOSLDの特性を示す図であり、a,3.0VのDC動作条件下のOSLDの顕微鏡写真である。顕微鏡写真は同じ倍率を使って撮影され、全ての回折格子が垂直方向に伸び、b,c,d,OSLDの電流密度-電圧(J-V)及びη
EQE-J特性である。e,Jの関数としてのエレクトロルミネッセンス強度とFWHM。f,Jの関数としての基板平面に垂直な方向に収集された放射スペクトル。
【
図6】デバイスの直流特性及び放射スペクトルを示す図であり、a,b,直流動作条件下で測定されたOLEDとOSLDの電流密度-電圧(J-V)曲線(a)及びη
EQE-J曲線(b)、c,ニートBSBCz薄膜(黒線)のPLスペクトル及びレーザ発振しきい値(青線)より下のOLED(赤線)及びOSLDのELスペクトルである。
【
図7】OSLDのレーザ発振特性を示す図である。a,様々な注入電流密度の基板平面に垂直な方向に収集されたOSLDの放射スペクトル。3.5kA cm
-2より高い電流密度では、レーザ発振波長での深刻なデバイス劣化によって、レーザ発振に対してバックグラウンドELが著しく増大する。b,レーザ発振しきい値近くの放射スペクトル、c,電流の関数としての出力強度とFWHM、d,電流の関数としての出力電力。挿入図は、50Vでのパルス動作条件下のOSLDの写真である。
【
図8】OSLDからの放射の特性決定を示す図である。a,様々な偏光角で測定されたしきい値より上のOSLDの放射スペクトル。偏光は、下しきい値(挿入図、三角形)より上しきい値(挿入図、円)の方が強い。ここで、90°は、DFB回折格子の溝に平行な方向に対応する。b,c,様々な電流密度におけるOSLDから収束放射ビームの空間ガウスプロファイルを示すCCDカメラ画像(b)及び断面(c)。d,e,画面上に投射されたしきい値より上で動作するOSLDの非収束ビームの図である。
【
図9】光ポンピング条件下のOSLDの特性、a,
図8b,cでビームプロファイルを測定するために使用される試験環境を示す図である。b,しきい値より下(ii)、しきい値の近く(i)、及びしきい値より上(iii)の光励起条件下のOSL(構造は表1を参照)の特性と近視野ビーム像と断面。c,しきい値より下(iv)、しきい値の近く(v)及びしきい値より上(v)の光励起条件下のOSLD-6(構造は表1を参照)の特性と近視野ビーム像と断面。d,しきい値の上のシミュレートされた遠視野ビームと共に、しきい値より上、しきい値近く、及びしきい値より下の光励起条件下のOSLの遠視野ビーム断面。しきい値より上の挿入図は、元の放射パターンである。e,様々な光励起密度を有する光ポンピング条件下でOSLD-6の基板平面に垂直な方向で収集された放射スペクトル。回折格子を有するSiO
2上のBSBCzの定常状態フォトルミネッセンススペクトルが点線として示される。f,光励起密度の関数としてのOSLD-6の出力強度及びFWHM。励起は、337nmの窒素レーザによって3.0ns間であり、デバイスは、周囲温度であった。g,h,i,光ポンピングOSL(g,構造は表1を参照)、電気ポンピングOSLD(h)及び光ポンピングOSLD-6(i)のスロープ効率。光ポンピングデバイスの入力電力は、電源の電力であり、OSLでは有機薄膜側及びOSLD-6ではガラス側に入射した。
【
図10】BSBCzの三重項並びにラジカルカチオン及びアニオンの吸収スペクトルを示す図である。a,BSBCzの誘導放射及び三重項吸収断面スペクトル。OSLの放射スペクトルは、しきい値より上でBSBCzニート薄膜から測定された。b,構成要素間のスペクトル重なりを調べるため、BSBCzのニート薄膜(50nm,黒)と複合薄膜BSBCz:MoO
3及びBSBCz:Cs(モル比1:1、50nm;青及び赤)の吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、吸収分光計(Lamda 950、PerkinElmer)を使って測定された。BSBCz OSLDのポーラロン吸収がごくわずかであることを示すために、BSBCzニート薄膜の定常状態PLスペクトル(緑)と、光ポンピング条件下のOSLからの代表的レーザ発光スペクトル(オレンジ)も示される。
【
図11】光学及び電気シミュレーションであり、a、正孔オンリーデバイス(青い円)、電子オンリーデバイス(赤い四角)及びバイポーラデバイス(黒い三角)の実験(記号)及びシミュレート(実線)J-V曲線である。
図4からユニポーラデバイスに対するフィッティングによってモデルパラメータを抽出し、これらのパラメータは、バイポーラデバイスをシミュレートするために使用された。b,ユニポーラデバイス(実線)から抽出されたパラメータを使って計算された移動度と、BSBCz内の正孔(青)と電子(赤)に関して報告された
41移動度(記号)との比較を示す。c,OSLDの実験(記号)及びシミュレート(実線)J-V曲線。d,計算に使用されたOSLD構造の概略図であり、e,J=500mA cm
-2におけるOSLDの再結合速度プロファイルRの空間分布、f,DFBデバイスのy=0.11μmにおける(e)を通る断面、g,OSLDとOLEDの電流密度の関数としての平均励起子密度である。
【
図12】OSLDのシミュレーションを示す図である。a,励起子密度Sの空間分布。b,一次領域を含むように拡張された構造の共振波長λ
0=483nmおける受動DFB共振空洞の電界分布、c,電流密度の関数としてのモード利得、d,J=-500A cm
-2における二次領域内の1周期の励起子密度S(x,y)と光学モード|E(x,y)|
2の間の空間重なりを示す図である。回折格子以外の層は平坦になるようにモデル化され(
図11dを参照)、y=0はBSBCZ/MoO
3界面に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の内容を以下に詳細に述べる。以下に本発明の代表的実施形態及び特定の例に関連する構成要素について述べるが、本発明はこれらの実施形態及び例に限定されない。本明細書では、「XからY」によって表される数値範囲は、数値X及びYをそれぞれ下限と上限として含む範囲を意味する。
【0031】
ここで参照される全ての文献及びPCT/JP2017/033366の記述は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明の電流注入OSLDは、少なくとも1対の電極と、光共振器構造と、有機半導体からなる光増幅層を含む1つ以上の有機層とを有する。本発明の電流注入OSLDは、電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりがレーザ光を放射するのに十分な構成を備える。「電流注入中の励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりがレーザ光を放射するのに十分な構成」とは、レーザ発振を可能にする構成であり、後述される材料と構造の選択と組み合わせを意味する。
【0033】
以下に本発明の構成と特徴を詳細に述べる。
【0034】
(光増幅層)
本発明の電流注入OSLDを構成する光増幅層は、炭素原子を含むが金属原子を含まない有機半導体化合物を含む。有機半導体化合物は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びホウ素原子から成る群から選択された1つ以上の原子からなることが好ましい。例えば、炭素原子、水素原子及び窒素原子からなる有機半導体化合物について言及されうる。有機半導体化合物の好ましい例は、スチルベン単位とカルバゾール単位の少なくとも一方を含む化合物であり、有機半導体化合物のより好ましい例は、スチルベン単位とカルバゾール単位の両方を含む化合物である。スチルベン単位とカルバゾール単位は、アルキル基などの置換基と置換されてもよく、置換されなくてもよい。有機半導体化合物は、繰り返し単位のない非高分子であることが好ましい。好ましくは、化合物の分子量は1000以下であり、例えば750以下でよい。光増幅層は、2種類以上の有機半導体化合物を含みうるが、1種類の有機半導体化合物だけ含むことが好ましい。
【0035】
本発明で使用される有機半導体化合物は、光励起有機半導体レーザの有機発光層に使用されたときにレーザ発振を可能にするレーザ利得有機半導体化合物から選択されうる。最も好ましい有機半導体化合物の1つは、4,4’-ビス[(N-カルバゾール)スチリル]ビフェニル(BSBCz)(
図1aの化学構造)
15であり、その理由は、薄膜の低い自然放射増幅(ASE)しきい値(800psパルス光励起条件下で0.30μJ cm
-2)
16と、2%を超える最大エレクトロルミネセンス(EL)外部量子効率(η
EQE)を有するOLEDの5μsパルス動作条件下で2.8kA cm
-2もの高い電流密度の注入に耐える能力
13など、光学及び電気特性の優れた組み合わせである。更に、80MHzの高い繰返し率、30ミリ秒の長いパルス光励起条件下のレーザ発振は、最近、光ポンピングBSBCz系DFBレーザで実証され
17、主に、BSBCz薄膜のレーザ発振波長での三重項吸収損がきわめて少ないため可能であった。BSBCzとは別に、例えば、文献16と同じ薄膜に形成され800psパルス光励起条件下で測定されたとき、好ましくは0.60μJ cm
-2以下、より好ましくは0.50μJ cm
-2以下、更に好ましくは0.40μJ cm
-2以下のASEしきい値を有する化合物も使用可能である。更に、文献13と同じデバイスに形成され5μsパルス動作条件下で測定されたときに、好ましくは1.5kA cm
-2以上、より好ましくは2.0kA cm
-2以上、更に好ましくは2.5kA cm
-2以上の耐久性を示す化合物も使用可能である。
【0036】
本発明の電流注入OSLDを構成する光増幅層の厚さは、好ましくは80~350nm、より好ましくは100~300nm 更に好ましくは150~250nmである。
【0037】
(その他の層)
本発明の電流注入OSLDは、光増幅層の他に、電子注入層、正孔注入層などを備えうる。これらは、有機層でも有機材料のない無機層でもよい。電流注入OSLDが2つ以上の有機層を有する場合、非有機層が間にない有機層のみのラミネート構造を有することが好ましい。この場合、複数の有機層は、光増幅層内と同じ有機化合物を含みうる。電流注入OSLDの性能は、中の有機層のヘテロ界面の数が少ないほど高くなる傾向があり、したがって、中の有機層の数は、好ましくは3つ以下、より好ましくは2つ以下、最も好ましくは1つである。電流注入OSLDが2つ以上の有機層を有する場合、光増幅層の厚さは、好ましくは有機層の全厚の50%超、より好ましくは60%超、更に好ましくは70%超である。電流注入OSLDが2つ以上の有機層を有するとき、有機層の全厚は、例えば、100nm以上、120nm以上、又は170以上でよく、370nm以下、320nm以下又は270nm以下でよい。電子注入層と正孔注入層の屈折率は、光増幅層の屈折率より小さいことが好ましい。
【0038】
電子注入層が提供される場合、光増幅層への電子注入を容易にする物質が電子注入層に存在するように作成される。正孔注入層が提供される場合、光増幅層への正孔注入を容易にする物質が正孔注入層に存在するように作成される。これらの物質は、有機化合物でも非有機物質でもよい。例えば、電子注入層用の非有機物質は、Csなどのアルカリ金属を含み、有機化合物を含む電子注入層内のその濃度は、例えば、1重量%超、5重量%以上又は10重量%以上でよく、40重量%以下又は30重量%以下でよい。電子注入層の厚さは、例えば、3nm以上、10nm以上又は30nm以上でよく、100nm以下、80nm以下、又は60nm以下でよい。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施形態として、有機層として電子注入層と光増幅層を有し、無機層として正孔注入層を有する電流注入OSLDが例証されうる。正孔注入層を構成する非有機物質には、酸化モリブデンなどの金属酸化物が含まれる。正孔注入層の厚さは、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上でよく、100nm以下、50nm以下、又は20nm以下でよい。
【0040】
(光共振器構造)
本発明の電流注入OSLDは、光共振器構造を有する。光共振器構造は、一次元共振器構造又は二次元共振器構造でよい。後者の例には、サーキュレータ共振器構造とウイスパギャラリ型光共振器構造が含まれる。分布帰還型(DFB)構造及び分布ブラッグ反射器(DBR)構造も使用可能である。DFBの場合、好ましくはミクストオーダDFB回折格子構造が使用される。即ち、好ましくは、レーザ発光波長に対する次数が異なるDFB回折格子構造の混合構造が使用されうる。その具体的な例には、一次ブラッグ散乱領域に取り囲まれた二次ブラッグ散乱領域からなる光共振器構造と、二次ブラッグ散乱領域と一次散乱領域が交互に形成された混合構造とが含まれる。好ましい光共振器構造の詳細は、以下に示す具体例を参照できる。光共振器構造として、電流注入OSLDは、更に、外部光共振器構造を備えうる。
【0041】
例えば、光共振器構造は、好ましくは電極上に形成されうる。光共振器構造を構成する材料には、SiO2などの絶縁材料が含まれる。例えば、回折格子構造が形成され、回折格子の深さは、好ましくは75nm以下であり、より好ましくは10~75nmの範囲から選択される。深さは、例えば、40nm以上でもよく、40nm未満でもよい。
【0042】
(電極)
本発明の電流注入OSLDは、1対の電極を有する。光出力のため、1つの電極は、好ましくは透明である。電極に関して、当該技術分野で一般に使用される電極材料は、その仕事関数などを考慮して適切に選択されうる。好ましい電極材料には、Ag、Al、Au、Cu、ITOなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
(好ましい電流注入OSLD)
電流注入OSLDでは、励起子は電流励起によって生成される。電流注入OSLDのレーザ発振特性は、生成された励起子密度の分布領域と共振光モードの電界強度分布の重なりを大きくすることによって改善される。即ち、励起子密度が光共振器構造の光共振モードと重なるとき、それよりレーザ発振特性が改善されうる。励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布は、電流注入OSLDの構造と材料を変更することによって制御されうる。例えば、回折格子などを有する電流狭め構造を使用することによって、また回折格子の深さと周期を制御することによって、分布を制御できる。光増幅層の材料及び厚さと、ある場合は電子注入層及び正孔注入層の材料及び厚さを指定又は制御することによって、分布も制御できる。更に、後述されるシミュレーション計算で検討される条件を考慮して、より正確な分散制御が可能である。好ましい電流注入OSLDは、電流注入中の励起子密度の分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを、後で動作例として示される特定の電流注入OSLDにおける重なり以上の程度に有する。
【0044】
本発明の電流注入OSLDでは、好ましくは、有機光利得層内の電子移動度の正孔移動度に対する比率は、好ましくは1/10~10/1、より好ましくは1/5~5/1、更に好ましくは1/3~3/1、更により好ましくは1/2~2/1の範囲内になるように制御される。この比率を範囲内になるように制御することによって、励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを容易に拡大できる。
【0045】
本発明の電流注入OSLDでは、好ましくは、電流励起によって生成された励起子は実質的に消滅を受けない。励起子消滅による損失は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満、更により好ましくは0.01%未満、最も好ましくは0%である。
【0046】
また好ましくは、本発明の電流注入OSLDは、レーザ発振波長で実質的にポーラロン吸収損を示さない。換言すると、好ましくは、ポーラロン吸収スペクトルと有機半導体レーザの発光スペクトルの重なりが実質的にない。ポーラロン吸収による損失は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満、更により好ましくは0.01%未満、最も好ましくは0%である。
【0047】
本発明の電流注入OSLDの発振波長は、励起状態、ラジカルカチオン又はラジカルアニオンの吸収波長領域と実質的に重ならないことが好ましい。この吸収は、一重項-一重項、三重項-三重項、又はポーラロン吸収によって引き起こされうる。励起状態での吸収による損失は、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、更に好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満、更により好ましくは0.01%未満、最も好ましくは0%である。
【0048】
本発明の電流注入OSLDは、三重項消光剤がないことが好ましい。
【0049】
(電流注入OSLDの作成方法)
本発明は、また、電流励起によって生成された励起子密度の分布と共振光モードの電界強度分布の重なりが大きくなりうるように電流注入OSLDが設計され作成される電流注入OSLDの作成方法を提供する。その設計において、様々な条件(例えば、回折格子の深さと周期、光増幅層、電子注入層及び正孔注入層の構成材料と厚さなど)に基づいてシミュレーションが行われ、それにより、励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりが評価される。様々な条件下でのシミュレーションの結果、重なりが大きいと評価されたものから、作成に問題のないものが選択され、こうして選択されたものが実際に作成されうる。従って、優れたレーザ発振特性を有する電流注入OSLDを効率的に提供できる。
【0050】
以上の設計において、電流励起によって生成される励起子の分布と共振光モードの電界強度分布の重なりを拡大できるように設計する機能を有する、電流注入OSLD用の設計プログラムを事前に形成し使用できる。このプログラムは、ハードディスクやコンパクトディスクなどの媒体に記憶されうる。
【0051】
また、本発明は、設計済み又は既存の電流注入OSLDのレーザ発振特性を改善する方法を提供する。設計済み又は既存の電流注入OSLDの励起子密度分布と共振光モードの電界強度分布の重なりは、シミュレーション計算によって評価され、材料と構造が変更された場合の分布の重なりも同じシミュレーション計算によって計算され、それにより、レーザ発振特性が改善された電流注入OSLDを提供できる。
【0052】
発明の好ましい実施形態
以下に、本発明を、
図1aに示された好ましい実施形態に関して具体的に述べる。しかしながら、本発明の範囲は、以下の具体的記述によって限定的に解釈されるべきでない。
【0053】
光ポンピング有機半導体レーザ(OSL)の特性は、高利得有機半導体材料の開発と高Q係数共振器構造の設計の両方の大きな進歩の結果として、過去20年間に大幅に改善された1-5。有機半導体のレーザ用利得媒体としての利点には、その高いフォトルミネセンス量子収率(PLQY)、大きい誘導放射断面、及び化学的同調性と処理し易さと共に可視領域全体にわたる広い放射スペクトルが含まれる。低しきい値分布帰還型(DFB)OSLの最近の進歩によって、新しい小型で低コストの可視レーザ技術への道筋を提供する電気駆動ナノ秒パルス無機発光ダイオードによる光ポンピングが実証された6。しかしながら、最終的な目標は、電気駆動有機半導体レーザダイオード(OSLD)である。OSLDの実現は、有機フォトニクス及びオプトエレクトロニクス回路の完全統合を可能にする他、分光学、表示装置、医療機器(網膜ディスプレイ、センサ及び光力学治療装置など)及びLIFI電気通信における新規の用途を切り開く。
【0054】
有機半導体の直接電気ポンピングによるレーザ発振の実現を妨げてきた問題は、主に、電気接点からの光損失、及び高電流密度で起こる三重項及びポーラロン損失によるものである4,5,7-9。これらの基本的な損失問題を解決するために提案された手法には、一重項-三重項励起子消滅による三重項吸収損及び一重項消失を抑制する三重項消失剤10-12の使用、並びに励起子形成及び励起子放射崩壊が起こる場所を空間的に分離しポーラロン消失プロセスを最小にするデバイス活性領域13の縮小が挙げられる。しかしながら、有機発光ダイオード(OLED)と光ポンピング有機半導体DFBレーザは進歩したが5、電流注入OSLDは最終的にまだ実証されていない。
【0055】
従来の研究は、電気ポンピングと関連した付加損失が完全に抑制された場合に、OSLDからのレーザ発振を実現するために数kA/cm
2を超える電流密度が必要とされることを示した
14。OSLDを実現するために最も有望な分子の1つは、4,4’-ビス[(N-カルバゾール)スチリル]ビフェニル(BSBCz)(
図1aの化学構造)
15であり、その理由は、薄膜の低い自然増幅放射(ASE)しきい値(800psパルス光励起条件下で0.30μJ cm
-2)
16や、2%を超える最大エレクトロルミネセンス(EL)外部量子効率(η
EQE)を有するOLED内の5μsパルス動作条件下で2.8kA cm
-2もの高い電流密度の注入に耐える能力
13など、光学及び電気特性の優れた組み合わせである。更に、80MHzの高い繰り返し率で30msの長いパルス光励起条件下でのレーザ発振が、光ポンピングBSBCz系DFBレーザで最近実証され
17、これが可能な主な理由は、BSBCz薄膜のレーザ発振波長における三重項吸収損がきわめて少ないことであった。ここで、デバイスの活性領域に組み込まれたミクストオーダDFB SiO
2回折格子を有する反転OLED構造内のBSBCz薄膜に基づくOSLDの開発と完全な特性決定によって、電気により直接励起された有機半導体薄膜からのレーザ発振の最初の例を実証する。
【0056】
図1aと
図2に、この研究で開発されたOSLDの構造及び製造を概略的に示す(実験手順の詳細な説明は「材料と方法」を参照)。インジウムスズ酸化物(ITO)ガラス基板上にSiO
2のスパッタリング層を、電子線リトグラフィとリアクティブイオンエッチングで刻印して、30×90μmの領域を有するミクストオーダDFB回折格子(
図1b)を作成し、基板上に有機層と金属カソードを真空蒸着してデバイスを完成させた。発明者は、レーザ放射の強い光帰還及び効率的な垂直出力結合をそれぞれ提供する一次及び二次ブラッグ散乱領域を有するミクストオーダDFB回折格子を設計した
17,18。ブラッグ条件
4,19 mλ
Bragg=2n
effΛ
mに基づいて、一次及び二次領域にそれぞれ回折格子周期(Λ
1とΛ
2)140及び280nmを選択し、ここで、mは、回折次数、λ
Braggは、報告されたBSBCzの最大利得波長(477nm)に設定されたブラッグ波長、n
effは、BSBCzの場合に1.70になるように計算された利得媒体の実効屈折率である
20,21。特性決定された第1組のデバイスでは、一次及び二次DFB回折格子領域の長さがそれぞれ1.12及び1.68μmであり、以下ではOSLDと呼ぶ。
【0057】
図1c及びdの走査型電子顕微鏡(SEM)画像から、製造されたDFB回折格子が、約65±5nmの回折格子深さを有する140±5及び280±5nmの周期であったことが分かる。エッチング領域内のSiO
2層を完全に除去してITOを露出させることは、有機層との良好な電気接触のために重要であり、エネルギー分散X線分光(EDX)分析で確認された(
図2c,d)。
図1d及びeに、完全なOSLDの断面SEM及びEDX画像を示す。全ての層の表面モフォロジは、50~60nmの表面変調深さを有する回折格子構造を示す。共振レーザモードの電極との相互作用は、帰還構造のQ係数を小さくすることが期待されるが、金属電極上のそのような回折格子構造は、デバイス構造内で導波されたモードの吸収損も減少させるはずである
22,23。
【0058】
この研究で製造されたOSLDは、
図3aに示されたようなエネルギー準位を有するITO(100nm)/20重量%Cs:BSBCz(60nm)/BSBCz(150nm)/MoO
3(10nm)/Ag(10nm)/Al(90nm)の単純な反転OLED構造を有する。ITO接点に近い領域内でBSBCz薄膜にCsをドープすることによって、有機層へ電子注入が改善され、MoO
3が正孔注入層として使用される(
図4)。最も効率の高いOLEDは、一般に、多層構造を使用して電荷平衡最を適化するが
24,25、高い電流密度では有機ヘテロ界面に電荷が蓄積することがあり、これは、デバイス性能及び安定性に有害でありうる
26。この研究で製造されたOSLDは、有機半導体層(光増幅層)としてBSBCzのみを含み、特に有機ヘテロ界面の数を最小にするように設計された。EL特性に対する回折格子の影響を調べるために、SiO
2 DFB回折格子のない基準デバイス(以下OLEDと呼ぶ)も製造した。
【0059】
図3bは、3.0Vの直流(DC)動作中のOSLD及び基準OLEDの光学顕微鏡画像を示す。前述したDFB回折格子に加えて、OSLDで他の5つのDFB回折格子形状(表1)を最適化し特性決定した。ELは、基準OLEDの活性領域から均一に放射されるが、OSLD内で特に垂直方向の光出力結合を促進するように設計された二次DFB回折格子領域から、より強い放射を確認できる(
図3bと
図5)。
図2c及びdに、周囲温度におけるパルス条件下(電圧パルス幅400ns、繰り返し率1kHz)でのOSLD及びOLEDの電流密度-電圧(J-V)とη
EQE-J特性を示し、
図6に直流条件下で得られた特性を示す。SiO
2回折格子の上の領域にはある程度の電流が流れるが(シミュレーションによれば~20%)、大部分は露出ITOの上の領域を流れる。簡潔さと一貫性のため、露出ITO領域が全てのOSLDの電流密度の計算に使用されるれが、これは少し過大評価になりうる。
【0060】
【0061】
電流密度を計算するために使用される総露出ITO面積Aと共に、
図2に示されたパラメータの様々な回折格子形状の値。OSLは、石英ガラス上の回折格子上に付着された厚さ200nmのBSBCz層であり、接点を含まない。
【0062】
パルス動作によってジュール熱が減少するので、基準OLEDのデバイス破損前の最大電流密度は、直流動作条件下の6.6A cm
-2からパルス動作条件下の5.7kA cm
-2に増大した。直流動作条件下で、全てのデバイスは、低い電流密度では2%を超える最大η
EQEを示し、1A cm
-2より高い電流密度では強い効率ロールオフを示し、これは、デバイスの熱劣化によるものと推測される。他方、パルス動作(
図3c,d)条件下でのOLEDの効率ロールオフは、以前の報告と一致する110A cm
-2より高い電流密度で始まった
13。更に、パルス動作条件下ではOSLD内で効率ロールオフが抑制され、更に、η
EQEは、実質的に200A cm
-2を超えて2.9%の最大値に達したことが分かった。電流密度2.2kA cm
-2より上でのη
EQEの急激な減少は、デバイスの熱劣化による可能性が高い。
【0063】
OLEDのELスペクトルが、ニートBSBCz薄膜の定常状態のPLスペクトルに類似し(
図6c)、電流密度の関数として変化しなかったが、パルス動作条件下のOSLDのガラス面からのELスペクトルは、電流密度の増大と共にスペクトル線を狭めた(
図7a)。電流密度が650A cm
-2より低い場合に、DFB回折格子の阻止帯域に対応するブラッグディップが478.0nmで観察された(
図7b)。電流密度がこの値より大きくなると、レーザ発振の始まりを示す強いスペクトル線狭まりが480.3nmで起こる。狭い放射ピークの強度は、EL放射バックグラウンドのものより速く高まることが分かり、これは、誘導放射と関連した非線形性によるものである。
【0064】
図7cに、OSLDの出力強度と半値全幅(FWHM)を電流の関数としてプロットする。ニートBSBCz薄膜の定常状態PLスペクトルのFWHMは約35nmであるが、高電流密度でのOSLDのFWHMは0.2nmより低い値に低下し、この値は、本発明に使用される分光計のスペクトル分解限度(波長範囲が57nmの場合に0.17nm)に近い。出力強度のスロープ効率は、電流増大と共に急激に変化し、これを使用して、600A cm
-2(8.1mA)のしきい値を決定できる。4.0kA cm
-2を超えると、出力強度は、電流増大と共に低下し、これはおそらく温度の急激な上昇によってデバイスが破損するからであるが、放射スペクトルはきわめて鋭いままである。この増大とその後の低下は、η
EQE-J曲線と一致する。OSLDの前にITOガラス基板から距離3cmに離された電力計で測定された最大出力は、3.3kA cm
-2で0.50mWであった(
図7d)。これらの観察されたEL特性は、光増幅が高い電流密度で起こることと、電気駆動レーザ発振が電流密度しきい値より上で達成されることを強く示す。
【0065】
これがレーザ発振であるという更なる証拠を提供するためにビーム偏光及び形状を特性決定した
9。OSLDの出力ビームは、回折格子パターンに沿って強く直線偏光され(
図8a)、これは、一次元DFBからのレーザ放射に予想される。収束されたOSLD放射の空間プロファイル(
図8bと
図9a)は、約0.1mmの直径を有する明確なガウスビームの存在を示し(
図8c)、レーザ発振しきい値より上でOSLDからの出力ビームの優れた収束性を実証する。画面にビームを投射すると、一次元DFBに予想されたような扇形パターンができる(
図8d,e)。しきい値より上の急激な劣化は、この段階での干渉分光を妨げたが、発明者は、式L=λ
peak
2/FWHMからコヒーレンス長(L)を推定し、ここで、λ
peakは、レーザ発振と一致するピーク波長(この報告では全てのデバイスで1.1~1.3mm)である。劣化が遅くなる光励起条件下では、類似したデバイス構造の近視野ビームパターンが、電極がある場合もない場合(
図9b,c)も類似しており、更に、デバイスがレーザ発振を支援できることを示す。更に、光励起条件下の遠視野パターンもレーザ発振と一致する(
図9d)。
【0066】
観察された挙動の原因として過去にレーザ発振として誤って解釈された幾つかの現象を除外した後でなければ、発明者はレーザ発振を主張できない
9。発明者のOSLDからの放射は、基板平面に垂直方向で検出され、明確なしきい値挙動を示し、したがって、レーザ増幅のない導波モードの端面放射から起こる線狭まりを除去できる
20,28,29。ASEはレーザ発振と似ているように見えるが、発明者のOSLDのFWHM(<0.2nm)は、有機薄膜の通常ASE輝線幅よりはるかに狭く(数ナノメートル)、光ポンピング有機DFBレーザ(<1nm)の通常FWHMと一致する
5。ITO中の原子遷移を意図せず引き起こすことによって得られたきわめて狭い放射スペクトルが、有機層からの放射と間違って解釈されてきた
30。しかしながら、
図7aのOSLDの放射ピーク波長は、480.3nmであり、410.3、451.3及び468.5nmに原子スペクトル線を有するITOからの放射によるものではあり得ない
31。
【0067】
これが真にDFB構造からのレーザ発振の場合は、OSLDの放射が、共振器モードの特性であるはずであり、その出力は、レーザ共振器の修正の影響を受けやすいはずである。したがって、OSLD-1からOSLD-5(表1)と示された様々なDFB形状を有するOSLDを製造し特性決定して(
図5)、放射波長を予想通りに同調できることを確認し、これは光ポンピング有機DFBレーザに共通である
4,5,32,33。レーザ発振ピークは、同じDFB回折格子周期を有するOSLD、OSLD-1、OSLD-2及びOSLD-3(それぞれ480.3nm、479.6nm、480.5nm及び478.5nm)でほぼ同じである。更に、OSLD-1、OSLD-2及びOSLD-3は全て、低い最小FWHM(それぞれ0.20nm、0.20nm及び0.21nm)と、明確なしきい値(それぞれ1.2kA cm
-2、0.8kA cm
-2及び1.1kA cm
-2)を有していた。他方、異なるDFB回折格子周期を有するOSLD-4とOSLD-5は、FWHMが0.25nmでしきい値が1.2kA cm
-2の場合に459.0nm(OSLD-4)で、FWHMが0.38nmでしきい値が1.4kA cm
-2の場合に501.7nm(OSLD-5)でレーザ発振ピークを示した。これらの結果は、レーザ発振波長がDFB形状によって制御されることを明らかに実証する。
【0068】
電気駆動OSLDのレーザ発振しきい値が、光ポンピングによって得られたものと一致することを確認するために、3.0nsパルスを送出するN
2レーザ(励起波長337nm)を使ってITO側から光ポンピングされたOSLD(OLSD-6)のレーザ発振特性を測定した(
図9e,f)。光ポンピング条件下のOLSD-6のレーザ発振ピーク(481nm)は、電気ポンピング条件下のOSLDのもの(480.3nm)と一致する。光ポンピング条件下のレーザ発振しきい値は、デバイスに結合された出力だけを検討するとき(シミュレーションにより~18%)、約77W cm
-2であるように測定された。2電極のない光ポンピングBSBCz系DFBレーザで得られたものより小さいしきい値の上昇(30W cm
-2)は
17、電極の存在によって生じる光損失を最小にするように層厚を最適化した結果である。高電流密度でOSLD-6の追加損失メカニズムがないと仮定すると、電気ポンピング条件下の0.3kA cm
-2のレーザ発振しきい値は、光ポンピング条件下のしきい値から予測されうる(計算詳細は、「材料と方法」を参照)。したがって、OSLDとOSLD-2(OSLD-6と同じ回折格子周期を有する)に関する0.6~0.8kA cm
-2のしきい値より上の電気ポンピング条件下のレーザ発振の観察は妥当である。更に、スロープ効率(
図9g~i)は、光及び電気ポンピング条件下では類似していたが(それぞれ0.4%と0.3%)、電極のない光ポンピングデバイスでは極めて高かった(6%)。
【0069】
これらの結果は、一般に高電流密度でOLEDに生じる付加損失(励起子消滅、三重項及びポーラロン吸収、高電界とジュール加熱による消失を含む)
34が、BSBCz OSLDではほとんど抑制されたことを示唆する。これは、OSLDで強いパルス電気励起条件下でEL効率ロールオフが観察されなかったことと完全に一致する。損失の抑制は、BSBCz及びデバイスの特性に基づいて説明されうる。前述したように、BSBCz薄膜は、大きい三重項損失を示さず(
図10a)
35、デバイス活性領域の減少は、ジュール熱によって生じる励起子消失の減少をもたらす
36。ポーラロン吸収と発光スペクトルの重なりは、BSBCz内のラジカルカチオンとラジカルアニオンの両方では、それぞれBSBCz:MoO
3とBSBCz:Csの複合薄膜の測定に基づき、ごくわずかである(
図10b)。更に、OLED構造では金属損失が大きな問題であるが、本発明のOSLD内のDFB構造は、光を金属から制限することによってそのような損失を減少させる。
【0070】
OSLD内で電流注入レーザ発振が起きていることを更に確認するために、デバイスの電気及び光学シミュレーションを行った(
図11)。ユニポーラデバイスの実験データのフィッティングから抽出されたキャリア移動度を使用すると(
図11a,b)、回折格子があるデバイスとないデバイスのシミュレートJ―V曲線は、実験特性とよく一致し(
図11a,c,d)、これは、回折格子のあるデバイス内のITOと電気接触するためにエッチングが十分であることを示す。再結合率プロファイル(
図11e,f)は、絶縁SiO
2回折格子を介したITO電極からの電子の周期的注入によるデバイス内の周期的変化を示す。再結合と同様に、励起子密度(S)は、有機層の厚さ全体に広がるが(
図12a)、主に、SiO
2がカソードからアノードへの経路を妨げない領域に集中する。OSLDとOLEDの平均励起子密度は類似しており(
図11g)、SiO
2近くの励起子の高い蓄積が、回折格子(注入領域がない)間の低い励起子密度を補償し、励起子密度が基準デバイスと同様になることを示す。
【0071】
二次回折格子からの光出力結合とITO層内の光閉じ込めは、導波路損失を構成し、OSLD内の計算共振波長λ
0=483nmでの光場のシミュレート電場分布E(x,y)でよく見える(
図12b)。DFB共振空胴は、40%の閉じ込め係数Γと255のQ係数を特徴とし、これは、λ
peak/FWHMを使って
図7bから計算されたQ係数204と一致する。モード利得(g
m)は、レーザモードの光の増幅の指標であり、電流密度の関数として、BSBCz
35の誘導放射断面σ
stimが、2.8x10
-16cm
2の場合の励起子密度分布と光場分布の重なりから計算され(詳細は「材料と方法」を参照)、二次領域に関して
図12cに示される。500A cm
-2より上の高いモード利得は、レーザ発振の観察と一致する。絶縁DFB構造は、回折格子の谷の中とその上の高励起子密度の局所化によって光学モードとの結合の強化を支援し(
図12a)、ここで光学モードは強く(
図12b)、その結果、
図12dでJ=500A cm
-2と高い値になる。
【0072】
結論として、本発明は、電流駆動有機半導体からのレーザ発振が、共振器及び有機半導体の適切な設計及び選択によって、損失を抑制し結合を強化できることを証明する。ここで実証されたレーザ発振は、複数のデバイスで再現され、レーザ発振と誤解されうる他の現象を除外するように完全に特性決定された。結果は、有機半導体における電気ポンピングレーザ発振の最初の観察であるという主張を完全に支援する。BSBCzの低い損失は、レーザ発振を可能にするために不可欠であり、したがって、重要な次のステップは、類似又は改善された特性を有する新しいレーザ分子を設計する戦略の開発である。この報告は、有機フォトニクスの新しい可能性を開き、単純で、安価で、同調可能で、完全かつ直接統合された有機物系オプトエレクトロニクスプラットフォームを可能できる有機半導体レーザダイオード技術の将来の開発の基礎となる。
【0073】
材料と方法
(デバイス製造)
インジウムスズ酸化物(ITO)被覆ガラス基板(厚さ100nmITO,株式会社厚木ミクロ)を、中性洗剤、純水、アセトン及びイソプロパノールを使った超音波処理によって洗浄し、次に紫外線オゾン処理した。厚さ100nmのSiO2層(DFB回折格子になる)をITO被覆ガラス基板上に100℃でスパッタリングした。スパッタリング中のアルゴン圧力は、0.66Paであった。高周波電力を100Wに設定した。基板を再びイソプロピパノールを使った超音波処理によって洗浄し、次に紫外線オゾン処理した。SiO2表面を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で4,000rpmで15秒間スピンコーティングによって処理し、120℃で120秒間アニールした。厚さ約70nmを有するレジスト層を、基板上に、ZEP520A-7溶液(ZEON Co.)から4,000rpmで30秒間スピンコートし、180℃で240秒間焼成した。
【0074】
JBX-5500SCシステム(JEOL)を使って0.1nC cm
-2の最適化線量の電子線リソグラフィを行って、レジスト層上に回折格子パターンを描いた。電子ビーム照射後、このパターンを室温で現像液(ZED-N50,ZEON Co.)中で現像した。パターンレジスト層をエッチングマスクとして使って、基板を、EIS-200ERTエッチングシステム(ELIONIX)を使ってCHF
3でプラズマエッチングした。FA-1EAエッチングシステム(SAMCO)を使ってO
2で基板をプラズマエッチングして、基板からレジスト層を完全に除去した。エッチング条件は、ITOが露出するまでDFBの溝からSiO
2を完全に除去するように最適化された。SiO
2表面に形成された回折格子をSEM(SU8000,日立)で観察した(
図1c)。DFBの溝からSiO
2が完全に除去されたことを確認するために、EDX(6.0kV,SU8000,日立)分析を行った(
図2c,d)。冷電界放出SEM(SU8200,日立ハイテクノロジーズ)を使用するKobelco、エネルギー分散性X線分光(XFlash FladQuad 5060,Bruker)、及び集束イオンビームシステム(FB-2100,日立ハイテクノロジーズ)によって断面SEM及びEDXを測定した(
図1d,e)。
【0075】
DFB基板を従来の超音波処理で洗浄した。次に、基板上に、有機層と金属電極を、1.5x10-4Paの圧力下で0.1~0.2nm s-1の全蒸着速度の熱蒸着によって真空蒸着して、インジウムスズ酸化物(ITO)(100nm)/20重量%BSBCz:Cs(60nm)/BSBCz(150nm)/MoO3(10nm)/Ag(10nm)/Al(90nm)の構造を有するOSLDを製造した。ITO表面上のSiO2層は、DFB回折格子に加えて絶縁体として働いた。したがって、OLEDの電流領域は、BSBCzがITOと直接接触するDFB領域に限定された。また、同じ電流流れ領域で30×45μmの活性領域を有する基準OLEDも作成した。
【0076】
(デバイスの特性決定)
水分と酸素による劣化を防ぐために、窒素充填グローブボックス内で、ガラス蓋と紫外線硬化エポキシ樹脂を使って全てのデバイスをカプセル化した。OSLDとOLEDの電流密度-電圧-ηEQE(J-V-ηEQE)特性(DC)を、室温で積分球システム(A10094,浜松ホトニクス)を使って測定した。パルス測定のため、パルス発生器(NF,WF1945)を使って、パルス幅400ns、パルス周期1μs、繰り返し周波数1kHz及び様々なピーク電流を有する矩形パルスを周囲温度でデバイスに印加した。これらの条件を使って、発明者は、電気的破損の前に、良好なバッチから適切に動作するOSLDに、ほぼ1kA cm-2(しきい値近く)で50パルス、2kA cm-2で20パルス、及び3kA cm-2で10パルスを適用できた。この作業で、約5%の歩留まりを有する約500個のデバイスを製造した。パルス駆動条件下のJ-V-輝度特性は、増幅器(NF,HSA4101)と光電子増倍管(PMT)(C9525-02,浜松ホトニクス)で測定された。PMT応答及び駆動矩形波信号の両方が、マルチチャンネルオシロスコープ(Agilent Technologies,MSO6104A)で測定された。補正率と共にPMT応答EL強度から計算した光子の数を、電流から計算した注入電子の数で割ることによってηEQEを計算した。レーザパワーメータを(OPHIR Optronics Solution Ltd.,StarLite 7Z01565)使って出力電力を測定した。
【0077】
スペクトルを測定するため、マルチチャンネル分光計(PMA-50,浜松ホトニクス)に接続されデバイスから3cm離された光ファイバによって、デバイス表面に垂直に、光ポンピングOSLDと電気ポンピングOSLDの両方の放射レーザ光を収集した。CCDカメラ(ビームプロファイラWimCamD-LCM,DataRay)を使ってOSLDのビームプロファイルを確認した。光ポンピング条件下のOSLD-6及びOSLの特性を決定するために、窒素ガスレーザ(NL100,N
2レーザ,Stanford Research System)からのパルス励起光を、レンズとスリットを通して、デバイスの6×10
-3cm
2領域に収束させた。励起波長は337nm、パルス幅は3ns、繰り返し率は20Hzであった。励起光は、デバイス平面の法線に対して約20°でデバイスに入射した。1組のニュートラルフィルタを使って励起強度を制御した。
図10の分光蛍光計(FP-6500,JASCO)と
図6の分光計(PMA-50)を使って定常状態PL分光を監視した。近視野光学素子(A4859-06,浜松フォトニクス)を備えたレーザビームプロファイラ(C9334-01,浜松フォトニクス)を使って、OSLとOSLD-6の近視野像を撮影し、同じプロファイラと近視野光学素子(A3267-11,浜松フォトニクス)を使ってOSLの遠視野像を撮影した。
【0078】
電気レーザ発振しきい値の下限は、次の式を使って光学しきい値から決定された。
【0079】
【0080】
ここで、P
th、λ、h、c、η
out、φ
PL、η
EQE及びeはそれぞれ、光ポンピングしきい値、波長、プランク定数、光速、デバイス出力結合率、BSBCzのフォトルミネッセンス量子収率、BSBCz OSLDの外部量子効率、及び電気素量である。この式は、単に、電気励起条件下で生成された一重項の割合がP
thの光励起条件下のものと等しくなければならない電流密度を求める。この式は、高電流密度で電気励起条件下で起こる付加的な損失メカニズムを考慮しない。発明者は、η
out20%とφ
PL76%を使用した(表2から)。η
EQEとJをよく一致させるために
図3dの幾つかの値を繰り返し、発明者は最終的にη
EQEを2.1%に決定した。2の係数は、この論文でOSLDの電流密度を計算するときに、発明者が、全回折格子領域の半分の露出ITO領域だけを使ったことを考慮することである。
【0081】
(デバイスモデリングとパラメータ)
Comsol Multiphysics 5.2aソフトウェアを使って共振DFB空胴の光学シミュレーションを行った。Comsolソフトウェアの無線周波数モジュールで有限要素法(FEM)を使って、全ての周波数のヘルムホルツの式を解いた。各層はその複素屈折率と厚さによって表された。計算ドメインは、一次回折格子によって取り囲まれた二次回折格子からなる1つのスーパーセルに制限された。横境界にフロケ周期境界条件を適用し、上及び下ドメインに散乱境界条件を使用した。TMモードは、(金属吸収によって)TEモードよりも受ける損失が抑制されるので、TEモードだけを検討した。
【0082】
OSLD内の電荷輸送は、ポアソン式に結合された二次元時間非依存ドリフト拡散方程式と、SilvacoからのTechnology Computer Aided Design(TCAD)ソフトウェアを使用する電荷キャリアの連続方程式を使って表された。放物線状態密度(DOS)とマクスウェル・ボルツマン統計を使って電子及び正孔濃度を表した。ガウス分布を使って有機半導体内のトラップ分布をモデル化した37。電荷キャリア移動度は、場依存でプール-フレンケル形態を有すると仮定した38,39。このモデルでは、エネルギーディスオーダは考慮されておらず、したがって、電荷キャリア移動度から電荷キャリア拡散定数を計算するためにアインシュタインの関係式の妥当性を仮定した。再結合率Rは、ランジュバンモデルによって与えられた40。励起子拡散、発光及び無放射プロセスを考慮して一重項励起子の連続方程式を解いた。
【0083】
正孔オンリーデバイスと電子オンリーデバイスの実験データ(
図4のエネルギー線図及び構造)をフィッティングして電荷キャリア移動度を抽出した。シミュレーションで使用されたフィット移動度パラメータと他の入力パラメータの値を表2に示す。抽出された値を使って、構造ITO/20重量%Cs:BSBCz(10nm)/BSBCz(190nm)/MoO
3(10nm)/Alを有するバイポーラOLEDデバイスをシミュレートした。カソード(ITO/20重量%Cs:BSBCz)の仕事関数は2.6eVであり、アノード(MoO
3/Al)の仕事関数は5.7eVであった。OSLDの電気特性に対するDFB回折格子の影響を計算し、基準デバイス(回折格子なし)と比較した。次の式を使って、S(x,y)と光学モード強度|E(x,y)|
2からモード利得g
mを計算した。
【0084】
【0085】
ここで、Lは空胴長(二次回折格子領域のみ)、dは活性膜厚である。
【0086】
OptiFDTDソフトウェアパッケージ(Optiwave)を使って近視野及び遠視野像をシミュレートした。近視野像は、FDTD法を使ってシミュレートされた。これらの像から、フラウンホーファー近似を使って遠視野像を計算した。完全一致層と周期的条件を境界条件として使用した。
【0087】
【0088】
εrは、材料の比誘電率である。EHOMOとELUMOはそれぞれ、最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位である。NHΟΜΟとNLUMOは、HOMO及びLUMO準位の状態密度である。Ntpは、総トラップ密度であり、Etpは、HOMO準位より上のトラップのエネルギー深さであり、σtpはガウス分布の幅である。μn0とμp0は、ゼロ電界移動度である。Fn0とFp0はそれぞれ電子と正孔の特性電界である。krは放射崩壊定数、knrは無放射崩壊定数である。φPLはフォトルミネセンス量子収率である。Lsは励起子拡散距離である。近似として、BSBCz:Csの移動度をBSBCzのものと同じに設定し、その結果、実験データとの適合が良好になり、したがって移動度を更に改良しなかった。