(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】分離膜用不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/10 20060101AFI20240418BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20240418BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240418BHJP
B01D 71/66 20060101ALI20240418BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20240418BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20240418BHJP
D21H 27/08 20060101ALI20240418BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20240418BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D71/48
B01D71/26
B01D71/66
D04H1/4374
D04H1/732
D21H27/08
D21H27/30 B
D21H27/00 E
(21)【出願番号】P 2023502207
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003206
(87)【国際公開番号】W WO2022181195
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2021027053
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】591244199
【氏名又は名称】廣瀬製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190067
【氏名又は名称】續 成朗
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 泉
(72)【発明者】
【氏名】ビン イスマイル イドゥアン
(72)【発明者】
【氏名】津幡 貴子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 成隆
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-005576(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049231(WO,A1)
【文献】特開平04-317729(JP,A)
【文献】特開2000-024659(JP,A)
【文献】特開2015-208881(JP,A)
【文献】特公平04-021526(JP,B2)
【文献】特公平05-035009(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/14-18
B01D 61/00-71/82
B32B 29/00
C02F 1/44
D04H 1/425-4382
D04H 1/732
D21H 3/00-26
D21H 27/30-42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる分離膜用不織布において、
製膜用塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層と、
該ラプラス力が小さい裏面層及び任意的な中間層を有し、
前記表面層と前記裏面層及び任意的な中間層の厚さ方向の構成比(表面層の厚みと裏面層及び任意的な中間層の厚みの比)が5:5~9:1であり、
前記表面層、前記裏面層及び任意的な中間層は延伸繊維からなり、
前記延伸繊維はポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ナイロン610繊維、ナイロン612繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維及びこれらの混合物、並びに、天然パルプ及びレーヨン繊維からなる群より選択される1種以上であり、
製膜時の塗布溶液の塗布面が前記表面層の面であ
り、
以下の式1で定義されるヤング・ラプラスの式で求められる表面層の圧力差と、その下に位置する裏面層もしくは任意的な中間層の圧力差との差が3kPa以上となるように構成されてなることを特徴とする分離膜用不織布基材。
ΔP=2γ/R (式1)
(上記式1中、ΔPは圧力差であり、γは塗布溶液の表面張力であり、Rは表面層、裏面層もしくは任意的な中間層の細孔半径であり、該細孔半径は、該表面層、裏面層もしくは任意的な中間層の平均細孔径の1/2の値である。)
【請求項2】
前記表面層は、その下に位置する裏面層もしくは任意的な中間層よりも平均細孔径が小さく、前記表面層の平均細孔径と前記裏面層もしくは任意的な中間層の平均細孔径の差が0.5μm以上であることを特徴とする
請求項1に記載の分離膜用不織布基材。
【請求項3】
前記表面層は、繊維径の小さい1種以上の細繊維と前記細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維から構成され、前記裏面層及び任意的な中間層は、実質的に前記太繊維のみからなる部分を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分離膜用不織布基材。
【請求項4】
前記細繊維の繊維径は0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲であり、前記太繊維の繊維径は0.5dtex超10dtex以下の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の分離膜用不織布基材。
【請求項5】
前記細繊維の繊維径は0.05dtex以上0.5dtex以下の範囲であり、前記太繊維の繊維径は0.5dtex超3.5dtex以下の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の分離膜用不織布基材。
【請求項6】
前記
分離膜用不織布の厚さは30~300μmの範囲であり、前記表面層と前記裏面層及び任意的な中間層の厚さ方向の構成比(表面層の厚みと裏面層及び任意的な中間層の厚みの比)が
5:5~8:2であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の分離膜用不織布基材。
【請求項7】
前記表面層、裏面層及び任意的な中間層を構成する繊維が層間で連続的に絡み合ってなる部分を含んでなることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の分離膜用不織布基材。
【請求項8】
前記表面層、裏面層及び任意的な中間層
を構成する延伸繊維の種類が互いに異なることを特徴とする請求項
1~7のいずれかに記載の分離膜用不織布基材。
【請求項9】
前記表面層、裏面層及び任意的な中間層を構成する延伸繊維の種類が、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の分離膜用不織布基材。
【請求項10】
不織布の濡れ性をコントロールする表面処理が施されてなることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の分離膜用不織布基材。
【請求項11】
繊維径の小さい1種以上の細繊維と前記細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維から構成される表面層用の繊維分散液と、前記太繊維のみから構成される任意的な中間層用の繊維分散液と、前記太繊維のみから構成される裏面層用の繊維分散液とを、湿式抄紙法を用いて順次抄紙することを含むことを特徴とする
請求項1~9のいずれかに記載の分離膜用不織布基材の製造方法。
【請求項12】
前記表面層用の繊維分散液は、繊維径が0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維を1~50wt%、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維を50~99wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記裏面層用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維を100wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記細繊維及び前記太繊維の繊維長は1~10mmの範囲であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面層用の繊維分散液は、繊維径が0.05dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維を5~50wt%、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維を50~95wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記裏面層用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維を100wt%の割合で水中に分散させたものであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抄紙することによって得られた不織布に表面処理を施して不織布の濡れ性をコントロールすることをさらに含むことを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分離膜用不織布及びその製造方法に関する。本発明の分離膜用不織布は精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)などの分離膜を製造するための樹脂溶液塗布用の支持体(基材とも呼ばれる。)として用いられる。
【背景技術】
【0002】
MF膜、UF膜、NF膜、RO膜などの分離膜は、食品・医療・排水処理など様々な用途で利用されており、特に近年では、飲料水製造分野、例えば上水処理過程や海水淡水化による上水製造や、活性汚泥法などの下廃水処理分野においても多く使われるようになってきている。これらの分離膜の製造では、不織布に樹脂溶液を塗布し、これを固化させるプロセスが用いられる。その際、支持体として使用される不織布は、樹脂層の相分離の出来を左右し、その結果、得られる分離膜の阻止率や液体の透過性能に大きな影響を及ぼす。また、樹脂溶液の塗布工程は、製品となる分離膜のコストや処理性能にも影響する。例えば、薄くても十分な引張強度が得られる不織布は、分離膜モジュールの重量を低下させ、単位重量当たりの膜面積を大きくすることを可能にする。また、少量の樹脂の塗布で分離膜を作製すると、原料コストの軽減が可能になる。このような理由から、不織布の高性能化の研究が各方面で行われてきた。
【0003】
これまでの分離膜用の不織布では、2層又は多層構造を用い、密度の低い面へ樹脂溶液を塗布することで、塗布樹脂を浸透させつつ、密度の高い面で樹脂溶液の裏抜けを防ぐというコンセプトで設計されているものがある。この場合、粘性が大きな樹脂溶液の浸み込み速度を遅くすることで、裏抜けを防止している。特許文献1では、必ずしも密度の記載はないが、表層(樹脂溶液の塗布面)側に太い繊維を混入させ、裏側に細い繊維を用いた2層構造を形成させ、裏側を緻密化させることで、樹脂溶液(キャスト液)の裏抜けを防ぐことが提案されている。
【0004】
非対称膜の製造では、樹脂溶液を塗布後、凝固浴に浸すことで多孔膜を製造するが、樹脂溶液の浸み込み速度が速い場合、不織布の搬送速度を速くして、塗布樹脂が裏面に達する前に、凝固浴に浸す必要があった。また、浸み込み速度が速い低粘度の樹脂溶液を用いることができず、即ち、低分子量の樹脂や低濃度の樹脂溶液の塗布には限界があった。樹脂溶液の大半が不織布に浸み込んでしまうと、非溶媒誘起相分離における細孔径制御が困難になる。また、裏面に達した樹脂溶液は、緻密層を形成する傾向があり、分離膜としての溶液の透過流束が下がってしまう原因となる。
【0005】
一方、不織布を圧縮して高密度化すると、その内部に浸み込んだ樹脂溶液が理想的な相分離を起こさず、細孔径が小さくなる傾向があった。即ち、密度の高い面へ浸透した樹脂溶液の相分離における大孔径化を阻害し、結果として分離膜の透過流束の低下につながっていた。
【0006】
特許文献1の支持体では、太い繊維を混入させた表層における塗布樹脂の浸透性が高いので、樹脂の塗布厚みを厚くする必要があり、これも、分離膜の透過流束の低下を引き起こす虞がある。
【0007】
不織布は、既に様々な分離膜の基材として用いられており、樹脂溶液の浸み込みが著しく悪い不織布やピンホールが多いものは、実用化されていない。従来の乾式ウエブで得られる不織布にはピンホールが多く、樹脂溶液が裏抜けする場合や泡抜けが悪い場合があり、分離膜の製造条件を制限している。また、裏抜けを抑える目的で不織布の表面にフッ素加工を施した基材も用いられているが、裏抜けを完全に防止するには至っておらず、樹脂溶液の塗りムラが生じやすい。これらの問題は、現在も樹脂溶液の使用条件を制限している。
【0008】
乾式ウエブで得られる不織布のピンホールの問題を解決するために、湿式ウエブを組み合わせる方法が考案されている。例えば、特許文献2では、比較的細い繊維を用いて湿式ウエブにより高密度の不織布を作製し、これをロール状に巻き取り、その上に比較的太い繊維を用いて乾式ウエブにより低密度の不織布を形成し、最後に熱カレンダー処理を施すことで、2層型の不織布を製造することが提案されている。湿式ウエブを組み合わせることでピンホールは減少するが、重ね合わせにより単位面積当たりの重量が大きくなる。また、強度の異なる不織布が層を形成しているため、積層方向の引張強度が弱く、薄膜化が困難になる。さらに、上下の層の一体化が十分ではない場合、条件によっては、層間剥離を起こす。なお、特許文献2では、裏面と表面の区別が記載されていない。
【0009】
一方、特許文献3は、分離機能膜を有する分離膜に関するものであるが、その支持体としては、密度が大きな表層と密度が小さな裏層をもつ不織布が適していることが記載されている。これは、密度が大きな表層から密度が小さな裏層に液体が流れる際、速度が急速に遅くなるため、樹脂溶液が裏面まで達しないという考え方であり、エンボス加工などで裏面に凹部を作ることが重要とされている。一部、カレンダー加工における上下のロール温度を制御して、裏面の熱圧縮を少なくする方法が採用されているが、不織布の内部構造に関する情報は、密度以外に示されていない。即ち、特許文献3には、不織布の内部の繊維のサイズや細孔径に関する情報がなく、細孔を制御する技術は開示されていない。
【0010】
特許文献2のような2層構造では、引張強度や層間剥離の問題があることを説明したが、特許文献4では、これまでより太い繊維を用いて、不織布と塗布樹脂との接着力を向上させることが提案されている。特許文献4は、特許文献1に記載の分離膜支持体の課題を解決しようとするものでもあり、長期使用における支持体(不織布)と分離機能層(樹脂層)の剥離を防止する目的で、断面が円形でない異形断面繊維を表面層に混ぜ込んでいる。これにより、接着力向上は達成しうるものの、異形断面繊維の起毛により塗布膜(分離膜)のピンホールを発生させ分離膜表面に欠陥が発生するという問題も生じうる。即ち、分離膜の安定生産という観点では、未だ不満足なものとなっている。
【0011】
特許文献5では、長繊維を用いて多層構造とし、裏抜け防止性と透水性を両立する検討が行われている。長繊維での抄紙によって得られる不織布は強度には優れるものの、地合いが悪く(不織布を構成する繊維密度が偏在しやすく)、裏抜け防止性や透水性にバラツキが生まれやすく、生産の安定性の観点から問題が多い。また、長繊維を使用して裏抜けを防止する場合、繊維を多く使用する必要がありコスト面でも不利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開昭60-238103号公報
【文献】特開昭61-222506号公報
【文献】特開2003-245530号公報
【文献】特開平11-347383号公報
【文献】国際公開第2010/126113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した従来技術における課題を解決せんとするためのものであり、これまでトレードオフの関係にあった塗布樹脂(不織布に塗布された分離膜製膜用の樹脂溶液)の裏抜け防止性、及び製造される分離膜の高い透水性の二つを両立させた分離膜用不織布を提供することを課題とする。また、本発明は、このような分離膜用不織布の製造方法を提供することも課題とする。これまでにも樹脂溶液の塗布面・非塗布面での不織布の構造を変えるというコンセプトは存在したものの、構造の異なる複数の層を貼り合わせ加工することによる界面の高密度化、不織布の製造過程で熱圧縮が施されていることによる分離膜の透水性の低下、不織布の高密度化による塗布樹脂の相分離の阻害、などの問題が発生していた。また、塗布樹脂と不織布の接着強度向上のために太い繊維を用いる手法も取られてきたが、不織布の表面(樹脂溶液の塗布面)の均質性を下げ、太い樹脂の起毛による塗布樹脂の塗布性に悪影響を与え、分離膜におけるピンホールの形成の原因になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
本発明の分離膜用不織布基材の一態様は、2層以上からなる分離膜用不織布において、製膜用塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層と、ラプラス力が小さい裏面層及び任意的な中間層を有し、製膜時の塗布溶液の塗布面が前記表面層の面であることを特徴とする。
本発明の分離膜用不織布基材の別の態様は、2層以上からなる分離膜用不織布において、製膜用塗布溶液の塗布面を有する表面層と、裏面層及び任意的な中間層を有し、前記表面層は、その下に位置する裏面層もしくは任意的な中間層よりも平均細孔径が小さく、前記表面層の平均細孔径と前記裏面層もしくは任意的な中間層の平均細孔径の差が0.5μm以上であることを特徴とする。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記表面層は、繊維径の小さい1種以上の細繊維と前記細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維から構成され、前記裏面層及び任意的な中間層は、実質的に前記太繊維のみからなる部分を含んで構成されても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記細繊維の繊維径は0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲であり、前記太繊維の繊維径は0.5dtex超10dtex以下の範囲であっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記細繊維の繊維径は0.05dtex以上0.5dtex以下の範囲であり、前記太繊維の繊維径は0.5dtex超3.5dtex以下の範囲であっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記不織布の厚さは30~300μmの範囲であり、前記表面層と前記裏面層及び任意的な中間層の厚さ方向の構成比(表面層の厚みと裏面層及び任意的な中間層の厚みの比)が1:9~9:1であっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記表面層、裏面層及び任意的な中間層を構成する繊維が層間で連続的に絡み合ってなる部分を含んでなっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、前記不織布の材質はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンとポリエチレンの複合素材(PP/PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の材質であっても良い。ここで、前記表面層、裏面層及び任意的な中間層の材質は同じであっても良く、互いに異なっていても良い。
本発明の分離膜用不織布基材において、不織布の濡れ性をコントロールする表面処理が施されてなっても良い。
【0015】
本発明の分離膜用不織布基材の製造方法は、繊維径の小さい1種以上の細繊維と前記細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維から構成される表面層用の繊維分散液と、前記太繊維のみから構成される任意的な中間層用の繊維分散液と、前記太繊維のみから構成される裏面層用の繊維分散液とを、湿式抄紙法を用いて順次抄紙することを含むことを特徴とする。
本発明の分離膜用不織布基材の製造方法において、前記表面層用の繊維分散液は、繊維径が0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維を1~50wt%、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維を50~99wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記裏面層用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維を100wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記細繊維及び前記太繊維の繊維長は1~10mmの範囲であっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材の製造方法において、前記表面層用の繊維分散液は、繊維径が0.05dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維を5~50wt%、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維を50~95wt%の割合で水中に分散させたものであり、前記裏面層用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維を100wt%の割合で水中に分散させたものであっても良い。
本発明の分離膜用不織布基材の製造方法において、前記抄紙することによって得られた不織布に表面処理を施して不織布の濡れ性をコントロールすることをさらに含んでも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る分離膜用不織布基材によれば、2層以上からなる分離膜用不織布において、製膜用塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層とラプラス力が小さい裏面層及び任意的な中間層を有し、製膜時の塗布溶液の塗布面を前記表面層の面とすることにより、これまでトレードオフの関係にあった塗布樹脂の裏抜け防止、及び製造される分離膜の高い透水性の二つを両立することができる。
また、本発明の別の態様に係る分離膜用不織布基材によれば、2層以上からなる分離膜用不織布において、製膜用塗布溶液の塗布面を有する表面層と、裏面層及び任意的な中間層を有し、前記表面層は、その下に位置する裏面層もしくは任意的な中間層よりも平均細孔径が小さく、前記表面層の平均細孔径と前記裏面層もしくは任意的な中間層の平均細孔径の差が0.5μm以上であることにより、これまでトレードオフの関係にあった塗布樹脂の裏抜け防止、及び製造される分離膜の高い透水性の二つを両立することができる。
より具体的には、本発明の分離膜用不織布基材では、樹脂溶液の塗布面側の表面層に、繊維径の小さい1種以上の細繊維が組み込まれていることで、表面層が大きなラプラス力を発揮し、また、表面層の平均細孔径がその下に位置する裏面層もしくは任意的な中間層の平均細孔径よりも0.5μm以上小さくなり、塗布樹脂が実質的に表面層域のみに浸み込むことで、塗布面の上(表面層の面上)に樹脂溶液を残すことができ、非溶媒誘起相分離による溶媒交換が容易になり、高性能の分離膜を作製することができる。また、裏面層及び任意的な中間層が、実質的に、細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維のみからなる部分を含んで構成されていることで、樹脂溶液の裏抜けを防ぐことが可能であり、樹脂溶液の塗布工程における分離膜へのピンホール等の欠陥の発生を抑えることができる。
【0017】
また、本発明の分離膜用不織布基材の製造方法によれば、分離膜の製膜時に塗布溶液の塗布面となる表面層の面(最表面)が比較的細い繊維で覆われるため、抄紙工程で起毛が発生してもその後の熱処理で起毛を抑えることが可能である。そのため、本発明の分離膜用不織布基材を用いて作製される分離膜の品質が向上する。
【0018】
さらに、本発明の分離膜用不織布基材によれば、従来の不織布と比較して少量の塗布溶液で分離膜を製造することができ、塗布樹脂の削減によるコストダウン、単位重量あたりの液体透過性能の向上が可能になる。
【0019】
加えて、本発明の分離膜用不織布基材によれば、樹脂溶液の塗布面側の表面層に、太繊維が混ぜられていることで、塗布溶液を固化させた場合のアンカー効果が高まり、逆洗工程の使用環境に耐えうる。
【0020】
また、本発明の分離膜用不織布基材の製造方法によれば、湿式不織布の製造工程における「抄き合わせ法」を使用することで、得られる不織布では、表面層、裏面層及び任意的な中間層を構成する繊維が層間で連続的に絡み合ってなる部分が存在しており、不織布内部の繊維が交絡することにより層間の接着性が向上している。その結果、不織布の製造工程では低い圧縮圧での溶着が可能になり、また、不織布としては引張強度に優れ、剥離しにくい。そのため、本発明の分離膜用不織布基材によれば、非溶媒誘起相分離により液体の透過性能に優れた分離膜を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の不織布の構造を模式的に示す概念図である。
【
図2】
図1に示す不織布の表面層及び裏面層における細孔径の概念図である。
【
図3】不織布における厚み方向と面内方向の細孔を考慮した細孔径分布の概念図である。(A)本発明の不織布、(B)本発明の不織布に対して表面層と裏面層の細孔径分布が反転した不織布。
【
図4】(A)
図3(A)に示す不織布に製膜用塗布溶液が浸み込んでいく様子を示す模式図である。(B)
図3(B)に示す不織布に製膜用塗布溶液が浸み込んでいく様子を示す模式図である。
【
図5】本発明の不織布の製造工程の一例を示す模式図である。
【
図6】実施例1で作製した不織布を液体窒素中で縦方向(MD)に引き裂いて破断させた試料の光学顕微鏡像である。
【
図7】実施例1で作製した不織布のX線CTスキャン像である。(a)全体像(斜視像)、(b)断面像。
【
図8】実施例1で作製した不織布のSEM像である。(a)細繊維混在部分側の面、(b)太繊維部分側の面、(c)断面、(d)引っ張り破断させた試料の断面、(e)(d)の試料を更に引き伸ばした試料の断面。
【
図9】実施例1で作製した不織布のX線CTスキャン像である。(a)表面層側の表面から3分の1の深さの像、(b)表面層側の表面から3分の2の深さ(裏面層側の表面から3分の1の深さ)の像。
【
図10】実施例1で作製した不織布のX線CTスキャン像から細繊維の位置を解析した結果を示す図である。(a)断面像から細繊維の位置を解析する手順を説明する図、(b)解析した238の細繊維の分布を示すグラフ。
【
図11】実施例1~3で作製した不織布における表面層の割合(不織布全体の厚みに対する表面層の厚みの割合)と平均細孔径の値をプロットしたグラフである。
【
図12】実施例4で作製した6種類の限外濾過膜のSEM像である。(a)限外濾過膜(4-1-1)、(b)限外濾過膜(4-1-2)、(c)限外濾過膜(4-2-1)、(d)限外濾過膜(4-2-2)、(e)限外濾過膜(4-3-1)、(f)限外濾過膜(4-3-2)。
【
図13】実施例5で作製した限外濾過膜(5-3-1)の表面のSEM像である。
【
図14】実施例5で作製した限外濾過膜(5-3-1)の性能評価に用いた12の試験片のサンプリング位置を示す模式図である。
【
図15】(A)~(C)実施例6及び比較例1で作製した、撥水加工を施した不織布を用いた吸引ろ過試験の装置構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
従来は、塗布溶液の裏抜けを防止するために、不織布の一部を緻密化させていた。不織布の製造過程で施される熱圧縮などで潰された緻密層は、不織布への塗布溶液の浸み込み速度を遅らせることができる。これは、バリア層の形成を不織布の設計指針としている。
【0023】
一方、本発明では、必ずしも密度が高い層を形成するのではなく、塗布溶液を含侵した時のラプラス力の大きな層を形成することを不織布設計のコンセプトとしている。必ずしも、緻密な層や密度の高い層を形成する必要はない。
【0024】
最初に、本発明の不織布の構造の模式的な概念図を
図1に示す。本発明の不織布(分離膜用不織布)10は、製膜用塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層11とラプラス力が小さい裏面層12を有する。不織布10は、製膜時の塗布溶液の塗布面が表面層11の面11aである。但し、このことを以て、裏面層12の面12aを塗布面として分離膜を作製することを否定するものではなく、また、そのようにして分離膜を作製することができないことを意味するものでもない。また、
図1では、分かりやすさのために、不織布10が表面層11と裏面層12の2層構造である例を示しているが、本発明の分離膜用不織布は、2層より多い多層構造であっても良い。不織布が3層以上の多層構造である場合、当該不織布は、表面層と裏面層の間に1以上の任意的な中間層(図示せず)を有する。
【0025】
表面層11は、繊維径の小さい1種以上の細繊維FFと、細繊維FFよりも繊維径の大きい1種以上の太繊維TFから構成されている。裏面層12は、実質的に太繊維TFのみからなる部分を含んで構成されている。また、不織布が上記任意的な中間層を有する場合、当該中間層は、実質的に太繊維のみからなる部分を含んで構成される。
【0026】
言い換えると、不織布10では、表面層11に細繊維FFが混ざっており、表面層11にも裏面層12にも全体に太繊維TFが存在している。特に密度が異なる層がある訳ではなく、密度分布は一様でも構わない。細繊維FFは、同一の径の繊維である必要はなく、複数の異なる径の細繊維が混じっていても良い。また、太繊維TFも同一の径である必要はなく、複数の異なる径の太繊維が混じっていても良い。
図1では、例示として、細繊維FFが1種類であり、太繊維TFが、繊維径の異なる2種類の繊維TF1、TF2である例を示している。
【0027】
本発明の不織布10は、表面層11に、細繊維FFが混在する部分(以下、細繊維混在部分)A1を含み、裏面層12に、実質的に太繊維TFのみからなる部分(以下、太繊維部分とも称する。)A2を含む。細繊維混在部分A1と太繊維部分A2の中間には、明確な境界がなく、主として太繊維TFが連続的に絡み合っている。これを模式的に示すために、
図1の概念図では、細繊維混在部分A1と太繊維部分A2の間の部分(以下、便宜的に絡み合い部分と称する場合がある。)に符号A3を付して明記しているが、絡み合い部分A3は、不織布10のX線CTスキャンや走査電子顕微鏡(SEM)観察や光学顕微鏡観察で明確な境界が観察されないことを特徴としている。なお、細繊維混在部分A1と太繊維部分A2の間の繊維の絡み合いは、主として太繊維TF同士の絡み合いであり、これにより不織布10に力学的強度を与えている。そのため、不織布10は引張強度に優れ、層間剥離が生じにくい。また、裏面層12の太繊維部分A2では、不織布10の製造工程などに起因する不可避的な細繊維FFの混入が見られる場合がありうるが、そのような細繊維の混入は実質的に無視することができ、不織布10の性能には影響しない。言い換えると、本発明の不織布10では、太繊維部分A2には実質的に細繊維FFは存在しないことを特徴とする。
【0028】
即ち、本発明の不織布10は、不織布を構成する太繊維TFの絡み合いの程度においては、表面層11と裏面層12及びその中間部分で大きな違いがなく、不織布10全体として見た場合、単に表面層11に細繊維FFが混入していることを特徴としている。
【0029】
本発明でいう細繊維FFとは、繊維径が0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲の繊維である。本発明でいう太繊維TFとは、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の繊維である。太繊維TFの繊維径は、好ましくは、0.5dtex超6.5dtex以下の範囲にあり、より好ましくは、0.5dtex超5.0dtex以下の範囲にあり、さらに好ましくは、0.5dtex超3.5dtex以下の範囲にある。太繊維TFの繊維径がより狭い範囲内にあると、不織布10の表面層11とその下に位置する裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径を制御しやすく、塗布溶液を含侵した時の表面層11と裏面層12とのラプラス力の差、及び/又は、表面層11と裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径の差が得られやすい。
【0030】
細繊維FF及び太繊維TFの繊維長は、1~10mmの範囲にあることが好ましい。不織布10を構成する細繊維FF及び太繊維TFの繊維長がこの範囲内にあると、目的とする効果が得られやすく、また、不織布10の製造コストの面でも有利である。
【0031】
不織布10の全体の厚みは、30~300μmの範囲であり、より好ましくは、60~200μmの範囲にあり、さらに好ましくは、80~140μmの範囲にある。このような厚みの範囲を満たす本発明の不織布10は、分離膜用の不織布基材として好適であり、取扱い性に優れる。
【0032】
また、表面層11には、1~50wt%の割合で細繊維FFが混在し、表面層11の厚みは、不織布10の全体の厚みの10~90%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、表面層11には、5~20wt%の割合で細繊維FFが混在し、表面層11の厚みは、不織布10の全体の厚みの50~80%の範囲にあるのが良い。言い換えると、不織布10において、表面層11と裏面層12の厚さ方向(
図1の紙面上下方向)の構成比(表面層11の厚みと裏面層12の厚みとの比)は、1:9~9:1であることが好ましく、5:5~8:2であることがより好ましい。なお、不織布が任意的な中間層を含む場合、表面層の厚みと裏面層及び当該中間層の厚みの比が、1:9~9:1であることが好ましく、5:5~8:2であることがより好ましい。
【0033】
ここで、不織布10における表面層11と裏面層12の厚さ方向の構成比は、不織布10のX線CTスキャンや走査電子顕微鏡(SEM)観察や光学顕微鏡観察に基づいて算出しても良い。また、不織布10の製造条件が既知である場合には、当該製造条件を用いて表面層11と裏面層12の厚さ方向の構成比を推定しても良い。例えば、不織布が、同じ材質で構成された表面層と裏面層の2層構造であり、後述する実施例のように湿式抄紙法を用いて順次抄紙することによって作製されたものである場合、抄紙工程における表面層及び裏面層の坪量がそれぞれXg/m2及びYg/m2であれば、当該不織布における表面層と裏面層の厚さ方向の構成比は、X:Yであると推定することができる。但し、表面層と裏面層の材質が異なる場合は、製造過程で表面層と裏面層に加わる圧縮の程度が異なることなどから、上記のように表面層と裏面層の厚みを推定することは容易でない場合がある。そのような場合は、X線CTスキャン像から細繊維の分布を評価することにより、表面層と裏面層の厚みを推定するのが良い。
【0034】
不織布10の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンとポリエチレンの複合素材(PP/PE)などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などのエンジニアリングプラスチック繊維、天然パルプやレーヨン繊維、これらの樹脂を主体とする共重合体もしくは混合物などの繊維が好ましく使用される。中でも、ポリエステル系繊維は、強度や寸法安定性が高いため好ましく使用される。また、表面層11の材質と裏面層12の材質は同じであっても良く、異なっていても良い。不織布が任意的な中間層を含む場合も同様である。
【0035】
図2には、本発明の不織布10の表面層11及び裏面層12における細孔径の概念図を示した。上述したように、本発明の不織布10では、表面層11に細繊維が混ざっていることで、全体的(巨視的)には不織布10を構成する繊維の絡み合いの程度や密度が大きく変わることなく、部分的(微視的)に細孔径が異なっており、表面層11における細孔径が裏面層12よりも小さくなっている。なお、
図2では、分かりやすさのために、厚さ方向に延びる灰色の長方形の間の空間が細孔を意味し、表面層11において細繊維が混在する部分(即ち、細繊維混在部分A1)では細孔径が小さくなっており、裏面層12の太繊維部分A2では実質的に太繊維のみからなる構成により、細繊維混在部分A1よりも細孔径が大きくなっている様子を模式的に示している。なお、細繊維混在部分A1と太繊維部分A2の間の絡み合い部分A3では主として太繊維TFが連続的に絡み合っているため、太繊維部分A2と同様に細孔径が比較的大きい。
図2では細孔径の違いを明確に示しているが、この場合、細孔径は、表面層11の細繊維混在部分A1において、裏面層12の太繊維部分A2よりも僅かに小さければよく、表面層11と裏面層12の細孔径の違いは、5~15%あれば、十分である。裏面層12に対して表面層11の細孔径が著しく小さくなると、非溶媒誘起相分離による樹脂溶液の多孔化が阻害される場合がある。
【0036】
さて、
図2に模式的に示したような構造の不織布の細孔の中での樹脂溶液の流れについて説明する。1本の細孔の中の樹脂溶液の流れは、ハーゲン・ポアズイユ流として考えるべきである。細孔内の流量は、細孔半径(R)の4乗に比例し、圧力差(ΔP)に比例し、粘度(ρ)や流路の長さ(L)に反比例する。但し、単位面積当たりの流量(流束)で考えると、細孔半径(R)の2乗に比例することになる。
【0037】
ここで、樹脂溶液が不織布に浸み込む駆動力は、毛管圧(ΔP)である。毛管圧は、細孔半径に反比例する。即ち、細孔半径が小さくなると、駆動力である毛管圧は反比例して大きくなる。従って、毛管圧を駆動力とする単位面積当たりの流束は細孔半径(R)に比例し、裏面への到達時間は、細孔半径(R)に反比例する。不織布のような多孔体の場合、細孔が様々に屈曲しており、屈曲度(tortuosity)を考慮した様々なモデルが考えられている(例えば、R. Kondo, M. Daimon, S. Ohsawa, Gypsum & Lime, No.112, 14, 1971.を参照されたい)。
【0038】
実際の不織布では、
図2の模式図のような単純な厚み方向の流路だけではなく、繊維と繊維の間に様々な隙間があり、その隙間を樹脂溶液が浸み込んでいく。実際の不織布の大きな特徴は、シートの面内に繊維が積み重なっており、横方向(面内方向)にも流路が形成されていることである。これを
図2の模式図に付け加えると、
図3のようになる。ここで、
図3(A)は、本発明の不織布10の概念図であり、
図3(B)は、本発明の不織布に対して表面層と裏面層の細孔径分布が反転した不織布、即ち、裏面層に細繊維が混ざっている不織布の概念図である。
図3(A)や
図3(B)では、分かりやすさのために、横方向(面内方向)の細孔を縦方向(厚み方向)の細孔よりもやや小さく示しているが、後述する実施例で作製した不織布においても、走査電子顕微鏡(SEM)像やX線CTスキャン像から、横方向の細孔が縦方向の細孔よりもやや小さい様子が確認されている。ここで、
図3(A)に示す不織布10では、上側に位置する層(表面層)の面が塗布溶液の塗布面であり、ラプラス力の大きな面である。
【0039】
ラプラス力とは、ヤング・ラプラスの式(式1)で定義される圧力差と考えてよく、毛管現象の毛管圧と同義である。
ΔP=2γ/R (式1)
【0040】
このラプラス力は、不織布の中に形成されている5μm程度の細孔では非常に大きい。例えば、樹脂溶液の溶媒にしばしば用いられるN-メチルピロリドン(NMP)では、25℃での表面張力(γ)が41mN/mと大きい。ヤング・ラプラスの式(式1)では、表面張力(γ)と細孔半径(R)から毛管圧(ラプラス力)が求められる。
【0041】
式1に上記の表面張力と5μmの細孔径(2.5μmの細孔半径)を導入すると、圧力差(ΔP)は32.8×106mN/mになり、これは、32.8kPaと等価である。5.5μmの細孔径では、圧力差(ΔP)は29.8kPaになる。真空と大気圧の差は、100kPaあり、5μmと5.5μmの細孔における毛管力の差圧(3kPa)は、この差の3%に達する。即ち、上述したように表面層11において裏面層12よりも細孔径が僅かに小さい状態(この場合は0.5μm)であれば、表面層11と裏面層12とでラプラス力に有意な差が生じることが分かる。
【0042】
本発明の不織布10の平均細孔径は、20μm以下が望ましく、10μm以下がさらに望ましい。また、表面層11は、その下に位置する裏面層12(任意的な中間層を有する場合には当該中間層)よりも平均細孔径が小さく、表面層11の平均細孔径と裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径の差が0.5μm以上であることが望ましく、当該平均細孔径の差が1.0μm以上であることがさらに望ましい。このような表面層11と裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径の差を有する本発明の不織布10では、表面層11と裏面
層12(もしくは任意的な中間層)とのラプラス力の差がより確実に生じ、分離膜用の不織布基材として好適である。なお、ラプラス力は、不織布(不織布を構成する層)の平均細孔径だけでなく、樹脂溶液の溶媒の表面張力によっても決まるので、理論上は、樹脂溶液の溶媒の表面張力が大きくなれば、表面層11と裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径の差は0.5μmより小さくても良いが、本発明では、
図2及び
図3を参照して説明した不織布の細孔の中での樹脂溶液の流れ、及び、分離膜用の不織布基材としての用途に鑑み、上記の平均細孔径の差は0.5μm以上であることが好ましい。
【0043】
なお、上述したようにして不織布10における表面層11と裏面層12の厚さ方向の構成比を算出もしくは推定可能な場合であっても、本願の出願時点での分析技術では、不織布10のようにマイクロメートルオーダーの厚みを有する2層又は多層の多孔体について、表面層11と裏面層12の平均細孔径をそれぞれ測定し、その差を算出することは実際上困難である。しかし、対象の多孔体(本願の場合は不織布)の製造条件が既知であり、かつ、複数(好ましくは3つ以上)の試験体を作製可能である場合には、後述する実施例のようにして表面層と裏面層の平均細孔径の差を推定することは可能である。平均細孔径の測定方法としては、パームポロメーターを用いるのが一般的であり、バブルポイント法または水銀圧入法が利用できる。不織布の場合には、特にバブルポイント法が好適に用いられ、これにより、表面層と裏面層の平均細孔径の差が0.5μm以上であることが確認できるような試験条件を設けることなども、有効であり得る。
【0044】
図4(A)及び(B)には、それぞれ、
図3(A)及び(B)で示した不織布に樹脂溶液(製膜用塗布溶液)Rが浸み込んでいく様子を模式的に示している。
図4(A)及び(B)において、上段は樹脂溶液Rが塗布された直後の様子であり、下段はさらに時間が経過した後の様子である。
図4(A)に示すように、表面層の細孔径が裏面層よりも小さい場合(即ち、本発明の不織布10の場合)、樹脂溶液Rは、ゆっくりと浸み込んでいく。但し、不織布の中の細孔は、必ずしも均質ではなく、樹脂溶液Rの浸み込みにも揺らぎがある(
図4(A)上段)。しかし、ハーゲン・ポアズイユ流の駆動力は毛管力であり、樹脂溶液Rは細孔径が小さい方に流れようとするため、最初に表面層に樹脂が浸み込み、小さな細孔が埋まったあとに裏面層に樹脂溶液Rが浸み込みだす。また、小さな細孔の中の樹脂溶液Rの流れは遅く、樹脂溶液Rが裏面層の下面に到達するには相当の時間がかかる(
図4(A)下段)。
【0045】
一方、
図4(B)に示すように、表面層の細孔径が裏面層よりも大きい場合には、樹脂溶液Rの初期の浸み込み速度が大きい。また、樹脂溶液Rの浸み込み速度の揺らぎも大きく、一部が裏面層に達する(
図4(B)上段)。毛管力が大きい裏面層に樹脂溶液Rが達すると、裏面層が表面層にある樹脂溶液Rを吸い取るため、樹脂溶液Rの浸み込みが一気に進む(
図4(B)下段)。
【0046】
このような理由から、表面層11に細繊維FFが混ざっている本発明の不織布10は、樹脂溶液Rの浸み込みを遅らせることが可能になる。また、上述したように、ラプラス力の大きさは、樹脂溶液(製膜用塗布溶液)の溶媒の表面張力が関係し、その発現には、不織布の材質が一定程度の濡れ性を有している必要がある。そのため、本発明の不織布10は、不織布の濡れ性をコントロールする表面処理が施されていても良い。このような表面処理としては、例えば親水化処理(プラズマ処理など)が挙げられ、典型的には、不織布10の表面層11に施されるが、裏面層12にも施されていても良い。
【0047】
図1に示される分離膜用不織布10は、湿式不織布でも良く、乾式不織布(スパンボンド法、メルトブロー法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法)でも良い。但し、不織布の表面の平滑さが求められる場合には、湿式不織布が好ましい。さらに好ましくは、貼り合わせ工程がなく、コスト、生産効率、層間の接着強度の面で優れており、1つの抄紙工程でラプラス力の異なる複層構造が得られる「抄き合わせ方式」が良い。
【0048】
以上より、本発明の分離膜用不織布10の製造方法は、繊維径の小さい細繊維FFと細繊維FFよりも繊維径の大きい1種以上の太繊維TFから構成される表面層11用の繊維分散液と、太繊維TFのみから構成される任意的な中間層用の繊維分散液と、太繊維TFのみから構成される裏面層12用の繊維分散液とを、湿式抄紙法を用いて順次抄紙することを含む。
【0049】
本発明の不織布10の製造方法で使用される細繊維FF及び太繊維TFについては、不織布10について上述した通りであるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
より具体的には、本発明の不織布10の製造方法では、表面層11用の繊維分散液は、繊維径が0.01dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維FFを1~50wt%、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維TFを50~99wt%の割合で水中に分散させたものであり、裏面層12用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超10dtex以下の範囲の太繊維TFを100wt%の割合で水中に分散させたものであることが好ましい。このような繊維分散液を用いて、湿式抄紙法を用いて順次抄紙することによって、塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層11とラプラス力が小さい裏面層12(及び任意的な中間層)を有する不織布10を効率よく得ることができる。また、表面層11の平均細孔径が裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径より0.5μm以上小さい構造を有する不織布10をより確実に得ることができる。
【0051】
さらに、表面層11用の繊維分散液は、繊維径が0.05dtex以上0.5dtex以下の範囲の細繊維FFを5~50wt%、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維TFを50~95wt%の割合で水中に分散させたものであり、裏面層12用の繊維分散液及び任意的な中間層用の繊維分散液は、繊維径が0.5dtex超3.5dtex以下の範囲の太繊維TFを100wt%の割合で水中に分散させたものであると、塗布溶液を含侵した時のラプラス力が大きい表面層11とラプラス力が小さい裏面層12(及び任意的な中間層)を有する不織布10を、より確実に得ることができるため、好ましい。また、表面層11の平均細孔径が裏面層12(もしくは任意的な中間層)の平均細孔径より0.5μm以上小さい構造を有する不織布10をより一層確実に得ることができる。
【0052】
図5には、本発明の不織布の製造工程の一例をフローとして模式的に示している。
図5に示すように、本発明の不織布の製造装置の一態様では、2つの円網抄紙機(第1の円網抄紙機51及び第2の円網抄紙機52)が連結されており、第1の円網抄紙機51には、繊維径の小さい1種以上の細繊維と前記細繊維よりも繊維径の大きい1種以上の太繊維から構成される表面層用の繊維分散液DS1が収容されており、第2の円網抄紙機52には、前記太繊維のみから構成される裏面層用の繊維分散液DS2が収容されている。
【0053】
図5に示す態様では、まず、抄紙工程(S510)において、第1の円網抄紙機51に収容された繊維分散液DS1がロール51aによりワイヤーコンベア53に掬い取られることで表面層が抄紙され、次いで、第2の円網抄紙機52に収容された繊維分散液DS2がロール52aによりワイヤーコンベア53に掬い取られることで裏面層が抄紙される。これにより、表面層及び裏面層が湿紙状態で重ね合わせられた後、不織布は、脱水工程(S520)に供される。脱水工程を行うための装置構成は従来公知のものを適用することができ、例えば、ヤンキードライヤでは、通常、加熱したドラムに不織布を巻き付け、乾燥・圧縮させて、シート状とする。次いで、不織布は、熱処理工程(S530)に供される。熱処理工程を行うための装置構成も従来公知のものを適用することができ、例えば、カレンダー装置では、不織布に所定の温度で加熱・圧縮が施される。その後、不織布は巻き取り工程(S540)に供され、目的の不織布が得られる。
【0054】
なお、
図5に模式的に示す装置構成は一例であり、実際の製造装置とは必ずしも一致しない点に留意されたい。例えば、第1の円網抄紙機51と第2の円網抄紙機52の構造や配置は、変更することが可能である。例えば、第1の円網抄紙機51に裏面層用の繊維分散液DS2を収容し、第2の円網抄紙機52に表面層用の繊維分散液DS1を収容しても良く、また、第1の円網抄紙機51と第2の円網抄紙機52の間に3つ目もしくはそれ以上の円網抄紙機を追加し、任意的な中間層用の繊維分散液を収容することで、3層以上の多層構造の不織布を製造するようにしても良い。また、円網抄紙機では、多くのロールを用いてワイヤーコンベヤに繊維を掬い取らせるのが一般的であるが、
図5では、これを単純化して1つのロールで表している。また、脱水工程S520、熱処理工程S530、巻き取り工程S540を行うための装置構成も同様に単純化している。
【0055】
図5に示すように、複数の円網抄紙機を連結させると、異なる種類の原料及び/又は異なる組成の繊維分散液を順次抄紙できる。また、各円網抄紙機で抄紙に用いた繊維は、連続的に互いに絡み合った状態で脱水工程に送られ、その後に熱処理工程が施される。このようにして作られた不織布は、引張強度が強く、層間剥離が起こりにくい。これにより、逆洗浄などで要求される塗布膜との高い接着性が実現する。ラプラス力が大きい表面層とラプラス力が小さい裏面層を有する不織布は、乾式不織布であっても製造可能であるが、
図5に示すように複数の円網抄紙機を連結させる方式であると、より高品質の不織布の製造が可能であるため、好ましい。なお、抄紙機は円網式に限定されず、長網式を用いても良い。
【0056】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は、以下の実施例の範囲に制限されるものではない。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
図5に模式的に示したように2つの円網抄紙機を連結させた製造装置を用いて不織布を作製した。いずれも繊維長が3~5mmのPETショートカットファイバーを用いて、第1の円網抄紙機には延伸繊維0.1dtex 10wt%、延伸繊維0.6dtex 30wt%、延伸繊維1.2dtex 60wt%からなる繊維分散液を入れ、第2の円網抄紙機には延伸繊維0.6dtex 40wt%、延伸繊維1.2dtex 60wt%からなる繊維分散液を入れ、40g/m
2の坪量で第1の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って表面層を抄紙し、次いで、40g/m
2の坪量で第2の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って裏面層を抄紙し、表面層及び裏面層を湿紙状態で重ね合わせた(抄紙工程)。次いで、ヤンキードライヤにより135℃で乾燥・圧縮を行いシート状にした(脱水工程)。その後、ソフトニップ式のカレンダー装置にて260℃で加熱・圧縮し(熱処理工程)、巻き取り工程を経て、実施例1の不織布を得た。これを不織布(1)と呼ぶ。不織布(1)の物性は、坪量80g/m
2、厚さ115μm、密度0.71g/cm
3、引張強度(縦方向、MD:machine direction)103.3N/15mm、引張強度(横方向、CD:cross direction)67.4N/15mm、通気度1.84cm
3/cm
2・s、平均細孔径6.05μmであった。
【0058】
本発明の実施例では、0.1dtexの繊維を細繊維、0.6dtexと1.2dtexの繊維を太繊維と呼ぶ。また、後者を区別する必要がある場合は、0.6dtexの繊維を中太繊維、1.2dtexの繊維を極太繊維と呼ぶ。得られた不織布において、太繊維(中太繊維や極太繊維)と細繊維が混在している部分を、細繊維混在部分と呼び、実質的に太繊維(中太繊維や極太繊維)からなる部分を太繊維部分と呼ぶ。
【0059】
図6には、不織布(1)を液体窒素中で縦方向(MD)に引き裂いて破断させた試料の光学顕微鏡像を示す。3~5mmのPETショートカットファイバーは、不織布(1)中で絡み合っているため、液体窒素中で不織布を破断させても、破断面から引き裂き方向に繊維が数ミリメートル引き伸ばされている。また、円網抄紙機が連続する工程で作製されているため、破断部以外に目立った損傷等は見られず、不織布は一体化した状態を保っている。
【0060】
図7には、不織布(1)のX線CTスキャン像を示す。
図7(a)の全体像(斜視像)では、上側の層(表面層)に多くの細繊維が存在し、下側の層(裏面層)には細繊維はほぼ存在しない。製造過程で裏面層側に細繊維が混入する可能性は完全には否定できないが、そのような細繊維の混入は実質的に無視することができ、不織布の性能には影響しないと考えて良い。なお、細繊維が混在している細繊維混在部分と、実質的に太繊維(中太繊維や極太繊維)からなる太繊維部分は、全体として一体化しており、その間には明確な境界が確認されない。
図7(a)の全体像では、幾つかの太繊維は、細繊維混在部分と太繊維部分を橋渡しするように存在しており、これを矢印で示している。
図7(b)の断面像でも、細繊維混在部分と太繊維部分を橋渡しするように位置する太繊維を矢印で示している。
図7(b)の断面像では、主に繊維の断面が確認されるが、不織布の面内方向で断面像を連続的に観察した場合、多くの太繊維が細繊維混在部分と太細繊部分を橋渡ししていることが確認できた(画像は図示せず)。
【0061】
図8(a)~(e)には、不織布(1)の走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図8(a)は細繊維混在部分側の面(表面層の面)のSEM像であり、
図8(b)は太繊維部分側の面(裏面層の面)のSEM像であり、
図8(c)は断面のSEM像であり、
図8(d)は引っ張り破断させた試料の断面のSEM像であり、
図8(e)は
図8(d)の試料を更に引き伸ばした試料の断面のSEM像である。
【0062】
図8(c)のSEM像(断面像)を見ると、表面層(上側の層)の一部がつぶれており、密度が高いように感じられるが、X線CTスキャン像(
図7参照)で確認されたように、個々の繊維は独立して存在する。従って、
図8(c)のSEM像において密度が高く感じられる部分は、試料をナイフで切断した際の圧力により、細繊維の形状が部分的に崩れたことによるものと考えられる。本実施例で使用したPETの密度を1.38g/ccとすると、0.1dtex、0.6dtex、1.2dtexの繊維の円相当径は、それぞれ、3.04μm、7.44μm、10.05μmとなる。しかし、X線CTスキャンの断面像(
図7(b))では、楕円状の断面が確認されており、特に、不織布の上面及び下面近傍では、製造時の加熱・圧縮のために長径が上記の円相当径に対して1.0~1.9倍ほど大きく観察された。即ち、
図8(a)のSEM像に数値を示した4.82μmの繊維が細繊維、8.08μmや10.5μmの繊維が太繊維(中太繊維)であり、
図8(b)のSEM像では、7.75μmの繊維が太繊維(中太繊維)であり、15.8μmや18.9μmの繊維が太繊維(極太繊維)であると考えられる。
図8(a)のSEM像では、多数の細繊維が観察されるが、
図8(b)のSEM像では、細繊維の繊維径に相当する繊維径を有する繊維は観察されない。
【0063】
また、
図8(c)のSEM像では、上側の層(表面層)には細繊維が多く、切断圧力により、一部の繊維同士が接着している。
図8(d)に示すように、不織布を引っ張り破断させ、全体的に少し引き伸ばされた試料の断面のSEM像を見ると、幾つかの繊維が上側の層(表面層)と下側の層(裏面層)を橋渡ししていることが確認でき、
図8(e)に示すように、更に引き伸ばされた試料の断面では、これがより明確になる。
【0064】
図6~8で明らかなことは、不織布(1)が、構造の異なる複数の層の貼り合わせによって作製されておらず、円網抄紙機を連結させた製造装置を用いて異なる組成の繊維分散液から順次抄紙することによって製造されているため、全体として一体化しており、光学顕微鏡観察やX線CTスキャンや断面のSEM観察で表面層と裏面層の間に明確な境界が確認されないことである。また、不織布の表面層と裏面層を橋渡しするような繊維が存在し、細繊維の存在確率が小さくなる部分では、絡み合いが起こっていることが分かる。表面層と裏面層を比較すると、前者の繊維間の平均距離が短くなっており、液体(樹脂溶液)が浸み込む平均細孔径も小さくなっていることが分かる。
【0065】
図9(a)及び(b)には、それぞれ、不織布(1)のX線CTスキャン像において、表面層側の表面から3分の1の深さの像と、表面層側の表面から3分の2の深さ(即ち、裏面層側の表面から3分の1の深さ)の像を示す。
図9(a)では、多くの細繊維が観察されるが、
図9(b)では、細繊維が殆ど観察されない。
【0066】
図10には、不織布(1)のX線CTスキャン像から62枚の断面像を抽出し、細繊維であると特定された238の繊維の位置を解析した結果を示す。
図10(a)は、抽出した断面像の一例であり、不織布(1)の厚みを10分割し、表面層側から裏面層側に1から10の番号を付して、各区画における細繊維(丸印で示した繊維)の数をカウントしている。
図10(b)は、このようにして得られた238の細繊維の分布を示すグラフである。
【0067】
上述した製造工程から理解されるように、本実施例では、表面層及び裏面層として各々40g/m
2の層を抄紙しており、裏面層用の繊維分散液には細繊維は含まれない。そのため、
図10(b)に示すように、細繊維の殆どは不織布(1)の表面層側に位置しているが、一部は裏面層側にも存在している。但し、表面層と裏面層の厚みが同じである(即ち、区画1~5が表面層であり、区画6~10が裏面層である)と仮定して計算すると、裏面層側の細繊維の存在確率は、全体の2.9%(7/238≒0.029)に過ぎない。また、表面層側の細繊維は、表面層側の表面近傍(区画1)と、裏面層側の繊維と絡み合う部分(区画5)では、存在確率が下がっている。これは、製造時の加熱・圧縮の際に、区画1では、太繊維と比較して細繊維が内側(区画2)にめり込み易く、区画5では、裏面層の太繊維に押されるようにして細繊維が内側(区画4)にめり込み易いためであると考えられる。
【0068】
[実施例2]
実施例1と同様の構成の製造装置を用いて、50g/m2の坪量で第1の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って表面層を抄紙し、次いで、30g/m2の坪量で第2の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って裏面層を抄紙したこと以外は実施例1と同様の製造工程により、実施例2の不織布を得た。これを不織布(2)と呼ぶ。不織布(2)の物性は、坪量80g/m2、厚さ120μm、密度0.68g/cm3、引張強度(MD)97.3N/15mm、引張強度(CD)63.0N/15mm、通気度1.85cm3/cm2・s、平均細孔径5.79μmであった。
【0069】
[実施例3]
実施例1と同様の構成の製造装置を用いて、60g/m2の坪量で第1の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って表面層を抄紙し、次いで、裏面層として20g/m2の坪量で第2の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って裏面層を抄紙したこと以外は実施例1と同様の製造工程により、実施例3の不織布を得た。これを不織布(3)と呼ぶ。不織布(3)の物性は、坪量80g/m2、厚さ126μm、密度0.69g/cm3、引張強度(MD)94.5N/15mm、引張強度(CD)72.0N/15mm、通気度1.64cm3/cm2・s、平均細孔径5.56μmであった。
【0070】
実施例1~3における不織布(1)~(3)において、第1の円網抄紙機と第2の円網抄紙機における繊維分散液中の各延伸繊維の割合(重量%)、及び製造された不織布における延伸繊維の割合(重量%)を表1に纏めた。3つの不織布では、製造に用いた2種類の繊維分散液の組成は同じであるが、第1の円網抄紙機と第2の円網抄紙機から転写される不織布(表面層及び裏面層)の坪量のみが異なるため、不織布(1)~(3)では、表面層及び裏面層の厚みのみが異なると見なすことができる。また、これにより、不織布(1)~(3)中の細繊維の割合(重量%)は、それぞれ、5.0%、6.25%、7.5%となる。
【0071】
【0072】
表2には、実施例1~3における不織布(1)~(3)の物性を纏めた。不織布(1)と比較して、不織布(3)では、厚みが約1割増加している。細繊維と比較して太繊維(より詳しくは、中太繊維)の割合が減少しているにも関わらず、熱処理工程(加熱・圧縮プロセス)で潰れにくくなっているのは、細繊維が太繊維の熱圧縮をやや阻害している可能性がある。但し、不織布(1)~(3)では密度の変化量が小さいことから、表面粗さの影響が厚み測定に影響している可能性も高い。一方、平均細孔径は、不織布(1)より不織布(3)が約1割減少しており、かつ厚い不織布(3)で最も平均細孔径が小さくなっていることから、細繊維の寄与が明確に分かる。
【0073】
【0074】
図11には、不織布(1)~(3)における、表面層の割合(不織布全体の厚みに対する表面層の厚みの割合)と平均細孔径の値をプロットしたグラフを示す。
図11に示すように、不織布(1)~(3)に対応する3点のプロットから線形の近似直線(回帰直線)が得られ、表面層の割合が1(即ち、表面層用の繊維分散液のみから作製された)不織布では平均細孔径が5.07μmであり、表面層の割合がゼロ(即ち、裏面層用の繊維分散液のみから作製された)不織布では平均細孔径が7.04μmであると推定される。従って、実施例1~3で作製した不織布(1)~(3)において、表面層と裏面層の平均細孔径の差は1.97μmであると推定することができ、本発明の不織布の製造方法によって、表面層がその下に位置する裏面層よりも平均細孔径が0.5μm以上小さい不織布が得られることが確認された。
【0075】
[実施例4]
実施例1~3で作製した不織布(1)~(3)をそれぞれA4サイズに切り取り、その片面(表面層の面、又は、裏面層の面)にポリエーテルスルホン(PES)を塗布し、水に浸して非溶媒誘起相分離を行うことで、非対称膜(この場合は、限外濾過膜)を作製した。
【0076】
PESは、粘度数が82g/cm3(0.01g/mLのフェノール/1,2ジクロロベンゼンの1:1溶液を用いてISO1628により測定)の高分子量のものを用い、20wt%のNMP溶液を150μmのワイヤーコーターで塗布し、23℃の凝固浴に浸すことで非溶媒誘起相分離を行った。
【0077】
図12には、このようにして作製した6種類の限外濾過膜のSEM像を示している。各限外濾過膜には3つの数字を付している。例えば、
図12(a)に示す限外濾過膜(4-1-1)の最初の2つの数字は、それぞれ実施例4の4、不織布(1)~(3)の1を示している。最後の数字の1は、不織布の表面層の面にPESを塗布していることを示している。他の例として、
図12(f)に示す限外濾過膜(4-3-2)では、実施例4において、不織布(3)を用いて、裏面層の面に塗布していることを示している。即ち、
図12(a)~(f)に示す6つの限外濾過膜は、いずれも実施例4の限外濾過膜である点で共通し、
図12(a)、(c)、(e)に示す3つの限外濾過膜は、表面層の面にPESを塗布しており、
図12(b)、(d)、(f)に示す3つの限外濾過膜は、裏面層の面にPESを塗布している。また、
図12(a)及び(b)に示す限外濾過膜では不織布(1)を用い、
図12(c)及び(d)に示す限外濾過膜では不織布(2)を用い、
図12(e)及び(f)に示す限外濾過膜では不織布(3)を用いている。
【0078】
PESを表面層の面に塗布した場合、細繊維の含有量(即ち、不織布全体の厚みに対する細繊維混在部分の割合)が増加するにつれて、不織布に浸み込んでいないPESの層が厚くなっている(
図12(a)、(c)、(e))。これは、細繊維の存在により細繊維混在部分において平均細孔径が減少し、より大きなラプラス力が働くことでPES溶液の浸み込みが遅くなっていることを示している。一方、裏面層の面にPESを塗布した場合、不織布に浸み込んでいないPESの層は、ほぼ変化がない(
図12(b)、(d)、(f))。これは、裏面層ではラプラス力が小さいため、太繊維部分から絡み合い部分を介した細繊維混在部分への浸み込み速度にほとんど変化がないことを示している。表1に示したように、不織布(1)~(3)における細繊維の割合(重量%)は、全体としては、不織布(1)と不織布(3)の間でも2.5wt%しか変わらない。また、
図11を参照して説明したように、表面層と裏面層における平均細孔径の差は1.35μmに過ぎない。このような小さな物性変化にも関わらず、PESを塗布する面によって浸み込み速度が大きく異なるのは、表面層における細繊維の混在により、大きなラプラス力が働き、表面層から裏面層へのPES溶液の流れ込み(浸み込み)が抑制されていることに他ならない。
【0079】
なお、実施例4では、高濃度(20wt%)のPES溶液を用いており、凝固浴温度が低い(23℃)ために、得られる限外濾過膜の表面の細孔径が小さい。このため、6つの限外濾過膜について、80kPaの減圧下での水の流束(L/m2h)を測定すると、最も高性能の限外濾過膜(4-3-1)の場合でも、15.9L/m2hであった。しかしながら、表面層の面にPESを塗布した限外濾過膜(4-1-1)、(4-2-1)、(4-3-1)は、いずれも、同じ不織布の裏面層の面に塗布した限外濾過膜(4-1-2)、(4-2-2)、(4-3-2)より流束が大きいことが確認された(データ示さず。)。
【0080】
[実施例5]
実施例5では、実施例3で作製した不織布(3)を用いて、表面層の面にPESを塗布することで、非対称膜(この場合は、限外濾過膜)を作製した。用いた不織布(3)のサイズは、幅50cmであり、長さ200mである。
【0081】
PES溶液には、実施例4と同じ20wt%のNMP溶液を用い、キャスティングナイフを用いて120μmの厚みで塗布した。塗布溶液の温度は25℃に、凝固浴の温度は40℃に設定した。
【0082】
図13には、このようにして作製した限外濾過膜(5-3-1)の表面のSEM像を示す。この非対称膜の最表面には、20nm程度の細孔が多く形成され、その分布は、25±10nmの範囲にあった。なお、3つの数字の意味は実施例4と同様であり、限外濾過膜(5-3-1)とは、実施例5の限外濾過膜であって、不織布(3)の表面層の面にPES溶液を塗布して作製した膜であることを示す。
【0083】
図14には、得られた50cm幅の限外濾過膜から12の試験片を取り出した位置(両端50mmを除く400mm幅の範囲から計12の試験片を取得)を示し、各試験片について80kPaの減圧下での水の透過性能(流束(L/m
2h))を評価した結果を表3に示している。表3から明らかなように、80kPaの減圧下での水の流束は、268.2±45.7L/m
2hの範囲にあった。PESの
NMP溶液は、高分子量のものでも他のエンプラと比較して粘度が低い。このため、従来の不織布の場合、120μmでの塗布厚みでは、PES溶液が不織布に浸み込みやすく、通常、裏抜けにより分離膜としての液体の透過性能の低下がみられる。しかしながら、表面層に細繊維を混在させた本発明の不織布では、塗布厚みを薄くすることで、最表面の細孔径が小さく、かつ流束が大きな限外濾過膜を作製することができた。
【0084】
【0085】
[実施例6]
実施例6では、本発明の不織布の特性を分析するために、実施例1で作製した不織布(1)に撥水加工を施して、水の吸引ろ過試験を行った。
【0086】
具体的には、フッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG-E082、AGC社製)を1.33wt%、ブロックイソシアネート架橋剤を1.67wt%含む水溶液を作製し、これに不織布(1)を含浸させ、マングルで所定の絞り率に絞った後、乾燥機にて110℃で30分間乾燥させた。これを不織布(4)と呼ぶ。
【0087】
図15(A)は、本試験の装置構成を示す模式図である。多孔質板を備える吸引漏斗内に、不織布(4)の表面層(細繊維を含む層)の面を上にして配置し、一定量の水を注いだ後、吸引漏斗の下側に連結された吸引瓶の排気部から吸引ポンプにより排気し、目視観察で吸引瓶への水の漏洩が確認された時の吸引圧力を測定した。その結果、-7.3kPaの減圧下で水の漏洩が観察された。一方、不織布(4)の表面層の面を下にして吸引漏斗内に配置し、同様の試験を行った場合(
図15(B))には、-9.3kPaの減圧下で水の漏洩が観察された。これらの結果は、本発明の不織布に撥水加工を施して疎水化処理を行うと、一定の圧力差(吸引圧力)まで水の透過を阻止することが可能な耐水性膜として機能し得ること、また、細繊維を含む表面層を気相側に置く(即ち、裏面層の面が液相に接触するように配置する)ことで、より効率的に水の透過を防ぐことができることを意味する。
【0088】
[比較例1]
実施例6との比較のために、実施例1と同様の製造装置を用いて、80g/m2の坪量で第1の円網抄紙機からワイヤーコンベアにより繊維を掬い取って抄紙し、第2の円網抄紙機を使わずに、比較例1の不織布を得た。ここで、第1の円網抄紙機には、延伸繊維0.6dtex 40wt%、延伸繊維1.2dtex 60wt%からなる繊維分散液を入れた。即ち、比較例1の不織布の作製には0.6dtexの繊維(中太繊維)と1.2dtexの繊維(極太繊維)を使用し、0.1dtexの繊維(細繊維)は使用しなかった。
【0089】
得られた比較例1の不織布に、実施例6と同様の手順に従って撥水加工を施した。これを不織布(5)と呼ぶ。
【0090】
実施例6の不織布(4)を用いた試験と同様に、不織布(5)を用いて水の吸引ろ過試験を行った(
図15(C))。その結果、-4.0kPaの減圧下で水の漏洩が観察され、不織布(4)を用いた場合よりも水の透過を阻止する性能が低かった。この結果は、一定の繊維径を有する繊維で構成される不織布に撥水加工を施して疎水化処理し、耐水性膜として使用する場合には、繊維径の小さい細繊維を含ませ、繊維径の異なる2種類以上の繊維を用いて不織布を作製することが有効であることを示している。
【0091】
更には、不織布に繊維径の小さい細繊維を含ませることの効果は、以下のように推定することができる。不織布(4)は、0.1dtexの繊維(細繊維)を表面層に含む不織布(1)に対してフッ素系撥水撥油剤含有水溶液を用いた撥水加工を施すことによって得られたものである。つまり、不織布(1)は、その主たる用途である分離膜製膜用の塗布溶液を含浸した時のラプラス力が大きい表面層とラプラス力が小さい裏面層を有し、表面層がその下に位置する裏面層よりも平均細孔径が0.5μm以上小さいため、疎水化処理された後の状態では、平均細孔径が小さい表面層において、水に対してより強い吸引抵抗力が作用し、裏面層よりも高い耐水性が発揮される結果、不織布全体としての耐水性が向上すると考えられる。ここで、上述した繊維分散液の組成から分かるように、不織布(1)の作製に用いた表面層用の繊維分散液中の細繊維の割合は10wt%である。このように、繊維分散液中の細繊維の含有割合が比較的低い条件であっても、表面層と裏面層とでラプラス力に有意な差が生じることは注目に値する。もちろん、細繊維の含有割合としてはこの条件に限定されず、適宜調整することができ、これにより、得られる不織布において、細繊維を含む部分と細繊維を実質的に含まない部分(実質的に太繊維のみからなる部分)とのラプラス力の差を所望の範囲内に制御することも可能であり得る。
【0092】
なお、実施例6の不織布(4)を用いた試験結果から示唆されるように、耐水性の向上という目的では、細繊維を含む層(不織布の表面層)は、水(液相)に接触しない側に配置し、実質的に太繊維のみからなる部分を含んで構成される層(不織布の裏面層)の面が水(液相)に接触するように配置するのが良い。この配置では、不織布にかかる圧力差を裏面層、即ち水に接触している側の層がその厚さ方向に押しつぶされることで受け止めることができ、その分、不織布全体としての耐水性が向上する。一方、細繊維を含む層(不織布の表面層)の面が水(液相)に接触するように配置した場合、表面層と裏面層の厚さ方向の構成比によっては、不織布にかかる圧力差を表面層のみで受け止めることになるため、水に接触していない、気相側に配置された裏面層が有効に働かない場合がある。
言い換えると、耐水性膜として使用する観点からは、不織布の作製時において、繊維径の小さい細繊維は、不織布の表面層に混入されていれば良く、必ずしも不織布全体に混入されている必要はない。そして、使用時には、細繊維を実質的に含まない、実質的に繊維径の大きい太繊維のみからなる部分を含んで構成される裏面層の面が水(液相)に接触するように配置すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る分離膜用不織布基材は、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)などの分離膜の樹脂溶液塗布用の支持体として用いられる。
【0094】
本発明に係る分離膜用不織布基材は、全体的(巨視的)には不織布を構成する繊維の絡み合いの程度や密度はおおよそ一様であるが、部分的(微視的)に平均細孔径が異なる表面層と裏面層を有し、表面層の平均細孔径は、裏面層の平均細孔径よりも小さい。また、不織布を構成する表面層と裏面層との境界部分でも繊維が絡み合っており、力学的強度が高く、不織布の薄膜化が可能となり、かつ樹脂溶液の塗布厚みを少なくすることができるため、低コストで軽量かつ実用膜面積の大きな高性能の分離膜を作製することができる。また、特に絡み合い部分における太繊維の絡み合いにより、不織布の耐久性が向上する。さらに、これまで樹脂溶液の裏抜けが原因で、塗布出来なかったポリマーの塗布が可能となり、様々なアプリケーションに応じたポリマーの選択が可能となる。
【0095】
特に、本発明の不織布をRO膜製造の基材として用いれば、海水淡水化処理などでの省エネルギー化が見込まれる。
【符号の説明】
【0096】
10 不織布(分離膜用不織布)
11 表面層
11a 表面層の面
12 裏面層
12a 裏面層の面
FF 細繊維
TF、TF1、TF2 太繊維
A1 細繊維混在部分
A2 太繊維部分
A3 絡み合い部分
R 樹脂溶液(製膜用塗布溶液)
51 第1の円網抄紙機
52 第2の円網抄紙機
51a、52a ロール
53 ワイヤーコンベア
DS1、DS2 繊維分散液