(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】サポーター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/08 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
A41D13/08 101
(21)【出願番号】P 2020546213
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036028
(87)【国際公開番号】W WO2020054832
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018171890
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
(72)【発明者】
【氏名】長田 逸夫
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104139(JP,A)
【文献】実開平01-129209(JP,U)
【文献】実開昭63-027418(JP,U)
【文献】特開平04-343868(JP,A)
【文献】特開平06-285108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状生地の一端側に形成され、着用者の前腕手首部分に前記筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状生地の他端側に形成され、当該他端側における周回部分
に2つの異なる大きさの
第1の開口部
及び第2の開口部を形成する第2のアンカー部と、
前記第2のアンカー部と前記第1のアンカー部との間に支持され、五指のうち小さい方の開口部
である前記第1開口部に挿通される任意の一指を支持する第1の支持部とを備え
、
前記筒状生地の他端側の見返し部分を正面から見てS字状に形成し、当該S字状において前記第1の開口部が形成される側の凸部の位置で前記見返し部分の2点を連結して、前記第1の開口部及び前記第2の開口部が形成されることを特徴とするサポーター。
【請求項2】
請求項1に記載のサポーターにおいて、
前記第2のアンカー部が、
着用者の前記任意の一指の中手指節関節と近位指節間関節又は指節間関節との間の位置となるように形成されているサポーター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサポーターにおいて、
前記第1の支持部が、前記第2のアンカー部の近傍から着用者の前記任意の一指の一側面及び/又は他側面を通って第1のアンカー部に支持されるサポーター。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のサポーターにおいて、
前記第2のアンカー部から着用者の前記任意の一指の甲側の中手指節関節までの対応する領域が、前記第1の支持部よりも伸縮抵抗が小さい生地で形成されるサポーター。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のサポーターにおいて、
前記任意の一指が第1指であり、
着用者の第5指の外側に対応する領域を支持する第2の支持部を備えるサポーター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のサポーターにおいて、
前記第1の開口部が、少なくとも前記筒状生地における前記第1のアンカー部の側面よりも当該筒状生地の外側方向に拡張しているサポーター。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のサポーターにおいて、
前記第2のアンカー部
が、前記筒状生地の他端側における周回部分の内側の2点を接着した状態で外側から縫製して形成されるサポーター。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のサポーターにおいて、
前記第1の支持部が、前記第2のアンカー部と前記第1のアンカー部との間における前記筒状生地の長さ方向に第1の張力を有し、
前記第1のアンカー部と大きい方の開口部である前記第2の開口部との間に形成され、前記第
1のアンカー部と前記第2の開口部との間における前記筒状生地の長さ方向に第2の張力を有するベース生地部と、
前記ベース生地部によって前記第1の支持部から隔離して形成される第2の支持部とを備え、
前記第1の張力が前記第2の張力よりも大きいことを特徴とするサポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の五指のうちの任意の一指への負担を軽減するサポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
手関節用のサポーターとして、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、手関節サポーター10が、着用者の前腕に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、着用者の手の第1指21を挿通させ、当該第1指21の基節骨21bに対応する部分を周回する第2のアンカー部3と、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に編成され、着用者の手掌側の第2のアンカー部3から、着用者の手背側を経由して、着用者の豆状骨26に対応する部分を通り、着用者の手掌側を経由して、着用者の手掌側の第1のアンカー部2まで延在する、螺旋状の編地からなる第1の支持部4と、筒状編地のうち第1のアンカー部2、第2のアンカー部3及び第1の支持部4を除く編地であり、当該編地の伸縮抵抗が第1の支持部4の伸縮抵抗よりも小さいベース生地部1と、を備えるものである。
【0003】
特許文献2に示す技術は、手関節サポーター10が、前腕に筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、手の平及び甲に筒状編地を締着させる第2のアンカー部3と、筒状編地における第2のアンカー部3近傍に略円形形状の貫通孔にて形成され、手の第1指を挿通するホールアンカー部11と、筒状編地の正面及び/又は背面側に手根中手関節に対応する部分を跨って筒状編地の長さ方向に延在させて編成され、第1のアンカー部2及びホールアンカー部11に連結して、手関節を支持する支持部4と、を備え、筒状編地の周方向における第1のアンカー部2の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における支持部4の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-104139号公報
【文献】特許第5543496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、着用者の第1指が挿通される第2のアンカー部を筒状編地に切れ目を入れて裁断縁を筒状編地の内側に折り返してミシンにより縫製しているため、縫製部分が着用者の第1指表面を刺激し、着用感が良くないものになってしまう。
【0006】
また、この縫製部分を筒状編地を縫製することなく編み立てにより編成してもよい旨が記載されているが、第2のアンカー部を編み立てで別途に編成するのは極めて困難であり、編成できたとしても非常に複雑で製造効率が悪いものになってしまう。
【0007】
特許文献2に示す技術は、手関節の安定性を向上して、手関節への負担を軽減することができるものの、手首の内転、外転の動きや指の指節間関節での屈伸動作を抑制することで手首や任意の一指を支える筋肉や関節への負担を軽減することができるものではない。
【0008】
本発明は、着用者の手関節を安定化すると共に、任意の一指を支える筋肉や関節への負担を軽減することができるサポーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るサポーターは、筒状生地の一端側に形成され、着用者の前腕手首部分に前記筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、前記筒状生地の他端側における周回部分の2点を連結して形成され、前記周回部分を少なくとも2つの異なる大きさの開口部にする第2のアンカー部と、前記第2のアンカー部と前記第1のアンカー部との間に支持され、五指のうち小さい方の開口部に挿通される任意の一指を支持する第1の支持部とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、筒状生地の一端側に形成され、着用者の前腕手首部分に前記筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、前記筒状生地の他端側における周回部分の2点を連結して形成され、前記周回部分を2つの異なる大きさの開口部にする第2のアンカー部と、前記第2のアンカー部と前記第1のアンカー部との間に支持され、五指のうち小さい方の開口部に挿通される任意の一指を支持する第1の支持部とを備えるため、第1の支持部により着用者の手首や指への負担を軽減することができるという効果を奏する。特に、任意の一指の指節間関節での屈伸動作を抑制することで、当該任意の一指を支える筋肉や関節への負担を軽減し、腱鞘炎などの炎症を抑制することができるという効果を奏する。
【0011】
本発明に係るサポーターは、前記第2のアンカー部が、前記筒状生地の他端側における周回部分の2点を連結して形成されるのが好ましい。
【0012】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、第2のアンカー部が、筒状生地の他端側における周回部分の2点を連結して形成されるため、アンカー部としての機能を実現しつつ、簡単な作業のみで異なる大きさの開口部を形成することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係るサポーターは、前記第2のアンカー部が、着用者の前記任意の一指の中手指節関節と近位指節間関節又は指節間関節との間の位置となるように形成されるのが好ましい。
【0014】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、前記第2のアンカー部が、着用者の前記任意の一指の中手指節関節と近位指節間関節又は指節間関節との間の位置となるように形成されているため、第1の支持部により、任意の一指の中手指節関節と近位指節間関節又は指節間関節との間の位置に対して当該任意の一指を掌側から甲側に支える張力が加わり、任意の一指の掌側における筋肉や関節への負担を軽減することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明に係るサポーターは、前記第1の支持部が、前記第2のアンカー部の近傍から着用者の前記任意の一指の一側面及び/又は他側面を通って第1のアンカー部に支持されるのが好ましい。
【0016】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、前記第1の支持部が、前記第2のアンカー部の近傍から着用者の前記任意の一指の一側面及び/又は他側面を通って第1のアンカー部に支持されるため、着用者の任意の一指を安定化すると共に、任意の一指に対して甲側に十分な張力を加えることができるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係るサポーターは、前記第2のアンカー部から着用者の前記任意の一指の甲側の中手指節関節までの対応する領域が、前記第1の支持部よりも少なくとも前記筒状生地の長さ方向に伸縮抵抗が小さい生地で形成されるのが好ましい。
【0018】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、前記第2のアンカー部から着用者の前記任意の一指の甲側の中手指節関節までの対応する領域が、前記第1の支持部よりも少なくとも前記筒状生地の長さ方向に伸縮抵抗が小さい生地で形成されるため、着用者の任意の一指に対して必要以上に締め付けることなく、着用感を向上させることができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係るサポーターは、前記任意の一指が第1指であり、着用者の第5指の外側に対応する領域を支持する第2の支持部を備えるのが好ましい。
【0020】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、前記任意の一指が第1指であり、着用者の第5指の外側に対応する領域を支持する第2の支持部を備えるため、第1指の安定化に加えて第5指側も安定して支持され、手全体に掛かる負担を軽減することができるという効果を奏する。すなわち、第1の支持部と第2の支持部とが手首を両側から支持して手首の内転、外転の動きを抑制して手首の腱鞘炎などの炎症を抑制することができる。
【0021】
本発明に係るサポーターは、第2のアンカー部により形成される2つの異なる大きさの前記開口部のうち大きい方の開口部が、前記第2のアンカー部から前記大きい方の開口部の周縁において前記第2のアンカー部と対向する位置の手首側に向かって斜め方向に直線状又は手首側に湾曲して形成されているものである。
【0022】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、第2のアンカー部により形成される2つの異なる大きさの前記開口部のうち大きい方の開口部が、前記第2のアンカー部から前記大きい方の開口部の周縁において前記第2のアンカー部と対向する位置の手首側に向かって斜め方向に直線状又は手首側に湾曲して形成されているため、例えばキーボードなどの手先の操作をスムーズに行うことができるという効果を奏する。特に、開口部を手首側に湾曲させて形成することで、開口部の縁部を母指球の表面に沿うように密着させることができ、着用者の着用感を向上させると共に、安定した装着を可能にするという効果を奏する。
【0023】
本発明に係るサポーターは、前記第2のアンカー部により形成される2つの異なる大きさの前記開口部のうち小さい方の開口部が、少なくとも前記筒状生地における前記第1のアンカー部の側面よりも当該筒状生地の外側方向に拡張しているものが好ましい。
【0024】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、第2のアンカー部により形成される2つの異なる大きさの前記開口部のうち小さい方の開口部が、少なくとも前記筒状生地における前記第1のアンカー部の側面よりも当該筒状生地の外側方向に拡張した領域に形成されるため、例えば、小さい方の開口部に着用者の第1指が挿通された場合には、一般的に着用者の第1指は伸長した際に手の甲側に反り返っており、拡張部が、その第1指の反りに当接できるように形成されて、着用者の着用感を向上させることが可能となる。
【0025】
また、例えば、小さい方の開口部に着用者の第2指~第5指のいずれかが挿通された場合には、当該小さい方の開口部に挿通された一指に対して手の甲側への張力が大きくなり、当該一指を手の甲側に支持することが可能になるという効果を奏する。
【0026】
本発明に係るサポーターは、前記第2のアンカー部が、前記筒状生地の他端側における周回部分の内側の少なくとも2点を接着した状態で外側から縫製して形成されるものが好ましい。
【0027】
このように、本発明に係るサポーターにおいては、第2のアンカー部が、筒状生地の他端側における周回部分の内側の2点を接着した状態で外側から縫製して形成されるため、周回部分の2点を縫製した際の縫目が着用者の指に接触して着用感が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1の実施形態に係るサポーターの六面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第1の図である。
【
図3】第1の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第2の図である。
【
図4】第1の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第3の図である。
【
図5】第2の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第1の図である。
【
図6】第2の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第2の図である。
【
図7】第2の実施形態に係るサポーターの着用状態を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の第1の実施形態)
以下に本発明の実施形態を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係るサポーターについて、
図1ないし
図4を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るサポーターの六面図、
図2ないし
図4は、本実施形態に係るサポーターの着用状態を示す図である。なお、
図1において背面図を省略しているが、背面図は正面図を左右反転したものである。
【0031】
本実施形態に係るサポーターは、主に指用のサポーターであり、五指のうちの任意の一指(例えば、第1指)の負担を軽減するものである。
図1ないし
図4において、指用サポーター10は、例えば、靴下編機(例えば、ロナティ社製の編み機種)により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の手や第1指の動作を補助すると共に、着用者の手や指への負担を軽減するサポーターである。
【0032】
指用サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる編地であるベース生地部1に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係るベース生地部1は、タック編により編成される編地(以下、タック編地と称す)である。
【0033】
なお、本実施形態においては、指用サポーター10が、丸編で編み立てられる筒状編地により形成される場合について説明するが、丸編以外にも経編や縫製により形成されてもよく、また筒状編地は、編地以外にも織地でもよく、これらに使用する糸は天然繊維の他、化学繊維などで形成されてもよい。
【0034】
指用サポーター10は、筒状編地の一端(上端10a)を周回して編成され、着用者の前腕手首部分に指用サポーター10を締着させる第1のアンカー部2を備える。この第1のアンカー部2は、指用サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、指用サポーター10のベース生地部1における周方向Hの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、指用サポーター10のベース生地部1における周方向Hの張力をFH1とし、指用サポーター10の第1のアンカー部2における周方向Hの張力をFH2とした場合に、第1のアンカー部2がベース生地部1と比較して、指用サポーター10の周方向Hに強い締付力を持つ、FH2>FH1という大小関係を有するのが好ましい。
【0035】
具体的には、第1のアンカー部2は、袋編の二重構造とすることにより、又は、鹿の子編で編成された編地(以下、鹿の子編地と称す)にすることにより、タック編地のベース生地部1に対して、指用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0036】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に、平編とタック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)とが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、第1のアンカー部2には、平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0037】
このように、第1のアンカー部2は、着用者の前腕手首部分を周回して編成され、指用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、指用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の前腕手首部分に指用サポーター10を固定し、手関節の掌屈時や指の屈伸動作における指用サポーター10の上端10aのずり下がりやずり上がりを抑制することができる。また、第1のアンカー部2は、後述する第1の支持部4を支持し、この第1の支持部4のアンカーとしても機能する。
【0038】
指用サポーター10は、筒状編地の他端(下端10b)の開口部を筒状編地の内側に折り返してミシンで縫製することで正面から見てS字状となる見返し部分12が形成されている。形成された見返し部分12における周回部分の2点を縫着し、この縫着により下端10bの開口部を2つの異なる大きさの開口部(開口部12a,12b)にする第2のアンカー部3を備える。このとき、見返し部分12の内側の2点を接着した状態で、見返し部分12の外側から縫製して第2のアンカー部3を形成することで、縫製した際の縫目が着用者の指に直接接触して着用感が損なわれることを防止することができる。
【0039】
この第2のアンカー部3は、
図2ないし4に示すように、着用者の第1指の中手指節関節と指節間関節との間の位置に装着されるように形成されており、後述する第1の支持部4の張力により、第1指が拡張する方向(手首が外転する方向(拡張方向X))に力が作用しやすくなっている。このとき、例えば、第2のアンカー部3が第1指の指節間関節よりも指先の位置になると、手首を外転させるための張力が効果的に作用し難くなってしまう。また、第2のアンカー部3が第1指の中手指節関節の位置になると、第1の支持部4の張力が、第1指が閉じる方向に作用してしまい逆効果となってしまう。したがって、第2のアンカー部3は、着用者の第1指の中手指節関節と指節間関節との間の位置になるのが適正であるのが好ましい。
【0040】
開口部12aは、着用者の第1指を挿通するための開口部であり、開口部12bは、着用者の第2指から第5指(第2指(示指、ひとさし指)、第3指(中指)、第4指(薬指)、第5指(小指))を挿通するための開口部である。つまり、第1指が挿通される開口部12aの方が、第2指から第5指が挿通される開口部12bよりも小さくなるように第2のアンカー部3の縫着位置が決定されている。
【0041】
開口部12aは、第1のアンカー部2の側面よりも筒状編地の外側方向に拡張された拡張部12cを有する。なお、この拡張部12cは、筒状編地を形成する過程で編成されてもよいし、編地の伸縮性を利用することで形成されてもよい。また、生地を裁断することで拡張部12cを形成するようにしてもよい。一般的に着用者の第1指は伸長した際に手の甲側に反り返っており、拡張部12cは、その第1指の反りに当接できるように形成されることで、着用者の着用感を向上させることが可能となる。
【0042】
また、第2指から第5指が挿通される開口部12bは、第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に直線状又は手首側に湾曲して形成されている。仮に、開口部12bがこのように第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に縫製されない場合は、着用者の指用サポーター10の下端10bが第2指から第5指の動きを制限してしまう可能性があり、パソコンのキーボード操作等に支障を来すことになり兼ねない。しかしながら、開口部12bを第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に縫製することで、第2指から第5指の動きを自由にして、作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0043】
さらに、開口部12bを第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に手首側に湾曲して形成した場合には、開口部12bの縁部が着用者の母指球23の表面に沿うようにして着用感を高めることができると共に、第1指を掌側に屈曲させた場合であっても母指球23と編地の間に空間を生じさせることなく、密着させて着用することが可能になる。このように、開口部12aにおいて拡張部12cを形成すると共に、開口部12bを第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に直線状又は手首側に湾曲して形成することで、見返し部分12が正面から見てS字状に形成され、上述したような着用感の向上を図ることができる。
【0044】
第1の支持部4は、第2のアンカー部3近傍から着用者の第1指における一方の側面から付け根部分の領域(第1指における甲側の側面及び付け根部分の領域であって、以降、第1領域という)24a及び/又は他方の側面から付け根部分の領域(第1指における掌側の側面及び付け根部分の領域であって、以降、第2領域という)24bを通って第1のアンカー部2に支持され、着用者の第1指を当該第1指が拡張する方向(手首が外転する方向(拡張方向X))に支持する。すなわち、第1の支持部4は、一端側が着用者の前腕手首部分における第1のアンカー部2の近傍で支持されると共に、他端側が第2のアンカー部3の近傍で支持されている。なお、第1の支持部4は、一端側を第1のアンカー部2に直接連結して形成されてもよいし、1又は複数コース(第1のアンカー部2の支持力が及ぶ範囲内)を隔てて支持されるように形成されてもよい。同様に、他端側を第2のアンカー部3に直接連結して形成されてもよいし、第2のアンカー部3の近傍(第2のアンカー部3の支持力が及ぶ範囲内)で支持されるように形成されてもよい。
【0045】
この第1の支持部4は、指用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、指用サポーター10のベース生地部1における長さ方向Lの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、指用サポーター10のベース生地部1における長さ方向Lの張力をFL1とし、指用サポーター10の第1の支持部4における長さ方向Lの張力をFL2とした場合に、第1の支持部4がベース生地部1と比較して、指用サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つ、FL2>FL1という大小関係を有する。
【0046】
具体的には、第1の支持部4を、タック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)にすることにより、タック編地のベース生地部1に対して、指用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0047】
なお、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、指用サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4の伸縮を適度に抑えており、第1の支持部4とベース生地部1との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0048】
また、第1の支持部4は、第2のアンカー部3近傍から着用者の第1指の第1領域24aを通って第1アンカー部2に支持されることで、掌を横向きにした場合に、第1指が脱力により下方に下がるのを第1領域24a側から支持して防止することができる。すなわち、当該第1指を上方に持ち上げることで、第1指を支持する関節や筋肉への負担を軽減することが可能となる。一方、第1の支持部4が、第2のアンカー部3近傍から着用者の第1指の第2領域24bを通って第1アンカー部2に支持されることで、掌を横向きにした場合に、第1指が脱力により下方に下がるのを第2領域24b側から支持して防止することができる。すなわち、当該第1指を上方に持ち上げ、第1指を支持する関節や筋肉への負担を軽減することが可能となる。
【0049】
特に、第1の支持部4を、第2のアンカー部3近傍から第1領域24a及び第2領域24bを通って、Y字状、V字状又はU字状、その他第1指の外側部分を外すような各種形態、例えば、甲側及び掌側を各々通る領域が結合することなく二本のラインとして形成される形態等として第1アンカー部2に支持されるように配設することで、掌を横向きにした場合に、より効果的に第1指を上方に持ち上げ、第1指を支持する関節や筋肉への負担を軽減することが可能となると共に、指用サポーター10の正面側及び背面側が対称の関係となり、左手用及び右手用のサポーターとして兼用することができる。
【0050】
第1の支持部4は、第2のアンカー部3から着用者の第1指の甲側の中手指節関節までの対応する第1指当接領域13が、第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地で編成されている。なお、第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地として、例えばベース生地部1と同一の生地であってもよいし、ベース生地部1よりもさらに伸縮抵抗が小さい生地であってもよい。このように、第1指当接領域13が第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地で編成されることで、見返し部分12をミシンで縫製する際に編地送りをすることで、より確実に第1指の反りに適応した拡張部12cを形成することが可能となる。
【0051】
なお、仮に第1指当接領域13の生地を第1の支持部4と同じ伸縮抵抗の生地で編成した場合であっても、見返し部分12を縫製する際の編地送りにより拡張部12cの形成は可能であるが、より確実で且つ高品質に拡張部12cを形成するには、第1指当接領域13が、第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地で編成されていることが望ましい。
【0052】
また、第1指当接領域13が、第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地で編成されることで、第1指の甲側に当接する部分の生地が柔軟性の高いものとなり、着用者の着用感を向上させることが可能となる。
【0053】
さらに、
図1から
図4においては、第1指当接領域13を第1指の甲側から見てY字状に形成しているが、第1の支持部4が、第2のアンカー部3から第1指の甲側の中手指節関節までを支持する構造であれば、第1指当接領域13の形状はこれに限定されない。
【0054】
第2の支持部5は、着用者の第5指側側面に対応する領域で第1のアンカー部2で支持し、着用者の第5指側を支持する。この第2の支持部5は、指用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、指用サポーター10のベース生地部1における長さ方向Lの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、指用サポーター10のベース生地部1における長さ方向Lの張力をFL1とし、指用サポーター10の第2の支持部5における長さ方向Lの張力をFL3とした場合に、第2の支持部5がベース生地部1と比較して、指用サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つ、FL3>FL1という大小関係を有する。このように第2の支持部5は、着用者の第5指側側面から第1の支持部4と開口部12bとの間で支持することにより、過度の外転を抑制して可動範囲を制限すると共に、前記第1の支持部4との協働作用により手及び手首の支持をより強固にできることとなる。
【0055】
なお、第2の支持部5の伸縮抵抗は、第1の支持部4の伸縮抵抗と同一としてもよい。そうすることで、手及び手首の両側より支持して内転・外転のバランスをとることができると共に、第1の支持部4と第2の支持部5とを同一の編地で同一の工程で編成することが可能となる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る指用サポーターにおいては、丸編で編み立てられる筒状編地の一端側に着用者の前腕手首部分に前記筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、前記筒状編地の他端側における周回部分の2点を縫着して形成され、当該縫着により前記周回部分を2つの異なる大きさの開口部(12a,12b)にする第2のアンカー部3と、前記第2のアンカー部3と前記第1のアンカー部2との間に支持され、五指のうち小さい方の開口部に挿通される第1指を支持する第1の支持部4とを備えるため、第1の支持部4により着用者の前記任意の一指を支持して当該任意の一指を支える筋肉や関節への負担を軽減することができる。
【0057】
また、第2のアンカー部3が、着用者の第1指の掌側の中手指節関節と指節間関節との間の位置となるように形成されているため、第1の支持部4により、第1指の中手指節関節と指節間関節との間の位置に対して当該第1指を掌側から甲側に支える張力が加わり、第1指の掌側における筋肉や関節への負担を軽減することができる。
【0058】
さらに、第1の支持部4が、第2のアンカー部3から着用者の第1指の一側面及び/又は他側面を通って甲側の第1のアンカー部2に連結するため、着用者の第1指を安定化すると共に、第1指に対して甲側に十分な張力を加えることができる。
【0059】
さらにまた、第2のアンカー部3から着用者の第1指の甲側の中手指節関節までの対応する領域が、第1の支持部4よりも伸縮抵抗が小さい生地で編成されるため、着用者の第1指に対して必要以上に締め付けることなく、着用感を向上させることができる。
【0060】
さらにまた、着用者の第5指の外側に対応する領域を支持する第2の支持部5を備えるため、第1指の安定化に加えて第5指側も安定して支持され、手全体に掛かる負担を軽減することができる。
【0061】
さらにまた、第2のアンカー部3により形成される2つの異なる大きさの前記開口部(12a,12b)のうち、着用者の第2指から第5指が挿通される大きい方の開口部12bが、第2のアンカー部3から着用者の第5指側の側面の手首側に向かって斜め方向に直線状又はS字状に編成されているため、例えばキーボードなどの手先の操作をスムーズに行うことができる。特に、開口部12bをS字状に編成することで、開口部12bの縁部を母指球の表面に沿うように密着させることができ、着用者の着用感を向上させると共に、安定した装着を可能にする
【0062】
なお、上記
図1ないし
図4においては、第2の支持部5を備える構成としているが、当該第2の支持部5を備えない構成であってもよい。
【0063】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る指用サポーターについて、
図1、
図5ないし
図7を用いて説明する。本実施形態に係る指用サポーターは、前記第1の実施形態に係る指用サポーターと同様のものである(
図1)が、
図2ないし
図4に示した場合とは異なり、開口部12aに第1指以外の任意の一指を挿通した場合であっても適用することが可能である。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態を重複する説明は省略する。
【0064】
図5ないし
図7は、本実施形態に係る指用サポーターの小さい方の開口部12aに第2指を挿通して着用した場合の着用状態を示す図である。なお、
図5ないし
図7においては、開口部12aに第2指を挿通する場合を記載しているが、その他の第1指(第1の実施形態に記載)、第3指、第4指又は第5指のいずれを挿入してもよい。
【0065】
図5ないし
図7に示すように、小さい方の開口部12aにいずれの指を挿通する場合であっても、第2のアンカー部3は、着用者の手の中手指節関節と近位指節間関節の間に配置されるように装着される。そうすることで、開口部12aに挿通された各指及び手首を甲側に効果的に持ち上げ、手の負担を軽減することができる。
【0066】
なお、小さい方の開口部12aに挿通する指は、五指のうちの任意の1本又は2本の指とし、大きい方の開口部12bに他の指が挿通されるようにしてもよい。
【0067】
このように、本実施形態に係る指用サポーターにおいては、五指のうちのいずれの指であっても開口部12aに挿通することが可能となり、着用者の状態に応じて多様に使用することができる。
【0068】
なお、本発明に用いる弾性糸は、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系の弾性糸で、例えばポリウレタン系弾性糸では、乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用でき、ポリマーや紡糸方法には特に限定されない。弾性糸の破断伸度は400%~1000%程度のもので、かつ、伸縮性に優れ、染色加工時のセット工程の通常処理温度115℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また、弾性糸に、特殊ポリマーや粉体添加により、高セット性、抗菌性、吸湿、吸水性等の機能性を付与した弾性糸も使用可能である。弾性糸の繊度については、10~1000dt程度の繊維の使用が可能で、編地製造が容易な、20~700dt程度の弾性繊維の使用が好ましい。また、弾性糸に非弾性糸を巻きつけたカバーリング糸や、あるいは撚糸した糸、非弾性糸と弾性糸とを空気噴射により混繊した混繊糸等の使用も可能である。
【0069】
また、本発明に用いる非弾性糸は、ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン等の合成繊維、さらに、キュプラやレーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらのブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等任意に使用でき、繊維の断面形状も丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意な断面形状の繊維の使用が可能であり、また、繊維の形態についても特に限定されず、原糸、仮撚等の捲縮加工糸が使用でき、さらに、長繊維、紡績糸、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸としての使用も可能である。さらには、繊維での混合でなく、編機上で2種以上の繊維の混合も無論可能で、緯編機では、2種以上の繊維をそれぞれに対応する給糸口を準備して編成すればよい。繊維の太さについては、20~160dt程度の繊維の使用が可能で、編地の破裂強度や厚み感から、20~150dt程度の繊維の使用が好ましい。なお、綿や羊毛使用時はそれぞれ換算式により使用繊維の太さを求めれば良い。
【0070】
さらに、支持部4及び支持部5は、例えばナイロン表糸およびゴム裏糸を用いて平編みによって編成されてもよい。必要により、FTY(Filament Twisted Yarn)裏糸が、支持部4及び支持部5に編み込まれていてもよい。また、開口部12a,12bは、リブ編みによって編成されていてもよい。
【0071】
さらにまた、本発明に係る指用サポーター10の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド、レーヨン、アクリル、キュプラ、アセテート、プロミックス、アラミド、シリコーンなどの化繊;綿、羊毛、絹、麻、レーヨンなどの天然繊維;天然ゴム;ポリ塩化ビニル;等が挙げられる。
【0072】
さらにまた、本発明に係る指用サポーター10を構成する材料としては、伸縮性に富む弾性材料であれば特に制限はなく、例えば、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系、PVC系、フッ素系のもの等)及びゴム(イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等)を用いてもよい。
【0073】
さらにまた、本発明に係る指用サポーター10で使用している糸の断面は、丸断面、異形断面(例えば、三角形の角が丸く辺が内側にくぼんだ曲線状になっている等)であってもよい。
【0074】
さらにまた、第1のアンカー部2は、スパイラルメッシュになっていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ベース生地部
2 第1のアンカー部
3 第2のアンカー部
4 第1の支持部
5 第2の支持部
10 指用サポーター
10a 上端
10b 下端
12 見返し部分
12a,12b 開口部
12c 拡張部
13 第1指当接領域
13a 第2指当接領域
23 母指球
24a 第1領域
24b 第2領域