(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】地絡検出器
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240418BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/087
(21)【出願番号】P 2023031406
(22)【出願日】2023-03-01
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592001296
【氏名又は名称】株式会社ニプロン
(73)【特許権者】
【識別番号】521452681
【氏名又は名称】DC Power Vil.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 重和
(72)【発明者】
【氏名】菊地 春夫
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-104280(JP,A)
【文献】米国特許第6678132(US,B1)
【文献】特開平08-136602(JP,A)
【文献】特開2005-189005(JP,A)
【文献】特開2014-145754(JP,A)
【文献】特開2013-130536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
H02H 3/087
G01R 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から延びる正極線Vpと負極線Vnとの間で直列に接続された第1の抵抗素子R1、第2の抵抗素子R2及び第3の抵抗素子R3と、
前記第2の抵抗素子R2の一端と前記第3の抵抗素子R3の一端とが接続される第2の接続点P2に入力端子TI1が接続され、前記正極線Vpに出力端子TO1が接続される第1の自己消弧素子Q1と、
前記第2の接続点P2に入力端子TI2が接続され、前記負極線Vnに出力端子TO2が接続される第2の自己消弧素子Q2と、
前記第1の自己消弧素子Q1及び前記第2の自己消弧素子Q2の接地端子TG1,TG2同士が接続される第3の接続点P3と接地Gとの間に設けられる検出部10と、を備え、
前記第1の抵抗素子R1の一端と前記第2の抵抗素子R2の他端とが接続する第1の接続点P1に一端を接続し、前記第3の接続点P3に他端を接続し、前記第1の接続点P1と前記第3の接続点P3との間を一定間隔でオン状態とオフ状態とに切り替え、オン状態及びオフ状態のいずれかで前記第2の接続点P2と前記第3の接続点P3との間に電位差を発生させるスイッチング部SWが設けられ、
前記スイッチング部SWのオン状態及びオフ状態において、地絡発生時に流れる地絡電流Igが前記第3の接続点P3と前記接地Gとの間に流れたかを前記検出部10が検出する、地絡検出器。
【請求項2】
前記スイッチング部SWがオン状態になると、前記第1の自己消弧素子Q1がオフになり、前記第2の自己消弧素子Q2がオンとなる、請求項1に記載の地絡検出器。
【請求項3】
直流電源から延びる正極線Vpと負極線Vnとの間で直列に接続された第1の抵抗素子R1、第2の抵抗素子R2及び第3の抵抗素子R3と、
前記第1の抵抗素子R1の一端と前記第2の抵抗素子R2の一端とが接続される第1の接続点P1に入力端子TI1が接続され、前記正極線Vpに出力端子TO1が接続される第1の自己消弧素子Q1と、
前記第1の接続点P1に入力端子TI2が接続され、前記負極線Vnに出力端子TO2が接続される第2の自己消弧素子Q2と、
前記第1の自己消弧素子Q1及び前記第2の自己消弧素子Q2の接地端子TG1,TG2同士が接続される第3の接続点P3と接地Gとの間に設けられる検出部10と、を備え、
前記第2の抵抗素子R2の他端と前記第3の抵抗素子R3の一端とが接続される第2の接続点P2に一端を接続し、前記第3の接続点P3に他端を接続し、前記第2の接続点P2と前記第3の接続点P3との間を一定間隔でオン状態とオフ状態とに切り替え、オン状態及びオフ状態のいずれかで前記第1の接続点P1と前記第3の接続点P3との間に電位差を発生させるスイッチング部SWが設けられ、
前記スイッチング部SWのオン状態及びオフ状態において、地絡発生時に流れる地絡電流Igが前記第3の接続点P3と前記接地Gとの間に流れたかを前記検出部10が検出する、地絡検出器。
【請求項4】
前記スイッチング部SWがオン状態になると、前記第1の自己消弧素子Q1がオンになり、前記第2の自己消弧素子Q2がオフとなる、請求項1に記載の地絡検出器。
【請求項5】
前記検出部は、前記スイッチング部のオン状態及びオフ状態における前記地絡電流の検出結果に基づいて、前記正極線側で発生した地絡である正極側地絡、前記負極線側で発生した地絡である負極側地絡、又は前記正極線側及び前記負極線側の双方で等しい条件で発生した地絡である平衡地絡であると判別する、請求項2又は4に記載の地絡検出器。
【請求項6】
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態においても前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記正極側地絡であると判別し、
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出されず、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記負極側地絡であると判別し、
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出されない検出結果の場合、前記検出部は、前記平衡地絡であると判別する、請求項5に記載の地絡検出器。
【請求項7】
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出されず、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記正極側地絡であると判別し、
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態においても前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記負極側地絡であると判別し、
前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出されない検出結果の場合、前記検出部は、前記平衡地絡であると判別する、請求項5に記載の地絡検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平衡地絡を検出する直流地絡検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中性点接地を利用した地絡検出器は、正極負極の両極において等しい条件で地絡が発生した場合、中性点と接地との間で電位差が生じずに、地絡を検出するための地絡電流が検出できなかった。
【0003】
このため、正極側、負極側の両極に分圧電圧を検出する分圧検出器をそれぞれ設け、各分圧検出器が検出した結果に基づいて平衡地絡を判別する演算処理器を備える地絡検出器が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような平衡地絡を検出する地絡検出器は、複雑な回路を用いて分圧電圧の変化を演算しなければ、平衡地絡を判別することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このことを鑑み、本発明は、演算せずに、検出結果から正極側及び負極側のいずれか一方の地絡だけでなく、平衡地絡も判別する地絡検出器を提供する。
【0007】
本発明に係る地絡検出器は、直流電源から延びる正極線と負極線との間で直列に接続された第1の抵抗素子、第2の抵抗素子及び第3の抵抗素子と、前記第2の抵抗素子の一端と前記第3の抵抗素子の一端とが接続される第2の接続点に入力端子が接続され、前記正極線に出力端子が接続される第1の自己消弧素子と、前記第2の接続点に入力端子が接続され、前記負極線に出力端子が接続される第2の自己消弧素子と、前記第1の自己消弧素子及び前記第2の自己消弧素子の接地端子同士が接続される第3の接続点と接地との間に設けられる検出部と、を備え、前記第1の抵抗素子の一端と前記第2の抵抗素子の他端とが接続する第1の接続点に一端を接続し、前記第3の接続点に他端を接続し、前記第1の接続点と前記第3の接続点との間を一定間隔でオン状態とオフ状態とに切り替え、オン状態及びオフ状態のいずれかで前記第2の接続点と前記第3の接続点との間に電位差を発生させるスイッチング部が設けられ、前記スイッチング部のオン状態及びオフ状態において、地絡発生時に流れる地絡電流が前記第3の接続点と前記接地との間に流れたかを前記検出部が検出する。
【0008】
また、本発明に係る地絡検出器は、直流電源から延びる正極線Vpと負極線Vnとの間で直列に接続された第1の抵抗素子、第2の抵抗素子及び第3の抵抗素子と、前記第1の抵抗素子の一端と前記第2の抵抗素子の一端とが接続される第1の接続点に入力端子が接続され、前記正極線に出力端子が接続される第1の自己消弧素子と、前記第1の接続点に入力端子が接続され、前記負極線に出力端子が接続される第2の自己消弧素子と、前記第1の自己消弧素子及び前記第2の自己消弧素子の接地端子同士が接続される第3の接続点と接地との間に設けられる検出部と、を備え、前記第2の抵抗素子の他端と前記第3の抵抗素子の一端とが接続される第2の接続点に一端を接続し、前記第3の接続点に他端を接続し、前記第2の接続点と前記第3の接続点との間を一定間隔でオン状態とオフ状態とに切り替え、オン状態及びオフ状態のいずれかで前記第1の接続点と前記第3の接続点との間に電位差を発生させるスイッチング部が設けられ、前記スイッチング部のオン状態及びオフ状態において、地絡発生時に流れる地絡電流が前記第3の接続点と前記接地との間に流れたかを前記検出部が検出する。
【0009】
このような地絡検出器によれば、演算せずに、検出結果から正極側及び負極側のいずれか一方の地絡だけでなく、平衡地絡も判別することができる。
【0010】
また、前記スイッチング部SWがオン状態になると、前記第1の自己消弧素子Q1がオフになり、前記第2の自己消弧素子Q2がオンとなることが好ましい。
【0011】
また、前記スイッチング部SWがオン状態になると、前記第1の自己消弧素子Q1がオンになり、前記第2の自己消弧素子Q2がオフとなることが好ましい。
【0012】
このような地絡検出器によれば、平衡地絡で地絡による電位差が起きなくても、スイッチング部によって電位差が起こり、検出部が地絡電流を検出することができる。
【0013】
また、前記検出部は、前記スイッチング部のオン状態及びオフ状態における前記地絡電流の検出結果に基づいて、前記正極線側で発生した地絡である正極側地絡、前記負極線側で発生した地絡である負極側地絡、又は前記正極線側及び前記負極線側の双方で等しい条件で発生した地絡である平衡地絡であると判別することが好ましい。
【0014】
また、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態においても前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記正極側地絡であると判別し、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出されず、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記負極側地絡であると判別し、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出されない検出結果の場合、前記検出部は、前記平衡地絡であると判別することが好ましい。
【0015】
また、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出されず、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記正極側地絡であると判別し、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態においても前記地絡電流が検出される検出結果の場合、前記検出部は、前記負極側地絡であると判別し、前記スイッチング部のオン状態において前記地絡電流が検出され、前記スイッチング部のオフ状態において前記地絡電流が検出されない検出結果の場合、前記検出部は、前記平衡地絡であると判別することが好ましい。
【0016】
これにより、前記スイッチング部のオン状態における検出部の検出結果及び前記スイッチング部のオフ状態における検出部の検出結果から、回路上で発生した地絡が正極側地絡、負極側地絡、又は平衡地絡であると簡便に判別することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、演算せずに、検出結果から正極側及び負極側のいずれか一方の地絡だけでなく、平衡地絡も判別する地絡検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る地絡検出器の回路構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に示した地絡検出器のスイッチング部がオフ状態(a)及びオン状態(b)において正極側地絡の場合に流れる地絡電流を示す模式図である。
【
図3】
図1に示した地絡検出器のスイッチング部がオフ状態(a)及びオン状態(b)において負極側地絡の場合に流れる地絡電流を示す模式図である。
【
図4】
図1に示した地絡検出器のスイッチング部がオフ状態(a)及びオン状態(b)において平衡地絡の場合に流れる地絡電流を示す模式図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る地絡検出器の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の第一実施形態に係る地絡検出器1の回路構成を示す回路図である。
図1で示した第一実施形態に係る地絡検出器1は、直流電源(図示されていない)から負荷(図示されていない)へと延びる正極線Vpと負極線Vnとの間に設けられ、一端が接地Gに接続される。直流電源は、太陽光パネルや蓄電池など負荷に直流電流を供給するものであれば、これに限定しない。
【0021】
地絡検出器1には、互いに直列に接続される第1の抵抗素子R1、第2の抵抗素子R2及び第3の抵抗素子R3と、第1の自己消弧素子Q1及び第2の自己消弧素子Q2と、検出部10とが備えられる。
【0022】
第1の抵抗素子R1及び第2の抵抗素子R2は、第1の抵抗素子R1の一端が第2の抵抗素子R2の一端と接続して第1の接続点P1が構成される。第2の抵抗素子及び第3の抵抗素子R3は、第2の抵抗素子R2の他端が第3の抵抗素子R3と接続して第2の接続点P2が構成される。第一実施形態において、地絡検出器1は、第2の接続点P2を中性点としている。
【0023】
第1の自己消弧素子Q1及び第2の自己消弧素子Q2は、接地端子TG1,TG2同士を接続して第3の接続点P3が構成される。第1の自己消弧素子Q1は、入力端子TI1が第2の接続点P2に接続され、出力端子TO1が正極線Vpに接続される。第2の自己消弧素子Q2は、入力端子TI2が第2の接続点P2に接続され、出力端子TO2が負極線Vnに接続される。例えば、第1の自己消弧素子Q1は、NチャネルMOSFET(Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であり、第2の自己消弧素子Q2は、PNPバイポーラトランジスタ(Bipolar transistor)である。
【0024】
地絡検出器1には、一端が第1の接続点P1に接続し、他端が第3の接続点P3に接続するスイッチング部SWが設けられる。スイッチング部SWは、第1の接続点P1と第3の接続点P3との間をオン状態とオフ状態とに一定の間隔で切り替える。スイッチング部SWがオン状態になると、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間に電位差を発生させて第2の自己消弧素子Q2をオンにさせる。例えば、スイッチング部SWには、一定の間隔でクロック信号を定常的に出力する発振部2と、クロック信号が入力されると第1の接続点P1と第3の接続点P3との間をオフ状態とオン状態とに切り替えるスイッチング素子3と、が備えられる。第一実施形態において、スイッチング素子3はNチャネルMOSFETである。
【0025】
検出部10は、第3の接続点P3と接地Gとの間に設けられ、スイッチング部のオン状態及びオフ状態において地絡発生時に接地Gを経由する地絡電流Igが流れたかをそれぞれ検出し、正極線Vp側及び負極線Vn側のいずれか一方で地絡が発生したこと、又は正極線Vp側及び負極線Vn側の双方に同程度の地絡、即ち平衡地絡が発生したことを判別する。なお、検出部10の構造については、周知であることから、その説明を省略する。
【0026】
第一実施形態に係る地絡検出器1がどのように地絡を判別するかについて説明する。
図2は、
図1に示した地絡検出器1のスイッチング部SWがオフ状態(a)及びオン状態(b)において正極側地絡の場合に流れる地絡電流Igを示している。
図3は、
図1に示した地絡検出器1のスイッチング部SWがオフ状態(a)及びオン状態(b)において負極側地絡の場合に流れる地絡電流Igを示している。
図4は、
図1に示した地絡検出器1のスイッチング部SWがオフ状態(a)及びオン状態(b)において平衡地絡の場合に流れる地絡電流Igを示している。なお、地絡発生時に流れる地絡電流Igは、地絡抵抗Rgを介して接地Gへと流れ、地絡抵抗Rgの抵抗値は、微小でゼロに等しい。
【0027】
地絡検出器1は、スイッチング部SWによって切り替わるオン状態及びオフ状態のそれぞれで地絡電流Igを検出する。正極線Vp側で地絡が発生すると、スイッチング部SWがオフ状態の場合、第3の接続点P3の電位が第2の接続点P2の電位より高いことから、第2の自己消弧素子Q2がオンとなる。地絡電流Igは、
図2(a)のとおり、正極線Vp側で起きた地絡箇所から接地Gに流れ、接地Gより第2の自己消弧素子Q2を介して負極線Vnへと流れる。その際、検出部10は、地絡電流Igの通過が検出される。スイッチング部SWがオン状態の場合も、第3の接続点P3の電位が第2の接続点P2の電位より高いことから、第2の自己消弧素子Q2がオンとなる。地絡電流Igは、
図2(b)のとおり、正極線Vp側で起きた地絡箇所から接地Gに流れ、接地Gより第2の自己消弧素子Q2を介して負極線Vnへと流れる。その際、検出部10は、地絡電流Igの通過が検出される。
【0028】
負極線Vn側で地絡が発生すると、スイッチング部SWがオフ状態の場合、第3の接続点P3の電位が第1の接続点P1の電位より低いことから、第1の自己消弧素子Q1がオンとなる。地絡電流Igは、
図3(a)のとおり、第1の自己消弧素子Q1を通って第3の接続点P3から接地Gに流れ、負極線Vn側で起きた地絡箇所から負極線Vnへと流れる。検出部10は、地絡電流Igの通過を検出する。スイッチング部SWがオン状態の場合、第3の接続点P3の電位が第2の接続点P2の電位より高いことから、第2の自己消弧素子Q2がオンとなる。その際、接地Gに流れる地絡電流Igではなく、正極線Vpから負極線Vnへと流れる貫通電流Itが、
図3(b)のとおり、スイッチング素子3に流れ込み、第2の自己消弧素子Q2を通って負極線Vnへと流れる。このため、検出部10は、地絡電流Igの通過が検出されない。
【0029】
平衡地絡が発生すると、スイッチング部SWがオフ状態の場合、同程度の地絡抵抗Rgが正極線Vp側と負極線Vn側の双方で発生するため電位差が生じず、
図4(a)のとおり、地絡電流Igが流れない。このため、検出部10は、地絡電流Igの通過が検出されない。スイッチング部SWがオン状態の場合、第1の接続点P1の電位が第3の接続点P3の電位に印加されて平衡していた電位に電位差が生じる。第3の接続点P3が第2の接続点P2の電位より高くなり、第2の自己消弧素子Q2がオンとなる。地絡電流Igは、
図4(b)のとおり、正極線Vp側で起きた地絡箇所から接地Gに流れ、接地Gより第2の自己消弧素子Q2を介して負極線Vnへと流れる。その際、検出部10は、地絡電流Igの通過が検出される。
【0030】
第一実施形態に係る地絡検出器1は、スイッチング部SWのオフ状態及びオン状態における検出部10の検出結果から、以下のとおりに地絡を判別する。検出部10の検出結果が、スイッチング部SWのオフ状態及びオン状態のいずれにおいても地絡電流が検出されている場合、検出部10は、正極線Vp側で地絡が発生する正極側地絡であると判別する。また、検出部10の検出結果が、スイッチング部SWのオフ状態において地絡電流が検出され、スイッチング部SWのオン状態において地絡電流が検出されてない場合、検出部10は、負極線Vn側で地絡が発生する負極側地絡であると判別する。また、検出部10の検出結果が、スイッチング部SWのオフ状態において地絡電流が検出されず、スイッチング部SWのオン状態において地絡電流が検出される場合、検出部10は、平衡地絡であると判別する。従って、本発明の第一実施形態に係る地絡検出器1は、演算せずに、検出部10の検出結果から、正極側地絡、負極側地絡及び平衡地絡を判別することができる。
【0031】
第二実施形態に係る地絡検出器1について説明する。
図5は、本発明の第二実施形態に係る地絡検出器の回路構成を示す回路図である。
図5に示す地絡検出器1は、第1の接続点P1を中性点としている。スイッチング部SWは、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間をオン状態とオフ状態とに一定の間隔で切り替える。スイッチング部SWがオン状態になると、第1の接続点P1と第3の接続点P3との間に電位差を発生させて第1の自己消弧素子Q1をオンにさせる。第二実施形態に係るスイッチング素子3は、リレースイッチである。
【0032】
第二実施形態に係る地絡検出器1は、スイッチング部SWのオフ状態及びオン状態における検出部10の検出結果をまとめると、以下のとおりに地絡を判別する。検出部10の検出結果が、スイッチング部SWのオフ状態において地絡電流が検出され、スイッチング部SWのオン状態において地絡電流が検出されてない場合、検出部10は、正極側地絡であると判別する。また、スイッチング部SWのオフ状態及びオン状態のいずれにおいても地絡電流が検出されている場合、検出部10は、負極側地絡であると判別する。また、検出部10の検出結果が、スイッチング部SWのオフ状態において地絡電流が検出されず、スイッチング部SWのオン状態において地絡電流が検出される場合、検出部10は、平衡地絡であると判別する。従って、本発明の第二実施形態に係る地絡検出器1もまた、演算せずに、検出部10の検出結果から、正極側地絡、負極側地絡及び平衡地絡を判別することができる。
【0033】
第一実施形態及び第二実施形態に係る地絡検出器1は、スイッチング部SWによるオン状態の際に、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間、又は第1の接続点P1と第3の接続点P3との間で電位差が生じるが、スイッチング部SWによるオフ状態の際に、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間、又は第1の接続点P1と第3の接続点P3との間で電位差が生じてもよく、これに限定しない。
【0034】
また、第一実施形態及び第二実施形態において、第1の自己消弧素子Q1はNチャネルMOSFET、第2の自己消弧素子Q2はPNPバイポーラトランジスタであるが、第1の自己消弧素子Q1はNPNバイポーラトランジスタ及び絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)のいずれか、第2の自己消弧素子Q2はPチャネルMOSFETであってもよい。地絡で起きる電位差とは別に、スイッチング部SWのオン状態とオフ状態との切り替えで、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間、又は第1の接続点P1と第3の接続点P3との間で電位差が生じればよく、これに限定しない。
【0035】
また、第一実施形態に係るスイッチング素子3はNチャネルMOSFETであり、第二実施形態に係るスイッチング素子3はリレースイッチであるが、第2の接続点P2と第3の接続点P3との間、又は第1の接続点P1と第3の接続点P3との間をオフ状態とオン状態とに切り替えることができるスイッチングであればよく、IGBTなどのその他のトランジスタであってもよい。
【0036】
このことから、本発明に係る地絡検出器1は、オン状態及びオフ状態のそれぞれにおける地絡電流Igの検出結果に基づいて、正極側地絡、負極側地絡及び平衡地絡を判別することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 地絡検出器
2 発振部
3 スイッチング素子
10 検出部
G 接地
Ig 地絡電流
It 貫通電流
P1 第1の接続点
P2 第2の接続点
P3 第3の接続点
Q1 第1の自己消弧素子
Q2 第2の自己消弧素子
R1 第1の抵抗素子
R2 第2の抵抗素子
R3 第3の抵抗素子
SW スイッチング部
TG1 接地端子
TG2 接地端子
TI1 入力端子
TI2 入力端子
TO1 出力端子
TO2 出力端子
Vn 負極線
Vp 正極線
【要約】
【課題】本発明は、演算せずに、検出結果から正極側及び負極側のいずれか一方の地絡だけでなく、平衡地絡も判別する地絡検出器を提供する。
【解決手段】直流電源から延びる正極線Vpと負極線Vnとの間に設けられ、第1の抵抗素子R1、第2の抵抗素子R2及び第3の抵抗素子R3と、第1の自己消弧素子Q1と、第2の自己消弧素子Q2と、検出部10と、を備え、一端を第1の抵抗素子R1及び第2の抵抗素子R2が接続する第1の接続点P1に接続し、他端を第1の自己消弧素子Q1及び第2の自己消弧素子Q2の接地端子TG1,TG2同士が接続する第3の接続点P3に接続し、オン状態及びオフ状態のいずれかで第2の接続点P2と第3の接続点P3との間に電位差を発生させるスイッチング部SWが設けられ、オン状態及びオフ状態において地絡電流Igが検出部10に流れたかを検出し、正極側地絡、負極側地絡及び平衡地絡を判別する。
【選択図】
図1