(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】仮設床材及びそのつかみ金具
(51)【国際特許分類】
E04G 7/34 20060101AFI20240418BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20240418BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E04G7/34 303B
E04G5/08 B
F16B2/10 D
(21)【出願番号】P 2020020221
(22)【出願日】2020-02-08
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019031104
(32)【優先日】2019-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】川久 亮祐
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-161636(JP,A)
【文献】実開昭54-154524(JP,U)
【文献】実開昭50-075735(JP,U)
【文献】特開2001-164750(JP,A)
【文献】特開平08-013786(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 7/06
E04G 7/22
E04G 7/34
E04G 5/08
F16B 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材
の角部に配置され、仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の鉛直荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座して仮設床材の鉛直荷重を該横架材に伝達する着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具。
【請求項2】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座するための着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有
し、
前記本体部分の着座面及び前記可動フックの横架材係合面によって画成される横架材収容域に前記横架材を収容するとともに、前記着座面によって仮設床材の荷重を前記横架材に伝達し、
前記横架材の下半部外周面に沿って延びる前記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面と前記横架材との係合又は衝合によって所定寸法以上のつかみ金具の上方変位を阻止し、
前記本体部分の着座面又は前記可動フックの横架材係合面と前記横架材との係合又は衝合によってつかみ金具の水平変位を拘束するようにしたことを特徴とする
仮設床材のつかみ金具。
【請求項3】
前記横架材を受入れるための前記横架材収容域の開口部が、前記可動フックの横架材係合面の縁部(13d)と前記外れ止め部材又は外れ止め部分の先端部(5d,12d)との間に形成され、前記本体部分は、前記可動フックを回動可能に支持する枢支軸を有し、該枢支軸は、前記横架材の中心軸線と実質的に平行な枢動軸線を有し、前記可動フックは、その横架材係合面が前記横架材に押圧されることにより、前記枢動軸線を中心に上方に回動し、前記開口部の開口寸法を拡大することを特徴とする請求項2に記載のつかみ金具。
【請求項4】
前記縁部(13d)と前記先端部(5d,12d)との離間距離(D2)は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材の直径(D1)よりも小さく、前記可動フックの回動により前記開口部を拡開した状態において前記横架材の直径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のつかみ金具。
【請求項5】
前記可動フックの先端下面(13b, 68)は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材の中心軸線の高さ位置よりも下方に位置し、前記可動フックの回動又は面内変位により前記開口部の開口寸法を拡大した状態において前記横架材の中心軸線の高さ位置と実質的に同一又は該高さ位置よりも上方に位置することを特徴とする請求項
3又は4に記載のつかみ金具。
【請求項6】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座するための着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有
し、
前記可動フックは、その枢動軸線を中心とする円弧状軌道に沿って延在する湾曲スロットを有し、該スロットを貫通するガイドピンが前記本体部分に突設され、前記枢動軸線を中心とした前記可動フックの回動の角度範囲は、前記スロット及び前記ガイドピンによって規制されることを特徴とする
仮設床材のつかみ金具。
【請求項7】
前記枢支軸は、前記横架材の床材本体側の領域に配置され、或いは、前記本体部分の先端部に配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載のつかみ金具。
【請求項8】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座するための着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有
し、
前記可動フックは、前記本体部分の側面に突設されたスタッド又は支軸が貫通するスロット又は長孔を有し、該スロット又は長孔と前記スタッド又は支軸との相対変位により、面内変位することを特徴とする
仮設床材のつかみ金具。
【請求項9】
前記可動フックは、上下方向に間隔を隔てた複数の前記スロット又は長孔と、上下方向に間隔を隔てた複数のスタッド又は支軸とを有することを特徴とする請求項8に記載のつかみ金具。
【請求項10】
前記スロット又は長孔と、前記スタッド又は支軸とは、前記横架材の床材本体側の領域に配置され、或いは、前記本体部分の先端部に配置されることを特徴とする請求項8又は9に記載のつかみ金具。
【請求項11】
仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座するための着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有
し、
前記本体部分の着座面及び前記可動フックの横架材係合面は、前記横架材の外周面に面接触し又は近接して延びるように湾曲しており、前記横架材の下半部外周面に沿って延びる前記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材から離間し、前記可動フックの横架材係合面は、該係止位置において前記横架材から僅かに離間し、或いは、該可動フックの自重により前記横架材の外周面に接触し又は着座することを特徴とする
仮設床材のつかみ金具。
【請求項12】
前記開口部(λ)の開口平面(ω)の垂線方向(μ)は、水平面(HL)に対して30~70度の角度範囲内の傾斜角(θ)をなす方向に配向されることを特徴とする請求項3又は4に記載のつかみ金具。
【請求項13】
前記外れ止め部材又は外れ止め部分は、前記本体部分に一体化し又は固定された固定爪、或いは、前記本体部分に取付けられた重力式又はセルフロック式の可動爪からなることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のつかみ金具。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載されたつかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材。
【請求項15】
前記床材本体は、一体成形された単一の床材部品から構成され、或いは、複数の床材部品を並列且つ一体的に連結した複合構造を有し、
前記床材部品は、幅350mm以下且つ長さ400mm以上のアルミ押出形材からなり、
該押出形材は、前記作業床又は作業通路の床面を形成する床板部分と、長手方向に延びる補剛リブとを有することを特徴とする請求項14に記載の仮設床材。
【請求項16】
前記床材本体の床面を布方向に延長する床面延設部材を更に有し、
前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において、前記横架材の中心軸線は、前記床材本体の下面よりも下方の高さ位置に位置し、前記床材本体の端部は、前記横架材から15mm以上の水平距離(St)を隔てて離間し、前記床面と前記横架材の頂部との高低差(Sh)は、15mm以上の寸法に設定され、前記横架材の直径延長線上の寸法(S1,S2)として15mm以上の寸法を有する自由空間が前記横架材の外周域に形成されることを特徴とする請求項14又は15に記載の仮設床材。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれか1項に記載された仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去するために、該仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された前記つかみ金具を前記横架材から離脱させる作業において、前記外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、前記可動フックの横架材係合面を前記横架材の上半部外周面に摺接させて該可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、前記つかみ金具を前記横架材から離脱させることを特徴とする仮設床材の施工方法。
【請求項18】
前記横架材を斜め上方に移動させる前に、前記つかみ金具を僅かに上方に持ち上げ、前記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面と前記横架材の下半部外周面とを過渡的に近接、当接又は衝合させることを特徴とする請求項17に記載の仮設床材の施工方法。
【請求項19】
前記仮設床材を仮設構造物の横架材に架設又は懸架するために、該仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された前記つかみ金具を前記横架材に係止する作業において、前記外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うことなく、前記仮設床材を斜め下方に移動させて前記つかみ金具を前記横架材に接近させることにより、前記可動フックの横架材係合面を前記横架材の上半部外周面に摺接させて該可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、前記着座面を前記横架材の上半部外周面に着座させることを特徴とする請求項17又は18に記載の仮設床材の施工方法。
【請求項20】
請求項15又は16に記載され、各端部の左右のつかみ金具の外れ止め部材又は外れ止め部分として、重力式セルフロック機構(7,8)を有する可動爪(5)を備えた仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された前記仮設床材を該横架材から撤去するために前記つかみ金具を前記横架材から離脱させる作業において、前記外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うとともに、前記可動フックを回動又は面内変位させて前記つかみ金具の開口部(λ)を拡開し、前記つかみ金具を前記横架材から離間せしめることを特徴とする仮設床材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設床材及びそのつかみ金具に関するものであり、より詳細には、仮設足場の横架材等に係合するつかみ金具によって隣り合う横架材等の間に架設又は懸架され、仮設足場の作業通路又は作業床を形成する仮設床材及びそのつかみ金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構造物、プラント設備等の建設工事に使用される仮設足場として、枠組足場、単管足場、楔結合式足場等の各種形式の仮設足場が日本国内において広く普及している。枠組足場又は楔結合式足場等において作業通路又は作業床を構成する仮設床材として、「床付き布わく」(床付き布枠)が知られている(特許文献1~4、非特許文献1)。床付き布枠(布わく)は、床材、布材、梁材及びつかみ金具等を一体的に組み付けた構成を有する金属製の仮設床材であり、床付き布枠の各部構造については、比較的厳格な基準が定められている(非特許文献2)。例えば、つかみ金具は、原則として、非特許文献2に記載される如く、「建わくの横架材からの浮き上がりを防止するための外れ止めを有していること」を要する。
【0003】
一般に、床付き布枠は、左右一対のつかみ金具を両端部に有する。各つかみ金具のフック部分は、建てわく(建枠)の横架材、或いは、左右の支柱に楔結合した腕木等に係止する。各つかみ金具の外れ止め(可動爪)は、重力式セルフロック機構を有し、つかみ金具のフック部分を横架材又は腕木等(以下、横架材、腕木、桁材、梁材等の床荷重支持用の横部材又は水平部材を総称して「横架材」というものとする。)に係止すると、セルフロック機構がこの係止動作に機構連動してつかみ金具を横架材に自動的にロックし、横架材に対するフック部分の係止状態を拘束する。かくして、各つかみ金具は、セルフロック式に横架材上に係留されるが、床付き布枠を横架材から撤去する際には、セルフロック機構を手作業で解放しなければならない。
図23(A)及び
図23(B)には、従来の床付き布枠100を建枠Aの横架材Bから取り外す過程が例示されている。足場解体時等に床付き布枠を横架材から取り外す際には、
図23(A)に示す如く、床付き布枠100の両端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を実質的に同時に手動解放して床付き布枠100を全体的に持ち上げるか、或いは、
図23(B)に示す如く、床付き布枠100の一端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を手動で解放して床付き布枠100の一端部を持ち上げ、その傾斜状態を維持しつつ、床付き布枠100の他端部に設けられたつかみ金具104の重力式セルフロック機構を手動で解放して床付き布枠100の他端部を更に持ち上げる必要が生じる。前者の床付き布枠撤去作業は、一枚の床付き布枠の撤去のために複数の作業従事者等(以下、「作業者」という。)を要する作業形態であるので、実務的には、あまり採用されていない。他方、後者の床付き布枠撤去作業は、作業者が単独で遂行し得る作業であり、これは、一般に採用される作業形態であるが、作業者の負担が比較的大きいことから、作業上の負担を軽減することが望ましい。
【0004】
床付き布枠撤去時の作業上の負担を軽減する対策として、外れ止めの重力式セルフロック機構を過渡的に解放状態に保持し得るように構成された床付き布枠が特許文献5に記載されている。この構成の床付き布枠においては、外れ止めを解放した直後につかみ金具を持ち上げて横架材上に載置することができるので、一端部の荷重を横架材によって過渡的に支持又は支承した状態で他端部の外れ止めを解放することができる。このような床付き布枠を使用した場合、単独の作業者が床付き布枠の端部間で移動して各端部を順次持ち上げ、床付き布枠を比較的容易に撤去し得るかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-160666号公報
【文献】特開2010-185262号公報
【文献】特開2014-80845号公報
【文献】特開2000-179149号公報
【文献】特開2017-166207号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】建築工事標準仕様書・同解説、JASS2、仮設工事(社団法人日本建築学会発行)
【文献】仮設工事認定基準とその解説、第8版(一般社団法人仮設工業会発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の床付き布枠は、4箇所のつかみ金具の全てにセルフロック式可動爪を外れ止め部材として備えるので、作業者が全てのつかみ金具の手動ロック解除操作を行う必要があり、従って、床付き布枠撤去時に床付き布枠の一端部の荷重を横架材で過渡的に支持又は支承し得たとしても、床付き布枠撤去作業は、一般に作業者が単独で(一人で)遂行することが多いという実務上の実態等を考慮すると、更なる作業者の負担軽減を図る対策が望まれる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することにある。なお、本明細書において「仮設床材」の用語は、床付き布枠に限定されず、布枠を備えない床材を包含した仮設足場の床構造体、床構成部材又は床構成要素を総称する用語として記載したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の角部に配置され、仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の鉛直荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座して仮設床材の鉛直荷重を該横架材に伝達する着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する。
【0010】
本発明は又、上記目的を達成すべく、仮設足場の作業床又は作業通路を形成する仮設床材のつかみ金具であって、
仮設床材の端部から布方向又は桁方向に突出するように床材本体の端部に突設され、仮設床材を支持又は支承する横架材に係止して仮設床材の荷重を該横架材に伝達する仮設床材のつかみ金具において、
前記床材本体に固定される基部と、前記横架材の上半部外周面に着座するための着座面とを備えた本体部分と、
前記横架材の床材本体側の領域で前記本体部分に設けられた外れ止め部材又は外れ止め部分と、
前記本体部分に回動可能又は面内変位可能に支持又は支承され、前記床材本体とは反対の側において前記横架材の上半部外周面に沿って延びる横架材係合面を備え、前記横架材によって該横架材係合面を押圧することにより、前記本体部分に対して上方に回動し、或いは、該本体部分に対して相対的に面内変位する可動フックとを有する仮設床材のつかみ金具であり、
下記(1)、(2)、(3)又は(4)のいずれかの構成又は構造を更に有することを特徴とする仮設床材のつかみ金具を提供する。
(1)前記本体部分の着座面及び前記可動フックの横架材係合面によって画成される横架材収容域に前記横架材を収容するとともに、前記着座面によって仮設床材の荷重を前記横架材に伝達し、
前記横架材の下半部外周面に沿って延びる前記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面と前記横架材との係合又は衝合によって所定寸法以上のつかみ金具の上方変位を阻止し、
前記本体部分の着座面又は前記可動フックの横架材係合面と前記横架材との係合又は衝合によってつかみ金具の水平変位を拘束する(請求項2)。
(2)前記可動フックは、その枢動軸線を中心とする円弧状軌道に沿って延在する湾曲スロットを有し、該スロットを貫通するガイドピンが前記本体部分に突設され、前記枢動軸線を中心とした前記可動フックの回動の角度範囲は、前記スロット及び前記ガイドピンによって規制される(請求項6)。
(3)前記可動フックは、前記本体部分の側面に突設されたスタッド又は支軸が貫通するスロット又は長孔を有し、該スロット又は長孔と前記スタッド又は支軸との相対変位により、面内変位する(請求項8)。
(4)前記本体部分の着座面及び前記可動フックの横架材係合面は、前記横架材の外周面に面接触し又は近接して延びるように湾曲しており、前記横架材の下半部外周面に沿って延びる前記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面は、前記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において前記横架材から離間し、前記可動フックの横架材係合面は、該係止位置において前記横架材から僅かに離間し、或いは、該可動フックの自重により前記横架材の外周面に接触し又は着座する(請求項11)。
なお、本明細書において、「回動」は、必ずしも特定の回転中心を中心とした回転方向の運動に限定されるものではなく、横架材の外周面に沿う方向に移動又は変位する揺動を含む概念である。また、本明細書において、「面内変位」は、可動フック又は本体部分の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内、或いは、実質的に鉛直な平面内における可動フックの変位を意味する。この面内変位は、側面視における可動フックの挙動により特定し得る可動フックの二次元的変位として把握しても良い。
【0011】
本発明の上記構成によれば、つかみ金具の着座面が横架材の外周面に着座することにより、仮設床材の鉛直荷重が着座面を介して横架材に伝達し、仮設床材は、横架材によって支持又は支承される。仮設床材の鉛直荷重(上下方向)又は水平変位(布方向又は桁方向)は、横架材と着座面又は横架材係合面との係合又は衝合によって阻止される。上向き鉛直の外力がつかみ金具の本体部分に作用するとともに、床材本体の側に向かう水平荷重がつかみ金具の本体部分に作用すると、横架材の外周面が可動フックの横架材係合面を押圧し、この結果、可動フックは上方に受動(働)的に回動し又は面内変位して横架材収容域を開放する。即ち、仮設足場を全体的に傾斜させた後、仮設床材を上方且つ水平方向、或いは、全体的に斜め上方(傾斜方向)に変位させることにより、つかみ金具と横架材との係合を解くことができるので、作業者は、仮設床材の端部間で移動して両端部のつかみ金具を手動操作することを要しない。かくして、仮設床材撤去作業の作業性が大きく改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷は、大幅に軽減する。
【0012】
他の観点より、本発明は、上記構成のつかみ金具を少なくとも一方の端部に備えた仮設床材を提供する。
【0013】
更に他の観点より、本発明は、上記仮設床材の施工方法であって、
仮設構造物の横架材に架設又は懸架された仮設床材を横架材から撤去するために、仮設床材の少なくとも一方の端部に配置された上記つかみ金具を横架材から離脱させる作業において、上記外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うことなく、仮設床材を斜め上方(η)に移動させることにより、上記可動フックの横架材係合面を横架材の上半部外周面に摺接させて可動フックを受動的に回動又は面内変位せしめ、つかみ金具を横架材から離脱させることを特徴とする仮設床材の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成の可動フックを備えた本発明のつかみ金具、仮設床材又はその施工方法によれば、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好適な実施例(第1実施例)に係るつかみ金具を備えた仮設床材を全体的に示す斜視図、平面図及び側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第1押出形材の斜視図、端面図及び底面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す第2押出形材の斜視図、端面図及び底面図である。
【
図5】
図5(A)及び
図5(B)は、可動爪式つかみ金具及び可動フック式つかみ金具の構成を示す仮設床材の部分拡大側面図であり、
図5(C)は、可動爪式つかみ金具の構造を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、可動フック式つかみ金具の構造を示す側面図、端面図及び斜視図である。
図6(A)には、可動フックを配置した側のつかみ金具の側面図が示されており、
図6(B)には、可動フックとは反対の側のつかみ金具の側面図が示されている。
【
図7】
図7は、可動フック式つかみ金具の平面図、I-I線断面図、II-II線断面図及び底面図である。
【
図8】
図8は、仮設床材の撤去作業と関連したつかみ金具の作動態様を段階的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る仮設床材の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、従来構造のつかみ金具を備えた床付き布枠(比較例)に関し、その撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、床面延設部材の構造を示す斜視図及び縦断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の他の好適な実施例(第2実施例)に係る仮設床材を全体的に示す斜視図及び平面図である。
【
図14】
図14は、
図12に示す仮設床材を構成する押出形材を示す斜視図、平面図及び側面図である。
【
図15】
図15は、押出形材の拡大端面図及び部分破断拡大側面図である。
【
図16】
図16は、左右一対の押出形材をジョイント部材によって連結する態様を概念的に示す正面図である。
【
図17】
図17(A)は、左右一対の押出形材をジョイント部材によって連結してなる仮設床材の構成(フルサイズ)を示す縦断面図であり、
図17(B)は、単一の押出形材より構成される仮設床材の構成(ハーフサイズ)を示す縦断面図である。
【
図18】
図18(A)は、単一の押出形材より構成される仮設床材の一端部の構成を示す端面図であり、
図18(B)は、
図18(A)に示す仮設床材の他端部の構成を示す端面図である。
【
図19】
図19は、本発明の更に他の実施例(第3実施例)に係る可動フック式つかみ金具の構造を示す側面図である。
図19(A)には、可動フックを配置した側のつかみ金具の側面図が示されており、
図19(B)には、可動フックとは反対の側のつかみ金具の側面図が示されており、
図19(C)には、外れ止めのロックを解除した状態が示されている。
【
図20】
図20(A)及び
図20(B)は、上記各実施例の変形例(第4実施例)に係る可動フック式つかみ金具の構造を示す側面図及び部分拡大側面図であり、つかみ金具を横架材に係止した状態が示されている。
【
図21】
図21(A)及び
図21(B)は、
図20に示すつかみ金具を横架材から僅かに上昇させた状態を示すつかみ金具の側面図及び部分拡大側面図である。
【
図22】
図22(A)及び
図22(B)は、
図21に示すつかみ金具を横架材に対して斜め上方に移動させた状態を示すつかみ金具の側面図及び部分拡大側面図である。
【
図23】
図23(A)及び
図23(B)は、従来の床付き布枠を建枠の横架材から取り外す過程を示す仮設足場の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態において、外れ止め部材又は外れ止め部分は、上記本体部分に一体化し又は固定された固定爪、或いは、本体部分に取付けられた重力式又はセルフロック式の可動爪からなる。上記横架材を受入れるための上記横架材収容域の開口部が、上記横架材係合面の縁部(13d)と、上記外れ止め部材又は外れ止め部分の先端部(5d,12d)との間に形成される。本体部分は、可動フックを回動可能に支持する枢支軸を有し、枢支軸は、横架材の中心軸線と実質的に平行な枢動軸線を有し、可動フックは、その横架材係合面が横架材に押圧されることにより、枢動軸線を中心に上方に回動し、開口部の開口寸法(D2)を拡大する。所望により、枢支軸は、横架材の床材本体側の領域に配置され、或いは、本体部分の先端部に配置される。好ましくは、開口部の開口寸法、即ち、上記縁部(13d)と上記先端部(5d,12d)との離間距離(D2)は、上記着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において横架材の直径(D1)よりも小さく、可動フックの回動により開口部を拡開した状態において横架材の直径(D1)よりも大きい。更に好ましくは、可動フックの先端下面(13b,68)は、つかみ金具の係止位置(着座面が横架材に着座した状態のつかみ金具の位置)において横架材の中心軸線(Bc)の高さ位置(HL)よりも下方に位置し、可動フックの回動又は面内変位により開口部の開口寸法(D2)を拡大した状態において横架材の中心軸線の高さ位置(HL)と実質的に同一又はこの高さ位置(HL)よりも上方に位置する。
【0017】
本発明の好適な実施形態によれば、係止位置における可動フックの位置は、可動フックがその自重により横架材の外周面に着座することにより設定され、或いは、スロットの上端部とガイドピンとの係合又は当接等により設定される。外れ止めは、横架材の外周面に接触し又は近接するようにして横架材の下半部外周域に湾曲して延び、平面視における外れ止めと横架材との重なり寸法(β)は、5mm以上且つ15mm以下の範囲内(例えば、約10mm)に設定される。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、可動フックは、上下方向に間隔を隔てた複数のスロット又は長孔と、上下方向に間隔を隔てた複数のスタッド又は支軸とを有する。所望により、スロット又は長孔と、スタッド又は支軸とは、横架材の床材本体側の領域に配置され、或いは、本体部分の先端部に配置される。
【0019】
本発明の更に好適な実施形態によれば、横架材収容域(ε)の開口部(λ)は、その開口平面(ω)の垂線方向(μ)を、水平面(HL)に対して傾斜角(θ)をなす方向に配向した構成を有し、傾斜角(θ)は、30~70度の角度範囲内、好ましくは、35~65度の角度範囲内、更に好ましくは、40~60度の角度範囲内の角度に設定される。
【0020】
本発明に係る仮設床材の好適な実施形態によれば、上記床材本体は、一体成形された単一の床材部品から構成され、或いは、複数の床材部品を並列且つ一体的に連結した複合構造を有する。好ましくは、床材部品は、幅350mm以下且つ長さ400mm以上のアルミ押出形材からなり、押出形材は、作業床又は作業通路の床面を形成する床板部分と、長手方向に延びる補剛リブとを有する。好適には、床材本体は、1200mm以上、好ましくは、1500mm以上の長さを有し、つかみ金具の本体部分の基部(11a)が、床材本体の側端部に位置するアルミ押出形材の補剛リブ(24:27:41)に固定される。
【0021】
好ましくは、本発明に係る仮設床材は、床材本体の床面を布方向に延長する床面延設部材を更に有し、着座面が前記横架材に着座したつかみ金具の係止位置において、横架材の中心軸線は、床材本体の下面よりも下方の高さ位置に位置し、床材本体の端部は、横架材から15mm以上の水平距離(St)を隔てて離間し、床面と横架材の頂部との高低差(Sh)は、15mm以上の寸法に設定され、横架材の直径延長線上の寸法(S1,S2)として15mm以上の寸法を有する自由空間が前記横架材の外周域に形成される。本発明に係る仮設床材の好適な実施形態によれば、上記水平距離(St)は、50mm以下、好適には、30~40mmの範囲内の寸法(例えば、35mm)に設定され、上記高低差(Sh)は、50mm以下、好適には、20~30mm範囲内の寸法(例えば、25mm)に設定され、自由空間の寸法(S1,S2)は、50mm以下、好適には、20mm~35mmの範囲内の寸法(例えば、25mm)に設定される。好ましくは、床材本体の下面(2b)は、上記横架材収容域を構成する凹所の中心(Bc)よりも上方の高さ位置に位置し、床材本体の下面と中心との高低差(ΔS)は、15mm以下の寸法(例えば、6mm)に設定される。更に好ましくは、床面延設部材は、床材本体の端部に固定されたアルミ押出形材からなり、床材本体の上面を延長する水平延出板部分(30)と、この水平延出板部分の基端部から垂下する鉛直板部分(31)と、上記横架材の外周面と対向して自由空間を画成する斜行板部分(32)とを有する。鉛直板部分は、床材本体を構成するアルミ押出形材の端面に当接し、押出形材の当て板又はカバープレートを構成する。好適には、斜行板部分は、識別表示として機能する表示具を脱着可能に保持する保持部を有する。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態において、上記床材本体は、床材を布枠(梁材及び布材)に組付けた構造を有し、上記つかみ金具は、布枠に取付けられ、床材本体及びつかみ金具は、床付き布枠を構成する。
【0023】
本発明に係る仮設床材の施工方法の好適な実施形態よれば、上記横架材を斜め上方に移動させる前に、上記つかみ金具を僅かに上方に持ち上げ、上記外れ止め部材又は外れ止め部分の横架材係合面と横架材の下半部外周面とを過渡的に近接、当接又は衝合させる工程が採用される。
【0024】
所望により、仮設床材を仮設構造物の横架材に架設又は懸架するために、仮設床材の少なくとも一方の端部に配置されたつかみ金具を横架材に係止する作業において、外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うことなく、仮設床材を斜め下方に移動させてつかみ金具を横架材に接近させることにより、横架材係合面を横架材の上半部外周面に摺接させて可動フックを受動的に上方に回動又は面内変位せしめ、着座面を横架材の上半部外周面に着座させても良い。
【0025】
また、各端部の左右のつかみ金具の外れ止め部材又は外れ止め部分として、重力式セルフロック機構(7,8)を有する可動爪(5)を備えた仮設床材の施工方法によれば、横架材に架設又は懸架された仮設床材を該横架材から撤去するためにつかみ金具を横架材から離脱させる作業において、外れ止め部材又は外れ止め部分のロック解除操作を行うとともに、可動フックを上方に回動又は面内変位させてつかみ金具の開口部(λ)を拡開し、つかみ金具を前記横架材から離間せしめる工程を採用することが可能となる。
【実施例1】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の好適な実施例に係るつかみ金具を備えた仮設床材を全体的に示す斜視図、平面図及び側面図である。
図2は、
図1に示す仮設床材の縦断面図であり、
図3及び
図4は、
図1に示す仮設床材を構成する押出形材の斜視図、端面図及び底面図である。
【0028】
図1(A)には、枠組足場の建枠Aに支持又は支承された仮設床材1が示されている。建枠Aは、横架材B及び脚柱Cを一体化し、補剛材D、E等によって補強してなる鋼製の枠体である。仮設床材1は、床材本体2を有し、床材本体2の上面(床面)20は、仮設足場の作業通路又は作業床を構成する。床面延設部材3が、床材本体2の両端部に一体的に取付けられる。
図1(B)及び
図1(C)に示す如く、左右一対の可動爪式つかみ金具4が、床材本体2の一端部に配設され、左右一対の可動フック式つかみ金具10が、床材本体2の他端部に配設される。つかみ金具4、10は、床材本体2の端部から布方向又は桁方向に突出する。つかみ金具4、10の取付け位置は、
図1(B)に示す如く、仮設床材1の平面視鉛直中心軸線に対して180度の回転対称の位置である。なお、以下の説明においては、枠組足場の建枠Aの横架材Bに仮設床材1を架設した構成について説明するが、本実施例の仮設床材1は、枠組足場のみならず、楔結合式足場においても横架材(腕木)間に架設し得るように設計されており、従って、枠組足場及び楔結合式足場の各形式の足場において共用又は兼用可能な仮設床材である。
【0029】
仮設床材1は、つかみ金具4、10を建枠Aの横架材Bに係止することにより、隣り合う建枠Aの横架材B間に架設又は懸架される。つかみ金具4、10は、仮設床材1の荷重を横架材Bに伝達する。つかみ金具4は、従来構成のセルフロック式つかみ金具であり、つかみ金具10は、本発明に従って、後述する外れ止め12及び可動フック13(
図5)を備える。仮設床材1は、布枠(布材及び梁)を備えておらず、補剛リブ24~29(
図2)を備えたアルミニウム製又はアルミニウム合金製の上記床材本体2、床面延設部材3及びつかみ金具4、10から構成される。補剛リブ24~29は、鉛直荷重等に抗する曲げ剛性(断面係数等)の向上という点でおいて、床付き布枠の布枠又は布地材に相当する構造要素である。
【0030】
図2に示す如く、床材本体2は、第1押出形材21及び第2押出形材22を中央連結部2aにおいて一体的に連結した構造を有する。
図3に示す如く、第1押出形材21は、補剛用の側縁リブ24、中間リブ25及び連結リブ26を床板部分21aに一体成形したアルミ押出形材からなる。
図4に示す如く、第2押出形材22は、補剛用の側縁リブ27、中間リブ28及び連結リブ29を床板部分22aに一体成形したアルミ押出形材からなる。側縁リブ24、27、中間リブ25、28及び連結リブ26、29は、幅方向(梁間方向又は腕木方向)に間隔を隔てて並列配置され、互いに平行且つ長手方向(布方向又は桁方向)に延びる。側縁リブ24、27の上縁部は、下側に屈曲した屈曲部24a、27aを有し、側縁リブ24、27の下縁部は、下方に突出した突出部24b、27bを有する。屈曲部24a、27a及び突出部24b、27bは、複数の仮設床材1を段積みした状態で互いに係合し、仮設床材1の段積み状態を安定化するためのものであるが、この点ついては、本出願人の出願に係る特願2018-133770号の明細書・図面に詳細に記載されているので、特願2018-133770号明細書・図面を引用することにより、更なる詳細な説明は、省略する。
【0031】
図2に示す如く、連結リブ26、29は、中央連結部2aにおいて連接され、溶接等の固着手段により一体化される。具体的には、連結リブ26、29は、連結リブ29の突起29aを連結リブ26の溝26aに挿入又は嵌入し、連結リブ26、29の屈曲部26b、29bを上下に重ね合わせ、連結リブ26、29の鉛直部26c、29cを突付けることによって連接され、屈曲部26b、29bを溶接等の固着手段で接合することによって一体化される。
【0032】
本例において、押出形材21、22は、幅約250mm、高さ約45mm、長さ約1700mmの寸法を有する。仮設床材1の全幅は、約500mmである。なお、本例の仮設床材1は、二体の押出形材21、22を並列に連結した構造を有するが、所望により、一体の押出形材のみによって仮設床材1を構成し、或いは、三体以上の押出形材を並列に連結して仮設床材1を構成することも可能である。
【0033】
図5(A)及び
図5(B)は、可動爪式つかみ金具4及び可動フック式つかみ金具10の構成を示す仮設床材1の部分拡大側面図であり、
図5(C)は、可動爪式つかみ金具4の構造を示す斜視図である。
図6は、可動フック式つかみ金具10の構造を示す側面図、端面図及び斜視図であり、
図7は、可動フック式つかみ金具10の平面図、I-I線断面図、II-II線断面図及び底面図である。
【0034】
図5(A)及び
図5(B)に示す如く、可動爪式つかみ金具4(以下、「つかみ金具4」という。)は、従来構成のものであり、重力式(セルフロック式)の可動爪からなる外れ止め5と、横架材Bの上面に着座して横架材Bに係止するつかみ金具本体6(以下、「本体6」という。)とから構成される。
図2及び
図5(A)に示す如く、本体6の基部6aが、ボルト孔6c(
図5(C))を貫通するボルト・ナット組立体6bによって側縁リブ24、27の鉛直部24c、27c(
図2)に固定される。
【0035】
外れ止め5及び本体6は夫々、一体成形されたアルミ製部品からなる。外れ止め5は、湾曲スロット(長孔)7を有し、スロット7を貫通する上下一対の水平スタッド(水平支軸)8が、本体6の側面に水平に突設される。外れ止め5は、常時は、重力下に降下した降下位置(
図5(A)及び
図5(C))に位置する。上側のスタッド8は、スロット7の上縁部分を支承し、外れ止め5の係止部5aは、横架材Bの下半部外周面に接触し又は近接する。外れ止め5は、
図5(A)に示すように、横架材Bの下半部外周域に延び、平面視において外れ止め5と重なり、重なり寸法αは、5mm以上且つ15mm以下、例えば、約10mmに設定される。風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり等は、係止部5aと横架材Bとの係合によって阻止される。
【0036】
円形断面の番線挿通孔9が、本体6の上部を水平に貫通する。所望より、番線(図示せず)を番線挿通孔9に挿通して横架材B廻りに周回せしめた後、番線を固縛し又は緊締し、これにより、本体6を横架材Bに番線固定することができる。
【0037】
図5(B)に示す如く、外れ止め5を手指で上方に押し上げ、下側のスタッド8がスロット7の下縁部分に当接又は衝合すると、外れ止め5の係止部5aは、横架材Bの下半部外周域から退避し、本体6の凹所を下方に開放する。外れ止め5は、この退避位置(
図5(B))において、横架材Bに対する仮設床材1の上方変位を許容するので、つかみ金具4を上方に持ち上げて横架材Bから離間又は離脱させることができる。
【0038】
他方、仮設床材1の反対側の端部に配置された可動フック式つかみ金具10(以下、「つかみ金具10」という。)は、
図5~
図7に示す如く、横架材Bに係止可能なつかみ金具本体11(以下、「本体11」という。)と、本体11に固定された固定爪からなる外れ止め12と、枢支軸14によって枢動可能に支持された下面開口形且つ凹形又はC形の平板状可動フック13とから構成される。本体11の基部11aは、つかみ具4の基部6aと同様、ボルト孔11c(
図6)を貫通するボルト・ナット組立体11bによって側縁リブ24、27の鉛直部24c、27c(
図2)に取付けられる。本体11及び外れ止め12は夫々、一体成形されたアルミ製部品からなる。外れ止め12は、基部11aの近傍において、溶接等の固着手段により本体11に一体的に接合又は固着される。
【0039】
図6に示すように、枢支軸14の中心軸線14cは、横架材Bの中心軸線Bcと実質的に平行に配向される。可動フック13は、枢支軸14の中心軸線14cを中心に回動する。可動フック13を構造的に安定させ且つ可動フック13の回動を規制するためのガイドピン15が本体11の側面に突設される。ガイドピン15は、可動フック13に穿設された湾曲スロット(長孔)16を貫通する。スロット16の弧状中心線は、
図6(A)に示すとおり、中心軸線14cを曲率中心とする曲率半径rの円弧状軌道である。なお、本例において、枢支軸14は、基部11aの近傍に配設されるが、中心軸線Bcの直上の領域において枢支軸14を本体11に配置し、或いは、本体11の先端部11eに枢支軸14を配置しても良い。
【0040】
本体11は、横架材Bの上面に着座するように湾曲した湾曲着座面17を有する。仮設床材1を横架材Bの間に架設した状態(
図5(A))において、湾曲着座面17は、横架材Bの外周面に着座し、仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17を介して横架材Bに伝達する。湾曲着座面17は、中心軸線Bcの直上の領域において水平な先端部11eの下面17aに連続する。所望により、下面17aを下方に屈曲させ又は湾曲させるとともに、先端部11eを下方に延設し、先端部11eをフック形態に設計しても良い。このような設計においては、先端部11eの下方延設部分に枢支軸14を配置することも可能である。
【0041】
外れ止め12は、横架材Bの下部外周面に近接するように横架材Bの下半部外周域に湾曲して延びる横架材係合面12aを有する。仮設床材1を横架材Bに架設した状態(
図5(A))では、横架材係合面12aは横架材Bから離間し、横架材係合面12aと横架材Bの下半部外周面との間には、横架材Bに対するつかみ金具10の上方変位を可能にする隙間又は間隙κが形成される。外れ止め12は、平面視(
図7(A))において横架材Bと重なり、水平方向の重なり寸法βは、5mm以上且つ20mm以下、好ましくは、5mm以上且つ15mm以下、例えば、約10mmに設定される。横架材Bに対する外れ止め12の上方変位は、寸法βの重なりに依る横架材係合面12aと横架材Bとの係合によって阻止される。例えば、風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり現象は、横架材係合面12aが横架材Bに係合又は衝合することによって阻止される。
【0042】
可動フック13は、横架材Bの上部外周面に近接するように横架材Bの上半部外周域に湾曲して延びる横架材係合面13aを有する。仮設床材1を横架材Bに架設した状態(
図5(A))では、横架材係合面13aは自重により横架材Bの上部外周面に接触し又は近接するが、仮設床材1の荷重及びその反力は、横架材係合面13aに作用しない。可動フック13の先端下面13bは、横架材Bの中心軸線Bcのレベル(高さ位置)HLよりも僅かに下方に位置しており、レベルHLと先端下面13bとの高低差Δh1は、好ましくは、10mm以下(2mm以上)、更に好ましくは、3~7mmの範囲内の寸法、例えば、約5mmに設定される。横架材Bに対するつかみ金具10の水平変位は、湾曲着座面17又は横架材係合面13aと横架材Bとの係合又は衝合によって阻止される。
【0043】
かくして、横架材Bを受入れ可能なつかみ金具10の横架材収容域ε(
図6(D))が、横架材係合面12a、13a及び湾曲着座面17によって画成される。横架材収容域εは、横架材Bを収容し得る概ねC字形断面の下面開口形凹所である。後述するとおり、横架材収容域εの開口部λ(
図6(D))は、レベルHLに対して所定角度をなして斜め下方に開放した状態で横架材Bを横架材収容域ε内に受入れ且つ横架材Bを横架材収容域εから離脱せしめるように構成される。
【0044】
開口部λの開口寸法D2(
図6(A)及び
図6(B))は、横架材Bの直径(外径)D1よりも小さい値に設定される。枠組足場(及び楔結合式足場)では、横架材Bの直径D1は、一般に42.7mmである。これに対し、開口部λの開口寸法D2は、40~30mmの範囲内(例えば、約36mm)に設定される。
【0045】
開口部λの開口寸法D2は、横架材係合面13aと先端下面13bとの境界部分に位置する可動フック13の内側縁部(横架材係合面13aの縁部)13dと、内側縁部13dと対向する外れ止め12の先端部12dとの離間距離である。内側縁部13dは、微小曲率半径の曲面であり、内側縁部13dの曲率半径は、好ましくは、8mm以下(1mm以上)、更に好ましくは、2~6mmの範囲内の寸法、例えば、約4~5mmに設定される。先端部12d及び内側縁部13dによって規定された開口部λの開口平面ωは、水平面HLに対して傾斜しており、開口平面ωの垂線μは、水平面HLに対して傾斜角θをなす方向に配向される。傾斜角θは、40~60度の角度範囲内の角度、例えば、50度に設定される。後述するとおり、内側縁部13dは、横架材Bの外周面を摺動し、横架材Bの外周面の反力又は反作用を受け、そのカム従動作用又は受圧従動作用により枢支軸14の中心軸線14cを中心に回動して横架材収容域εの開口部λを比較的大きく開放する。
【0046】
可動フック13は、常時は、重力下に降下した降下位置(
図5及び
図6)に位置し、ガイドピン15は、スロット16の上縁部分を支承し、横架材係合面13aは、自重により横架材Bの上半部外周面に接触し又は近接する。従って、開口部λの開口寸法D2は、常時は、横架材Bの直径D1よりも小さい寸法を重力下に維持する。他方、可動フック13は、枢支軸14の中心軸線14cを中心に回動し、
図6(A)に破線で示すように上方に変位するので、つかみ金具10を横架材Bに係止する際、横架材Bの上向き反力を受けて上方に回動し、開口部λを拡開する。
【0047】
従って、仮設床材1を横架材B間に架設又は懸架する工程では、つかみ金具10の先端下面13bを横架材B上に載置することにより、横架材Bに当接した可動フック13を
図6(A)に破線で示すように過渡的に上方に回動させて開口部λの開口を過渡的に拡開し、横架材Bを横架材収容域ε内に収容すれば良い。このように横架材Bを横架材収容域εに収容する挙動に伴って、開口部λの開口が初期の開口寸法D2に縮小する。
【0048】
かくして横架材収容域εに収容された横架材Bは、つかみ金具10の横架材係合面12a、13a及び湾曲着座面17によって上方変位及び水平変位を拘束される。このようにつかみ金具10を横架材B上に拘束した状態で、
図6(A)に示す係合離脱方向ηの方向(斜め上方)につかみ金具10を移動させる力をつかみ金具10に与えると、開口部λの開口が拡開し、横架材Bを横架材収容域εから離脱させることができる。以下、仮設床材1の撤去作業について説明する。
【0049】
図8は、仮設床材1の撤去作業と関連したつかみ金具10の作動態様を段階的に示す側面図である。
【0050】
図8(A)には、つかみ金具10を横架材Bに係止した状態(係止位置)が示されている。この状態では、本体11の湾曲着座面17は、横架材Bの外周面に着座し、仮設床材1の鉛直荷重は、湾曲着座面17を介して横架材Bに伝達する。ガイドピン15は、スロット16の上端部に位置し、横架材係合面13aは横架材Bの上部外周面に接触し又は近接する。開口部λの開口寸法D2は、横架材Bの直径(外径)D1よりも小さい。横架材Bに対するつかみ金具10の水平変位は、横架材Bと湾曲着座面17又は横架材係合面13aとの係合又は衝合によって阻止される。
図8(A)に上向き鉛直の外力Fvで示すようにつかみ金具10を持ち上げると、つかみ金具10は、
図8(B)に示す如く、横架材Bに対して上方に変位し、横架材Bの下半部外周面が外れ止め12の横架材係合面12aに近接、衝合又は当接する。この状態では、湾曲着座面17と横架材Bとの間に高さ寸法Δh2(Δh2≧Δh1)の間隙が形成される。
図8(B)に水平外力Fhで示すようにつかみ金具10を更に水平変位(ΔL1)させると、横架材Bは可動フック13の内側縁部13d又はその近傍の部分を押圧し、可動フック13は、横架材Bの外周面の反力又は反作用を受け、内側縁部13d又はその近傍の部分のカム従動作用又は受圧従動作用により、枢支軸14の中心軸線14cを中心に上方に受動的に回動する。この結果、間隙寸法Δh3が拡大するとともに、開口部λの開口寸法D2が横架材Bの直径(外径)D1よりも大きい寸法に拡大する。従って、外力Fv、Fhの合力として矢印η方向(係合離脱方向)の外力Fη(
図8(C))がつかみ金具10に作用すると、内側縁部13d及びその近傍の部分は、矢印η方向の直線的な運動を可動フック13の回転運動に変換するカム従動面又は受圧従動面として機能するので、つかみ金具10は、
図8(C)及び
図8(D)に示す如く、横架材Bから離脱し、斜め上方に移動する。このようなつかみ金具10の作動態様は、つかみ金具10の手動ロック解除の操作を格別に要しない仮設床材1の撤去作業を可能にする。
【0051】
図9は、仮設床材1の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図であり、
図10は、従来構造のつかみ金具を両端部に備えた床付き布枠(比較例)の撤去作業の作業手順を段階的に示す側面図である。本発明と従来技術との相違に関する理解を容易にするため、仮設床材1の撤去作業について説明する前に、比較例に係る床付き布枠の撤去作業について、
図10を参照して説明する。
【0052】
図10(A)には、従来構造のつかみ金具104によって仮設足場の横架材Bに支持された床付き布枠100が示されている。床付き布枠100は、床材101、布材102及び梁材(はり材)103を一体的に組み付けてなる鋼製の仮設部材である。左右一対のつかみ金具104が左右の布材102の両端部に一体的に取付けられており、従って、実質的に同じ構造を有するつかみ金具104が、床付き布枠100の4つの角部に夫々配設されている。
図10(B)に示す如く、各つかみ金具104は、重力式可動爪からなる外れ止め105と、横架材Bに着座可能なフック本体106とから構成される。外れ止め105は、湾曲したスロット(長孔)107を有し、フック本体に水平に固定されたスタッド(支軸)108がスロット107を貫通する。各つかみ金具104の外れ止め105は、横架材Bの下半部外周域に延び、フック本体106の上方変位を阻止する降下位置(以下、「係留位置」という。)に位置する。外れ止め105は、係留位置において、風圧等に起因した床付き布枠100の浮き上がり等を防止する。なお、
図10には、前述の特許文献5に記載された構造及び形態を有する外れ止め105が例示されている。
【0053】
仮設足場の解体撤去時等に床付き布枠100を横架材Bから撤去する場合には、
図10(B)に矢印で示す如く、一端部(
図10において左側の端部)の外れ止め105を手指で上方に変位させ、
図10(C)に示す如く、フック本体106の下面を開放し(以下、この位置を「開放位置」という。)、フック本体106を上方変位させる。
図10(C)に矢印で示すように床付き布枠100の端部を上方に持ち上げた後、
図10(D)及び
図10(E)に示すように外れ止め105を手指で下方に変位させると、外れ止め105の下端部が横架材Bの上面に着座し、床付き布枠100の端部が横架材Bによって支持又は支承される。この状態では、他端部(
図10において右側の端部)の外れ止め105は、依然として係留位置に位置する(
図10(F))。
【0054】
作業者が床付き布枠100の他端部に移動し、
図10(F)に矢印で示すように他端部の外れ止め105を手指で開放位置に変位させ、
図10(G)に矢印で示すように床付き布枠100の端部を上方に持ち上げると、床付き布枠100は、
図10(H)に示す如く、横架材Bから完全に離脱する。作業者は、
図10(H)に矢印で示すように床付き布枠100を全体的に持ち上げ、或いは、傾倒させ、これにより、床付き布枠100を横架材Bから撤去することができる。
【0055】
このような従来の床付き布枠100を使用した場合、作業者は、床付き布枠100の端部間で移動し、各端部の外れ止め105を手指で開放位置に変位させる手動ロック解除操作を実施しなければならない。このような端部間の移動の間、作業者は、床付き布枠100の姿勢及び位置等の安定状態を維持しなければならず、これは、従来より、作業上の負担又は負荷として作業者に意識又は認識されていた。これに対し、本実施例に係る仮設床材1のつかみ金具10は、以下に説明するとおり、一方の端部の外れ止め105を操作する必要をなくし、作業上の負担又は負荷を大幅に軽減する。
【0056】
本発明に係る仮設床材1の撤去作業の過程又は工程が
図9に示されている。前述の如く、仮設床材1は、左右一対の可動爪式つかみ金具4を床材本体2の一端部に配設するとともに、左右一対の可動フック式つかみ金具10を床材本体2の他端部に配設した構成を有する。可動爪式つかみ金具4は、
図10に示すつかみ金具104と概ね同等の構造を有するが、可動フック式つかみ金具10は、前述の如く、本体11に鉛直・水平な外力Fv、Fh(
図8)、或いは、矢印η方向(係合離脱方向)の外力Fη(
図8)をつかみ金具10に作用せしめることにより、ロック解除のための手動操作を行うことなく、横架材Bから離脱させることができるように構成されている。
【0057】
仮設足場の解体撤去時等に仮設床材1を横架材Bから取り外す場合、
図9(B)に矢印で示す如く、つかみ金具4の外れ止め5を手指で上方に押し上げ、
図9(D)に示す開放位置に変位させると、
図9(D)及び
図9(G)に矢印で示すように本体6を上方変位させることができる。つかみ金具10は、横架材B廻りに回転するので、つかみ金具4の近傍において仮設床材1の端部を手指で押し上げると、仮設床材1は、
図9(E)に示すように全体的に傾斜する。仮設床材1は、2~5度程度、例えば、3度程度の傾斜角をなして傾斜すれば良い。
図9(F)に示す如く、この状態でつかみ金具10を係合離脱方向ηに移動させると、つかみ金具10は、前述の作動態様(
図8(B)~
図8(D))により、
図9(I)に示すように横架材Bから離脱する。
【0058】
即ち、
図9(E)~
図9(G)に矢印で示すように仮設床材1を全体的に斜め上方に移動させると、つかみ金具10が横架材Bとの係合を円滑に解き、
図9(I)に示すようにつかみ金具10が横架材Bから完全に離脱するので、作業者は、
図9(H)に示す如く、仮設床材1を全体的に持ち上げ、或いは、傾倒させ、これにより、仮設床材1を横架材Bから撤去することができる。
【0059】
かくして、本実施例の仮設床材1によれば、作業者は、つかみ金具4を解放して仮設床材1の端部を若干押し上げ且つ仮設床材1を僅かに傾斜させた後、仮設床材1を斜め上方(係合離脱方向)に移動させることにより、仮設床材1を撤去することができ、従って、仮設床材1を若干持ち上げた状態で仮設床材1の端部間を移動して両端部のつかみ金具10の手動ロック解除操作を行う煩雑な作業を要しない。このため、作業者の労力が大幅に低減し、作業上の負担又は負荷が大幅に軽減する。
【0060】
次に、
図11を参照して仮設床材1の床面延設部材3の構成について説明する。
図11は、床面延設部材3の構造を示す斜視図及び縦断面図である。
【0061】
床面延設部材3は、床材本体2と同じく、アルミ押出形材からなり、溶接等の固着手段によって仮設床材2の端部に固定される。床面延設部材3は、床材本体2の上面20を延長する水平延出板30と、水平延出板30から垂下する鉛直板31と、横架材Bの外周面と対向する斜行板32と、表示具90を保持する保持部34と、床面延設部材3の中空部に配設された補剛部材35とを有する。鉛直板31は、アルミ押出形材の端面の当て板又はカバープレートとして機能する。斜行板32は、水平延出板30の先端部と鉛直板31の下端部とを一体的に連結し、補剛部材35は、床面延設部材3の剛性を向上するように水平延出板30及び鉛直板31と保持部34とを一体的に連結する。
【0062】
着色樹脂の一体成形品からなる着脱可能な表示具90が保持部34に装着される。表示具90は、表示部91、係留部92及び連結部93を有する。表示部91は、仮設床材1の製造者、ユーザー、種類、型等の任意の情報を色、或いは、表面の文字、図形等によって表示する。表示部91は、断面長方形の帯状部材であり、床面延設部材3の長手方向に延在する。係留部92は、保持部34の中空部36内に挿入され、連結部93は、保持部34の狭小開口部37を貫通し、係留部91及び表示具90を相互連結する。表示具90を交換する場合には、既存の表示具90の表示部91を手指で引っ張って係留部92を中空部36から抜き出し、他の表示具90の係留部92を中空部36内に挿入すれば良い。
【0063】
図11(B)に示す如く、床面延設部材3は、床材本体2の端部から比較的大きく突出し、床面延出部材3の先端部は、隣接する仮設床材1の床面延出部材3(破線で示す)の先端部に近接する。このため、布方向(長手方向)に隣接する床材本体2同士を比較的大きく離間させることができる。本例において、斜行板32及び横架材Bは、直径方向の距離S1、S2を隔てて離間しており、横架材B廻りに延在する比較的大きな自由空間Sが斜行板32と横架材Bとの間に形成される。距離S1、S2は、15mm~50mmの範囲内、好適には、20mm~35mmの範囲内(例えば、約25mm)に設定される。このような自由空間Sを形成するため、床材本体2の下面2bは、横架材Bの中心Bc(本体6、11の凹所中心)よりも上方に位置し、下面2bと中心Bcとの高低差ΔSは、15mm以下、好ましくは、3~10mmの範囲内(例えば、6mm)に設定される。また、床材本体2の上面20と横架材Bの頂部Baとの高低差Shは、15mm~50mmの範囲内、好適には、20~30mm(例えば約25mm)に設定され、床材本体2の端面と横架材Bとの水平離間距離Stは、15mm~50mmの範囲内、好適には、30~40mmの範囲内(例えば約35mm)に設定される。自由空間Sは、横架材Bに係止又は係合する部材と、仮設床材1との位置的又は物理的干渉を防止するクリアランス(隙間)として機能する。例えば、仮設階段のフック部(図示せず)や、強化方杖等の補剛材の係留金具(図示せず)は、自由空間Sの形成により、床材本体2及び床面延設部材3と位置的又は物理的に干渉することなく、比較的容易に横架材Bに係止又は係合することができる。また、このようなクリアランスの形成により、隣り合う仮設床材1の端面間において作業床又は作業通路が分断されるが、前述のとおり、床面延設部材3は、床材本体2の上面(床面)20を延長し、隣接する仮設床材1同士の間に実質的な隙間が形成されるのを防止する。
【実施例2】
【0064】
図12は、本発明の他の好適な実施例に係る仮設床材を全体的に示す斜視図及び平面図であり、
図13は、
図12に示す仮設床材の側面図及び部分破断拡大側面図である。
図14は、本実施例の仮設床材を構成する押出形材を示す斜視図、平面図及び側面図であり、
図15は、押出形材の拡大端面図及び部分破断拡大側面図である。
図16は、左右一対の押出形材をジョイント部材によって連結する態様を概念的に示す正面図であり、
図17(A)は、左右一対の押出形材をジョイント部材によって連結してなる仮設床材の構成(フルサイズ)を示す縦断面図である。
図17(B)は、単一の押出形材より構成される仮設床材の構成(ハーフサイズ)を示す縦断面図である。
図18(A)は、単一の押出形材より構成される仮設床材の一端部の構成を示す端面図であり、
図18(B)は、
図18(A)に示す仮設床材の他端部の構成を示す端面図である。各図において、
図1~11(実施例1)における各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0065】
図12及び
図13には、枠組足場の建枠Aに支持又は支承された仮設床材1’が示されている。仮設床材1’は、床材本体2’を有し、床材本体2’の上面(床面)は、仮設足場の作業通路又は作業床を構成する。前述の実施例と同様、床面延設部材3が、床材本体2’の両端部に一体的に取付けられ、左右一対の可動爪式つかみ金具4が、床材本体2’の一端部に配設され、左右一対の可動フック式つかみ金具10が、床材本体2’の他端部に配設される。仮設床材1’は、左右一対の押出形材40をジョイント部材50によって並列且つ一体的に連結した点において実施例1の仮設床材1と相違するが、この他の基本構成については、実施例1と実質的に同一であるので、重複した説明は、省略する。
【0066】
図14及び
図15に示すように、押出形材40は、補剛用の側縁リブ41及び中間リブ42を床板部分40aに一体成形したアルミ押出形材からなる。側縁リブ41は、連結リブとして機能し、中間リブ42は、連結機能を備えない補剛リブとして機能する。押出形材40の幅W、長さL及び厚さTは、例えば、約240mm(W)、約1830mm(L)及び約35mm(T)に設定される。床板部分40aの上面には、押出形材40の長手方向(布方向)に平行に延びる複数の突条45(
図15(A))が並設されるとともに、押出形材40の幅方向(梁間方向)に平行に延びる多数の狭小溝46(
図15(B))が約1~4mm程度の微小間隔を隔てて刻設される。各側縁リブ41の両端部には、リベット孔41cが穿設される。
図13(B)に示す如く、フック本体6、11の基部6a、11aが、リベット孔41cに挿通されたリベット6c、11cによって側縁リブ41に固定される。
【0067】
図15(A)に示すとおり、押出形材40は、鉛直中心面CLに対して左右対称の形状・輪郭を有する。側縁リブ41及び中間リブ42は、幅方向(梁間方向又は腕木方向)に間隔を隔てて並列配置され、互いに平行且つ長手方向(布方向又は桁方向)に延びる。床板部分40aの両側の縁には、下側に僅かに屈曲した屈曲部43が形成される。側縁リブ41は、床板部分40aの各側縁帯域から一体的に垂下する鉛直部41aと、鉛直部41aに下端から水平に延出する下側フランジ部41bとを有する。下側フランジ部41bの外側の縁には、上側に僅かに屈曲した屈曲部44が形成される。
【0068】
図16及び
図17(A)に示す如く、左右一対の押出形材40がジョイント部材50を介して一体的に連結される。ジョイント部材50は、押出形材40と実質的に同一の全長を有する概ね方形断面のアルミ押出形材である。ジョイント部材50の各角部には、屈曲部43、44を挿入可能又は嵌入可能な溝53、54が形成される。
図16及び
図17(A)に示すように、一対の押出形材40の屈曲部43、44がジョイント部材50の溝53、54に挿入又は嵌入され、一対の押出形材40がジョイント部材50の各側の側部に夫々連接される。押出形材40及びジョイント部材50は、屈曲部43、44の部分を溶接等の固着手段でジョイント部材50に接合することによって一体化する。
【0069】
このように押出形材40をジョイント部材50によって一体的に連結してなる床材本体2’は、押出形材40同士の離間距離W2を含む幅W1(=W×2+W2)の全体寸法(幅寸法)を有する。ジョイント部材50は、押出形材50の厚さTと実質的に同一の高さを有し、離間距離W2よりも大きい幅W3を有する。本例において、幅W3は約30mmに設定され、離間距離W2は約20mmに設定され、幅W1は、約500mmに設定される。
【0070】
かくして左右一対の押出形材40を一体化した床材本体2’には、床面延設部材3(
図12及び
図13)、可動爪式つかみ金具4及び可動フック式つかみ金具10を取付けられ、フルサイズ(幅約500mm)の仮設床材1’が製作されるが、押出形材40は、
図17(B)に示す如く、ハーフサイズ(幅約240mm)の仮設床材1”としても使用し得る。
【0071】
即ち、押出形材40は、鉛直中心面CLに対して左右対称の形状・輪郭を有し、左右の鉛直部41aには、リベット孔41cが穿設され、リベット6c、11c(
図13(B))によってフック本体6、11の基部6a、11aを鉛直部41aに取付けることができ、しかも、押出形材40の幅Wは約240mmであり、一般的なハーフサイズ(幅約200~250mm)の仮設床材として使用可能な幅寸法を有する。従って、
図17(B)に示すように可動爪式つかみ金具4及び可動フック式つかみ金具10を押出形材40(床材本体2”)の両端部に取付けるとともに、ハーフサイズ用の床面延設部材3(
図17(B)に一点鎖線で示す)を押出形材40の各端部に取付けることにより、ハーフサイズ(幅約240mm)の仮設床材1”を押出形材40によって製作することができる。
【0072】
かくして、本実施例に係る押出形材40は、フルサイズ(幅約500mm)の仮設床材1’の構成要素として使用し得るのみならず、ハーフサイズ(幅約240mm)の仮設床材1”の構成要素としても使用し得るので、一種類の成形ダイを使用した押出形成工程により押出形材40を量産し、これをフルサイズ及びハーフサイズ共用の資材として使用すれば良く、従って、本実施例によれば、仮設床材の製造コスト及び製品価格を比較的大きく低減することができる。
【0073】
図18には、つかみ金具4、10を鉛直部41aに取付けた状態が示されている。前述の如く、つかみ金具4、10の基部6a、11aは、リベット6c、11c(
図13(B))によって鉛直部41aに取付けられるが、つかみ金具4、10は、
図18に示す如く、片側において鉛直部41aの内側(幅方向内方の側)に配設され、幅方向反対側において鉛直部41aの外側(幅方向外方の側)に配設される。即ち、つかみ金具4、10の取付け位置は、仮設床材1”の平面視鉛直中心軸線に対して180度の回転対称の位置である。このようなつかみ金具4、10の取付け位置の回転対称性は、
図17(A)に示す如く、左右一対の押出形材40をジョイント部材50によって並列に連結してなる仮設床材1’や、前述した実施例1の仮設床材1においても同様に採用される。
【0074】
図17(B)及び
図18に示す仮設床材1”は、押出形材40の単体にフック本体6、11及び床面延設部材3を取付けた構成を有する。幅W=240mm程度の仮設床材1”は、枠組足場等の仮設足場においてハーフサイズの仮設床材として好適に使用し得る。幅Wの値を設定変更し、例えば、仮設床材1”の幅Wを約280~320mm程度の寸法(例えば、300mm)に設定することにより、仮設床材1”を支保工足場等の仮設床材としても好適に使用し得る。
【実施例3】
【0075】
図19は、本発明の更に他の実施例に係る可動フック式つかみ金具10の構造を示す側面図である。
図19(A)には、可動フック13を配置した側のつかみ金具10の側面図が示されており、
図19(B)には、可動フック13とは反対の側のつかみ金具10の側面図が示されている。 また、
図19(C)は、
図19(B)と同じ側のつかみ金具10の側面図であり、外れ止め5を上方に変位させてつかみ金具10の横架材収容域εを開放した状態が
図19(C)に示されている。なお、各図には、つかみ金具10及び横架材Bのみが図示されており、床材本体2及び床面延設部材3は、図示を省略されている。また、各図において、前述の実施例(実施例1及び2)における各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0076】
前述の各実施例(実施例1、2)においては、つかみ金具10は、本体11に固定された固定爪からなる外れ止め12を備えるが、本例のつかみ金具10は、つかみ金具4と同様、重力式(セルフロック式)の可動爪からなる外れ止め5を備える。前述の実施例と同様、外れ止め5は、湾曲スロット(長孔)7を有し、スロット7を貫通する上下一対の水平スタッド(水平支軸)8が、本体11の側面に水平に突設される。外れ止め5は、常時は、重力下に降下した降下位置(
図19(B))に位置する。上側のスタッド8は、スロット7の上縁部分を支承し、外れ止め5の横架材係合面5bは、横架材Bの下部外周面に近接するように横架材Bの下半部外周域に湾曲して延びる。仮設床材1を横架材Bに架設した状態(
図19(A)及び
図19(B))では、横架材係合面5bは横架材Bの下半部外周面から離間する。横架材係合面12aと横架材Bの下半部外周面との間には、横架材Bに対するつかみ金具10の上方変位を可能にする隙間又は間隙κが形成される。
【0077】
外れ止め12は、平面視において横架材Bと重なり、水平方向の重なり寸法βは、5mm以上且つ20mm以下、好ましくは、5mm以上且つ15mm以下、例えば、約10mmに設定される。横架材Bに対する外れ止め5の上方変位は、寸法βの重なりに依る横架材係合面5bと横架材Bとの係合によって阻止される。例えば、風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり現象は、横架材係合面5bが横架材Bに係合又は衝合することによって阻止される。
【0078】
図19(B)に矢印で示す如く、外れ止め5を手指で上方に押し上げ、下側のスタッド8がスロット7の下縁部分に当接又は衝合すると、外れ止め5の横架材係合面5bは、
図19(C)に示す如く、横架材Bの下半部外周域から退避し、本体6の凹所を下方に比較的大きく開放する。この手動ロック解除操作の結果、可動フック13の内側縁部(横架材係合面13aの下縁部分)13dと、外れ止め5の先端部5dとの間に形成された開口部λの開口寸法D2は、開口寸法D3に拡大する。開口寸法D3は、水平投影面内の寸法として測定された値であり、横架材Bの直径(外径)D1よりも大きい値に設定される。外れ止め5は、この退避位置(
図19(C))において、横架材Bに対する仮設床材1の上方変位を許容するので、つかみ金具4を上方に持ち上げて横架材Bから離間又は離脱させることができる。
【0079】
可動フック10の構成、構造及び機能は、前述の各実施例における可動フック10の構成、構造及び機能と実質的に同一であるので、可動フック10に関する重複した説明については、省略する。
【0080】
本例のつかみ金具10によれば、前述の各実施例において
図9を参照して説明した如く、作業者は、つかみ金具10の反対側に位置するつかみ金具4を解放して仮設床材1の端部を若干押し上げ且つ仮設床材1を僅かに傾斜させた後、仮設床材1を斜め上方(係合離脱方向)に移動させることにより、仮設床材1を撤去することができ、従って、仮設床材1を若干持ち上げた状態で仮設床材1の端部間を移動して両端部のつかみ金具10の手動ロック解除操作を行う煩雑な作業を要しない。このため、仮設床材1の撤去作業における作業者の労力は大幅に低減し、作業上の負担又は負荷は大幅に軽減する。また、本例のつかみ金具10は、本体11に固定された固定爪式の外れ止め12(実施例1、2)に換えて、重力式(セルフロック式)の可動爪からなる外れ止め5を備えるので、所望より、仮設床材1の撤去作業として、
図10に示す従来の撤去作業の作業工程を採用することが可能となる。また、容易に理解し得るとおり、本例のつかみ金具10を仮設床材1の両端部に配設しても良い。
【0081】
また、本例のつかみ金具10を備えた仮設床材1の場合、仮設床材1を横架材Bから撤去するためにつかみ金具10を横架材Bから離脱させる作業において、外れ止め5の手動ロック解除操作を行うとともに、可動フック13を上方に回動させ、これにより、つかみ金具10の開口部λを大きく拡開することができる。例えば、予測困難な仮設床材1の歪み、変形又は傾斜等に起因して、外れ止め12のロック解除操作又は可動フック13の回動操作の一方のみではつかみ金具を所望の如く横架材Bから離脱させ難い状態が生じた場合、外れ止め12のロック解除操作と可動フック13の回動操作との双方を併用し、これにより、つかみ金具10の開口部λを大きく拡開し、つかみ金具10を比較的容易に横架材Bから係合離脱させることが可能となる。
【実施例4】
【0082】
図20、
図21及び
図22は、上記各実施例の変形例に係る面内変位式又は面内スライド式の可動フックを備えたつかみ金具10の構造を示す側面図及び部分拡大側面図である。
図20、
図21及び
図22には、仮設床材1の撤去作業と関連したつかみ金具10の作動態様が段階的に示されている。なお、各図には、つかみ金具10及び横架材Bのみが図示されており、床材本体2及び床面延設部材3は、図示を省略されている。また、各図において、前述の実施例(実施例1~3)における各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されている。
【0083】
図20に示す如く、本例のつかみ金具10は、横架材Bに係止可能な本体11と、重力式(セルフロック式)の可動爪からなる外れ止め5と、面内変位可能に本体11に支承された平板状の可動フック60とを備える。
【0084】
前述の各実施例と同じく、本体11は、横架材Bの上部外周面に着座するように湾曲した湾曲着座面17を備える。湾曲着座面17は、横架材Bの頂部Baの近傍において水平延長面17aに移行し、水平延長面17aは、床材本体2とは反対の側に延び、傾斜面17b、17cに連続する。本例において、傾斜面17b、17cは、横架材Bの外周面から離間する。
図20には、湾曲着座面17又はその水平延長面17a が横架材Bに着座した状態、即ち、つかみ金具10の係止位置が示されている。仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17又はその水平延長面17aを介して横架材Bに伝達する。
【0085】
外れ止め5は、前述の実施例3と同様、湾曲スロット(長孔)7を有し、スロット7を貫通する上下一対の水平スタッド(水平支軸)8が、本体11の側面に水平に突設される。外れ止め5は、常時は、重力下に降下し、本体11の上方変位を阻止するロック位置に位置しており、風圧等に起因した仮設床材1の浮き上がり等を防止する。
図20(A)に矢印で示す如く、外れ止め5を手指で上方に押し上げることにより、前述の実施例3(
図19(C))において説明したとおり、外れ止め5をロック解除位置に変位せしめ、つかみ金具10の開口部λを下方に大きく拡開することが可能となる。
【0086】
可動フック60は、傾斜面17b、17cを有する本体11の先端部分に配置される。
図20(B)に示す如く、可動フック60は、横架材Bの上部外周面に近接するように横架材Bの上半部外周域に湾曲して延びる横架材係合面62を有する。横架材係合面62は、先端下面68との境界部分に位置する可動フック60の内側縁部(横架材係合面62の下縁部分)61を有し、内側縁部61は、外れ止め5の先端部5dと対向する。開口部λの開口寸法D2は、内側縁部61と先端部5dとの離間距離である。内側縁部13dは、前述の各実施例と同様、微小曲率半径の曲面である。前述の各実施例と同様、開口部λの開口平面ωは、水平面HLに対して傾斜しており、開口平面ωの垂線μは、水平面HLに対して傾斜角θをなす方向に配向される。
【0087】
可動フック60を面内変位可能に支承する水平なスタッド形の支軸63、64が、対をなして本体11の先端部分に水平に突設される。各支軸63、64は、本体11の先端部分に一体的に取付けられた段付きリベット、ボルト、螺子又はピン等の機械要素よりなる。本例において、支軸63、64の中心軸線は、本体11の中心平面(鉛直平面)と直交し、横架材Bの中心軸線Bcと実質的に平行に配向される。下側に位置する支軸63の中心軸線は、中心軸線Bcのレベル(高さ位置)HLと実質的に同一又はその上下方向に±15mm以内(好ましくは、±10mm以内)の高低差を隔てた位置に位置決めされる。上側に位置する支軸64の中心軸線は、横架材Bの頂部Baのレベル(高さ位置)と実質的に同一又はその上下方向に±15mm以内(好ましくは、±10mm以内)の高低差を隔てた位置に位置決めされる。可動フック60の先端下面68は、横架材Bの中心軸線Bcのレベル(高さ位置)HLよりも下方に位置し、レベルHLと先端下面68との高低差Δh1は、好ましくは、15mm以下(5mm以上)、更に好ましくは、7~12mmの範囲内の寸法、例えば、約10mmに設定される。
【0088】
可動フック60は、支軸63、64が夫々貫通する一対のL形スロット(長孔)65、66を有する。支軸63、64は、可動フック60を支承する。可動フック60は、本体11の側面と、支軸63、64の拡大ヘッド部分63a、64aとの間に遊動可能に挟持され、可動フック60又は本体11の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内(従って、実質的に鉛直な平面内)において変位可能又はスライド可能に本体11に支持又は保持される。なお、以下の説明において、可動フック60又は本体11の中心平面と実質的に同一又は平行な平面内、或いは、実質的に鉛直な平面内における可動フック60の変位を「面内変位」というものとする。この面内変位は、側面視における可動フック60の挙動により特定し得る可動フック60の二次元的変位として把握し得る性質のものである。
【0089】
下側のL形スロット65は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長スロット部分65aと、本体11の基部11aの側(横架材Bの側)に向かって横方向又は水平方向に延びる横長スロット部分65bとを概ね直角に連接した構成を有する。上側のL形スロット66は、上下方向又は鉛直方向に延びる縦長スロット部分66aと、若干斜め上方に傾斜して本体11の先端側(横架材Bとは反対の側)に延びる横向きの横長スロット部分66bとを鈍角に連接した構成を有する。
図20に示すつかみ金具10の係止位置では、可動フック60は、横架材Bによって相対的に上方に押圧され又は支承され、その最上昇位置に面内変位しており、支軸63、64は、縦長スロット部分65a、66aの最下部に位置する。
【0090】
かくして、つかみ金具10の係止位置においては、横架材係合面62は、自重により横架材Bの上部外周面に接触し又は近接するが、仮設床材1の荷重及びその反力は、横架材係合面62に作用せず、仮設床材1の荷重は、湾曲着座面17又はその水平延長部分17aを介して横架材Bに伝達し、横架材Bに対するつかみ金具10の水平変位は、湾曲着座面17又は横架材係合面62と横架材Bとの係合又は衝合によって阻止される。
【0091】
以下、前述した仮設床材1の撤去作業(
図9等)における本例のつかみ金具10の作動態様について説明する。
【0092】
図20(B)に上向き鉛直の外力Fvで示すように、つかみ金具10を持ち上げると、本体11及び外れ止め5は、
図21に示す如く、横架材Bに対して上方に変位し、横架材Bの下半部外周面が外れ止め5の横架材係合面5bに近接、衝合又は当接する。
図20(B)に破線の矢印τ1、τ2で示す如く、横架材Bが本体11及び外れ止め5に対して相対的に下方に変位する結果、可動フック60も又、その自重により、本体11に対して相対的に下方に変位し、支軸63、64は、矢印τ3、τ4で示す如く、縦長スロット部分65a、66aの最上部に相対移動する。
【0093】
図21に示す如く、矢印η方向(係合離脱方向)の外力Fηがつかみ金具10に作用すると、内側縁部61、或いは、その近傍の横架材係合面62の部分が横架材Bに押圧され、可動フック60の下部は、横架材Bの外周面の反力又は反作用により、矢印ν1で示す如く、本体11から延出するように水平方向又は横方向に変位し、支軸63は、破線の矢印τ5で示す如く、横長スロット部分65bに沿ってその末端部又は終端部に相対移動する。また、横架材Bが本体11及び外れ止め5に対して相対的に下方に変位する結果、可動フック60は、その自重により、矢印ν2、ν3で示す如く、横架材Bの側に傾倒し、支軸64は、破線の矢印τ6で示す如く、横長スロット部分66bに沿ってその末端部又は終端部に相対移動する。
【0094】
かくして可動フック60が面内変位した状態が
図22に示されている。横架材収容域εの開口部λは、斜め下方に比較的大きく開放するので、つかみ金具10は、外れ止め5のロック解除操作を行うことなく、横架材Bから離脱することができる。このように、つかみ金具10を横架材Bに対して相対移動させ、これにより生じる可動フック60の面内変位により、横架材収容域εの開口部λを斜め下方に比較的大きく開放せしめる本実施例のつかみ金具10によれば、前述の各実施例と同じく、つかみ金具10の手動ロック解除の操作を格別に要しない仮設床材1の撤去作業を実施することが可能となる。また、本例のつかみ金具10は、重力式(セルフロック式)の可動爪からなる外れ止め5を備えるので、前述の実施例3と同様、所望により、手動ロック解除操作によって外れ止め5を解放する従来の撤去作業の作業工程を採用し、或いは、可動フック60の面内変位と外れ止め5の手動ロック解除とを併用して、開口部λを下方に大きく拡開した状態で撤去作業を実施することも可能である。
【0095】
なお、仮設床材1を横架材B間に架設又は懸架する工程では、可動フック60は、つかみ金具10を横架材B上に着座させる際に横架材Bに当接して相対的に上方に面内変位し、開口部λの開口を過渡的に拡開するので、横架材Bを横架材収容域ε内に比較的容易に収容することができる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0097】
例えば、上記実施例のつかみ金具は、外れ止め部材を本体部分に一体的に接合又は固着した構成を有するが、本体部分及び外れ止め部材を一体成形品として一体的に成形し又は製作しても良く、また、上記実施例では、つかみ金具は、単一の可動フック及び外れ止め部材を備えた構成のものであるが、複数の可動フックを本体部分に回動可能に支持し、或いは、複数の外れ止め部材を本体部分に固定し又は一体化しても良い。
【0098】
また、上記実施例に係る仮設床材は、アルミ押出形材に直につかみ金具を取付けた構造のものであるが、従来の床付き布枠のつかみ金具に換えて、本発明に係るつかみ金具を配設した構成を有する床付き布枠であっても良い。
【0099】
更に、上記実施例の説明は、主として、枠組足場の建枠によって仮設床材を支持した構成に関するものであるが、前述のとおり、本発明の仮設床材は、楔結合式足場の横架材(腕木)によっても支持することができる。所望により、本発明の仮設床材をブラケット足場、移動式足場等の他の形式の足場において使用し、或いは、他の形式の足場において好適に使用し得るように設計変更することも可能である。
【0100】
加えて、可動爪式つかみ金具の各部構造については、本発明に適合する限りにおいて、従来の任意の形態、寸法又は設計を適宜採用することができ、また、押出形材の補剛リブの断面性状及び寸法等については、本発明に適合する限りにおいて、任意の設計を採用することができる。例えば、上記実施例では、回動式可動フックの枢支軸をつかみ金具本体の基部又はその近傍に配置しているが、枢支軸を横架材の直上領域においてつかみ金具本体に配置し、或いは、つかみ金具本体の先端部又はその近傍に配置しても良い。また、回動式可動フックを備えたつかみ金具の実施例においては、つかみ金具本体の先端部は、水平な下面を有する水平な突出部分として設計されているが、つかみ金具本体の先端部を横架材の上半部外周面に沿って下方に延びるフック形態に設計しても良く、このような設計においては、横架材の上半部外周面に沿って下方に延びるつかみ金具本体のフック状先端部分に可動フックの枢支軸を配設することも可能である。
【0101】
更に、上記実施例では、つかみ金具をボルト・ナット組立体又はリベットによって床材本体に固定しているが、つかみ金具を他の固定手段又は接合手段によって床材本体に固定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、建築・土木工事等において使用される枠組足場、楔結合式足場等において、仮設足場の横架材等に係合するつかみ金具によって隣り合う横架材の間に架設又は懸架され、仮設足場の作業通路又は作業床を形成する仮設床材及びそのつかみ金具に適用される。床材本体の第1端部に可動爪式つかみ金具を配設し、床材本体の第2端部に本発明の可動フック式つかみ金具を配設した仮設床材によれば、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架された仮設床材を撤去する仮設床材撤去作業の作業性を改善し、撤去作業時の作業者の作業上の負担又は負荷を軽減することができる。また、床材本体を幅350mm以下のアルミ押出形材の組立体より構成した本発明の仮設床材によれば、つかみ金具によって横架材間に架設又は懸架される仮設床材を軽量なアルミ押出形材によって比較的安価に製造することができ、従って、本発明は、仮設足場の設置・撤去作業の作業性を改善する軽量なアルミ製仮設床材の普及に寄与する。更に、横架材の外周域に前述の自由空間を形成する本発明の仮設床材によれば、仮設床材の端部と、他の仮設部材のフック部又は係留金具等とが横架材近傍で位置的又は物理的に干渉するのを確実に防止することできる。かくして、本発明によれば、仮設足場の設置又は撤去作業に従事する作業者の作業上の負担又は負荷を大幅に軽減することが可能となるので、その実用的効果は、顕著である。
【符号の説明】
【0103】
1 仮設床材
2 床材本体
2a 中央連結部
2b 下面
3 床面延設部材
4 可動爪式つかみ金具
5 外れ止め
5a 係止部
6 つかみ金具本体
7 湾曲スロット
8 水平スタッド
9 番線挿通孔
10 可動フック式つかみ金具
11 つかみ金具本体
11a 基部
11b ボルト・ナット組立体
12 外れ止め
13 可動フック
12a、13a、5b 横架材係合面
12d 先端部
13b 先端下面
13d 内側縁部
14 枢支軸
15 ガイドピン
16 湾曲スロット
17 湾曲着座面
20 上面(床面)
21、22 押出形材
21a、22a 床板部分
24~29 補剛リブ
30 水平延出板
40 押出形材
50 ジョイント部材
60 可動フック
61 内側縁部
62 横架材係合面
63、64 支軸
65、66 L形スロット(長孔)
68 先端下面
A 建枠
B 横架材
Ba 横架材の頂部
Bc 横架材の中心(凹所の中心)
D1 横架材の直径
D2 フック本体の開口寸法
S 自由空間
S1、S2 直径方向の離間距離
Sh、ΔS 高低差
St 水平離間距離
Δh1 高低差
Δh2、Δh3 間隙の高さ寸法
ΔL1 水平変位
α、β 重なり寸法
ε 横架材収容域(凹所)
λ 開口部
η 係合離脱方向
ω 開口平面
μ 垂線
θ 角度
κ 隙間又は間隙