(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20240418BHJP
B65D 47/40 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
B65D47/08 130
B65D47/40 ZAB
(21)【出願番号】P 2019543148
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047430
(87)【国際公開番号】W WO2019059421
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秀島 智
(72)【発明者】
【氏名】宮野 優美子
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337918(JP,A)
【文献】特開2007-062779(JP,A)
【文献】特開2009-107698(JP,A)
【文献】特開2018-177297(JP,A)
【文献】特開2012-030872(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068298(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0201283(US,A1)
【文献】実開平05-040163(JP,U)
【文献】特開2004-083078(JP,A)
【文献】特開2014-091524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有するヒンジキャップであって、
本体に、天面と、天面から下方に延びて容器の口に内側から嵌合する内筒と、天面から上方に延びる注出筒と、内筒および注出筒の内側で容器の口を閉鎖するように配置された隔壁と、開けられることで内容物を出す開口となる、隔壁に形成される開口予定部とが設けられ、
隔壁は、開口予定部の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されており、
隔壁において開口予定部の一部が内筒および注出筒の少なくとも一方に接しているように配置され、
開口予定部は破断用薄肉を破断することで本体において開口可能に設けられており、
開口予定部が、平面視して、開口される領域におけるヒンジから離れた側の領域では開口幅が小さく、ヒンジに近づくほど徐々に開口幅が大きくなる涙滴形状に形成されており、
内容物を出す開口が、平面視して本体における中心点よりもヒンジに近い領域にのみ設けられており、
開口は、平面視して、
ヒンジから離れた側の端部側領域である一端部側領域と、
ヒンジから近い側の端部側領域である他端部側領域とを有し、
一端部側領域は、ヒンジ側から離れる側に膨らむ円弧形状であり、
他端部側領域は、ヒンジ側に近づく側に膨らむ円弧形状であり、
他端部側領域の円弧が、一端部側領域の円弧の径よりも大きく、一端部側領域の円弧の両端部が、他端部側領域の円弧の各端部に直線状に連結して、ヒンジに近づくほど徐々に開口幅が大きくなり、
かつ、他端部側領域が内筒および注出筒の少なくとも一方に接しているように
配置されており、
隔壁は、成形型により樹脂が注入された樹脂注入跡と、使用時に開口しない
非開口薄肉とを有し、
周囲に破断用薄肉が形成された開口予定部と、非開口薄肉とは、これらの間に樹脂注入跡が位置するように配置されており、
非開口薄肉の長さ方向における両端部が、樹脂注入跡よりもヒンジに近い側において、内筒に接し、
樹脂注入跡よりもヒンジに近い側に開口予定部の全体が形成されているとともに、樹脂注入跡よりもヒンジから遠い側に非開口薄肉の一部が形成され、
非開口薄肉は、樹脂注入跡よりもヒンジから遠い側から、ヒンジに向かって延びて、樹脂注入跡と開口予定部とを取り囲み、
開口予定部は樹脂注入跡とヒンジとの間に位置することを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
本体は、
容器の口に外側から嵌まる外筒と、
外筒において、容器と反対側の外周縁部を周方向に切り欠いた空間である収納凹部と
を有し、
上蓋は、
蓋板と、蓋板に連続する外周面と、外周面に連続する鍔および壁と、を有し、
壁は、外周面の下端面から下方に突出して設けられ、上蓋を開いた状態から閉じた際に、収納凹部に収納される形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
本体に設けられた内筒の内面が粗面加工されていることを特徴とする請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
本体におけるヒンジの近傍に、縦方向に延びるリサイクル用の縦溝と周方向に延びるリサイクル用の周方向溝とが設けられ、
本体におけるヒンジの近傍に、縦溝とはヒンジの反対側で縦方向に延びるリサイクル用の補助縦溝と、周方向溝とは逆方向の周方向に延びる周方向補助溝と、の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
本体の外筒の内面に、径方向内側に突出して容器の口に嵌合する突条が形成され、
突条より下方に延びる案内用リブが周方向に対して複数形成され、
案内用リブの下部に下方ほど径方向外側に拡がる傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
上蓋の外周面の内面に、厚肉の座屈防止リブが周方向に複数設けられ、
上蓋を閉じた状態で、座屈防止リブの下端面が、本体の外筒の上面に当接可能に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体にヒンジを介して上蓋が設けられているヒンジキャップに関し、特に、少量の内容物を良好に出すことができるヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に取り付けられるキャップとして、容器の口に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有するヒンジキャップは広く知られている。また、この種のヒンジキャップにおいて、容器内の内容物を少量ずつ出すことができるように図ったものがある。このように内容物を少量ずつ出すことができるヒンジキャップとしては、細径の注出口が設けられているノズルを本体から上方に突出させた状態で設けたものが多い(例えば、日本国特開2015-107815号公報を参照)。
【0003】
このようなヒンジキャップは収縮可能な容器に装着される場合が多く、この場合には、容器を押圧することで、内容物を少量ずつ出すよう構成されている。また、さらにヒンジキャップに、空気が容器内に入らないように逆止弁などを設けたものもある(例えば、日本国特開2017-52517号公報を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特開2015-107815号公報や前記特開2017-52517号公報に開示されているように、細径の注出口が設けられているノズルなどを有するヒンジキャップは、比較的構造が複雑となるため、製造コストが高くなり易い。また、容器としても収縮可能なものを必要とするため、容器の製造コストも高くなり易い。
【0005】
ヒンジキャップ等の製造コストを低減するためには、例えば、ヒンジキャップとして細径の注出口が設けられているノズルを設けずに、単に、本体の中心部(キャップを平面視した場合に中心となる箇所)に小径で丸形状の孔からなる開口を形成することが考えられる。また、このようなヒンジキャップを用いることで収縮性が少ない容器を使用できて、製造コストをより抑えることも図ることができる。
【0006】
しかし、単に本体の中心に小径の丸孔からなる開口を形成するだけでは、内容物を出す際に、丸孔全体が内容物で塞がれて容器内に空気が導入されない状態となる(容器の内部と外部との空気の置換が困難となる)ため、内容物が出にくくなる。また、丸孔の直径を大きくすると、内容物を出す際に、容器内に空気が導入される一方で、内容物を少量出そうとしても多量の内容物が出てしまうことがあり、使い勝手が悪くなる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、比較的簡単な構造でありながら、少量の内容物を良好に出すことができるヒンジキャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、容器の口に取り付けられる本体と、この本体にヒンジを介して設けられた上蓋と、を有するヒンジキャップであって、本体に、天面と、天面から下方に延びて容器の口に内側から嵌合する内筒と、天面から上方に延びる注出筒と、内筒および注出筒の内側で容器の口を閉鎖するように配置された隔壁と、開けられることで内容物を出す開口となる、隔壁に形成される開口予定部とが設けられ、隔壁は、開口予定部の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されており、隔壁において開口予定部の一部が内筒および注出筒の少なくとも一方に接しているように配置され、開口予定部は破断用薄肉を破断することで本体において開口可能に設けられており、開口予定部が、平面視して、開口される領域におけるヒンジから離れた側の領域では開口幅が小さく、ヒンジに近づくほど徐々に開口幅が大きくなる涙滴形状に形成されており、内容物を出す開口が、平面視して本体における中心点よりもヒンジに近い領域にのみ設けられており、開口は、平面視して、ヒンジから離れた側の端部側領域である一端部側領域と、ヒンジから近い側の端部側領域である他端部側領域とを有し、一端部側領域は、ヒンジ側から離れる側に膨らむ円弧形状であり、他端部側領域は、ヒンジ側に近づく側に膨らむ円弧形状であり、他端部側領域の円弧が、一端部側領域の円弧の径よりも大きく、一端部側領域の円弧の両端部が、他端部側領域の円弧の各端部に直線状に連結して、ヒンジに近づくほど徐々に開口幅が大きくなり、かつ、他端部側領域が内筒および注出筒の少なくとも一方に接しているように配置されており、隔壁は、成形型により樹脂が注入された樹脂注入跡と、使用時に開口しない非開口薄肉とを有し、周囲に破断用薄肉が形成された開口予定部と、非開口薄肉とは、これらの間に樹脂注入跡が位置するように配置されており、非開口薄肉の長さ方向における両端部が、樹脂注入跡よりもヒンジに近い側において、内筒に接し、樹脂注入跡よりもヒンジに近い側に開口予定部の全体が形成されているとともに、樹脂注入跡よりもヒンジから遠い側に非開口薄肉の一部が形成され、非開口薄肉は、樹脂注入跡よりもヒンジから遠い側から、ヒンジに向かって延びて、樹脂注入跡と開口予定部とを取り囲み、開口予定部は樹脂注入跡とヒンジとの間に位置することを特徴とする。
【0009】
この構成により、当該ヒンジキャップを装着した容器を、開口予定部を開けて開口を形成した状態で、内容物を出すためにヒンジが上方となるように傾けると、ヒンジから離れた開口幅の小さい箇所が開口における最も下方となり、かつ、ヒンジに近い開口幅の大きい箇所が開口における上方となる。したがって、この際には、開口における上方(ヒンジ)に近い開口幅の大きい箇所から容器内に空気が入り込み易い状態となり、すなわち、容器の内部と外部との空気の置換を容易に行える状態となり、また、開口における最も下方となっている箇所は開口幅が小さいので、涙滴形状の開口における開口幅の小さい箇所から少量の内容物を良好に出すことができる。
また、この構成により、当該ヒンジキャップを装着した容器を、内容物を出すためにヒンジが上方となるように傾けた際には、開口予定部を開けて形成した開口が平面視してキャップ本体の中心に設けられていたりヒンジから離れた領域に設けられていたりする場合と比較して、開口が本体における上方寄りに位置する。したがって、上記のように容器を傾けた際に、開口全体が内容物で塞がれる可能性を最小限に抑えることができて、開口から容器内に空気が入り込み易い状態となり(容器の内部と外部との空気の置換を容易に行える状態となり)、この結果、容器の内部と外部との空気の置換を行えずに泡や脈動を生じることを防止できて、少量の内容物を良好に出すことができる。
加えて、この構成によれば、開口予定部を開けて形成した開口を通して内容物を出し入れする際に、内容物が少量であっても、内筒および注出筒の少なくとも一方と、隔壁の略円錐形状部分とに案内させながら、良好に出し入れすることができる。また、隔壁が、開口予定部の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されているので、内容物を出して容器を立った状態に戻した際に、内容物が注出筒および隔壁の略円錐形状部分に沿って開口部に導かれ易くなるとともに内筒に沿って容器の内部に戻りやすくなる。
さらに、この構成によれば、周囲に破断用薄肉が形成された開口予定部と、非開口薄肉とが、これらの間に樹脂注入跡が位置するように配置されているので、当該ヒンジキャップを射出成形により一体形成すべく、成形型内の樹脂注入箇所から溶融した合成樹脂を射出した際に、開口予定部の周りに設けられている切断用薄肉および開口予定部と非開口薄肉とのそれぞれに、樹脂を良好に充填することができる。
つまり、少量の内容物を良好に出せるように開口予定部の大きさを小さくした場合には、樹脂注入跡が位置する溶融樹脂を注入する箇所から開口予定部が偏った位置に配置される場合が多くなる。このような場合に、溶融樹脂の注入箇所に対して反対側に非開口薄肉が設けられていないと、開口予定部の周りの破断用薄肉の箇所だけが樹脂を流入させる隙間が狭いため、この箇所が特に溶融樹脂が流れ難くなり、場合によっては、成形時に破断用薄肉に孔が形成されるなどして、このヒンジキャップを容器に装着しても密閉できなくなり密閉性能が低下してしまう。
これに対して、上記構成によれば、周囲に破断用薄肉が形成された開口予定部と、非開口薄肉とが、これらの間に樹脂注入跡が位置するように配置することで、溶融樹脂の注入箇所に対して、両側に薄肉(破断用薄肉と非開口薄肉)が配置されることとなる。これにより、樹脂注入跡を中心として両側に設けられる薄肉である破断用薄肉と非開口薄肉との両方に溶融樹脂が充填され易くなる。これにより、破断用薄肉の厚みを厚くしなくても、破断用薄肉および非開口薄肉に孔が形成されることを防止でき、ひいては、密閉性能を良好に維持できる。
【0010】
また、本発明において、本体は、容器の口に外側から嵌まる外筒と、外筒において、容器と反対側の外周縁部を周方向に切り欠いた空間である収納凹部とを有し、上蓋は、蓋板と、蓋板に連続する外周面と、外周面に連続する鍔および壁と、を有し、壁は、外周面の下端面から下方に突出して設けられ、上蓋を開いた状態から閉じた際に、収納凹部に収納される形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、本体の外周面上部に内容液が溜まっており、上蓋が閉じられた際の衝撃により、この内容液が跳ねたとしても、この内容液を壁で受け止めることが可能となる。また、別途に、液はね防止板を形成しなくても済むので、製造コストの増加を抑えることが可能である利点もある。
【0014】
また、本発明は、本体に設けられた内筒の内面が粗面加工されていることを特徴とする。この構成によれば、内筒の内面が粗面加工されていることで、表面張力が働き難くなり、内容物が少量であっても、内筒の内面にとどまらずに容器の内部に戻りやすくなる。
【0021】
また、本発明は、本体におけるヒンジの近傍に、縦方向に延びるリサイクル用の縦溝と周方向に延びるリサイクル用の周方向溝とが設けられ、本体におけるヒンジの近傍に、縦溝部とはヒンジの反対側で縦方向に延びるリサイクル用の補助縦溝と、周方向溝とは逆方向の周方向に延びる周方向補助溝と、の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成において、リサイクル用の補助縦溝を設けることで、リサイクル時に上蓋やヒンジを持ちながら下方に切断する作業をより容易に行うことができる。また、周方向補助溝を設けることで、ヒンジキャップを打栓して容器の口に装着する際に、ヒンジキャップがその重量の偏りなどのために不自然な姿勢となるなどして装着不良を生じることが防止され、この結果、容器にヒンジキャップを良好に装着することができる。
【0023】
また、本発明は、本体の外筒の内面に、径方向内側に突出して容器の口に嵌合する突条が形成され、突条より下方に延びる案内用リブが周方向に対して複数形成され、案内用リブの下部に下方ほど径方向外側に拡がる傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0024】
この構成により、ヒンジキャップの打栓時に、案内用リブの下部に形成されて下方ほど径方向外側に拡がる傾斜面が容器の口に当接することとなる。この結果、ヒンジキャップの軸心が容器の口の軸心に合わせられた状態で、ヒンジキャップを容器に良好に装着することができる。
【0025】
また、本発明は、上蓋の外周面の内面に、厚肉の座屈防止リブが周方向に複数設けられ、上蓋を閉じた状態で、座屈防止リブの下端面が、本体の外筒の上面に当接可能に配置されていることを特徴とする。この構成により、打栓時に上蓋に力が加えられた際には、上蓋が座屈状態に変形することなく、その際の力が座屈防止リブを通して本体の上面に良好に伝えることができる。したがって、打栓時に、上蓋が座屈状態に変形して、本体のリサイクル用の破断予定箇所が破断することなどを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、本体に設けられ内容物を出す開口を開けるための開口予定部を、平面視して、ヒンジから離れた側の領域では開口幅が小さく、ヒンジに近づくほど徐々に開口幅が大きくなるような涙滴形状に形成している。この構成により、当該ヒンジキャップを装着した容器を、内容物を出すためにヒンジが上方となるように傾けた場合に、開口における上方(ヒンジ)に近い開口幅の大きい箇所から容器内に空気が入り込み易くなり、また、開口における最も下方となっている箇所は開口幅が小さいので、涙滴形状の開口部における開口幅の小さい箇所から少量の内容物を良好に出すことができる。
【0027】
また、開口予定部が、平面視して本体における中心点よりもヒンジに近い領域に設けられていることにより、当該ヒンジキャップを装着した容器を、内容物を出すためにヒンジが上方となるように傾けた際に、開口が、本体における上方寄りに位置するので、開口全体が内容物で塞がれる可能性が最小限に抑えられて、容器の内部と外部との空気の置換を行えずに泡や脈動を生じることを防止できて、少量の内容物を良好に出すことができる。
【0028】
また、開口予定部の一部が内筒および注出筒の少なくとも一方に接しているように配置され、隔壁が、開口予定部の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されていることにより、開口部を通して内容物を出し入れする際に、内容物が少量であっても、内筒および注出筒の少なくとも一方と、隔壁の略円錐形状部分とに案内させながら、良好に出し入れすることができる。また、内容物を出して容器を立った状態に戻した際に、内容物が注出筒および隔壁の略円錐形状部分に沿って開口に導かれ易くなるとともに内筒に沿って容器の内部に戻りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態(第1の実施の形態)に係るヒンジキャップの上蓋を開けた状態(但し、未開封状態)の側面断面図である。
【
図2】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の正面図である。
【
図3】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の側面図である。
【
図4】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の背面図である。
【
図5】同ヒンジキャップの上蓋を開けた状態の平面図(未開封状態)である。
【
図6】同ヒンジキャップを斜め上方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図7】同ヒンジキャップの上蓋を開けた状態(未開封状態)の底面図である。
【
図8】同ヒンジキャップを斜め下方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図9】同ヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態の側面断面図である。
【
図10】同ヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態の底面図である。
【
図11】同ヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図12】参考例であるヒンジキャップの上蓋を開けた状態(但し、未開封状態)の側面断面図である。
【
図13】同参考例のヒンジキャップの上蓋を開けた状態の平面図(未開封状態)である。
【
図14】同参考例のヒンジキャップを斜め上方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図15】同参考例のヒンジキャップの上蓋を開けた状態(未開封状態)の底面図である。
【
図16】同参考例のヒンジキャップを斜め下方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図17】同参考例のヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態の側面断面図である。
【
図18】同参考例のヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態の底面図である。
【
図19】同参考例のヒンジキャップの上蓋を開け、開封した状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図20】本発明の他の実施の形態(第2の実施の形態)に係るヒンジキャップの上蓋を開けた状態(但し、未開封状態)の側面断面図である。
【
図21】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の正面図である。
【
図22】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の側面図である。
【
図23】同ヒンジキャップの上蓋を閉じた状態の背面図である。
【
図24】同ヒンジキャップの上蓋を開けた状態の平面図(未開封状態)である。
【
図25】同ヒンジキャップを斜め上方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図26】同ヒンジキャップの上蓋を開けた状態(未開封状態)の底面図である。
【
図27】同ヒンジキャップを斜め下方から見た斜視図で、上蓋を開けた状態(未開封状態)を示す。
【
図28】同ヒンジキャップの変形例を示すもので、上蓋を閉じた状態の正面図である。
【
図29】同ヒンジキャップの変形例を示すもので、上蓋を閉じた状態の側面図である。
【
図30】同ヒンジキャップの変形例を示すもので、上蓋を閉じた状態の背面図である。
【
図31】同ヒンジキャップ(第2の実施の形態のヒンジキャップ)の上蓋を開け、開封した状態の側面断面図である。
【
図32】同ヒンジキャップ(第2の実施の形態のヒンジキャップ)の上蓋を開け、開封した状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態のヒンジキャップを、図面に基づき説明する。
まず、
図1~
図11に基づき、本発明の実施の形態(第1の実施の形態)に係るヒンジキャップについて説明する。ここで、
図1~
図11はそれぞれ本発明の実施の形態(第1の実施の形態)に係るヒンジキャップを示す図である。
図1~
図8は未開封状態のヒンジキャップを示し、
図9~
図11においては開封状態のヒンジキャップを示す。
【0031】
これらの
図1~
図11において、1は、内部に内容物(内容液)が収容されている容器2に取付けられるヒンジキャップである。ヒンジキャップ1は、容器2の口3に取り付けられる本体4と、この本体4にヒンジ5を介して設けられた上蓋6と、を有する。なお、本体4は、必ずしも、容器2の口3に直接取り付けられなくてもよく、例えば、容器2の口3に、中栓などを介して、本体2が間接的に取り付けられる構成であってもよい。ヒンジキャップ1は、例えば合成樹脂製とされ、この場合には、溶融した合成樹脂を金型内に射出して製造する射出成形により一体形成されて製造される。
【0032】
図1~
図8などに示すように、本体2は、容器2の口3の上端面に上方から対向するように配置される天面11と、天面11の外周から下方に延びてその下部が容器2の口3に外側から嵌る円筒状の外筒(アウターリングとも称せられる)12と、外筒12の内周位置に径方向に隙間を有する位置で天面11から下方に延びるように形成されて、その下部が容器2の口3に内側から嵌り込む円筒状の内筒(インナーリングとも称せられる)13と、天面11の外周寄り箇所から上方に円環状に延びる係止筒19と、天面11の外周寄り箇所から上方に延びて突出する注出筒14と、内筒13や注出筒14の内側に形成されて容器2の口3(ヒンジキャップ1の内部側領域と外部側領域)を閉鎖する隔壁15と、この隔壁15に破断用薄肉(スコアや切断部とも称せられる)16を介して形成されて、内容物を出すための開口17(
図9~
図11参照)を形成するための開口予定部18と、開口予定部18から上方に延びるように形成されている操作部20などが設けられている。なお、
図1などにおける、12aは外筒12の内面から突出するように一体形成されて、容器2の口3の下部に嵌合する突条である。
【0033】
容器2へのヒンジキャップ1の装着時には、本体4に上蓋6が被せられた状態で、容器2の口3にヒンジキャップ1が載せられて、上方から打栓具によりヒンジキャップ1が打栓されることで、容器2の口3が本体2の外筒12と内筒13との間に挟まれて嵌合された状態でヒンジキャップ1が容器2に装着される。
【0034】
操作部20は、開口予定部18から立設する支柱20aと、支柱20aの先端部に形成されて指を引っ掛けるプルリング20bとからなる。当該ヒンジキャップ1は未使用状態(未開封状態)では
図1~
図8に示すように、開口17は開口予定部18により閉鎖されており、容器2内が密閉状態に保たれる。そして、容器2が使用される際には、プルリング20bが手指により引っ張り上げられることで、破断用薄肉16が破断して開口予定部18がキャップ本体4から離脱し、
図9~
図11に示すように、内容物を出すための開口17が形成される。なお、この実施の形態では、破断用薄肉16は、隔壁15の下面側に窪みが形成されて(上方に窪む溝が形成されて)薄肉状とされているが、これに限るものではなく、隔壁15の上面側に窪みを形成することで薄肉を構成したり、隔壁15の上面側および下面側の両側に窪みを形成することで薄肉を構成したりしてもよい。また、
図1に示すように、この実施の形態では、操作部20の支柱20aの高さが、注出筒14の先端部よりも低く形成されており、ヒンジキャップ1の打栓時に、上蓋6を通して操作部20の支柱20aに力が加わり難い構造とされている。
【0035】
ここで、
図7~
図11などに示すように、開口予定部18および開口17は、平面視して、開口される領域におけるヒンジ5から離れた側の領域では開口幅(
図7におけるY方向の幅)が小さく、ヒンジ5に近づくほど徐々に開口幅が大きくなる涙滴形状に形成されている。また、上述したように、開口予定部18は破断用薄肉16を破断することで本体4において開口可能に(開口17を形成可能に)設けられている。
【0036】
より詳しくは、この実施の形態においては、
図7、
図8、
図10、
図11などに示すように、開口予定部18および開口17は、ヒンジ5から離れた側の端部側領域(一端部側領域)では、小径でヒンジ5から離れる側に膨らむ円弧形状とされ、ヒンジ5に近づく側の端部側領域(他端部側領域)では、大径(一端部側領域の円弧よりも大きい径)でヒンジ5に近づく側に膨らむ円弧形状とされ、各円弧形状の両端部同士を直線状に連結してヒンジ5に近づくほど徐々に開口幅が大きくなる涙滴形状に形成している。但し、これに限るものではなく、ヒンジ5から離れた側の端部側領域(一端部側領域)でヒンジ5から離れる側に角部を有するV字形状または多角形状や、ヒンジ5に近づく側の端部側領域(他端部側領域)でヒンジ5に近づく側に角部を有するV字形状または多角形状の涙滴形状であってもよい。また、これらの間の部分も直線状に接続される代わりに湾曲形状(凹状の湾曲形状や凸状の湾曲形状)に滑らかに接続される涙滴形状としてもよい。
【0037】
また、
図1、
図5や
図7~
図11などに示すように、開口予定部18および開口17は、平面視して本体4における中心点Aよりもヒンジ5に近い領域に設けられている。特に、この実施の形態では、開口予定部18および開口17の全体が、ヒンジキャップ1を平面視して本体4における中心点Aよりもヒンジ5に近い領域に設けられている。
【0038】
図1、
図7~
図11などに示すように、隔壁15において開口予定部18および開口17の一部が内筒13および注出筒14の少なくとも一方に接しているように配置されている。また、
図1に示すように、隔壁15が、開口予定部18の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されている。この実施の形態では、開口予定部18のヒンジ5に最も近い端部が、内筒13および注出筒14の両方に接しているように配置されている。
【0039】
キャップ本体4に設けられた内筒13の内面が粗面加工されている。ここで、粗面加工とは、表面に細かな凹凸が形成されるよう加工する(いわゆる表面を荒らす)ことである。この粗面加工を施すことにより、内容物などの液体の表面張力が働くことを最小限に抑えることができ、内容物が表面にとどまり難くなって、流れ易くなる。
【0040】
図1~
図8に示すように、上蓋6には、蓋板22と、この蓋板22に連続する外周面21などが設けられている。詳しくは、上蓋6には、上蓋6を閉じた際にキャップ本体4の外筒12の外周部上縁にその下縁部が当接するとともにキャップ本体4の係止筒19が内側から密接される外周面(スカートとも称せられる)21と、この外周面21の上端縁になだらかにつながる蓋板22と、蓋板22から下方に環状に突出して上蓋6を閉じた際に注出筒12の先端部(いわゆる水切り)に内側から密接してシールする内周突条23と、蓋板22における内周突条23よりも外周側箇所から下方に環状に突出して上蓋6を閉じた際に注出筒12の先端部(いわゆる水切り)に外側から密接してシールする外周突条24と、外周面21におけるヒンジ5とは逆の箇所から側方(手前側)に突出して形成されて、開ける際にこの箇所に指などを引っ掛けることで上蓋6を開ける鍔(指かけとも称せられる)25などが設けられている。なお、上蓋6を閉じた場合に鍔部25の下方となる本体4の箇所には、窪み36が形成されて、上蓋6の鍔25に指を掛け易くなるように図られている。
【0041】
この実施の形態では、
図1、
図3、
図5、
図6などに示すように、上蓋6の外周面21の下端部に連続するとともに、鍔25に対して周方向にも連続する壁(後述するように液はね防止部とも称せられる)26が形成されている。この壁26は上蓋6の外周面21と周方向に面一形状で、上蓋6の外周面21の下端面から下方に突出するように設けられている。また、本体4の外筒12には、上蓋6を閉じた際に、この壁26を収納する収納凹部27が設けられ、この収納凹部27は、鍔25と連続するとともにキャップ本体4の外筒12を切り欠くように、外筒12の外周面に形成されている。壁26は、上蓋6を閉じた際に、本体4の外周面に被さるように形成されている。
【0042】
内容物を注出した後には、本体4の外筒12の上端面に内容物が溜まることがあるが、この上蓋6の壁26により、上蓋6が閉じられた際に、本体4の外筒12の上端面に内容物が溜まってしまった内容液が跳ねたとしても、当該内容液を壁10が受け止められるよう構成されている。
【0043】
また、上記したように、ヒンジキャップ1は、例えば合成樹脂製とされ、この場合には、溶融した合成樹脂を金型内に射出して製造する射出成形により一体形成されて製造される。そして、
図5、
図6などに示すように、ヒンジキャップ1は、成形型(金型)により樹脂が注入された樹脂注入跡28を有し、この樹脂注入跡28は、本体4における隔壁15などの平面視した場合の中央箇所やその近傍箇所に設けられる場合が多い。また、本体4には、使用時に開口しない非開口薄肉29が設けられ、周囲に破断用薄肉16が形成されている開口予定部18と、非開口薄肉29とは、これらの間に樹脂注入跡28が位置するように配置されている。また、非開口薄肉29は、樹脂注入跡28を中心とする仮想円の径方向と交差するように設けられているとともに、樹脂注入跡28および開口予定部18(破断用薄肉16)を囲むように形成されている。なお、非開口薄肉29は、後述するように、当該ヒンジキャップ1を射出成形によって製造する際に、破断用薄肉16および開口予定部18の箇所を良好に製造できるようにすべく設けられている。
【0044】
この実施の形態では、非開口薄肉29が、破断用薄肉16と同様に、隔壁15の下面側に窪みが形成されて(上方に窪む溝部が形成されて)薄肉状とされている。しかし、これに限るものではなく、隔壁15の上面側に窪みを形成することで薄肉を構成したり、隔壁15の上面側および下面側の両側に窪みを形成することで薄肉を構成したりしてもよい。また、この実施の形態では、非開口薄肉29により、樹脂注入跡28ならびに開口予定部18や破断用薄肉16の外周を取り囲むように形成されている場合を図示している。しかし、これに限るものではなく、下方から見て樹脂注入跡28を中心として、開口予定部18や破断用薄肉16と反対側に非開口薄肉29が形成されていてもよい。また、この実施の形態では、非開口薄肉29が下方から見て略矢印形状に形成されている場合を図示しているが、これに限るものではなく、円弧状や角形形状などどのような形状であってもよい。
【0045】
また、
図1~
図7などに示すように、ヒンジキャップ1には、本体4におけるヒンジ5の近傍に、リサイクル時にヒンジ5を持って切断し易いように、縦方向(上下方向)に延びるリサイクル用の縦溝(縦スリット)33と、周方向に延びるリサイクル用の周方向溝(周方向スリット)34とが設けられている。これに加えて、このヒンジキャップ1には、本体4におけるヒンジ5の近傍に、縦溝33とはヒンジ5の反対側で縦方向(上下方向)に延びるリサイクル用の補助縦溝35Aと、ヒンジ5の一端(この実施の形態ではヒンジ5が設けられている側からみて左端だが、これに限るものではない)を中心として周方向溝とは逆方向の周方向に延びる周方向補助溝35Bとが設けられている。
【0046】
この実施の形態では、縦溝33は本体4の外筒12における外側から内側に窪むように形成されて、外筒12の内側が薄肉状とされている。一方、補助縦溝35Aは、本体4の外筒12における内側から外側に窪むように形成されて、外筒12の外側が薄肉状とされている。そして、縦溝33に加えて補助縦溝35Aを設けたことでこれらの箇所が薄肉となっているので、リサイクルをするためにヒンジキャップ1を容器2から取り外す際に、上蓋6を持ちながら、ヒンジ5の箇所を下方に容易に破断できるよう図られている。また、この実施の形態では、周方向溝(周方向スリット)34と周方向補助溝35Bとは周方向にはつながっておらず分離されている場合を図示しているが、これに限るものではなく、周方向溝(周方向スリット)34と周方向補助溝35Bとがつながっていてもよい。
【0047】
上記したように外筒12の下部内面には、容器2の口3の下部に嵌合する突条12aが形成されているが、
図7、
図8に示すように、突条12aは一部の箇所が切欠かれて、切欠12bが設けられている。すなわち、突条12aが外筒12の下部内面において全周にわたって設けられていると、当該ヒンジキャップ1を打栓して容器2に装着する際に、縦溝33が設けられている箇所が薄肉となっているために、力が集中して破断する場合がある。これに対して、突条12aが周方向に対して一部を切欠くことで、薄肉の部分が複数設けられることとなり、この結果、打栓時での薄肉に対する力が分散されて、縦溝33が設けられている箇所に力が集中し難くなり、ひいては、縦溝33が破断することを防止できるよう図られている。
【0048】
上記構成によれば、
図7~
図11などに示すように、本体4に設けられ内容物を出す開口17を開けるための開口予定部18を、平面視して、ヒンジ5から離れた側の領域では開口幅が小さく、ヒンジ5に近づくほど徐々に開口幅が大きくなるような涙滴形状に形成している。この構成により、当該ヒンジキャップ1を装着して開封済みの容器2を、内容物を出すためにヒンジ4が上方となるように傾けた場合に、開口17における上方(ヒンジ5)に近い開口幅の大きい箇所から容器2内に空気が入り込み易くなる。また、開口17における最も下方となっている箇所は開口幅が小さいので、この結果、涙滴形状の開口17における開口幅の小さい箇所から少量の内容物を良好に出すことができる。
【0049】
上記構成によれば、
図1、
図5~
図11などに示すように、開口予定部18が、平面視して本体4における中心点Aよりもヒンジ5に近い領域に設けられている。この構成により、当該ヒンジキャップ1を装着して開封済みの容器2を、内容物を出すためにヒンジ5が上方となるように傾けた際には、開口予定部18を開けて形成した開口17が平面視して本体4の中心部Aに設けられていたりヒンジ5から離れた領域に設けられていたりする場合と比較して、開口17が本体4における上方寄りに位置する。
【0050】
したがって、上記のように容器2を傾けた際に、開口17全体が内容物で塞がれる可能性を最小限に抑えることができて、開口17から容器2内に空気が入り込み易い状態となる(容器2の内部と外部との空気の置換を容易に行える状態となる)。すなわち、開口17から容器2内に空気が入り込み易い状態では、容器2の内部と外部との空気の置換を行えずに泡や脈動を生じるおそれがあるが、当該ヒンジキャップ1では、このような不具合の発生を良好に防止できて、少量の内容物を良好に出すことができる。
【0051】
また、上記構成においては、
図1、
図5~
図11などに示すように、開口予定部18の一部(この実施の形態では、開口予定部18のヒンジ5に近い箇所)が内筒13および注出筒14に接しているように配置され、隔壁15が、開口予定部18の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されている。この構成により、開口予定部18を開けて形成した開口17を通して内容物を出し入れする際に、内容物が少量であっても、内筒13および注出筒14と、隔壁15の略円錐形状部分とに案内させながら、良好に出し入れすることができる。また、隔壁15が、開口予定部18の箇所が最も下方となるような略円錐形状に形成されているので、内容物を出して容器2を立った状態に戻した際に、内容物が注出筒14および隔壁15の略円錐形状部分に沿って開口17に導かれ易くなるとともに内筒部13に沿って容器の内部に戻りやすくなる。これにより、いわゆる液切れがよくなるとともに、注出筒14の内面に内容物が残ることを最小限に抑えることができて、使い易くなる。
【0052】
また、上記構成においては、本体4に設けられた内筒13の内面が粗面加工されている。この構成により、内筒13の内面において内容物の表面張力が働き難くなり、内容物が少量であっても、内筒13の内面にとどまらずに容器2の内部に戻りやすくなる。これにより、内筒13の内面に内容物が残ることを最小限に抑えることができて、使い易くなる。
【0053】
なお、上記構成においては、開口予定部18の一部が、内筒13および注出筒14の両方に接しているように配置され、この場合には、開口17を通して出し入れする内容物を内筒13および注出筒14の両方に案内させながら、当該ヒンジキャップ1を装着した容器2を良好に使用することができる。しかしながら、これに限るものではなく、開口予定部18の一部が、内筒13または注出筒14の一方だけに接しているように配置してもよく、この場合でも、開口予定部18の一部が、内筒13および注出筒14の何れにも接していないように配置した場合と比較すると、少量の内容物を良好に出し入れすることができる。
【0054】
なお、
図12~
図19は参考例であるヒンジキャップ51を示す図である。
図12~
図16は未開封状態の参考例のヒンジキャップ51を示し、
図17~
図19においては開封状態の参考例のヒンジキャップ51を示す。これらの図に示すように、このヒンジキャップ51では、内筒13や注出筒14の内側に形成されて容器2の口3を閉鎖する隔壁15のほぼ全域に近い大きさの(すなわち、大径の)丸孔からなる開口予定部18(開口17)が形成されている。この場合には、
図17~
図19に示すように、形成される開口17が大きいため、少量の内容物を出し難く、大量の内容物が出てしまう恐れがある。
【0055】
これに対して、本発明の実施の形態に係るヒンジキャップ1によれば、開口予定部18や開口17の大きさが小さいので、少量の内容物を出し易くなるとともに、上記のように、空気が容器2内に比較的流入し易いので、少量の内容物を良好に出すことができる。
【0056】
また、上記構成によれば、上蓋6の外周面21の下端部に連続するとともに、鍔25に対して周方向にも連続する壁(液はね防止部)26が形成されている。また、この壁26は上蓋6の外周面21の下端面から下方に突出するように設けられ、上蓋6を閉じた際に、キャップ本体4の外周面に被さるように形成されている。
【0057】
この構成により、上蓋6が閉じられた際の衝撃により、本体4の外周面上部に内容液が溜まっており、この内容液が跳ねたとしても、この内容液を壁26で受け止めることができるので、ヒンジキャップ1としても付加価値を増加させることができる。また、別途に、液はね防止板を形成しなくても済むので、ヒンジキャップ1としての製造コストの増加を抑えることができる利点もある。
【0058】
上記構成においては、本体4に、使用時に開口しない非開口薄肉29が設けられ、周囲に破断用薄肉16が形成された開口予定部18と、非開口薄肉29とが、これらの間に樹脂注入跡28が位置するように配置されている。この構成により、当該ヒンジキャップ1を射出成形により一体形成すべく、成形型内の樹脂注入箇所から溶融した合成樹脂を射出した際に、開口予定部18の周りに設けられている切断用薄肉16および開口予定部18と非開口薄肉28とのそれぞれに、樹脂を良好に充填することができる。
【0059】
つまり、少量の内容物を良好に出せるように開口予定部18の大きさを小さくした場合には、樹脂注入跡28が位置する溶融樹脂を注入する箇所から開口予定部18が偏った位置に配置される場合が多くなる。このような場合に、溶融樹脂の注入箇所に対して反対側に非開口薄肉29が設けられていないと、開口予定部18の周りの破断用薄肉16の箇所だけが樹脂を流入させる隙間が狭いため、この箇所が特に溶融樹脂が流れ難くなり、場合によっては、成形時に破断用薄肉16に孔が形成されるなどして、このヒンジキャップを容器に装着しても密閉できなくなり密閉性能が低下してしまう。
【0060】
これに対して、上記構成によれば、周囲に破断用薄肉16が形成された開口予定部18と、非開口薄肉29とが、これらの間に樹脂注入跡28が位置するように配置することで、溶融樹脂の注入箇所に対して、両側に薄肉(破断用薄肉16と非開口薄肉29)が配置されることとなる。これにより、樹脂注入跡28を中心として両側に設けられる薄肉である破断用薄肉16と非開口薄肉29との両方に溶融樹脂が充填され易くなる。これにより、破断用薄肉16の厚みを厚くしなくても、破断用薄肉16や非開口薄肉29に孔が形成されることを防止でき、ひいては、密閉性能を良好に維持できる。
【0061】
上記構成においては、本体4におけるヒンジ5の近傍に、縦方向に延びるリサイクル用の縦溝33と周方向に延びるリサイクル用の周方向溝34とが設けられていることに加えて、縦溝33とはヒンジ5の反対側で縦方向に延びるリサイクル用の補助縦溝35Aと、周方向溝34とは逆方向の周方向に延びる周方向補助溝35Bと、が設けられている。
【0062】
この容器2内の内容物を使い終わるなどして、容器2およびヒンジキャップ1を廃棄する際には、リサイクルするために容器2からヒンジキャップ1を分離することが行われている。このリサイクル時には、上蓋6を持ちながら、まずヒンジ5の箇所を縦溝33に沿って引き下げて切断し(破断し)、その後、周方向溝34に沿わせながら外側に引っ張って外筒12を切断(破断)することで、ヒンジキャップ1による容器2の口3に対する嵌合力が弱まるため、容器2からヒンジキャップ1を分離することができる。
【0063】
この場合に、本体4には、縦溝33とはヒンジ5の反対側で縦方向に延びるリサイクル用の補助縦溝35Aがさらに形成されている。これにより、上蓋6を持ちながら、まずヒンジ5の箇所を縦溝33に沿って引き下げて切断(破断)する際に、補助縦溝35Aでも切断(破断)される。この結果、リサイクル時に上蓋6やヒンジ5を持ちながら下方に切断する作業をより容易に行うことができる。
【0064】
周方向補助溝35Bが設けられていることで、ヒンジキャップ1を打栓して容器2の口3に装着する際に、ヒンジキャップ1がその重量の偏りなどのために不自然な姿勢となるなどして装着不良を生じることが防止され、この結果、容器2にヒンジキャップ1を良好に装着することができる。
【0065】
つまり、周方向補助溝35Bが設けられず、周方向溝34だけが設けられていると、本体4における、周方向溝34が設けられている側が軽くなるため、場合によっては、ヒンジキャップ1の打栓時にヒンジキャップ1がその重量の偏りに起因して傾くなどして不自然な姿勢となることがあり、この際には装着不良を生じる恐れがある。これに対して、周方向溝34に加えて周方向補助溝35Bを設けることにより、ヒンジキャップ1の重量が、ヒンジ5が設けられている箇所を中心として左右に良好にバランスする。これにより、ヒンジキャップ1の打栓時にヒンジキャップ1がその重量の偏りに起因して傾くなどして不自然な姿勢となることを防止でき、この結果、容器2にヒンジキャップ1を良好に装着することができる。なお、この実施の形態では、本体4に、補助縦溝35Aおよび周方向補助溝35Bが設けられている場合を述べた。しかし、これに限るものではなく、補助縦溝35Aおよび周方向補助溝35Bにおける一方だけが設けられていてもよく、補助縦溝35Aおよび周方向補助溝35Bの何れも設けられていない場合と比較して、それぞれ利点を有する。
【0066】
図20~
図32は本発明の他の実施の形態(第2の実施の形態)に係るヒンジキャップ41を示す。ここで、
図20~
図30は未開封状態のヒンジキャップ41を示し、
図31、
図32は開封状態のヒンジキャップ41を示す。
図28~
図30は第2の実施の形態のヒンジキャップ41の変形例を示す。この第2の実施の形態のヒンジキャップ41における上記第1の実施の形態のヒンジキャップ1と同様な構成要素については、同符号を付してその説明は省略する。
【0067】
この実施の形態のヒンジキャップ41では、上記第1の実施の形態のヒンジキャップ1の構成に加えて以下のような構成を有している。
まず、
図20、
図26、
図27に示すように、本体4の外周である外筒12の内面に、径方向内側に突出して容器2の口3に嵌合する突条12aが形成されている。さらに、この突条12aより下方に延びる案内用リブ31が周方向に対して複数形成され、案内用リブ31の下部には、上方ほど小径となってヒンジキャップ41の打栓時に容器2の口3に当接してこの口3を案内する傾斜面31aが形成されている。
【0068】
また、
図21、
図25などに示すように、上蓋6の外周面21の内面に、厚肉の座屈防止リブ32を周方向に対して複数箇所設けている。この座屈防止リブ32は、上蓋6を閉じた状態で、座屈防止リブ32の下端面が、本体4の外筒部12の上面に当接可能に配置されている。すなわち、ヒンジキャップ41の打栓時に上蓋6に加えられた下方への力が、座屈防止リブ32を通して、本体4の天面11に伝達するように構成されている。なお、
図28~
図30に示すように、上蓋6の外周面21の外周面に滑り止めの細かな凹凸(いわゆるローレット)37を形成してもよい。
【0069】
上記構成においては、本体4の突条12aに、下方に延びる案内用リブ31が周方向に対して複数形成され、案内用リブ31の下部に、上方ほど小径となる傾斜面31aが形成されている。この構成により、当該ヒンジキャップ41を打栓する際に、まず、複数の案内用リブ31が傾斜面31aでまず容器2の口3に当接することとなる。これにより、打栓時にはヒンジキャップ41と容器2とが同軸心でかつヒンジキャップ41が傾くことなく水平に近い姿勢で互いに当接しながらヒンジキャップ41が下方に押圧されながら嵌合され、この結果、キャップ本体4の突条12aを良好な姿勢で容器2の口3に確実に嵌合させることができる。
【0070】
また、上記構成においては、上蓋6の外周面21の内面に、厚肉の座屈防止リブ32が周方向に対して複数箇所設けられている。この構成により、打栓時には、打栓用の治具から上蓋6に押圧力が加えられるが、その際の力が座屈防止リブ32を通して本体4の上面(具体的には、キャップ本体4の外筒12の上面)に良好に伝えることができる。したがって、打栓時に、上蓋6が座屈状態に変形した場合には、本体4のリサイクル用の破断予定箇所(縦溝33、周方向溝34等)に力が集中して破断することがあったが、このような不具合を防止できて、当該ヒンジキャップ41を容器2の口3に良好に装着することができる。