(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】棒状材用支持具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20240418BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20240418BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20240418BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
F16B7/04 301H
F16B1/00 A
F16B2/06 A
E04B9/18 B
E04B9/18 F
(21)【出願番号】P 2020044582
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】合同会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正尋
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152255(JP,A)
【文献】特開2019-090513(JP,A)
【文献】実公昭47-029882(JP,Y1)
【文献】特開2016-125566(JP,A)
【文献】特開2018-003929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 1/00-1/04
F16B 2/00-2/26
F16B 7/00-7/22
E04B 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1棒状材に対して第2棒状材を固定するための棒状材用支持具において、
第1支持体と、
前記第1支持体に対向して配置される第2支持体と、
前記第1支持体、前記第2支持体それぞれの貫通孔に挿入され、前記第1支持体と前記第2支持体とをそれらの間に前記第1棒状材及び前記第2棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、
前記第1棒状材から前記第1支持体が脱落しないように仮止めするために、前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧するための補助板と、
を具備し、
前記補助板は柔軟性を有する、棒状材用支持具。
【請求項2】
第1棒状材に対して第2棒状材を固定するための棒状材用支持具において、
第1支持体と、
前記第1支持体に対向して配置される第2支持体と、
前記第1支持体、前記第2支持体それぞれの貫通孔に挿入され、前記第1支持体と前記第2支持体とをそれらの間に前記第1棒状材及び前記第2棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、
前記第1棒状材から前記第1支持体が脱落しないように仮止めするために、前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧するための補助板と、
を具備し、
前記補助板は、前記締結ボルトが挿入される貫通孔を有し、前記補助板が有する前記貫通孔は、前記締結ボルトのネジ溝に係合する内周縁を有する、棒状材用支持具。
【請求項3】
第1棒状材に対して第2棒状材を固定するための棒状材用支持具において、
第1支持体と、
前記第1支持体に対向して配置される第2支持体と、
前記第1支持体、前記第2支持体それぞれの貫通孔に挿入され、前記第1支持体と前記第2支持体とをそれらの間に前記第1棒状材及び前記第2棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、
前記第1棒状材から前記第1支持体が脱落しないように仮止めするために、前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧するための補助板と、
を具備し、
前記補助板は、前記締結ボルトのネジ溝よりも薄い、棒状材用支持具。
【請求項4】
第1棒状材に対して第2棒状材を固定するための棒状材用支持具において、
第1支持体と、
前記第1支持体に対向して配置される第2支持体と、
前記第1支持体、前記第2支持体それぞれの貫通孔に挿入され、前記第1支持体と前記第2支持体とをそれらの間に前記第1棒状材及び前記第2棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、
前記第1棒状材から前記第1支持体が脱落しないように仮止めするために、前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧するための補助板と、
を具備し、
前記補助板は透明である、棒状材用支持具。
【請求項5】
前記第1支持体の内面には前記第1棒状材に係合する突起部が設けられ、
前記補助板は、前記第1棒状材と前記突起部との係合状態を維持し、前記第1棒状材に対して前記第1支持体を仮止めする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項6】
前記補助板は、前記締結ボルトが挿入される貫通孔を有する、
請求項1、3,または4に記載の棒状材用支持具。
【請求項7】
前記補助板には、前記第1棒状材に対する前記第2棒状材の固定角度をガイドするための目盛またはガイド線が表記される
請求項1乃至6のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項8】
前記第2支持体は前記第1支持体と同一に構成される、
請求項1乃至7のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項9】
前記補助板は、前記第1支持体または前記第2支持体の全体を覆う大きさを有する、
請求項1乃至8のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項10】
前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧している前記補助板の箇所を指でひろげることで仮止めした状態を解除できる、請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項11】
前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧している前記補助板は、前記第1棒状材の外周面に沿って湾曲することで、その弾性力によって前記第1棒状材を前記第1支持体に対して押圧する請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【請求項12】
前記第1支持体は第1保持片を有し、
前記補助板は、前記第1保持片の先端縁に接触する位置またはわずかな隙間を隔てた位置に配置されることで前記第1棒状材を収容する空間を形成し、
前記第1棒状材を前記補助板と前記第1保持片の先端縁との間に押し込むことで、柔軟性を有する前記補助板は少し湾曲し、それにより前記補助板と前記第1保持片との間が押し広げられ、前記第1棒状材を前記空間に収容する請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状材用支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状材用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブ等から吊りボルトを吊り下げ、この吊りボルトに振れ止めボルト(補助ボルト)を固定するための吊りボルト用支持具が知られている(例えば、特許文献1参照)。吊りボルト用支持具は、吊りボルトに対して任意の高さ位置に金具を位置決めし、振れ止めボルトを任意の角度で支持する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の吊りボルト用支持具を用いた作業において、作業者は、一方の手で吊りボルトと振れ止めボルトとを挟み込んだ吊りボルト用支持具を持ちながら、他方の手でボルトを締める必要があり、この作業自体に慣れが必要であった。そのため、簡単な操作で、吊りボルトに対して振れ止めボルトを固定することができる支持具が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る棒状材用支持具は、第1棒状材に対して第2棒状材を固定するために用いられ、第1支持体と、第1支持体に対向して配置される第2支持体と、第1支持体、第2支持体それぞれの貫通孔に挿入され、第1支持体と第2支持体とをそれらの間に第1棒状材及び第2棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、第1棒状材から第1支持体が脱落しないように仮止めするために、第1棒状材を第1支持体に対して押圧するための補助板と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吊りボルト等の棒状材に対して振れ止めボルト等の棒状材を簡単な操作で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る吊りボルト用支持具を用いて吊りボルトと振れ止めボルトを天井スラブに取り付けた使用状態を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の吊りボルト用支持具を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の吊りボルト用支持具を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1の吊りボルト用支持具を吊りボルトに仮止めした状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、吊りボルト用支持具に対して振れ止めボルトの取付方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、吊りボルト用支持具を用いて吊りボルトに振れ止めボルトを固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本実施形態に係る吊りボルト用支持具10の使用状態の一例を示している。この例では、吊りボルトBを介して支持部材Rが天井スラブTに吊下支持されている。この支持部材Rにはラック等が設置される。天井スラブTには、吊りボルトBの振れ止めに使用される振れ止めボルトSが金具等を介して取り付けられている。吊りボルト用支持具10は、吊りボルトBに対して斜めに配置される振れ止めボルトSと吊りボルトBとが交差する部分に取り付けられ、それらを固定する用途に使用される。なお、吊りボルト用支持具10が使用される用途は上記に限定されることはなく、2本の全ネジボルトの位置関係を固定する様々な用途に使用することができる。例えば、
図1において、本実施形態に係る吊りボルト用支持具10を2本の振れ止めボルトSが交差する位置に配置し、これらを固定する用途として用いることができる。
【0009】
図2乃至
図4に示すように、吊りボルト用支持具10は第1支持体20と、第1支持体20に対向配置される第2支持体30と、第1支持体20と第2支持体30とを締結する締結ボルト50と、を有する。
【0010】
第1支持体20は金属製であり、略二等辺三角形状に構成される。具体的には、第1支持体20は、第1支持体本体21を有する。第1支持体本体21は、略二等辺三角形状の第1板体22と、二等辺三角形の底辺に対応する第1板体22の周縁部に第1板体22に対して垂直に設けられた第1保持片23と、二等辺三角形の2本の等辺に対応する第1板体22の周縁部に第1板体22に対して傾斜して設けられる第1圧着片24とを有する。以下、第1板体22の第1保持片23、第1圧着片24が設けられた側の面を裏面、その反対側の面を表面としてそれぞれを区別する。
【0011】
第1板体22の略中央には、締結ボルト50が挿入される孔部22aが開けられている。孔部22aは締結ボルト50の矩形状のネック部の外周に係合する矩形状に形成されている。
【0012】
第1保持片23の両側縁部と第1圧着片24の両側縁部との間には、吊りボルトBの外径より僅かに大きい隙間が設けられる。この隙間に吊りボルトBが通される。後述の補助板40は、第1保持片23の先端縁及び第1圧着片24の先端縁に接触する位置またはわずかな隙間を隔てた位置に配置される。第1板体22、第1保持片23、第1圧着片24の両側縁部及び補助板40により規定される空間は吊りボルトBを収容する収容部Q1として機能する。この収容部Q1の高さ、すなわち第1板体22の裏面から第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁までの高さは、吊りボルトBの直径よりも短い。第1板体22の裏面には、収容部Q1に収容された吊りボルトBのネジ溝に係合する複数の第1突起部22bが第1保持片23に沿って分散配置される。
【0013】
第2支持体30は第1支持体20と同一の構造を有し、典型的には同じ部品で構成される。そのため、第2支持体30の詳細説明は省略する。第1支持体20と同様に、第2支持体30は、第2支持体本体31を有する。第2支持体本体31は、第2板体32、第2保持片33、第2圧着片34を有する。第2板体32には締結ボルト50が挿入される孔部32aが開けられ、その裏面には第2突起部32bが設けられる。
【0014】
第1支持体20と第2支持体30とを同じ部品で構成することによって、コストを低減できるとともに、吊りボルト用支持具10の取付作業において、どちらの部品を第1支持体20としてもよいため、第1支持体20と第2支持体30とを取り違えたことによる取付作業のやり直しを回避することができ、作業性向上にも寄与する。なお、第2支持体30は、第1支持体20と同一部品ではなくてもよい。
【0015】
本実施形態に係る吊りボルト用支持具10の1つの特徴は、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を仮止めできる点にある。これを実現するために、吊りボルト用支持具10は柔軟性を有する補助板40を備える。
【0016】
補助板40は、弾性を有する透明樹脂製であり第1支持体20よりも大きい円形板に構成される。補助板40は締結ボルト50が挿入される貫通孔を有する。少なくとも貫通孔の内周縁部分は、締結ボルト50のネジ溝よりも薄く、この貫通孔の内周縁が締結ボルト50のネジ溝に係合することにより、補助板40は、締結ボルト50に対して係止(螺合)される。
【0017】
収容部Q1の高さは吊りボルトBの直径よりも低く、収容部Q1に収容された吊りボルトBは、第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁から収容部Q1の外側に突出する。そのため、第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁に当接する位置に配置された補助板40は、吊りボルトBによって、第1支持体20から離れる方向に押圧される。上記のように締結ボルト50に対して補助板40が係止されていることで、補助板40は、吊りボルトBによって押圧されても、締結ボルト50に沿って上下することはなく、吊りボルトBの外周面に沿って湾曲する。このとき、補助板40は、その弾性力によって、吊りボルトBを第1支持体20の裏面に押圧する。それにより、第1支持体20の裏面に設けられた第1突起部22bに吊りボルトBのネジ溝が係合した状態を維持することができ、第1支持体20を吊りボルトBに仮止めできる。
【0018】
なお、補助板40は透明であるため、作業者は、吊りボルトBに付された取付位置を示すマーカを確認しながら、吊りボルトBに対して第1支持体20を仮止めすることができる。これは、作業性向上に寄与する。また、第1支持体20を吊りボルトBに仮止めするという観点において、補助板40は、少なくともその一部分が収容部Q1を覆うことができる大きさを有すればよい。
【0019】
補助板40に目盛を表記しておくことで、作業者は、吊りボルトBに対する振れ止めボルトSの角度を一見してわかる。また、吊りボルトB用のガイド線と振れ止めボルトS用のガイド線とを補助板40に予め表記してもよい。それにより、作業者はガイド線に沿って吊りボルトB,振れ止めボルトSを配置すればよく、作業を効率的に行うことができる。
【0020】
このように構成された吊りボルト用支持具10は、
図5乃至
図8に示すように使用する。なお、
図5、
図6は吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めした状態を示している。
図7は吊りボルト用支持具10に振れ止めボルトSの取り付ける方法を説明するための補足説明図である。
図8は吊りボルト用支持具10を用いて吊りボルトBに対して振れ止めボルトSを固定した状態を示している。
【0021】
典型的には、吊りボルト用支持具10は、
図2に示すような状態、すなわち、吊りボルト用支持具10が組み立てられた状態であって、第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁に補助板40が当接した状態で使用される。作業者は、吊りボルトBを第1保持片23と補助板40との間から挿入する。このとき、補助板40は、第1保持片23の先端縁よりも外側に向かって延設されているため、吊りボルトBを第1保持片23と補助板40との間に案内するガイド板としても機能する。作業者は、吊りボルトBを補助板40に沿って第1保持片23の先端縁まで移動させ、補助板40と第1保持片23の先端縁との間に押し込むことで、柔軟性を有する補助板40は少し湾曲し、それにより補助板40と第1保持片23との間が押し広げられ、吊りボルトBを収容部Q1に収容することができる。
【0022】
図6に示すように、収容部Q1に収容された吊りボルトBの周面は第1板体22、第1保持片23、第1圧着片24及び補助板40によって四方から包囲される。それにより、吊りボルトBに対する吊りボルト用支持具10の吊りボルトBの半径方向への移動を規制することができる。また、吊りボルトBのネジ溝に第1突起部22bを係合させることによって、吊りボルトBに対する第1支持体20の吊りボルトBの軸方向への移動を規制することができる。吊りボルトBのネジ溝と第1突起部22bとの係合状態は、補助板40により、第1支持体20の裏面に設けられた第1突起部22bをネジ溝に押圧することによって維持される。この補助板40が第1支持体20よりも大きいことで、吊りボルトBに接触する接触面を広くすることができ、押圧する力を大きくすることができる。また、補助板40を円形板に構成することで、第1支持体20に対する補助板40の向きを調整する作業が不要となるため、作業性を向上することができる。このように、吊りボルト用支持具10の収容部Q1に吊りボルトBを収容するだけで、吊りボルトBに対する吊りボルト用支持具10の吊りボルトBの軸方向及び外径方向への移動を規制することができ、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めすることができる。
【0023】
仮止めした状態は、締結ボルト50に係止された補助板40を緩める(第1支持体20から離れる方向に移動させる)、吊りボルトBを押圧している補助板40の箇所を指で広げる、吊りボルト用支持具10を、第1支持体20を吊りボルトBから離れる方向に移動させる、などの作業者による簡単な操作で解除することができる。例えば、吊りボルト用支持具10の位置を調整したいとき、作業者は、吊りボルト用支持具10を、第1支持体20が吊りボルトBから離反する方向に引きながら、吊りボルトBの軸方向に沿って上下に移動させることができる。この移動操作は、片手でもできる簡単な操作であり、作業者による作業性を向上させる。
【0024】
なお、上記の仮止め作業手順は、補助板40が柔軟性を有することが前提となる。しかしながら、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めするという観点では、補助板40は必ずしも柔軟性を有さなくてもよい。以下、硬質樹脂または金属で形成された柔軟性を有さない補助板40を備える吊りボルト用支持具10を使用したときの仮止め作業手順について説明する。
【0025】
吊りボルト用支持具10は、
図2に示すような状態、すなわち、補助板40が第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁に当接した状態ではなく、補助板40が第1保持片23及び第1圧着片24の先端縁から吊りボルトBの直径以上の距離を隔てた位置に配置された状態で使用される。作業者は、吊りボルトBを第1保持片23の先端縁と補助板40との間の隙間から挿入し、第1板体22、第1保持片23及び第1圧着片24の両側縁で規定される溝内に収容する。溝内に収容された吊りボルトBのネジ溝に第1突起部22bは係合される。次に、締結ボルト50に沿って補助板40を移動させ、吊りボルトBに当接させる。それにより、補助板40が柔軟性を有さなくても、少なくとも締結ボルト50のネジ溝に第1突起部22bを係合させた状態を維持することができる。それにより、吊りボルトBに対する吊りボルト用支持具10の吊りボルトBの軸方向及び外径方向への移動を規制することができ、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めすることができる。
【0026】
吊りボルトBに吊りボルト用支持具10を仮止めした後の作業は以下の通りである。すなわち、
図7に示すように、作業者は、振れ止めボルトSを補助板40と第2保持片33及び第2圧着片34の先端縁との間から第2支持体30の収容部Q2に収容し、ナット60を仮締めする。ここでの仮締めとは、収容部Q2に収容された振れ止めボルトSのネジ溝と第2突起部32bとの係合状態を維持できる程度にナット60を締めることをいう。
【0027】
ナット60を仮締めした状態で、第2支持体30から振れ止めボルトSが脱落することはなく、第2支持体30に対して振れ止めボルトSは仮止めすることができる。作業者は、第2支持体30を手に持ち、吊りボルトBに対する振れ止めボルトSの角度を調整した後、ナット60を本締めする。ナット60を本締めすることで、
図8に示すように、第1支持体20と第2支持体30との間に吊りボルトB及び振れ止めボルトSを挟み込み、固定することができる。このときの固定力は、第1支持体20と第2支持体30とに挟まれた吊りボルトB及び振れ止めボルトSが互いに圧着されるだけではなく、保持片23,33及び圧着片24,34も作用して、全体が互いに圧着されるため、非常に強い。
【0028】
以上説明した吊りボルト用支持具10によれば、補助板40があることで、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに対して仮止めすることができる。この仮止めを実現する構成は非常に簡単なものであって、製造コストも低廉である。また、吊りボルトBに対して簡単な操作で仮止めできるため、仮止めに際して、不安定な脚立や梯子の上で危険、且つ複雑な作業を行う必要が無く、作業を安全に行うことができる。
【0029】
本実施形態に係る吊りボルト用支持具10は、吊りボルトBに仮止めすることができることを1つの特徴としている。したがって、吊りボルト用支持具10を用いて吊りボルトBに対して固定する対象は振れ止めボルトSに限定されない。吊りボルトBに対して固定する対象は、全ネジボルト、丸鋼、角鋼等の棒状材とすることができる。
【0030】
なお、本実施形態に係る吊りボルト用支持具10において、補助板40は締結ボルト50に挿入されていたが、第1支持体20の溝内に収容された吊りボルトBのネジ溝と第1支持体20の裏面の第1突起部22bとの係合状態を維持できるのであれば、補助板40が取り付けられる位置はこれに限定されない。例えば、補助板40は、第1支持体20、例えば第1圧着片24の内面、第1圧着片24の先端縁、または第1板体22の裏面などに取り付ける構成とすることができる。締結ボルト50に補助板40を挿入する構成は、上記の構成に比べて組立工数が少ないため、製造コストの低下が期待できる。また、何らかの要因で、作業前に補助板40が破損した場合であっても、補助板40だけを交換すればよく、使いやすい。
【0031】
また、本実施形態に係る吊りボルト用支持具10において、柔軟性を有する補助板40は、吊りボルトBのネジ溝と第1支持体20の第1突起部22bとの係合状態を維持するために吊りボルトBのネジ溝に第1突起部22bを押し付ける押圧部材として機能していた。柔軟性を有する補助板40によって、第1支持体20を吊りボルトBに対して押圧するだけで、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めできるのであれば、吊りボルト用支持具10は第1突起部22bを有さなくてもよい。さらに、押圧によって仮止めできるのであれば、本実施形態に係る吊りボルト用支持具は、ネジ溝が形成されていない丸鋼、角鋼等の棒状材に仮止めすることができる棒状材用支持具として使用することができる。なお、補助板40が柔軟性を有さない場合であっても、例えば締結ボルト50に補助板40を螺合させ、補助板40を締めることで、棒状材を第1支持体20に向かって押圧するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施形態に係る吊りボルト用支持具10は、吊りボルトBに対して複数本の全ネジボルト(棒状材)を固定する用途に使用することができる。例えば、吊りボルトBに対して互いに異なる方向に沿って配置された2本の全ネジボルトを固定する用途として使用する場合には、吊りボルト用支持具10は、さらに第2支持体30を挟んで第1支持体20の反対側に配置される第3支持体を有すればよい。このように、吊りボルト用支持具は、吊りボルトに対して固定する棒状材の本数に応じた数の支持体を有すればよい。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0034】
10…吊りボルト用支持具、20…第1支持体、21…第1支持体本体、22…第1板体、22a…孔部、22b…第1突起部、23…第1保持片、24…第1圧着片、30…第2支持体、31…第2支持体本体、32…第2板体、32a…孔部、32b…第2突起部、33…第2保持片、34…第2圧着片、40…補助板、50…締結ボルト、60…ナット、B…吊りボルト、S…振れ止めボルト(全ネジボルト)、Q1、Q2…収容部。