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  • 特許-容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240418BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/02 250
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020075766
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021172357
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 瑛亮
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095479(JP,A)
【文献】特開2018-104045(JP,A)
【文献】特開2020-001802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口を形成する口部と、前記口部に連なる肩部と、前記肩部に連なる胴部と、前記胴部に連なる底部と、を有する合成樹脂製の容器であって、
前記胴部は、
その側面部の少なくとも一部に曲面で形成されたくびれ部を有し、
前記くびれ部を外部から圧縮することによって内容物が前記口部から吐出可能であり、
前記くびれ部は、
その最小径の部分より上側の領域の横断面が円形に形成され、
その最小径の部分を含む下側の領域の横断面が多角形に形成され、
前記くびれ部の横断面が多角形に形成された領域に、減圧吸収パネルと、前記減圧吸収パネルを支持する柱部と、が形成されていること
を特徴とする容器。
【請求項2】
前記くびれ部に形成される前記減圧吸収パネルは、前記くびれ部に形成される前記柱部より広い側面によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記減圧吸収パネルは、径方向外方に膨出する側面によって形成されること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記柱部は、その周方向の両端に、前記減圧吸収パネルを支持する縦筋が軸心方向に沿って形成されていること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の内容物(内容液)を充填する容器として、近年、軽量かつ比較的剛性が高い合成樹脂製の容器がよく用いられる。この容器に充填される前記液体の内容物が調味料等である場合には、容器から注出する量を調節しながら出せるように、スクイズ性を有した容器が用いられる(例えは、特許文献1参照)。このスクイズ性を有した容器の胴部の軸心方向中間部には細径のくびれ部が形成され、当該くびれ部がユーザーの指によって押されることで、充填されている液体の内容物が容器の口部から押し出される。
【0003】
一方で、容器に充填する液体の内容物によっては、温度が高い状態で容器内に充填される場合がある。この場合には、液体の内容物を容器内に充填した後に温度が低下して容器内が減圧状態となることで、容器が不正な形状に変形する。このような熱充填による容器の減圧変形を抑止するために、容器を肉厚に形成して、容器の耐圧性を確保するだけの剛性を備えるようにすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6555799公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、当該剛性を備えるために容器の側部を肉厚に形成すると、胴部を押して液体の内容物を口部から押し出そうとしても容器が変形しないことから、充分なスクイズ性が得られないという問題があった。すなわち、容器にスクイズ性を持たせることと、容器の減圧変形を抑止することとは相反する性能であるため、従来の容器では両性能を両立させることが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するもので、スクイズ性を持たせつつ、減圧時の変形を抑止可能な容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、注出口を形成する口部と、前記口部に連なる肩部と、前記肩部に連なる胴部と、前記胴部に連なる底部と、を有する合成樹脂製の容器であって、前記胴部は、その側面部の少なくとも一部に曲面で形成されたくびれ部を有し、前記くびれ部を外部から圧縮することによって内容物が前記口部から吐出可能であり、前記くびれ部は、その最小径の部分より上側の領域の横断面が円形に形成され、その最小径の部分を含む下側の領域の横断面が多角形に形成され、前記くびれ部の横断面が多角形に形成された領域に、減圧吸収パネルと、前記減圧吸収パネルを支持する柱部と、が形成されているものである。
【0008】
この構成によれば、スクイズ性を有するくびれ部における最小径の部分を少なくとも含む領域の横断面を多角形に形成することで、当該領域の横断面を円形に形成する場合と比べて減圧強度を高くすることができる。
【0010】
この構成によれば、くびれ部の最小径の部分を境に、その上側の領域をスクイズ性のみを持たせた領域とし、その下側の領域をスクイズ性と減圧変形の抑止性能とを持たせた領域とすることで、容器全体としてのスクイズ性を良化させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記くびれ部に形成される前記減圧吸収パネルが、前記くびれ部に形成される前記柱部より広い側面によって形成されるものである。
【0012】
この構成によれば、横断面が多角形に形成されたくびれ部においてその側面の広い領域が容器の減圧を吸収する領域となる。
【0013】
また、本発明は、前記減圧吸収パネルが、径方向外方に膨出する側面によって形成されるものである。
【0014】
この構成によれば、減圧吸収パネルが、径方向外方に膨出する側面によって形成されることで、減圧吸収パネルと柱部とでスクイズ性に差が無く、くびれ部の円周上のどの領域であっても良好にスクイズを行うことができる。
【0015】
また、本発明は、前記柱部の周方向の両端に、前記減圧吸収パネルを支持する縦筋が軸心方向に沿って形成されているものである。
【0016】
この構成によれば、柱部の周方向の両端に縦筋が形成されることで、柱部が減圧吸収パネルをより支持し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の容器によれば、スクイズ性を有するくびれ部における最小径の部分を少なくとも含む領域の横断面を多角形に形成し、その横断面を多角形に形成したくびれ部に減圧吸収パネルを形成することから、スクイズ性を有する領域の減圧強度を高くすることができる。そのため、容器にスクイズ性を持たせつつ、減圧時の容器の変形を抑止することができる。すなわち、スクイズ性と減圧変形の抑止性能との両機能を有する容器を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る容器の正面図である。
図2図1のA-A断面図(くびれ部の上部領域の断面図)である。
図3】(a)は、図1のB-B断面図(くびれ部の最小径の部分の断面図)であり、(b)は、図1のC-C断面図(くびれ部の下部領域の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態の容器を、図面に基づき説明する。
本実施の形態に係る容器10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等の合成樹脂製の容器である。図1に示すように、容器10は、キャップ(図示省略)によって注出口11が密封される口部12と、口部12に連なる肩部13と、肩部13に連なる胴部14と、胴部14に連なる底部15と、を有する。胴部14は、肩部13と底部15との間に設けられる。肩部13は、胴部14の上端から口部12に向けて縮径するように設けられる。容器10は、常温より高い温度で内容物が充填され温度の低下による内部圧力の減少に耐える剛性と耐熱性とを有する。
【0020】
図1に示すように、胴部14は、その軸心X方向(図1における上下方向)の側面部16の一部に、曲面で形成されるくびれ部20が設けられている。胴部14は、くびれ部20を容器10の外部から圧縮することによって容器10内の内容物が口部12から吐出可能に構成されている。すなわち、胴部14には、スクイズ性を有するくびれ部20が形成されている。くびれ部20は、胴部14の軸心X方向に沿って形成される緩やかな曲面によって構成され、胴部14における横断面の直径が最小となる部分(最小径の部分21)が、なだらかに湾曲しながら窪んで軸心Xに近づく形状に形成されている。くびれ部20は、その横断面の直径が最大となる部分が胴部14の両端側(上端側及び下端側)の位置に形成され、最小径の部分21が、胴部14の中央部分よりやや上方に寄った位置に形成される。
【0021】
くびれ部20は、最小径の部分21を中心とした上側の領域である上側領域22と、最小径の部分21を中心とした下側の領域である下側領域23と、から構成されている。
【0022】
くびれ部20の上側領域22は、くびれ部20における最小径の部分21より上側(口部12側)に軸心X方向に沿って形成される領域である。図1及び図2に示すように、くびれ部20の上側領域22は、その横断面M1が円形に形成されている。くびれ部20の上側領域22は、その円形の横断面M1の直径が、最小径の部分21側の部分において最小であり、上側(口部12側)に向かって徐々に大きくなる。
【0023】
くびれ部20の下側領域23は、くびれ部20における最小径の部分21を含み、最小径の部分21より下側(底部15側)に軸心X方向に沿って形成される領域である。図1図3(a)及び図3(b)に示すように、くびれ部20の下側領域23は、その横断面M2が多角形に形成されている。くびれ部20の下側領域23は、その周方向に幅の広い領域と、その周方向に幅の狭い領域と、が交互に繰り返して形成されることで、その横断面M2が多角形に形成されている。くびれ部20の下側領域23は、その多角形の横断面M2の直径が、最小径の部分21において最小であり、下側(底部15側)に向かって徐々に大きくなる。くびれ部20の下側領域23は、その横断面M2が多角形に形成されていることで、円形の横断面M1からなるくびれ部20の上側領域22と比べて減圧強度が高い。
【0024】
図1及び図2に示すように、くびれ部20の下側領域23において周方向に幅の広い領域には、容器10の周方向に複数枚(本実施の形態においては4枚)の減圧吸収パネル24が形成されている。複数枚の減圧吸収パネル24は、それぞれが軸心Xに対して対称となる位置に形成される。減圧吸収パネル24は、その変形によって容器10内に生じた減圧を吸収することで、容器10の減圧時における胴部14の変形を抑止する。減圧吸収パネル24は、多角形の横断面M2からなるくびれ部20の下側領域23に、軸心X方向に沿って形成される。
【0025】
減圧吸収パネル24は、その中央部が容器10の径方向外方に膨出する凸形状の側面24Cによって形成されている。減圧吸収パネル24が、容器10の径方向外方に膨出する側面24Cによって形成されることで、減圧吸収パネル24と、後述する柱部25とでスクイズ性に差が無く、くびれ部20の円周上のどの領域であっても良好にスクイズを行うことができる。
【0026】
図1及び図2に示すように、くびれ部20の下側領域23において周方向に幅の狭い領域には、容器10の周方向に複数(本実施の形態においては、4つ)の柱部25が形成されている。複数の柱部25は、それぞれが軸心Xに対して対称となる位置に形成される。柱部25は、減圧吸収パネル24を支持する領域であり、減圧吸収パネル24の周方向の両端に、軸心X方向に沿って形成される。柱部25は、その周方向の両端に、縦筋25Sが形成されている。縦筋25Sは、容器10の径方向内方に凹む凹状の領域であり、軸心X方向に沿って形成される。柱部25の周方向の両端に縦筋25Sを形成することで柱部25が減圧吸収パネル24を支持し易くなり、減圧吸収パネル24の減圧強度が高くなる。
【0027】
くびれ部20の下側領域23では、その周方向に幅の広い領域に減圧吸収パネル24が形成され、その周方向に幅の狭い領域に柱部25が形成されるため、減圧吸収パネル24が、柱部25の側面より広い側面によって形成される。減圧吸収パネル24を柱部25の側面より広い側面によって形成することでパネル面を大きくすることができ、充分な減圧吸収を行うことができる。
【0028】
容器10では、くびれ部20の上側領域22の横断面M1を円形にすることで、多角形の横断面M2からなる下側領域23と比べて減圧強度が低くなるものの、容器10のスクイズ性は良くなる。一方で、容器10では、下側領域23の横断面M2を多角形にすることで、円形の横断面M1からなる上側領域22と比べて容器10のスクイズ性は劣るものの、容器10の減圧強度は高くなる。このように、容器10では、スクイズ性を重視する領域(上側領域22)と、容器10の減圧強度を重視する領域(下側領域23)と、をくびれ部20の最小径の部分21を中心に軸心X方向に分けることで、容器10の減圧変形の抑止性能を保持しつつも、容器10のスクイズ性を向上させることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によると、スクイズ性を有するくびれ部20における最小径の部分21を少なくとも含む下側領域23の横断面M2を多角形に形成し、その横断面M2を多角形に形成したくびれ部20の下側領域23に減圧吸収パネル24を形成することから、スクイズ性を有するくびれ部20の下側領域23の減圧強度を高くすることができる。そのため、容器10にスクイズ性を持たせつつ、減圧時の容器10の変形を抑止することができる。すなわち、スクイズ性と減圧変形の抑止性能との両機能を有する容器10を製造することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、くびれ部20の下側領域23の横断面M2を多角形に形成し、その横断面M2を多角形に形成した下側領域23のみに減圧吸収パネル24を形成しているが、これに限定されるものではなく、下側領域23とともに、上側領域22の横断面M1を多角形に形成し、その横断面M1を多角形に形成した上側領域22にも減圧吸収パネル24を形成しても構わない。すなわち、くびれ部20全体の横断面を多角形に形成して、くびれ部20全体に減圧吸収パネル24を形成しても構わない。
【0031】
また、くびれ部20の最小径の部分21の横断面M2を本実施の形態と同様に多角形に形成すれば、くびれ部20の下側領域23の横断面M2を円形に形成するとともに、上側領域22の横断面M1を多角形に形成して、上側領域22のみに減圧吸収パネル24を形成しても構わない。すなわち、減圧吸収パネル24の位置を下側領域23から上側領域22に変更しても構わない。
【0032】
本実施の形態においては、減圧吸収パネル24の中央部が容器10の径方向外方に膨出する凸形状の側面24Cによって形成されているが、これに限定されるものではなく、減圧吸収パネル24の中央部を平坦な側面によって形成しても構わない。
【0033】
本実施の形態においては、柱部25の周方向の両端に縦筋25Sが形成されているが、これに限定されるものではなく、縦筋25Sを有さない柱部25であっても構わない。
【符号の説明】
【0034】
10 容器
11 注出口
12 口部
13 肩部
14 胴部
15 底部
16 胴部の側面部
20 くびれ部
21 くびれ部の最小径の部分
23 下側領域
24 減圧吸収パネル
25 柱部
M2 横断面
図1
図2
図3