(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】哺乳類の拡大ポテンシャル幹細胞のための培地、その組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/00 20060101AFI20240418BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240418BHJP
【FI】
C12N5/00
C12N5/074
(21)【出願番号】P 2021558867
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2020081594
(87)【国際公開番号】W WO2020200071
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-06
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505134165
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ホンコン
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF HONG KONG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ペンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,シュエフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,デゴン
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0201904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本培地、
SRCインヒビター、
タンキラーゼインヒビター、
ビタミンC栄養補助剤、
LIFタンパク質、および
アクチビンタンパク質
を含む、
ブタの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)培地であって、SRCインヒビターが、WH-4-023であり、タンキラーゼインヒビターが、エンド-IWR-1、XAV939、WIKI4、TC-E 5001またはJW 55である、培地。
【請求項2】
前記基本培地が、DMEM/F-12またはDMEMである、請求項1に記載の培地。
【請求項3】
N2栄養補助剤、B27栄養補助剤、グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン、NEAA、2-メルカプトエタノール、CHIR99021、FBS、またはその組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の培地。
【請求項4】
(i)ブタ多能性幹細胞の集団を用意すること、
(ii)前記集団を請求項1に記載の幹細胞培地において培養すること
を含む、ブタの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団を生成する方法。
【請求項5】
SRCインヒビター;
タンキラーゼインヒビター;
ビタミンC栄養補助剤;および
LIFタンパク質
を含む基本培地を含む、
ヒトEPSC培地であって、SRCインヒビターがA-419259であり、タンキラーゼインヒビターが、エンド-IWR-1、XAV939、WIKI4、TC-E 5001またはJW 55である、培地。
【請求項6】
前記基本培地が、DMEM/F-12またはDMEMである、請求項
5に記載の培地。
【請求項7】
N2栄養補助剤、B27栄養補助剤、グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン、NEAA、2-メルカプトエタノール、CHIR99021、またはその組み合わせをさらに含む、請求項
5に記載の培地。
【請求項8】
(i)ヒト多能性幹細胞の集団を用意すること、
(ii)前記集団を、請求項
5に記載の幹細胞培地において培養すること
を含む、ヒトの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団を生成する方法。
【請求項9】
ITS-
X;
ビタミンC栄養補助剤;
ウシアルブミンフラクションV;
微量元素B;
微量元素C;
還元型グルタチオン;
規定された脂質;
SRCインヒビター;
タンキラーゼインヒビター;および
カイロン99021
を含む基本培地を含む、
ヒトEPSC培地であって、SRCインヒビターがA-419259であり、タンキラーゼインヒビターがXAV939またはエンド-IWR-1である、培地。
【請求項10】
前記基本培地が、DMEM/F-12またはDMEMである、請求項
9に記載の培地。
【請求項11】
神経基本培地、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、NEAA、ピルビン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N2、B27、ヒトLifタンパク質、またはその組み合わせをさらに含む、請求項
9に記載の培地。
【請求項12】
(i)ヒト多能性幹細胞の集団を用意すること、
(ii)前記集団を、請求項
9に記載の幹細胞培地において培養すること
を含む、ヒトの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団を生成する方法。
【請求項13】
ITS-X;
ビタミンC栄養補助剤;
ウシアルブミンフラクションV;
微量元素B;
微量元素C;
還元型グルタチオン;
SRCインヒビター;
タンキラーゼインヒビター;
カイロン99021
;
LIFタンパク質;および
アクチビンA
を含む基本培地を含む、
ブタEPSC培地であって、SRCインヒビターがWH-4-023であり、タンキラーゼインヒビターがエンド-IWR-1、XAV939、WIKI4、TC-E 5001またはJW 55である、培地。
【請求項14】
前記基本培地が、DMEM/F-12またはDMEMである、請求項
13に記載の培地。
【請求項15】
神経基本培地、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、NEAA、ピルビン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N2、B27、またはその組み合わせをさらに含む、請求項
13に記載の培地。
【請求項16】
(i)ブタ多能性幹細胞の集団を用意すること、
(ii)前記集団を、請求項
13に記載の幹細胞培地において培養すること
を含む、ブタの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団を生成する方法。
【請求項17】
DMEM/F-1
2、またはノックアウトDME
M、基本培地、98%
N2栄養補助
剤、0.1~1
%の範囲、
B27栄養補助
剤、0.1~2
%の範囲、
グルタミンペニシリン-ストレプトマイシ
ン、基本栄養補助剤、1%
NEA
A、基本栄養補助剤、1%
2-メルカプトエタノー
ル、基本栄養補助剤、110μM
CHIR9902
1、0.05~0.5μ
Mの範囲;
WH-4-02
3、0.1~1.0μ
Mの範囲;
XAV93
9、1~10μ
Mの範囲;または
エンド-IWR-
1、1~10μ
Mの範囲;
ビタミン
C、10~100μg/m
lの範囲、
LI
F、1~20ng/m
lの範囲
アクチビン
A、10~50ng/m
lの範囲
FB
S、0.1~0.5
%の範囲、および
ITS-
X、0.1~2
%の範囲、
を含むブタEPSC培地。
【請求項18】
DMEM/F-1
2、またはノックアウトDME
M、基本培地、98%
N2栄養補助
剤、0.1~1
%の範囲
B27栄養補助
剤、0.1~2
%の範囲
グルタミンペニシリン-ストレプトマイシ
ン、基本栄養補助剤、1%
NEA
A、基本栄養補助剤、1%
2-メルカプトエタノー
ル、基本栄養補助剤、110μM
CHIR9902
1、0.2~2μ
Mの範囲
A-41925
9、0.05~0.5μ
Mの範囲
XAV93
9、1~10μ
Mの範囲、またはIWR-
1、1~10μ
Mの範囲;
ビタミン
C、10~100μg/m
lの範囲
LI
F、1~20ng/m
lの範囲
を含むヒトEPSC培地。
【請求項19】
DMEM/F-1
2、48%
神経基本培
地、基本培地、48%
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミ
ン、基本栄養補助剤、1%
NEA
A、1%
ピルビン酸ナトリウ
ム、1%
2-メルカプトエタノー
ル、基本栄養補助剤、110μM
N
2、0.1~1
%の範囲
B2
7、0.1~2
%の範囲
ITS-
X、0.1~1
%の範囲
ビタミン
C、10~100μg/m
lの範囲
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液
)、0.1%~1
%の範囲
微量元素
B 基本栄養補助剤、0.1%
微量元素
C 基本栄養補助剤、0.1%
還元型グルタチオ
ン、1~20μg/m
lの範囲
規定された脂
質 基本栄養補助剤、0.2%
XAV93
9、1~10μ
Mの範囲
エンド-IWR-
1、1~10μ
Mの範囲
A41925
9、0.05~0.5μ
Mの範囲
カイロン9902
1、0.2~2μ
Mの範囲、および
ヒトLi
f、1~20ng/m
lの範囲
を含むヒトEPSC培地。
【請求項20】
DMEM/F-1
2、48%
神経基本培
地、48%
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミ
ン、1%
NEA
A、1%
ピルビン酸ナトリウ
ム、1%
2-メルカプトエタノー
ル、基本栄養補助剤、110μM
N
2、0.1~1
%の範囲
B2
7、0.1~2
%の範囲
ITS-
X、0.1~1
%の範囲
ビタミン
C、10~100μg/m
lの範囲
ウシアルブミンフラクション
V、0.1%~1
%の範囲
微量元素
B 基本栄養補助剤、0.1%
微量元素
C 基本栄養補助剤、0.1%
還元型グルタチオ
ン、1~20μg/m
lの範囲
XAV93
9、1~10μ
Mの範囲
エンド-IWR-
1、1~10μ
Mの範囲
WH-4-02
3、0.1~1.0μ
Mの範囲
カイロン9902
1、0.05~0.5μ
Mの範囲
ヒトLi
f、1~20ng/m
lの範囲、および
アクチビン
A、10~50ng/m
lの範囲
を含むブタEPSC培地。
【請求項26】
DMEM/F-1
2 482.5ml、
N2栄養補助
剤 2.5ml、
B27栄養補助
剤 5ml、
1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシ
ン 5ml、
1×NEA
A 5ml、
110μM 2-メルカプトエタノー
ル、
0.2μM CHIR9902
1、
0.3μM WH-4-02
3、
2.5μM XAV93
9または2.0μM IWR-
1、
50μg/mlビタミン
C、
10ng/ml LI
F、
20ng/mlアクチビ
ンA、
ITS-
X 1mlおよび
0.3%FB
S
を含むブタEPSC培地500ml。
【請求項22】
DMEM/F-1
2 482.5ml、
N2栄養補助
剤 2.5ml、
B27栄養補助
剤 5ml、
1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシ
ン 5ml、
1×NEA
A 5ml、
110μM 2-メルカプトエタノー
ル、
1.0μM CHIR9902
1、
0.1μM A-41925
9、
2.5μM XAV93
9または2.5μM IWR-
1、
50μg/mlビタミン
C、および
10ng/ml LI
F
を含むヒトEPSC培地500ml。
【請求項23】
F12DME
M 240ml、
神経基本培
地 240ml、
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×
) 5ml、
100×NEA
A 5ml、
100×ピルビン酸ナトリウ
ム 5ml、
110μM 2-メルカプトエタノー
ル、
200×N
2 2.5ml、
100×B2
7 5ml、
ITS-
X 2.5ml、
64μg/mlビタミン
C、
3mlウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液
)、
1000×微量元素
B、
1000×微量元素
C、
還元型グルタチオ
ン 165μl、10mg/ml、
500×規定された脂
質、
2.5μM XAV93
9、
2.5μMエンド-IWR-
1、
0.1μM A41925
9、
1.0μMカイロン9902
1、および
10ng/ml ヒトLif
を含むヒトEPSC培地500ml。
【請求項24】
F12 DME
M 240ml、
神経基本培
地 240ml、
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×
) 5ml、
100×NEA
A 5ml、
100×ピルビン酸ナトリウ
ム 5ml、
110μM 2-メルカプトエタノー
ル、
200×N
2 2.5ml、
100×B2
7 5ml、
ITS-
X 2.5ml、
64μg/mlビタミン
C、
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液
) 3ml、
1000×微量元素
B、
1000×微量元素
C、
還元型グルタチオ
ン 165μl、10mg/ml、
2.5μM XAV93
9、
1μMエンド-IWR-
1、
0.16μM WH-4-02
3、
0.2μMカイロン9902
1、
10ng/mlヒトLif、および
20ng/mlアクチビン
A
を含むブタEPSC培地500ml。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.分野
哺乳類についての拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)株を確立するための培地が、提供される。多能性幹細胞のEPSCへの転換を含む、細胞のインビトロ(in vitro)転換および維持のための培地を使用する方法が、提供される。
【背景技術】
【0002】
2.背景
哺乳類の胚発生は、精子と卵子が融合して、接合子を形成するときに始まり、これは、決まった数の分裂を経る。8細胞(8C)期まで、胚は、胚体中の全ての系統および胚体外組織に分化する能力を有し、全能性とみなされる(Ishiuchi et al 2013)。続く細胞分裂は、初期系統のうちの2つ:栄養膜系統に限定され、胎盤の形成に必須である栄養外胚葉上皮(TE)細胞、ならびに多能性であり、胚体の全ての細胞タイプ、ならびに胚体外の内胚葉および中胚葉を生じる内部細胞塊(ICM)、ならびに胚幹(ES)細胞を生成する(Gardner 1985、Rossant et al 2009、Yamanaka et al 2006)。
【0003】
ES細胞は、胚盤胞環境に戻された場合、胚の全ての生殖細胞層に分化することができるが、これらは、栄養膜系統に寄与することは一般的にできない。逆に、栄養外胚葉からもたらされる栄養膜幹細胞は、インビトロおよびインビボ(in vivo)で栄養膜に効率的に分化することができる。しかしながら、これらは、胚の全ての生殖細胞層に分化することができない。
【0004】
ヒト胚幹細胞は、ある特定の条件下で、インビトロで栄養膜に分化することが報告されているが、これらのインビトロで分化した栄養膜が、真の栄養膜であるかどうかについての議論が存在する(Roberts R M et al 2014を参照のこと)。インビトロで培養されたとき、ヒト胚幹細胞は、系列の胚幹細胞と異なる、別個の分子および生物学的特徴を示す。用語「ナイーブ型」(または「基底状態」)および「プライム型」は、観察された相違を記載するために導入された。
【0005】
最近、何人かの研究者が、例えば、インヒビターの混合物中で培養することにより、従来のヒト胚幹細胞におけるよりも「ナイーブ型」である多能性状態を導入するための代替の条件を報告した(Theunissen et al 2014において概説される)。しかしながら、これらの方法により生成された細胞は、ナイーブ型細胞に匹敵するいくつかの特徴を呈するが、有意な相違も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの知見に関わらず、重要な哺乳動物種、特に、大きな家畜由来の真の多能性幹細胞を実験的に生じ、維持することが可能かどうかは明らかになっていない。ヒト発生、生物学、および再生医学を研究するための改良されたヒト多能性幹細胞が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
3.概要
ナイーブ型または基底状態の胚幹細胞に似ているが、胎盤栄養膜および胚体に分化することもできる、拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)株を確立するための培地が、本明細書において提供される。
【0008】
本開示の一実施形態は、SRCインヒビター、ビタミンC栄養補助剤、LIFタンパク質、およびアクチビンタンパク質を含む基本培地を含むブタ幹細胞培地である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEM/F-12である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEMである。ある特定の実施形態では、SRCインヒビターは、WH-4-023およびXAV939である。ある特定の実施形態では、培地は、N2栄養補助剤、B27栄養補助剤、グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン、NEAA、2-メルカプトエタノール、CHIR99021、およびFBSをさらに含む。
【0009】
本開示の一実施形態は、SRCインヒビター、ビタミンC栄養補助剤、およびLIFタンパク質を含む基本培地を含むブタ幹細胞培地である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEM/F-12である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEMである。ある特定の実施形態では、SRCインヒビターは、A-419259およびXAV939である。ある特定の実施形態では、培地は、N2栄養補助剤、B27栄養補助剤、グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン、NEAA、2-メルカプトエタノール、およびCHIR99021をさらに含む。
【0010】
本開示の一実施形態は、ITS-X200、ビタミンC栄養補助剤、ウシアルブミンフラクションV、微量元素B、微量元素C、還元型グルタチオン、規定された脂質、SRCインヒビター、エンド-IWR-1、SRKインヒビター、およびカイロン99021を含む基本培地を含むブタ幹細胞培地である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEM/F-12である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEMである。ある特定の実施形態では、SRCインヒビターは、XAV939である。ある特定の実施形態では、SRKインヒビターは、A-419259である。ある特定の実施形態では、培地は、神経基本培地、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、NEAA、ピルビン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N2、B27、ヒトLifタンパク質をさらに含む。
【0011】
本開示の一実施形態は、ITS-X200、ビタミンC栄養補助剤、ウシアルブミンフラクションV、微量元素B、微量元素C、還元型グルタチオン、SRCインヒビター、エンド-IWR-1、カイロン99021、ヒトLifタンパク質、およびアクチビンAを含む基本培地を含むブタ幹細胞培地である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEM/F-12である。ある特定の実施形態では、基本培地は、DMEMである。ある特定の実施形態では、SRCインヒビターは、WH-4-023およびXAV939である。ある特定の実施形態では、培地は、神経基本培地、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン、NEAA、ピルビン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、N2、およびB27をさらに含む。
【0012】
本開示の一実施形態は、(i)多能性幹細胞の集団を用意する工程、および(ii)本明細書において開示される幹細胞における集団を培養する工程を含む、ブタの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団を生成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
4.図面の簡単な説明
【
図1】ブタEPSCの誘導および特徴決定。a.左:ドイツ在来種PFFおよび中国TAIHU OCT4-Tdtomatoノックインレポーター(POT)PFFをリプログラミングすることによる、pEPSCMにおけるSTOフィーダー細胞上のドイツ在来種の5日目のインビボ(in vivo)でもたらされた胚盤胞由来のブタ(イノシシ(Sus Scrofa))EPSC
Emb株、およびpEPSC
iPS株の確立の模式図。右パネル:確立したEPSC株の画像、およびPOT-pEPSC
iPSにおけるTd-tomato発現の蛍光画像。3つのEPSC
Emb株(オス:K3およびK5;メスK1)ならびに3つのpEPSC
iPS株(10番、11番)を、本研究において大規模に試験した。これらのEPSC株は、遺伝子発現および分化において同様に挙動する。b.PFF、pEPSC
iPSおよびpEPSC
Emb中のOCT4およびNANOGプロモーター領域におけるCpG部位の亜硫酸水素塩配列解析。c.pEPSC
Embの胚様体(EB、7日目)における遺伝子発現。胚細胞系統と胚体外細胞系統の両方の遺伝子を、RT-qPCRにおいて調べた。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、pEPSC
Embと比較。d.pEPSC
Embテラトーマ切片の組織組成(H&E染色):内胚葉からもたらされた腺上皮の例(i)、中胚葉からもたらされた軟骨の例(ii)、はっきりした神経管を形成する、外胚葉からもたらされた未熟神経組織の例(iii)、および栄養膜を思い出させる、巨大な多核細胞の例(ivにおける矢印)。e.免疫染色により明らかにされた、pEPSC
Embテラトーマ切片におけるPL-1およびKRT7陽性細胞。f.25~27日目のブタキメラ受胎産物の模式図。円は、g.における免疫蛍光染色のための凍結切片を採取した範囲を印す:i、中枢神経系;ii、胎児肝臓。g.キメラ16番での脳(H2BmCherry
+SOX2
+)および肝臓(H2BmCherry
+AFP
+)におけるpEPSC子孫の検出。H2B-mCherryおよびSOX2は、核に局在化し、一方、AFPは、細胞質タンパク質である。四角で囲んだ範囲を、より高い拡大率で示す。矢印は、ドナー細胞子孫(mCherry
+)である代表的な細胞を示す。DAPIは、核を染色する。追加のキメラ解析を、拡張データ
図5e~5fに提示する。
【
図2】pEPSC
EmbからのPGC様細胞のインビトロ生成。a.NANOS3-H2BmCherryレポーターpEPSCにおいてSOX17を一過性に発現させることによる、pPGCLCの導入。胚様体(EB)におけるH2BmCherry
+TNAP
+細胞の存在を、FACSにより解析した。b.pPGCLC導入後の3日目のEBにおけるPGC遺伝子のRT-qPCR解析。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、遺伝子導入していないEBと比較。c.pPGCLC導入の3~4日目のEBの切片におけるPGCファクターの免疫蛍光解析。H2BmCherry
+細胞は、NANOG、OCT4、BLIMP1、TFAP2CおよびSOX17を共発現した。DAPIは、核を染める。実験を、少なくとも3回行った。d.pPGCLC導入の選別したH2BmCherry
+のRNAseq解析(ヒートマップ)は、PGC、多能性または体細胞系統(中胚葉、内胚葉、および性腺体細胞)と関連する遺伝子の発現を示す。e.pEPSC
EmbとpPGCLC間での対遺伝子発現比較。鍵となるアップレギュレーションした(赤色)およびダウンレギュレーションした(青色)遺伝子を、強調する。f.バープロットは、pPGCLCおよび親pEPSC
EmbにおけるDNAメチル化と関連する遺伝子の発現を示す。データは、pPGCLC導入の選別したH2BmCherry
+のRNAseq由来である。それぞれの試料は、2つの生物学的複製物を有し、バープロットは、2つの複製物の平均発現を示す。
【
図3】ヒトEPSCの確立。a.確立したH1-EPSCまたはM1-EPSC(25継代)の画像。b.ヒト、ブタおよびマウスEPSC、ヒトプライム型およびナイーブ型ESC、PFFの大量のRNA-seq遺伝子発現データの主成分分析(PCA)。pEPSC
Par:単為生殖胚由来のEPSC株;E14およびAB2-EPSCは、マウスEPSCである。c.hEPSC(計76、赤色の点)において高発現した遺伝子(>8倍)および代表的なヒストン遺伝子(青色の点)を示す、H1-ESCとH1-EPSCの間の遺伝子発現の対比較。d.H1-ESC、H1-EPSC、iPSC-EPSCおよびヒトナイーブ型(5i)ESC、ならびにヒト着床前の胚における選択したヒストン遺伝子の発現を示す、ヒートマップ。ヒトプライム型およびナイーブ型ESCのRNAseqデータを、参照42から得て、一方、胚細胞データは、参照44由来であった。e.3つの条件:FGF(プライム型)、5i(ナイーブ型)およびEPSCM(EPSC)で培養した7つのヒトESCまたはiPSC株における4つのヒストン1クラスター遺伝子の発現のRT-qPCR解析。Hipsci iPSC株を、Wellcome Trust Sanger InstituteにおけるHipscプロジェクト(http://www.hipsci.org)から得た:1番、HPSI1113i-bima_1;2番、HPSI1113i-qolg_3;3番、HPSI1113i-oaaz_2;4番、HPSI1113i-uofv_1。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、FGF条件で培養した細胞と比較。
#p<0.01、5i条件で培養した細胞と比較。実験を、少なくとも3回行った。f.バイオリン図は、pEPSC
Emb(上のパネル)およびヒトH1-EPSC(下のパネル)における多能性遺伝子のscRNAseq発現を示す。g.pEPSC
Emb(左のパネル)およびH1-EPSC(右のパネル)の網羅的遺伝子発現パターン(scRNAseqによる)のPCA。h.ヒトH1-EPSCおよびヒト着床前の胚(参照46、詳細については方法を参照のこと)のscRNAseqからの遺伝子発現のPCAおよび比較。i.H3K27me3およびH3K4me3のChIP-seq解析は、pEPSC
EmbおよびヒトH1-EPSCにおける多能性遺伝子座位を印す。
【
図4】ヒトEPSCの栄養膜分化ポテンシャル。a.左のパネル:TGFβ阻害下での栄養膜へのhEPSCの図。詳細については、方法を参照のこと。右パネル:CDX2-H2B-VenusレポーターEPSCの栄養膜への分化のフローサイトメトリー解析。CDX2-H2B-VenusレポーターEPSCをまた、従来のFGF含有hESC培地または5i-ナイーブ型培地において培養し、その後、同じ分化条件の対象にし、フローサイトメトリーにおいて調べた。細胞を、TGFβ阻害の4日後に収集した。b.いくつかの時間点でのhEPSC分化中の栄養膜遺伝子の発現における動的変化を、RT-qPCRによりアッセイした。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、H1-ESC細胞と比較。
#p<0.01、H1-5i細胞と比較。実験を、少なくとも3回行った。c.TGFβインヒビターSB431542で処理したH1-ESC、H1-EPSC、またはiPSC-EPSCから分化した細胞のRNA-seqデータのtSNE解析。RNAを、分化中の0~12日目に試料採取した。H1-EPSCおよびhiPSC-EPSCの分化トラジェクトリーは、H1-ESCのものと異なる。d.個々のhEPSCから形成された初代TSCコロニー(左)および7継代でのTSC(右)の位相差画像。e.免疫染色により検出した、EPSC-TSCにおける栄養膜転写因子GATA3およびTFAP2C、ならびにKRT7の発現。核を、DAPIで染色した。同様の結果を、4つの独立したEPSC-TSC株で得た。f.免疫蛍光により検出した、EPSC-TSCから分化した合胞体栄養細胞におけるSDC1の発現。DAPIは、核を染める。g.本研究において生成されたhESC、hEPSC、hTSCにおけるHLA-G、およびEVTプロトコール後のhTSCから分化した細胞(参照53)のフローサイトメトリー検出。絨毛外栄養膜の代表であり、HLA-Gを発現する絨毛癌細胞JEG-3、および絨毛栄養膜細胞の代表であり、HLA分子を発現しないJAR(Apps, R., et al. Immunology 2009)を、それぞれ、正および負の対照として使用した。h.免疫不全マウスにおいて注射したhTSCから形成された病変におけるSDC1-またはKRT7-陽性細胞についての免疫染色の共焦点画像。DAPIは、核を染める。実験を、少なくとも3回行った。
【0014】
4.1 拡張データ図
【
図6】拡張データ
図1。スクリーニング培養条件についての新規Dox-依存性ブタiPSC株の確立。a.野生型ドイツ在来種PFFにおけるLIN28、NANOG、LRH1およびRARGと共に、山中ファクターOCT4、MYC、SOX2およびKLF4のドキシサイクリン(Dox)誘導性発現。cDNAを、piggyBac(PB)ベクターにクローニングし、ブタゲノムへの発現カセットの安定な組込みのため、PBトランスポサーゼを発現するプラスミドでPFFに遺伝子導入した。pOMSK:ブタ起源の4つの山中ファクターOCT4、MYC、SOX2およびKLF4;pN+hLIN:ブタNANOGおよびヒトLIN28;hRL:ヒトRARGおよびLRH1。Dox導入の8~10日後に、初代コロニーが出現した。これらのコロニーを、M15(15%ウシ胎児血清)においてDoxの存在下で単一細胞継代した。b.LIN28、NANOG、LRH1およびRARGの共発現は、リプログラミングされたコロニーの数を実質的に増大させた。
*p<0.01。データは、平均±s.d.であり(n=4):4つの山中ファクターを使用したものと比較した、8つのファクターで、250,000PFFから誘導されたコロニー。c.ブタOCT4-tdTomatoノックインレポーター(POT)TAIHU PFFのiPSCへのリプログラミング。Dox導入の8日後、蛍光顕微鏡下でtdTomato
+であった、初代コロニーが出現した。初代コロニーを拾い、Doxの存在下で拡大させた。明視野および蛍光の3継代の細胞を、画像に示す。d.iPSC株は、RT-qPCR解析において鍵となる多能性遺伝子を発現した。iPSC株1番および2番、ならびにiPSC3番および4番は、それぞれ、野生型ドイツ在来種およびTAIHU POT PFF由来であった。ブタ胚盤胞における遺伝子発現を、対照として使用した。e.Doxの存在下またはその除去後3日目のいずれかのiPSCにおける外因性リプログラミングファクターの発現のRT-qPCR解析。f.Doxを培地から除去した後の、iPSC細胞の分化。画像は、Dox除去の3日後の細胞を示す。POT iPSCは、Td-tomato陰性になった。g.Doxありまたはなしで培養したiPSCにおける内因性多能性遺伝子の発現のRT-qPCR解析。h.DOX除去の5~6日後のブタiPSCにおける系統遺伝子の発現。遺伝子発現を、RT-qPCRにより測定した。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。実験を、少なくとも3回行った。
【
図7】拡張データ
図2。ブタEPSCのための培養条件の同定。a.ドイツ在来種株のDox-依存性iPSCクローン1番を、スクリーニングにおいて使用した。小分子インヒビターおよびサイトカインを、様々な組み合わせのため選択した。内因性OCT4およびNANOGの細胞生存、細胞形態、および発現を、読み取りとして利用した。b~h.インヒビターおよびサイトカインの組み合わせを添加した異なる基本培地における培養の6日後に生存した細胞における内因性OCT4およびNANOGの相対的発現レベル:b.Doxを含まないM15培地;c.Doxを含まないN2B27基本培地;d.Doxを含まない20%KOSR培地;e.Doxを含まないAlbumMax II基本培地;f.Doxを含むN2B27基本培地;g.4つの個々のDoxを含む基本培地(M15:411~431;N2B27:432~453;KOSR:454~475;AlbumMax II:476~497);h.Dox.2i:GSK3iおよびMEKi;t2i:GSK3i、MEKiおよびPKCi(Takashima, Y., et al. 2014 Cell);4i:GSK3i、MEKi、JNKiおよびp38i(Irie, N., et al 2015 Cell);5i:GSK3i、MEKi、ROCKi、BRAFiおよびSRCi(Theunissen, T. W., et al. 2014 Cell Stem Cell);mEPSCM:GSK3i、MEKi、JNKi、XAV939、SRCiおよびp38i(Yang J., et al. 2017 Nature)を含まないN2B27基本培地;インヒビターの組み合わせの詳細を、補足表1に提示する。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。
【
図8】拡張データ
図3。PFFをリプログラミングすることによる、または着床前の胚からのブタEPSCの確立。a.M15およびDoxにおけるブタiPSCに対するMEKi、PKCiおよびp38iの毒性を示す画像。b.pEPSCMにおけるDoxの非存在下でのブタiPSCにおける内因性多能性遺伝子発現(517番の最小条件、拡張データ
図2h)。遺伝子発現を、ブタ胚盤胞におけるものと比較した。データは、平均±s.d.である(n=3)。c.Doxを含まないpEPSCMにおける野生型およびOCT4-TdtomatoレポーターiPSCの画像。遺伝子発現を、ブタ胚盤胞におけるものと比較した。d.RT-PCRによる外因性リプログラミングファクターのリーキーな発現の検出。iPSC株の約半分は、検出可能なリーキーな発現を有さなかった。e.pEPSCMにおいてEPSC株を確立するためのPFFのリプログラミングの模式図。f.2つの新たに確立したWT pEPSC
iPS株(10番および11番)を、内因性多能性遺伝子および外因性リプログラミングファクターの発現について調べた。データは、平均±s.d.である(n=3)。g.ROCKインヒビターを添加したpEPSCMにおけるブタ早期胚盤胞からの10日目の成長物。成長物を、分離および再播種のため10~12日目に拾い、安定な株を確立した。h.ブタのインビボでもたらされた胚から確立したpEPSC
Emb(K3系統)の代表的な画像。実験を、少なくとも3回行った。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。
【
図9】拡張データ
図4。pEPSCの特徴決定。a.pEPSC
Emb(K3系統)は、25継代後に正常な核型を保持した(調べた10/10の分裂中期伝播は正常であった)。調べた2つの追加の系統は、25より多い継代後にも正常な核型を有していた。b.pEPSC
EmbおよびpEPSC
iPSにおける多能性ファクターならびにマーカーであるSSEA-1およびSSEA-4の免疫染色検出。c~e.pEPSCを、既に報告された、ブタESCのための7つの条件(参照9~15)下で7日間培養し、細胞形態および遺伝子発現を調べた。c.OCT4発現についての免疫蛍光染色。d~e.それぞれの条件下でのpEPSCにおけるOCT4およびNANOGのRT-qPCR検出。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。f.ブタEPSC
EmbおよびEPSC
iPSにおける活性なOct4遠位性エンハンサー。マウスOct4遠位性および近位性エンハンサーコンストラクトを、ルシフェラーゼアッセイにおいて使用した。データは、平均±s.d.である(n=4)。g.pEPSC
Embにおけるゲノム編集。ブタROSA26座位へのH2B-mCherry発現カセットのノックインを、Crispr/Cas9システムにより促進した。遺伝子型同定のため拾った20個のコロニーのうち、5個を、適切に標的化した。重要なことに、標的化したpEPSCは、正常の核型を保持した。h.ROSA26座位に適切に標的化したH2B-mCherryを有するpEPSC
Embコロニーの明視野および蛍光画像。i.pEPSC
Embの、3つの体細胞生殖層および栄養外胚葉系統(KRT7
+)の細胞へのインビトロでの分化。j.pEPSC
Embテラトーマ切片におけるSDC1発現細胞の免疫染色の共焦点画像。DAPIは、核を染める。
【
図10】拡張データ
図5。pEPSCのインビボでの分化ポテンシャル。a.着床前の胚発生におけるpEPSCの関与。H2B-mCherryh発現ドナーpEPSC
iPSを、胚盤胞になる、5日目の宿主ブタ単為生殖胚に注射した。H2BmCherry
+ドナー細胞を、内部細胞塊と栄養外胚葉(矢印で示した)の両方で見出した。b.キメラ21番におけるmCherry
+細胞の存在を示す、H2BmCherry
+pEPSC
Embを注射した着床前の胚からもたらされた26日目のブタの受胎産物の全組織標本蛍光および明視野画像。c.キメラを、2つの一般的な目的のため処理した:キメラの半分を、免疫蛍光解析のため固定し、他の半分を、FACSおよびDNA遺伝子型同定のため固定した。FACS解析のため細胞を調製するために、それぞれの胚の組織を、頭部(a)、胴体(b)および尾部(c)から、ならびに胎盤(d)から単離し、単一の細胞に分離し、ドナーH2BmCherry
+細胞を検出した。分離した細胞を、PCR解析のためのゲノムDNA試料を作製するためにも使用した。d.上記のゲノムDNA試料を使用した、mCherry DNAについてのPCR遺伝子型同定。mCherry DNAを、フローサイトメトリー解析により、mCherry
+であった胚においてのみ検出した。e.25~27日目のブタのキメラ受胎産物の模式図。円は、組織切片を、以下に示す免疫染色および画像化のため採取した組織範囲を印す。f.異なる組織におけるH2BmCherry
+細胞の局在化についての、26~28日目のmCherry
+受胎産物またはキメラ胚および胎盤の凍結切片の免疫蛍光解析。解析において使用した抗体は、ニューロンについてのTUJ1(キメラ16番);内胚葉派生物についてのSOX17およびGATA4(キメラ21番);中胚葉派生物についてのa-SMA(キメラ21番);栄養膜についてのPL-1およびKRT7(キメラ6番の胎盤)を含み、使用した。H2BmCherry、GATA4およびSOX17は、核において見出され、一方、TUJ、A-SMA、KRT7およびPL-1は、核に局在化しない。
【
図11】拡張データ
図6。pEPSCのpPGCLCへの分化。a.H2B-mCherryカセットをNANOS3座位に標的化することによる、NANOS3-H2BmCherryレポーターEPSC
Embの生成。標的化された対立遺伝子において、T2A-H2B-mCherry配列は、欠損されている終止コドンTAAと共に、ブタNANOS3座位の最終コードエクソンとインフレームであった。本発明者らは、NANOS3終止コドンをカバーする領域を特異的に標的化するgRNAプラスミドを生成し、遺伝子型同定のため、15個のコロニーを拾った。4個を適切に標的化した。拡大後、これらの標的化されたpEPSCは、正常な核型を保持していた。b.pPGCLC特異化および分化のため、pEPSC
Embにおいて外因性遺伝子を発現させるストラテジーを説明する、図(さらなる詳細については、方法を参照のこと)。c.EBにおけるNANOS3-H2BmCherryレポーターEPSC
EmbのpPGCLC(H2BmCherry
+)への分化における、NANOG、BLIMP1およびTFAP2Cの個別、またはSOX17と組み合わせた発現。d.上記(c)実験におけるNANOS3-H2BmCherry陽性細胞の定量。e.PGC遺伝子のRT-qPCR解析。RNA試料を、bにおけるpPGCLC導入プロトコール後に、導入遺伝子を個別または組み合わせて発現したpEPSCの3日目のEBから調製した。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。データは、平均±s.d.である(n=3)。実験を、少なくとも3回行った。
【
図12】拡張データ
図7。ヒトEPSCの確立および特徴決定。a.pEPSCMまたはpEPSCMマイナスアクチビンAにおけるH1、H9、M1およびM10ヒトESCコロニーの画像。OCT4の発現を、免疫染色により検出した。b.hEPSCMにおける25継代後のH1-EPSCおよびM1-EPSCにおける正常な核型(10/10スコア化分裂中期は、正常であった)。c.外因性OCT4、MYC、KLF4、SOX2、LRH1およびRARGのDox誘導性発現による、ヒト皮膚線維芽細胞からリプログラミングされたhEPSCMにおける初代iPSCコロニー(上)およびiPSCの確立した培養物(下)。d.H1-ESC、H1-ナイーブ型ESC(5i)、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCにおける多能性遺伝子(POU5F1、SOX2、NANOG、REX1およびSALL4)の相対的発現レベル。
*p<0.05、H1-ナイーブ型ESC(5i)、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCと比較。データは、平均±s.d.である(n=3)。e.RT-qPCRによる外因性リプログラミングファクターの潜在的発現リーキーさの検出。4つの確立したiPSC株において、明らかなリーキーさは見出されなかった。f.H1-ESC、H1-ナイーブ型ESC(5i)、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCの相対的倍加時間。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.05、H1-5i ESC、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCと比較。g.H1-ESC、H1-ナイーブ型ESC(5i)、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCにおける系統マーカー(EOMES、GATA4、GATA6、T、SOX17およびRUNX1)の発現。プライム型H1-ESCは、遥かに高レベルのこれらの系統遺伝子を有していた。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、H1-5i、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCと比較した、H1-ESCにおける遺伝子発現。h.多能性ファクターおよび細胞表面マーカーについてのH1-EPSCおよびiPSC-EPSCの免疫染色。i.H1-EPSCの3つの体細胞系統へのインビボ分化。j.免疫不全マウスにおけるhEPSC由来のテラトーマにおけるH&E染色による、軟骨(中胚葉I)、腺上皮(内胚葉II)ならびに成熟神経組織(グリアおよびニューロン、外胚葉III)の存在。k.SOX17、BLIMP1およびOCT4について免疫染色したH1-EPSC~PGCLCのEB。l.H1-EPSCのPGCLC上でのCD38およびTNAPの発現についてのFACS解析。PGCLCの導入を、少なくとも2つの独立したヒトEPSC株で行い、実験を、少なくとも3回行った。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。
【
図13】拡張データ
図8。ヒトおよびブタEPSCトランスクリプトームのRNAseq解析。a.ヒトプライム型およびナイーブ型ESC、ヒトの拡大した多能性幹(EPS)細胞(Yang, Y., et al, Cell, 2018)、ならびにヒト、ブタおよびマウスのEPSCの網羅的遺伝子発現データ(大量RNAseq)の階層的クラスタリング。相関マトリックスを、スピアマン相関および完全連結を使用して、クラスタリングした。pEPSC
Par:ブタ単為生殖胚由来のEPSC株。E14およびAB2-EPSCは、マウスEPSCであり、これらのRNA-seqデータは、本発明者らの従前の刊行物(Yang, J., et al., Nature, 2017)(参照1)からであった。ヒトプライム型ESC(WIBR1、iPS_NPC_4およびiPS_NPC_13)ならびにナイーブ型ESC(WIBR2、WIBR3_cl_12、WIBR3_cl_16、WIN1_1およびWIN1_2)でのデータは、Theunissen et al, Cell Stem Cell, 2014および2016(参照29、および42)からであった。ヒトプライム型H1 ES細胞(H1-rep1およびH1-rep2)ならびに拡大した多能性幹(EPS)細胞(H1_EPS_rep1、H1_EPS_rep2、ES1_EPS_rep1およびES1_EPS_rep2)のデータは、Yang, Y., et al, Cell, 2018(参照43)からであった。b~c.ブタ(b)またはヒト(c)EPSCにおける多能性および系統遺伝子の発現。d~e.ブタ(d)またはヒト(e)EPSCにおける栄養膜関連遺伝子の発現。
【
図14】拡張データ
図9。ブタおよびヒトEPSCのエピジェネティック特性。a.ブタおよびヒトEPSCにおける網羅的DNAメチル化レベル。H1-5iヒトナイーブ型ESCを、解析に含めた。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、H1-5iヒトナイーブ型ESCのH1-ESCおよびH1-EPSCとの比較。b~c.ブタ(b)およびヒト(c)EPSCにおけるDNAメチル化または脱メチル化における酵素をコードする遺伝子の発現のRNAseq解析。d.ヒトH1-EPSCのscRNAseqデータおよびヒト着床前の胚のscRNAseqデータのPCA(Dang Y. et al 2016. Genome Biology.由来のデータ、さらなる詳細については、方法を参照のこと)。e.ヒトEPSC(本研究)および示した期でのヒト着床前の胚における示したヒストン遺伝子の発現レベルを示す、バイオリン図(Dang Y. ら 2016. Genome Biology)。遺伝子発現(TPM)を、salmonおよびlog10(TPM+1)の値により定量した。バイオリン図の上部に、個々の細胞における発現(点により表す)をプロットして、個々の細胞に渡る発現の全分布を示した。f.DNAメチル化および脱メチル化に含まれる酵素をコードする遺伝子および細胞系統遺伝子についての座位でのヒストン修飾(H3K4me3およびH3K27me3)。
【
図15】拡張データ
図10。pEPSCおよびhEPSCのための培養条件における個々の成分の要件。a~b.RT-qPCRにより解析したpEPSC
Emb(a)およびH1-EPSC(b)における遺伝子発現に対する、個々のインヒビター除去または付加の効果。「-SRCi、-XAV939、-アクチビン、-Vc、-CHIR99」:これらを、個々にpEPSCMまたはhEPSCMから除去し;「+TGFβi、+L-CHIR99、+H-CHIR99、+PD03」:TGFβインヒビターSB431542、より低濃度のCHIR99021(pEPSCMにおいて使用される濃度である、0.2μM)、より高濃度のCHIR99021(3.0μM)、または3種の濃度のMEK1/2インヒビターPD0325901を付加する。WH04/A419は、ヒトEPSCにおいてA419259を別のSRCインヒビターであるWH-4-23で置換する効果を示す。赤色の三角形は、形成されたコロニーがないことを示す。ブタおよびヒトEPSC培地は、それぞれ、0.2μMおよび1.0μM CHIR99021を含有する。培地成分の情報については、方法を参照のこと。c.H1-EPSCにおけるOCT4-H2B-VenusカセットのOCT4座位への標的化。標的化された対立遺伝子において、T2A-H2B-Venus配列は、OCT4遺伝子の最終コードエクソンとインフレームであった。終止コドンTGAを欠損させた。本発明者らは、19のコロニーの遺伝子型を同定し、これらの5つを、適切に標的化した。d.Venus
+細胞により測定した、7日間のSRCインヒビターWH-4-023またはXAV939のhEPSCMからの除去の効果。OCT4-H2B-VenusレポーターEPSCを、示した条件下で培養し、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーにより、Venus発現について解析した。e.ブタおよびヒトEPSCにおけるAXIN1およびSMAD2/3のリン酸化のウエスタンブロット解析。pEPSC
EmbとH1-EPSCの両方は、遥かに高いレベルのAXIN1を有していた。分化した(D)EPSC
Embまたはプライム型H1-ESCにおけるものより高いpSMAD2/3により証明した通り、pEPSC
Emb、H1-EPSCおよびH1-ナイーブ型ESC(5i)は、より高いレベルのTGFβシグナル伝達を有していた。f.ブタおよびヒトEPSCにおける古典的Wntシグナル伝達活性のTOPflash解析。5日間のpEPSCM(pEPSCM-X)またはhEPSCM(hEPSCM-X)からのXAV939の除去は、TOPflash活性を実質的に増大させた。
*p<0.01。データは、平均±s.d.である(n=4)。実験を、少なくとも4回行った。g.その成分における示した変化と共に、pEPSCMまたはpEPSCMにおいて培養したpEPSC
Embを示す、明視野および免疫蛍光画像。細胞を、OCT4およびDAPIについて染色した。h~i.培地成分を除去するか、または小分子インヒビターを付加することによる、6ウェルプレートにおけるSTOフィーダー上で2,000個のpEPSC
Emb(h)またはH1-EPSC(i)から形成されたAP
+コロニーの定量。コロニーを、5連続継代の間スコア化して、XAV939、ビタミンCもしくはCHIR99021の除去、またはより低い濃度のCHIR99021(pEPSCMにおいて使用される、0.2μM)、高濃度のCHIR99021(3.0μM)、JNKインヒビター、BRAFインヒビター、またはMek1/2インヒビター(PD03)の使用の効果を決定した。本発明者らはまた、ROCKインヒビターY27632(-ROCKi)なしでEPSCを継代する効果を定量した。データは、平均±s.d.であり(n=4)、実験を3回行った。j~k.XAV939またはアクチビンAを、pEPSCMおよびhEPSCMから除去したとき、またはTGFβシグナル伝達を、SB431542により阻害したとき、pEPSC
Emb(j)またはhEPSC(k)における系統遺伝子の発現のRT-qPCR解析。3.0μM CHIR99021の効果も解析した。l.H1-EPSCから形成されたEBにおける系統遺伝子の発現に対する、hEPSCMにおいて5.0ng/mlアクチビンAを添加する効果。中内胚葉系統の遺伝子の発現は、実質的に増大された。
*p<0.05、アクチビンAを添加して培養したヒトEPSCとの比較。m~n.5.0ng/mlアクチビンAあり、またはなしかのいずれかで、EPSCMにおいて培養したNANOS3-TdtomatoレポーターEPSCからPGCLCへの分化。アクチビンAの添加は、FACS(Tdtomato
+)で測定したPCGLCを実質的に増加させた。PGCLC遺伝子のRT-qPCR解析により、PCGLCの増加を確認した。
*p<0.05、アクチビンAを添加したhEPSCMとの比較。RT-qPCRデータは、平均±s.d.である(n=3)。実験を、少なくとも3回行った。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。
【
図16】拡張データ
図11。hEPSC栄養膜分化ポテンシャルの特徴決定。a.CDX2-H2BVenusレポーターEPSC株の生成。標的化された対立遺伝子において、T2A-H2BVenus配列は、ヒトCDX2遺伝子の最終コードエクソンとインフレームであった。TGA終止コドンは、標的化対立遺伝子において欠失させた。レポーターEPSCを、続く解析のため、hEPSCM、標準的FGF含有ヒトESC培地またはヒトナイーブ型ESCのための5i条件下で、その後培養した。b.4日間のBMP4処理により栄養膜に分化するよう誘導した細胞におけるRT-qPCRにより測定した栄養膜遺伝子発現。実験を、少なくとも3回行った。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、H1-ESCおよびH1-5iナイーブ型細胞と比較。c.SB431542+PD173074+BMP4により栄養膜に分化するよう誘導したhEPSCにおけるRT-qPCRにより測定した栄養膜遺伝子発現。細胞を、解析のため、いくつかの時間点で収集した。qRT-PCRデータは、平均±s.d.である(n=3)。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。d.ヒートマップは、H1-ESC(緑色)、H1-EPSC(赤色)またはiPSC-EPSC(青色)から分化した細胞における栄養膜遺伝子の発現変化を示す(RNAseqデータは、補足表6にある)。細胞を、RNAseq解析のため、いくつかの分化時間点で収集した。e.PHTuおよびPHTd(それぞれ、分化していないヒト初代栄養膜および分化したヒト初代栄養膜)の公開データおよびヒト組織と共に、H1-ESC、H1-EPSCおよびiPSC-EPSC(補足表6中のRNAseqデータ)から分化した細胞における遺伝子発現のピアソン相関係数。これらの解析の詳細を、方法に示す。f.H1-EPSC、H1-ESC、H1-ナイーブ型ESC(5i)から分化した細胞および6日間SB431542で処理したiPSC-EPSCにおける4つのC19MC miRNA(hsa-miR-525-3p、-526b-3p、-517-5p、および-517b-3p)の検出。絨毛外栄養膜の代表である絨毛癌細胞JEG-3、および絨毛栄養膜細胞の代表であるJARを、対照として使用した。g.BMP4(4日間)で処理したヒトEPSCおよびヒトESCにおいて上で提示したものと同じ4つのmiRNAの発現。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.05、H1-ESCとの比較。相対的miRNA発現レベルを、miR-103aに対して標準化して示す。h.H1-EPSCおよび他の細胞から分化した細胞(SB431542処理の6日目)におけるELF5座位のプロモーター領域におけるDNA脱メチル化。H1-ESC、H1-ナイーブ型ESC(5i)からの細胞は、ELF5プロモーターでの実質的なDNA脱メチル化を有さなかった。i.TGFβ阻害(SB431542)により誘導したH1-EPSCからもたらされた栄養膜から分泌されたホルモン。VEGF、PLGF、sFlt-1and sEngを、16日目まで48時間の間隔でのSB431542処理の際にEPSCまたはESC培養物から分化した細胞の条件培地において測定した。j.EPSCまたはESC由来の栄養膜から分泌されたhCG。10日間分化させた(SB431542処理)EPSCおよびESCから分泌されたhCGを、ELISAにより測定した。データは、平均±s.d.である(n=4)。
*p<0.01、H1-ESCとの比較。
【
図17】拡張データ
図12。ヒトEPSCから栄養膜幹細胞様細胞(hTSC)の誘導および特徴決定。a.4つのEPSC由来TSC株およびこれらの親hEPSCにおける多能性および栄養膜幹細胞遺伝子のRT-qPCR解析。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、TSCと比較。b.EPSCからもたらされたhTSCおよびいくつかの時間点で、TGFβインヒビターSB431542で処理したH1-EPSCから分化した細胞の遺伝子発現のPCA。hTSCは、4日目の分化したEPSCの強化トランスクリプトーム特性を有すると思われる。c.TSCから分化した多核性合胞体栄養細胞の位相差およびヘキスト染色画像。d.hESPCからもたらされたTSCから分化した合胞体栄養細胞におけるCGBの免疫蛍光検出。e.hTSCからの合胞体栄養細胞形成の効率。融合指数を、合胞体における核の数/核の総数として計算する。データを、平均±SDとして示す(n=4)。
*p<0.01、TSCと比較。f.3つのTSC株ならびにこれらの誘導合胞体栄養細胞(ST)および絨毛外栄養膜(EVT)における栄養膜遺伝子のRT-qPCR解析。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。g.分化していないhESC、hEPSC、hTSC、およびhTSCから分化したhEVTにおける単一クローン抗体W6/32による、HLAクラスIの検出。hESC、hEPSCおよびhTSCと比較し、実質的により低いレベルのHLAクラスI分子を発現した。EVTは、HLA-Cを発現することが知られている。絨毛癌細胞JEG-3およびJARは、それぞれ、絨毛外および絨毛栄養膜細胞の代表である。JEG-3は、HLA-G、HLA-CおよびHLA-Eを発現し、一方、JAR細胞は、HLA分子を発現しない(Apps, R., et al. Immunology 2009)。これらを、それぞれ、正および負の対照として使用した。h.
図4gと関連するHLA-Gフローサイトメトリー解析のためのアイソタイプ対照。i.NOD-SCIDマウスにおいて皮下注射したhTSCから形成された病変のH&E染色。j.マウスに、hTSC(n=3)またはビークル対照(n=3)を皮下注射した7日後の、6匹のNOD-SCIDマウスにおける血清hCGレベル。
【
図18】拡張データ
図13。ブタEPSCから栄養膜幹細胞様細胞(pTSC)の誘導および特徴決定。a.H3K27me3およびH3K4me3は、pEPSC
EmbおよびヒトH1-EPSCにおける胎盤発生と関連するファクターをコードする座位をマーキングしる。b.ヒトTSC条件において7日間培養した個々のpEPSC
Embから形成された初代TSCコロニー(上)、および7継代の確立したpTSC(下)の画像。波線は、安定なpTSC株を確立するために拾った、推定栄養膜の範囲を印す。c.4つのpTSC株およびこれらの親pEPSC
Embにおける多能性および栄養膜遺伝子のRT-qPCR解析。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.01、pEPSCからpTSCの間の比較。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。d.免疫染色により検出したpEPSC
Emb-TSCにおける栄養膜ファクターGATA3およびKRT7の発現。核を、DAPIで染色した。e.SDC1およびKRT7発現細胞についての、NOD-SCIDマウスにおいてpTSCから形成された病変の切片の免疫染色の共焦点画像。f.pTSCを、免疫不全マウスに皮下注射したとき形成された病変の切片のH&E染色。g.pTSCの注射の1~2日後のブタ胚盤胞の免疫染色の共焦点画像。H2B-mCherry発現pTSCを、ブタ単為生殖桑実胚および早期胚盤胞に注射した(2回の注射においてn=50の胚盤胞)。矢印は、ブタ栄養外胚葉転写因子CDX2およびGATA3を発現したTEにおけるH2B-mCherry
+細胞を示す。
【
図19】拡張データ
図14。栄養膜分化ポテンシャルに対するヒトEPSCにおけるPARGの不活性化の効果。a.CDX2-H2BVenusレポーターhEPSCにおけるPARG遺伝子のエクソン4の約350bpのCRISPR/Cas9介在性欠失。2つのgRNA(g1、g2)を、最大のコードエクソンを標的化するよう設計した。遺伝子導入および選別後、48のクローンのうち6つのクローンを、PCR遺伝子型同定により、二重対立遺伝子変異と同定し、配列決定により確認した。b.PARG欠失を有するか、または有さないCDX2-レポーターEPSC細胞を、栄養膜分化のため4日間TGFβインヒビターSB431542で処理した。細胞を、フローサイトメトリーにより解析した。c.Venus
+細胞の割合は、親細胞の栄養膜分化の程度を示す。引き起こしたPARPの不活性化は、Venus
+細胞を減少した。データは、平均±s.d.である(n=3)。
*p<0.05、広範なタイプとPARG
-/-H1-EPSCの間の比較。同様の結果を、2つの独立したPARP欠損ヒトEPSC株を使用した実験において得た。d.SB431542処理の6日後の、対照(野生型)またはPARG欠損CDX2-H2BVenus H1-EPSCのいずれかから分化した細胞における栄養膜遺伝子の発現のRT-qPCR解析。有意には、より低い栄養膜遺伝子発現を、PARG欠損細胞において見出した。
*p<0.05。データは、平均±s.d.である(n=3)。GAPDHに対して標準化した相対的発現レベルを示す。実験を、少なくとも3回行った。
【発明を実施するための形態】
【0015】
4.2 定義
別段特定されない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する当該技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと類似または均等な任意の方法および物質を、本開示の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および物質が記載される。本開示の目的のため、次の用語が、以下で定義される。
【0016】
「iPSC」は、非多能性の分化した祖先細胞からもたらされる多能性幹細胞である。適当な祖先細胞は、成人線維芽細胞および末梢血液細胞などの体細胞を含む。これらの祖先細胞は、典型的には、多能性遺伝子(もしくはそれをコードするRNA)またはこれらの対応するタンパク質の細胞への導入により、または内因性多能性遺伝子を再活性化することにより、リプログラミングされる。導入技術は、プラスミドもしくはウイルス遺伝子導入、またはある特定の実施形態では、直接タンパク質デリバリーを含む。
【0017】
「フィーダー細胞」または「フィーダー」は、他方のタイプの細胞と共培養される一方のタイプの細胞を記載するため、第二のタイプの細胞が成長することができる環境をもたらすために使用される用語である。フィーダーのない培養は、約5%未満のフィーダーを含有する。1%、0.2%、0.05%、または0.01%未満のフィーダー(培養液における総細胞の%として表される)を含有する組成物が、ますます、より好ましい。
【0018】
「成長環境」は、目的の細胞がインビトロで増殖する環境である。環境の特性は、細胞が培養される培地、および存在する場合、支持構造(固体表面上の基材など)を含む。
【0019】
「栄養培地」は、等調生理食塩水、緩衝液、アミノ酸、血清または血清代替物、および他の外因性に添加されたファクターを含む、増殖を促進する栄養を含有する細胞を培養するための培地である。
【0020】
「条件培地」は、細胞の第一の集団を培地において培養し、次いで、培地を回収することにより、調製される。次いで、条件培地を、細胞により培地に分泌される任意のものと共に使用して、細胞の第二の集団の成長を支持し得る。特定の成分またはファクターが、培地に添加されたと記載される場合、ファクターは、計画的な操作により培地に混合されている。
【0021】
本開示において使用される場合、用語「抗体」は、任意の種のポリクローナルとモノクローナル抗体の両方を指す。用語の範囲は、インタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、免疫グロブリン分子のフラグメントおよび遺伝子操作された誘導体、ならびに所望の結合特異性を保持する同等な抗原結合分子を包含する。
【0022】
用語「単離された」または「精製された」は、その天然の状態で見出される、正常にそれに伴う成分から実質的または本質的に離れた物質を指す。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの解析化学技術を使用して決定される。
【0023】
本明細書において使用される、用語「血清」は、血液細胞およびフィブリノーゲン/フィブリンが除去された後に残る血液の液体部分を意味する。用語「血清を含まない培地」は、血清または動物の血清から抽出された産物および特に、哺乳類、鳥類、魚類または甲殻類を起源とするものを含有しない培地を意味する。
【0024】
用語「含むこと(comprising)」は、「含むこと(including)」ならびに「成ること(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、排他的にXからなり得るか、またはさらなる何か、例えば、X+Yを含み得る。
【0025】
用語「正確に(exactly)」、「正確に(precisely)」、または別の同等な用語により別段示されない限り、本明細書において使用される、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、用語「約」により、全ての場合で修飾されていると理解されるべきであり、従って、指定される実際の数より最大10%大きいかまたは小さい変動を本質的に含むべきである。従って、本明細書における数パラメーターは、本開示により得られると考えられる所望の特性に依存する近似値である。最低限、それぞれの数パラメーターは、通常の切り上げ技術を適用することにより、少なくとも、報告された有意なアラビア数字の数が与えられると解釈されるべきである。数範囲および広範囲の開示を記載するパラメーターが近似値であるにも関わらず、数値は、特定の実施例では、出来るだけ正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、数値検査測定において見出される誤差から必然的に生じる標準偏差を本質的に含有する。
【0026】
5.詳細な説明
多能性幹細胞の集団からの拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の生成が、本明細書において記載される。EPSCは、「ナイーブ型」または基底状態特性を有し、胚体外細胞株(栄養膜および卵黄嚢における胚体外内胚葉)ならびに胚体の細胞に分化する拡大したポテンシャルを有する。EPSCは、異なる多能性幹細胞株から生成され、拡大ポテンシャル幹細胞培地(EPSCM)において培養される。EPSCは、体細胞および栄養膜細胞を含む、広範な細胞タイプに首尾よく分化させられてきた。EPSCは、EPSCまたはそれから分化した細胞の発生の機序を研究するのに有用であり得る。これは、再生医学における研究およびR&Dと共に、例えば、疾患モデリング、治療剤のスクリーニング、毒性試験、遺伝子疾患の研究および生殖生物学の研究において特に助けとなる。
【0027】
拡大ポテンシャル幹細胞(EPSC)の集団は、多能性幹細胞(PSC)の集団を拡大ポテンシャル幹細胞培地(EPSCM)において培養して、EPSCの集団を生成することにより、生成され得る。着床前の胚から直接、またはブタ胎児線維芽細胞をリプログラミングすることのいずれかによる、ブタEPSC(pEPSC)株の誘導が、本明細書において記載される。多能性細胞は、胚幹細胞(ESC)および非胚幹細胞、例えば、胎児および成人の幹細胞、ならびに誘導された多能性幹細胞(iPSC)を含み得る。
【0028】
5.1 新規ブタiPSCの生成
ブタiPSCが利用可能である一方、スクリーニングのためのこれらの細胞の使用は、リプログラミング後のトランスジェニックリプログラミングファクターのリーキーな発現により、または内因性多能性遺伝子の低レベルの発現により、区別されない[11~19]。この課題を克服するために、新規ブタiPSCを生成して、ドキシサイクリン(Dox)誘導性LIN28、NANOG、LRH1およびRARGなどの多能性遺伝子を、4つの山中ファクターと共同して、発現させる。
【0029】
多能性遺伝子またはタンパク質は、LINファミリーメンバー、NANOGファミリーメンバー、LRHファミリーメンバー、RARファミリーメンバーの1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含んでもよい。
【0030】
Lrhファミリーメンバーは、LRH1であってもよい。
【0031】
Rarファミリーメンバーは、Rar-gであってもよい。
【0032】
一実施形態では、多能性遺伝子またはタンパク質は、Oct4、Sox2、Klf4およびc-Myc(山中ファクター)を含んでもよい。
【0033】
iPSCの生成技術は、当該技術分野において周知である(Yamanaka et al Nature 2007; 448:313-7; Yamanaka 6 2007 Jun. 7; 1(1):39-49; Kim et alら Nature. 2008 Jul. 31; 454(7204):646-50; Takahashi Cell. 2007 Nov. 30; 131(5):861-72. Park et al Nature. 2008 Jan. 10; 451(7175):141-6; Kimet et al Cell Stem Cell. 2009 Jun. 5; 4(6):472-6; Vallier, L.,et al. Stem Cells, 2009. 999(999A), Wang W, et al. PNAS. (2011) 108; 45; 18283-8)。しかしながら、本明細書において提供されるストラテジーは、tdTomatoカセットが、ブタOCT4(POU5F1)座位(POT PFF)の3’UTRに挿入されている[20]、野生型ドイツ在来種ブタ胎児線維芽細胞(PFF)およびトランスジェニックPFFの推定iPSCコロニー(拡張データ
図1a~c)へのリプログラミング効率を実質的に改善する。POT PFFからリプログラミングされた初代コロニーは、OCT4-tdTomato
+であり、これは、OCT4座位の再活性化を示す(拡張データ
図1c)。実際、RT-qPCRにより、iPSCが、高レベルの内因性多能性ファクターを発現し(拡張データ
図1d)、血清含有培地(M15)プラスDoxにおいて20継代より多く、STOフィーダー上で単一細胞として継代され得ることが明らかになった。
【0034】
Dox除去の際、iPSCは、外因性リプログラミングファクターおよび内因性多能性遺伝子の迅速なダウンレギュレーション、ならびに胚と胚体外細胞系統遺伝子の両方の増大した発現に付随して、4~5日内に分化した(拡張データ
図1e~h)。強い内因性多能性遺伝子発現を有するこれらのDox依存性ブタiPSCは、化学スクリーニングのための材料を提供した。
【0035】
従って、多能性幹細胞の集団は、当該技術分野において公知であり、本明細書において考察される技術を使用して、多能性遺伝子またはこれらの対応するタンパク質を導入することにより、または内因性多能性遺伝子を不活性化することにより、体細胞などの非多能性幹細胞を誘導された多能性幹細胞(iPSC)にリプログラミングすることにより得られ得る。
【0036】
iPSCは、哺乳類個体から得られてもよい。哺乳類は、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、および霊長類を含む。鳥類は、家禽、鳴禽類、および猛禽類を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、iPSCは、体細胞または個体から得られる他の前駆細胞からもたらされてもよい。iPSCを使用して、その個々の遺伝子型同定を共有するEPSCの集団を生成してもよい。一部の実施形態では、EPSCまたは個体からインビトロで生成された、それから分化した細胞は、その個体と関連する疾患状態の機序を研究するのに有用であり得る。
【0037】
5.2 培養液
多能性幹細胞のための適当な培養液は、当該技術分野において周知であり、20%血清代替物、1%非必須アミノ酸、1mM L-グルタミン、0.1mM β-メルカプトエタノールおよび4ng/ml~10ng/ml FGF2を添加したノックアウトダルベッコ変法イーグル培地(KO-DMEM);または4ng/ml FGF2を添加したノックアウト(KS)培地;または20%血清代替物、1%非必須アミノ酸、1mM L-グルタミン、0.1mM 3-メルカプトエタノールおよび4ng/ml~10ng/mlヒトFGF2を添加したKO-DMEM;または20%ノックアウト血清代替物(KSR)、6ng/ml FGF2(PeproTech)、1mM L-Gln、100μm非必須アミノ酸、100μM 2-メルカプトエタノール、50U/mlペニシリンおよび50mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM/F12を含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、本方法において使用するための多能性幹細胞の集団は、1つまたは複数の追加の成分、例えば、ビタミンC(Vc)、アクチビンAおよびLIF(拡張データ
図2a、2hおよび補足表1)も添加した、GSK3(CHIR99021)、SRC(WH-4-023)およびタンキラーゼ(XAV939)についてのインヒビター(最後の2つは、マウスEPSC[1]にとって重要なインヒビターであった)を含む化学的に規定された基本培地を含む化学的に規定された培地(CDM)(517番、ブタEPSC培地:pEPSCM)(拡張データ
図2h)において培養されてもよい。これらの条件下で、Dox依存性iPSC(pEPSC
iPS)は、30継代で分化しないままであり、ブタ胚盤胞に匹敵するレベルで内因性多能性ファクターを発現し、外因性リプログラミングファクターのリーキーな発現を示さなかった(拡張データ
図3b~d)。
【0039】
分化しない状態でDox依存性ブタiPSCを維持するために(拡張データ
図2a;補足表1)、Mek1、p38およびPKCのインヒビターは、推定ブタiPSCを維持するそれらの能力について20の小分子インヒビターとサイトカインの400種を超える組み合わせをスクリーニング後に排除される。マウスモデルを使用した従前の報告との差異が報告された;ナイーブ型マウスESC培地2i/LIFは、推定ブタiPSCを維持することができた[15、17、21]が、ブタiPSCは、Doxが存在するかどうかに関係なく、1.0μMのMek1インヒビターPD-0325901の存在下で迅速に失われた(拡張データ
図2b~h)。これは、ブタ多能性幹細胞およびマウスESCが、Mek-ERKシグナル伝達の要件が異なることを示す。[26~28]p38およびPKCの阻害は、ブタiPSCの助けとならなかった(拡張データ
図2b~hおよび拡張データ
図3a)。これらの知見は、マウスまたはヒトナイーブ型ESC条件[22~24]からの推定を、ブタ多能性幹細胞に直接的に適用することはできないという結論を導いた。それ故、Mek1/2、p38およびPKCについてのこれらの3つのインヒビターは、スクリーニングから除外された。
【0040】
細胞培養に適当な技術は、当該技術分野において周知である(例えば、Basic Cell Culture Protocols, C. Helgason, Humana Press Inc. U.S. (15 Oct. 2004) ISBN: 1588295451; Human Cell Culture Protocols (Methods in Molecular Medicine S.) Humana Press Inc., U.S. (9 Dec. 2004) ISBN: 1588292223; Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, R. Freshney, John Wiley & Sons Inc (2 Aug. 2005) ISBN: 0471453293, Ho W Y et al J Immunol Methods. (2006) 310:40-52, Handbook of Stem Cells (ed. R. Lanza) ISBN: 0124366430) Basic Cell Culture Protocols' by J. Pollard and J. M. Walker (1997), 'Mammalian Cell Culture: Essential Techniques' by A. Doyle and J. B. Griffiths (1997), 'Human Embryonic Stem Cells' by A. Chiu and M. Rao (2003), Stem Cells: From Bench to Bedside' by A. Bongso (2005), Peterson & Loring (2012) Human Stem Cell Manual: A Laboratory Guide Academic Press and 'Human Embryonic Stem Cell Protocols' by K. Turksen (2006))。それ故、培地および成分は、市販の供給源(例えば、Gibco、Roche、Sigma、Europa bioproducts、R&D Systems)から得られ得る。標準的な哺乳類細胞培養条件、例えば、37℃、5%二酸化炭素が、上記培養工程のため利用されてもよい。
【0041】
使用のための多能性幹細胞の集団を、本明細書に記載される本拡大ポテンシャル幹細胞培地(EPSCM)において培養して、EPCSの集団を生成してもよい。一度変換されると、EPSCは、EPSC維持培地(EPSCMM)において培養され得る。維持培地は、本明細書に記載される組成、例えば、細胞を変換するために使用されたEPSCMに匹敵するわずかなインヒビター/モジュレーターを有してもよい。一度変換されると、EPSCは、培地においてそれらを維持するためのインヒビター/モジュレーターをEPSCほど多くは必要としない。
【0042】
適当なブタEPSCM 500mlは、1つまたは複数の:
0.3μM WH-4-023(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号5413),
2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)または2.0μM IWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、
50μg/ml ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、
10ng/ml LIF(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)、
20ng/mlアクチビン(SCI)
を含む。
【0043】
適宜、EPSCMはまた、LIFを含有してもよい。EPSCMは、栄養培地を含有してもよい。
【0044】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、栄養培地およびGSK3インヒビターを含む。
【0045】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、以下の成分:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)482.5ml、N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)2.5ml、B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)5ml、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)5ml、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)5ml、110μM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、および0.2μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、0.3%FBS(Gibco、カタログ番号10270)の1つまたは複数を含有してもよい。
【0046】
適当なブタEPSCM500mlは、以下の成分:
ITS-X200×(thermos、51500056)、2.5ml添加;
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、作用濃度64μg/ml;
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、3ml;
1000×微量元素B(Corning、MT99175CI)
1000×微量元素C(Corning、MT99176CI)
10mg/ml還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、165μl添加
XAV939(Sigma X3004)、作用濃度2.5μM;
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、作用濃度1μM
WH-4-023(Tocris、カタログ番号5413)、作用濃度0.16μM;
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、作用濃度0.2μM;
ヒトLif、作用濃度10ng/ml;および
20ng/mlアクチビンA(STEM CELL TECHNOLOGY、カタログ番号78001.1)
の1つまたは複数を含む。
【0047】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、以下の成分:F12 DMEM(Gibco、21331-020)、240ml添加;神経基本培地(Life Technologies、21103-049)240ml;ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)(Gibco、10378016)、5ml添加;100×NEAA(Gibco、11140050)、5ml添加;100×ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、5ml添加;14.3M 2-メルカプトエタノール(M6250 Aldrich、Sigma)、3.8μl添加(作用濃度110μM);200×N2(Thermo 17502048)、2.5ml添加;および100×B27(Thermo 17504044)、5ml添加
の1つまたは複数を含有してもよい。
【0048】
適当なヒトEPSCM 500mlは、以下の成分:
0.1μM A-419259(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号3914),
2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)または2.5μM IWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、
50μg/ml ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、
10ng/ml LIF(SCI)
の1つまたは複数を含む。
【0049】
適宜、EPSCMはまた、LIFを含有してもよい。EPSCMは、栄養培地を含有してもよい。
【0050】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、栄養培地をGSK3インヒビターと一緒に含む。
【0051】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、以下の成分:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)482.5ml、N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)2.5ml、B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)5ml、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)5ml、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)5ml、110μM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、および1.0μM CHIR99021(GSK3インヒビター、TOCRIS、カタログ番号4423)の1つまたは複数を含有してもよい。
【0052】
適当なヒトEPSCM 500mlは、以下の成分:
ITS-X200×(thermos、51500056)、2.5ml添加
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、作用濃度64μg/ml;
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、3ml;
1000×微量元素B(Corning、MT99175CI)
1000×微量元素C(Corning、MT99176CI)
10mg/ml還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、165μl添加
500×規定された脂質(Invitrogen,11905031)
XAV939(Sigma X3004)、作用濃度2.5μM;
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、作用濃度2.5μM
A419259(Tocris Bioscience、3748)、作用濃度0.1μM;
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、作用濃度1.0μM
の1つまたは複数を含んでもよい。
【0053】
適当なEPSCMまたはEPSCMMは、以下の成分:F12 DMEM(Gibco、21331-020)、240ml添加;神経基本培地(Life Technologies、21103-049)240ml;ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)(Gibco、10378016)、5ml添加;100×NEAA(Gibco、11140050)、5ml添加;100×ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、5ml添加;14.3M 2-メルカプトエタノール(M6250 Aldrich、Sigma)、3.8μl添加(作用濃度110μM);200×N2(Thermo 17502048)、2.5ml添加;100×B27(Thermo 17504044)、5ml添加;およびヒトLif、作用濃度10ng/mlの1つまたは複数を含有してもよい。
【0054】
一実施形態では、ブタEPSC培地は、
DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)、またはノックアウトDMEM(Gibco、カタログ番号10829-018)、基本培地、98%;
N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲;
B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)、0.1~2%、0.5~1.5%、0.8~1.0%の範囲;
グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、基本栄養補助剤、1%;
NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)、基本栄養補助剤、1%;
2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、基本栄養補助剤、110μM;
CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、0.05~0.5μM、0.1~0.5μM、0.2~0.3μMの範囲;
WH-4-023(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号5413)、0.1~1.0μM、0.2~0.8μM、0.3~0.5μMの範囲;
XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)、1~10μM、2~5μM、さらに2.5~4.5μMの範囲;またはIWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲;
ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10~100μg/ml、20~80μg/ml、50~70μg/mlの範囲;
LIF(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)、1~20ng/ml、5~15ng/ml、8~12ng/mlの範囲;
アクチビン(SCI)、10~50ng/ml、15~30ng/ml、さらに20~25ng/mlの範囲;
FBS(Gibco、カタログ番号10270)、0.1~0.5%、好ましくは、0.2~0.4 %、0.25~0.35%の範囲、および
ITS-X(thermos、51500056)、0.1~2%、好ましくは、0.2~0.8%、0.4~0.6%の範囲
を含む。
【0055】
別の実施形態では、ヒトEPSC培地は、
DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)、またはノックアウトDMEM(Gibco、カタログ番号10829-018)、基本培地、98%;
N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲;
B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)、0.1~2%、0.5~1.5%、0.8~1.0%の範囲;
グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、基本栄養補助剤、1%;
NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)、基本栄養補助剤、1%;
2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、基本栄養補助剤、110μM;
CHIR99021(GSK3インヒビター、TOCRIS、カタログ番号4423)、0.2~2μM、0.5~1.5μM、0.8~1.2μMの範囲;
A-419259(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号3914)、0.05~0.5μM、0.1~0.5μM、0.15~0.3μの範囲、μMXAV939(Sigma、カタログ番号X3004)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲、またはIWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲;
ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10~100μg/ml、20~80μg/ml、50~70μg/mlの範囲;
LIF(SCI)、1~20ng/ml、5~15ng/ml、8~12ng/mlの範囲
を含む。
【0056】
別の実施形態では、ヒトEPSC培地は、
F12 DMEM(Gibco、21331-020)、基本培地、48%
神経基本培地(Life Technologies、21103-049)、基本培地、48%
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco、10378016)、基本栄養補助剤、1%
NEAA(Gibco、11140050)、基本栄養補助剤、1%
ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、基本栄養補助剤、1%
2-メルカプトエタノール(Aldrich、Sigma)、基本栄養補助剤、110μM
N2(Thermo 17502048)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲
B27(Thermo 17504044)、0.1~2%、0.5~1.5%、0.8~1.0%の範囲
ITS-X(thermos、51500056)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、10~100μg/ml、20~100μg/ml、50~70μg/mlの範囲
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、0.1%~1%、0.2~0.8%、0.4~0.6%の範囲
微量元素B(Corning、MT99175CI)基本栄養補助剤、0.1%
微量元素C(Corning、MT99176CI)基本栄養補助剤、0.1%
還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、1~20μg/ml、1~10μg/ml、2~5μg/mlの範囲
規定された脂質(Invitrogen,11905031)基本栄養補助剤、0.2%
XAV939(Sigma X3004)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲
A419259(Tocris Bioscience、3748)、0.05~0.5μM、0.1~0.5μM、0.15~0.3μMの範囲
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、0.2~2μM、0.5~1.5μM、0.8~1.2μMの範囲
ヒトLif(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)、1~20ng/ml、5~15ng/ml、8~12ng/mlの範囲
を含む。
【0057】
一実施形態では、ブタEPSC培地は、
F12 DMEM(Gibco、21331-020)、基本培地、48%
神経基本培地(Life Technologies、21103-049)、基本培地、48%
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco、10378016)、基本栄養補助剤、1%
NEAA(Gibco、11140050)、基本栄養補助剤、1%
ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、基本栄養補助剤、1%
2-メルカプトエタノール(Aldrich、Sigma)、基本栄養補助剤、110μM
N2(Thermo 17502048)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲
B27(Thermo 17504044)、0.1~2%、0.5~1.5%、0.8~1.0%の範囲
ITS-X(thermos、51500056)、0.1~1%、0.25~0.75%、0.4~0.6%の範囲
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、10~100μg/ml、20~100μg/ml、50~70μg/mlの範囲
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、0.1%~1%、0.2~0.8%、0.4~0.6%の範囲
微量元素B(Corning、MT99175CI)基本栄養補助剤、0.1%
微量元素C(Corning、MT99176CI)基本栄養補助剤、0.1%
還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、1~20μg/ml、1~10μg/ml、2~5μg/mlの範囲
XAV939(Sigma X3004)、1~10μM、2~5μM、2.5~4.5μMの範囲
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、1~10μM、1~5μM、1~2μMの範囲
WH-4-023(Tocris、カタログ番号5413)、0.1~1.0μM、0.1~0.5μM、0.1~0.2μMの範囲
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、0.05~0.5μM、0.1~0.5μM、0.2~0.3μMの範囲
ヒトLif(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)、1~20ng/ml、5~15ng/ml、8~12ng/mlの範囲
アクチビンA(STEM CELL TECHNOLOGY、カタログ番号78001.1)、10~50ng/ml、15~30ng/ml、20~25ng/mlの範囲
を含む。
【0058】
一実施形態では、ブタEPSC培地500mlは、
DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)482.5ml、
N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)2.5ml、
B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)5ml、
1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)5ml、
1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)5ml、
110μM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、
0.2μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、
0.3μM WH-4-023(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号5413)、
2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)または2.0μM IWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、
50μg/ml ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、
10ng/ml LIF(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)、
20ng/mlアクチビン(SCI)、
ITS-X200×(thermos、51500056)1ml、および
0.3%FBS(Gibco、カタログ番号10270)
を含む。
【0059】
別の実施形態では、ヒトEPSC培地500mlは、
DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)482.5ml、
N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)2.5ml、
B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)5ml、
1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)5ml、
1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)5ml、
110μM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)、
1.0μM CHIR99021(GSK3インヒビター、TOCRIS、カタログ番号4423)、
0.1μM A-419259(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号3914)、
2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)または2.5μM IWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、
50μg/ml ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、および
10ng/ml LIF(SCI)
を含む。
【0060】
別の実施形態では、ヒトEPSC培地500mlは、
F12 DMEM(Gibco、21331-020)、240ml添加、
神経基本培地(Life Technologies,21103-049)240ml、
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)(Gibco、10378016)、5ml添加、
100×NEAA(Gibco、11140050)、5ml添加、
100×ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、5ml添加、
14.3M 2-メルカプトエタノール(M6250 Aldrich、Sigma)、3.8μl添加(作用濃度110μM)、
200×N2(Thermo 17502048)、2.5ml添加、
100×B27(Thermo 17504044)、5ml添加、
ITS-X200×(thermos、51500056)、2.5ml添加、
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、作用濃度64μg/ml、
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、3ml、
1000×微量元素B(Corning、MT99175CI)
1000×微量元素C(Corning、MT99176CI)
10mg/ml還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、165μl添加、
500×規定された脂質(Invitrogen、11905031)
XAV939(Sigma X3004)、作用濃度2.5μM、
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、作用濃度2.5μM、
A419259(Tocris Bioscience、3748)、作用濃度0.1μM、
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、作用濃度1.0μM、および
ヒトLif、作用濃度10ng/ml
を含む。
【0061】
一実施形態では、ブタEPSC培地500mlは、
F12 DMEM(Gibco、21331-020)、240ml添加、
神経基本培地(Life Technologies、21103-049)240ml、
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)(Gibco、10378016)、5ml添加、
100×NEAA(Gibco、11140050)、5ml添加、
100×ピルビン酸ナトリウム(gibco、11360070)、5ml添加、
14.3M 2-メルカプトエタノール(M6250 Aldrich、Sigma)、3.8μl添加(作用濃度110μM)、
200×N2(Thermo 17502048)、2.5ml添加、
100×B27(Thermo 17504044)、5ml添加、
ITS-X200×(thermos、51500056)、2.5ml添加、
ビタミンC(Sigma、49752-100G)、作用濃度64μg/ml、
ウシアルブミンフラクションV(7.5%溶液)(Thermo、15260037)、3ml、
1000×微量元素B(Corning、MT99175CI)
1000×微量元素C、(Corning、MT99176CI)
10mg/ml還元型グルタチオン(sigma、G6013-5G)、165μl添加、
XAV939(Sigma X3004)、作用濃度2.5μM、
エンド-IWR-1(Tocris、カタログ番号3532)、作用濃度1μM、
WH-4-023(Tocris、カタログ番号5413)、作用濃度0.16μM、
カイロン99021(Tocris Bioscience、4423)、作用濃度0.2μM、
ヒトLif、作用濃度10ng/ml、および
20ng/mlアクチビンA(STEM CELL TECHNOLOGY、カタログ番号78001.1)を含む。適当な化学的に規定された基本培地は、上で記載され、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、ハム’s F12、アドバンスドダルベッコ変法イーグル培地(DMEM/F12)(Price et al Focus (2003), 25 3-6), RPMI-1640(Moore, G. E.およびWoods L. K., (1976) Tissue Culture Association Manual. 3, 503-508)を含む。好ましい化学的に規定された基本培地は、DMEM/F12である。
【0062】
基本培地は、血清を含有する、もしくは血清を含有しない培地栄養補助剤および/または追加の成分を添加されてもよい。適当な栄養補助剤および追加の成分は、上で記載され、L-グルタミンまたはGlutaMAX-1(商標)などの代替物、化学的に規定された脂質、アルブミン、1-チオールグリセロール、ポリビニルアルコール、インスリン、ビタミンCなどのビタミン、ペニシリンおよび/またはストレプトマイシンなどの抗生物質ならびにトランスフェリンを含んでもよい。
【0063】
インヒビターまたはモジュレーターのそれぞれは、EPSCMに、0.1μM~150μMの範囲にある量まで加えられてもよく、ある特定の実施形態では、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、5μM、5.5μM、6μM、6.5μM、7μM、7.5μM、8μM、8.5μM、9μM、9.5μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、110μM、120μM、130μM、140μM、または150μMの量で加えられてもよい。
【0064】
インヒビターまたはモジュレーターのそれぞれは、EPSCMに、0.05μM~0.1μM、0.1μM~1μM、1μM~2μM、2μM~3μM、3μM~4μM、4μM~5μM、5μM~6μM、6μM~7μM、7μM~8μM、8μM~9μM、9μM~10μM、10μM~15μM、15μM~20μM、20μM~30μM、30μM~40μM、40μM~50μM、50μM~60μM、60μM~70μM、70μM~80μM、80μM~90μM、90μM~100μM、100μM~110μM、110μM~120μM、120μM~130μM、130μM~140μM、140μM~150μM、または150μM~160μMの範囲にある量まで加えられてもよい。
【0065】
適当なインヒビターまたはモジュレーターは、天然および合成小分子インヒビターまたは抗体を含む。適当なMek-ERK、JNK、p38、Src、GSK3およびWnt経路インヒビターは、当該技術分野において公知であり、市販されている。Mek-ERK経路は、細胞表面の受容体からのシグナルを細胞の核内のDNAに伝達する、細胞におけるタンパク質の連鎖である。この経路における主要なタンパク質は、MEKおよびERKである。これらのタンパク質の阻害は、この経路におけるシグナル伝達を中断する。従って、インヒビターは、この経路におけるシグナル伝達が中断されるように、MEKまたはERKを直接または間接的に阻害し得る。例えば、インヒビターは、MEKインヒビターまたはERKインヒビターであってもよい。
【0066】
適当なJun-N末端キナーゼ(JNK)インヒビターは、www.scbt.comのJNKインヒビターVIII(カタログ番号sc-202673)、RWJ 67657(カタログ番号sc-204251)、抗生物質LL Z1640-2(カタログ番号sc-202055)、SX 011(sc-358841)、ベンタマピモド(sc-394312)、AEG 3482(sc-202911)、またはwww.invivogen.comのSP600125 JNKインヒビターを含む。一実施形態では、JNKインヒビターは、SP600125である。
【0067】
適当なp38インヒビターは、www.invivogen.comから入手可能なp38 MAPKのaとRアイソフォームの両方を阻害するsB203580、www.scbt.comから入手可能なp38 MAPキナーゼインヒビターIV(カタログ番号 sc-204159)、LY2228820(カタログ番号 sc-364525)、PH-797804(カタログ番号 sc-364579)、p38 MAPキナーゼインヒビター(カタログ番号sc-204157)、SX 011(sc-358841)および2-(4-クロロフェニル)-4-(フルオロフェニル)-5-ピリジン-4-イル-1,2-ジヒドロピラゾール-3-オン(sc-220665)を含む。一実施形態では、p38インヒビターは、sB203580である。
【0068】
Srcファミリーキナーゼ(SFK)は、9つの高度に関連するメンバーを含む非受容体チロシンキナーゼのファミリーである。複数のsrcファミリーメンバーを阻害する広範なスペクトルSrcキナーゼファミリーインヒビターが利用可能であり、当該技術分野において公知である。適当なSrcキナーゼファミリーインヒビターは、後半なスペクトルSrcファミリーキナーゼインヒビターであるA-419259(Sigma-Aldrichから入手可能)を含む。他の適当なSRKインヒビターは、Sigma-Aldrich(www.sigmaaldrich.com)から入手可能でもあるPP1、PP2およびCGP77675、ならびにTochris Bioscience(www.tochris.com)から入手可能なA419259トリヒドロクロリドまたはKB SRC 4を含む。一実施形態では、Srcキナーゼファミリーインヒビターは、WH-4-023またはA-419259である。
【0069】
適当なGSK3インヒビターは、Tocris Bioscienceから入手可能な選択的かつ強力なGSK3インヒビターであるCHIR99021(カタログ4423)、またはTocris Bioscience(www.tochris.com)から入手可能でもあるBIO(カタログ3194)、A 1070722(カタログ4431)、3F8(カタログ4083)、AR-A 014418(カタログ3966)、L803-mts(カタログ2256)およびSB 216763(カタログ1616)を含む。他の適当なGSKインヒビターは、GSK-3インヒビターIX(Santa Cruz Biotechnology sc-202634から入手可能)を含む。一実施形態では、GSK-3インヒビターは、CHIR99021である。
【0070】
加えて、Wntインヒビターは、現在開示される組成物に加えられてもよい。Wntインヒビターは、Wnt/13-カテニンシグナル伝達経路のアンタゴニストである。
【0071】
Wnt/13-カテニンシグナル伝達経路は、細胞質におけるβ-カテニンの蓄積および核へのその最終的な移行を引き起こす、Wnt経路である。wntシグナル伝達の非存在下で、β-カテニンは、タンパク質アキシン、大腸腺腫症(APC)、タンパク質ホスファターゼ2A(PP2A)、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)およびカゼインキナーゼIn(CK1α)を含む破壊複合体により分解される。
【0072】
wntインヒビターは、タンキラーゼインヒビターであってもよい。タンキラーゼ阻害は、アキシンユビキチン化を阻害し、アキシンタンパク質を安定化し(Huang et al 2009)、それ故、wntシグナル伝達を阻害する。
【0073】
適当なタンキラーゼインヒビターは、XAV939(www.sigmaaldrich.com)である。追加の公開されたタンキラーゼインヒビターは、WIKI4、TC-E 5001およびJW 55を含み、全て、Tocris(www.tocris.com)から市販されている。
【0074】
有効量のインヒビターは、現在開示される組成物に加えられてもよい。有効量は、経路における、または標的化されるタンパク質により、シグナル伝達を阻害するのに十分な量である。
【0075】
拡大ポテンシャル幹細胞培地(EPSOM)は、化学的に規定された培地(CDM)であってもよい。
【0076】
化学的に規定された培地(CDM)は、特定の成分、ある特定の実施形態では、公知の化学構造の成分のみを含有する細胞を培養するための栄養溶液である。それ故、CDMは、フィーダー、間質細胞、血清、マトリゲル、血清アルブミンおよび複合細胞外マトリックスなどの規定されていない成分を含む、規定されていない成分または構成物を欠く。アドバンスドダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)またはDMEM/F12(Price et al Focus (2003) 25 3-6)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)およびRPMI-1640(Moore, G. E. and Woods L. K., (1976) Tissue Culture Association Manual. 3, 503-508;表1を参照のこと)、ノックアウト血清代替物(KSR)などの適当な化学的に規定された基本培地は、当該技術分野において公知であり、市販の供給源から入手可能である(例えば、Sigma-Aldrich MI USA;Life Technologies USA)。
【0077】
一実施形態では、基本培地は、DMEM/F12である。基本培地は、市販されているBSAまたはノックアウト血清代替物(KSR)である、AlbuMAX IIを含むか、または添加されていてもよい。基本培地はまた、全てが市販されている(例えば、Sigma-Aldrichから)、N2、B27、L-グルタミン、抗生物質(ある特定の実施形態では、ペニシリンおよびストレプトマイシン);非必須アミノ酸;ビタミン(ある特定の実施形態では、ビタミンC)ならびにイーグル基本培地(bME)のいずれか、または全てを添加されてもよい。他の適当な栄養補助剤は、当該技術分野において公知であり、本明細書において記載される。
【0078】
ある特定の実施形態では、以下の添加物が、以下で記載される組成物に存在してもよい。
【0079】
グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、例えば、Thermo Fisher Scientificのペニシリン-グルタミン-ストレプトマイシン混合物(カタログ番号11140-050)として市販されている。
【0080】
EPSCMの例は、DMEM/F12基本培地を含み、AlbuMAX IIまたはノックアウト血清代替物、ならびに本明細書に記載されるインヒビターおよびモジュレーターが添加される。EPSCMはまた、ヒトインスリン;N2、B27;グルタミン-ペニシリン-ストレプトマイシン;非必須アミノ酸;ビタミンCおよびイーグル基本培地(bME)、ならびにLIFのいずれかを含んでもよい。
【0081】
一部の実施形態では、EPSCの集団は、多能性幹細胞の集団を、EPSCMにおいて1つまたは複数(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上)の繰り返し「継代」の間培養して、EPSCの子孫集団を生成する。継代はまた、サブ培養として言及されてもよく、細胞の、先の培養液から新鮮な成長培地への移行である。培養液中の細胞は、誘導期、対数期および静止期の特徴的成長パターンが続く。これらの期のタイミングは、使用される細胞(例えば、哺乳類細胞対非哺乳類細胞)に依存して変動し得る。細胞成長の期を決定する方法は、当該技術分野において周知である。一般的に、細胞は、対数期に継代される。一部の実施形態では、多能性幹細胞を、EPSCMにおいて1~10回、3~10回、3~5回継代(すなわち、サブ培養)して、EPSCの集団を生成してもよい。一実施形態では、集団を、少なくとも3回継代して、EPSCの集団を生成する。
【0082】
本明細書において記載されるEPSCMは、販売用のキットに配合されてもよい。
【0083】
キットにおける1つまたは複数の培養液は、脱イオン蒸留水に配合されてもよい。1つまたは複数培地を、典型的には、例えば、紫外線、加熱、照射または濾過により、使用前に滅菌して、汚染を防ぐ。1つまたは複数の培地は、保存または輸送のため凍結(例えば、-20℃または-80℃で)されてもよい。1つまたは複数の培地は、汚染を防ぐための1つまたは複数の抗生物質を含有してもよい。
【0084】
1つまたは複数の培地は、1×配合またはそれ以上の濃縮された配合、例えば、2×~250×濃縮培地配合であってもよい。1×配合において、培地中のそれぞれの成分は、細胞培養のため意図される濃度、例えば、上で説明された濃度である。濃縮配合において、成分の1つまたは複数は、細胞培養のため意図されるより高い濃度で存在する。塩沈殿または選択的濾過などの、濃縮培養液が、当該技術分野において周知である。濃縮培地は、使用のため、水(ある特定の実施形態では、脱イオンおよび蒸留されている)または任意の適当な溶液、例えば、生理食塩水溶液、水性バッファーまたは培地で希釈されてもよい。
【0085】
キットにおける1つまたは複数の培地は、汚染を防ぐ、気密的に密封された容器に含有されてもよい。気密的に密封された容器は、培養液の輸送または保存に好ましい。容器は、フラスコ、プレート、ボトル、ジャー、バイアルまたはバッグなどの任意の適当な容器であってもよい。
【0086】
キットはまた、使用について、例えば、EPSCを得るためのEPSCMの使用についての指示書を含んでもよい。
【0087】
5.3 PFFリプログラミング
16の初代コロニーから11の安定なpEPSC
iPS株を生成した(70%効率)、初代コロニーをpEPSCMにおいて直接培養することによる繰り返しPFFリプログラミング実験が本明細書において提供される(拡張データ
図3e)。すべての株は、高レベルの内因性多能性遺伝子を発現し、その6つが、8つの外因性リプログラミングファクターのいずれかの検出可能な発現を有さなかった(拡張データ
図3f)。このpEPSCM条件を続いて利用して、ブタ着床前の胚から直接、幹細胞株をもたらす。計26株(pEPSC
Emb、オス14匹およびメス12匹)を、252の単為生殖胚盤胞由来の76の早期胚盤胞(5.0dpc)、および12の細胞株(pEPSC
par)から確立した(
図1a、表1および拡張データ
図3g)。pEPSC
iPSと同様に、pEPSC
Embは、高い核/細胞質比を有し、滑らかなコロニー端を有する小型のコロニーを形成した(
図1a、拡張データ
図3h)。pEPSC
Embは、3~4日毎に1:10の比で単一細胞として継代され、明確な分化なしに、STOフィーダー上で>40継代の間維持することができた。サブクローニング効率は、低い細胞密度(6ウェルプレートにおいて1ウェル当たり2,000個の細胞)で約10%であったが、高い細胞密度が、慣習的な継代で使用された。pEPSC
Embは、25継代後、正常な核型であった(拡張データ
図4a)。
【0088】
pEPSC
EmbおよびpEPSC
iPSは、胚盤胞に匹敵するレベルで多能性遺伝子を発現し(拡張データ
図3f)、これは、免疫染色により証明された(拡張データ
図4b)。pEPSCが、7つの従前に報告されたブタESC培地[9~15]の1つで培養されたとき、多能性遺伝子発現は、大幅に低減されるか、または失われた(拡張データ
図4c~e)。pEPSCは、OCT4およびNANOGプロモーター領域で広範なDNA脱メチル化を示し(
図1b)、OCT4遠位性エンハンサー活性を有した(拡張データ
図4f)。EPSCには、H2B-mCherry発現カセットのROSA26座位へのCrispr/Cas9介在性挿入を適用可能だった(拡張データ
図4gおよび4h)。インビトロで、pEPSCは、3つの胚葉:SOX7、AFP、T、DES、CRABP2、SMA、β-チューブリンおよびPAX6ならびに、独特に、栄養膜遺伝子HAND1、GATA3、PGF、KRT7、ELF4、KRT8、ITGB4、TEAD3、TEAD4、SDC1およびPLET1のうち代表的な遺伝子を発現する組織に分化した(
図1c、拡張データ
図4i)。免疫不全マウスにおいて、pEPSC
Embは、胎盤ラクトゲン-1(PL1)、KRT7-およびSDC1-陽性栄養膜様細胞さえ含む、3つの胚葉の派生物を有する成熟テラトーマを形成した(
図1d~1eおよび拡張
図4j)。これらの結果は、pEPSC
EmbおよびpEPSC
iPSが、mEPSC[1]同様、胚細胞系統と胚体外栄養膜系統の両方についての拡大した発生ポテンシャルを有し得ることを示す。pEPSCは、キメラにおける胚盤胞細胞系統へのそれらの寄与について試験された。pEPSCの着床前の胚への取り込み後、かつ48時間の培養後、pEPSC(EF1a-H2B-mCherryによりマーキングされた)は、胚盤胞の栄養外胚葉と内部細胞塊の両方に定着した(拡張データ
図5a)。キメラ胚の同調されたレシピエントのメスのブタへの移植後、計45の受胎産物が、妊娠期の26~28日目に3リットルから回収された(補足表2、拡張データ
図5b)。キメラの胚および胚体外組織から分離した細胞のフローサイトメトリーにより、7つの受胎産物におけるmCherry
+細胞の存在(拡張データ
図5c、補足表3および表4):キメラ2匹(8番および16番)における胎盤と胚組織の両方におけるmCherry
+細胞の存在;キメラ3匹(4番、21番および34番)における胚組織のみにおけるmCherry
+細胞の存在;ならびにキメラ2匹(3番および6番)の胎盤における排他的なmCherry
+細胞の存在が明らかになった。ゲノムDNA PCRアッセイは、これらのmCherry
+キメラ7匹ばかりでなく、任意の他の受胎産物においてmCherry DNAを検出した(拡張データ
図5d、補足表3および4)。ドナーmCherry
+細胞由来の全体的に低い寄与にも関わらず、これらは、複数の宿主胚組織および以下の組織系統マーカー:SOX2、TUJ1、GATA4、SOX17、AFP、α-SMA、PL-1およびKRT7により同定された器官において見出された(
図1f~gおよび拡張データ
図5e~f)。
【0089】
5.4 PGC試験
pEPSCは、これらが、マウスおよびヒト多能性幹細胞と同様、インビトロでPGC様細胞(PGCLC)を生成するポテンシャルを有するかどうかを見るために試験される[25~27]。早期の原条(PS)期のブタ胚(E11.5~E12)において、ブタPGCの第一のクラスターは、発生期の原条の後期の終わりにSOX17
+細胞として検出することができ、これらの細胞は、後に、OCT4、NANOG、BLIMP1およびTFAP2Cを共発現する[26]。NANOS3は、進化的に保存されたPGC特異的ファクターであり[28、29]、ヒトNANOS3レポーター細胞は、PGCLCの多能性幹細胞からの誘導を研究するために使用された[26、27]。推定ブタPGCLCの同定を促進するために、H2BmCherryレポーターカセットは、pEPSC
Emb(K3系統、オス)におけるNANOS3座位の3’UTRに標的化される(拡張データ
図6a)。SOX17導入遺伝子を一過性に12時間発現させた後、NANOS3レポーターを有するpEPSC
Embに、胚様体(EB)を形成させ(拡張データ
図6b)、これは、3~4日以内にNANOS3(mCherry
+)および組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP、PGCマーカー)を共発現する細胞クラスターを含有した(
図2a)。
【0090】
BMP2のEB培養物からの除去またはインヒビターLDN-193189によるBMP2/4シグナル伝達の阻害は、mCherry
+/TNAP
+細胞クラスターの形成を抑止したので、推定ブタPGCLCの誘導は、BMP2/4依存性であった(
図2a)。個々または組み合わせのいずれかでの、pEPSCにおけるNANOG、BLIMP1またはTFAP2C導入遺伝子の発現は、NANOS3
+細胞の優勢に対する効果を有さず(拡張データ
図6c)、これは、ヒトPGCLCの報告された誘導と異なった[26]。しかしながら、SOX17の、NANOGまたはTFAP2Cではなく、BLIMP1との共発現は、NANOS3
+細胞の集団を増加させると思われる(拡張データ
図6cおよび6c)。
【0091】
EB内でのmCherry
+(NANOS3
+)推定PGCLCは、PGC特異的遺伝子NANOS3、BLIMP1、TFAP2C、CD38、DND1、KITおよびOCT4を発現し[33]、これらは、RT-qPCRにおいて検出され、単一細胞分析での免疫蛍光により確認された(
図2b~c、および拡張データ
図6e)。mCherry
+/NANOS3
+細胞の特異的RNA-seq解析により、早期PGC遺伝子(OCT4、NANOG、LIN28A、TFAP2C、CD38、DND1、NANOS3、ITGB3、SOX15およびKIT)の発現、ならびに低減したSOX2発現が明らかになった(
図2d~e、補足表5)[27]。ヒトESCからのPGCLC誘導中、細胞では、TETのアップレギュレーションおよびDNMT3A/Bのダウンレギュレーションにより成し遂げられる、網羅的DNA脱メチル化が起きる[27]。同様に、親pEPSC
Embと比較して、DNMT3Bは、ブタmCherry
+/NANOS3
+細胞においてダウンレギュレーションされ、一方、TET1/2は、アップレギュレーションされた(
図2e~f、補足表5)。
【0092】
5.5 ヒトES細胞のインビトロ培養
ヒトESCは、インビトロでのヒト胚発生の研究において広く使用され、再生医学の多大なポテンシャルを保持する[36~37]。SRCおよびタンキラーゼの阻害が、マウスESCをmEPSCに変換するのに十分であるという知見[1]およびこれらの2つのインヒビターが、pEPSCの生成に必要とされるという知見から、同様のインビトロでの培養条件がまた、他の哺乳類種のため働き得る可能性がある。この可能性を探求するために、4つの確立したヒトES細胞(hESC)株(H1、H9、Man1またはM1、およびMan10またはM10細胞)[30~32]が、pEPSCMにおいて培養され、これらは、最大3回継代された。細胞は、OCT4の多様な形態および異種性発現を呈した(拡張データ
図7a)。アクチビンA(20ng/ml)のpEPSCMからの除去は、H1(<1.0%)およびM1(5.0%)ESC培養物から形成された、かなり少ない細胞コロニーを導き、一方、H9またはM10からは細胞コロニーは導かれず(拡張データ
図7a)、これは、ヒトESCの固有の株間不均一性と一致する[33、34]。培養条件をさらに緻密化し(例えば、hEPSCMにおいてWH-4-023を別のSRCインヒビターA419259で置き換えること、方法を参照のこと)、形態学的に均質で安定な細胞株が、単一細胞サブクローニングされたH1(H1-EPSC)およびM1細胞(M1-EPSC)から確立された(
図3a)。STOフィーダー上でhEPSCMにおいて成長させたH1およびM1細胞の核型解析により、遺伝子安定性が明らかになった(親hESCからの転換後25継代にて、拡張データ
図7b)。
【0093】
皮膚線維芽細胞からリプログラミングされたヒト初代iPSCコロニーが、hEPSCMにおいて直接培養されたとき、拾い上げたコロニーのおよそ70%は、安定なiPSC株(iPSC-EPSC)として確立することができた(拡張データ
図7c)。これらのiPSCは、外因性リプログラミングファクターの明らかなリーキーさを有さない多能性マーカーを発現した(拡張データ
図7d~e)。H1-EPSCは、標準的FGF含有培地(H1-ESC、プライム型)において、またはナイーブ型5i/L/A条件下(H1-ナイーブ型ESC)で培養されたH1 ESCより強く増殖し[22](拡張データ
図7f)、ROCKiの一過性存在において、約10%の単一細胞サブクローニング効率を有する単一細胞継代に寛容であった。継代での細胞生存は、5.0ng/mlアクチビンAの存在下で、または細胞をより高密度で分裂させることにより、実質的に改善された。ヒトEPSCは、多能性遺伝子(OCT4、SOX2、NANOG、REX1およびSALL4)をH1-ESCより高いレベルで発現し(拡張データ
図7d)、最低レベルの系統マーカー(EOMES、GATA4、GATA6、T、SOX17およびRUNX1)(拡張データ
図7g)を発現した。ヒトEPSCにおける中心多能性ファクターおよび表面マーカーの発現が、免疫染色により確認された(拡張データ
図7h)。H1EPSCは、インビトロおよびインビボで、3つの胚葉の派生物に分化した(拡張データ
図7i~j)。さらに、H1-EPSCは、生殖細胞コンピテントhESCまたはiPSCのため開発されたインビトロ条件を使用して、PGCLCに首尾よく分化した[26、27](拡張データ
図7k~l)。
【0094】
これらの結果は、ヒトおよびブタEPSCが、小分子インヒビターの同様のセットを使用して、もたらされ、維持され得ることを示す。網羅的な遺伝子発現プロファイリングにより、pEPSCおよびhEPSCが、一緒に培養され、PFFまたは他のヒト多能性幹細胞と異なることが明らかになった[1、42、43](
図3b、拡張データ
図8aおよび補足表6~7)。ブタとヒトEPSCの両方が、高レベルの鍵となる多能性遺伝子、低レベルの体細胞系統遺伝子、PAX6、T、GATA4およびSOX7、またはPGF、TFAP2C、EGFR、SDC1およびITGA5などの胎盤関連遺伝子を発現した(拡張データ
図8b~e)。pEPSCおよびhEPSCの高レベルの網羅的DNAメチル化と一致し(拡張データ
図9a)、DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子DNMT1およびDNMT3AおよびDNMT3Bが、高度に発現され、一方、TET1、TET2およびTET3は、低レベルで発現された(拡張データ
図9b~c)。H1-ESCと比較して、H1-EPSCにおいて高度に発現された76の遺伝子(>8倍の増加)のうち、17の遺伝子は、ヒストンクラスター1に属する15のヒストンバリアントを含む、ヒストンバリアントをコードする(
図3cおよび補足表8)。興味深いことに、これらのヒストン遺伝子は、5iおよびプライム型ヒトESCにおいて低レベルで発現されるが、ヒト8細胞および桑実期の胚において高度に発現された(
図3d)。これらのヒストン遺伝子の有意により高い発現は、さらに、従来のヒトESC培地(FGF)または5i(ナイーブ型)培地(
図3e)において培養された同じ細胞と比較したとき、さらにhEPSC株において確認された。
【0095】
hEPSCおよびヒト8細胞および桑実期の胚における高いヒストン遺伝子発現の生物学的有意が、依然としてさらに調べられている。ブタおよびヒトEPSCの単一細胞RNA-seq(scRNAseq)により、中心多能性ファクター:OCT4、SOX2、NANOGおよびSALL4(
図3f)の均一の発現、ならびに実質的に均質な細胞培養物が明らかになった(
図3g)。単一細胞レベルにて、マウスEPSCは、4細胞期~8細胞卵割球の強化トランスクリプトーム特性を有していた[1]。hEPSCのscRNAseq解析は、これらが、他の期のヒト着床前の胚と比較して、ヒト8細胞期~桑実期の胚[44、45]と転写的により類似し(
図3h、および拡張データ
図8f)、RT-qPCR、大量RNAseqおよびscRNAseqにおけるヒストン遺伝子発現特性と一致する(
図3dおよび拡張データ
図9e)ことを示した。興味深いことに、トランスクリプトーム解析はまた、ヒト早期着床前の胚においては発現されない、EPSCにおけるKLF2などのナイーブ型多能性ファクターの低発現が明らかになった(
図3fおよび拡張データ
図8b~c)[46]。KLF2、TET1、TET2およびTET3は、pEPSCとhEPSCの両方において弱く発現されたが(拡張データ
図8bおよび拡張データ
図9b、9c)、これらのプロモーター領域は、活性なH3K4m3ヒストンマークにより特徴付けられた(拡張データ
図9f)。多能性遺伝子と対照的に、細胞系統遺伝子座位(例えば、CDX2、GATA2、GATA4、SOX7およびPDX1)は、ブタとヒトEPSCの両方において、それぞれ、高いH3K27me3および低いH3K4me3マークを有していた(拡張データ
図9f)。
【0096】
5.6 シグナル伝達経路
hEPSCおよびpEPSCは、培地からの個々の成分の除去後の影響により明らかにされた、同様のシグナル伝達要件を共有した。SRCインヒビターWH-4-023またはA419259の除去は、両方のEPSCにおける多能性ファクターの発現を低減した(拡張データ
図10a~d)。特に、ヒトEPSCにおいて、A419259の代わりに、SRCインヒビターWH-4-023を使用することは、より低い多能性遺伝子発現を導いた(拡張データ
図10b)。mEPSCと同様に、[1]XAV939は、AXIN1タンパク質含有量を増強し(拡張データ
図10e)、両方のEPSCにおける古典的WNT活性を低減した(拡張データ
図10f)。XAV939の中止は、これらのEPSCの崩壊および分化を引き起こした(拡張データ
図10a~b、10d、および10g~k)。SMAD2/3は、EPSCにおいてリン酸化された(拡張データ
図10e)。アクチビンAをpEPSCMから除去すること、またはTGFβインヒビターSB431542を添加することのいずれかは、pEPSCにおける大量の細胞喪失および多能性ファクターのダウンレギュレーションをもたらし(拡張データ
図10a、10g、10hおよび10j)、一方、ヒトEPSCにおいて、TGFβインヒビターSB431542は、栄養膜系統転写因子遺伝子CDX2、ELF5およびGATA2の優先発現を有する迅速な細胞分化を誘導した(拡張データ
図10b、10iおよび10k)。比較的低い濃度の外因性アクチビンA(5.0ng/ml)では、hEPSCは、胚の中内胚葉系統分化へのより強い傾向を示し(拡張データ
図10l)、さらなるNANOS3-tdTomato
+ PGCLCを生成した(拡張データ
図10m~n)。CHIR99021およびビタミンCをpEPSCMから除去することは、多能性遺伝子発現に影響しなかったが、単一細胞由来のコロニーの数を低減し(拡張データ
図10aおよび10h)、一方、高いCHIR99021濃度(3.0μM)は、ヒトまたはナイーブ細胞におけるものに類似して、ブタとヒトEPSCの両方の分化を誘導した(拡張データ
図10a、10hおよび10j)。[30、47]JNKおよびBRAF阻害は、培養効率を改善し得るが、必須ではなかった(拡張データ
図10h~i)。hEPSCにおいて、CHIR99021およびVcについての要件は、pEPSCと類似した(拡張データ
図10a~bおよび10h~I)。マウスナイーブ型ESCの誘導は、1.0□M Mek1/2インヒビターPD0325901を低減したが[26]、この濃度のPD0325901は、pEPSC培養条件についてのスクリーニングにおいてブタ細胞に有害であった(拡張データ
図2b~2f)。この知見と一致して、0.1μM PD0325901でさえ、連続継代におけるコロニー形成により測定された、pEPSC生存を減少した(拡張データ10h)。ブタおよびヒトEPSC培養条件の全詳細は、方法に含まれる。
【0097】
5.7 分化
hEPSCの栄養膜細胞への分化は、CDX2-Venusレポーター(CDX2座位の3’UTRに挿入されたT2A-Venus)の発現により追跡された(拡張データ
図11a)。SB431542によるTGFβの阻害は、CDX2-Venus
+であるCDX2レポーター細胞の約70%を生じ(
図4a)、一方、レポーター細胞は、FGFにおいて、または5iナイーブ型ESC条件下で培養された場合、本質的に、CDX2-Venus
+細胞は検出されなかった。CDX2、GATA3、ELF5、KRT7、TFAP2C、PGF、HAND1およびCGAなどの栄養膜関連遺伝子の発現は、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCの分化を迅速に増大させたが、H1-ESCまたはH1-5iナイーブ型細胞の分化を増大させなかった(
図4b)。ヒトESCの推定栄養膜への分化を促進する、BMP4の添加は、[48]H1-ESCまたはH1-5iナイーブ型ESCにおけるものより、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCにおいてずっと高いレベルで栄養膜遺伝子の発現を誘導した(拡張データ
図11b)。並行してBMP4を活性化しながら、FGFおよびTGFβシグナル伝達を阻害することは、FGF-培養した(プライム型)ヒトESCにおいて栄養膜分化を有効に誘導することが報告された。[49~50]これらの条件下で、栄養膜遺伝子、特に、後期栄養膜遺伝子GCM1、CGAおよびCGBの発現は、H1-ESCにおいてより、H1-EPSCにおいて依然としてずっと高く、一方、ナイーブ型5i hESCは、栄養膜分化を示さなかった(拡張データ
図11c)。網羅的遺伝子発現解析は、TGFβシグナル伝達阻害下で、H1-EPSCおよびiPSC-EPSCは、H1-ESCと異なる分化トラジェクトリーが続き(
図4c)、EPSCから分化した細胞において、(1)分化の2~4日目のBMP4;(2)合胞体栄養細胞への栄養膜細胞層融合を促進する、ヒト内因性レトロウイルスによりコードされる殻タンパク質シンシチン-1(ERVW-1)およびシンシチン-2(ERVFRD-1)の遺伝子;(3)栄養膜細胞において発現され、正常な胎盤発生に必須である、母性発現された遺伝子p57(CDKN1Cによりコードされる)[51~52];(4)免疫細胞活性を調節するCD274(PD-L1またはB7-H1をコードする);ならびに(5)ヒト栄養膜幹細胞(hTSC)
53において重要である、EGFRを含む、重要な栄養膜発生または機能遺伝子は、高度に発現されたが、H1-ESCから分化した細胞ではこれらの遺伝子は高度に発現されていなかったことを示した(拡張データ
図11dおよび補足表6)。
【0098】
TGFβ阻害による分化したhEPSCの同定をさらに推測するために、本発明者らは、初代ヒト栄養膜(PHT)およびヒト胎盤組織を含む、外部参照データを用いた、H1-EPSC、iPSC-EPSCまたはH1-ESCから分化した細胞のトランスクリプトームのピアソン相関係数解析を行い[50]、hEPSCおよびPHTから分化した細胞と胎盤の間の類似性を再度明らかにした(拡張データ
図11e)。TGFβ阻害によるH1-EPSCから分化した細胞は、ヒト栄養膜特異的miRNA(C19MC miRNA:hsa-miR-525-3p、hsa-miR-526b-3p、hsa-miR-517-5p、およびhsa-miR-517b-3p)を発現し[54](拡張データ
図11f~g)、ELF5座位でのDNA脱メチル化を示し[55、56](拡張データ
図11h)、多量の胎盤ホルモンを生成した(拡張データ
図11i~j)。
【0099】
hEPSC(ESCで変換されたEPSCおよびiPSC-EPSC)が、ヒト栄養膜幹細胞(hTSC)条件[53]下で、低い細胞密度(2,000個の細胞/3.5cmのディッシュ)で培養されたとき、TSC形態を有するコロニーが、7~9日後に形成した(
図4d)。これらのコロニーが、拾い上げられ、安定な細胞に、hTSC条件下で最大30%の株の確立効率で拡大された(
図4d)。他方、hTSC株は、これらが、プライム型またはナイーブ型ESC条件下で培養されたかどうかに関わらず、ヒトH1またはM1 ESCから確立されなかった。hEPSCからもたらされたTSC様細胞(本研究において、hTSCとして言及される)は、栄養膜転写制御因子:GATA2、GATA3およびTFAP2Cを発現したが、多能性遺伝子をダウンレギュレーションした(
図4eおよび拡張データ
図12a)。栄養膜へのヒトEPSC分化中の遺伝子発現変化と比較して、hEPSCからもたらされたhTSCは、TGFβ阻害下で4~6日目の分化したヒトEPSCの強化トランスクリプトーム特性を有していた(拡張データ
図12b)。公開されたプロトコールに従い、[53]hTSCは、多核合胞体栄養細胞(ST)とHLA-G
+絨毛外栄養膜(EVT)の両方に分化した(
図4f~4g、および拡張データ
図12c~12h)。一度免疫不全マウスに注入されると、hTSCは、病変を形成し、これは、栄養膜マーカーSDC1およびKRT7について陽性に染色された細胞を含有した(
図4h、および拡張データ
図12i)。加えて、高レベルのhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、注射したhTSCから病変を形成しているマウスの血液において検出されたが、ビークル対照を注射したマウスにおいて検出されなかった(拡張データ
図12j)。ブタとヒトEPSCの両方が、PGF、TFAP2C、EGFR、SDC1およびITGA5などの高レベルの胎盤発生関連遺伝子を発現しなかった(拡張データ
図8d~e)が、両方の細胞が、これらの座位で高いH3K4me3を有し(拡張データ
図13a)、これは、EPSCの栄養膜効力を明確に支持する。ヒトとブタEPSCの間での分子類似性と一致し、ヒトTSC条件下で、安定なTSC様株はまた、ブタEPSC
Emb(本明細書においてpTSCとして言及される、拡張データ
図13b)からもたらされ得る。pTSCは、栄養膜遺伝子を発現し、病変を形成し、これは、免疫不全マウスにおいてSDC1およびKRT7について陽性に染色された細胞を含有した(拡張データ
図13c~13f)。ブタ着床前の胚に導入されたとき、pTSCの子孫は、栄養外胚葉に局在化され、GATA3を発現した(拡張データ
図13g)。それ故、これらの結果は、ヒトおよびブタEPSCが、栄養膜系統を包含する拡大した分化ポテンシャルを有するという説得力のある証拠をもたらす。
【0100】
マウス、ブタおよびヒトのEPSCの誘導および維持の鍵となる機序の1つは、XAV939などの小分子インヒビターを使用した、PARPファミリーメンバーTNKS1/2のポリ(ADP-リボシル)化活性を阻害することである。[57、58]ヒト細胞において、タンパク質におけるポリ(ADP-リボース)は、ポリ(ADP-リボース)糖加水分解酵素(PARG)およびADP-リボシル加水分解酵素3(ARH3)により除去される。[59]マウスにおけるParp1/2およびTNKS1/2の遺伝子不活性化は、栄養膜表現型を生じ、[60]一方、Pargの不活性化は、機能的栄養外胚葉およびTSCの消失を導いた。[61]PARGは、これが、栄養膜をもたらすためのhEPSC発生ポテンシャルと何らかの関連があるかどうかを試験される。hEPSCにおいて、PARG欠乏は、EPSC培養物において注目すべき変化を引き起こさないように思われたが、栄養膜分化に不利に影響し(拡張データ
図14a~d)、これは、マウスからヒトへのEPSCおよび栄養膜発生についての進化的に保存された機序を示し得る。
【0101】
本明細書に記載される本主題は、以下の非限定的実施例により、より具体的に説明され、変更およびバリエーションが、本明細書の後に請求される本開示の範囲および精神から逸脱することなく、そこになされ得ることは理解される。本開示がなぜうまくいくのかについての様々な理論が、限定を意図したものではないことも理解される。
【実施例】
【0102】
6.実施例
6.1 ヒトESCを用いた実施の倫理規定
ヒトESCおよびヒト細胞を使用する実験は、Wellcome Trust Sanger Institute、Cambridge UKのHMDMCにより承認された。ブタ胚を使用した実験は、Niedersaechsisches Landesamt fuer Verbraucherschutz und Lebensmittelsicherheit、LAVES、Oldenburg、ドイツにより承認された。マウステラトーマ実験は、英国内務省の規則およびAnimals(Scientific Procedures)Act 1986(ライセンス番号80/2552)に従い行い、Animal Welfare and Ethical Review Body of the Wellcome Genome Campus、およびCommittee on the Use of Live Animals in Teaching and Research、The University of Hong Kong(CULATR、HKU)により承認された。本研究の終わりに、マウスを、指定される英国内務省の規則に従い、頸部の脱臼により安楽死させた。
【0103】
6.2 ブタおよびヒトEPSCの培養
ブタおよびヒトEPSC培養物を、STOフィーダー上で日常的に維持した。STO細胞を解凍し、マイトマイシンCにより不活性化したSTO細胞を0.1%ゼラチン化プレートに密度約1.1×104個の細胞/cm2で蒔くことにより、STOフィーダープレートを継代の3~4日前に調製した。ブタ/ヒトEPSC細胞を、STOフィーダー層上で維持し、簡単なPBS洗浄、続いて、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を用いた3~5分間の処置により、3~5日毎に酵素的に継代した。細胞を分離させ、M10培地中で遠心分離した(300g×5分間)。M10:ノックアウトDMEM(Gibco、カタログ番号10829-018)、10%FBS(Gibco、カタログ番号10270)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140050)および1× NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)。上清を除去後、ブタ/ヒトEPSCを、5μM ROCKインヒビターY-27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したpEPSCM/hEPSCMにおいて再懸濁し、播種した。5%FBS(Gibco、カタログ番号10270)および10%ノックアウト血清代替物(KSR)(Gibco、カタログ番号10828028)を、それぞれ、pEPSCMおよびhEPSCMに加えて、細胞生存を改善させた。12~24時間後、培地をpEPSCM/hEPSCMのみに切り替えた。pEPSCMとhEPSCMの両方が、N2B27ベースの培地であった。N2B27基本培地(500ml)を、以下の成分:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)482.5ml、N2栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17502048)2.5ml、B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)5ml、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)5ml、および1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)5ml、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)の包含により、調製した。pEPSCM(500ml)を、以下の小分子およびサイトカイン:0.2μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、1μM WH-4-023(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号5413)、2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)または2.5μM IWR-1(TOCRIS、カタログ番号3532)、50μg/mlビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10ng/ml LIF(Stem Cell Institute、University of Cambridge. SCI)および20ng/mlアクチビン(SCI)をN2B27基本培地500mlに加えることにより、生成した。hEPSCM(500ml)を、以下の成分:1.0μM CHIR99021(GSK3インヒビター、TOCRIS、カタログ番号4423)、0.5μM A-419259(SRCインヒビター、TOCRIS、カタログ番号3914)、2.5μM XAV939(Sigma、カタログ番号X3004)、50μg/mlビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)、10ng/ml LIF(SCI)をN2B27基本培地500mlに加えることにより、生成した。WH-4-023およびA419259両方が、SRCファミリーキナーゼ(SFK)を標的化するが、WH-4-023およびA419259は、それぞれ、ブタおよびヒトEPSCにとって好ましかった。ブタとヒトEPSCの両方が、改善した増殖のためCHIR99021を必要とする。マウスES細胞培養のため使用した高濃度のCHIR99021(例えば、3.0μM)は、ブタおよびヒトEPSC分化を誘導する。ブタおよびヒトEPSC培養のためのCHIR99021の濃度は、それぞれ、0.2μMおよび1.0μMである。ヒトEPSC培養条件は、0.3%FBSを含有しない。0.25μM SB590885(BRAFインヒビター、R&D、カタログ番号2650)および2.0μM SP600125(JNKインヒビター、TOCRIS、カタログ番号1496)を含めて、ブタおよびヒトEPSC培養を改善したが、これらは、ブタおよびヒトEPSCの日常的維持に必須ではなかった。本明細書における全ての細胞培養を、別段指定されない限り、37℃および5%CO2の条件下で行った。
【0104】
6.3 PFF(ブタ胎児線維芽細胞)のiPSCへのリプログラミング
ドイツ在来種[1]および中国TAIHU OCT4-TD-tomato[2]ブタ胎児線維芽細胞(PFF)を、ゼラチン化15cm組織培養プレートに蒔き、M20培地において培養した。これらを、0.25%トリプシン/EDTA溶液(Gibco、カタログ番号25500-054)を用いてトリプシン処理し、エレクトロポレーションのため、80%コンフルエンスで回収した。M20:ノックアウトDMEM(Gibco、カタログ番号10829-018)、20%FB S(Gibco、カタログ番号10270)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)および1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)。製造元のプロトコール(NHDF Nucleofector(登録商標)キット、カタログ番号VPD-1001、プログラムU-20)に従い、Amaxa Nucleofector machine (Lonza)を使用して、遺伝子導入を行った。piggyBac転位を使用して、リプログラミングファクターの安定な組込みを達成した。リプログラミングファクターの発現は、tetO2テトラサイクリン/ドキシサイクリン誘導性プロモーターの転写制御下であった。PFF150000000個およびDNA 6.0μg(PB-TRE-pOSCK、ブタOCT4、SOX2、cMYCおよびKLF4 2.0μg;PB-TRE-pNhL 1.0μg、PB-TRE-hRL:ヒトRARGおよびLRH1、PB-EF1a-トランスポサーゼ1.0μgならびにPB-EF1a-rTTA 1.0μg)を、それぞれのエレクトロポレーション反応において使用した。PB-TRE-pOSCK:2A配列により連結したブタOCT4のcDNA、SOX2、cMYCおよびKLF4を、tetO2プロモーターからの単一転写物[3]として発現させた。PB-TRE-pNhLは、2A配列を用いて連結した、ブタNANOGおよびヒトLIN28のcDNAを含有する[3]。PB-TRE-RLは、2Aにより連結したヒトRARGおよびLRH1 cDNAを有する[4]。EF1aプロモーターを利用して、PBトランスポサーゼ発現をもたらした。リバーステトラサイクリンにより調整したトランス活性化因子(rtTA)を発現させて、Dox添加の際にリプログラミングファクターの発現を誘導した。遺伝子導入後、PFF200000個を、マイトマイシンにより不活性化したSTOフィーダー上、LIF(10ng/ml、SCI)およびビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)を添加したM15中、10cmディッシュにおいて播種した。M15:ノックアウトDMEM(Gibco、カタログ番号10829-018)、15%FBS(Gibco、カタログ番号10270)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)および0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)。ドキシサイクリン(Dox)(1.0μg/mL、Sigma、カタログ番号D9891)を、リプログラミングファクター発現の導入のため加えた。培養液を、1日置きに交換した。導入遺伝子依存性iPSC生成のため、コロニーを、12日目にDox、50μg/mlビタミンCおよび10ng/ml bFGF(SCI)を添加したM15に拾い上げ、同じ培地において維持した。pEPSCMにおいて導入遺伝子非依存性iPSC株を直接確立するため、Doxを、9日目に除去し、培地を、pEPSCMに直ちに切り替えた。Dox非依存性iPSCコロニーを、14~15日目に、5μM ROCKインヒビターY27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したpEPSCMに拾い上げた。Y26537を、培養液から24時間後に除去し、pEPSCMを、その後毎日、新たにした。
【0105】
6.4 ブタEPSC培養条件のスクリーニング
Dox依存性ブタiPSCを、0.25%トリプシン/EDTA溶液(Gibco、カタログ番号25500-054)において分離させ、24ウェルのSTOフィーダープレートにおいて、密度1ウェル当たり細胞1×104個で播種した。細胞を、Dox(Sigma、カタログ番号D9891)、ビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)および10ng/ml bFGF(SCI)を添加したM15において2日間培養し、その後、培養液を、示した小分子およびサイトカイン(補足表1)を添加した培地に切り替えた。M15およびN2B27培地:上記を参照。AlbumMax培地:DMEM/F12(Gibco、カタログ番号21331-020)、20%AlbumMax II(Gibco、カタログ番号11021-037)、25mg/mLヒトインスリン(Sigma、カタログ番号91077C)、2×B27栄養補助剤、100μg/mL IGFII(R&D、カタログ番号292-G2-250)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)および0.1mM 2メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)。20%KSR培地:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)、20%ノックアウト血清代替物(KSR)(Gibco、カタログ番号10828-028)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)および0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)。以下の終濃度:CHIR99021(0.2または3μM、TOCRIS、カタログ番号4423)、PD0325901(0.1μMおよび1μM、TOCRIS、カタログ番号22854192);WH-4-023(4μM、TOCRIS、カタログ番号5413)、PKCインヒビターGo6983(5μM TOCRIS、カタログ番号2285);SB203580(p38インヒビター、10μM TOCRIS、カタログ番号1202);SP600125(JNKインヒビター、4μM TOCRIS、カタログ番号1496);ビタミンC(50μg/ml、Sigma、カタログ番号49752-100G)、SB590885(BRAFインヒビター、0.25μM、R&D、カタログ番号2650)、XAV939(2.5μM、カタログ番号X3004)、RO4929097(Notchシグナル伝達インヒビター、10μM、Selleckchem、カタログ番号S1575)、LDN193189(BMPインヒビター、0.1μM、Sigma、カタログ番号SML0559)、Y27632(ROCKi、5μM、Tocris、カタログ番号1254)、ベルテポルフィン(YAPインヒビター、10μM、Tocris、カタログ番号5305)、LIF(10ng/ml、SCI)、BMP4(10ng/ml、R&D、カタログ番号5020-BP)、SCF(50ng/ml、R&D、カタログ番号255-SC-010)、EGF(50ng/ml、R&D、カタログ番号236-EG-200)、TGFβ(10ng/ml、カタログ番号7754-BH-005)、bFGF(10ng/ml、SCI)、アクチビン(20ng/ml、SCI)で示す通り、小分子およびサイトカインを添加した。培地を毎日新たにし、生き残った細胞を、6日目に継代した。継代の最初の24時間において、5μM ROCKi Y27632(Tocris、カタログ番号1254)を、培地に添加し、24時間後に除去した。4日間の成長後、生存したコロニーを、内因性ブタOCT4およびNANOG発現を調べるためのRT-qPCR解析のため集めた。
【0106】
6.5 メスのブタの過排卵
思春期前後のドイツ在来種の若いメスのブタ(月齢およそ7~9、体重90~120kg)が、胚ドナーとして役立った。若いメスのブタを、5ml/日/若いメスのブタのアルトレノゲスト(Regumate(登録商標)、4mg/ml、MSD Animal Health、ドイツ)を13日間与えることにより同調させた。続いて、アルトレノゲスト給餌の最終日に、PMSG(Intergonan(登録商標)240I.E./ml、MSD Animal Health、ドイツ)1500IUを注射した[5]。76時間後のhCG(Ovogest(登録商標)300I.E./ml、MSD Animal Health、ドイツ)500IUの筋内注射により、排卵を誘発した。
【0107】
6.6 メスのブタの精子注入および胚回収
ドイツの在来種の成熟オスから、ファントムを使用して、[1]手袋を用いた手法を介して、精液を集め、直ちにAndrohep□Plus溶液(Minitube、Tiefenbach、ドイツ)において希釈した。hCG投与の40時間および48時間後に、メスのブタを、2回人工受精させた。第二の精子注入の5日後、メスのブタを屠殺し、子宮を切除し、1%ウシ新生児血清(NBCS、Gibco(商標)、カタログ番号16010159)を添加したダルベッコPBS培地(AppliChem、カタログ番号A0964)を流した。集めた桑実胚を、注射実験のため直接使用するか、または胚盤胞期までPZM-3培地において一晩培養し、ICM単離のため使用した(PZM-3培地:108mM塩化ナトリウム(NaCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号S5886)、10mM塩化カリウム(KCl、Sigma-Aldrich、P-5405)、0.35mMリン酸二水素カリウム(KH2PO4、SigmaAldrich、カタログ番号P5655)、0.40mM硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4×7H2O、Sigma-Aldrich、カタログ番号M5921)、25.07mM重炭酸ナトリウム(NaHCO3、Sigma-Aldrich、S4019)、2mM L(+)乳酸カルシウム塩ペンタ水和物(C6H10CaO6×5H2O、Roth、カタログ番号4071)、0.2mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2256)、1mM L-グルタミン(AppliChem、カタログ番号A3704)、0.05mg/mlゲンタマイシン硫酸塩(Sigma-Aldrich、カタログ番号G3632)、0.55mg/mlヒポタウリン(Sigma-Aldrich、カタログ番号H1384)、20μl/ml BMEアミノ酸溶液(Sigma-Aldrich、カタログ番号B6766)、10μl/ml MEM非必須アミノ酸溶液(Sigma-Aldrich、カタログ番号M7145)および3mg/mlウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich、A7030))。
【0108】
6.7 卵母細胞収集、インビトロでの成熟(IVM)および単為生殖胚の生成
思春期前の若いメスのブタ由来のブタ卵巣を、30℃で地元の畜殺場から輸送し、0.06mg/mlペニシリンGカリウム塩(AppliChem、カタログ番号A1837)および0.131mg/ml硫酸ストレプトマイシン(AppliChem、カタログ番号A1852)を含有する0.9%塩化ナトリウム(NaCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号S5886)を用いて3回洗浄した。直径2~6mmの卵胞から18ゲージのニードルを用いて卵母細胞を吸引し、0.33mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2256)、5.56mM D(+)-グルコース一水和物(Roth、カタログ番号6887)、0.9mM塩化カルシウム二水和物(AppliChem、カタログ番号A3587)、50mg/ml硫酸ストレプトマイシン(AppliChem、カタログ番号A1852)、6mg/mlペニシリンGカリウム塩(AppliChem、カタログ番号A1837)および1%ウシ新生児血清(NBCS、Gibco(商標)、カタログ番号16010159)を添加したダルベッコPBS培地(AppliChem、カタログ番号A0964)において洗浄した。複数の層のコンパクトになった卵丘を有する卵丘卵母細胞複合体を、60μg/mlペニシリンGカリウム塩(AppliChem、カタログ番号A1837)、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン(AppliChem、カタログ番号A1852)、2.5mM L-グルタミン(AppliChem、カタログ番号A3704)、10%ウシ胎児血清(FCS、Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)、50ng/mlマウス上皮成長因子(EGF、SigmaAldrich、カタログ番号E4127)、10I.E./ml 妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG、Intergonan(登録商標)240I.E./ml、MSD Animal Health、ドイツ)、10I.E./mlヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG、Ovogest(登録商標)300I.E./ml、MSD Animal Health、ドイツ)、100ng/mlヒト組み換えインスリン様成長因子1(IGF1、R&D Systems、カタログ番号291-G1)、5ng/ml組み換えヒトFGF-basic(bFGF、Peprotech、カタログ番号100-18B)を添加した1:1のDMEM高グルコース(Biowest、カタログ番号L0101-500)およびハムF-12培地(Merck、カタログ番号F0815)において、40時間、5%CO2を含む加湿空気中、38.5℃でインビトロで成熟させた。
【0109】
6.8 単為生殖胚発生の活性化
成熟後、卵母細胞から、114mM塩化ナトリウム(NaCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号S5886)、3.2mM塩化カリウム (KCl、Sigma-Aldrich、P-5405)、2mM塩化カルシウム二水和物(CaCl2×2H2O;AppliChem、カタログ番号A3587)、0.4mMナトリウム二水素一水和物(NaH2PO4×H2O、Merck、カタログ番号106346)、0.5mM 塩化マグネシウムヘキサ水和物(MgCl2×6H2O、Roth、カタログ番号HN03.2)、2mM炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、Roth、カタログ番号HN01.2)、10mM HEPES(Roth、カタログ番号9105.3)、10mMナトリウムDL-乳酸溶液(60%)(SigmaAldrich、カタログ番号L1375)、100U/LペニシリンGカリウム塩(AppliChem、カタログ番号A1837)、50mg/L硫酸ストレプトマイシン(AppliChem、カタログ番号A1852)、0.25mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2256)、57mMスクロース(Merck、カタログ番号107653)および0.4%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich、カタログ番号A9647)を含むTL-Hepes321+Ca2+培地中の0.1%ヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrich、カタログ番号H3506)との5分間のインキュベーションにより、卵丘を取り除いた。TL-Hepes321+Ca2+培地で洗浄後、目に見える第一の極体を有する卵母細胞を、SOR活性化培地[182.2g/molソルビトール(Sigma-Aldrich、カタログ番号S1876)、158.2g/mol酢酸カルシウム水和物(Sigma-Aldrich、カタログ番号C4705)、214.5g/mol酢酸マグネシウムテトラ水和物(Sigma-Aldrich、カタログ番号M5661)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich、カタログ番号A9647)]において、45μ秒間の1回パルスに曝露した。その後、卵母細胞を、3時間、PZM-3培地中の2mM 6ジメチルアミノプリン(6-DMAP、Sigma-Aldrich、カタログ番号D2629)においてインキュベーションした。
【0110】
6.9 ブタ着床前の胚のインビトロでの培養
活性化後、卵母細胞を、PZM-3培地において、39℃、5%CO2および5%O2中で6日間培養した。ICMの単離のため、6日目のブタ胚盤胞を、1000U/ml ESGRO(登録商標)組み換えマウスLIFタンパク質(Millipore、カタログ番号ESG1107)を添加したDMEM高グルコース(Biowest、カタログ番号L0101-500)、および2mM L-グルタミン(AppliChem、カタログ番号A3704)、15%ウシ胎児血清(FCS、Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Corning、カタログ番号PS-B)、1%MEM非必須アミノ酸溶液(Corning、カタログ番号NEAA-B)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、カタログ番号M7522)含有D15培地において、さらに24時間培養した。
【0111】
6.10 ICMのブタ単為生殖およびインビボで集めた胚盤胞からの単離
7日目のブタ単為生殖胚盤胞および5日目のインビボでもたらした胚盤胞を、ブタPSC株の確立のため使用した。胚盤胞を、114mM塩化ナトリウム(NaCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号S5886)、3.2mM塩化カリウム(KCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号P-5405)、2mM塩化カルシウム二水和物(CaCl2×2H2O、AppliChem、カタログ番号A3587)、0.4mMナトリウム二リン酸水素一水和物(NaH2PO4×H2O、Merck、カタログ番号106346)、0.5mM塩化マグネシウムヘキサ水和物(MgCl2×6H2O、Roth、カタログ番号HN03.2)、2mM重炭酸ナトリウム(NaHCO3、Sigma-Aldrich、カタログ番号S4019)、10mM HEPES(Roth、カタログ番号9105.3)、10mMナトリウムDL-乳酸溶液(60%)(Sigma-Aldrich、カタログ番号L1375)、100U/LペニシリンGカリウム塩BioChemica(AppliChem、カタログ番号A1837)、50mg/L硫酸ストレプトマイシン BioChemica(AppliChem、カタログ番号A1852)、0.25mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2256)、32mMスクロース(Merck、カタログ番号107653)および0.4%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich、カタログ番号A9647)を含むTLHepes296+Ca2+培地において、2回洗浄した。ICMを、TL-Hepes296+Ca2培地の滴100μlにおいて、眼科用ハサミ(Bausch & Lomb GmbH、ドイツ)を使用して、栄養外胚葉から分離した。最初の成長を観察することができるまで、単離したICMを、マイトマイシンCで処理したSTO細胞の単層上で、10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したpEPSCM培地において7日間培養した。続いて、ROCKiを含まないpEPSCM培地を、さらなる培養のため使用した。培地を、毎日交換した。蒔いて12~14日後、ICMコロニーを、細く引いたガラスキャピラリーピペットを使用して、STOフィーダーから機械的に取り出し、新鮮なフィーダー上に再播種した。コロニーの成長を毎日評価し、およそ3日後の細胞が、明確なブタEPSCEmbコロニーを形成し始めた。これらの細胞を、0.05%トリプシン-EDTA(GE Healthcare、カタログ番号L11-003)を使用し、3~4日毎にサブ培養した。
【0112】
6.11 インビトロキメラアッセイ
もたらされた細胞株の発生能を調べるために、mCherry発現で標識したブタEPSCEmbおよびEPSCiPSを、単為生殖胚盤胞に注入し、キメラ化の発生率を評価した。幹細胞を、0.05%トリプシン-EDTA(GE Healthcare、カタログ番号L11-003)を用いてフィーダーから剥離し、ウシ胎児血清(FBS、Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)において再懸濁した。遠心分離後、幹細胞を再懸濁し、室温で、1000U/ml ESGRO(登録商標)組み換えマウスLIFタンパク質(Millipore、カタログ番号ESG1107)および10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したD15培地において保存した。6~8細胞を含有する小凝集塊を、4日齢または6日齢のブタ単為生殖胚に、圧力駆動のマイクロマニピュレーター(Zeiss、Eppendorf)を用いて、10%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)を添加したOpti-MEM(登録商標)I(1×)+GlutamMAX(商標)-I減少血清培地(Gibco(登録商標)、カタログ番号51985-026)において注入した。注入後、胚を、1000U/ml ESGRO(登録商標)組み換えマウスLIFタンパク質(Millipore、カタログ番号ESG1107)および10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したD15培地において、39℃、5%CO2および5%O2において24時間(6日目の胚盤胞のため)または48時間(4日目の胚のため)培養した。上記の培地において培養した4日目または6日目の注入していないブタ単為生殖胚を、胚発生の対照として使用した。
【0113】
6.12 インビボキメラアッセイ
過排卵、精子注入および胚収集の手法を、上で記載した。若いメスのブタ8匹から収集した5日目のブタ桑実胚を、注射前、10%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)を添加したOpti-MEM(登録商標)I(1×)+GlutamMAX(商標)-I減少血清培地(Gibco(登録商標)、カタログ番号51985-026)において、サーモスタットで調整したインキュベーターにおいて37℃で保存した。mCherry+コロニーを拾い上げた後2~8継代のブタEPSC株を、胚注入のため使用した。ブタEPSCを、pEPSCM培地において、有糸分裂的に不活性化したSTOフィーダーまたはMEF細胞上のいずれかで培養した。注入の2日前、培地を、WH-4-023(SRCi、TOCRIS、カタログ番号5413)を含まないpEPSCM培地に切り替えた。注入の前日、培地を、WH-4-023を含まず、ヘパリン(5ng/ml、R&D、カタログ番号9041-08-1)および10ng/ml bFGF(SCI)を追加で添加したpEPSCM培地で置き換えた。注入の4時間前に、培地を、WH-4-023を含まない、5ng/mlヘパリン、10ng/ml bFGF(SCI-Stem Cell Institute、the University of Cambridge)、10ng/ml Lif(SCI)、5μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)、20ng/mlヒト組み換えアクチビンA(StemCell Technologies、カタログ番号78001)および10%ウシ胎児血清(FCS、Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)を添加したpEPSCM培地で置き換えた。注入のため、EPSCを、0.05%トリプシン-EDTA(GE Healthcare、カタログ番号L11-003)を用いて培養ディッシュから剥離し、注意深く再懸濁し、50μg/mlビタミンC(Sigma、カタログ番号49752)、0.1μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、20ng/mlヒト組み換えアクチビンA(StemCell Technologies、カタログ番号78001)、10ng/ml bFGF(SCI)、10ng/ml Lif(SCI)、5ng/mlヘパリンおよび5μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したM15培地の滴500μlに蒔いた。ブタの胚を1回洗浄し、20ng/mlヒト組み換えアクチビンA(StemCell Technologies、カタログ番号78001)、10ng/ml bFGF(SCI)、5μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)および10%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)を添加したOpti-MEM(登録商標)I(1×)+GlutamMAX(商標)-I減少血清培地(Gibco(登録商標)、カタログ番号51985026)の滴500μlに蒔いた。注入滴を、マイクロインジェクションシステム(Transferman and CellTram Varioマイクロマニピュレーター、Eppendorf)を備えた位相差倒立顕微鏡(Axiovert 35M、Carl Zeiss、Oberkochen、ドイツ)下で注入プレートに蒔き、鉱油でカバーした。およそ6~8細胞を含有する幹細胞凝集塊を、ブタ桑実胚の卵割球間に注入した。その後、胚を、50μg/mlビタミンC(Sigma-Aldrich、カタログ番号49752)、0.1μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、20ng/mlヒト組み換えアクチビンA (StemCell Technologies、カタログ番号78001)、10ng/ml bFGF(SCI)、10ng/ml Lif (SCI)、5ng/mlヘパリンおよび5μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したM15培地において2回洗浄し、胚移入まで4時間インキュベートするか、または一晩培養し、次いで、共焦点顕微鏡解析のため固定した。
【0114】
6.13 インビトロで培養したブタ胚盤胞のキメラ化の評価
ブタキメラ胚盤胞を、3.7%ホルムアルデヒド溶液(Honeywell Riedel-de Haaen(商標)、カタログ番号1635)において、15分間、室温で固定した。その後、胚を、0.2μM SiR-DNA(Spirochrome、スイス)と30分間、37℃でインキュベーションして、核を視覚化した。胚盤胞におけるブタ幹細胞の局在化および増殖を、共焦点スクリーニング顕微鏡(LSM 510、Zeiss)を使用して解析した。残っている胚を、0.5%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Corning、カタログ番号PS-B)を添加したDPBSにおいて、4℃でさらなる解析のため保存した。
【0115】
6.14 凍結切片および免疫蛍光染色
25~27日目のブタ胎児を、妊娠したメスのブタから取り出し、頭と尾の軸に沿って二分割した。第一の半分の胎児を、4%パラホルムアルデヒド(Sigma、カタログ番号P6148)において、4℃で一晩固定し、その後、凍結保存のため、30%スクロース溶液(Sigma、カタログ番号0389)に移した。第二の半分を、FACSおよび遺伝子型同定解析の対象にした。固定した半分の胎児を、OCT化合物(CellPath、カタログ番号15212776)で包埋し、ドライアイス上で凍結した。切片(厚さ10μm)を、Leicaクリオスタット上で切断した。切片を、0.1%トリトン-100(Sigma、カタログ番号T8787)で30分間透過処理し、次いで、30分間、5%ロバ血清(Sigma、カタログ番号D9663)および1%BSA(Sigma、カタログ番号A2153)でブロッキングした。mCherryおよび他の抗体の共免疫蛍光を行い、mCherryおよび宿主系統マーカーを発現している注入したドナーブタEPSCの共局在化を調べた。PGCLC EBの凍結切片の免疫蛍光染色のため、EBを、4%PFAにおいて約4時間または一晩、4℃で固定し、凍結切片のためOCT化合物において包埋した。それぞれの切片の厚さは、10μmであった。切片を、まず、0.1%トリトンで透過処理し、5%ロバ血清プラス1%BSAを用いてブロッキングし、続いて、1次抗体と1~2時間、室温で、または一晩冷却室でインキュベーションした。蛍光コンジュゲート2次抗体を使用して、スライドを室温で1時間インキュベーションした。抗体処理後、試料を、10μg/ml DAPI(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号62248)で10分間、対比染色して、核をマーキングし、蛍光顕微鏡下で観察した。抗体を、補足表9に列挙する。
【0116】
6.15 切開したブタキメラ組織およびPGCLCのためのEBのフローサイトメトリー
25~27日目のキメラにおけるドナーmCherry+ブタEPSCの寄与を解析するために、半分の胎児を、いくつかの身体の部分(頭部、胴体および尾部)を表す小片に切開した。切開した組織および胎盤を、1.0mg/mlコラゲナーゼIV(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17104019)で1~3時間、37℃、シェーカー上で消化した。ピペットを使用して、組織ブロックに打撃を与え、これらを単一細胞に分離させた。分離した細胞を、35μmのナイロンメッシュ(Corning、カタログ番号352235)を用いて濾過して、組織凝集塊を除去した。遠心分離後、細胞を、製造元のマニュアル(BD Cytofix、カタログ番号554655)に従い固定培地を使用して固定し、洗浄した細胞を、フローサイトメトリーを用いて解析する前、4℃で、0.1%NaN3(Sigma、カタログ番号199931)および5%FBS(Gibco、カタログ番号10270)を添加したPBSにおいて保存した。全ての試料を、BD LSR Fortessa血球計算器を使用し、解析した。561nm(610/20バンドパスフィルター)および488nm(525/50バンドパスフィルター)チャンネルを使用して、mCherryを検出し、自己蛍光を除外した。PGC EBを、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を用いて、37℃で15分間、トリプシン処理し、PerCP-Cy5.5コンジュゲート抗TNAP抗体を用いて染色した。561nm(610/20馬ンドパスフィルター))および488nm(710/50バンドパスフィルター)チャンネルを使用して、NANOS3-H2BmCherry+/TNAP+細胞を検出した。FACSデータを、Flowjoソフトウエアにより解析した。これらの実験において使用した抗体を、補足表9に列挙する。
【0117】
6.16 ブタキメラ胚の遺伝子型同定
ブタ胎児のゲノムDNAを、上記の切開した身体の部分およびDNA Releasyキット(Anachem、カタログ番号LS02)を使用し、FACSのため調製した胎盤の分離させた細胞から抽出した。H2BmCherryのゲノムDNA PCRを利用して、ドナー細胞の存在を検出した。ブタPRDM1座位における領域の増幅は、ゲノムDNAの品質およびPCR対照として役立った。全てのPCRプライマーを、補足表10に列挙する。
【0118】
6.17 ブタEPSCのPGCLCへの分化
転写因子介在性ブタPGCLC導入実験のため、piggyBacベースのPB-TRE-NANOG、PB-TRE-BLIMP1、PB-TRE-TFAP2CおよびPB-CAG-SOX17-GR発現コンストラクトを、ブタNANOS3-2A-H2BmCherryレポーターEPSCemb(K3系統、オス)に、PB-CAGG-rtTA-IRES-ピューロマイシンおよびトランスポサーゼ発現プラスミドと共に共エレクトロポレーションした。プラスミドを有するpEPSCEmbを、0.3μg/mlピューロマイシン(Sigma、カタログ番号P8833)を加え2日間おくことにより、選択した。その後、トランスジェニックNANOG、BLIMP1およびTFAP2Cの発現を、1.0μg/ml Dox(Sigma、カタログ番号D9891)により、示した期間誘導した。SOX17発現プラスミドは、ハイグロマイシン選択カセットを有するので、150μg/mlハイグロマイシン(Gibco、カタログ番号10687010)を使用して、PB-CAG-SOX17-GRを遺伝子導入した細胞を選択した。SOX17タンパク質を、GR(ヒトグルココルチコイド受容体リガンド結合ドメイン)と融合させた。このシステムにより、2μg/mlデキサメタゾン(Dex)(Sigma、カタログ番号D2915)の添加による、SOX17の核移行の誘導が可能になる。前誘導のため、pEPSCEmbを、分離することなく0.1%2型コラゲナーゼ(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17101015)により、STOフィーダー層から検出し、ゼラチン化プレート上、5μM ROCKi Y-27632(Tocris、カタログ番号1254)、20μg/mlアクチビンA(SCI)および1.0μg/ml Doxまたは1.0mg/ml Dexを添加したM15培地に播種した。導入および前分化の12時間後、細胞を、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を使用して集め、PGCLC培地100ml中密度5,000~6,000個の細胞/ウェルで、超低接着U底96ウェルプレート(Corning、カタログ番号7007)に蒔いた。3~4日後、EBを、解析のため集めた。PGCLC培地は、アドバンスドRPMI 1640(GIBCO、カタログ番号12633-12)、1%B27栄養補助剤(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号17504044)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)ならびに以下のサイトカイン:500ng/ml BMP2(SCI)、10ng/mlヒトLIF(SCI)、100ng/ml SCF(R&D、カタログ番号255-SC-010)、50ng/ml EGF(R&D、カタログ番号236-EG-200)および10μM ROCKインヒビター(Y-27632、Tocris、カタログ番号1254)からなる。
【0119】
ヒトPGCLCについて、2つのhEPSC株のPGC分化ポテンシャルを、系列導入法を用いて試験する[6]。ヒト前中胚葉(前ME)を、まず、前ME培地(100ng/mlアクチビンA(SCI)、3μM CHIR99021および10μM ROCKi Y-27632を添加した、アドバンスドRPMI 1640培地、1%B27栄養補助剤、1×NEAAおよび1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン)において12時間誘導した。前MEを、単一細胞にトリプシン処理し、Corning Costar超低接着複数ウェル96ウェルプレート(Corning、カタログ番号7007)に、1ウェル当たり4,000~5,000個の細胞を、ブタPGCLC導入のため使用したPGCLC培地100μlに播種した。細胞凝集を改善するために、全てのPGCLC導入実験において、0.25%(v/v)ポリ-ビニルアルコール(Sigma、カタログ番号341584)を、基本培地において加えた。
【0120】
6.18 ブタおよびヒトEPSCのテラトーマアッセイ
ブタおよびヒトEPSCを、30%マトリゲル(Corning、カタログ番号354230)および5μM RockインヒビターY-27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したPBSにおいて再懸濁した。5×106個のブタまたはヒトEPSCを、8週齢のオスのNSGマウス(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1 Wjl/SzJ、The Jackson Laboratory)の両方の背側側腹部に皮下注射した(1回の注射当たり100μl)。ヒトおよびブタEPSCは、8および10週以内に、目に見えるテラトーマを形成した。テラトーマのサイズが、1.2cm2に達したとき、これらを切開し、一晩、10%リン酸緩衝化ホルマリンにおいて固定し、切片化の前にパラフィンにおいて包埋した。
【0121】
6.19 ブタおよびヒトEPSCのEB形成アッセイ
ブタおよびヒトEPSCを、トリプシン処理し、ゼラチン化6ウェルプレートにおいて、密度4×106個の細胞/ウェルで、前分化のため播種した。20ng/mlアクチビンA(SCI)および5μM RockインヒビターY-27632を添加したM15培地を使用して、再度蒔いた細胞を培養した。翌日、細胞を、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を使用してはがし、超低細胞接着U底96ウェルプレート(Corning、カタログ番号7007)に、M10培地200μl中の密度5,000~6,000個の細胞/ウェルで蒔いた。7~8日間の成長後、EBを、解析のため集めた。0.25%(v/v)ポリ-ビニルアルコール(Sigma、カタログ番号341584)を、細胞凝集を助けるために培地に加えた。
【0122】
6.20 ブタおよびヒトEPSCの遺伝子導入
SRCインヒビターWH-4-023(pEPSCM-SRCi)を含まないpEPSCMは、pEPSC遺伝子導入前に調製する必要がある。pEPSCが、40~50%コンフルエンスに達すると、培地を、pEPSCM-SRCiに切り替え、さらに1日(-2日目)間、細胞を培養した。翌日(-1日目)、5%FBSを、pEPSCM-SRCi培地に加え、細胞を一晩培養した。遺伝子導入の日(0日目)に、ブタEPSCを、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を用いてトリプシン処理し、M10培地を用いた単一細胞に分離した。遠心分離後、1~1.5×106個の細胞を、プラスミドDNA5~6μgを含有するOpti-MEM(Gibco、カタログ番号31985062)100μlにおいて再懸濁した。Amaxa Nucleofectorマシーン(Lonza)を使用して、プログラムA-023を用いてエレクトロポレーションを行った。遺伝子導入後、遺伝子導入した細胞の半分を、薬物耐性STOフィーダー上、10cmディッシュに播種し、5μM ROCKi Y-27632(Tocris、カタログ番号1254)および5%FBSを添加したpEPSCMを使用して、遺伝子導入した細胞を培養した。Y-27632およびFBSを、1日目に培地から除去した。薬物を、2日目からpEPSCM培地に加えて、遺伝子導入したコロニーを選択した。選択のため使用した薬物濃度は、ピューロマイシン(0.3μ/ml、Sigma、カタログ番号P8833);G418(150μg/ml、Gibco、カタログ番号10131027);ハイグロマイシン(150μg/ml、Gibco、カタログ番号10687010)である。3日間の選択後(5日目)、培地を、継続的選択のための薬物を添加したpEPSCM-SRCiに変えた。生存したコロニーを、7~8日目に拾い上げた。遺伝子導入および選択中、培養液は、毎日取り換えるべきである。ヒトEPSC遺伝子導入のため、10%KSRおよび5%FBSをhEPSCMに加えて、翌日の0.05%トリプシン-EDTAを用いた収集前に、hEPSC(70%~80%コンフルエンス)を一晩培養した。M10培地をまた使用して、細胞を分離し、トリプシンを中和した。一旦遠心分離し、プラスミドDNAを含有するPBS溶液300~400μlを使用して、細胞を、密度1ml当たり10000000個の細胞で再懸濁した。細胞/DNA混合物300~400μlを取り、エレクトロポレーション用の0.4cmのエレクトロポレーションキュベット(Gene Pulser Xcell System; Bio-Rad;320 V、500μF、0.4cmキュベット)に加えた。5×105個の遺伝子導入した細胞を、薬物耐性STOフィーダー上、5μM ROCKi Y-27632(Tocris、カタログ番号1254)および10%KSRを添加したhEPSCMを含有する10cmディッシュにおいて蒔いた。Y-27632およびKSRを、1日目の培養物から除去し、ピューロマイシンを、2日目からの選択のため加えた。コロニーを、7~8日目辺りに拾い上げた。上記の方法に従い、選択したブタおよびヒトEPSCコロニーを拡大させた。
【0123】
6.21 ブタおよびヒトEPSC細胞におけるCrispr/Cas9介在性ゲノム編集
EF1a-H2BmCherry-iRES-PuroカセットをブタROSA26座位に標的化するために、Rosa5’および3’相同性アームが隣接するカセットを有する標的化ベクターを、構築した。5’および3’相同性アームを、IDT会社(650bpの5’アーム、Chr13:65756272-65756923;648bpの3’アーム、Chr13:65755620-65756267)から合成した。配列5’CAATGCTAGTGCAGCCCTCATGG-3’を、gRNA/CAS9の標的として設計した。エレクトロポレーション後、ピューロマイシン(0.3μ/ml、Sigma、カタログ番号P8833)を使用して、標的化した細胞を選択した。拾い上げたコロニーの遺伝子型同定解析により、標的化効率が、約25%~30%であることが明らかになった。pEPSCからのpPGCLC分化を調べるために、T2A-H2BmCherry発現カセットを、ブタNANOS3のコード配列のすぐ下流にインフレームでノックインした。相同性アームをまた、IDT会社(699bpの5’アーム、chr2:65275456-65276148;699bpの3’アーム chr2:65274749-65275447)から合成した。終止コドン前の20bp(5’-TCCACTTCTGCCTAAGAGGCTGG-3’)配列を、gRNA/CAS9により標的化して、切断を導入し、相同組み換えを仲介した。G418(150μg/ml、Gibco、カタログ番号10131027)を用いた選択後、ゲノムDNAを、拾い上げたコロニーから抽出し、遺伝子型同定PCRの対象にし、これにより、約25%~30%の比較可能な標的化効率が明らかになった。正しく標的化したクローンの核型解析を行い、使用したクローンにおける正常な核型を確認した。同じストラテジーを利用して、ヒトOCT4-T2A-H2B-VenusおよびCDX2-T2A-H2B-VenusレポーターEPSC株を作製した。ヒトOCT4座位について、相同性アームは、619bpの5’アーム(chr6:31164604-31165222)および636bpの3’アーム(chr6:31163965-31164600)である。gRNA/CAS9標的化配列は、5’TCTCCCATGCATTCAAACTGAGG-3’である。CDX2相同性アームは、478bpの5’アーム(chr13:27963118-27963595)および557bpの3’アーム(chr13:27962558-27963114)である。gRNA/CAS9標的化配列は、5’-CCGTCACCCAGTGACCCACCGGG-3’である。それぞれのエレクトロポレーションのため、プラスミドDNA約5μg:CAS9 1.5μg、gRNA 1.5μg およびドナーベクター2μgを使用した。
【0124】
6.22 ルシフェラーゼアッセイ
TOPflashアッセイのため、2.0×106個の細胞を、TOPflashプラスミド10μgを用いて、遺伝子導入した。pRL-TK(ウミシイタケ)ベクター5μgをまた、標準化のため遺伝子導入した。細胞を、XAV939(WNTi、2.5μM、カタログ番号X3004)を含むか、または含まないpEPSCMおよびhEPSCMにおいて、48時間、24ウェルプレートに1:9で分けた。細胞溶解物を、ルシフェラーゼアッセイのため集めた。ブタEPSCにおけるOct4発現の制御パターンを決定するため、レポーターコンストラクト10μgを、pRL-TK5μgと共に、1.5×106個のpEPSCにエレクトロポレーションした。アッセイを、48時間後に行った。全てのルシフェラーゼアッセイを、Dual-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、カタログ番号E2920)を使用して行った。
【0125】
6.23 定量的リアルタイムPCR解析
トータルRNAを、培養した細胞のためRNeasy Mini Kit(Qiagen、カタログ番号74106)、または選別したNANOS3-mCherry+細胞のためRNeasy Micro Kit(Qiagen、カタログ番号74034)を使用して単離した。RNAを続いて定量し、gDNA WipeOutを用い処理して、ゲノムDNAを除去した。相補性DNA(cDNA)を、QuantiTect Reverse Transcription Kit(Qiagen、カタログ番号 205311)を使用して調製した。RT-qPCRプライマーまたはTaqMan Gene Expression Assays(Life Technologies)を、補足表10および11において列挙する。ABsolute Blue qPCR ROX Mix (ABgene、カタログ番号AB4138B)を、プローブベースのqPCRアッセイのため使用し、SYBR Green ROX qPCR Mastermix(Qiagen、カタログ番号330523)を、プライマーベースのqPCRアッセイのため使用した。全てのqPCR反応を、ABI 7900 HT Sequence Detection System(Life Technologies)上で行った。qPCR解析のため使用した全てのプライマーおよびプローブについての情報を、補足表10および11に提供する。遺伝子発現を、ΔCt法を使用して、GAPDHと比較して決定した。データを、平均およびs.d.として示す。
【0126】
6.24 DMR解析
バイサルファイト処理を、製造元の推奨に従い、EpiTect Bisulfite Kit(Qiagen、カタログ番号59124)を使用して行った。ヒトELF5およびブタOCT4ならびにNANOGプロモーター領域のためのゲノムDNA PCRを、以前に記載されたプライマー対[7~9]を使用して行った。PCR産物を、pGEM-T Easyベクター(Promega、カタログ番号A1360)にクローニングし、両方の末端から配列決定した。無作為に選択したクローンを、それぞれのプロモーターについてのM13フォワードおよびM13リバースプライマーを用いて配列決定した。この解析において使用したプライマーを、補足表10において提供する。
【0127】
6.25 培養した細胞についての免疫染色
KRT7のTFAP2CおよびGATA3を用いた二重染色のため、分化したhEPSCを、4%パラホルムアルデヒド(Sigma、カタログ番号P6148)溶液において固定し、3%ヤギ血清および1%BSAでブロッキングし、マウス抗KRT7抗体と共に、4℃で一晩、インキュベーションした。次いで、細胞を、PBS溶液で洗い、Alexa488コンジュゲートヤギ抗マウスIgG2次抗体(Abcam、カタログ番号AB150109)と共に、1時間室温でインキュベーションした。PBST(0.3%トリトンを含むPBS溶液)を用いた透過処理後、細胞を、ウサギ抗TFAP2CおよびGATA3抗体と共に、4℃で一晩、インキュベーションした。3日目に、細胞をPBSTで洗い、Alexa594コンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen、カタログ番号A21207)と共に、1時間、室温でインキュベーションし、DAPIを用いて対比染色した。分化したブタおよびヒトEPSCにおけるTuj1、α-SMA、AFPおよびKRT7免疫染色のため、細胞を固定し、それぞれ、マウス抗TUJ1、α-SMA、AFPおよびKRT7抗体と共に、4℃で一晩、インキュベーションした。細胞を、PBS溶液で洗い、Alexa488コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Abcam、カタログ番号AB150109)および594ヤギ抗マウスIgG(Invitrogen、カタログ番号A21207)と共にインキュベーションした。抗体処理後、試料を、10μg/ml DAPI(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号62248)を用いて染色して、核をマーキングした。ブタおよびヒト多能性マーカー免疫染色のため、ブタおよびヒトEPSCを、4%PFA/PBS溶液において固定し、3%ヤギ血清(Sigma、カタログ番号G9023-10ML)および1%BSA(Sigma、カタログ番号A2153)を有するPBS溶液(細胞表面マーカーのため)または3%ヤギ血清、1%BSAおよび0.1%トリトン(Sigam、カタログ番号T8787)を有するPBS溶液(細胞内マーカーのため)においてブロッキングし、細胞表面抗体、SSEA-1、SSEA-4、Tra-1-60、Tra-1-81または細胞内抗体、OCT4、NANOGおよびSOX2と共に、4℃で一晩、インキュベーションした。細胞を洗い、Alexa488または594コンジュゲートヤギ抗マウスIgG、マウスIgM、ウサギIgGと共にインキュベーションし、DAPIを用いて対比染色した。これらの実験において使用した抗体を、補足表9において提供する。
【0128】
6.26 ウエスタンブロット
細胞全体の抽出物を、50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.15M NaCl、0.1%SDS、1%トリトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウムおよび完全ミニEDTAフリータンパク質分解酵素インヒビターカクテル(Roche Applied Science、カタログ番号11836170001)を含む溶解バッファーにおいて示した処理を用いて細胞から調製した。培養物が、70~80%コンフルエンスに達したとき、実験のための細胞を、同じバッチの培養物から集めた。生物学的複製物を含めて、意味ある結論を可能にした。タンパク質10μgを、電気泳動のため使用し、ニトロセルロースメンブレンに移した。メンブレンを、5%ミルクを用いてブロッキングし、抗体を用いて処理した。マウスまたはウサギ抗AXIN1、SMAD2/3、p-SMAD2/3およびALPHA-チューブリンの1次抗体を使用した。ウサギまたはマウスIgGに対する西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート2次抗体を加えた。抗体処理後、ブロットを、ECLウエスタンブロット検出システム(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号32106)を使用して発展させた。これらの実験において使用した抗体を、補足表9において提供する。
【0129】
6.27 ヒトESC/iPSCのEPSCへの転換
プライム型ヒトESC株の転換のため、5×104個のトリプシン処理した単一細胞を、5μM ROCKインヒビターY-27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したbFGF含有標準培地において、10cmのSTOフィーダープレート上に播種した。標準ヒトESC培地:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)、20%ノックアウト血清代替物(KSR)(Gibco、カタログ番号10828028)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)、ならびに0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)および10ng/ml bFGF(SCI)。1日後、培地を、hEPSCMに切り替え、次いで、毎日、新たにした。大半の細胞の最初の分化後、ドーム形のhEPSCコロニーが、約5~6日で出現し、これを、0.25%トリプシン/EDTA(Gibco、カタログ番号25500-054)を用いた3~5分間の処理を使用し、STOフィーダー層上、密度5×104個の細胞/10cmディッシュで大量に拡大することができた。5~6日後、安定なドーム形の単一コロニーを拾い上げ、上記の方法に従い、拡大することができた。
【0130】
6.28 ヒト線維芽細胞のEPSCへのリプログラミング
M20培地を使用して、ヒト成人線維芽細胞GM00013を培養した。細胞を、0.25%トリプシン/EDTAにより、約80%コンフルエントなT75フラスコから集め、PBS溶液を用いて1回洗浄した。遺伝子導入を、製造元のプロトコール(NHDF Nucleofector(登録商標)キット、カタログ番号VPD-1001)に従い、Amaxa Nucleofectorマシン(Lonza)を使用し、行った。DNA5.0μgを、遺伝子導入緩衝液100μlと予め混合した。DNA混合物は、PB-TRE-hOCKS2.0μg、PB-TRE-RL1.0μg、PB-EF1a-トランスポサーゼ1.0μgおよびPB-EF1a-rtTA1.0μgからなる。これらのうち、hOCKSを、2Aペプチドにより連結したOCT4、cMYC、KLF4およびSOX2のヒトcDNAを用いて作製した。1×106個の洗浄したヒト成人線維芽細胞を、溶液/DNA混合物100μlにおいて再懸濁し、プログラムU-20を使用してエレクトロポレーションした。0.2×106個の遺伝子導入した細胞を、STOフィーダー層上(10cmディッシュ)、50μg/mlビタミンC(Sigma、カタログ番号49752-100G)を添加したM15培地において播種した。Dox(Sigma、カタログ番号D9891)を、培地中1.0μg/mlの終濃度まで加えて、リプログラミングファクター発現を誘導した。導入の12~14日後、Doxを除去し、培地を、Dox非依存性ヒトiPSCコロニーを選択するためのhEPSCMに切り替えた。生存したコロニーを、hEPSCMに、約21日目に拾い上げ、安定なiEPSC株を拡大させた。
【0131】
6.29 ヒトEPSCの栄養膜系統への分化
hEPSCを、0.25%トリプシン/EDTAを用いて分離し、ゼラチン化6ウェルプレートにおいて、密度0.1×106個の細胞/ウェルで播種した。細胞を、5μM ROCKインヒビターY-27632を添加した20%KSR培地において、1日間培養した。20%KSR培地:DMEM/F-12(Gibco、カタログ番号21331-020)、20%ノックアウト血清代替物(KSR)(Gibco、カタログ番号10828-028)、1×グルタミンペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11140-050)、1×NEAA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10378-016)および0.1mM 2-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M6250)。2日目から、異なる組み合わせのTGFβインヒビターSB431542(10μM、Tocris、カタログ番号1514)、BMP4(50ng/ml、R&D、カタログ番号5020-BP)およびFGF受容体インヒビターPD173074(0.1μM、Tocris、カタログ番号3044)を、20%KSR培地に加えて、栄養膜分化を開始させた。細胞を、解析のため、示した時間点で集めた。
【0132】
6.30 安定なTSC細胞株のEPSCからの誘導
単一の分離したhEPSCおよびpEPSCEmbを、1mg/ml Col IV(Corning、カタログ番号354233)を用いて予めコーティングした6ウェルプレート上に、密度1ウェル当たり2,000個の細胞で蒔き、マイナー変更を有する記載された[10]hTSC培地において培養した。hTSC培地:0.1mM 2-メルカプトエタノール、0.2%FBS(Gibco、カタログ番号10270)、0.5%ペニシリン-ストレプトマイシン、0.3%BSA(Gibco、カタログ番号15260037)、1%ITSX栄養補助剤(Gibco、カタログ番号51500056)、50μg/ml Vc(Sigma、カタログ番号49752-100G)、50ng/ml EGF(R&D、カタログ番号236-EG-200)、2μM CHIR99021(GSK3i、TOCRIS、カタログ番号4423)、0.5μM A83-01(TOCRIS、カタログ番号2939)、1μM SB431542(Tocris、カタログ番号1514)、0.8μM VPA(STEMCELL、カタログ番号72292)および5μM Y27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したDMEM/F12(Gibco、カタログ番号21331-020)。約7~9日の培養後、TSC様形態を有するコロニーを拾い上げ、TrypLE(Gibco、カタログ番号12605036)において分離し、1mg/ml Col IVを用いて予めコーティングしたプレート上に再度蒔いた。4~5継代後、細胞を、記載される方法[10]を用いた合胞体栄養細胞(ST)および絨毛外栄養膜(EVT)分化試験のため集めた。
【0133】
6.31 ブタTSC胚注入
H2BmCherry(EF1a-H2BmCherryおよびCAGG-H2BmCherry)を遺伝子導入した2つのブタTSC株(pK3-TSC-#1およびpK3-TSC-#3)を、胚注入実験のため使用した。20継代での細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ番号12605036)を用いて簡単に処理し、培養ディッシュから優しく叩いて落とし、ヒトTSC培地において再懸濁した。遠心分離後、TSCを、114mM塩化ナトリウム(NaCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号S5886)、3.2mM塩化カリウム(KCl、Sigma-Aldrich、カタログ番号P-5405)、0.4mMナトリウム二リン酸水素一水和物(NaH2PO4×H2O、Merck、カタログ番号106346)、0.5mM塩化マグネシウムヘキサ水和物(MgCl2×6H2O、Roth、カタログ番号HN03.2)、2mM重炭酸ナトリウム(NaHCO3、Sigma-Aldrich、カタログ番号S4019)、10mM HEPES(Roth、カタログ番号9105.3)、10mMナトリウムDL-乳酸溶液(60%)(Sigma-Aldrich、カタログ番号L1375)、100U/LペニシリンGカリウム塩BioChemica(AppliChem、カタログ番号A1837)、50mg/L硫酸ストレプトマイシンBioChemica(AppliChem、カタログ番号A1852)、0.25mMピルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号P2256)、32mMスクロース(Merck、カタログ番号107653)、0.4%ウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich、カタログ番号A9647)および10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)からなるTL-Hepes 296 Caフリー培地において再懸濁した。注射のため、TSCを、10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したTL-Hepes 296 Caフリー培地の滴400μlにおいてインキュベーションした。その後、8~10個の単一TSCを、10%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106))および10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したOpti-MEM I(1×)+GlutamMAX(商標)-I減少血清培地(Gibco(登録商標)、カタログ番号51985-026)において、圧力駆動のマイクロマニピュレーター(Zeiss、Eppendorf)を用いて、6日目のブタ単為生殖またはIVF胚に注入した。注入後、胚を2回洗浄し、1000U/ml ESGRO(登録商標)組み換えマウスLIFタンパク質(Millipore、カタログ番号ESG1107)および10μM Y27632(ROCKi、Tocris、カタログ番号1254)を添加したD15培地において、1~2日間、39℃、5%CO2および5%O2において培養した。その後、胚を、3.8%パラホルムアルデヒドを用いて、15分間、室温で固定し、0.5%FBS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Corning、カタログ番号PS-B)を添加したDPBSにおいて、4℃で保存した。
【0134】
6.32 TSCを注入したブタ単為生殖胚の免疫蛍光染色
固定した単為生殖胚盤胞を、0.5%FCS(Gibco(登録商標)、ロット42Q0154K、カタログ番号10270-106)を添加したDPBS(Sigma、カタログ番号D5652-10X1L)において3回洗浄し、0.5%トリトン(登録商標)X-100(Merck、カタログ番号108603)および0.5%FCSを添加したDPBSにおいて、1時間透過処理した。その後、胚を、DPBSにおいて3回洗浄し、1時間、室温で、ブロッキング溶液(共染色GATA3/CDX2/mCherry:PBS中の5%ウマ血清(Sigma、ロット14M175、カタログ番号H1270)および0.2%トリトン(登録商標)X-100)においてブロッキングした。ブロッキング後、胚を、DPBSおよび0.5%FCSにおいて希釈した1次抗体と共に、一晩、4℃でインキュベーションした。翌日、胚を、GATA3/CDX2/mCherryのためいずれかの0.5%ウマ血清を添加したDPBSにおける数回の洗浄を通じて移した。2次抗体(mCherry:ロバ抗ウサギIgG(H+L)Alexa Fluor Plus 555、A32794、Invitrogen、GATA3/CDX2:ロバ抗ヤギIgG(H+L)Alexa Fluor Plus 488、A32814、Invitrogen)を、1:1000で0.5%ウマ血清を添加したPBSにおいて希釈し、インキュベーションを、室温で1時間行い、続いて、上記の通り洗浄した。核を視覚化するために、胚を、SiR-Hoechst(Spirochrome、SiR-DNA kit、カタログ番号SC007)において、DPBS中の1:500希釈で、1時間、37℃でインキュベーションし、共焦点画像化システムLSM510(Carl Zeiss MicroImaging GmbH、ドイツ)を使用して直ちに調べた。
【0135】
6.33 ブタおよびヒトTSC 病変アッセイ
ブタおよびヒトTS細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ番号12605036)を用いて分離し、30%マトリゲル(Corning、カタログ番号354230)および10μM RockインヒビターY-27632(Tocris、カタログ番号1254)を添加したPBSにおいて再懸濁した。5×106個のブタまたはヒトTSCを、8週齢のオスのSCIDマウスの両背側側腹部に皮下注射した(1回の注射当たり100μl)。ヒトおよびブタTSCは、7~10日以内に目に見える病変を形成した。病変を切開し、4%リン酸緩衝化ホルマリンにおいて一晩固定し、切片化のため、OCT化合物(CellPath、カタログ番号15212776)およびパラフィンにおいて包埋した。
【0136】
6.34 ELISA
ヒトVEGF、PlGF、sFlt-1、CGAおよびsEngについての酵素結合免疫吸着アッセイキットを、R&D Systemsから得て、ヒト絨毛性ゴナドトロピンELISAアッセイキットは、ALPCO Diagnosticsからであり、製造元の説明に従い行った。
【0137】
6.35 EPSCおよびhTSCにおける網羅的遺伝子発現のRNA-seq解析
培養物が、70~80%コンフルエンスに達したとき、RNA調製のための細胞を、同じバッチの培養物から集めた。生物学的複製物を含めて、意味ある結論を可能にした。ヒトデータについては、GENCODE v27からのタンパク質コード転写物を使用し、PAR_Y領域からの転写物を、参照から取り除き、マウスデータについては、GENCODE vM16からのタンパク質コード転写物を使用し、ブタデータについては、Ensembl build Sscrofa11.1を使用した。転写物fastaファイルを、GENCODEまたはEnsemblからダウンロードし、ERCC配列を、それぞれのビルドに加えた。次いで、転写物プラスERCC fastaファイルを、デフォルトパラメーターを使用したsalmon(バージョン0.9.1)[11]を使用して、インデックスをつけた。GENCODE転写参照を使用した際、「--遺伝子コード」フラッグを、インデックスをつけている間に含めて、salmonが転写物idを正しく処理することを確実にした。ヒトナイーブ型およびプライム型ESC RNA-seq[12]について、fastqファイルを、ENA(研究受託PRJNA326944)からダウンロードし、ヒト胚の単一細胞データについて、fastqファイルを、ENA(研究受託PRJEB8994)[13、14]からダウンロードした。マウスEPSCデータについて、従前の研究[15]のfastqファイルを使用した。全てのリードを、フラッグ「--useVBOpt --numBootstraps 100 --posBias --seqBias --gcBias -l ISR -g遺伝子_map.tsv」(gene_map.tsvは、遺伝子レベル発現値を得るために、転写物idを遺伝子idにマッピングするタブで区切ったファイルであった)を用いたsalmon(バージョン0.9.1)を使用して、対応する種のトランスクリプトームに対して直接定量した。異なるタイプのヒト細胞および早期胚におけるそれぞれの選択したヒストン遺伝子の発現レベルを、発現マトリックスから抽出し、GraphPad Prism 7.04(https://www.graphpad.com/scientific-software/prism/)により生成したヒートマップとして視覚化した。遺伝子発現値を、色(それぞれのマトリックス未満の色説明文により示す)に直線的に変換し、ここで、青色が、低い遺伝子発現を表し、赤色が、より高い遺伝子発現を表し、無色は、発現した最高レベルの遺伝子と同等である。単一細胞RNA-seqのため、余分な品質調整工程を加え、ここで、10,000未満の総リード、または4,000種未満の検出した遺伝子(少なくとも1回のリード)、または80%より多くの、ERCCにマッピングしたリード、または60%より多くの、マッピング不可能なリードを有する細胞を、下流の解析前に、除去した。
【0138】
6.36 バッチ補正、主成分分析(PCA)および交差種比較
それぞれの試料の遺伝子カウントを、一緒に集め、log10変換した。次いで、バッチ効果(バッチは、ここで、異なる研究を意味する)および配列決定の深度(1つの試料当たりのリードの総数)を、NaiveDEパッケージ(https://github.com/Teichlab/NaiveDE/tree/master/NaiveDE)からの「regress_out」関数を使用して、回帰により除去した(regressed out)。主成分分析を、scikit-learn(Scikit-learn:Machine Learning in Python, Pedregosa et al., JMLR 12, pp. 2825-2830, 2011)を使用して、回帰を行ったマトリックス上で行った。交差種比較のため、1対1のオルソロガス遺伝子のみを使用した。
【0139】
6.37 栄養膜へのヒトEPSC分化のRNA-Seq解析
遺伝子発現マトリックス:参照インデックスを、GENCODEデータベース[16]のhg38に基づき作製した。H1-ESC、H1-EPSC、hiPSC-EPSC、PHTuおよびPHTdについての遺伝子発現マトリックスを、以下のパラメーター:salmon quant --noversion-check -q -p 6 --useVBOpt --numBootstraps 100 --posBias --seqBias -gcBiasを用いてSalmon[11]を使用し、作製した。t-SNE(t-distributed stochastic neighbor embedding)解析:Rパッケージ「Rtsne」を、遺伝子発現マトリックス(最大TPM<=1を有する遺伝子を繰り出した)の次元削減のため使用し、対応する結果を、カスタムRスクリプトを使用して、視覚化した。ピアソン相関:参照組織についてのRNA-seqデータを、Chang et al.の文献[17]からダウンロードし、参照細胞(uESC、uPHT、dESC、dPHT)についてのデータを、Yabe et al.の文献[18]からダウンロードした。Chang et al.が定義した組織特異的遺伝子のリスト(n=2293)を、ピアソン相関係数解析のため選択した。ペアワイズ計算を、提供データ(H1-ESC、H1-EPSCおよびhiPSC-EPSC)と外部参照の間で行った。結果を、高い類似性を赤色で、一方、低い類似性を青色で、ヒートマップとして視覚化した。37種の栄養膜マーカー遺伝子の発現動態を解析した。それぞれのマーカー遺伝子の発現レベルを、発現マトリックスから抽出し、以下の方法を使用して標準化した。所定の遺伝子のTPMを、列中のその遺伝子の最高遺伝子発現レベルにより割った(H1-ESC、H1-EPSCおよびhiPSC-EPSCについての計36の値における、それぞれの細胞株についての12のデータポイント)。この方法を通じて、それぞれのTPMを、0~1の間の値に変換した。全体的な遺伝子特性を、青色(低く発現した遺伝子)から赤色(高く発現した遺伝子)の範囲にあるカラーキーを使用して、ヒートマップとしてプロットした。培養物が、70~80%コンフルエンスに達したとき、RNA調製のための細胞を、同じバッチの培養物から集めた。生物学的複製物を含めて、意味ある結論を可能にした。
【0140】
6.38 ヒトTSC RNAseqのPCA解析
「Factoextra」Rパッケージを、PCA解析に適用し、「limma」Rパッケージを、バッチ作用除去に適用した。TPM値が、全ての試料において1より低い遺伝子を、TPM発現マトリックスから除去した。
【0141】
6.39 単一細胞RNAseqライブラリーの構築
単一細胞mRNA-seqライブラリーを、記載されるSMART-seq2プロトコール[19]に従い、生成した。簡単に言うと、単一のブタおよびヒトEPSCを、溶解バッファーおよび外部RNA spike-ins(Ambion)(1:500,000)を予め充填した96ウェルプレートに選別した。次いで、第一の鎖合成およびテンプレート切り替えを行い、続いて、25サイクルの前増幅を行った。相補性DNAを、自動化ロボットワークステーション(Zephyr)を使用して、AMPure XP磁気ビーズ(Agencourt)により精製した。cDNAの質を、高感度DNAチップを使用してBioanalyzer(Agilent)を用いて調べた。マルチプレックス(96プレックス)ライブラリーを構築し、Nextera XTライブラリー調製キット(Illumina)を使用して増幅した。次いで、ライブラリーをプールし、AMPure XP磁気ビーズを用いて精製した。次いで、ライブラリーの質を、Wellcome Trust Sanger InstituteのDNA配列決定パイプラインに提出する前に、Bioanalyzer(Agilent)により評価した。対の端の75bpのリードを、HiSeq2000シーケンサーにより生成した。ブタおよびヒトscRNA seqデータは、ftp://ngs.sanger.ac.uk/production/teichmann/xi/xuefei_epsc/single_cell_expr_matrix
全ての遺伝子についての発現バイオリン図は、scRNAseq:ブタEPSC:ftp://ngs.sanger.ac.uk/production/teichmann/xi/xuefei_epsc/porcine_sc_vplot/index.html
ヒトEPSC:ftp://ngs.sanger.ac.uk/production/teichmann/xi/xuefei_epsc/human_sc_vplot/index.html
からダウンロードできる。
【0142】
6.40 EPSCにおけるヒストン修飾特性のChIP-seq解析
ブタおよびヒトEPSCのH3K4me3、H3K27me3、H3K27acおよびインプットChIPライブラリーを、Lee et al[20]の改変ChIPプロトコールに基づき調製した。簡単に言うと、約20000000個の細胞を、1%ホルムアルデヒドにおいて、10分間、室温で架橋させた。次いで、架橋を、0.125Mグリシンを用いて、5分間、室温でクエンチした。細胞ペレットを、PBSを用いて洗浄し、液体窒素により瞬間凍結し、さらなる処理まで、-80℃において保存した。クロマチンを、5~7サイクル:30秒間の不定期サイクルの間、Bioruptor Pico(Diagenode)により切断した。免疫沈殿を、予め洗浄し、タンパク質A Dynaebeads(Invitrogen、カタログ番号10002D)に予め接着させた抗体1μgを用いて、一晩、4℃で行った。抗体:H3K4me3、H3K27me3、H3K27acを、補足表9に列挙した。次いで、ビーズを洗浄し、溶出緩衝液を用いて、65℃で、4時間、架橋を元に戻した。免疫沈殿したDNAを、タンパク質分解酵素K切断およびQiagen minElute PCR精製キット(Qiagen、カタログ番号28004)を用いて精製した。マルチプレックス配列決定ライブラリーを、製造元の指示に従い、ミクロプレックスライブラリー構築キット(Diagenode、カタログ番号C05010014)を用いて調製した。DNAを、11サイクルの間増幅し、ライブラリーの質を、高感度DNAキットを使用して、バイオアナライザー(Ailgent)で調べた。ライブラリー濃度を、KAPAライブラリー定量キット(KK4824)を使用したqPCRにより調べ、等モルの異なるライブラリーをプールし、2レーンのHiSeq2500で配列決定した。50塩基対の単一末端のリードを、デフォルト設定を有するbowtie2(バージョン2.3.4)[21]を使用して、UCSC参照ゲノム(ブタについてsusScr11、およびヒトについてhg38を構築する)にマッピングした。ヒト参照hg38について、全ての代替座位を、マッピング前に、取り除いた(chr*_alt)。ミトコンドリアゲノムにマッピングしたリードを除去し、核ゲノムにマッピングしたリードを、比較的低いマッピングの質(30未満のMAPQ)を有するリードをフィルター処理するためのフラッグ「-q 30」を用いたsamtools[22]により、フィルター処理した。ヒトナイーブ型およびプライム型ESC由来のChIP-seqデータについて[12]、未処理のリードを、ENA(研究受託PRJNA255308)からダウンロードし、同じ方法で処理した。ピークコールを、MACS2(2.1.1.20160309)[23]を使用して行った。ブタ試料由来の点状マーク(H3K4me3およびH3K27ac)の強化領域の同定のため、ピークコールを、フラッグ「-t chip.bam -c input.bam -g 2.7e9 -q 0.01 -f BAM --nomodel -extsize 200 -B --SPMR」を用いて行った。広範なマーク(H3K27me3)の強化領域の同定のため、ピークコールを、フラッグ「-t chip.bam -c input.bam -g 2.7e9 -q 0.01 -f BAM -nomodel --extsize 200 -B --SPMR --broad」を用いて行った。ヒトデータのため、ピークコール中にゲノムサイズの変化「-g hs」を有するピークコールを、同じ方法で行った。得られたbedGraphファイルを、スクリプトbdg2bw(https://gist.github.com/jl32587/34370c995460f9d5ad65)を使用して、bigWigファイルに変換した。bigWigファイルを、UCSCゲノムブラウザ[24]を使用して視覚化した。ナイーブ型およびプライム型遺伝子周囲のH3K4me3シグナルを比較するために、ヒトナイーブ型とプライム型ESCの間で異なって発現した遺伝子のリストを、Theunissen et al.[12]の補足表からダウンロードした。遺伝子を、log2倍加変化により選別し、次いで、上位1000のナイーブ型またはプライム型遺伝子を選択した。ヒトEPSCのH3K4me3シグナルを、HOMER(v4.9)[25]を使用した、これら2000の遺伝子の転写開始部位辺りで直接定量した。ブタのデータについて、これら2000の遺伝子の1対1のオルソログを、まず、集合ゲノムブラウザ[26]から抽出し、次いで、ブタH3K4me3シグナルを、ヒトにおけるのと同じ方法で定量した。培養物が、70~80%コンフルエンスに達したとき、ヒストン修飾特性のための細胞を、同じバッチの培養物から集めた。生物学的複製物を含めて、意味ある結論を可能にした。
【0143】
6.41 全ゲノムDNAメチル化解析
DNAメチル化レベルを、全ゲノムバイサルファイトシーケンス[27]により測定した。DNAを精製し(Qiagen Blood DNA抽出キット)、共変動超音波処理装置を使用して、超音波処理した。1試料当たりDNAおよそ500ngを、メチル化アダプター(NEBまたはIllumina)を使用したNEBNext Ultra DNAライブラリー調製キット(NEB E7370)を使用して処理した。バイサルファイト転換を、最終のPCR増幅前に、EZ DNAメチル化 Goldキット(Zymo)を使用して行った。ライブラリーを、Illumina MiSeqプラットフォームを使用して配列決定して、100bpの対形成した末端リードを得た。未処理の配列リードをトリミングして、Trim Galore(v0.4.1、www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/trim_galore/、Cutadapt version 1.8.1, parameters: --paired)を使用して、品質の低いコールとアダプター両方を取り除き、Bismark v0.18.2(Krueger and Andrews, 2011)を使用して、ヒトまたはブタゲノムに整列させた。データを、500CpG実行ウィンドウおよび1ウィンドウ当たり100CpGの最小カバー度を使用したSeqMonk(www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/seqmonk/)を使用して定量した。培養物が、70~80%コンフルエンスに達したとき、本解析における細胞を、同じバッチの培養物から集めた。
【0144】
6.42 統計的解析
標本サイズを予め決定するために使用した統計方法はなかった。実験を無作為化しなかった。調査者を、実験および評価結果の間、盲検で割り当てなかった。統計的解析を、Microsoft ExcelまたはPrism 7.04(GraphPad)を用いて行った。P値を、両側スチューデントt検定を使用して計算した。
【0145】
6.43 データ有効性
配列決定データを、ArrayExpressに寄託し、受託番号は、E-MTAB-7252(ChIP-seq)、E-MTAB-7253(大量RNA-seq)およびE-MTAB-7254(単一細胞RNA-seq)である。ヒト細胞配列決定未処理データ(ChIP-seqおよび大量/単一細胞RNA-seqを含む)ファイルは、ftp://ngs.sanger.ac.uk/production/teichmann/xi/xuefei_epsc/human_fastq/を介してアクセスすることができ、ブタ細胞配列決定未処理データ(ChIP-seqおよび大量/単一細胞RNA-seq)ファイルを、ftp://ngs.sanger.ac.uk/production/teichmann/xi/xuefei_epsc/pig_fastq/を介して評価することができる。全ての他の関連するデータが、担当する著者から要求に応じて入手可能である。
参考文献
【0146】
特定の実施形態の前述の説明は、他の者が、過度の実験を行うことなく、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、関連する技術分野(複数可)の当業者の知識(本明細書において参照により引用され、取り込まれる文書の内容を含む)を適用することにより、かかる特定の実施形態の様々な適用を容易に改変し、および/または適合し得るという、本開示の一般的な性質を完全に明らかにする。それ故、かかる適合および改変は、本明細書において提示される教示およびガイダンスに基づき、開示される実施形態の均等な意味および範囲内であることが意図される。本明細書の用語または専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するためのものではなく、したがって、本明細書における専門用語または用語は、関連する技術分野(複数可)の当業者の知識と組み合わせて、本明細書において提示される教示およびガイダンスに照らして、当業者に意図されるべきであることは、理解されるべきである。
【0147】
本開示の様々な実施形態が、上で記載された一方、これらが、例示の目的であり、限定するためではないことは、理解されるべきである。形態および細部における様々な変更が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、ここで成され得ることは、当業者に明らかである。従って、本開示は、上記の例示の実施形態のいずれかにより限定されるべきではなく、以下の請求項およびその均等物に従ってのみ定義されるべきである。