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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-17
(45)【発行日】2024-04-25
(54)【発明の名称】戸開動用付勢装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/51 20150101AFI20240418BHJP
   E05D 15/26 20060101ALI20240418BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20240418BHJP
【FI】
E05F15/51
E05D15/26
E06B3/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023116704
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】710010906
【氏名又は名称】アクシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 充宏
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295560(JP,A)
【文献】登録実用新案第3071581(JP,U)
【文献】特開2000-291347(JP,A)
【文献】実開昭60-195495(JP,U)
【文献】実開昭62-040173(JP,U)
【文献】特表2009-534066(JP,A)
【文献】特表2008-509760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/50-15/59
E06B 3/48
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体が開閉自在に支持される側枠に取り付けられる戸開動用付勢装置であって、前記側枠の内側の前記戸体に近い位置に取り付けられる上下縦長の基板、この基板の上端部に一端が取り付けられて垂下する上下縦長姿勢のガススプリング、前記基板の下端部に上下垂直軸心の周りに回転自在に支持された回転体、前記ガススプリングの下端から突出する出退移動部の上下方向出退移動を前記回転体の回転に変換する伝動手段、及び前記回転体から前記側枠から離れる方向に水平に延出するアームを備え、前記ガススプリングの出退移動部の下向き移動力によって前記アームの先端部が前記戸体の内面に圧接して、当該戸体を開動方向に付勢するように構成された、戸開動用付勢装置。
【請求項2】
前記伝動手段は、前記回転体と一体に回転する垂直軸傘歯車と、前記基板に水平支軸によって軸支され且つ前記傘歯車と咬合する水平軸傘歯車、及び前記水平軸傘歯車と一体に前記水平支軸の周りに回転し且つ前記ガススプリングの出退移動部が偏心位置に軸支連結された受動部材から構成され、前記ガススプリングの出退移動部の下降運動が前記水平軸傘歯車と前記垂直軸傘歯車とを介して前記回転体に伝達されるように構成された、請求項1に記載の戸開動用付勢装置。
【請求項3】
前記アームの先端部が圧接する前記戸体の内面には、前記アームの先端部の摺接領域をカバーする大きさのプレートが貼付され、前記アームの先端部には、前記プレートと摺接する摺接部材が装着されている、請求項1又は2に記載の戸開動用付勢装置。
【請求項4】
前記アームの先端部には、当該アームの厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記摺接部材には、前記アームの先端部が差し込まれる凹入部と、この凹入部内の前記アームの厚さ方向両側に隣接するように前記凹入部の両側に設けられた開口部と、一方の開口部の周縁から連設された片持ち状の弾性舌片部と、前記アームの先端部が前記凹入部に差し込まれたときに前記貫通孔に自動嵌合するように前記弾性舌片部の先端部に係合突起が設けられ、他方の前記開口部から、前記貫通孔に嵌合している係合突起を前記弾性舌片部の弾性に抗して当該貫通孔外に突き出し操作できるように構成されている、請求項3に記載の戸開動用付勢装置。
【請求項5】
前記基板に取り付けられている前記ガススプリング、前記回転体、前記伝動手段及び前記アームの基部を覆い隠すカバーが設けられ、前記基板には、前記カバーの上端が載置支持されるカバー支持部と、前記カバーに設けられた左右一対の係合孔に自動係合する左右一対の弾性係止突起が設けられている、請求項1に記載の戸開動用付勢装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種収納家具や間仕切りなどに使用される開閉自在な戸を、閉じ位置でのロックが解除されて開動可能な状態になったときに自動的に開動させる手段として活用できる戸開動用付勢装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに示される折れ戸を例にとって説明すると、一般的に折れ戸は、2枚の戸体を折り畳み自在に連結する戸体間ヒンジに、折れ戸が開口部を閉じる平板状に閉じられたとき、自動的に係合して折れ戸を平板状の閉じ状態に自動ロックする機能が備えられている。従って、開口部を開こうとする者は、2枚の戸体の戸体間ヒンジによって連結されている側辺近くに設けられている把手で片側の戸体を外向きに一定以上の操作力で引き出すように操作すれば、前記自動ロック機構のロックが解除されるので、そのまま把手で片側の戸体を引き出すように操作すれば、折れ戸を折り畳んで開口部を開くことができる。このように開口部を開閉する各種の戸は、閉じ位置での戸のロックを解除すれば開動させることはできるが、その戸の開動を自動的に行わせる手段で実用的なものは考えられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-270308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばロック解除された戸を自動的に開動させるためには、その戸に開動方向の付勢力を与える付勢手段を組み合わせれば良いが、その付勢手段は、戸体とその周囲の側枠などとの間に介在させなければならず、戸体や側枠などを改造する必要が考えられ、既設の戸に後付けで組み込むことは容易ではない。又、戸の内側の収納空間内に付勢手段が入り込んで、本来の収納空間を狭めたり、収納物品の出し入れの邪魔になるなどの問題点も予想される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解消することのできる戸開動用付勢装置を提案するものであって、本発明に係る戸開動用付勢装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、戸体(5)が開閉自在に支持される側枠(3)に取り付けられる戸開動用付勢装置(12)であって、前記側枠(3)の内側の前記戸体(5)に近い位置に取り付けられる上下縦長の基板(16)、この基板(16)の上端部に一端が取り付けられて垂下する上下縦長姿勢のガススプリング(18)、前記基板(16)の下端部に上下垂直軸心の周りに回転自在に支持された回転体(27)、前記ガススプリング(18)の下端から突出する出退移動部(18a)の上下方向出退移動を前記回転体(27)の回転に変換する伝動手段(31)、及び前記側枠(3)から離れる方向に前記回転体(27)から水平に延出するアーム(13)を備え、前記ガススプリング(18)の出退移動部(18a)の下向き付勢力によって前記アーム(13)の先端部が前記戸体(5)の内面に圧接して、当該戸体(5)を開動方向に付勢する構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の構成によれば、戸体を閉じ位置でロックするロック手段を人手や他の手段で開放すれば、戸体には、ガススプリングの開動方向の付勢力がアームを介して常時作用しているので、当該戸体はそのガススプリングの付勢力で自動的に開動する。戸体が開動限に達するまでガススプリングの付勢力が継続されるように構成しておけば、人手に頼らずに戸体を確実且つ自動的に開動限まで開動させることができる。開動した戸体を閉じるときは、ガススプリングの付勢力に打ち勝つ人力で戸体を閉動方向に付勢して、ロックされる閉動限位置まで閉動すれば良い。
【0007】
上記のように人手に頼らずガススプリングの付勢力で戸体の開動を自動的且つ確実に行わせることができるのであるが、本発明の構成によれば、開動させる戸体を開閉自在に軸支している側枠の内側で、閉じ位置にある戸体の内側に隣接するように本発明の戸開動用付勢装置を上下縦長となる向きに取り付けて、この戸開動用付勢装置の下端から水平揺動自在に突出しているアームの先端を戸体の内面に摺接可能に当接させるだけで良いので、戸体や側枠を特別に加工する必要がなく、既存の設備が備える戸を簡単に自動開動戸に改良することができる。又、本発明の戸開動用付勢装置は、上記のように上下縦向きにガススプリングを備えた上下縦長のものであって、長さが長くなる高能力のガススプリングを使用しても戸開動用付勢装置の上下長さが長くなるだけであって、この戸開動用付勢装置で自動開動に改良される戸によって開閉される収納空間内の奥に向かって戸開動用付勢装置(ガススプリング)が長く入り込む恐れは皆無である。従って、既存の収納設備が備える開閉戸を本発明の戸開動用付勢装置によって自動開動戸に改良しても、内部の収納空間が大きく狭められることも無いし、戸開動用付勢装置が収納物の出し入れの邪魔になるようなことも殆ど生じない。
【0008】
上記本発明を実施する場合、具体的には、前記伝動手段(31)は、前記回転体(27)と一体に回転する垂直軸傘歯車(22)と、前記基板(16)に水平支軸(21)によって軸支され且つ前記傘歯車(22)と咬合する水平軸傘歯車(20)、及び前記水平軸傘歯車(20)と一体に前記水平支軸(21)の周りに回転し且つ前記ガススプリング(18)の出退移動部(18a)が偏心位置に軸支連結された受動部材(24)から構成して、前記ガススプリング(18)の出退移動部(18a)の下降運動が前記水平軸傘歯車(20)と前記垂直軸傘歯車(22)とを介して前記回転体(27)に伝達されるように構成することができる。この構成によれば、前記伝動手段をリンク機構によって構成する場合よりも、伝動手段全体を小スペース内でシンプルに構成することができる。
【0009】
又、前記アーム(13)の先端部が圧接する前記戸体(5)の内面には、前記アーム(13)の先端部の摺接領域をカバーする大きさのプレート(15)を貼付しておき、前記アーム(13)の先端部には、前記プレート(15)と摺接する摺接部材(14)を装着しておくことができる。この構成によれば、ガススプリングの付勢力を開動対象の戸体に円滑に伝達して、当該戸体をスムーズに開動させることができるだけでなく、開動対象の戸体の内面に大きな擦り傷を負わせることもない。
【0010】
上記の構成を採用する場合、前記アーム(13)の先端部には、当該アーム(13)の厚さ方向に貫通する貫通孔(37)を設け、前記摺接部材(14)には、前記アーム(13)の先端部が差し込まれる凹入部(38)と、この凹入部(38)内の前記アーム(13)の厚さ方向両側に隣接するように前記凹入部(38)の両側に設けられた開口部(38a,38b)と、一方の開口部(38a)の周縁から連設された片持ち状の弾性舌片部(39)と、前記アーム(13)の先端部が前記凹入部(38)に差し込まれたときに前記貫通孔(37)に自動嵌合するように前記弾性舌片部(39)の先端部に係合突起(40)を設け、他方の前記開口部(38b)から、前記貫通孔(37)に嵌合している係合突起(40)を前記弾性舌片部(39)の弾性に抗して当該貫通孔(38b)外に突き出し操作できるように構成することができる。この構成によれば、戸体側に貼付するプレートとして金属板を使用し、アーム先端の摺接部材として前記金属製プレートに対して滑りの良いプラスチック成形品を使用することで、戸体側に擦り傷を付けてしまう恐れなどを解消できるが、摩耗によって摺接部材の交換が必要になったとき、当該摺接部材がアームの先端部にネジ止めされている構成と比較して、簡単容易に摺接部材をアーム先端から取り外すことができる。勿論、摺接部材をアーム先端に取り付ける操作も、単にアーム先端部に摺接部材を被せるように差し込むだけで済むので、アーム先端部に対する摺接部材の着脱が極めて簡単且つ迅速に行える。
【0011】
更に、前記基板(16)に取り付けられている前記ガススプリング(18)、前記回転体(27)、前記伝動手段(31)及び前記アーム(13)の基部を覆い隠すカバー(17)を設け、前記基板(16)には、前記カバー(17)の上端が載置支持されるカバー支持部(16b)と、前記カバー(17)に設けられた左右一対の係合孔(33a,33b)に自動係合する左右一対の弾性係止突起(34a,34b)を設けることができる。この構成によれば、ガススプリングや伝動手段などがカバーによって保護されるだけでなく、収納物の出し入れ時に収納物がガススプリングや伝動手段などに引っ掛かったりして、動作に悪影響を及ぼす恐れもなくなる。しかも当該カバーは、単に基板側に覆い被せて、基板側のカバー支持部上に当該カバーの上端を載置させると共に、基板側の左右一対の弾性係止突起を当該カバーの左右一対の係合孔に自動係合させるだけで良いので、ネジ止めなどによる取付け構造と比較して、カバーの着脱が極めて簡単容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一般的な折れ戸の構造を説明する横断平面図である。
図2図2は、本発明に係る戸開動用付勢装置を組み込んだ収納設備の要部を示す横断平面図である。
図3図3は、図2の収納設備の要部を内側から見た立面図である。
図4図4Aは、図2の要部を示す横断平面図、図4Bは、本発明に係る戸開動用付勢装置の詳細構造を示す、カバーのみを縦断面で示す側面図である。
図5図5は、図4のカバーのみをX-X線断面図で示す要部の平面図である。
図6図6は、図4のカバーのみをY-Y線断面図で示す正面図である。
図7図7は、図4の要部の横断平面図である。
図8図8は、図4の下端要部の拡大縦断側面図である
図9図9は、本発明に係る戸開動用付勢装置が具備するアームの先端部を示す拡大平面図である。
図10図10は、図9に示すアームの先端部と取付け前の摺接部材を示す一部横断平面図である。
図11図11は、図10の縦断側面図である。
図12図12は、図9の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施例を説明するが、その前に本発明装置が適用される一例としての折れ戸の一般的な構成を図1に基づいて説明すると、図1に示される折れ戸1は、収納空間2の収納物出し入れ用開口部の左右両側に配置された側枠3,4間を開閉する2枚の戸体5,6を備えている。両戸体5,6どうしは、互いに隣接する内側辺においてセンターヒンジ7により折り畳み展開自在に連結され、一方の戸体5の外側辺は、側枠3の内側面にサイドヒンジ8によって開閉自在に軸支され、他方の戸体6の外側辺は、スライドヒンジ9によって支持されている。スライドヒンジ9は、側枠3,4間にわたって水平に架設された、側枠3側の領域が側枠3に近づくほど収納空間2から外側に離れるように湾曲するスライドレール10に支持されている。
【0014】
図1に示す折れ戸1は、従来周知のものであるから詳細な構造説明は省略するが、実線で示すように両戸体5,6が一平板状に展開した閉じ姿勢において、収納空間2の収納物出し入れ用開口部を全閉し、係る状態にあるときは、センターヒンジ7が備える自動ロック機構によって両戸体5,6が一平板状に展開した全閉姿勢が保持される。折れ戸1を開くときは、例えば戸体6の内側辺に近い外側面に付設されている把手11を手前に引くと共に戸体5を開動させる方向(側枠4から遠ざかる方向)に動かせば、戸体5がサイドヒンジ8を中心に開動すると共に、戸体6の外側辺が、スライドヒンジ9と共にスライドレール10に沿って移動しながら、戸体6の内側辺がセンターヒンジ7を中心に戸体5の内側に重なるように折り畳まれ、最終的に図1に仮想線で示すように折れ戸1が全開姿勢に変化する。
【0015】
この全開姿勢にある折れ戸1を元の全閉姿勢に戻すときは、把手11を利用して戸体6を閉じ方向に移動させるように操作すれば、戸体5がサイドヒンジ8を中心に閉動することと、戸体5の外側辺がスライドヒンジ9と共にスライドレール10に沿って側枠4のある側へ滑動することとによって、折れ戸1が元の全閉姿勢に復帰することになる。全閉姿勢に復帰した折れ戸1は、先に説明したように、センターヒンジ7が備える自動ロック機構によって当該全閉姿勢に保持され、不測に開動するような恐れはない。
【0016】
例えば上記の図1に示す折れ戸1に対して本発明の戸開動用付勢装置を組み込んだ実施例を図2及び図3に示している。図において、12が本発明の戸開動用付勢装置であって、この戸開動用付勢装置12は上下縦長のもので、前記戸体5をサイドヒンジ8で支持している側枠3の内側面(収納空間2のある側)の下端部で且つ閉じ位置にある戸体5の内側面に隣接する位置に、長さ方向が上下縦向きとなるように取り付けられている。そして当該戸開動用付勢装置12の下端側面からは、アーム13が水平に突出している。このアーム13は、後述するように戸開動用付勢装置12が内蔵する機構によって戸体5のある側へ水平に回動するように付勢されているものであって、このアーム13の先端には摺接部材14が取り付けられ、戸体5の内側面で前記摺接部材14が摺接する領域には、当該摺接領域の全体をカバーできるサイズの横方向に長い長方形の金属製プレート15が、両面粘着テープなどにより貼付されている。
【0017】
以下、図4図8に基づいて戸開動用付勢装置12の構造と作用を詳細に説明すると、当該戸開動用付勢装置12は、側枠3の内側面にネジ止めされる基板16と、この基板16と装置全体を覆うカバー17を備えている。基板16は、側枠3の内側面にネジ止めするときの複数の取付け孔16aを備えた上下方向に長い帯状の金属板から成り、上端には、外向きに折曲連設されたカバー支持部16bが設けられ、下端には、外向き水平に折曲連設された軸受け支持部16cが設けられている。基板16の上端近くには、上下方向に長いガススプリング18の上端が水平支軸19によって吊り下げられ、このガススプリング18の下端より少し下方位置で基板16に、水平軸傘歯車20が水平支軸21によって自転可能に支持され、更に、基板16の軸受け支持部16c上には、前記水平軸傘歯車20と咬合する同一直径の垂直軸傘歯車22が垂直支軸23によって自転可能に支持されている。
【0018】
図8に示すように、水平軸傘歯車20の背面には板状受動部材24が複数本のネジ25によって固着され、この板状受動部材24の、水平軸傘歯車20の周面より外側へ斜め上向きに突出する突出偏心部24aに、前記ガススプリング18の下端から突出する出退移動部18aが、水平支軸21と平行な水平支軸26によって相対回転自在に連結されている。又、垂直軸傘歯車22の背面(下側面)には、板状回転体27が複数本のネジ28によって固着され、この板状回転体27から、図2及び図3で示したアーム13が水平に延出するように、当該板状回転体27にアーム13が一体成形されている。前記板状回転体27の偏心位置には垂直ピン29の上端小径軸部が嵌合固着され、基板16の軸受け支持部16cには、図7に示すように前記垂直ピン29の下端部が貫通する位置に、垂直支軸23を中心とする円弧形のガイドスリット30が設けられている。この結果、一体に回転する前記垂直軸傘歯車22と板状回転体27は、垂直ピン29がガイドスリット30内を移動できる範囲内、即ち、ガイドスリット30の垂直支軸23を中心とする円弧形の角度範囲(90度より少し長い範囲)内でのみ回転可能となっている。
【0019】
水平軸傘歯車20と垂直軸傘歯車22とは、1対1の回転比で連動回転する構造であるから、水平軸傘歯車20も90度より少し長い範囲内で正逆回転することになる。このため図5及び図6に示すように、水平軸傘歯車20と垂直軸傘歯車22は、基板16の巾のセンター位置から片側へ(戸体5から離れる側へ)片寄らせて、板状受動部材24の突出偏心部24aが水平軸傘歯車20の横に確保された空間内を上下に回動できるように構成している。この実施例では、ガススプリング18の下端から突出する出退移動部18aの上下方向出退移動を、アーム13が一体に延設された回転体(板状回転体27)の回転に変換する伝動手段31が、前記出退移動部18aが連結される板状受動部材24、この板状受動部材24と一体に回転する水平軸傘歯車20、及び前記板状回転体27と一体に回転する垂直軸傘歯車22から構成されているが、伝動手段31は、この構成に限定されるものではない。例えば、歯車を使用せずにリンク機構によって伝動手段31を構成することも可能である。
【0020】
カバー17は、ガススプリング18、水平軸傘歯車20、及び垂直軸傘歯車22などが取り付けられている基板16の正面側を覆うものであって、左右両側壁部17a,17b、この左右両側壁部17a,17bを繋ぐ横断面形状が円弧形の正面壁部17c、天井壁部17d、及び底壁部17eによって、基板16の背面側のみが解放され、カバー17の天井壁部17dが基板16の上端のカバー支持部16b上に載置され、底壁部17eが基板16の下端の軸受け支持部16cの下側に入り込む形状である。このカバー17を基板の正面側から水平に移動させて、基板16とその正面側の戸開動用付勢装置12の構成部材をカバーさせたとき、天井壁部17dが基板16の上端のカバー支持部16b上に載置されて支持されるが、この状態でカバー17を基板16側に係止させるカバー係止手段32が設けられている。
【0021】
前記カバー係止手段32は、カバー17の左右両側壁部17a,17bの中間高さで基板16に接近する位置に設けられた左右一対の係合孔33a,33bと、基板16に取り付けられた左右一対の弾性係止突起34a,34bから構成されている。左右一対の弾性係止突起34a,34bは、中央部が基板16にリベット止めされた水平方向の1本の帯状金属板35の両端に互いに対称形に形成されたもので、図5に示すように各係合孔33a,33b内に内側から係止突起34a,34bのくの字形突曲部が嵌合して、カバー17に抜け止め抵抗を与える構成となっている。又、カバー17を基板16の正面側を覆うように取り付けたとき、垂直軸傘歯車22の下側の板状回転体27から前方に延出されたアーム13が貫通し且つ当該アーム13の水平揺動を許容する水平円弧状スリット36が、カバー17の円弧形の正面壁部17cから左右両側壁部17a,17bにわたって設けられている。実際のアーム13の水平揺動範囲は、円弧形の正面壁部17cの中央付近から、戸開動用付勢装置12が開動させようとする戸体(上記の実施例では、折れ戸1を正面から見て左側の戸体5)のある側へ90度強の範囲であるから、このアーム13の水平揺動範囲をカバーできる長さのスリットであれば良いが、戸開動用付勢装置12が開動させようとする戸体が、正面から見て右側にある場合の戸開動用付勢装置12にも同一のカバー17を使用できるように、上記実施例のように水平円弧状スリットを形成している。
【0022】
アーム13の先端には摺接部材14が取り付けられている。カバー17を取り付ける際にアーム17の先端に取り付けられたままの摺接部材14を、カバー17の水平円弧状スリット36内を確実に通過させることができる状況を確保できるならば、摺接部材14がアーム13の先端に取り付けられている状態のまま、カバー17を取り付けることができるが、図示の実施例では、水平円弧状スリット36の上下巾よりも摺接部材14の上下厚さが若干広くなっている。又、アーム13の上下方向の位置が水平円弧状スリット36の上下巾の中心位置から上下方向に多少ずれているなどの原因で、摺接部材14と共のアーム13を水平円弧状スリット36に問題なく通すことができない場合も考慮して、摺接部材14がアーム13に取り付けられていない状態でカバー17を基板16に取り付け、カバー17の水平円弧状スリット36から外側に突出した状態のアーム17の先端に摺接部材14を取り付けることができるように構成するのが好ましい。このことはアーム13の先端に摺接部材14を簡単に着脱できるように構成するのが、摩耗した摺接部材の交換にも好都合である。
【0023】
上記の点を考慮して本発明の実施例では、アーム13の先端に摺接部材14を簡単に着脱できるように構成している。その具体構造を図9図12に基づいて説明すると、厚板製のアーム13の先端部で摺接部材14が外嵌する領域内には、板厚方向(上下方向)に貫通する円形貫通孔37が設けられ、プラスチック製の摺接部材14には、その長さ方向の一端からアーム14の先端部が挿入される凹入部38が設けられている。この凹入部38内に挿入されたアーム14を上下両側から挟むことになる当該凹入部38の上下両平板部14a,14bには、摺接部材14の長さ方向に長い長孔状開口部38a,38bが、上下方向の同一位置に形成され、一方の長孔状開口部38aには、この長孔状開口部38aの摺接部材14の先端側の端(凹入部38が閉じている側の端)から当該長孔状開口部38aの反対側の端に向かって延出する弾性舌片部39が一体成形され、この弾性舌片部39の遊端内側に、凹入部38内に突出する係合突起40が一体成形されている。この係合突起40は、アーム13に設けられている円形貫通孔37に丁度嵌合し得る円形のもので、その円形端面の凹入部38の入り口側の半分強の領域は、凹入部38の入り口側ほど係合突起40の突出高さがゼロになるまで漸減する傾斜面40aとなっている。
【0024】
上記構成の摺接部材14によれば、アーム13の先端部を当該摺接部材14の凹入部38内に、当該凹入部38の上下両平板部14a,14bがアーム13の先端部の円形貫通孔37が開口する両側面を挟むように挿入すると、その挿入の過程でアーム13が摺接部材14側の係合突起40を、その傾斜面40aを介して凹入部38から外側へ押し出すことになり、この結果、当該係合突起40を備えた弾性舌片部39が、弾性に抗して外側へ湾曲し、アーム13の先端部が摺接部材14の凹入部38内に完全に入り込むのを許容することになる。アーム13の先端部が摺接部材14の凹入部38内に完全に入り込んだとき、係合突起40がアーム13の先端部に設けられている円形貫通孔37と重なる位置に達するので、弾性に抗して外側へ湾曲していた弾性舌片部39の元位置への弾性復帰力で係合突起40がアーム13側の円形貫通孔37内に嵌合する。この状態では、アーム13から摺接部材14を抜き取ろうとしても、係合突起40の円柱状領域がアーム13側の円形貫通孔37の円柱状周面と当接しているので、摺接部材14の抜き取りは不可能である。
【0025】
摺接部材14の交換などが必要になったときは、摺接部材14の弾性舌片部39を有していない側の長孔状開口部38b内にアーム13の円形貫通孔37が位置しているので、この長孔状開口部38bからアーム13の円形貫通孔37内に嵌合している係合突起40の平坦な端面に対して適当な棒状体で反対側へ押し出すように力を加える。この結果、弾性舌片部39が弾性に抗して外側へ湾曲するのに伴って、係合突起40がアーム13の円形貫通孔37内から外側へ抜け出るように移動することになる。係合突起40がアーム13の円形貫通孔37内から抜け出た状態になれば、摺接部材14をアーム13の先端部から抜き出す操作をして、アーム13から摺接部材14を取り外すことができる。
【0026】
尚、以上の実施例に係る構成では、基板16に取り付けられるガススプリング吊下げ用の水平支軸19と水平軸傘歯車支持用の水平支軸21は、図4Bに示すようにそれぞれの水平支軸19,21と一体の大径の台軸部19a,21aを備えており、この大径の台軸部19a,21aが基板16に溶接固着されている。この場合、大径の台軸部19a,21aの溶接位置が確定するように、各台軸部19a,21aの取付け端に小径の軸部を一体成形させておき、この小径の軸部を基板16に設けた貫通孔に嵌合させた状態で、基板16に対する台軸部19a,21aの溶接を行えるように構成するのが望ましい。垂直軸傘歯車22を支持する垂直支軸23は、下端の小径軸部23aを基板16の軸受け支持部16cに設けた貫通孔に差し込んでカシメによって取り付けているが、カシメではなく、軸受け支持部16cの下側から垂直支軸23をネジ止めすることも可能である。
【0027】
又、カバー17をプラスチック成形品とし、後から穴明け加工などが不要なように、左右一対の係合孔33a,33bは、次のように成形により構成している。即ち、図4B及び図5に示すように、係合孔33a,33bの位置からカバー17の円弧形の正面壁部17cまで水平直線状の凹溝部41を成形し、この凹溝部41を形成する底板部41aは、係合孔33a,33bの直前位置までとして、カバー17を成形する外型に、係合孔33a,33bを含む長さの凹溝部41を成形する突条部を設け、カバー17を成形する内型には、係合孔33a,33b相当箇所で前記凹溝部41を成形する突条部と隣接する部分と、凹溝部41を成形する凹窪部とを設けることにより、カバー17を成形する外型は、カバー17の円弧形の正面壁部のある側に引き出し、カバー17を成形する内型は、外型と反対側に引き抜く方法で、係合孔33a,33bを備えたカバー17をプラスチック成形することができる。
【0028】
以上のように構成された本発明の戸開動用付勢装置12において、ガススプリング18の出退移動部18aに働いている下向きの付勢力は、板状受動部材24を介して水平軸傘歯車20に作用し、この水平軸傘歯車20を水平支軸21の周りに回転させようとする。この水平軸傘歯車20は、当該水平軸傘歯車20と一体の板状受動部材24の突出偏心部24aが図6において反時計方向に押し下げられるので、図6において反時計方向に回転しようとしている。従って、当該水平軸傘歯車20と咬合している垂直軸傘歯車22は、図5において時計方向の回転力を受け、当該垂直軸傘歯車22と一体の板状回転体27から連設されているアーム13が当該垂直軸傘歯車22と同一の時計方向の回転力を受ける。この結果、図2に示すように、アーム13の先端の摺接部材14は、側枠3に軸支されている戸体5の内側面に貼付されている金属製プレート15の表面に圧接することになる。このとき折れ戸1の両戸体5,6が一平板状に展開した全閉状態にあって、係る状態でセンターヒンジ7が備えるロック機構によってロックされているならば、アーム13の先端の摺接部材14は、戸体5の内側面の金属製プレート15の表面に圧接しているだけで、戸体5を開動させることはない。換言すれば、センターヒンジ7が備えるロック機構のロック作用を解除させるほどの大きな開動力が戸体5に作用しない程度に、ガススプリング18の付勢力が設定されている。
【0029】
図4B図8の各図に示す状態は、アーム13が基板16に対して直角向きに突出している仮想状態で示している。この仮想状態では、図7に示すようにアーム13と一体の板状回転体27の垂直ピン29は、円弧形のガイドスリット30の一端に位置しているが、図2及び図4Aに示すように、戸開動用付勢装置12が折れ戸1に組み込まれた使用状態で且つ開動対象の戸体5が閉じ位置でロックされている状態では、上記のようにガイドスリット30の付勢力を受けて時計方向に回転しようとしているアーム13は、仮想状態から少し戸体5のある側に回動して、アーム13の先端の摺接部材14が戸体5の内側面の金属製プレート15の表面に圧接した状態になる。
【0030】
上記の状態から、先に説明したように折れ戸1の全閉状態でのロックが人手によって解除されて開動可能な状態になると、図2に示すアーム13に作用している時計方向の開動力(ガススプリング18の付勢力)によって、戸体5がアーム13(先端の摺接部材14)に内側から押し出されて開動することになり、折れ戸1が開かれることになる。図2に仮想線で示すように戸体5が側枠3の前方にほぼ直角向きに延出する開動側限界位置まで開動すると、折れ戸1は、両戸体5,6が折り畳まれた全開状態になる。このときのアーム13の回転角度、即ち、図2に実線で示す戸体5が閉じ位置にあるときのアーム13から、仮想線で示す戸体5が開動側限界位置まで開動したときのアーム13までの回転角度は、ほぼ90度であり、図4B図8の各図に示す仮想状態でのアーム13の仮想位置からは、ほぼ95度程度になっている。従って、図7に示すアーム13側の垂直ピン29を介してアーム13の回転範囲を規制する円弧状のガイドスリット30の角度範囲も、戸体5の開動側限界位置までの開動角度に余裕を持たせて100度程度にしている。
【0031】
以上の説明から明らかなように、本発明の戸開動用付勢装置12を戸体5の開動手段として使用することにより、閉じ位置でのロックを解除さえすれば後はガススプリング18の付勢力で戸体5を自動的に開動側限界位置まで開動させることができる。上記実施例では、本発明の戸開動用付勢装置12を折れ戸1の側枠3に外側辺がサイドヒンジ8によって軸支される戸体5の開動手段として使用しているが、折れ戸1の戸体5,6の構成が左右逆になって、戸体6が側枠4にサイドヒンジ8によって軸支される折れ戸に対しても使用することができる。この場合は、戸開動用付勢装置12は側枠4の内側に取り付けられ、アーム13は戸体6を開動方向に付勢することになる。又、折れ戸に限らず、一般的な開閉自在な一枚戸に対しても使用することができる。又、戸を閉じ位置でロックするロック機構については、単に戸を強制的に開動させる方向に引くことによりロック解除されるロック機構の他、戸の側枠に軸支される側辺とは反対側の側辺(折れ戸の場合はセンターヒンジのある側辺)を手で押すことにより、ロック解除されるロック機構なども知られている。
【0032】
尚、図4B図8の各図に示す仮想状態は、実際の使用状態では不要であるが、例えばこの仮想状態、即ち、アーム13が平面視において基板16から直角向きに突出している状態でアーム13を一時的にロックできるように構成すれば、戸開動用付勢装置12を適用場所に組み込む作業中にアーム13がガススプリング18の付勢力で戸体開動方向に回動するのを抑止することができ、組み込み作業が楽に行える。仮想状態でのアーム13を一時的にロックする手段としては、アーム13に設けた上下方向の貫通孔と、基板16の軸受け支持部16cに設けた貫通孔との間にボルトやピンなどの棒状体を差し込むなど、簡単な方法が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の戸開動用付勢装置は、戸の側辺がヒンジによって開閉自在に側枠に支持され且つ閉じ位置でロックされる既設の各種の戸を、ロック解除さえすれば自動的に開動させることができるように改良する手段として、活用できるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 折れ戸
2 収納空間
3,4 側枠
5,6 戸体
7 センターヒンジ
8 サイドヒンジ
9 スライドヒンジ
10 スライドレール
11 把手
12 戸開動用付勢装置
13 アーム
14 摺接部材
14a,14b 上下両平板部
15 金属製プレート
16 基板
16a 取付け孔
16b カバー支持部
16c 軸受け支持部
17 カバー
17a,17b 左右両側壁部
17c 円弧形の正面壁部
17d 天井壁部
17e 底壁部
18 ガススプリング
18a 出退移動部
19,21,26 水平支軸
19a,21a 大径の台軸部
20 水平軸傘歯車
22 垂直軸傘歯車
23 垂直支軸
23a 小径軸部
24 板状受動部材
24a 突出偏心部
25,28 ネジ
27 板状回転体
29 垂直ピン
30 ガイドスリット
31 伝動手段
32 カバー係止手段
33a,33b 左右一対の係合孔
34a,34b 左右一対の弾性係止突起
35 帯状金属板
36 水平円弧状スリット
37 円形貫通孔
38 凹入部
38a,38b 長孔状開口部
39 弾性舌片部
40 係合突起
40a 傾斜面
41 凹溝部
41a 底板部
【要約】
【課題】本発明の課題は、閉じ位置でロックされる既設の各種の戸を、ロック解除さえすれば自動的に開動させることができる状態に改善できる手段を提供すること。
【解決手段】戸体5が開閉自在に支持される側枠3に取り付けられる戸開動用付勢装置12であって、側枠3の内側に取り付けられる上下縦長の基板16、この基板の上端部に一端が取り付けられて垂下する上下縦長姿勢のガススプリング18、基板16の下端部に上下垂直軸心の周りに回転自在に支持された回転体27、ガススプリングの下端から突出する出退移動部18aの上下方向出退移動を回転体27の回転に変換する伝動手段31、及び側枠3から離れる方向に回転体27から水平に延出するアーム13を備え、ガススプリングの出退移動部18aの下向き付勢力によってアーム13の先端部が戸体5の内面に圧接して、当該戸体5を開動方向に付勢する。
【選択図】図4
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